(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動防止機構は、阻止要素(82)であり、前記識別モジュールによる前記停止により前記阻止要素は非阻止位置に移動する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
前記識別モジュールは、作動した前記薬剤送達装置の実際の位置に関する情報を取得することができるGPS回路を備え、前記通信回路は、位置情報を送信するように設計される、請求項4に記載の薬剤送達装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
以下の説明では、薬剤送達装置という表現が用いられる。この文脈において、薬剤送達装置は、特定の用量の薬剤をユーザに送達することができる複数の装置を含んでいてもよく、当該複数の装置は、たとえば、注射針付きまたは注射針無しの注射装置、マウスピースまたはノーズピースを有する粉末、エアロゾル駆動、気体吸入器などの全ての種類の吸入器、錠剤の形態の薬剤のためのディスペンサ、アイディスペンサ、クリーム/ゲルディスペンサなどである。薬剤送達装置は、使い捨てタイプであってもよく、または再利用可能なタイプであってもよく、特定の形態の特定の薬に好適に配置された薬剤容器を備えていてもよい。
【0022】
以下の説明では、スマートデバイスという表現が用いられる。この文脈において、スマートデバイスは、コンピュータプログラムを実行することができるプロセッサと、プログラムを格納するための格納スペースと、さまざまな外部ソースから取り出されるデータとを備える電子デバイスを含んでいてもよい。スマートデバイスは、さまざまなデータベースにアクセスするためにデータネットワークと通信することができる通信システムを備える、ということがさらに理解されるべきである。データベースはインターネット、いわゆるクラウドサービスを介してアクセスされてもよく、および/または、データベースはローカルエリアネットワークに直接接続されてローカルエリアネットワークを介してアクセスされる、ということが理解されるべきである。この文脈において、スマートデバイスは、双方向通信のための何らかのヒューマン・マシン・インターフェイスを備える、ということがさらに理解されるべきである。ヒューマン・マシン・インターフェイスは、ディスプレイ、キーボード、マイク、スピーカ、周辺装置の接続のためのI/Oポートを備えていてもよい。さらに、スマートデバイスは、ネットワークとの無線通信のためのアンテナを備えていてもよい。また、スマートデバイスは、たとえばRFID、NFCまたはブルートゥース(登録商標)のような短距離無線通信技術により通信することができる送受信機構を備えていてもよい。また、スマートデバイスは、RFIDタグ、NFCタグまたはブルートゥース回路との通信を確立して処理することができるプログラムを備える。
【0023】
さらに、「遠位部/端」という語は、装置の使用下で患者の送達箇所から最も遠く離れて位置する装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を意味する。対応して、「近位部/端」という語は、装置の使用下で患者の送達箇所の最も近くに位置する装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を意味する。
【0024】
図面に示されている薬剤送達装置は、遠位端12と近位端14とを有する概して管状の細長いハウジング10を備える(
図1)。ハウジング10は、窓または開口16をさらに備え、当該窓または開口16を通して薬剤容器18を見ることができる。薬剤容器18は、可動ストッパ20を備える。当該装置は、概して管状の形状を有する薬剤容器ホルダ22をさらに備える(
図1)。薬剤容器ホルダ22は、薬剤容器18を収容するように配置され、薬剤容器18は、薬剤送達部材24(
図2)が配置される近位端を有し、当該薬剤送達部材24は、薬剤容器18と一体になっているかまたは薬剤容器18に接続可能になっている。薬剤送達部材24は、好ましくは、使用前は薬剤送達部材シールド26によって保護されており、当該薬剤送達部材シールド26は、示されている実施形態ではいわゆる剛性針シールドまたはRNSである。しかし、薬剤送達部材24の所望の保護を得るために他のタイプの薬剤送達部材シールドを使用してもよいということが理解されるべきである。ハウジングの近位端は中央通路28を備え(
図1)、当該中央通路28を通って概して管状の薬剤送達部材ガード30は延在する(
図11および
図14)。この実施形態では、薬剤送達部材ガード30は、薬剤送達装置の作動機構である。薬剤送達部材ガード30は、ハウジング10に対して摺動可能に配置され、そのため、薬剤送達装置が用量送達箇所に押し付けられると薬剤容器18と薬剤送達部材24とを有するハウジング10は近位方向に移動し、それによって薬剤送達部材24を露出させ、薬剤送達部材が注射針である場合には穿通が行われる。
【0025】
薬剤送達部材
ガードは、近位管状部32と、管状部32から延在する2つの遠位方向に向いたアーム34とを備える。薬剤送達部材ガード30の遠位方向に向いた周壁部とハウジングの近位方向に向いた周面との間には、薬剤送達部材ガードばね(図示せず)が配置されている。アーム34は、薬剤容器ホルダ22に沿って摺動可能に配置されている。アーム34の遠位端には、内向きに向いた突起36が配置されている。突起36は、送達部材ガードがハウジングに対して移動すると駆動ユニット40の回転体38(
図3)と動作可能に相互作用するように配置され、回転体38は、薬剤容器18の遠位に位置決めされている。
【0026】
回転体38は、概して管状の形状を有し、後述するように薬剤送達部材ガード30の突起36と協働するよう意図されたガイドリッジ42を備え、ガイドリッジのいくつかのセクション42
iは、装置の長手方向軸Lに対して傾斜している。
【0027】
さらに、アクチュエータ44(図
3)が回転体38に対して動作可能に配置されている。アクチュエータ44は、回転体38の内径よりもわずかに小さな直径を有する第1の近位管状セクション46を備える。アクチュエータ44はさらに、ハウジングの遠位部に収まって取り付けられるように配置された概して管状の第2のセクション48を備える。第2のセクション48は、概して円形の、径方向に延在する壁セクション50を備える。壁セクション50は、両側に設置された、円弧の形状をした2つの溝52を備える。各々の円弧の一端には、概して径方向に延在する溝54が配置されている。
【0028】
第1のセクション46は、概して径方向に柔軟であるように配置された近位方向に延在するアーム56をさらに備える。アーム56の自由端は、後述するように回転体38の内面と相互作用する外向きに延在する突起58を有する。さらに、アーム56の自由端は、内向きに延在する突起60を備え、当該突起60は、プランジャロッド64上の凹部62と相互作用するよう意図されている。突起60は、アクチュエータ44の中央通路66の中に延在し、当該通路66にプランジャロッド64が収まる。
【0029】
駆動ユニット40は、中空のプランジャロッド64のキャビティ内に設置された圧縮ばね68をさらに備え、当該圧縮ばね68は、その近位端がプランジャロッド64の端壁70と接触する状態で位置決めされている(
図2)。圧縮ばね68の遠位端は、底部74と2つのアーム76とを有する概してU字型の要素(以下、アクチベータ72と称する)と接触している(
図3)。アクチベータ72のアーム76は、プランジャロッド64の外面に沿って、およびプランジャロッド64の外面と接触して、近位方向に向いており、アーム76の自由端は、概して径方向外向きに向いた突出部78を備える。これらの突出部78は、アクチュエータ44の中央通路66を取り囲む近位方向に向いた面80と接触するように配置されている。
【0030】
上記のように、薬剤送達装置が用量送達箇所に押し付けられると、薬剤送達部材ガード30はハウジング10内で、ハウジング10に対して移動する。この結果、薬剤送達部材ガード30の突起36が回転体38のガイドリッジ42に沿って移動し、突起が傾斜セクション42
iと接触して、装置の長手方向軸Lを中心として回転体38を回転させることになる。
【0031】
回転体38が回転することにより、アクチュエータ44のアーム56は、回転体38の内面との接触が解除される。このとき、アクチュエータ44のアーム56は、自由に外向きに曲がることができるようになり、それによって、アーム56の内向きに向いた突起60は、プランジャロッド64の凹部62との接触が解除される。
【0032】
このとき、プランジャロッド64は、圧縮ばね68の力により自由に近位方向に移動することができるようになり、プランジャロッド64の近位端は、薬剤容器18内のストッパ20に対して作用してストッパ20を近位方向に移動させ、その結果、ある用量の薬剤が薬剤送達部材24を通して放出される。
【0033】
薬剤送達装置は、ロッキング機構が作動されるまで薬剤送達装置の使用または作動を防止するために配置された作動防止機構またはロッキング機構をさらに備える。ロッキング機構の作動は、後述の多くの方法で実行され得る。ロッキング機構の1つの非限定的な例によれば、薬剤送達装置は、示されている実施形態では阻止要素82(
図3)の形態の作動防止機構を備える。阻止要素82は、中央通路を有する半円形の本体84を備え、当該本体84は、後述するようにアクチュエータ44の管状の第2のセクション48を中心として回転することができるように第2のセクション48の周りに嵌められる。阻止要素82の本体84は、回転体の径方向外側に位置決めされた2つの近位方向に向いたアーム86をさらに備える。装置が非作動状態にある
図4に見られるように、阻止要素82のアーム86の近位端は、薬剤送達部材ガード30のアーム34の遠位端と接触している。したがって、薬剤送達部材ガード30のアーム34が阻止要素82のアーム86と当接しているので、薬剤送達部材ガード30がハウジング10に対して移動することがロックされ、それによって装置の作動を防止する。
【0034】
本発明に係る薬剤送達装置を作動させるためには、薬剤送達部材ガード30を上記のように移動させることができるようにロッキング機構の阻止要素82に影響を及ぼさなければならない。さらに、本発明によれば、後述するように、薬剤送達装置を作動させる機能、したがってロッキング機構を停止またはロック解除させる機能は、薬剤送達装置を使用する権限がある者および/または薬剤送達装置を使用することを承認された者に関連付けられ、接続されるべきである。
【0035】
キー特徴を有する識別モジュール
その点に関して、本発明に係る薬剤送達装置は、識別モジュール100を備える。本発明の一局面に従って、識別モジュールは、薬剤送達装置に取り付け可能な別個のユニットとして配置され得る。しかし、識別モジュールは薬剤送達装置の一体の部分であってもよい、ということが理解されるべきである。以下の非限定的な例では、識別モジュール100は、
図2に見られるように別個のユニットとして配置される。
【0036】
識別モジュール100は、
図2に見られるように薬剤送達装置のハウジング10と概して同一の直径を有する、概して管状のハウジング部102を備える(
図5)。識別モジュール100は、キー要素をさらに備え、当該キー要素は、ある用量の薬剤を送達することができるように薬剤送達装置をロック解除するまたは作動させるための薬剤送達装置上の対応するキー要素と協働するように配置および設計される。
【0037】
なお、識別モジュールは、他の形状および設計を有していてもよい。たとえば、識別モジュールは、薬剤送達装置が設置される外殻であってもよい。
【0038】
機械的キーおよびロック解除
1つの実現可能な解決策によれば、キー要素は機械的である。
図5に係る実施形態に見られるように、識別モジュールは、上記のキー突起104を備え、当該キー突起は、識別モジュール100の近位方向に向いた面106上に配置されている。これらのキー突起104は、薬剤送達装置の遠位端上の径方向溝54に収まって、壁セクション50の溝52の中に延在するような設計を有している(
図6)。さらに、阻止要素82は、その遠位方向に向いた端面上に凹部108を備え(
図7)、当該凹部108の位置は、キー突起104が阻止要素82の凹部108の中に延在するように径方向溝54の中に位置決めされる場合にはキー突起104に対応する。このとき、薬剤送達装置の長手方向軸Lを中心として識別モジュール100を回転させると、阻止要素82も回転する。この結果、阻止要素82のアーム86は、薬剤送達部材ガード30のアーム34との接触が解除され(
図8)、それによって、薬剤送達部材ガード30が上記のように自由に移動することができるようになり、それによって、薬剤送達装置が作動してある用量を送達する。
【0039】
この点で、キー要素の主な目的は、識別モジュールと薬剤送達装置との間の多数の異なるキーの組み合わせを有して当該組み合わせを「カスタマイズする」ことである、ということが指摘されるべきである。したがって、ユーザは、上記の薬剤送達装置を受ける権限が与えられたら、特定のキーパターンを有する識別モジュールと、対応するキーパターンを有する薬剤送達装置とを与えられることになる。
【0040】
したがって、薬剤送達装置は、識別モジュールなしでは機能することができず、他のキーパターンを有する識別モジュールも使用できない。承認されたユーザに割り当てられる識別モジュールと薬剤送達装置との間には固有の接続が確立される。この点で、当業者が設計し得る可能性のうちのいくつかを挙げると、突起のさまざまな数、径方向における突起のさまざまな位置、突起および薬剤送達装置の対応する凹部または溝のさまざまな断面設計、長手方向における突起のさまざまな位置、突起のさまざまな長さなどの多数の機械的キー要素が使用されてもよい、ということが理解されるべきである。
【0041】
機械的−電気的キー
薬剤送達装置と識別モジュールとの間の特定のキーパターンの別の解決策は、
図4に見られるように薬剤送達装置の壁セクション50の遠位方向に向いた面上の電気接点110を使用するというものであってもよい。これに関して、電気接点110は、固有のパターンを形成するように互いに関連させて設置され得る。壁セクション50の遠位方向に向いた面と接触するよう意図された識別モジュール100の近位面106は、対応する電気接点112を備え(
図5a)、当該電気接点112は、薬剤送達装置の電気接点110と同一のパターンで配置され、そのため、識別モジュール100が薬剤送達装置に接続されると、接点110,112は識別モジュールと薬剤送達装置との間に電気的接触を提供するように接続される。なお、当該パターンは、「カスタマイズされた」組み合わせを形成するようにさまざまな位置および/またはさまざまな数の接点によってさまざまに変更されてもよい。また、この解決策により、接点のみが特定のパターンで配置されるか、または接点も機械的キー要素も特定のパターンで配置されるかのいずれかである、ということも理解されるべきである。電気接点が使用される場合、電気接点は、薬剤送達装置に電気を送って後述のさまざまなタスクおよび機能を実行することに使用することができる。
【0042】
電気的キー
本発明の別の局面によれば、キー要素は、非機械的、たとえば電気的であってもよい。そのシナリオでは、識別モジュール100のハウジングを取り外した
図9に見られるように、識別モジュールは、ボタン電池などの適切な電源116によって好適に電力を供給される好適なキー回路114を備え得る。そして、識別モジュールのキー回路は、薬剤送達装置上に配置された対応するキー回路118と接続および/または通信することができる。
図10に示される実施形態では、対応するキー回路118は、阻止要素82上に設置されている。そして、キー回路同士の間の接続および/または通信は、固有の「対を成す」接続が得られるように選択される。すなわち、特定の薬剤送達装置がロック解除されて作動されるように、特定の識別モジュールのみが特定の薬剤送達装置に接続可能であってもよい。この点で、装置を作動させるために複数の解決策を提供できる、ということが理解されるべきである。たとえば、固有の組み合わせでプログラムされたNFCタグが利用されてもよい。たとえば、薬剤送達装置のキー回路は、電源116によって駆動される識別モジュールのNFCまたはRFIDリーダによって作動される受動NFCタグを含んでいてもよい。
【0043】
光学的キー
NFC解決策の代替例として、またはNFC解決策に加えて、キー機能は、何らかのタイプの光学的キー機能を備えていてもよく、当該光学的キー機能は、薬剤送達装置上に配置された光学的に識別可能なパターン120(
図4)と、パターンから情報を導き出すためにパターンを識別することができる識別モジュール100上に配置された何らかの種類のセンサ122(
図5)とを備える。この点で、たとえば
図4に見られるように、光学的に識別可能なパターン120は、薬剤送達装置の面に取り付け可能なラベル上に設置されたたとえばQRコード(登録商標)、EANコードまたは印刷された文字であってもよい。そして、識別モジュールは、QRもしくはEANコードまたはOCR読取文字を読み取ることができる好適な光学センサ要素122を備える。そして、識別モジュールの回路は、読み取られた情報からデータを識別することができるプロセッサおよびプログラムコードを備える。
【0044】
パターンが一方の面に設置され、センサが第2の面に設置され、これらの面は、互いに対向しており、識別モジュールが取り付けられたときに互いに接触するので、パターンとセンサとの間はかなり暗い可能性があり、パターンを読み取ることが困難になる。そのため、識別モジュールは、パターンを照らすことができる光源124(
図5a)を備えていてもよい。この点で、光は可視範囲外で選択されてもよく、パターンは非可視インクを用いて印刷されてもよい。これは、キー機能の操作をより困難にするように選択されてもよい。
【0045】
光学的キー機能、すなわちQRリーダおよび場合によってはランプ、を作動させるために、何らかの種類の「電源投入」機構を有することが有利であろう。一実施形態では、電源投入機構は、識別モジュールの外面上に配置された手動操作可能なスイッチ126(
図5b)を備え得る。識別モジュールが薬剤送達装置に接続されると、ユーザは当該スイッチを操作し、その結果、電源がランプおよび/または光学センサ要素に接続され、ランプが光学センサ要素の前方の領域を照明して、作動した光学センサ要素がパターンを読み取る。光学的キー機能は、好ましくは、キー動作が完了すると光学センサ要素およびランプへの電力をオフにするスイッチオフ機能も備えていてもよい。なぜなら、このとき光学的キー機能の要素はそのタスクを完了しているからである。
【0046】
電源投入機構に関して、電源投入機構は、好ましくは、キー動作が完了していない場合には特定の期間後にランプまたは光学センサ要素への電力をオフにするタイマ機能も備えるべきである。これにより、誰かが電源投入機構を作動させたけれども識別モジュールを薬剤送達装置に接続していない場合に電源を消耗させるリスクが減少する。電源投入機構が後述のさらなる機能を作動させ得る、ということがさらに理解される。
【0047】
電気的または光学的ロック解除
電気的または光学的キー要素により、薬剤送達装置のキー回路118および/または識別モジュールは、薬剤送達装置をロック解除して作動させるために、複数の異なる部品を動作させ得て、および/または、複数の異なる原理を使用し得る。たとえば、薬剤送達装置は、阻止要素82′(
図11)によってロックされ、当該阻止要素82′は、上記のようにハウジング10に対する薬剤送達部材ガード30の移動を防止し、近位方向に向いたアーム86′が薬剤送達部材ガード30の移動を防止する。阻止要素82′は、ロッキング要素128によってロッキング位置に保持され得る。
図11に示される実施形態では、阻止要素82′は、2つの半円形の円板130lおよび130llを備え(
図11)、当該2つの半円形の円板130lおよび130llは、長手方向Lを横断する向きになっており、アクチュエータ44の第2のセクション48の周りに嵌められるように適合されている。最も遠位の円板130llは、ロッキング要素128を備え、当該ロッキング要素128は、示されている実施形態では、円板130llの概してU字型の切抜き部に形成された可撓性アーム132を備える。アーム132の自由端は、遠位方向に向いた突起134を備える(図
11)。突起134は、
図13に見られるように、ロッキング要素128がロッキング位置にあるときにアクチュエータ44の壁セクション50における通路136に収まるように配置および設計され、それによって、通路136における突起134の位置が阻止要素82′のいかなる回転運動も防止する。さらに、初期ロッキング位置では、解放要素138が力によって阻止要素82′に対して作用している。示されている実施形態では、解放部材は、アーチの形状をした、座部142に取り付けられるかまたは座部142と一体になったねじりばね140を備え、当該座部142は、アクチベータの第2のセクションに取り付けられるように配置される。解放要素138を回転ロックするために、座部142は切抜き部144を備え、当該切抜き部144の中に第2のセクション上の概して径方向に延在する突起146が突き出る。初期ロック位置では、ねじりばね140は張力がかかった状態にあり、その自由端は、
図14に見られるように阻止要素82′の突出部148に寄りかかっている。
【0048】
作動時にロッキング要素に対して作用するように駆動要素150が動作可能に配置されている。駆動部材は、後述の多くの設計および機能を有し得る。示されている実施形態では、駆動要素150は、作動時に長手方向に移動可能なロッド152(
図13)または同様の細長い部材を備える。さらに、識別モジュールを作動させたときに駆動要素がロッキング要素128に対して作用して阻止要素を阻止位置から移動させるように、駆動要素が薬剤送達装置のキー回路または識別モジュールに動作可能に接続されている。この場合、駆動要素150のロッド152は、ロッキング要素128のアーム132の突起134を通路136から押し出し、阻止要素82′を自由にする。このとき、解放要素138のねじりばね140は、自由に阻止要素82′のアーム86′に対して作用してアーム86′をロッキング位置から移動させることができるようになる(
図15)。駆動部材を作動させて阻止要素を移動させるための機構については後述する。
【0049】
駆動部材は、薬剤送達装置をロック解除するために阻止要素に対して作用することができるようにさまざまな態様で設計され得る。一般的に言えば、駆動部材は、電力の形態の入力パワー、熱または電磁場によって動作し得る。これら3つの原理のうち、いくつかの具体的な解決策を挙げる。
【0050】
・駆動部材は、電磁石によって動作してもよく、駆動部材は、特に、電磁石によって生成される磁場によって移動するように設計され、位置決めされる。この解決策では、特に電源のみが識別モジュールに設置される場合、電磁石は好ましくは識別モジュール内に配置される。
【0051】
・駆動部材は、ソレノイドによって動作してもよく、当該ソレノイドは、キー回路から電流を印加することによって動作する。ここでも、ソレノイドは好ましくは識別モジュール内に配置される。そして、ソレノイドは、識別モジュールと薬剤送達装置との間の境界面に対して作用するように配置および設計される。
【0052】
・駆動部材は、電場にさらされたときに形状および/またはサイズを変化させることができる電気活性ポリマーを備える。そして、電場の発生器は、好ましくは識別モジュール内に配置され、識別モジュールのキー回路によって動作する。
【0053】
・駆動部材は、二元金属ストリップを備える。2つの金属部品は、異なる熱膨張特性を有する。識別モジュールは、二元金属ストリップが位置を変化させるように作動時に二元金属ストリップを加熱する加熱要素を備える。
【0054】
・駆動部材は、阻止部材をロッキング位置に保持する磁場を形成する永久磁石を備える。識別モジュールは、作動時に永久磁石を永久磁石の材料のキュリー点を超える温度に加熱する加熱要素を備える。その結果、永久磁石はその磁気的特性を失い、それによって、阻止部材は解放される。
【0055】
・駆動部材は、形状記憶合金または形状記憶ポリマーを備える。識別モジュールは、形状記憶材料に熱を加えたときに形状記憶材料がその元の形状を保持するように作動時に形状記憶材料を加熱する加熱要素を備える。
【0056】
・駆動部材は、磁気記憶合金を備える。識別モジュールは、磁気記憶合金がその位置を変化させるように作動時に磁気記憶合金に影響を及ぼす磁場の発生器を備える。
【0057】
薬剤送達装置の作動を防止するまたは薬剤送達装置を阻止する上記の例では、作動するまでは薬剤送達部材ガードは阻止される。しかし、装置の実際の設計によっては、他の作動機構、したがって薬剤送達装置の他の要素が阻止されてもよい、ということが理解されるべきである。たとえば、作動ボタンが阻止されてもよく、ピストンロッドなどの駆動ユニットが阻止されてもよく、キーが確認されるまで作動部品は互いに接触しない状態で位置決めされ、当該部品が移動して互いに接触することによって、薬剤送達装置の作動が可能になる。
【0058】
光学的または電気的キーおよびロック解除機能を動作させるために、電源が必要である。好ましくは、電源のみが識別モジュール内に配置されている。これにはいくつかの理由がある。1つの理由は、識別モジュールがキー機能とは別に、電力を必要とし得る複数のさらなる機能を備え得るというものであり、当該さらなる機能については後述する。別の理由は、薬剤送達装置が使用後に廃棄されるいわゆる使い捨ての装置であり得るというものである。そのため、特に電源が場合によっては環境的に危険な化学元素を含む電池である場合には、やはり廃棄されるであろう電源が薬剤送達装置内にあれば不利であろう。さらなる理由は、薬剤送達装置内にいかなる電源も持たないことによって製造コストを削減するというものである。しかし、上記の理由にもかかわらず、薬剤送達装置内の電源をやはり必要とするまたは正当化する場合および設計側面があるであろう。
【0059】
識別モジュールが実行可能な他の機能を備えていてもよいというさらなる特徴がある。
図5および
図9に見られるように、識別モジュール100は回路154を備え、当該回路154はプロセッサおよび記憶要素をさらに備える。プロセッサは、後述の複数の異なるタスクを実行するように設計され、プログラムされ得る。識別モジュールの回路154は、薬剤送達装置の要素との内部通信回路と、隣接して位置決めされた要素および遠隔に位置決めされた要素との外部通信回路とをさらに備え得る。さらに、識別モジュールは、回路154に動作可能に接続された接触部156およびボタン158などの入力/出力要素を備え得る(
図5a)。
【0060】
識別モジュールの回路154は、ユーザと通信するように配置され、プログラムされたユーザ通信回路をさらに備え得る。ユーザ通信回路は、たとえば装置の好適なディスプレイ160(
図9)上に表示される、電子モジュールに記憶されたテキストによって視覚的に通信することができる表示要素を備え得る。加えて、またはその代わりに、ユーザ通信回路は、たとえば電子モジュールまたは装置自体の適切なスピーカで再生される、電子モジュールに記憶された記録メッセージによって可聴的に通信することができる音声要素を備えていてもよい。
【0061】
識別
本発明によれば、識別モジュール100は、任命されて薬剤送達装置の使用を認められた特定の者または特定の複数の者を識別することができる識別機構も備え得る。識別機構は、さまざまな特徴および機能を備え得る。たとえば、識別モジュールは、上記の複数のボタン158または同様のアクチベータを備えていてもよく、薬剤送達装置を作動させるために、ピンコードのようなボタンの特定の組み合わせを接触させなければならない。入力されたコードは、識別モジュール内の予め記憶されたコードと比較され、正確に合致すれば薬剤送達装置が上記のようにロック解除される。
【0062】
ボタンの代わりに、またはボタンに加えて、識別モジュールは、読取センサ162を備えていてもよい(
図4)。この読取センサ162は、ユーザから生物測定データを収集することが可能であり得る。たとえば、読取センサは、指紋を読み取るように設計されてもよく、ユーザは、薬剤送達装置を作動させるときに指をセンサ上に置くかまたはセンサ上で指を滑らせることによって、指紋が読み取られる。そして、識別モジュールは、読み取られた指紋をユーザからの予め記憶された指紋と比較し、合致すれば薬剤送達装置がロック解除される。指紋の代わりに、読取センサは、人の虹彩を読み取って読取値を正式なユーザの虹彩の予め記憶された読取値と比較するように設計されてもよい。合致すれば、薬剤送達装置が上記のようにロック解除される。
【0063】
ローカル通信
1つの実行可能な通信機能は、薬剤送達装置内に配置されたさまざまなセンサおよび回路とのローカル通信である。識別モジュールが薬剤送達装置の一体の部分である場合、配線またはレーザダイレクトストラクチャリング(Laser Direct Structuring:LDS)などの好適な回路がハウジング内に配置され得る。一方、識別モジュールが別個の取り付け可能なユニットとして配置される場合、適切な信号伝達インターフェイスを形成しなければならない。1つの解決策では、当該インターフェイスは、識別モジュールを薬剤送達装置に取り付けたときに互いに接触させられる電気接点を対向する面上に備えていてもよい。さらなる解決策として、信号伝達インターフェイスは、識別モジュールの電子部品と薬剤送達装置のさまざまなセンサ要素との間の無線通信を提供する要素を備えていてもよい。それらは互いに非常に近接して位置決めされるので、無線周波数識別技術を使用することができ、特に上記のようにキーと関連付けてNFC技術を使用することができる。そして、識別モジュールは、好ましくは、NFCチップ、回路、メモリ要素とアンテナとを備えるNFCタグを備える。そして、薬剤送達装置のさまざまなセンサ要素もNFCタグを備えていてもよく、識別モジュールのNFCタグと薬剤送達装置のNFCタグとの間で通信が可能になる。
【0064】
ローカルモードで利用できるいくつかの特徴がある。これらは、とりわけ、NFCタグを薬剤容器上に位置決めしている。これは、薬剤容器の外面に取り付けられたラベルによってなされてもよい。別の解決策は、製造時にNFCタグを薬剤容器の材料に組み込むというものである。薬剤容器と接触させてNFCタグを設置することにより、いくつかの特徴が可能になる。薬剤容器に含まれる薬に関するデータを導き出すことができる。検索可能なデータは、たとえば薬剤容器のサイズ、薬のタイプ、薬の強さ、充填日であってもよく、このデータは、識別モジュールに送信され、記憶され得る。送信されたデータは、処方された薬剤、薬の強さなどの、識別モジュールに予め記憶されたユーザ固有のデータとさらに比較され得る。
【0065】
さらに、NFCタグは一般に一体型の温度センサを有するので、薬剤容器の温度を測定することができる。多くの薬は、薬の寿命を維持するために冷蔵庫のような涼しい場所に保管すべきである。しかし、薬は、投与されると一般に室温を有するはずである。そのため、薬剤容器のNFCタグは、温度を監視してこれを識別モジュールに送信することが可能であり得る。そして、識別モジュールは、温度が閾値温度を超えたというデータを薬剤容器のNFCタグから受け取るまで薬剤送達装置を作動させることができないようにプログラムされる。そして、識別モジュールは、薬剤送達装置を作動させてロック解除することができ、その結果、薬剤送達装置を使用してある用量の薬剤を投与することができる。
【0066】
さらに、識別モジュールが温度データをサンプリングして当該データに時刻を刻印し得るという点で、NFCタグの温度特徴を使用して温度ログを提供してもよい。そして、当該温度ログを使用して、薬剤容器の薬が薬を損傷または劣化させるおそれがある過剰な温度にさらされていないことを制御してもよい。装置は、用量送達シーケンスの終わりを検知して識別モジュールに信号を提供することができるセンサをさらに備えていてもよい。後者は、ユーザが薬を服用したときに情報を提供するようにこの信号をタイムスタンプと組み合わせ得る。当該情報は、複数の装置を扱うユーザに対して、特定の装置が既に使用済みであり廃棄されるべきであることを警告するためにも提供されてもよい。
【0067】
さらに、薬剤送達装置は、薬剤送達装置が不正変更されたという情報を取得することができるセンサを備えていてもよい。たとえば、薬剤送達装置は、薬剤送達部材を無菌状態に保つ保護キャップを備えていてもよく、当該保護キャップは、使用前に取り外す必要がある。そして、保護キャップが以前に取り外されて再び戻されたことにより薬剤送達部材の無菌状態に悪影響を及ぼしたことを識別するためにセンサが配置されてもよい。この情報は、識別モジュールに送信されるが、ユーザが試みたとしても薬剤送達装置を作動させることはない。上記のシナリオでは、ユーザ通信ユニットを作動させてなぜ装置が作動されないかをユーザに知らせることができ、そのため、ユーザは機能的な薬剤送達装置を得るための適切な手段を理解して講じることができる。
【0068】
広域通信
好ましくは、識別モジュール100の回路154は、いくつかの例を挙げると、無線通信の分野の当業者が熟知しているとりわけ携帯電話網、GSM(登録商標)、3G、4GなどのデジタルセルラーネットワークおよびWLansなどの外部通信ネットワークと通信することができる通信回路も備えていてもよい。外部通信ネットワークとの通信は、さらなる識別可能性および薬剤送達装置と識別モジュールとの間の情報のやりとりを提供することができる。
【0069】
たとえば、識別モジュールが外部通信ネットワーク内のデータベースに接続されると、薬剤に関する上記のデータは、直接チェックされて検証されてもよい。たとえば、薬のタイプおよび製造日などの取得された薬の情報は、通信ネットワークを介して利用可能な専用のデータベースと比較され得る。そして、当該比較は、接続ユーザおよび処方された薬に関してなされ得る。比較が合致しなければ、薬剤送達装置は作動されない。また、薬剤送達装置内の薬の製造日は、特定の薬に関する情報と比較され得る。たとえば、さまざまな理由で薬の特定のバッチが回収されている場合がある。識別モジュールは、このような情報を受け取ると、薬剤送達装置がロック解除されることを防止することができる。また、薬を服用することが有効である設定期限、すなわち有効期限があるだろう。有効期限後は、識別モジュールによって受け取られた情報によって装置がロック解除されることを防止することができる。
【0070】
上記の識別データは、ピンコードおよび生物測定センサと関連付けて、識別モジュールにローカルに記憶されるのではなく、外部データベースに記憶されてもよい。このときピンコードが入力されるかまたは読取センサが指紋または虹彩を読み取ると、識別モジュールの通信ユニットは、正確なピンコードまたは特定のユーザの指紋もしくは虹彩の特定のパターンに関する予め記憶されたデータを含むデータベースと接触する。そして、突き合わせが外部でなされ、合致すれば適切な信号が識別モジュールに送信され、それによって薬剤送達装置がロック解除される。
【0071】
さらに、外部に記憶され得るユーザデータは、患者の処方箋、患者の治療計画および支払認証である。患者の処方箋に関して、識別モジュールは、処方箋が終了もしくは期限切れになりそうであるという情報および/または処方箋が更新されておりユーザが薬局に行って新たな薬剤送達装置を受け取っているかもしれないという情報を検索し得る。識別モジュールによって検索されたこの情報は、識別モジュールのユーザ通信回路を介して視覚的および/または可聴的にユーザに通信され得る。
【0072】
さらに、識別モジュールは、
医師が特定の薬および特定の患者について作り上げた治療計画に関する情報を検索し得る。治療計画に関して、これは、ユーザによって行われる実際の薬送達動作と比較され得るが、当該動作は、薬剤送達装置のセンサと通信する識別モジュールによって監視されたものであり、識別モジュールは、当該動作に時刻を刻印している。ここでも、特にユーザが所定の治療計画から逸脱している場合に、識別モジュールによって検索された情報は、ユーザ通信回路を介してユーザに通信され得る。その点で、ユーザは、逸脱を改善するためにどのような手段を講じる必要があるかも知らされることができる。
【0073】
たとえば処方された薬の支払いが部分的にユーザまたはユーザの保険会社によってなされなければならない場合には、支払認証が使用され得る。そして、外部データベースは、薬の支払いに関する情報をチェックするおよび/または受け取るように配置され得る。そして、この情報は、さらなる動作のために識別モジュールに送信され得る。1つの動作は、支払いを行う必要があることをユーザ通信回路を介してユーザに知らせるまたは警告するというものであり得る。別の動作は、支払いが行われるまで薬剤送達装置を阻止するというものである。
【0074】
他の装置とのユーザ対話
いくつかのタイプの治療では、患者/ユーザの状態を定期的に監視し、たとえば患者が所定の治療を順守していることを認識する、または治療計画の進捗状況を監視することが重要である。その際に、さまざまなタイプの測定センサおよび測定装置が利用されてもよい。たとえば糖尿病に関して、血糖値を監視することがかなり一般的であり、血糖値センサを備えた多数の測定装置がこれまでに開発され、現在も開発中である。本発明によれば、薬剤送達装置の通信ユニットは、このような測定装置と通信してもよい。そして、識別モジュールは、測定値が、ある用量の薬剤を投与する必要があることを示す許容値の範囲外になるまで、薬剤送達装置をロックしたままにするように設計され得る。その後、識別モジュールは、装置をロック解除する。
【0075】
さらに、ユーザ通信回路は、ある用量を服用する必要があり薬剤送達装置がロック解除されることをユーザに警告し得る。監視および場合によってはユーザに対する警告に関する情報は、タイムスタンプとともに、識別モジュールによって外部データベースに送信され得る。そして、この情報は、たとえば治療の進捗状況または臨床試験の試験反応を評価するために医師または他の訓練を受けたスタッフによって分析され得る。
【0076】
他の装置との通信に関して、この機能は上記のスマートデバイスと組み合わせて利用されてもよい。たとえば、識別モジュールは、通信回路を備える場合にはスマートデバイスと直接通信してもよく、通信システムは、ブルートゥース、ZigBee、Antなどの近距離通信であってもよく、GSM、4G、5Gなどのテレコミュニケーションネットワークを介したものであってもよく、またはWlanなど、要するに任意の好適な無線通信ネットワークを介したものであってもよい。
【0077】
スマートデバイスを使用して、薬剤送達装置を使用するおよび/または作動させる権限がある者を識別することができる。権限者は、患者、または親もしくは訓練を受けた医療スタッフなどの、患者を支援する承認を受けた者であってもよい。そして、スマートデバイスのさまざまな機能を使用して、スマートデバイスから識別モジュールに送信されたデータを介して薬剤送達装置を作動させることができる。たとえば、スマートデバイスは、特定のピンコードが権限のあるユーザによって入力されることを必要とし得る。別の解決策は、スマートデバイスがたとえば指紋、眼または顔などの生物測定データを読み取ってそれを記憶されたデータと比較することができるように配置される場合にこのようなデータを使用するというものである。さらなるシナリオは、銀行IDなどの認可された識別機能を使用するというものであってもよい。
【0078】
さらなるシナリオは、医師などの権限者がたとえばスマートデバイスを介してアクセス可能なホームページまたはアプリケーションを介してリアルタイムでスマートデバイスにデータを提供するというものである。医師も、または代わりに、権限者が薬剤送達装置を扱っているという情報を受け取るとネットワークを介して直接薬剤送達装置を作動させてもよく、当該情報はスマートデバイスを介して送信される。その点で、画像または映像シーケンスが
医師に送信され得る。また、Face Timeのようなアプリケーションも使用されてもよい。
【0079】
他の権限者との対話
患者の治療は、医師などの権限者からの定期的な監視および対話を必要とし得る。非常に効力があり、および/または、非常に高価であり、および/または、権限者の個別の承認を受けて初めて服用しなければならないいくつかの薬では、たとえば上記のように特定の治療の進捗状況を評価した後で、権限者と協力してユーザだけが薬剤送達装置をロック解除することができ、または権限者だけが薬剤送達装置をロック解除することができる。この場合、権限者は、治療からのデータを調査した後で承認信号を識別モジュールに送信し得る。これにより、直接またはユーザの識別と組み合わせて薬剤送達装置がロック解除され、後者のシナリオは、二重の安全性面が得られるので好ましい。上記のように、薬剤送達装置を使用してある用量を投与できることをユーザに警告するために、権限者が薬の投与を承認するとユーザ通信回路が作動され得る。
【0080】
他の薬または他の事象とのシーケンス依存
本発明に係る薬剤送達装置のロック解除は、さらなる基準および動作に基づき得る。たとえば、患者はいくつかの薬を使用する場合があり、当該薬は、互いに組み合わせられる場合もあれば組み合わせられない場合もあり、ならびに/または、異なる間隔でおよび/もしくは特定の時間遅延を持って服用されるべきである。1つの薬の用量送達の日時に関する情報が、識別モジュールから外部データベースに送信され得る。そして、データベースは、異なる薬が投与される場合があるという情報を有しており、所定の時間間隔が経過するまで当該異なる薬を含む薬剤送達装置のロック解除を許可しない。上記のように、ユーザは、これらの動作に関してユーザ通信回路を介して警告または通知され得る。
【0081】
複数のさまざまな識別手段および複数のさまざまな動作について上記した。これらの手段およびこれらの動作は、不適切な者による薬剤送達装置の取扱いまたは正当な者による薬剤送達装置の不適切な取扱いに対して所望のレベルの安全および安心を得るためにさまざまに組み合わせられてもよい、ということが理解されるべきである。
【0082】
上記のおよび図面に示された実施形態は、単に本発明の非限定的な例とみなされるべきであり、特許請求の範囲の範囲内でさまざまに変更されてもよい、ということが理解されるべきである。