(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視において、前記複数のPTC領域および前記複数のNTC領域は、第1方向に長い帯状に形成されるとともに、前記第1方向に直交する第2方向において交互に並べて配置されている、請求項1に記載の熱整流性基板。
平面視において、前記複数のPTC領域および前記複数のNTC領域は、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向の双方において、交互に並べて配置されている、請求項1に記載の熱整流性基板。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の熱整流性基板および熱電発電装置について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、熱電発電装置1Aは、熱整流性基板2Aと、熱整流性基板2A上に設けられた熱電変換モジュール3と、を備えている。
【0017】
(方向定義)
ここで、本実施形態ではXYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。Z方向は、熱整流性基板2Aの厚さ方向である。X方向は、Z方向に直交する方向である。Y方向は、Z方向およびX方向の双方に直交する方向である。
以下、各方向を第1方向X、第2方向Y、上下方向Zと表す。また、上下方向Zのうち、熱整流性基板2A側を下方といい、熱電変換モジュール3側を上方という。また、上下方向Zから見ることを平面視といい、上下方向Zに沿う断面で見ることを断面視という。
【0018】
(熱整流性基板)
図2に示すように、熱整流性基板2Aは、上層部2aと下層部2bとを有する2層構造になっている。上層部2aおよび下層部2bは薄膜状に形成されており、上層部2aと下層部2bとは密着して一体化している。熱整流性基板2Aの上面は、上層部2aの上面2a1であり、熱整流性基板2Aの下面は、下層部2bの下面2b1である。
上面2a1は、熱電変換モジュール3とともに、絶縁体4により覆われている。なお、絶縁体4はなくてもよい。
図1では絶縁体4の図示を省略している。
【0019】
上層部2aおよび下層部2bにはそれぞれ、複数の薄膜状のNTC領域10および複数の薄膜状のPTC領域20が含まれている。上層部2aに含まれるNTC領域10(上側NTC領域)の下方には、下層部2bに含まれるPTC領域20(下側PTC領域)が配置されている。上層部2aに含まれるPTC領域20(上側PTC領域)の下方には、下層部2bに含まれるNTC領域10(下側NTC領域)が配置されている。また、
図1に示すように、上下方向Zから見た平面視において、NTC領域10およびPTC領域20は、第2方向Yに交互に並べて配置されている。
【0020】
上記構成により、熱整流性基板2Aは、複数のPTC領域20および複数のNTC領域10を備え、平面視および断面視において、複数のPTC領域20および複数のNTC領域10が交互に並べて配置されている。
また本実施形態では、NTC領域10およびPTC領域20は第1方向Xに長い帯状に形成されている。
【0021】
NTC領域10およびPTC領域20はそれぞれ、第1面および第2面を有する膜状に形成されている。NTC領域10はNTC特性を有しており、PTC領域20はPTC特性を有している。ここでPTC特性とは、温度上昇により物性値(本明細書では熱抵抗または電気抵抗)が正の係数を持って変化する特性である。NTC特性とはその逆で、温度上昇により物性値(同上)が負の係数を持って変化する特性である。
【0022】
NTC領域10およびPTC領域20は、有機材料および無機材料を複合させたコンポジット膜により構成されている。熱整流性基板2Aは、NTC領域10およびPTC領域20を重ね合わせて形成されているため、薄膜状となっている。本実施形態では、NTC領域10およびPTC領域20の内部に存在する熱伝導経路の状態を、熱流の方向によって変化させることで、熱整流性を実現している。以下、より詳しく説明する。
【0023】
(NTC領域)
図3(a)は、
図2のNTC領域10の拡大図である。
図3(a)に示すように、NTC領域10は、N側基材11と、複数のN側熱伝導粒子12と、複数の熱収縮粒子13と、を有している。N側基材11には、第1材料11a(N側第1材料)と、第2材料11b(N側第2材料)と、が含まれている。N側熱伝導粒子12および熱収縮粒子13は、N側基材11内に混練されている。
【0024】
NTC領域10の厚さ方向(上下方向Z)に沿う断面において、NTC領域10には、交互に配置された複数の結晶性層および複数の非結晶性層が形成されている。結晶性層は主として第1材料11aにより構成され、非結晶性層は主として第2材料11bにより構成されている。結晶性層および非結晶性層はNTC領域10の厚さ方向に延びている。N側熱伝導粒子12および熱収縮粒子13は、主としてNTC領域10の非結晶層(第2材料11b)内に存在している。N側熱伝導粒子12は、NTC領域10の第1面から第2面にかけて、厚さ方向に一直線の列をなすように配されている。なお、この列は一直線状でなくてもよく、途中で枝分かれしていてもよい。
【0025】
(PTC領域)
図3(b)は、断面視したPTC領域20の拡大図である。
図3(b)に示すように、PTC領域20には、P側基材21と、P側熱伝導粒子22と、が含まれている。P側基材21には、第1材料21a(P側第1材料)と、第2材料21b(P側第2材料)と、が含まれている。P側熱伝導粒子22は、P側基材21内に混練されている。
【0026】
PTC領域20の厚さ方向に沿う断面において、PTC領域20には、交互に配置された複数の結晶性層および複数の非結晶性層が形成されている。結晶性層は主として第1材料21aにより構成され、非結晶性層は主として第2材料21bにより構成されている。結晶性層および非結晶性層はPTC領域20の厚さ方向に延びている。P側熱伝導粒子22は、主としてPTC領域20の非結晶層(第2材料21b)内に存在している。P側熱伝導粒子22は、PTC領域20の厚さ方向に一直線の列をなすように配されている。なお、この列は一直線状でなくてもよく、途中で枝分かれしていてもよい。
【0027】
(熱伝導粒子)
熱伝導粒子12、22は、基材11、21よりも熱伝導率の高い材質により形成されている。熱伝導粒子12、22の構成としては、
図4に示すようなものが挙げられる。
図4の例では、熱伝導粒子12、22は、導電性の磁性体粒子Mと、磁性体粒子Mを覆う被覆Cとを有する。
【0028】
磁性体粒子Mは、例えばニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe)のうち1または2以上を含む磁性材料から構成されている。磁性材料は金属であることが好ましい。特に、NiまたはNi合金は、導電性および耐食性に優れた磁性材料であるため、磁性体粒子Mの材質として好適である。
【0029】
図4に示すように、磁性体粒子Mの粒子本体の外表面には、複数の突起が形成されていてもよい。突起は先細り形状、すなわち外表面から離れるほど幅が小さく狭くなる形状(例えば多角錐状、円錐状などの錐状)であることが好ましい。磁性体粒子Mが突起を有する場合、N側熱伝導粒子12同士またはP側熱伝導粒子22同士が互いに接触する際の接触点が多くなる。これにより、NTC領域10またはPTC領域20内の熱伝導経路の熱伝導性および導電性が高められる。なお、鋭利な先細り形状の複数の突起を有する粒子を「スパイク状粒子」という。磁性体粒子Mはスパイク状粒子であることがより好ましい。
【0030】
磁性体粒子Mは、例えば、1個の球形の粒子本体の表面に、鋭利な複数の突起(通常は10個〜500個)が形成されている。各突起の高さは、粒子本体の粒径に対して概ね1/3〜1/500である。熱伝導粒子12,22は、例えば、カルボニル金属粉(純度99.99%のニッケルカルボニル)を原料として、Ni(CO)
4→Ni+4COという反応に従って得られる(特開平5−47503号公報を参照)。
【0031】
磁性体粒子Mの平均粒径は、例えば0.2〜10μm(好ましくは1〜3μm)である。磁性体粒子Mの粒径が0.2μmより小さい場合、熱整流性基板2Aの製造工程において磁場をかけても、熱伝導粒子12,22に作用する磁力が小さいことで熱伝導粒子12,22が移動しにくくなる。また、磁性体粒子Mの粒径が10μmより大きい場合、製造工程において磁場をかけても、例えば液状の基材11、21内での流動抵抗が高くなることで、熱伝導粒子12,22が移動しにくくなる。これに対して、磁性体粒子Mの平均粒径が上記範囲であれば、熱伝導粒子12,22は磁場中で移動しやすくなり、膜の厚さ方向に列をなす配置をとりやすくなる。
【0032】
磁性体粒子Mの平均粒径は、例えばレーザー回折散乱法に基づく粒度分布測定装置によって測定することができる。平均粒径としては、例えば50%累積粒子径(質量基準または体積基準)、最頻粒子径などを採用できる。平均粒径は、粒子を観察した画像に基づく十分な数(例えば100以上)の粒子についての測定値の平均値を採用してもよい。粒子の画像は、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて得られた観察画像である。非球形の粒子の粒径としては、例えば観察画像における最長径と最短径の平均値を採用してもよい。
【0033】
被覆Cは、磁性体粒子Mの外表面を覆っている。被覆Cは、例えば炭素材によって形成される。炭素材としては、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなどが挙げられる。特に、導電性および耐久性に優れた材料であるグラフェンが被覆Cの材質として好適である。被覆Cの厚さは、例えば1〜100nm(好ましくは10〜20nm)である。
【0034】
被覆Cは、磁性体粒子Mを保護する機能を有する。例えば熱整流性基板2Aが液剤などに接触した場合に、被覆Cによって液剤から磁性体粒子Mを保護することができる。また、被覆Cには、熱伝導粒子12,22同士の接触面積を大きくし、NTC領域10またはPTC領域20の熱抵抗および電気抵抗を小さくする機能も有する。
【0035】
熱伝導粒子12,22の平均粒径は、例えば0.2〜10μm(好ましくは1〜3μm)である。熱伝導粒子12,22の平均粒径および最大粒径は、NTC領域10またはPTC領域20の厚さより小さい。熱伝導粒子12,22に、NTC領域10またはPTC領域20の厚さ方向に圧縮歪みが加えられていてもよい。
N側熱伝導粒子12およびP側熱伝導粒子22の材質、構造などは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
(熱収縮粒子)
熱収縮粒子13は、負の熱膨張係数を有する材質により形成され、温度の上昇に伴って収縮する。熱収縮粒子13の材質としては、セラミックスが挙げられる。より具体的には、熱収縮粒子13として、Mn
3XN(X:Zn、Cu、Ge、Ga、Snなど)により表されるマンガン窒化物を用いることができる。なお、XはZn(亜鉛)、Cu(銅)、Ge(ゲルマニウム)、Ga(ガリウム)、Sn(スズ)などのうちの1つであってもよいし、これらのうち2つ以上であってもよい。例えば、Mn
3Zn
XCu
YNにより表されるマンガン窒化物を熱収縮粒子13として用いてもよい。
熱収縮粒子13は、N側熱伝導粒子12とともに、N側基材11の第2材料11b内に主として配されている。
なお、図示は省略するが、熱収縮粒子13にも熱伝導粒子12,22と同様の被覆Cを設けてもよい。この場合、被覆Cによって熱収縮粒子13を保護することができる。
【0037】
(第1材料)
第1材料11a、21aは結晶性の樹脂材料である。第1材料11a、21aは、絶縁性材料である。第1材料11a、21aは、第2材料11b、21bに比べて熱膨張係数が高いことが好ましい。第1材料11a、21aは、液状硬化性の材料(例えば熱可塑性の材料)であることが好ましい。
第1材料11a、21aとしては、ポリエチレンを好適に用いることができる。ポリエチレンの脆化温度は−80〜−20℃で、ガラス転移点は−20〜−120℃である。
【0038】
なお、第1材料11a、21aとして、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等を用いてもよい。第1材料11a、21aは、これらのうち1つを単独で用いてもよいし、2つ以上を混合して用いてもよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(融点120〜140℃)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(融点95〜130℃)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリエチレン類;アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン類(融点100〜140℃);ポリブテン等を挙げることができる。ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン610等を挙げることができる。
【0039】
(第2材料)
第2材料11b、21bは、非結晶性の樹脂材料である。第2材料11b、21bは、絶縁性材料である。
第2材料11b、21bとしては、例えばパラフィン類を好適に用いることができる。なお、第2材料11b、21bとしてポリスチレン樹脂、または非結晶性ポリエチレン等を用いてもよい。第2材料11b、21bは、これらのうち1つを単独で用いてもよいし、2つ以上を混合して用いてもよい。
第2材料11b、21bは、液状硬化性の材料(例えば熱可塑性の材料)であることが好ましい。第2材料11b、21bは、第1材料11a、21aに比べて分子量が低いことが好ましい。
【0040】
第2材料11b、21bの融点は、第1材料11a、21aの融点より低い。第2材料11b、21bの融点は、例えば54〜58℃とされる。第2材料11b、21bの融点が54℃以上であると、第2材料11b、21bの過度の流動化を抑えることができる。そのため、第2材料11b、21bがNTC領域10またはPTC領域20の表面付近に流出することによって、熱伝導粒子12、22の列形成が阻害されるのを防ぐことができる。第2材料11b、21bの融点が58℃以下であると、第2材料11b、21bに適度な流動性を与え、第2材料11b、21b(非結晶性相)における熱伝導粒子12,22の列形成を促すことができる。
【0041】
(熱電変換モジュール)
図1に示すように、熱電変換モジュール3は、NTC領域10の上に配置された少なくとも1つの電極31(N側電極)と、PTC領域20の上に配置された少なくとも1つの電極32(P側電極)と、少なくとも1つのN型熱電素子34と、少なくとも1つのP型熱電素子33と、を有している。本実施形態では、熱電変換モジュール3は、電極31、32、N型熱電素子34、およびP型熱電素子33をそれぞれ複数有している。
【0042】
N型熱電素子34およびP型熱電素子33は、電極31、32によって直列接続されている。N型熱電素子34の一方の端部には電極31が配置され、他方の端部には電極32が配置されている。P型熱電素子33の一方の端部には電極31が配置され、他方の端部には電極32が配置されている。N型熱電素子34およびP型熱電素子33は、平面視においてNTC領域10とPTC領域20との境界を跨ぐように配置されている。
【0043】
熱電変換モジュール3は、電極31と電極32との間の温度差によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されている。N型熱電素子34およびP型熱電素子33の材質は、特に限定されないが、例えばビスマス・テルル系材料、鉛・テルル系材料、シリコン・ゲルマニウム系材料などを用いることができる。より効率よく発電するため、電極31と電極32との間の温度差はなるべく大きいことが好ましい。
【0044】
(製造方法)
次に、上記のような熱整流性基板2Aの製造方法の一例について説明する。
本実施形態では、NTC領域10となるNTC膜F1、およびPTC領域20となるPTC膜F2を別個に作成し、これらを組み合わせることで熱整流性基板2Aを得る(
図6参照)。このため、はじめにNTC膜F1およびPTC膜F2の製造方法を説明する。
【0045】
まず、磁性体粒子Mの表面に、例えばCVD等の気相蒸着法、アルコール液相法、液相放電法等の液相成長法などにより被覆Cを形成する。これにより、
図4に示すような熱伝導粒子12,22が得られる。
【0046】
次に、N側基材11と熱伝導粒子12と熱収縮粒子13とを混練して、
図5(a)に示すようなN側混練物10Aを得る(N側混練工程)。N側混練工程における混練の方法は、例えば各材料を加熱・混合して、N側基材11が未硬化のままシート状に成形する。なお、N側基材11が第1材料11aおよび第2材料11bを含む場合には、これらの材料11a、11bを熱伝導粒子12および熱収縮粒子13と混練する。N側基材11が3以上の材料により構成される場合も同様である。
【0047】
また、P側基材21と熱伝導粒子22とを混練してP側混練物を得る(P側混練工程)。P側混練工程における混練の方法は、例えば各材料を混合して、未硬化のままシート状に成形する。なお、P側基材21が第1材料21aおよび第2材料21bを含む場合には、これらの材料21a、21bを熱伝導粒子22と混練する。P側基材21が3以上の材料により構成される場合も同様である。
【0048】
N側混練工程の時点では、
図5(a)に示すように、熱伝導粒子12および熱収縮粒子13はN側基材11内に均一に分散されている。また、N側基材11は、第1材料11aおよび第2材料11bが混ざり合った状態となっている。
P側混練工程の時点では、熱伝導粒子22はP側基材21内に均一に分散されている。図示は省略するが、P側基材21は、
図5(a)におけるN側基材11と同様に、第1材料21aおよび第2材料21bが混ざり合った状態となっている。
【0049】
次に、N側混練物のシートをその厚さ方向に圧縮して薄膜状にすることで、NTC膜F1が得られる(NTC成膜工程)。
また、P側混練物のシートをその厚さ方向に圧縮して薄膜状にすることで、PTC膜F2が得られる(PTC成膜工程)。
【0050】
次に、NTC膜F1およびPTC膜F2を加熱し、N側基材11およびP側基材21を溶融させる。加熱により流動化したN側基材11またはP側基材21中では、熱伝導粒子12,22および熱収縮粒子13が移動可能となる。
ここで、第1材料11a、21aの融点は第2材料11b、21bの融点より高い。このため、溶融したN側基材11およびP側基材21が硬化する過程において、第1材料11a、21aは第2材料11b、21bより先に流動性が低下し、集合して結晶性相を形成する(
図5(b)参照)。このとき、第2材料11b、21bでは分子鎖の動きが束縛されず、第2材料11b、21bに熱伝導粒子12,22および熱収縮粒子13が移入しやすい。その一方で、第1材料11a、21aでは分子鎖間に働く引力が強く、第1材料11a、21aには熱伝導粒子12,22および熱収縮粒子13が移入しにくい。このため、熱伝導粒子12、22および熱収縮粒子13は、主として第2材料11b、21b内に安定して存在することになる。
【0051】
次に、NTC膜F1をN側基材11の融点以上に加熱した状態で、NTC膜F1に磁界をかける。また、PTC膜F2をP側基材21の融点以上に加熱した状態で、PTC膜F2に磁界をかける(磁気整列工程)。ここで、N側基材11またはP側基材21が、複数種類の材料によって構成されている場合には、最も融点の高い材料における融点を、「N側基材11およびP側基材21の融点」と定義する。
【0052】
磁界をかける際は、例えば
図5(b)に示すように、N側混練物10A(またはP側混練物)のシートの一方の面に磁石のS極側を近づけ、他方の面に磁石のN極側を近づける。熱伝導粒子12、22は磁性を有しているため、磁場によって、少なくとも一部の熱伝導粒子12,22は、シートの厚さ方向に列をなすように配置される。特に、低融点で流動性の高い第2材料11b、21b内に存在する熱伝導粒子12、22は、容易に厚さ方向に整列される。これにより、N側混練物10Aについては
図5(c)に示すように、熱伝導粒子12が第2材料11b内において厚さ方向に整列した状態となる。図示は省略するが、P側混練物も同様である。
【0053】
次に、NTC膜F1またはPTC膜F2を徐冷して硬化させる。
なお、NTC膜F1については、徐冷の際に熱収縮粒子13が膨張することで、その周囲の熱伝導粒子12同士の間隔が広がる(
図5(d)参照)。
【0054】
次に、NTC膜F1およびPTC膜F2の形状を、
図6(a)に示すような矩形状(長方形状)に整える。
次に、
図6(b)に示すように、NTC膜F1に切り込みを入れて複数のスリットS1を形成する。同様に、PTC膜F2に切り込みを入れて複数のスリットS2を形成する。NTC膜F1のスリットS1同士の間隔と、PTC膜F2のスリットS2同士の間隔とは、略同等であることが好ましい。
【0055】
次に、スリットS1をスリットS2に差し込むようにして、NTC膜F1とPTC膜F2とを組み合わせる。このとき、膜の厚さ方向から見て、NTC膜F1とPTC膜F2とが交互に並ぶようにする。この状態で、NTC膜F1およびPTC膜F2を熱圧着することで、NTC膜F1およびPTC膜F2が一体化する(熱圧着工程)。熱圧着は、N側基材11およびP側基材21の融点より高い温度で行う。例えばN側基材11およびP側基材21の第1材料11a、21aがいずれもポリエチレンである場合には、ポリエチレンの融点以上(例えば220℃、4Mpa)で熱圧着を行う。これにより、PTC膜F2およびNTC膜F1をより確実に一体化させて、PTC領域20とNTC領域10との間での熱伝導を確実に行うことができる。
【0056】
次に、
図6(d)に示すように、一体化されたNTC膜F1およびPTC膜F2の両端部を切り落とすことで、熱整流性基板2Aが得られる。
そして、熱整流性基板2Aの上面2a1に熱電変換モジュール3を設けることで、熱電発電装置1Aを製造することができる。
【0057】
なお、上記製造方法における各工程の順序は適宜変更してもよい。例えば、熱圧着工程の後に磁気整列工程を行ってもよい。この場合、熱圧着して熱整流性基板2Aの状態となった後、熱整流性基板2Aの上面2a1および下面2b1のうち一方にS極を近づけ、他方にN極を近づけることで、NTC領域10内およびPTC領域20内の熱伝導粒子12、22を同時に整列させることができる。
【0058】
(作用)
次に、以上のように構成された熱整流性基板2Aおよび熱電発電装置1Aの作用について説明する。
【0059】
図7(a)は、温度変化に応じたPTC領域20(PTC膜F2)の状態および熱伝導性を示す模式図である。
図7(a)中のグラフの横軸は温度を示し、縦軸は熱伝導率を示している。
図7(a)に示すように、温度が低い場合、PTC領域20に含まれる熱伝導粒子22同士が互いに接触し、PTC領域20の厚さ方向に連なって列をなしている。これにより、熱伝導粒子22を伝って熱が伝わりやすい状態となっている。以下、熱伝導粒子22が連なった列をP側熱伝導経路という。
【0060】
また
図7(a)に示すように、温度が高くなると、PTC領域20の全体が熱膨張する。これにより、PTC領域20に含まれる熱伝導粒子22が互いに離間し、P側熱伝導経路が崩れる。したがって、温度が高くなるとPTC領域20の熱伝導率は小さくなる。
このように、PTC領域20の熱伝導率は、低温の場合に大きくなり、高温の場合に小さくなる。換言すると、PTC領域20の熱抵抗は、低温の場合に小さくなり、高温の場合に大きくなる。
【0061】
図7(b)は、温度変化に応じたNTC領域10の状態および熱伝導性を示す模式図である。
図7(b)中のグラフの横軸は温度を示し、縦軸は熱伝導率を示している。
図7(b)に示すように、温度が高い場合、NTC領域10に含まれる熱伝導粒子12同士が互いに接触し、NTC領域10の厚さ方向に連なって列をなしている。これにより、熱伝導粒子12を伝って熱が伝わりやすい状態となっている。以下、熱伝導粒子12が連なった列をN側熱伝導経路という。
【0062】
また
図7(b)に示すように、温度が低くなると、熱収縮粒子13が膨張する。これにより、熱収縮粒子13の周囲に存在する熱伝導粒子12同士が互いに離間し、N側熱伝導経路が崩れる。したがって、温度が低くなるとNTC領域10の熱伝導率は小さくなる。
このように、NTC領域10の熱伝導率は、高温の場合に大きくなり、低温の場合に小さくなる。換言すると、NTC領域10の熱抵抗は、高温の場合に小さくなり、低温の場合に大きくなる。
【0063】
図7(a)に示すように、理想的にはある温度(境界温度T)を境として、PTC領域20内で熱伝導粒子22が連なった状態と離れた状態とが変化する。したがって、境界温度Tより低温の場合は熱伝導率が大きくなり(K
High)、境界温度Tより高温の場合には熱伝導率が小さくなる(K
Low)。
図7(b)に示すように、理想的には境界温度Tを境として、NTC領域10内で熱伝導粒子12が離れた状態と連なった状態とが変化する。したがって、境界温度Tより低温の場合は熱伝導率が小さくなり(K
Low)、境界温度Tより高温の場合は熱伝導率が大きくなる(K
High)。
【0064】
なお、
図7(a)、(b)では熱伝導率が段階的に変化しているが、実際には熱伝導粒子12、22の列のうち、連なっている部分の割合と離れている部分の割合とが温度に応じて徐々に変化する。したがって、PTC領域20は温度の上昇に伴って次第に熱伝導率が下がっていき、NTC領域10は温度の上昇に伴って次第に熱伝導率が上がっていく。
【0065】
上記の通り、PTC領域20およびNTC領域10は逆の熱的特性を有している。このようなPTC領域20およびNTC領域10を重ねることで、熱整流性基板2Aの熱整流性を実現することができる。以下、
図8(a)、(b)を用いてより詳しく説明する。
【0066】
図8(a)は、熱整流性基板2AにおけるNTC領域10側の表面(N側表面P1)に熱源Hを接触させた場合の模式図である。
図8(b)は、熱整流性基板2AにおけるPTC領域20側の表面(P側表面P2)に熱源Hを接触させた場合の模式図である。
図8(a)、(b)中に記載の矢印は熱流の方向を示している。つまり、
図8(a)ではN側表面P1からP側表面P2に向けて熱が移動し、
図8(b)ではP側表面P2からN側表面P1に向けて熱が移動する。このように熱流の方向が逆であるため、熱整流性基板2A内の温度勾配も、
図8(a)と
図8(b)とで逆になる。
【0067】
図9(a)は
図8(a)に対応する熱整流性基板2Aの熱伝導率を示し、
図9(b)は
図9(b)に対応する熱整流性基板2Aの熱伝導率を示している。
図9(a)に示すように、N側表面P1に熱源Hを接触させた場合、熱整流性基板2A内の温度分布は、N側表面P1からP側表面P2に向かうに従って温度が小さくなるような勾配となる。
図9(a)ではこの温度分布を模式的に表しており、N側表面P1の温度をT
Highと表し、P側表面P2の温度をT
Lowと表している。
【0068】
ここで、例えば
図7(a)、(b)に示すような理想的な熱特性を有するPTC領域20およびNTC領域10を用いた熱整流性基板2Aにおいて、PTC領域20とNTC領域10との境界面の温度が境界温度Tとなった場合を考える。このとき、NTC領域10の温度が境界温度Tより高く、PTC領域20の温度が境界温度Tより低くなる。したがって、NTC領域10およびPTC領域20の双方とも、熱伝導率が大きい(K
High)状態になる。
【0069】
一方、
図9(b)に示すように、P側表面P2に熱源Hを接触させた場合、熱整流性基板2A内の温度分布は、P側表面P2からN側表面P1に向かうに従って温度が小さくなるような勾配となる。
図9(b)ではこの温度分布を模式的に表しており、P側表面P2の温度をT
Highと表し、N側表面P1の温度をT
Lowと表している。
この場合も、
図9(a)の場合と同様に考えると、NTC領域10およびPTC領域20の双方とも、熱伝導率が小さい(K
Low)状態になる。
【0070】
このように、熱整流性基板2Aでは、NTC領域10からPTC領域20に向けた熱伝導率は比較的大きく、PTC領域20からNTC領域10に向けた熱伝導率は比較的小さくなる。そして、熱整流性基板2Aは、平面視および断面視の双方において、NTC領域10およびPTC領域20が交互に配置されている。この構成により、熱整流性基板2Aの下面2b1に熱を加えた場合、上面2a1の面内に温度差が生じる。具体的には、上面2a1内におけるNTC領域10が、上面2a1内におけるPTC領域20よりも低温となる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の熱整流性基板2Aによれば、NTC領域10に含まれる熱収縮粒子13は、温度の上昇に伴って収縮する。このため、熱収縮粒子13の周囲のN側熱伝導粒子12同士の間隔が小さくなり、NTC領域10の熱伝導率が大きくなる。一方、PTC領域20では、温度の上昇に伴ってP側基材21が膨張し、P側熱伝導粒子22同士の間隔が大きくなる。このため、PTC領域20の熱伝導率が小さくなる。このようなPTC領域20およびNTC領域10を、平面視および断面視で交互に配置することで、熱整流性基板2Aの一方の面を加熱した時に、他方の面内で温度差を生じさせることができる。
【0072】
そして熱整流性基板2Aは、樹脂であるP側基材21およびN側基材11を主体として形成されているため、製造が比較的容易であり、かつ全体として可撓性を持たせることができる。熱整流性基板2Aが可撓性を有することで、複雑な形状の熱源にも取り付けることが可能となり、より幅広い用途に熱整流性基板2Aを適用することができる。
また、原料としてレアメタルなどを用いる必要が無いため、比較的低コストで熱整流性基板2Aを製造することができる。
【0073】
また、平面視において、複数のPTC領域20および複数のNTC領域10は、第1方向Xに長い帯状に形成されるとともに、第2方向Yにおいて交互に並べて配置されている。
この構成により、例えば
図6(a)〜(d)に示すように、PTC領域20となるPTC膜F2およびNTC領域10となるNTC膜F1を別個に作成し、各膜に切り込みを入れて互いに組み合わせることで、熱整流性基板2Aを比較的容易に製造することができる。
【0074】
また、PTC膜F2およびNTC膜F1を組み合わせることで熱整流性基板2Aが構成されている。このため、薄膜状で大きな表面積を持つ熱整流性基板2Aを実現することが可能となり、より幅広い用途に熱整流性基板2Aを応用することが可能となる。
【0075】
また、熱伝導粒子12、22が磁性を有しているため、熱整流性基板2Aを製造する際に磁界をかけることで、これらの熱伝導粒子12、22を熱整流性基板2Aの厚さ方向に配列させることができる。そして、熱伝導粒子12,22が熱整流性基板2Aの厚さ方向に配列されることで、PTC領域20の厚さ方向におけるPTC特性、およびNTC領域10の厚さ方向におけるNTC特性が安定する。したがって、熱整流性基板2Aの熱特性が安定する。
【0076】
また、N側基材11が、第1材料11aと、第1材料11aよりも融点が低い第2材料11bとを含んでいる。そして、第1材料11aは結晶性の樹脂材料であり、第2材料11bは非結晶性の樹脂材料である。このため、結晶性の樹脂材料である第1材料11aによってNTC領域10の機械的強度を確保することができる。そして、NTC領域10を加熱して磁界をかけた際に、結晶性の樹脂材料である第1材料11aには粒子12、13が入り込みにくい一方で、非結晶性の樹脂材料である第2材料11bには粒子12、13が入り込みやすい。したがって、第2材料11b中に安定して熱伝導粒子12を膜厚方向に配列させることができる。この作用効果は、PTC領域20についても同様に得られる。
【0077】
また、本実施形態の熱電発電装置1Aは、熱整流性基板2Aと、熱電変換モジュール3と、を備えている。そして熱電変換モジュール3は、平面視において、NTC領域10とPTC領域20との境界を跨ぐように配置されたP型熱電素子33およびN型熱電素子34を有している。この構成により、熱電発電装置1Aは、PTC領域20とNTC領域10との間の温度差によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、熱整流性基板の構成が第1実施形態と異なっている。
【0079】
図10は、本実施形態の熱電発電装置1Bの平面図である。
図10に示すように熱電発電装置1Bは、熱整流性基板2Bと、熱電変換モジュール3とを備えている。
熱整流性基板2Bは、複数のNTC領域10および複数のPTC領域20を有している。本実施形態では、
図10に示す平面視において、NTC領域10およびPTC領域20が第1方向Xおよび第2方向Yの双方で交互に並べて配置されている。
図示は省略するが、本実施形態の熱整流性基板2Bの断面形状は、
図2に示す第1実施形態の断面形状と同様である。つまり、熱整流性基板2Bは、断面視においてNTC領域10およびPTC領域20が交互に並べて配置されている。また、熱整流性基板2Bは上層部と下層部とを有し、上層部に含まれるNTC領域10の下方にはPTC領域20が配置され、上層部に含まれるPTC領域20の下方にはNTC領域10が配置されている。
【0080】
図11(a)〜(c)は、本実施形態における熱整流性基板2Bの製造方法の一例を示す図である。なお、NTC膜F1およびPTC膜F2を得るまでの工程は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態では、
図11(a)、(b)に示すように、複数の帯状のNTC膜F1およびPTC膜F2を用意する。各膜F1、F2は、当初から帯状に形成されていてもよい。あるいは、矩形状に形成された膜F1,F2を、帯状に裁断加工してもよい。
【0081】
次に、
図11(c)に示すように、複数の帯状の膜F1、F2を編む。この状態で膜F1、F2を熱圧着して一体化させることで、熱整流性基板2Bが得られる。なお、第1実施形態と同様に、各工程の順序を入れ替えてもよい。
そして、熱整流性基板2B上に熱電変換モジュール3を設けることで、熱電発電装置1Bを製造することができる。
本実施形態の場合も、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0083】
本実施例では、NTC領域10およびPTC領域20を
図12に示すように断面視で交互に配置し、一方の面にヒーターHを設けた場合の、ヒーターHと反対側の面内の温度差を確認した。
第1材料11a、21aとして結晶性ポリエチレン(アズワン社製、結晶性HDPEシート:型番6−619−01、JIS K 6760に基づくビカット軟化温度:124℃)を用いた。第2材料11b、21bとして非結晶性ポリエチレン(住友化学社製、エクセレン(登録商標)、型番:VL−100、JIS K 6760に基づくビカット軟化温度:70℃)を用いた。熱伝導粒子12、22として、スパイク状のNi粒子の粉末(ニューメタルス・エンド・ケミカルス・コーポレーション社製、粒径1〜2μm)を用いた。熱収縮粒子13として、組成Mn−Sn−Zn−Nのマンガン窒化物(株式会社高純度化学研究所製、Smartec(登録商標)シリーズ、Smartec−H)の粉末を、乳鉢で粉砕後にふるいを用いて粒径20μm以下に分粒した。
【0084】
N側基材11およびP側基材21ともに、上記結晶性ポリエチレン(第1材料11a、21a)と上記非結晶性ポリエチレン(第2材料11b、21b)を同体積混練した。N側基材11をN側熱伝導粒子12および熱収縮粒子13の粉体とともに溶融混練し、P側基材21をP側熱伝導粒子22の粉体とともに溶融混練した。NTC膜F1は、N側熱伝導粒子12(Ni)の体積密度を5Vol.%とし、熱収縮粒子13の体積密度を5Vol.%とした。PTC膜F2は、P側熱伝導粒子22(Ni)の体積密度を5Vol.%とした。
【0085】
それぞれを溶融混練後にホットプレスを用いて薄膜化し、NTC膜F1およびPTC膜F2を得た。ホットプレスの際にスペーサーを用いることで、NTC膜F1およびPTC膜F2の厚さはそれぞれ150μmとした。NTC膜F1およびPTC膜F2を組み合わせて、第1材料11a、21a(結晶性ポリエチレン)の溶融温度より高い温度(220℃)で熱圧着した後、第1材料11a、21a(結晶性ポリエチレン)の溶融温度より高い温度(220℃)で加熱しながら、膜内に一様に0.2Tの磁力(吸着力14.7N)を印加して磁気整列を行った。徐冷は、NTC膜F1およびPTC膜F2が室温となるまで、自然空冷により行った。これにより、厚さ約300μmの薄膜状の熱整流性基板(
図12)を得た。
【0086】
図12に示すように、熱整流性基板の一方の面にヒーターHを設けた。以下、ヒーターHと反対側の面における、PTC領域20の表面をP側表面P3といい、NTC領域10の表面をN側表面P4という。
P側表面P3およびN側表面P4にそれぞれ熱電対を設けて温度を測定しながら、ヒーターHの温度を変化させた結果を
図13に示す。
【0087】
図13における「NTC→PTC(P3)」のデータは、P側表面P3の温度測定結果を示している。また、「PTC→NTC(P4)」のデータは、N側表面P4の温度測定結果を示している。
図13に示すように、P側表面P3は、N側表面P4よりも温度が高くなっている。これは、NTC領域10からPTC領域20に向けて熱が移動する際の熱抵抗が、PTC領域20からNTC領域10に向けて熱が移動する際の熱抵抗よりも小さいためである。
このように、本実施例の熱整流性基板によれば、ヒーターHと反対側の面内で温度差を生じさせることができた。
【0088】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0089】
例えば前記第1、第2実施形態では、N側基材11およびP側基材21がそれぞれ2種類の材料によって形成されていたが、基材11、21の構成は適宜変更可能である。例えば1種類の樹脂材料によってN側基材11およびP側基材21を構成してもよい。この場合でも、N側基材11およびP側基材21を加熱して流動可能な状態で磁界をかけることで、熱伝導粒子12、22を膜厚方向に整列させることができる。
【0090】
また、前記第1、第2実施形態では熱伝導粒子12、22を膜厚方向に整列させたが、このような整列を行わなくても、熱による膨張・収縮によって熱伝導粒子12、22同士の間隔を変化させることで、NTC特性またはPTC特性をある程度実現することが可能である。したがって、前記実施形態の磁気整列工程は必須ではない。
【0091】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【解決手段】熱整流性基板2Aは、複数の薄膜状のPTC領域20と複数の薄膜状のNTC領域10とを備える。平面視および断面視において、複数のPTC領域20および複数のNTC領域10は交互に並べて配置されている。PTC領域20には、P側基材と、P側基材内に配された複数のP側熱伝導粒子とが含まれる。複数のNTC領域には、N側基材と、N側基材内に配された複数のN側熱伝導粒子および複数の熱収縮粒子とが含まれ、複数の熱収縮粒子は温度の上昇に伴って収縮する。