特許第6492213号(P6492213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6492213
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20190318BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B62D3/12 501B
   F16H19/04 G
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-106341(P2018-106341)
(22)【出願日】2018年6月1日
【審査請求日】2018年6月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】久野 真司
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234039(JP,A)
【文献】 特開2006−312400(JP,A)
【文献】 実開昭55−144170(JP,U)
【文献】 実開昭63−065566(JP,U)
【文献】 実開昭58−142179(JP,U)
【文献】 実開昭55−120565(JP,U)
【文献】 特開平10−217984(JP,A)
【文献】 特開平11−078913(JP,A)
【文献】 特開昭58−180377(JP,A)
【文献】 特開2014−184769(JP,A)
【文献】 特開2016−137857(JP,A)
【文献】 特開2016−147591(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0318085(US,A1)
【文献】 米国特許第07487984(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
F16H 19/00 − 37/16
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛み合うラック歯が形成されたラック軸と、前記ラック軸を前記ピニオンギヤに押し付けるためのラックガイドとを備えた操舵装置であって、
前記ラックガイドから見て前記ラック軸とは反対側に配置されるラックガイドキャップと、
前記ラックガイドと前記ラックガイドキャップとの間に介装され、前記ラックガイドを前記ピニオンギヤ側に付勢する第1の弾性部材と
前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面と、前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面との間に介装される第2の弾性部材と、
を備えており、
前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面には、前記ラックガイドの径方向への前記第2の弾性部材の動きを規制する凸部が形成されており、
前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面には、前記凸部に対応する凹部が形成されており、
前記凹部の深さは、前記凸部の高さから、縮みきった状態における前記第2の弾性部材の高さを減じた値よりも大きく、
前記凸部は、前記第2の弾性部材の外周側に形成されていることを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
ピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛み合うラック歯が形成されたラック軸と、前記ラック軸を前記ピニオンギヤに押し付けるためのラックガイドとを備えた操舵装置であって、
前記ラックガイドから見て前記ラック軸とは反対側に配置されるラックガイドキャップと、
前記ラックガイドと前記ラックガイドキャップとの間に介装され、前記ラックガイドを前記ピニオンギヤ側に付勢する第1の弾性部材と
前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面と、前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面との間に介装される第2の弾性部材と、
を備えており、
前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面には、前記ラックガイドの径方向への前記第2の弾性部材の動きを規制する凸部が形成されており、
前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面には、前記凸部に対応する凹部が形成されており、
前記凹部の深さは、前記凸部の高さから、縮みきった状態における前記第2の弾性部材の高さを減じた値よりも大きく、
前記凸部は、前記第2の弾性部材の内周側と外周側との両側に形成されていることを特徴とする操舵装置。
【請求項3】
前記第1の弾性部材は、コイルばねであり、
前記第2の弾性部材はサラバネである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵装置において、ラック軸をピニオンギヤ側に弾性的に押し付けるためのラックガイド機構が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラックガイド機構においては、ラックガイドとラックガイドキャップとの間に介装される弾性部材がハウジングの内壁に接触することによって、製造工程上の不具合が発生し得る。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングの内壁への弾性部材の接触に伴う製造工程上の不具合を発生しない操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明に係る操舵装置は、ピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛み合うラック歯が形成されたラック軸と、前記ラック軸を前記ピニオンギヤに押し付けるためのラックガイドとを備えた操舵装置であって、前記ラックガイドから見て前記ラック軸とは反対側に配置されるラックガイドキャップと、前記ラックガイドと前記ラックガイドキャップとの間に介装され、前記ラックガイドを前記ピニオンギヤ側に付勢する第1の弾性部材と前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面と、前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面との間に介装される第2の弾性部材と、を備えており、前記ラックガイドの前記ラックガイドキャップ側の端面には、前記ラックガイドの径方向への前記第2の弾性部材の動きを規制する凸部が形成されており、前記ラックガイドキャップの前記ラックガイド側の端面には、前記凸部に対応する凹部が形成されており、前記凹部の深さは、前記凸部の高さから、縮みきった状態における前記第2の弾性部材の高さを減じた値よりも大きい操舵装置である。
【0007】
このような構成とすることにより、ハウジングの内壁に第2の弾性部材が接触することを防ぐ事ができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングの内壁への弾性部材の接触に伴う製造工程上の不具合を発生しない操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係るラックガイド機構周辺の構成の一例を示す断面図である。
図3図2の部分拡大図であり、(a)はラックガイドキャップを締付ける前の第2の弾性部材の周囲を示す図であり、(b)はラックガイドキャップを締付けた後の第2の弾性部材の周囲を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係るラックガイド機構の組立の手順の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係るラックガイド機構の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、(a)はラックガイドキャップを締付ける前の第2の弾性部材の周囲を示す図であり、(b)はラックガイドキャップを締付けた後の第2の弾性部材の周囲を示す図である。
図6】本発明の実施形態3に係るラックガイド機構の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、(a)はラックガイドキャップを締付ける前の第2の弾性部材の周囲を示す図であり、(b)はラックガイドキャップを締付けた後の第2の弾性部材の周囲を示す図である。
図7】本発明の実施形態4に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る操舵装置について、図1〜4を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態1に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である、図1に示すように、操舵装置1は、運転者による操舵操作を受け付ける操舵部10、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400を転舵する転舵部20、及び制御部(図1において不図示)を備えている。
【0012】
なお、以下に説明する操舵装置1では、モータでアシスト力を発揮させる電動パワーステアリングシステム(以下、EPSという)を採用しているが、これは本実施形態を限定するものではなく、(1)操舵部10と転舵部20との間のトルク伝達経路を機械的に接続又は遮断することが可能であり、(2)前記トルク伝達経路が遮断された状態において、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400の転舵角を電気的に制御するステアバイワイヤ方式を採用してもよい。
【0013】
(操舵部10)
図1に示すように、操舵部10は、操舵部材102、ステアリングシャフト104、第1の自在継手106、及び中間シャフト108を備えており、操舵部材102、ステアリングシャフト104、及び中間シャフト108は、互いにトルク伝達可能に接続されている。ここで、「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが一体的に成形されている場合、一方の部材に対して他方の部材が直接的又は間接的に固定されている場合、及び、一方の部材と他方の部材とが継手部材等を介して連動するよう接続されている場合を少なくとも含む。
【0014】
本実施形態においては、ステアリングシャフト104の上端は、操舵部材102に固定され、操舵部材102と一体的に回転する。また、ステアリングシャフト104の下端と、中間シャフト108の上端とは、第1の自在継手106を介して互いに連動するように接続されている。
【0015】
なお、「上端」とは、運転者の操舵操作に応じた操舵力の伝達経路において上流側の端部(すなわち、入力側の端部)のことを指し、「下端」とは、操舵力の伝達経路において下流側の端部(すなわち、出力側の端部)のことを指す(以下同様)。
【0016】
また、操舵部材102の例として、図1に示すように、円環状のステアリングホイールを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。
【0017】
(転舵部20)
転舵部20は、操舵部10が受け付けた運転者の操舵操作に応じて、車輪400を転舵させるための構成である。
【0018】
図1に示すように、転舵部20は、第2の自在継手(自在継手)202、ピニオンシャフト(入力軸)204、ピニオンギヤ(第1のピニオンギヤ)206、ラック軸208、タイロッド210、ナックルアーム212、ラックガイド機構214、及び転舵力発生部220を備えている。中間シャフト108、ピニオンシャフト204、及びピニオンギヤ206は、互いにトルク伝達可能に接続されている。
【0019】
なお、転舵部20において、転舵力発生部220は必須の構成ではない。また、第2の実施形態にて説明する、他のピニオンギヤ、ラックガイド機構を備えていてもよい。
【0020】
本実施形態では、ピニオンギヤ206は、ピニオンシャフト204の下端に固定され、ピニオンシャフト204と一体的に回転する。中間シャフト108の下端とピニオンシャフト204の上端とは、第2の自在継手202を介して互いに連動するように接続されている。
【0021】
ラック軸208は、ピニオンギヤ206の回転に応じて車輪400を転舵させるための構成であり、ラック軸208には、ピニオンギヤ206に噛み合うラック歯(図示せず)が形成されている。
【0022】
上記のように構成された操舵装置1では、ピニオンギヤ206が、運転者が操舵操作する操舵部材102に対してトルク伝達可能に接続されている。詳細には、運転者が操舵部材102を介した操舵操作を行うと、ピニオンギヤ206が回転し、ラック軸208の軸方向に沿って、ラック軸208が変位する。これにより、ラック軸208の両端に設けられたタイロッド210、及び、タイロッド210に連結されたナックルアーム212を介して、車輪400が転舵される。
【0023】
ラックガイド機構214は、ラック軸208をピニオンギヤ206側に押し付けるための機構である。
【0024】
なお、図1に示す例では、ピニオンシャフト204とラック軸208との間の操舵力の伝達をピニオンギヤ206及びラック歯によって行う構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、ピニオンシャフト204とラック軸208との間の操舵力を伝達できるものであれば、他の構成であってもよい。
【0025】
(ラックガイド機構214)
図2は、本発明の実施形態1に係るラックガイド機構214周辺の構成の一例を示すものであり、ラック軸208の延伸方向が法線方向となる断面による断面図である。
【0026】
ラックガイド機構214は、ラックガイドキャップ(ラックガイドスクリュー)221、ラックガイド222、第1の弾性部材223、第2の弾性部材224、ハウジング225、ロックナット226、ダストプラグ227、及びOリング228を備えている。ハウジング225は、円筒状を呈しており、ラックガイド222、第1の弾性部材223、第2の弾性部材224、及びOリング228を収容する。ハウジング225には、ラックガイド222のラック軸208と対向する側とは反対側において、開口が形成されており、当該開口をラックガイドキャップ221によって封止している。
【0027】
図2に示すように、ラックガイド機構214は、第1の弾性部材223によって、ラック軸208をピニオンギヤ206側に押し付ける。
【0028】
ラックガイド222は、その外形が円柱状を呈しており、ラック軸208をピニオンギヤ206側に押し付ける。ラックガイド222は、例えば、金属製の部品であってもよく、樹脂製の部品であってもよい。ラックガイド222は、ラック軸208と対向する側とは反対側において、ラックガイド222の中心軸を中心とする凹部が形成されており、当該凹部に第1の弾性部材223が収められている。ラックガイドキャップ221は、ラックガイド222がラック軸208に対して付勢されるように、第1の弾性部材223に対して力を印加しつつ、第1の弾性部材223をハウジング225から脱落しないように保持する。また、ラックガイドキャップ221は、ハウジング225の開口を封止するように、ハウジング225に対して螺合されている。ハウジング225に螺合されているラックガイドキャップ221は、ロックナット226によって、ハウジング225に対して相対移動不能に固定されている。
【0029】
ラックガイドキャップ221には、ラックガイドキャップ221の中心軸を中心とする貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、例えば、ラックガイド機構214を調整するために用いられる。ダストプラグ227は、ラックガイドキャップ221の貫通孔を封止する。ラックガイド機構214は、ダストプラグ227によって、ラックガイドキャップ221の貫通孔を封止することにより、ハウジング225内に塵や埃が混入することを防ぐ事ができる。
【0030】
ラックガイド222には、ラックガイド222の外周に沿って2本の凹部が形成されており、当該凹部にはOリング228が嵌合している。Oリング228を当該凹部に嵌合することによって、ハウジング225の内周と、ラックガイド222の外周との間の間隔を好適に保持することができる。これにより、ラックガイド222がハウジング225内を摺動したとしても、ラックガイド222とハウジング225との間に過度な摩擦が生じることがない。
【0031】
第2の弾性部材224は、ラックガイド222のラックガイドキャップ221側の端面と、ラックガイドキャップ221のラックガイド222側の端面との間に介装されている。第2の弾性部材224を介装することにより、ラックガイド機構214は、ラックガイドのがたつきを抑制することができる。また、第2の弾性部材224を介装することにより、ラックガイド機構214は、ラックガイドキャップ221とラックガイド222との強衝突を抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態において、第1の弾性部材223及び第2の弾性部材224は特に限定されておらず、第1の弾性部材223としては、例えば、コイルばね等が挙げられ、第2の弾性部材224としては、例えば、サラバネ等が挙げられる。
【0033】
図3は、図2に記載の範囲Aにおける部分拡大図であり、(a)はラックガイドキャップ221を締付ける前の第2の弾性部材224の周囲を示す図であり、(b)はラックガイドキャップ221を締付けた後の第2の弾性部材224の周囲を示す図である。
【0034】
図3に示すように、ラックガイド222のラックガイドキャップ221側の端面には、ラックガイド222の径方向への第2の弾性部材224の動きを規制する凸部222aが形成されている。凸部222aは、凸部222aの高さg2が第2の弾性部材224の凸部222a側の端部の軸方向の高さg4よりも高くなるように形成されている(g2>g4)。本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部222aの高さg2を、上述のようにすることで、第2の弾性部材224のラックガイド222の径方向への動きを確実に規制することができる。このため、ラックガイドキャップ221をハウジング225に対して結合する際に第2の弾性部材224が、ハウジング225に接触することを防ぐ事ができる。これにより、例えば、ラックガイドキャップ221をハウジング225に対して螺合する際に、第2の弾性部材224がハウジング225の螺合面に噛み込むといった不具合を確実に防止することができる。なお、凸部222aは、凸部222aの高さg2が、第2の弾性部材224の自然高g3よりも高くなるように形成されていてもよい(g2>g3)。凸部222aの高さg2が第2の弾性部材224の自然高g3よりも高い場合、例えば、第2の弾性部材224としてサラバネを用いた際に、サラバネの上下の向きをどちらに組んでもサラバネの径方向動きを規制することができる。
【0035】
ここで、凸部222aは、第2の弾性部材224の径方向の動きを規制することができればよく、凸部222aがラックガイド222の当該端面において形成される位置は特に限定されていない。本実施形態においては、凸部222aが第2の弾性部材224の内周側に形成されている場合について説明する。
【0036】
凸部222aは、第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成されてもよいし、第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成されていてもよい。凸部222aが、第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成する場合、当該第2の弾性部材224の内周全体に対応して、ラックガイドキャップ221側から見て円環状に凸部222aを形成すればよい。一方で、凸部222aが、第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成する場合、ラックガイド222側から見て、互いに離れて配置されている複数の円弧として凸部222aを形成すればよい。本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部222aによって、第2の弾性部材224の径方向の動きを規制するため、ハウジング225の内壁に第2の弾性部材224が接触することを防ぐ事ができ、当該接触に伴う製造工程上の不具合を防ぐ事ができる。
【0037】
ラックガイドキャップ221のラックガイド222側の端面には、凸部222aに対応する位置に凹部221aが形成されている。凸部222aが第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成する場合、及び凸部222aが第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成する場合の何れの場合であっても、凹部221aは、凸部222aが第2の弾性部材224の内周全体に対応するように、ラックガイド222側から見て円状に凹部を形成している。
【0038】
また、本実施形態において、凹部221aの深さg1は、凸部222aの高さg2から、縮みきった状態における第2の弾性部材224の高さg5を減じた値よりも大きい(g1>g2−g5)。ここで、「縮みきった状態における第2の弾性部材224の高さg5」とは、第2の弾性部材224と、ラックガイドキャップ221の端面及びラックガイド222の端面の両端面との間の隙間がなくなるように、ラックガイドキャップ221をハウジング225へ螺合した場合の第2の弾性部材224の軸方向の高さを指している。本実施形態に係るラックガイド機構214は、凹部221aの深さg1を上述のようにすることで、凸部222aがラックガイドキャップ221に接触することを防ぐことができる。これにより、ラックガイドキャップ221をハウジング225に確実に結合することができる。また、ラックガイドキャップ221をハウジング225へ螺合する場合に、第2の弾性部材224と、ラックガイドキャップ221の端面及びラックガイド222の端面の両端面との間の隙間をなくすことができる。
【0039】
(ラックガイド機構214の組立方法)
続いて、ラックガイド機構214の組立方法について説明する。図4は、本実施形態1に係るラックガイド機構214の組立の手順の一例を示す図である。以下の手順は、組み立て装置によって自動的に行われてもよいし、作業者によって行われてももよい。
【0040】
(ステップS1)
まず、図4(a)に示すように、ハウジング225にOリング228を嵌合したラックガイド222を挿入する。次に、ラックガイド222の中心軸を中心とする凹部に第1の弾性部材223を配置する。次に、ラックガイド222のラックガイドキャップ221側の端面に第2の弾性部材224を配置する。第2の弾性部材224は、凸部222aによって第2の弾性部材224の径方向の動きが規制されるように配置される。
【0041】
(ステップS2)
次に、図4(b)に示すように、第2の弾性部材224と、ラックガイドキャップ221の端面及びラックガイド222の端面の両端面との間の隙間がなくなるように、ラックガイドキャップ221をハウジング225に螺合する。
【0042】
(ステップS3)
次に、図4(c)に示すように、ラックガイドキャップ221とハウジング225の螺合を緩める。ラックガイドキャップ221のラックガイド222側の端面とラックガイド222のラックガイドキャップ221側の端面との距離が所定のセット長になるまで緩めた後、ロックナット226によってラックガイドキャップ221をハウジング225に対して固定する。
【0043】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る操舵装置について、図5を参照して説明する。
【0044】
図5は、本発明の実施形態2に係るラックガイド機構の一例を模式的に示す部分拡大断面図であり、(a)はラックガイドキャップ321を締付ける前の第2の弾性部材224の周囲を示す図であり、(b)はラックガイドキャップ321を締付けた後の第2の弾性部材224の周囲を示す図である。
【0045】
本実施形態に係るラックガイド機構は、実施形態1に係るラックガイド機構214において、ラックガイドキャップ221及びラックガイド222に代えて、ラックガイドキャップ321及びラックガイド322を備えたものである。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、ラックガイド322のラックガイドキャップ321側の端面には、ラックガイド322の径方向への第2の弾性部材224の動きを規制する凸部322aが形成されている。凸部322aは、凸部322aの高さh2が第2の弾性部材224の凸部322a側の端部の軸方向の高さh4よりも高くなるように形成されている(h2>h4)。本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部322aの高さh2を、上述のようにすることで、第2の弾性部材224のラックガイド322の径方向への動きを確実に規制することができる。このため、ラックガイドキャップ321をハウジング225に対して結合する際に第2の弾性部材224が、ハウジング225に接触することを防ぐ事ができる。これにより、例えば、ラックガイドキャップ321をハウジング225に対して螺合する際に、第2の弾性部材224がハウジング225の螺合面に噛み込むといった不具合を確実に防止することができる。なお、凸部322aは、凸部322aの高さh2が、第2の弾性部材224の自然高h3よりも高くなるように形成されていてもよい(h2>h3)。凸部322aの高さh2が第2の弾性部材224の自然高h3よりも高い場合、例えば、第2の弾性部材224としてサラバネを用いた際に、サラバネの上下の向きをどちらに組んでもサラバネの径方向動きを規制することができる。
【0047】
このため、ラックガイドキャップ321をハウジング225に対して結合する際に第2の弾性部材224が、ハウジング225に接触することを防ぐ事ができる。これにより、例えば、ラックガイドキャップ321をハウジング225に対して螺合する際に、第2の弾性部材224がハウジング225の螺合面に噛み込むといった不具合を確実に防止することができる。また、例えば、第2の弾性部材224としてサラバネを用いた場合、サラバネの上下の向きをどちらに組んでもサラバネの径方向動きを規制することができる。
【0048】
図5に示すように、凸部322aは、第2の弾性部材224の外周側に形成されている。凸部322aは、第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成されてもよいし、第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成されていてもよい。第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成する場合、当該第2の弾性部材224の外周全体に対応して、ラックガイドキャップ321側から見て円環状に凸部322aを形成すればよい。一方で、第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成する場合、ラックガイドキャップ321側から見て、互いに離れて配置されている複数の円弧又は柱状突起として凸部322aを形成すればよい。本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部322aによって、第2の弾性部材224の径方向の動きを規制するため、ハウジング225の内壁に第2の弾性部材224が接触することを防ぐ事ができ、当該接触に伴う製造工程上の不具合を防ぐ事ができる。
【0049】
ラックガイドキャップ321のラックガイド322側の端面には、第1の弾性部材223に対応する位置に凹部321aが形成されている。凹部321aは、ラックガイド322側から見て円状に凹部が形成されている。
【0050】
また、ラックガイドキャップ321のラックガイド322側の端面には、凸部322aに対応する位置に凹部321bが形成されている。凸部322aが第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成する場合、及び凸部322aが第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成する場合の何れの場合であっても、凹部321bは、当該第2の弾性部材224の外周全体に対応するように、ラックガイド322側から見て円環状に凹部が形成されている。
【0051】
凹部321bの深さh1は、凸部322aの高さh2から、縮みきった状態における第2の弾性部材224の高さh5を減じた値よりも大きい(h1>h2−h5)。凹部321bの深さh1を、上述のようにすることで、凸部322aがラックガイドキャップ321のハウジング225への螺合を阻害することがない。換言すれば、凸部322aがラックガイドキャップ321に接触することを防ぐことができるので、ラックガイドキャップ221をハウジング225に確実に結合することができる。また、ラックガイドキャップ321をハウジング225へ螺合する場合に、第2の弾性部材224と、ラックガイドキャップ321の端面及びラックガイド322の端面の両端面との間の隙間をなくすことができる。
【0052】
[実施形態3]
本発明の実施形態3に係る操舵装置について、図6を参照して説明する。
【0053】
図6は、本発明の実施形態2に係るラックガイド機構の一例を模式的に示す部分拡大断面図である。図6(a)及び(b)はラックガイドキャップ421を締付ける前の第2の弾性部材224の周囲を示す図であり、図6(c)はラックガイドキャップ421を締付けた後の第2の弾性部材224の周囲を示す図である。
【0054】
本実施形態に係るラックガイド機構は、実施形態1に係るラックガイド機構214において、ラックガイドキャップ221及びラックガイド222に代えて、ラックガイドキャップ421及びラックガイド422を備えたものである。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図6に示すように、ラックガイド422のラックガイドキャップ421側の端面には、凸部422aが第2の弾性部材224の内周側に形成されており、凸部422bが第2の弾性部材224の外周側に形成されている。凸部422a及び凸部422bは、ラックガイド422の径方向への第2の弾性部材224の動きを規制するように形成されている。
【0056】
第2の弾性部材224の内周側がラックガイド422の凸部422aに当接するように第2の弾性部材224を配置する場合、図6(a)に示すように、凸部422aは、凸部422aの高さi4が、凸部422aに当接する第2の弾性部材224の端部の軸方向の高さi6よりも高くなるように形成されている(i4>i6)。また、凸部422bは、凸部422bの高さi3が、第2の弾性部材224の端部の軸方向の高さi6よりも高くなるように形成されている(i3>i6)。なお、凸部422a及び凸部422bは、凸部422aの高さi4及び凸部422bの高さi3の少なくとも何れか一方を、第2の弾性部材224の自然高i5よりも高くなるように形成されてもよい(i3>i5、i4>i5)。
【0057】
第2の弾性部材224の外周側がラックガイド422の凸部422bに当接するように第2の弾性部材224を配置する場合、図6(b)に示すように、凸部422bは、凸部422bの高さi3が、第2の弾性部材224の端部の軸方向の高さi8よりも高くなるように形成されている(i3>i8)。また、凸部422aは、凸部422aの高さi4が、凸部422aに当接する第2の弾性部材224の端部の軸方向の高さi8よりも高くなるように形成されている(i4>i8)。なお、凸部422a及び凸部422bは、上述のように、凸部422aの高さi4及び凸部422bの高さi3の少なくとも何れか一方を、第2の弾性部材224の自然高i7よりも高くなるように形成されてもよい(i3>i7、i4>i7)。
【0058】
本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部422aの高さi4及び凸部422bの高さi3を、上述のようにすることで、第2の弾性部材224のラックガイド422の径方向への動きを確実に規制することができる。このため、ラックガイドキャップ421をハウジング225に対して結合する際に第2の弾性部材224が、ハウジング225に接触することを防ぐ事ができる。これにより、例えば、ラックガイドキャップ421をハウジング225に対して螺合する際に、第2の弾性部材224がハウジング225の螺合面に噛み込むといった不具合を確実に防止することができる。また、例えば、第2の弾性部材224としてサラバネを用いた場合、サラバネの上下の向きをどちらに組んでもサラバネの径方向動きを規制することができる。
【0059】
このため、ラックガイドキャップ421をハウジング225に対して結合する際に第2の弾性部材224が、ハウジング225に接触することを防ぐ事ができる。これにより、例えば、ラックガイドキャップ421をハウジング225に対して螺合する際に、第2の弾性部材224がハウジング225の螺合面に噛み込むといった不具合を確実に防止することができる。また、例えば、第2の弾性部材224としてサラバネを用いた場合、サラバネの上下の向きをどちらに組んでもサラバネの径方向動きを規制することができる。
【0060】
凸部422aは、第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成されてもよいし、第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成されていてもよい。第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成する場合、当該第2の弾性部材224の内周全体に対応して、ラックガイドキャップ421側から見て円環状に凸部422aを形成すればよい。一方で、第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成する場合、ラックガイドキャップ421側から見て、互いに離れて配置されている複数の円弧又は柱状突起として凸部422aを形成すればよい。
【0061】
凸部422bは、第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成されてもよいし、第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成されていてもよい。第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成する場合、当該第2の弾性部材224の外周全体に対応して、ラックガイドキャップ421側から見て円環状に凸部422bを形成すればよい。一方で、第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成する場合、ラックガイドキャップ421側から見て、互いに離れて配置されている複数の円弧又は柱状突起として凸部422bを形成すればよい。
【0062】
本実施形態に係るラックガイド機構214は、凸部422a及び422bによって、第2の弾性部材224の径方向の動きを規制するため、ハウジング225の内壁に第2の弾性部材224が接触することを防ぐ事ができ、当該接触に伴う製造工程上の不具合を防ぐ事ができる。
【0063】
ラックガイドキャップ421のラックガイド422側の端面には、凸部422aに対応する位置に凹部421aが形成されている。凸部422aが第2の弾性部材224の内周全体に対応して形成する場合、及び凸部422aが第2の弾性部材224の内周の一部のみに対応して形成する場合の何れの場合であっても、凹部421aは、凸部422aが第2の弾性部材224の内周全体に対応するように、ラックガイド422側から見て円状に凹部を形成している。
【0064】
また、ラックガイドキャップ421のラックガイド422側の端面には、凸部422bに対応する位置に凹部421bが形成されている。凸部422bが第2の弾性部材224の外周全体に対応して形成する場合、及び凸部422bが第2の弾性部材224の外周の一部のみに対応して形成する場合の何れの場合であっても、凹部421bは、当該第2の弾性部材224の外周全体に対応するように、ラックガイド422側から見て円環状に凹部が形成されている。
【0065】
凹部421aの深さi2は、凸部422aの高さi4から、縮みきった状態における第2の弾性部材224の高さi9を減じた値よりも大きい(i2>i4−i9)。また、凹部421bの深さi1は、凸部422bの高さi3から、縮みきった状態における第2の弾性部材224の高さi9を減じた値よりも大きい(i1>i3−i9)。凹部421aの深さi2及び凹部421bの深さi1を、上述のようにすることで、凸部422a及び凸部422bがラックガイドキャップ421のハウジング225への螺合を阻害することがない。換言すれば、凸部422a及び凸部422bがラックガイドキャップ421に接触することを防ぐことができるので、ラックガイドキャップ221をハウジング225に確実に結合することができる。また、ラックガイドキャップ421をハウジング225へ螺合する場合に、第2の弾性部材224と、ラックガイドキャップ421の端面及びラックガイド422の端面の両端面との間の隙間をなくすことができる。
【0066】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る操舵装置について、図7を参照して説明する。
【0067】
図7は、本発明の実施形態4に係る操舵装置の概略構成の一例を模式的に示す模式図である、図7に示すように、操舵装置1aは、転舵部20aにおいて、図1の転舵力発生部220の代わりに、モータ(動力発生部)231、ピニオンギヤ(第2のピニオンギヤ)234、及び、ラックガイド機構236を備えている。すなわち、操舵装置1aの転舵部20aは、デュアルピニオンの構成を有する。
【0068】
モータ231は、操舵部材102の動作に応じてトルクを発生させる。シャフト232は、モータ231と、ピニオンギヤ234との間に介設され、モータ231によるトルクをピニオンギヤ234に伝達する。モータ231と、ピニオンギヤ234との間には、減速装置等が含まれていてもよい。ピニオンギヤ234は、モータ231にシャフト232を介して接続され、モータ231によるトルクをラック軸208に伝達可能に構成されている。ラックガイド機構236は、ラックガイド(第2のラックガイド、図示せず)を備えており、当該ラックガイドは、ラック軸208をピニオンギヤ234に押し付ける。ラックガイド機構236は、図2図6を用いて説明したラックガイド機構214と同様の構成を有する。
【0069】
ラック軸208の、ピニオンギヤ234側の側面には、ピニオンギヤ234に噛み合うラック歯が形成されている。ラック軸208の、ラックガイド側の側面には、ラック軸208の軸方向に沿った溝部(第2の溝、図示せず)が形成されている。また、ラックガイドの、ラック軸208側の側面には、凹部(図示せず)が形成されている。そして、ラックガイド機構236の備えるラックガイドは、ラック軸208をピニオンギヤ234に押し付ける。
【0070】
〔適用可能な装置構成〕
上記に説明した構成は、コラムアシスト、ピニオンアシスト、デュアルピニオンアシスト、ラックアシスト、アシスト無し、ラック・アンド・ピニオン機構を用いた操舵装置全般に適用可能である。
【0071】
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1、1a 操舵装置
206、234 ピニオンギヤ
208 ラック軸
214、236 ラックガイド機構
221、331 ラックガイドキャップ
221a、331a 凹部
222、332 ラックガイド
222a、332a 凸部
223 第1の弾性部材(サラバネ)
224 第2の弾性部材(コイルばね)
225 ハウジング
g1、h1 深さ
g2、h2、g4 高さ
g3 自然高
【要約】
【課題】ハウジングの内壁への弾性部材の接触に伴う製造工程上の不具合を発生しない操舵装置を提供する。
【解決手段】ラックガイド(222)の端面に、ラックガイド(222)の径方向への第2の弾性部材(224)の動きを規制する凸部(222a)が形成されており、ラックガイドキャップ(221)の端面に、凸部(222a)に対応する凹部(221a)が形成されており、凸部(222a)の高さが、第2の弾性部材(224)の自然高よりも高く、凹部(221a)の深さが、凸部(222a)の高さから、縮みきった状態における第2の弾性部材(224)の高さを減じた値よりも大きい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7