特許第6492217号(P6492217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6492217
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】半導体チップの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190318BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   H01L21/304 622X
   B24B37/30 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-132153(P2018-132153)
(22)【出願日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年7月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399028078
【氏名又は名称】ハイソル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕規
(72)【発明者】
【氏名】永洞 宏行
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−181022(JP,A)
【文献】 特開2002−203821(JP,A)
【文献】 特開2016−063092(JP,A)
【文献】 特開2003−197582(JP,A)
【文献】 特開2014−070191(JP,A)
【文献】 特開2004−153227(JP,A)
【文献】 特開2001−144052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉糊で、多層の配線層を有する半導体チップを、傾斜を確認しつつサポート基板に接着する接着工程と、
前記サポート基板を研磨装置に装着して、前記半導体チップを特定の配線層まで研磨する研磨工程と、
接着された前記半導体チップ及びサポート基板の加熱を伴って、前記半導体チップを前記サポート基板から剥離する剥離工程と
を備えることを特徴とする半導体チップの研磨方法。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系接着剤で、多層の配線層を有する半導体チップを、傾斜を確認しつつサポート基板に接着する接着工程と、
前記サポート基板を研磨装置に装着して、前記半導体チップを特定の配線層まで研磨する研磨工程と、
接着された前記半導体チップ及びサポート基板の加熱を伴って、前記半導体チップを前記サポート基板から剥離する剥離工程と
を備えることを特徴とする半導体チップの研磨方法。
【請求項3】
請求項に記載の半導体チップの研磨方法であって、
前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール及び水を主成分とする
ことを特徴とする半導体チップの研磨方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の半導体チップの研磨方法であって、
前記研磨工程の後に、前記特定の配線層を金属顕微鏡で観察する観察工程をさらに備え、
前記観察工程は、前記金属顕微鏡で観察した観察画像と予め撮像したX線画像又はSEM画像とを対比することを特徴とする半導体チップの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの研磨方法に関し、例えば、半導体パッケージの状態から半導体チップを露出させたり、多層配線を有した半導体チップの特定の配線層を露出させたりする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、パッケージの研磨により露出させることがある。また、半導体チップは、複数の金属配線層と複数の層間絶縁層とを交互に有している。半導体チップを特定の配線層まで研磨して、露出した金属配線層の検査や解析を行うこともある。
【0003】
特許文献1には、支持板で「補強された半導体ウェハを研磨し、研磨面からダイシングして半導体チップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、半導体チップを吸引装置によりピックアップすることを特徴とする半導体チップの製造方法」が開示されている。また、段落0030,0031に、加熱消滅性樹脂を有した接着剤を用い、「剥離」を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−186263号公報(請求項5、段落0030,0031)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体チップの製造方法は、支持板で補強された半導体ウェハを研磨する研磨工程を有している。このため、半導体チップを研磨する用途を前提としていない。また、半導体チップと支持板とは、ワックスで接着することができる。ワックスは、常温よりも融点が高く、粘性の温度依存性が高い。このため、加熱と冷却とを繰り返して、半導体チップの傾斜を微調整を行いながら、半導体チップを支持板(サポート基板)に対して平行にする必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サポート基板に対する平行な貼付を容易に行うことができる半導体チップの研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の半導体チップの研磨方法は、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊で、多層の配線層を有する半導体チップを、傾斜を確認しつつサポート基板に接着する接着工程と、前記サポート基板を研磨装置に装着して、前記半導体チップを特定の配線層まで研磨する研磨工程と、接着された前記半導体チップ及びサポート基板の加熱を伴って、前記半導体チップを前記サポート基板から剥離する剥離工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いるので、サポート基板と半導体チップとは、常温(室温)で接着される。また、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊は、融点が常温よりも高く、粘性が温度で変化するワックスよりも、貼付位置や傾斜の微調整を行いやすい。そのため、半導体チップをサポート基板に対して平行に貼付することができる。また、ポリビニルアルコール系接着剤及び澱粉糊は、高温にすると剥離が容易となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サポート基板に対する平行な貼付を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である研磨装置の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態である研磨装置の正面図である。
図3】半導体チップの一部を示す断面図である。
図4】本発明の第1実施形態である研磨装置を用いた研磨方法を説明するフローチャートである。
図5】サポート基板に半導体チップを貼付した状態を示す平面図である。
図6】サポート基板に半導体チップを貼付した状態を示すA−A断面図である。
図7】研磨工程を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態である特定の配線層まで研磨方法を説明するフローチャートである。
図9】本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板に貼付する貼付工程を説明するためのフローチャートである。
図10】本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板から剥離する剥離工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である研磨装置の平面図であり、図2は、その正面図である。
研磨装置100は、研磨板30と、研磨治具40と、電動機50と、Zステージ60と、荷重設定機構70と、吸着ポンプ80と、制御装置90とを備える。また、研磨装置100は、研磨対象物としての半導体チップ10を接着したサポート基板20を研磨治具40に真空吸着させるように構成されている。なお、第2電動機55を設けることなく、研磨治具40をZステージ60に固定させても構わない。
【0013】
研磨板30は、鋳鉄製の円形平板であり、上面の平坦性が良い。なお、特定の配線層を露出させるときには、鋳鉄製の研磨板30の表面に発泡ポリウレタン樹脂のパッドを貼り付ける。研磨治具40は、ステンレス製の円形平板であり、下面の平坦性が良い。研磨治具40は、研磨対象物に適合した吸着孔41を吸着面の中心部に設けている。研磨治具40は、研磨板30の上部又は上方であって、研磨板30の回転軸Pからズレた位置に配設されている。また、研磨治具40は、デジタルゲージを有し、1[μm]の精度で移動距離を検出することができる。電動機50は、研磨板30の下部に配設され、制御装置90の指令に基づいて、研磨板30を回転させる。なお、研磨板30の回転に伴い、研磨治具40が自転する。Zステージ60は、研磨板30の外周部の上方に配設されており、荷重計70及び研磨治具40を自重で降下させ、手動で上昇させる。
【0014】
荷重設定機構70は、デジタルゲージと荷重調整リングとを備える。デジタルゲージは、半導体チップ10、サポート基板20及び研磨治具40を研磨板30に押圧するときの荷重を測定し、測定値を制御装置90に送信する。荷重調整リングは、研磨板30に押圧するときの荷重が設定荷重(例えば、1000[g])になるように、手動で調整する。吸着ポンプ80は、研磨治具40の吸着孔41から空気を吸入し、サポート基板20を真空吸着させる。制御装置90は、電動機50を制御すると共に、荷重設定機構70が有するデジタルゲージの測定値を受信する。これにより、制御装置90は、所定の研磨量になると、電動機50の回転を停止させる。
【0015】
図3は、半導体チップの一部を示す構造図である。
半導体チップ10は、例えば、Si基板15に図示しない電気回路を形成したものであり、複数の配線層12a,12b,12c,12d,12eを多層に形成している。また、配線層12a,12b,12c,12dと隣接する配線層12b,12c,12d,12eとの間には、SiOやSiN等の層間絶縁層13b,13c,13d,13eが形成されている。なお、最表面には、層間絶縁層13aが形成されている。層間絶縁層13a,13b,13c,13d,13eを総称して絶縁層14という。なお、図3には、配線層12dと層間絶縁層13dとの境界まで研磨することを示す破線が描かれているが、この研磨の説明は、後記する。
【0016】
サポート基板20は、ガラスや石英の円形平板であり、研磨治具40の外形よりも小さい。本実施形態では、半導体チップ10は、サポート基板20にポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊で接着される。ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール及び水を主成分とするものであり、通常、紙の接着に使用される液体糊(文具用品)である。
【0017】
図4は、本発明の第1実施形態である研磨装置を用いた研磨方法を説明するフローチャートである。
研磨作業者は、接着剤25としてのポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いて、常温(例えば、0℃〜40℃、好ましくは、10℃〜30℃、さらに好ましくは、25℃)で、研磨対象物としての半導体チップ10をサポート基板20の中央部(回転軸中心)に貼付する(S10、図5,6参照)。このとき、研磨作業者は、半導体チップ10の4隅と中心部との計5箇所の厚みを接着剤25の厚みを含めて測定し、半導体チップ10の傾斜を確認する。S10の後、研磨作業者は、研磨装置100を用いて、半導体チップ10を研磨する(S20a)。
【0018】
図7は、研磨工程を説明するためのフローチャートである。
研磨作業者は、サポート基板20を研磨治具40に真空吸着させる(S21)。具体的には、研磨作業者は、研磨装置100の吸着ポンプ80を起動させると共に、サポート基板20を研磨治具40に接近させる。これにより、サポート基板20は、研磨治具40に真空吸着する。そして、S21の処理後、研磨作業者は、荷重設定機構70が有する荷重調整リングを調整して、デジタルゲージの測定値が設定荷重(例えば、1000[g])になるように調整する(S22)。これにより、半導体チップ10は、研磨板30に設定荷重で当接する。そして、制御装置90は、電動機50を回転させる(S23)。これにより、研磨板30と半導体チップ10とが摺動し、半導体チップ10が研磨される。
【0019】
S23の処理後、制御装置90は、研磨治具40が有するデジタルゲージの測定値を用いて、移動距離を検出する(S24)。S24の処理後、制御装置90は、所定距離(研磨前厚み−目標厚み)の移動が行われたか否か判定する(S25)。所定距離の移動が行われなければ(S25でNo)、移動距離の検出(S24)を繰り返す。これにより、研磨が継続される。一方、所定距離の移動が行われれば(S25でYes)、制御装置90は、電動機50を停止させ、作業者が吸着ポンプ80を停止させる(S26)。そして、制御装置90は、処理を元のルーチン(図4)に戻す。これらの処理により、研磨装置100は、目標板厚になるまで、半導体チップ10を研磨する。
【0020】
作業者は、研磨対象物としての半導体チップ10をサポート基板20から剥離する(図4のS30)。このとき、作業者は、半導体チップ10及びサポート基板20をホットプレートの上に載置して、高温(例えば、350℃)に加熱する。この加熱により、爪楊枝等で、半導体チップ10の端部を軽く押したり、突いたりするのみで、半導体チップ10がサポート基板20から剥離される。
【実施例1】
【0021】
まず、接着工程において、半導体チップ10としての大きさ10×10mm角のSi基板と、サポート基板20とを貼付した。実施例1では、ポリビニルアルコール系接着剤を3時間硬化させたサンプルAと、ポリビニルアルコール系接着剤を8時間硬化させたサンプルBとを用意した。次に、4隅と中心部との5箇所の厚みを接着剤の厚みを含めて測定した。サポート基板20への貼付前の平均厚みは、サンプルAが723[μm]であり、サンプルBが725[μm]であった。また、貼付後の平均厚みは、725[μm]であった。また、5箇所の最大厚みと最小厚みとの差分である最大最小幅は、サンプルA,B共に、1[μm]以下であった。つまり、ポリビニルアルコール系接着剤を用いた常温貼付では、半導体チップ10の傾斜が生じない。言い換えれば、半導体チップ10は、サポート基板20に対して平行に貼付される。
【0022】
次に、研磨工程においては、研磨スラリー(例えば、平均粒径9μmのAl)を用い、研磨板30の回転速度40[rpm]、研磨荷重1000[g]で研磨した。サンプルAは、研磨時間2時間29分42秒で半導体チップ10の剥離が生じ、残厚み118[μm]であった。一方、サンプルBは、研磨時間2時間12分で平均厚み92.6[μm]まで研磨することができた。このときの平坦度TTV(Total Thickness Variation)は、1[μm]であった。サンプルAは、硬化時間が短かったため剥離したと判断できる。
【0023】
さらに、剥離工程においては、350℃に加熱したホットプレートの上にサポート基板20を150分間、載置した。150分経過後、サンプルBの端部を爪楊枝等で軽く押すと、剥離することができた。なお、剥離後のサンプルBは、平均厚み92.8[μm]、平坦度TTVは、1[μm]であった。研磨対象物にダメージを与えることなく剥離可能であり、1[μm]以下の平坦度が得られている。
【実施例2】
【0024】
接着工程において、大きさ10×10mm角の半導体チップ10としてのSi基板と、サポート基板20とを貼付した。このとき、澱粉糊(主原料:トウモロコシ澱粉)を3時間硬化させたサンプルCと、澱粉糊を8時間硬化させたサンプルDとを用意した。次に、サンプルC,Dの4隅と中心部との5箇所の厚みを接着剤の厚みを含めて測定した。サンプルC,D共に、サポート基板20への貼付前の平均厚みは723[μm]であり、最大最小幅は1[μm]以下であった。また、貼付後のサンプルCは、平均厚み725[μm]であり、最大最小幅3[μm]であった。貼付後のサンプルDは、平均厚み725[μm]であり、最大最小幅1[μm]であった。つまり、澱粉糊を用いた常温貼付では、半導体チップ10の傾斜が少ない。言い換えれば、半導体チップ10は、サポート基板20に対して平行に貼付される。
【0025】
次に、研磨工程では、サンプルA,Bと同様な条件で研磨した。サンプルCは、1時間28分の研磨時間で平均厚み66[μm]まで研磨することができ、平坦度(TTV)は、2[μm]であった。また、サンプルDは、1時間52分の研磨時間で平均厚み83.6[μm]まで研磨することができ、平坦度(TTV)は、1[μm]であった。なお、研磨時間が実施例1と異なるのは、研磨スラリーと純水との配合率の相違が考えられる。
【0026】
また、剥離工程においては、サンプルC,D共に、350℃に加熱したホットプレートに、サポート基板20を150分載置した。サンプルAは、半導体チップ10を爪楊枝で突くのみで剥離したが、サンプルBは、半導体チップ10を爪楊枝で突くだけでは剥離せず、半導体チップ10の端部に片刀ナイフをかける必要があった。つまり、澱粉糊での接着は、強度が高いことが判明した。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の半導体チップの接着方法によれば、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いているので、常温で、半導体チップ10とサポート基板20とを接着することができる。また、本実施形態の半導体チップの研磨方法によれば、半導体チップ10とサポート基板とは、約350℃の高温にすることにより、剥がしやすくなる。つまり、爪楊枝等で半導体チップ10の端部を押したり、突いたりするだけで、サポート基板20から容易に剥離することができる。
【0028】
(第2実施形態)
前記第1実施形態で研磨される半導体チップ10は、複数の配線層12a,12b,12c,12d,12eを多層に形成している。なお、複数の配線層12a,12b,12c,12d,12eの形状は、X線解析によるX線画像やSEM(Scanning Electron Microscope)画像等により、研磨前から予め判明しているものとする。
【0029】
図8は、本発明の第2実施形態である特定の配線層まで研磨方法を説明するフローチャートである。
前記第1実施形態と同様に、作業者は、研磨対象物としての半導体チップ10をサポート基板20に貼付する(S10)。そして、作業者は、研磨装置100(図1)を用いて、半導体チップ10の研磨を行う(S20b)。ここで、研磨工程S20bは、前記第1実施形態の研磨工程S20a(図7)のステップS24,S25を省略したものである。なお、研磨工程S20bの終了時には、吸着ポンプ80の停止が行われるので(S26)、サポート基板20が研磨装置100(図1)から取り外されている。
【0030】
S20bの処理後、作業者は、研磨対象物としてのICチップ10を、サポート基板20に貼付された状態で観察する(S22)。例えば、作業者は、ICチップ10の表面を金属顕微鏡で色の変化を観察して行う。
【0031】
ICチップ10の観察後(S22)、作業者は、特定の配線層(例えば、配線層12d(図3参照))まで研磨されたか否か判定する(S25)。特定の配線層まで研磨されていなければ(S25で未到達)、作業者は、再度、研磨(S20b)及び観察(S22)を繰り返す。このとき、この観察工程(S22)で、作業者は、金属顕微鏡で観察した観察画像と予め撮像したX線画像又はSEM画像とを対比する。
【0032】
一方、特定の配線層が研磨されて、その配線層が表出していれば(S25で到達)、研磨対象物としてのICチップ10をサポート基板20から剥離する(S30)。これにより、特定の配線層12dの形状検査や解析を行うことができる。なお、特定の配線層12dまで研磨したか否かの判定は、特定の配線層12dと層間絶縁層13dとの境界で生じる研磨速度の変化を検出しても行うことができる。
【0033】
(第1比較例)
前記実施形態では、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いて、半導体チップ10とサポート基板20とを接着したが、ワックス(例えば、固形ワックス)を用いて接着することもできる。
【0034】
図9は、本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板に貼付する貼付工程を説明するためのフローチャートである。
ワックスは、融点が80℃であるので、作業者は、ホットプレート等を用いて、サポート基板20を100℃に加熱する(S11)。次に、作業者は、接着剤25(図6)としてのワックスをサポート基板20に塗布すると共に、半導体チップ10を載置する(S12)。S12の処理後、作業者は、半導体チップ10を爪楊枝や指等で押さえ、サポート基板20の面内を移動させつつ、不要なワックスを除去する(S13)。これにより、必要最小限のワックスがサポート基板20に残存する。
【0035】
S13の処理後、作業者は、サポート基板20を冷却し(S14)、ワックスを固化させる。S14の処理後、作業者は、半導体チップ10の傾斜を測定し(S15)、傾斜が許容値以上か否か判定する(S16)。例えば、作業者は、半導体チップ10の4隅の厚み及び中央部の厚みをワックスの厚みを含めて計測し、厚みの最大最小幅が許容値以上か否かで傾斜を判定する。
【0036】
そして、半導体チップ10の傾斜(厚みの最大最小幅)が許容値以上であれば(S16で許容値以上)、作業者は、再度、サポート基板20を加熱し、ワックスを溶融させる(S17)。サポート基板20の再加熱後、作業者は、半導体チップ10の傾斜の修正を行う(S18)。そして、作業者は、S14の冷却、S15の傾斜測定を繰り返す。
【0037】
一方、半導体チップ10の傾斜(厚みの最大最小幅)が許容値になったら(S16で許容値未満)、作業者は、研磨の処理を実行する(図4のS20)。
【0038】
つまり、第1比較例によるワックス接着では、加熱、傾斜の修正、冷却を繰り返す必要がある。しかしながら、前記実施形態のポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊による接着では、常温で傾斜の修正を行うことができる。
【0039】
また、半導体チップ片10をサポート基板20に貼付する場合に、高温でのワックスの流動性のため、半導体チップ10が移動し易くなる。言い換えれば、ワックスは、粘性の温度依存性が高いので、加熱時の温度設定を適切に行う必要がある。
【0040】
また、研磨された半導体チップ10を剥離する場合(図4のS30)、加熱されたワックスの表面張力により、半導体チップ10がサポート基板20に吸着している。このため、半導体チップ10を綿棒や爪楊枝で押さえながら、サポート基板20の表面をスライドさせて取り外す必要がある。この綿棒や爪楊枝で半導体チップ10を押さえるときに、研磨された半導体チップ10が割れてしまうことがある。特に、厚み100[μm]以下のSiや、材質の脆いGaAsやInPの半導体チップは、押さえると割れやすい。
【0041】
この割れを防ぐために、ワックスを剥離する剥離剤(洗浄剤)を使用することが考えられる。
図10は、本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板から剥離する剥離工程を説明する説明図である。
剥離器具200は、剥離容器140と、支持体120と、剥離剤130又は洗浄剤とを備え、サポート基板20を支持体120に載置して使用される。
【0042】
剥離容器140は、支持体120とサポート基板20とを収容し、剥離剤130を浸漬する容器である。剥離剤130は、d−リモネンを主成分とするが、アルカリ性の液体のものもある。また、剥離剤130は、推奨温度である80℃又は若干高い温度に加熱して使用される。支持体120は、サポート基板20の周辺部を支持するものであり、半導体チップ10を下側にして、サポート基板20を載置する。支持体120は、半導体チップ10と剥離容器140との接触を回避するために使用される。
【0043】
剥離剤130は、ワックスの融点と略同一の80℃に加熱されている。このため、半導体チップ10がサポート基板20から落下することがあるものの、多くの場合、作業者がサポート基板20を剥離剤130から引き上げ、サポート基板20の表面で半導体チップ10をスライドさせて、取り外すことができる。このスライド時に、半導体チップ10が押さえられるので、研磨された半導体チップ10の割れが生じることがある。
【0044】
しかしながら、前記実施形態の半導体チップの貼付方法によれば、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いるので、常温でサポート基板20に対して平行に貼付することができる。また、前記実施形態の半導体チップの研磨方法によれば、半導体チップ10及びサポート基板20を加熱放置し、半導体チップ10の端部を爪楊枝等で軽く押さえたり、突いたりするのみで半導体チップ10が剥離される。つまり、半導体チップ10を破損させないだけでなく、アルカリ性の剥離剤や洗浄剤を使用したり、火傷をしたりすることなく、安全に研磨や剥離を行うことができる。
【0045】
(第2比較例)
前記第1実施形態では、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用い、前記第1比較例では、ワックスを用いたが、他の合成接着剤(例えば、木工用接着剤)を用いることもできる。ここで、木工用接着剤は、酢酸ビニル樹脂を41%含有し、水を59%含有した酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤である。
【0046】
まず、接着工程において、半導体チップ10をサポート基板20に接着させたサンプルを用意する。ここで、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を3時間硬化させたサンプルEと、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を8時間硬化させたサンプルFとを用意した。サンプルE,F共に、Si基板の4隅と中心部との5箇所の厚みを測定し、平均厚みが725[μm]であり、最大最小幅1[μm]以下であった。
【0047】
研磨工程においては、サンプルEは、1時間59分研磨した後の平均厚み87.4[μm]であり、平坦度TTVは、1[μm]であった。また、サンプルFは、2時間24分の研磨で、平均厚み84.4[μm]であり、平坦度TTVは、1[μm]であった。
【0048】
剥離工程においては、サンプルE,F共に、350℃に加熱したホットプレートに、サポート基板20を150分載置したが、剥離できなかった。結果的に、半導体チップ10の接着には、第2比較例による酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤は不適切であり、前記実施形態のポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊が好適である。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体チップ(研磨対象物)
20 サポート基板
25 接着剤(ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊)
30 研磨板
40 研磨治具
50 電動機
60 Zステージ
70 荷重設定機構(デジタルゲージ,荷重調整リング)
90 制御装置
100 研磨装置
200 剥離器具
P 回転軸
【要約】
【課題】サポート基板に対する平行な貼付及び剥離を容易に行う。
【解決手段】ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊で、研磨対象物としての半導体チップをサポート基板に貼付する貼付工程S10と、サポート基板を研磨装置に装着して、半導体チップを研磨する研磨工程S20bと、研磨された半導体チップを観察する観察工程S22と、特定の配線層まで研磨されたか否か判定する判定工程S25と、研磨された半導体チップ及びサポート基板の加熱を伴って、半導体チップをサポート基板から剥離する剥離工程S30とを備える。
【選択図】図8
図1
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図10