【実施例2】
【0024】
接着工程において、大きさ10×10mm角の半導体チップ10としてのSi基板と、サポート基板20とを貼付した。このとき、澱粉糊(主原料:トウモロコシ澱粉)を3時間硬化させたサンプルCと、澱粉糊を8時間硬化させたサンプルDとを用意した。次に、サンプルC,Dの4隅と中心部との5箇所の厚みを接着剤の厚みを含めて測定した。サンプルC,D共に、サポート基板20への貼付前の平均厚みは723[μm]であり、最大最小幅は1[μm]以下であった。また、貼付後のサンプルCは、平均厚み725[μm]であり、最大最小幅3[μm]であった。貼付後のサンプルDは、平均厚み725[μm]であり、最大最小幅1[μm]であった。つまり、澱粉糊を用いた常温貼付では、半導体チップ10の傾斜が少ない。言い換えれば、半導体チップ10は、サポート基板20に対して平行に貼付される。
【0025】
次に、研磨工程では、サンプルA,Bと同様な条件で研磨した。サンプルCは、1時間28分の研磨時間で平均厚み66[μm]まで研磨することができ、平坦度(TTV)は、2[μm]であった。また、サンプルDは、1時間52分の研磨時間で平均厚み83.6[μm]まで研磨することができ、平坦度(TTV)は、1[μm]であった。なお、研磨時間が実施例1と異なるのは、研磨スラリーと純水との配合率の相違が考えられる。
【0026】
また、剥離工程においては、サンプルC,D共に、350℃に加熱したホットプレートに、サポート基板20を150分載置した。サンプルAは、半導体チップ10を爪楊枝で突くのみで剥離したが、サンプルBは、半導体チップ10を爪楊枝で突くだけでは剥離せず、半導体チップ10の端部に片刀ナイフをかける必要があった。つまり、澱粉糊での接着は、強度が高いことが判明した。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の半導体チップの接着方法によれば、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いているので、常温で、半導体チップ10とサポート基板20とを接着することができる。また、本実施形態の半導体チップの研磨方法によれば、半導体チップ10とサポート基板とは、約350℃の高温にすることにより、剥がしやすくなる。つまり、爪楊枝等で半導体チップ10の端部を押したり、突いたりするだけで、サポート基板20から容易に剥離することができる。
【0028】
(第2実施形態)
前記第1実施形態で研磨される半導体チップ10は、複数の配線層12a,12b,12c,12d,12eを多層に形成している。なお、複数の配線層12a,12b,12c,12d,12eの形状は、X線解析によるX線画像やSEM(Scanning Electron Microscope)画像等により、研磨前から予め判明しているものとする。
【0029】
図8は、本発明の第2実施形態である特定の配線層まで研磨方法を説明するフローチャートである。
前記第1実施形態と同様に、作業者は、研磨対象物としての半導体チップ10をサポート基板20に貼付する(S10)。そして、作業者は、研磨装置100(
図1)を用いて、半導体チップ10の研磨を行う(S20b)。ここで、研磨工程S20bは、前記第1実施形態の研磨工程S20a(
図7)のステップS24,S25を省略したものである。なお、研磨工程S20bの終了時には、吸着ポンプ80の停止が行われるので(S26)、サポート基板20が研磨装置100(
図1)から取り外されている。
【0030】
S20bの処理後、作業者は、研磨対象物としてのICチップ10を、サポート基板20に貼付された状態で観察する(S22)。例えば、作業者は、ICチップ10の表面を金属顕微鏡で色の変化を観察して行う。
【0031】
ICチップ10の観察後(S22)、作業者は、特定の配線層(例えば、配線層12d(
図3参照))まで研磨されたか否か判定する(S25)。特定の配線層まで研磨されていなければ(S25で未到達)、作業者は、再度、研磨(S20b)及び観察(S22)を繰り返す。このとき、この観察工程(S22)で、作業者は、金属顕微鏡で観察した観察画像と予め撮像したX線画像又はSEM画像とを対比する。
【0032】
一方、特定の配線層が研磨されて、その配線層が表出していれば(S25で到達)、研磨対象物としてのICチップ10をサポート基板20から剥離する(S30)。これにより、特定の配線層12dの形状検査や解析を行うことができる。なお、特定の配線層12dまで研磨したか否かの判定は、特定の配線層12dと層間絶縁層13dとの境界で生じる研磨速度の変化を検出しても行うことができる。
【0033】
(第1比較例)
前記実施形態では、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いて、半導体チップ10とサポート基板20とを接着したが、ワックス(例えば、固形ワックス)を用いて接着することもできる。
【0034】
図9は、本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板に貼付する貼付工程を説明するためのフローチャートである。
ワックスは、融点が80℃であるので、作業者は、ホットプレート等を用いて、サポート基板20を100℃に加熱する(S11)。次に、作業者は、接着剤25(
図6)としてのワックスをサポート基板20に塗布すると共に、半導体チップ10を載置する(S12)。S12の処理後、作業者は、半導体チップ10を爪楊枝や指等で押さえ、サポート基板20の面内を移動させつつ、不要なワックスを除去する(S13)。これにより、必要最小限のワックスがサポート基板20に残存する。
【0035】
S13の処理後、作業者は、サポート基板20を冷却し(S14)、ワックスを固化させる。S14の処理後、作業者は、半導体チップ10の傾斜を測定し(S15)、傾斜が許容値以上か否か判定する(S16)。例えば、作業者は、半導体チップ10の4隅の厚み及び中央部の厚みをワックスの厚みを含めて計測し、厚みの最大最小幅が許容値以上か否かで傾斜を判定する。
【0036】
そして、半導体チップ10の傾斜(厚みの最大最小幅)が許容値以上であれば(S16で許容値以上)、作業者は、再度、サポート基板20を加熱し、ワックスを溶融させる(S17)。サポート基板20の再加熱後、作業者は、半導体チップ10の傾斜の修正を行う(S18)。そして、作業者は、S14の冷却、S15の傾斜測定を繰り返す。
【0037】
一方、半導体チップ10の傾斜(厚みの最大最小幅)が許容値になったら(S16で許容値未満)、作業者は、研磨の処理を実行する(
図4のS20)。
【0038】
つまり、第1比較例によるワックス接着では、加熱、傾斜の修正、冷却を繰り返す必要がある。しかしながら、前記実施形態のポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊による接着では、常温で傾斜の修正を行うことができる。
【0039】
また、半導体チップ片10をサポート基板20に貼付する場合に、高温でのワックスの流動性のため、半導体チップ10が移動し易くなる。言い換えれば、ワックスは、粘性の温度依存性が高いので、加熱時の温度設定を適切に行う必要がある。
【0040】
また、研磨された半導体チップ10を剥離する場合(
図4のS30)、加熱されたワックスの表面張力により、半導体チップ10がサポート基板20に吸着している。このため、半導体チップ10を綿棒や爪楊枝で押さえながら、サポート基板20の表面をスライドさせて取り外す必要がある。この綿棒や爪楊枝で半導体チップ10を押さえるときに、研磨された半導体チップ10が割れてしまうことがある。特に、厚み100[μm]以下のSiや、材質の脆いGaAsやInPの半導体チップは、押さえると割れやすい。
【0041】
この割れを防ぐために、ワックスを剥離する剥離剤(洗浄剤)を使用することが考えられる。
図10は、本発明の第1比較例における、半導体チップをサポート基板から剥離する剥離工程を説明する説明図である。
剥離器具200は、剥離容器140と、支持体120と、剥離剤130又は洗浄剤とを備え、サポート基板20を支持体120に載置して使用される。
【0042】
剥離容器140は、支持体120とサポート基板20とを収容し、剥離剤130を浸漬する容器である。剥離剤130は、d−リモネンを主成分とするが、アルカリ性の液体のものもある。また、剥離剤130は、推奨温度である80℃又は若干高い温度に加熱して使用される。支持体120は、サポート基板20の周辺部を支持するものであり、半導体チップ10を下側にして、サポート基板20を載置する。支持体120は、半導体チップ10と剥離容器140との接触を回避するために使用される。
【0043】
剥離剤130は、ワックスの融点と略同一の80℃に加熱されている。このため、半導体チップ10がサポート基板20から落下することがあるものの、多くの場合、作業者がサポート基板20を剥離剤130から引き上げ、サポート基板20の表面で半導体チップ10をスライドさせて、取り外すことができる。このスライド時に、半導体チップ10が押さえられるので、研磨された半導体チップ10の割れが生じることがある。
【0044】
しかしながら、前記実施形態の半導体チップの貼付方法によれば、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用いるので、常温でサポート基板20に対して平行に貼付することができる。また、前記実施形態の半導体チップの研磨方法によれば、半導体チップ10及びサポート基板20を加熱放置し、半導体チップ10の端部を爪楊枝等で軽く押さえたり、突いたりするのみで半導体チップ10が剥離される。つまり、半導体チップ10を破損させないだけでなく、アルカリ性の剥離剤や洗浄剤を使用したり、火傷をしたりすることなく、安全に研磨や剥離を行うことができる。
【0045】
(第2比較例)
前記第1実施形態では、ポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊を用い、前記第1比較例では、ワックスを用いたが、他の合成接着剤(例えば、木工用接着剤)を用いることもできる。ここで、木工用接着剤は、酢酸ビニル樹脂を41%含有し、水を59%含有した酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤である。
【0046】
まず、接着工程において、半導体チップ10をサポート基板20に接着させたサンプルを用意する。ここで、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を3時間硬化させたサンプルEと、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を8時間硬化させたサンプルFとを用意した。サンプルE,F共に、Si基板の4隅と中心部との5箇所の厚みを測定し、平均厚みが725[μm]であり、最大最小幅1[μm]以下であった。
【0047】
研磨工程においては、サンプルEは、1時間59分研磨した後の平均厚み87.4[μm]であり、平坦度TTVは、1[μm]であった。また、サンプルFは、2時間24分の研磨で、平均厚み84.4[μm]であり、平坦度TTVは、1[μm]であった。
【0048】
剥離工程においては、サンプルE,F共に、350℃に加熱したホットプレートに、サポート基板20を150分載置したが、剥離できなかった。結果的に、半導体チップ10の接着には、第2比較例による酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤は不適切であり、前記実施形態のポリビニルアルコール系接着剤又は澱粉糊が好適である。