(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6492236
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】血清尿酸値低減用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/405 20060101AFI20190318BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20190318BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20190318BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20190318BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
A61K31/405
A23L2/52
A23L33/175
A61K31/198
A61P19/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-502102(P2019-502102)
(86)(22)【出願日】2018年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2018028932
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2017-165645(P2017-165645)
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 俊二
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−275059(JP,A)
【文献】
特開2016−050198(JP,A)
【文献】
特開2011−098896(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/158212(WO,A1)
【文献】
YU TF. et al.,Effect of Glycine Loading on Plasma and Urinary Uric Acid and Amino Acids in Normal and Gouty Subjec,The American Journal of Medicine,1970年,Vol.49,p.352-359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/405
A23L 2/52
A23L 33/175
A61K 31/198
A61P 19/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシン及びトリプトファンを含む血清尿酸値低減用の組成物。
【請求項2】
グリシンに対するトリプトファンの含有比が重量基準で0.01以上0.15以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリシンの摂取量が1回当たり1g以上10g以下である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物を含む血清尿酸値低減用飲食品。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物を含む血清尿酸値低減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清尿酸値低減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尿酸はプリン体の最終代謝産物であり、産生された尿酸は尿中に排出されている。通常は尿酸の産生量と排出量は均衡しているが、何らかの原因で血清中の尿酸値が7mg/dl以上となると高尿酸血症と呼ばれる。高尿酸血症が慢性化すると、痛風等のリスクが高まる。高尿酸血症の治療薬としては尿酸産生抑制剤と、尿酸排泄促進剤とが知られているが、副作用の懸念がある。
【0003】
最も単純なアミノ酸であるグリシンには、尿酸を排泄する作用があることが知られているが、過剰摂取は核酸合成により尿酸値を高める可能性があるとされている。またグリシンには生体内におけるアルコール消失速度を速める作用があることが知られている(例えば、特開2003−116504号公報参照)。またオロト酸と特定のアミノ酸を有効成分として含む組成物に尿酸値低下作用があることが知られている(例えば、特開2011−98896号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、血清尿酸値を低減可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態は、グリシン及びトリプトファンを含む血清尿酸値低減用の組成物を提供する。
【0006】
ある一形態において、前記組成物はグリシンに対するトリプトファンの含有比が0.01以上0.15以下である。
【0007】
ある一形態において、前記組成物はグリシンの摂取量が1回当たり1g以上10g以下である。
【0008】
また本発明の一形態は、前記組成物を含む飲食物を提供する。
【0009】
また本発明の一形態は、前記組成物を含む血清尿酸値低減剤を提供する。
【0010】
本発明の一形態は、グリシン及びトリプトファンを含み、血清尿酸値を低減する医薬組成物、グリシン及びトリプトファンを含む組成物を対象に投与することを含む血清尿酸値を低減する方法、並びにグリシン及びトリプトファンを含む組成物の血清尿酸値低減剤の製造における使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血清尿酸値を低減可能な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験開始から3時間後までの血清中の尿酸濃度の低下を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
<血清尿酸値低減用組成物>
血清尿酸値低減用組成物は、グリシンとトリプトファンとを有効成分として含み、必要に応じて他の成分をさらに含んでいてもよい。グリシンが血清尿酸値の低減作用を有することは知られているが、さらにトリプトファンを併用することで血清尿酸値の低減作用が相乗的に向上する。
【0015】
例えば、一般にアルコールを摂取すると血清尿酸値が一時的に上昇することが知られている。これは、アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られること、アルコール代謝に伴って生成する乳酸が体内に尿酸を蓄積することなどがその主な原因と考えられる。これに対してグリシンとトリプトファンを含む組成物を投与することで、尿酸値の上昇を効果的に抑制することができる。
【0016】
本明細書における血清尿酸値の低減とは、正常な血清尿酸値(例えば、7mg/dl未満)を超える尿酸値を下げることと、何らかの要因(例えば、アルコール摂取)で上昇する血清尿酸値を下げることとを含む。血清尿酸値の低減は、血清中の尿酸値を測定し、対照群と比較することで確認することができる。
【0017】
グリシンは、アミノ酢酸のことで、アミノ酸の中で最も単純な構造を有している。グリシンの純度は人体への投与に適するものであればよく、その純度は例えば90%以上、好ましくは98%以上である。グリシンは、例えば抽出法、微生物発酵法等により製造することができ、市販品から適宜選択されてもよい。
【0018】
トリプトファンは、2−アミノ−3−インドリルプロピオン酸のことであり、少なくともL−トリプトファンを含んでいればよい。トリプトファンは、ラセミ体であってもよいが、L−トリプトファンであることが好ましい。トリプトファンの純度は人体への投与に適するものであればよく、その純度は例えば90%以上、好ましくは98%以上である。トリプトファンは、例えば抽出法、微生物発酵法等により製造することができ、市販品から適宜選択されてもよい。
【0019】
グリシン及びトリプトファンは単体(遊離体)として含まれていてもよく、塩の形態で含まれていてもよい。グリシン及びトリプトファンの塩としては薬理学的に許容される塩であれば特に制限はない。具体的には例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。
【0020】
組成物中のグリシンに対するトリプトファンの重量基準の含有比は、血清尿酸値低減作用の観点から、例えば0.01以上0.15以下であり、好ましくは0.012以上0.1以下、より好ましくは0.015以上0.09以下、より好ましくは0.015以上0.08以下、更に好ましくは0.015以上0.07以下である。また、組成物中のグリシンに対するトリプトファンの重量基準の含有比は、例えば0.01以上、0.012以上、0.015以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、又は0.06以上であり、また、例えば、0.15以下、0.1以下、0.09以下、0.08以下、又は0.07以下である。
【0021】
組成物は、グリシン及びトリプトファンに加えて他の有効成分を更に含んでいてもよい。他の有効成分は血清尿酸値低減作用を有するものであればよく、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、 グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリンなどの他のアミノ酸が挙げられる。他のアミノ酸のなかでも、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、又はグルタミンが好ましく、アスパラギン、グルタミン酸、又はグルタミンがより好ましく、アスパラギン又はグルタミン酸が更に好ましい。他のアミノ酸は1種でもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0022】
更に、他の有効成分としては、アロプリノール、フェブキソスタット等の尿酸産生抑制薬、ベンズブロマロン、プロベネシド等の尿酸排泄促進薬などの公知の血清尿酸値低減薬などを挙げることもできる。これらは1種でもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
組成物中の有効成分の総含有量は、組成物の構成、組成物の投与により期待する効果等に応じて適宜選択すればよい。組成物中の有効成分の総含有量は例えば0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上であり、また例えば100重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0024】
組成物は、必要に応じて有効成分以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、水等の溶媒;ビタミンB群等を含む各種ビタミン類;甘味料;香料;着色料;薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、塩類、pH調整剤、キレート剤、緩衝剤等を挙げることができる。
【0025】
組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、注射剤等のいずれの剤形であってもよい。投与方法は、組成物の剤形等に応じて通常用いられる投与経路から選択すればよい。投与経路としては例えば、経口投与、経鼻投与、直腸投与、静脈注射、点滴等を挙げることができる。
【0026】
組成物の投与量は、血清尿酸値低減作用を発揮可能な量であればよく、通常1回につきグリシンの投与量として、例えば、1g以上、好ましくは1.5g以上、2g以上、3g以上、4g以上、又は5g以上であり、また例えば、10g以下、好ましくは8g以下、7g以下、又は6g以下である。また通常1回につきトリプトファンの投与量として例えば0.01g以上、好ましくは0.05g以上、0.1g以上、又は0.15g以上であり、また例えば1.0g以下、好ましくは0.6g以下、0.5g以下、0.4g以下、又は0.35g以下である。また1日当たりの投与回数は、例えば1から3回である。
【0027】
<医薬組成物>
組成物は、血清尿酸値低減によって病態が改善される疾患の予防及び/又は治療用の医薬組成物として用いることができる。かかる疾患としては、例えば、痛風、高尿酸血症、痛風結節、尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、腎不全、痛風腎、前立腺肥大、浮腫などが挙げられる。組成物は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬としても機能し得る。
【0028】
組成物を、疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。組成物の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、痛風患者、高尿酸血症患者等に経口投与する場合には、成人一日当り、グリシン及びトリプトファンの合計として通常は1g以上、好ましくは1.5g以上、2g以上、3g以上、4g以上、又は5g以上、また例えば10g以下、好ましくは8g以下、7g以下、6g以下、5g以下、又は4g以下となるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、例えば1日間以上1年間以下、好ましくは1週間以上3ヶ月間以下である。
【0029】
<飲食品>
飲食品は、上述したグリシン及びトリプトファンを含む血清尿酸値低減用の組成物を含む。飲食品を摂取することで、上述した組成物の効果を得ることができる。本発明の血清尿酸値低減用組成物を含有する飲食品には、健康飲食品、機能性飲食品、病者用飲食品などの他、上記血清尿酸値低減用組成物を配合できる全ての飲食品が含まれる。なかでも、機能性飲食品はとりわけ好ましい。「機能性飲食品」は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品を意味し、例えば、特定保健用飲食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能飲食品を含む保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)及び美容飲食品(例えばダイエット飲食品)などのいわゆる健康飲食品全般を包含する。機能性飲食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。
【0030】
上記健康食品等は、通常の食品の形状であってもよく、サプリメントの形状、例えば、錠剤、顆粒剤(例えば、スティック状に梱包された顆粒剤)、細粒剤、タブレット、チュアブルタブレット、カプセル(例えば、軟カプセル、硬カプセル)などであってもよい。
【0031】
飲食品は流動性を有する飲料であってもよい。飲食品が飲料である場合、飲料中のグリシン濃度は、例えば、0.1g/100ml以上、好ましくは0.3g/100ml以上、より好ましくは0.6g/100ml以上であり、また例えば10g/100ml以下、好ましくは8g/100ml以下、より好ましくは7g/100ml以下である。また飲料中のトリプトファン濃度は例えば、0.001g/100ml以上、好ましくは0.005g/100ml以上、より好ましくは0.02g/100ml以上であり、また例えば1.0g/100ml以下、好ましくは0.6g/100ml以下、より好ましくは0.4g/100ml以下である。
【0032】
飲料は例えば、グリシン及びトリプトファンを含む組成物と、水、果汁等の液媒体とを含んで構成される。飲料は例えば、緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳など)、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料などであってよく、組成物を含み、牛乳、精製水などを液媒体とする飲料であってもよい。
【0033】
飲料は、甘みを調整するために、甘味料を含有していてもよい。甘味料は糖であってもよく、糖としては、砂糖、葡萄糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。あるいは、糖の代わりに、アスパルテーム、サッカリン等の合成甘味料が添加されていてもよい。
【0034】
飲料は酸味料を含有していてもよい。酸味料としては、例えば、クエン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、乳酸、リン酸等が挙げられる。
【0035】
飲料は香料を含有していてもよい。香料としては、例えば、レモン、ライム、オレンジ等のシトラス油、オレンジ油、ハーブエキス等が挙げられる。香料は天然香料であっても、合成香料であってもよい。天然香料としては、例えば、アニス油、アンゲリカ油、オールスパイス油、オレンジ油、カシア油、カプシカム油、ガラナエキス、カルダモン油、キャラウェイ油、クミン油、クラリセージ油、グレープフルーツ油、クローブ油、コリアンダー油、コーヒー油、コニャック油、コーラナッツエキス、シナモン油、ジンジャー油、タイム油、ナツメグ油、ハッカ油、バニラエキス、ビターアーモンド油、フェヌグリーク油、フェンネル油、ペッパー油、ペパーミント油、ペリラ油、ベルガモット油、マンダリン油、ユーカリ油、レモン油、ローズマリー油等が挙げられる。
【0036】
合成香料としては、例えば、アネトール、アリルカプロエート、イソアミルアセテート、γ−ウンデカラクトン、エチルバニリン、エチルブチレート、エチルフェニルグリシデート、オイゲノール、ゲラニオール、ジアセチル、シクロテン、シトラール、シナミック
アルデヒド、ターピネオール、δ−デカラクトン、デカナール、ノナナール、γ―ノナラクトン、バニリン、フェニルエチルアルコール、フラネオール、フルフリルメルカプタン、2−ヘキセナール、3−ヘキセノール、ヘリオトロピン、ペリラアルデヒド、ベンズアルデヒド、マルトール、メチルアンスラニレート、メチルサリシレート、メントール、α−ヨノン、リナロール等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
健康な成人男女を被験者として、書面でのインフォームドコンセントに同意を得た後に試験を実施した。対照としての難溶性デキストリン6g(n=7;Cont)、グリシン6g(n=7;Gly)、グリシン6gとトリプトファン0.1gを含む組成物(n=5;GlyTrp01)、グリシン6gとトリプトファン0.2gを含む組成物(n=7;GlyTrp02)、又はグリシン6gとトリプトファン0.4gを含む組成物(n=7;GlyTrp04)のいずれかを経口投与し、その30分後に甲類焼酎をアルコール量0.32g/kgで摂取させた。組成物の摂取前、摂取から60分後、120分後、及び180分後に採血して、血清中の尿酸濃度(mg/dl)を測定した。測定結果を表1に示す。また表1には血清中の尿酸濃度の経時変化として、組成物の摂取前(0)と各経過時間との測定値間における有意差についてt検定における確率(p値)を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、対照群(Cont)では血清中の尿酸値濃度に経時変化は認められなかったが、グリシンとトリプトファンを含む組成物を投与した群では、経時的に低下する傾向が認められ、特にグリシン6gとトリプトファン0.2gを含む組成物(GlyTrp02)を投与した群では測定開始から180分後に渡って血清中の尿酸濃度に経時的に有意な低下が認められることが分かる。
【0041】
血清中の尿酸濃度の測定値に基づいて、組成物の摂取前(0)から180分後までの血清中の尿酸濃度−時間曲線下面積(AUC
0→3hr)を算出した。ここで尿酸濃度−時間曲線は、組成物の摂取前(0)の尿酸濃度を基準として、経時による尿酸濃度の低下を示す曲線である。結果を
図1に示す。
【0042】
図1から、グリシンとトリプトファンを含む組成物を投与した群ではAUCが低下する傾向があり、特にグリシン6gとトリプトファン0.2gを含む組成物(GlyTrp02)を投与した群では、対照群(Cont)に対して有意(p=0.025)に低下することがわかる。
【0043】
(実施例2)
血清尿酸値が高め(7.1mg/dl以上)の高尿酸血症者を被験者として、書面でのインフォームドコンセントに同意を得た後に試験を実施した。対照群にはグリシン3g(n=4)を、組成物摂取群にはグリシン3gとトリプトファン0.2gを含む組成物(n=4)を、それぞれ8週間に渡って毎日摂取させた。摂取開始前と8週間摂取後に血清中の尿酸値を測定した。結果を表2に示す。なお、有意差検定は符号検定により実施した。
【0044】
【表2】
【0045】
対照群であるグリシン3g単独摂取群では、8週間の連続摂取により血清尿酸値はやや低下したものの有意ではなかった。一方、グリシン3gとトリプトファン0.2gの組成物を摂取させた組成物摂取群では、8週間の連続摂取により血清尿酸値が有意に低下した。
【0046】
日本国特許出願2017−165645号(出願日:2017年8月30日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【要約】
グリシンとトリプトファンを含む血清尿酸値低減用の組成物が提供される。前記組成物を対象が摂取することで、対象の血清中の尿酸値が低減される。