特許第6492261号(P6492261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492261
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】スピードスプレーヤの送風装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20190325BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20190325BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20190325BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A01M7/00 N
   F04D29/54 E
   F04D29/54 G
   F04D29/66 N
   B05B17/00 102
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-173368(P2016-173368)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-38297(P2018-38297A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186784
【氏名又は名称】株式会社ショーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】神戸 福治
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−187024(JP,A)
【文献】 特開2009−085046(JP,A)
【文献】 特開2003−106296(JP,A)
【文献】 特開2000−210001(JP,A)
【文献】 実開昭48−018703(JP,U)
【文献】 特開2015−151922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00
F04D 29/54
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射方向に複数の動翼ブレードを設けた動翼部と、この動翼部を回転させる回転駆動部と、放射方向に複数の静翼ブレードを設け、かつ前記動翼部による送風方向前方に固定して配設した静翼部と、この静翼部の送風方向前方に配し、かつ当該静翼部からの送風を散布方向に整流する整流部とを備え、この整流部に臨ませた複数の噴射ノズルから噴射される薬液を散布方向に噴霧するスピードスプレーヤの送風装置であって、前記複数の静翼ブレードにおける少なくとも一部の静翼ブレードの表面に、ジグザグ形状となる凸条部を、放射方向に沿って設けてなることを特徴とするスピードスプレーヤの送風装置。
【請求項2】
前記凸条部は、前記静翼ブレードの表面に対してプレス成形型により膨出形成してなることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの送風装置。
【請求項3】
前記凸条部は、前記ジグザグ形状に沿って、間欠形成又は連続形成してなることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの送風装置。
【請求項4】
前記凸条部は、一列により又は前記静翼ブレードの送風方向における前後に二列以上により形成してなることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの送風装置。
【請求項5】
前記静翼ブレードは、送風方向における前端辺及び(又は)後端辺を、少なくとも、直線形状,曲線形状又は波形形状により形成してなることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射方向に複数の静翼ブレードを設けた静翼部を備えるスピードスプレーヤの送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圃場の果樹等に薬液を噴霧するスピードスプレーヤは知られている。この種のスピードスプレーヤは、通常、放射方向に複数の動翼ブレードを設けた動翼部と、この動翼部を回転させる回転駆動部と、放射方向に複数の静翼ブレードを設け、かつ動翼部による送風方向前方に固定して配設した静翼部と、この静翼部の送風方向前方に配し、静翼部からの送風を散布方向に整流する整流部とを有する送風装置を備え、この整流部を通過する送風に対して複数の噴射ノズルから薬液を噴射することにより、散布方向に薬液の噴霧を行っている。
【0003】
ところで、この種のスピードスプレーヤに備える送風装置は、広範囲に薬液を噴霧する必要があることから、車両の後部に、送風を行う大型の動翼部を配設するとともに、この動翼部の前方に、送風を軸方向に整流して後段の整流部に供給する静翼部を配設するため、送風装置から発生する騒音が問題となる。このため、スピードスプレーヤにおける特に送風装置からの騒音を低減するための静音化技術も提案されている。
【0004】
従来、このような静音化技術を用いたものとしては、特許文献1で開示されるスピードスプレヤー及び特許文献2で開示されるスピードスプレーヤの送風装置が知られている。特許文献1で開示のスピードスプレヤーは、スピードスプレヤーの散布部における騒音を低減させることを目的としたものであり、具体的には、車輌の後部から回転羽根によってエアを吸入し、放射方向に静翼を設けた整流筒により、エアを噴出させる構成であって、この整流筒の開口部にノズルを設けて薬液を噴霧させるスピードスプレヤーの静翼のエアの吸込側端縁に凹凸切欠縁を設けて構成、あるいは回転羽根のエアの吸込側端縁に凹凸切欠縁を設けて構成したものである。また、特許文献2で開示のスピードスプレーヤの送風装置は、それぞれの固定翼部から発生する騒音の低減を目的としたものであり、具体的には、回転羽根の吐風側に配置されたそれぞれの固定翼の回転羽根側の半径方向に沿ってスリットを形成してなり、好ましくは、スリットの縁部に、正圧面に供給された空気の一部を負圧面へ案内する切り起こし部を形成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−210001号公報
【特許文献2】特開2003−106296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の静音化技術(特許文献1及び特許文献2)は、次のような問題点があった。
【0007】
第一に、静翼(固定翼)の製作に際しては、静翼(固定翼)の基本形状に対して、開口したスリット又は凹凸切欠縁を設ける必要があるため、静翼(固定翼)の基本形状及び面積を変更又は縮小する加工を伴う。したがって、静音効果を確保できるとしても、本来の整流効果に少なからず影響を与えるとともに、面積が縮小する分を補うには静翼(固定翼)全体のサイズアップ(大型化)を招くなど、静翼(固定翼)に求められる本来の機能に影響する副作用を生じやすい。
【0008】
第二に、静翼(固定翼)の面方向となる送風方向から見た場合、送風に与える作用面は、先端の縁部分又は先端近傍のスリット部分の僅かに過ぎない。即ち、縁部分又はスリット部分を除けば、残りの大部分は本来の静翼(固定翼)部分となるため、ある程度の静音効果を確保できるとしても、それ以上の改善の余地がほとんどなく、静音効果をより高める観点からは限界があるなど、改善に対する発展性及び融通性に難がある。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したスピードスプレーヤの送風装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、放射方向Frに複数の動翼ブレード2p…を設けた動翼部2と、この動翼部2を回転させる回転駆動部3と、放射方向Frに複数の静翼ブレード4p…を設け、かつ動翼部2による送風方向Fw前方に固定して配設した静翼部4と、この静翼部4の送風方向Fw前方に配し、かつ当該静翼部4からの送風Wを散布方向に整流する整流部5とを備え、この整流部5に臨ませた複数の噴射ノズルN…から噴射される薬液を散布方向に噴霧するスピードスプレーヤMの送風装置1を構成するに際して、複数の静翼ブレード4p…における少なくとも一部の静翼ブレード4p…の表面4ps…に、ジグザグ形状となる凸条部6…を、放射方向Frに沿って設けてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、好適な実施の形態により、凸条部6を設けるに際しては、静翼ブレード4pの表面4psに対してプレス成形型により膨出形成することができる。なお、凸条部6は、ジグザグ形状に沿って、間欠形成してもよいし、又は連続形成してもよい。また、凸条部6は、一列L1により形成してもよいし、静翼ブレード4pの送風方向Fwにおける前後に二列L1,L2…以上により形成してもよい。さらに、静翼ブレード4pを形成するに際しては、送風方向Fwにおける前端辺4pf及び(又は)後端辺4prを、少なくとも、直線形状SL,曲線形状SR又は波形形状SWにより形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係るスピードスプレーヤMの送風装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 静翼ブレード4pに、静音化機能を有する凸条部6…を設けても、静翼ブレード4pにおける全体の基本形状を変更したり、あるいは全体の面積が縮小するなどの副作用を伴わないため、凸条部6…による静音効果を確保できることに加え、静翼ブレード4pに求められる本来の整流効果に対する影響を回避できるとともに、全体のサイズアップを招くなどのマイナス要因も回避できる。
【0014】
(2) 静音化機能を有するジグザグ形状となる凸条部6…は、静翼ブレード4p…の表面4ps…に設けるため、様々なパターン形状を有する凸条部6…の選定が可能になる。即ち、凸条部6…の形状を選定するに際しては、静翼ブレード4pの全体形状や回転速度等に対応した様々なパターン形状を選定できるなど、静音効果を高める観点からの発展性及び融通性に優れる。
【0015】
(3) 好適な態様により、凸条部6を設けるに際し、静翼ブレード4pの表面4psに対してプレス成形型により膨出形成すれば、静翼ブレード4pを製作するプレス成形工程において、同時に凸条部6の形成も行うことができるなど、製作工数を増加させることなく、容易に実施することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、凸条部6は、ジグザグ形状に沿って、間欠形成してもよいし、連続形成してもよいなど、様々な実施形態を柔軟に選定できるなど、高い設計自由度を確保できるとともに、特に、間欠形成により実施すれば、単純形状の組合わせにより凸条部6を設けることができるため、静翼ブレード4pのプレス成形型に、凸条部6に係わる追加的な加工を施す場合であっても、低コストかつ容易に行うことができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、凸条部6…は、一列L1により形成してもよいし、静翼ブレード4pの送風方向Fwにおける前後に二列L1,L2…以上により形成してもよいなど、車両のグレードや作用効果等に対応した任意の配列数を選定することができ、配列数の観点から凸条部6…の最適化を図ることができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、静翼ブレード4pを形成するに際し、送風方向Fwにおける前端辺4pf及び(又は)後端辺4prを、少なくとも、直線形状SL,曲線形状SR又は波形形状SWにより形成すれば、凸条部6による静音化機能に加え、前端辺4pf及び(又は)後端辺4prの形状選定に基づく静音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の好適実施形態に係る送風装置における静翼ブレードの一部抽出拡大図を含む静翼部の斜視図、
図2】同送風装置における静翼ブレードの平面図、
図3】同送風装置における静翼ブレードの図2におけるA視側面図(a),B−B切断面図(b)及びC−C切断面図(c)、
図4】同送風装置の全体構成図、
図5】同送風装置の動翼部を除いた静翼部の背面図、
図6】同送風装置を備えるスピードスプレーヤの外観側面図、
図7】同送風装置における静翼ブレードの変更例を示す平面図、
図8】同送風装置における静翼ブレードの他の変更例を示す平面図、
図9】同送風装置における静翼ブレードの他の変更例を示す平面図、
図10】同送風装置における静翼ブレードの他の変更例を示す平面図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る送風装置1の理解を容易にするため、スピードスプレーヤMの全体の概略構成について、図6を参照して説明する。
【0022】
スピードスプレーヤMにおいて、50はシャーシであり、このシャーシ50の前側に、左右一対の前輪51…を備えるとともに、後側に、左右一対の後輪52…を備え、搭載するエンジンにより自走する。また、シャーシ50上のボディ53には、前部に運転席54を備えるとともに、運転席54の前方におけるフロントパネル55には、ヘッドライト等の灯火器やバックミラー等の必要な車両設備を備える。さらに、運転席54の後方には、薬液タンク57及びエンジンルームや後述する回転駆動部3等を収容した機械室を搭載するとともに、この後方に本実施形態に係る送風装置1を備える薬液噴霧部58を搭載する。したがって、この薬液噴霧部58には、送風装置1と、この送風装置1に対して薬液を噴射する複数の噴射ノズルN…を備える薬液供給部59が含まれる。
【0023】
次に、本実施形態に係る送風装置1の具体的構成について、図1図6を参照して説明する。
【0024】
送風装置1は、図6に示すボディ53におけるボディ後部53rの内側に配した図1に示す風胴部21を備え、この風胴部21における後部の内側には、図4に示す複数の動翼ブレード2p…を放射方向Frに設けた動翼部2を配する。したがって、複数の動翼ブレード2p…は、周方向に沿って等間隔置きに配される。また、図6に示すボディ53におけるボディ中間部53mの内側に配した機械室には、図4に示す回転駆動部3を備え、この回転駆動部3から後方に突出する回転シャフト3sの先端に動翼部2の中心を取付ける。これにより、動翼部2は回転駆動部3により回転する。なお、回転駆動部3の回転駆動源はエンジンとなる。
【0025】
一方、動翼部2の送風方向Fw前方には、図1及び図4に示す静翼部4を固定して配設する。静翼部4は中心位置に円筒基部4bを有し、この円筒基部4bと風胴部21間に複数の静翼ブレード4p…を配する。この場合、各静翼ブレード4p…は、周方向に沿って等間隔置きに配し、かつそれぞれ放射方向Frに沿って配するとともに、各静翼ブレード4p…における内端を円筒基部4bの外周面に固定し、かつ外端を風胴部21の内周面に固定する。例示の静翼部4は十五枚の静翼ブレード4p…を備えている。
【0026】
この静翼ブレード4p…は、本発明の要部を構成する。一枚の静翼ブレード4pを図1図3に示す。静翼ブレード4pの基本形状は、図2に示すように、前後方向長さが短くなる矩形に形成するとともに、図3に示すように、短辺方向に緩やかに湾曲させて形成する。なお、例示する静翼ブレード4pには、厚さ2〜3〔mm〕の鋼板を用いることができる。そして、各静翼ブレード4p…の表面4psに、ジグザグ形状となる凸条部6、即ち、送風方向Fw上流側から見てハの字を順次配列した形状となる凸条部6を放射方向Frに沿って設ける。例示する図2の静翼ブレード4pは、送風方向Fwにおける前端辺4pfと後端辺4prの形状は、いずれも直線形状SLとして形成する。
【0027】
この場合、静翼ブレード4pの表面4psに対して、プレス成形型によりプレス成形することにより、図3(a),(b)に示すような凸条部6を膨出形成することができる。したがって、静翼ブレード4pの表面4psは、一方の面が突出し、他方の面が窪むエンボス形態となる。このように、凸条部6を設けるに際し、静翼ブレード4pの表面4psに対してプレス成形型により膨出形成すれば、静翼ブレード4pを製作するプレス成形工程において、同時に凸条部6の形成も行うことができるなど、製作工数を増加させることなく、容易に実施できる利点がある。
【0028】
また、凸条部6のジグザグ形状は間欠形成する。即ち、図2に示すように、比較的短い長さの直線形状を有する凸条メンバ6pを基本とし、例示の場合、六つの凸条メンバ6p…を放射方向Fr(長手方向)に順次並べて形成した。この際、一端に位置する凸条メンバ6pを、放射方向Frに対して45〔°〕傾斜させるとともに、次の凸条メンバ6pを、放射方向Frに対して反対側へ45〔°〕傾斜させる態様を順次繰り返すことにより、ジグザグ形状となる凸条部6を形成する。図3(b)は凸条メンバ6pの長手方向の切断面を示す。さらに、図3(c)は凸条メンバ6pの長手方向に対する直角方向の切断面を示し、この切断面の形状は、ほぼ半円形(ドーム形)となる。このように、凸条部6を設けるに際し、ジグザグ形状に沿って、間欠形成すれば、単純形状の組合わせにより凸条部6を設けることができるため、静翼ブレード4pのプレス成形型に、凸条部6に係わる追加的な加工を施す場合であっても、低コストかつ容易に行うことができる利点がある。
【0029】
他方、この静翼部4の送風方向Fw前方には、当該静翼部4からの送風Wを、散布方向(放射方向Fr)に整流する整流部5を配設する。この整流部5には、軸流方向、即ち、静翼部4から送られる車輛(ボディ53)の前方向(軸方向)への送風Wを、ほぼ直角方向となる放射方向Frへガイドし、放射方向Fr(散布方向)に放出させる湾曲整流面5sを備えている。そして、この整流部5における送風空間56には、図6に示すように、薬液供給部59における複数の噴射ノズルN…を臨ませる。各噴射ノズルN…は、図に現れない薬液配管,バルブ及び送液ポンプを介して前述した薬液タンク57に接続される。なお、60は風胴部21の後端に設けたファンガードを示す。
【0030】
次に、本実施形態に係る送風装置1の機能(作用)について、図1図6を参照して説明する。
【0031】
今、スピードスプレーヤMは薬液噴霧モードにより運転されているものとする。この場合、回転駆動部3の回転により動翼部2が回転する。このときの動翼部2の回転方向は、図1中、反時計方向となる。この動翼部2の回転により、外気が風胴部21におけるファンガード60を設けた後端口から吸入され、前方に送風Wが行われる。この送風Wは、静翼部4により軸方向に一次整流されるとともに、さらに、整流部5により直角方向(放射方向Fr)に二次整流される。そして、この際、薬液タンク57からは、各噴射ノズルN…に対して薬液が供給されるため、各噴射ノズルN…から薬液が噴射されるとともに、この噴射された薬液は送風Wに乗り、放射方向Frとなる散布方向に噴霧される。
【0032】
ところで、送風装置1は、広範囲に薬液を噴霧する必要があることから、車両後部に、送風Wを行う大型の動翼部2を配設するとともに、この動翼部2の前方に、送風Wを軸方向に一次整流して次の整流部5に送る静翼部4を配設しているため、静翼部4で発生する騒音が無視できない。騒音の発生原因は、送風Wにより静翼ブレード4pで生じる比較的大きな渦流といわれており、従来における静音化技術も、主に、この対策を図ったものである。
【0033】
本実施形態に係る送風装置1は、静音効果を期待できるフクロウの羽根の原理を応用した静翼ブレード4p、即ち、フクロウの羽根に類する機能を生じる凸条部6を設けた静翼ブレード4pを備えている。フクロウはほとんど音を発てずに獲物に近づくことができ、その原理は、音の発生源となる渦流を小さく抑制できる羽根の構造にあるといわれている。本実施形態に係る送風装置1では、各静翼ブレード4p…の表面4ps…に、ジグザグ形状となる凸条部6…を、放射方向Frに沿って形成したため、動翼部2からの送風Wにより静翼ブレード4p上で渦流が発生するとしても、比較的小さな(細かな)渦流に抑えられ、発生する騒音に対する低減化(静音化)が図られる。
【0034】
このように、本実施形態に係るスピードスプレーヤMの送風装置1のよれば、基本構成として、各静翼ブレード4p…の表面4ps…に、静音化機能を有するジグザグ形状の凸条部6…を、放射方向Frに沿って設けたため、静翼ブレード4pにおける全体の基本形状を変更したり、あるいは全体の面積が縮小するなどの副作用を伴わないため、凸条部6…による静音効果を確保できることに加え、静翼ブレード4pに求められる本来の整流効果に対する影響を回避できるとともに、全体のサイズアップを招くなどのマイナス要因も回避できる。また、静音化機能を有するジグザグ形状となる凸条部6…は、静翼ブレード4p…の表面4ps…に設けるため、様々なパターン形状を有する凸条部6…の選定が可能になる。即ち、凸条部6…の形状を選定するに際しては、静翼ブレード4pの全体形状や回転速度等に対応した様々なパターン形状を選定できるなど、静音効果を高める観点からの発展性及び融通性に優れる。
【0035】
次に、本実施形態に係る送風装置1に使用する静翼ブレード4pの各種変更例について、図7図10を参照して説明する。
【0036】
図7に示す変更例は、静翼ブレード4pの後端辺4prの形状を変更したものである。即ち、図2に示した基本実施形態では、送風方向Fwにおける後端辺4prの形状を直線形状SLにより形成したが、図7に示す変更例は、後端辺4prを波形形状SWにより形成したものである。なお、例示の前端辺4pfは直線形状SLである。このように、後端辺4prを波形形状SWにより形成すれば、凸条部6による静音化機能に加え、後端辺4prの波形形状SWに基づく静音化を図れる利点がある。
【0037】
図8に示す変更例は、静翼ブレード4pにおける凸条部6の数量を変更したものである。即ち、図2に示した基本実施形態では、ジグザグ形状となる凸条部6を設けるに際し、一列L1により形成した例を示したが、図8に示す変更例は、静翼ブレード4pの送風方向Fwにおける前後に二列L1,L2により形成したものである。
このように、凸条部6…は、一列L1により形成してもよいし、静翼ブレード4pの送風方向Fwにおける前後に二列L1,L2…以上により形成してもよく、その配列数は任意である。これにより、車両のグレードや作用効果等に対応した任意の配列数を選定することができ、配列数の観点から凸条部6…の最適化を図れる利点がある。
【0038】
図9に示す変更例は、静翼ブレード4pにおける凸条部6の形成方法を変更したものである。即ち、図2に示した基本実施形態では、ジグザグ形状の凸条部6を設けるに際し、比較的短い長さの直線形状を有する凸条メンバ6pを基本とし、六つの凸条メンバ6p…を長手方向に順次並べることによりジグザグ形状に形成したものであり、いわば凸条部6を間欠形成したものである。これに対して、図9に示す変更例は、ジグザグ形状の凸条部6を設けるに際し、ジグザグ形状に沿って連続形成したものである。このように、凸条部6を設けるに際しては、様々な形成方法を柔軟に選定できるなど、高い設計自由度を確保できる利点がある。
【0039】
加えて、図9に示す変更例は、前端辺4pf及び後端辺4prを形成するに際し、仮想線で示す曲線形状SRにより形成する場合を例示する。このように、静翼ブレード4pを形成するに際しては、送風方向Fwにおける前端辺4pf及び(又は)後端辺4prを、図2に示す直線形状SLのみならず、図9に示す曲線形状SRや図7示した波形形状SWにより形成可能であり、凸条部6による静音化機能に加え、前端辺4pf及び(又は)後端辺4prの形状選定に基づく静音化により、より静音化効果を高めることができる。
【0040】
図10に示す変更例は、前端辺4pf及び後端辺4prを形成するに際し、双方のそれぞれに異なる波形形状SW,SWを適用したものである。なお、図7に示した変更例は、後端辺4prにのみ波形形状SWを適用した点が異なる。このように、前端辺4pfと後端辺4prは、少なくとも、直線形状SL,曲線形状SR又は波形形状SWにより形成することができる。したがって、これらはそれぞれ単独で適用してもよいし、組合わせにより適用してもよい。なお、図7図10において、図2と同一部分については同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0041】
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0042】
例えば、凸条部6…を設けるに際し、全部の静翼ブレード4p…に設けた場合を示したが、一部の静翼ブレード4p…に設ける場合を排除するものではない。また、凸条部6を設けるに際し、静翼ブレード4pの表面4psに対してプレス成形型により膨出形成する場合を示したが、別途形成した凸条部6を溶接やネジ止め等により取付けてもよい。さらに、凸条部6…は静翼ブレード4pの片面にのみ設ける場合を示したが、両面に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る送風装置は、薬液を噴霧する各種スピードスプレーヤに利用できる。この場合、スピードスプレーヤには、薬液を散布する各種形態の車両が含まれ、例えば、薬液散布装置を荷台に搭載した四輪トラックやトラクタ等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1:送風装置,2:動翼部,2p…:動翼ブレード,3:回転駆動部,4:静翼部,4p…:静翼ブレード,4ps…:静翼ブレードの表面,4pf:静翼ブレードの前端辺,4pr:静翼ブレードの後端辺,5:整流部,6…:凸条部,Fr:放射方向,Fw:送風方向,W:送風,N…:噴射ノズル,M:スピードスプレーヤ,SL:直線形状,SR:曲線形状,SW:波形形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10