【文献】
社団法人日本化学会,第4版 実験化学講座22 有機合成IV −酸・アミノ酸・ペプチド−,丸善株式会社,1992年,第138−151頁
【文献】
社団法人日本化学会,第4版 実験化学講座20 有機合成II −アルコール・アミン−,丸善株式会社,1992年,第279−280頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
<1>本発明の製造方法により製造される色素化合物
本発明の製造方法により製造される色素化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0018】
一般式(1)中、R
1は、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、スルホン酸基またはベンジルオキシ基である。これらのうち、製造における反応効率の観点から、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(1)中、R
2は水素原子、ヒドロキシ基、または炭素数1〜4のアルコキシ基である。これらのうち、製造における反応効率の観点から、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、またはエトキシ基が好ましく、光線吸収特性の観点からヒドロキシ基が特に好ましい。
一般式(1)に示されるように、本発明の色素化合物はベンゾフェノン骨格及びアゾベンゼン骨格を有し、これらが色素部位である。
一般式(1)中、R
3は、下記式(2)で表される。
【0020】
一般式(2)中、R
4は水素原子またはメチル基である。
一般式(2)中、R
5は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基であり、好ましくは置換基を有さない炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基とは、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基を意味する。かかるアルキレン基は置換基を有さなくても有していてもよく、置換基を有する場合はアルキレン基の炭素に炭素数1〜2のアルキル基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボキシ炭素数1〜2のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜2のヒドロキシアルキル基、アミノ基、炭素数1〜2のアミノアルキル基等の置換基が結合している態様が挙げられる。
このように、置換基R
3は重合性基である(メタ)アクリロイルアミノ基にスペーサーが結合した基であり、本発明の色素化合物において共重合に関与する部位である。一般式(2)で表される構造であることにより、本発明の色素化合物は他の重合性モノマーとの反応効率が高いという性質を有する。
なお、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
また、一般式(1)において置換基R
3はアゾフェニル基の3位又は4位に結合していることが好ましい。
【0021】
一般式(1)で表される本発明の色素化合物は、特に限定されないが、例えば以下の(1−1)〜(1−16)に示される構造を有するものが好ましくあげられる。
【0025】
一般式(1)で表される色素化合物は、一分子内に、紫外線吸収性能を有するベンゾフェノン骨格(紫外線吸収部)と青色領域光吸収性能を有するアゾベンゼン骨格(発色団)とを有する。これら色素部位の存在により本発明の色素化合物は、紫外領域(波長380nm以下)及び青色領域(波長380〜500nm)の透過を抑制する性能(光線吸収特性)を有する。本発明の色素化合物は、従来の色素化合物(例えば、特許文献6に記載の2,4−ジヒドロキシ−5−(4−(2−(N−2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ)エチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン(BMAC))に比して、より光線吸収特性に優れる。具体的には、紫外可視吸収スペクトルを測定するとチャートの立ち上がりが420〜500nm辺りにシャープに現れ、紫外・青色領域における光線透過抑制能に優れる。
また一般式(1)で表される色素化合物は、一分子中に紫外線吸収部及び発色団(ひとまとめに色素部位ともいう)が存在するため、発色団が紫外線によりダメージを受けて色素が経時退色してしまうということが生じにくい。
そして、一般式(1)で表される色素化合物において重合性基と色素部位とはアミド結合でつながっている。かかる結合はアルカリ条件下でも安定であるため、後述する本発明のポリマーから色素部位が脱離することがない。その結果、従来のエステル結合を有する色素化合物やそれを用いた共重合体では乏しかった、アルカリ条件下での安定性が実現される。
【0026】
本発明の製造方法に係る第一の実施態様は、下記一般式(3)で表される化合物を出発物質又は中間体として用いることを特徴とする。
【0027】
【化10】
一般式(3)中、R
6は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基の具体例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
【0028】
また、本発明の製造方法に係る第二の実施態様は、下記一般式(4)で表される化合物を出発物質又は中間体として用いることを特徴とする。
【0029】
【化11】
一般式(4)中、R
7は水素原子またはメチル基である。また、R
8は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基の具体例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
【0030】
(合成方法1)
本発明の製造方法に係る第一の実施態様では、一般式(3)で表されるニトロアリール化合物を出発物質又は中間体として使用し、これにアクリル酸化合物又はメタクリル酸化合物等をアミド化反応により反応させて重合性基を導入するアミド化工程、得られた重合性ニトロアリール化合物のニトロ基をアミノ基に還元する還元工程、得られた重合性アミノアリール化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得るジアゾ化工程、及び得られたジアゾニウム塩をベンゾフェノン化合物とジアゾカップリングして一般式(1)で表される色素化合物を得るジアゾカップリング工程を含み得る。
【0031】
(合成方法2)
また、本発明の製造方法に係る第二の実施態様では、一般式(4)で表される重合性ニトロアリール化合物を出発物質又は中間体として使用し、該重合性ニトロアリール化合物のニトロ基をアミノ基に還元する還元工程、得られた重合性アミノアリール化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得るジアゾ化工程、及び得られたジアゾニウム塩をベンゾフェノン化合物とジアゾカップリングして一般式(1)で表される色素化合物を得るジアゾカップリング工程を含み得る。
合成方法1及び2の概略を以下の反応式に示す。なお、式中、R´はヒドロキシ基又はハロゲン原子を表し、R
1〜R
8は前述と同様の置換基を表す。
【0033】
その他、本発明の製造方法は、アミノアルキル基を有するニトロアリール化合物の脂肪族アミンを適当な保護基で置換し、ニトロ基をアミノ基に還元した後、その脂肪族アミンが保護されたアミノアリール化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得るジアゾ化工程、得られたジアゾニウム塩とベンゾフェノン化合物とをジアゾカップリングさせジアゾ化合物を得るジアゾカップリング工程、酸処理等で脂肪族アミンの保護基を外す脱保護工程、及び得られたジアゾ化合物にアクリル酸化合物又はメタクリル酸化合物等をアミド化反応により反応させて重合性基を導入するアミド化工程を含む合成方法等によっても製造することができる。
【0034】
なお、上述した各合成方法におけるジアゾ化工程は、公知の方法で行うことができる。
ジアゾ化剤としては、亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸ナトリウム水溶液、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カリウム水溶液、亜硝酸イソアミル、及び/又はニトロシル硫酸(硫酸溶液)等を用いることができる。ジアゾ化剤の使用量は特に制限はないが、重合性基含有アミノアリール化合物1モルあたり1.00〜1.20モルであることが好ましく、1.02〜1.10モルであることがより好ましい。またジアゾ化工程での反応温度は、−78℃〜50℃の範囲であり、−20℃〜20℃の範囲であることが好ましく、−20℃〜10℃の範囲であることがより好ましい。またジアゾ化工程は中性〜酸性の条件で行うことが好ましく、反応溶媒に適宜塩酸等の酸を添加することができる。
【0035】
また、前記合成方法におけるジアゾカップリング工程では、触媒として弱塩基を使用し、弱塩基条件下で行うことが好ましい。これは、一般的にジアゾカップリング反応で用いられる水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基では、重合性アミノアリール化合物のジアゾニウム塩に含まれるアミド構造が分解又は脱離してしまい、目的物の収率が低下するところ、弱塩基を用いれば分解を顕著に抑制することができ、かつ十分な反応性を確保することができ、結果として反応収率を飛躍的に高くすることができるからである。さらに、ジアゾニウム塩に含まれるビニル基も、前述のような強塩基存在下においては重合することが知られており、収率の著しい低下の原因となるが、強塩基に代えて弱塩基を用いればこれも抑制することができるからである。
ここで用いられる弱塩基は、強アルカリと弱酸とからなる塩でかつその水溶液が1atm、0℃〜25℃でアミド結合を加水分解せず、ビニル基の重合反応を惹起しないものであれば特に制限されず、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム等の弱塩基を用いることが好ましい。弱塩基の使用量はナトリウム当量換算でジアゾニウム塩1モルあたり4.0〜10.0モルであることが好ましく、6.0〜8.0モルであることがより好ましい。また、ジアゾカップリング工程における反応温度は−10℃〜10℃の範囲であり、−5℃〜5℃の範囲であることがより好ましい。
【0036】
ジアゾカップリング工程における反応溶媒としては、有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、スルホラン等スルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド等スルホキシド系溶媒、テトラメチルウレア等ウレイド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン等ピリジン系溶媒等)単独又は複数の種類の混合系として、あるいは更に有機溶媒と水との混合系及び水単独系を用いることができるが、このなかではアルコール系溶媒が好ましく、またこれらに水を混合して用いることも好ましい。さらに、反応によってはアルコール系溶媒、水に加えてアミド系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を添加して用いても良い。
【0037】
なお、ニトロアリール化合物とは上記反応式中の(i)で表されるものである。また、重合性ニトロアリール化合物とは同(ii)で表されるものであり、重合性アミノアリール化合物とは同(iii)で表されるものであり、ベンゾフェノン化合物とは同(vi)で表されるものである。
【0038】
前記重合性アミノアリール化合物又は重合性ニトロアリール化合物は、アミノ置換芳香族アミン又はニトロ置換芳香族アミンと(メタ)アクリル酸とのアミド化反応、アミノ置換芳香族アルキルアミン又はニトロ置換芳香族アルキルアミンと(メタ)アクリル酸とのアミド化反応、アミノ置換芳香族アミン又はニトロ置換芳香族アミンと(メタ)アクリル酸クロライドとのアミド化反応、アミノ置換芳香族アルキルアミン又はニトロ置換芳香族アルキルアミンと(メタ)アクリル酸クロライドとのアミド化反応等によって得ることができる。
前記アミノ置換芳香族化合物は、そのアミノ基がt−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基等の保護基で置換されているものを使用することができる。
【0039】
前記重合性アミノアリール化合物としては、N−(4−アミノフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−[(4−アミノフェニル)メチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(4−アミノフェニル)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(4−アミノフェニル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[4−(4−アミノフェニル)ブチル](メタ)アクリルアミド、N−[(3−アミノフェニル)メチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(3−アミノフェニル)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(3−アミノフェニル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[4−(3−アミノフェニル)ブチル](メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、前記重合性ニトロアリール化合物としては、N−(4−ニトロフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−[(4−ニトロフェニル)メチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(4−ニトロフェニル)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(4−ニトロフェニル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[4−(4−ニトロフェニル)ブチル](メタ)アクリルアミド、N−[(3−ニトロフェニル)メチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(3−ニトロフェニル)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(3−ニトロフェニル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[4−(3−ニトロフェニル)ブチル](メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法では、前記合成方法1又は合成方法2のようにジアゾカップリング工程の前にアミド化工程を行う合成方法が好ましい。なぜなら、副生物の生成を回避できるからである。その結果、合成方法1又は合成方法2によれば反応効率が良く、高い収率で本発明の色素化合物を得ることができる。
合成方法1で出発物質として使用するニトロアリール化合物は、アミノアリール化合物より安価である。さらに、アミド化反応では通常、重合性基を導入する際に、アミノ基に対して二分子の重合性基が導入された副生物が生成するが、ニトロアリール化合物をアミド化した場合に生じるこの副生物の除去は、例えばアミノアリール化合物をアミド化した場合よりも容易である。よって、このような経済性や操作の簡便性の観点も考慮すると、本発明の製造方法は、従来方法に比較して有利である。
本発明の製造方法により一般式(1)で表される化合物の工業的生産が可能となり、有用な色素又は重合性紫外線吸収色素モノマーとして使用されうる。
【0041】
<2>ポリマー
一般式(1)で表される色素化合物は、他の共重合モノマー一種又は二種以上と共重合させ、ポリマーにすることができる。
一般式(1)で表される色素化合物は、発色団と重合性基が立体的に離れているので、重合を阻害することがない。そのため他の共重合モノマーとの反応性のよい共重合モノマーとして使用することができる。
前記他の共重合モノマーとしては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0042】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル(メタ)アクリレート類;
ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等のシリコン含有(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロ−tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロ−tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシオクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート類;
スチレン、ペンタフルオロスチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、(ペンタメチル−3,3−ビス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニル)スチレン、(ヘキサメチル−3−トリメチルシロキシトリシロキサニル)スチレン、ジメチルアミノスチレン等のスチレン誘導体類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸;
【0043】
N−ビニルピロリドン、α−メチレン−N−メチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルピロリドン等のビニルラクタム類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
アミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のアルキル基、フッ素含有アルキル基、シロキサニルアルキル基で置換されていても良いアルキルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
4−ビニルピリジン;
ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペリジン、N−ビニルサクシンイミド等のヘテロ環式N−ビニルモノマー;
N−(メタ)アクリロイルピペリジン;
N−(メタ)アクリロイルモルホリン。
【0044】
なお、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、これは(メタ)アクリル酸誘導体についても同様である。
また、上記の共重合モノマーを一種又は二種以上選択して重合してマクロモノマーとし、それをポリマー製造用の共重合モノマーの1つとして用いることもできる。
【0045】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは、一般式(1)で表される色素化合物と他の共重合モノマー一種又は二種以上とを、任意の分量で配合して、均一に混合した後、共重合させることで得ることができる。
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーの共重合の際に、一般式(1)で表される色素化合物を配合する割合は、ポリマーの用途、例えば眼内レンズであればその厚みにも影響されるが、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して、0.001〜5重量部であることが好ましく、0.005〜2重量部であることがより好ましく、0.01〜0.06重量部であることがさらに好ましい。0.001重量部未満ではポリマーの発色が悪くなるおそれがある。また、5重量部を超えると、ポリマーの着色が濃くなりすぎて透明性が低下したり、ポリマーの物性(たとえば、強度等)が低下したり、本発明の色素化合物がポリマーから溶出しやすくなったりするおそれがある。
【0046】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは、当該技術分野において通常行なわれている方法によって合成することができる。例えば、一般式(1)で表される色素化合物と他の共重合モノマー一種又は二種以上とを均一に混合し、及び必要に応じて重合開始剤を添加して、室温〜約130℃の温度範囲で徐々に加熱したり、あるいはマイクロ波、紫外線、放射線(ガンマ線)等の電磁波を照射したりすることにより重合することができる。なお、重合は、ラジカル重合、塊状重合または溶媒重合等の当業者にとって広く一般的に使用されている種々の方法を採用することができ、また加熱重合させる場合は、温度を段階的に昇温させてもよい。
【0047】
上記重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等のラジカル重合開始剤が挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を使用することができる。その使用量は、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して、約0.01〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。また、光線等を利用して重合する場合には、光重合開始剤や増感剤をさらに添加することが好ましい。
【0048】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを合成する際には、公知の重合性紫外線吸収剤(主に紫外線部分を吸収するもの)や重合性色素(紫外線吸収性能のない主に青色領域の光を吸収するもの)、あるいは重合性紫外線吸収性色素を併用することもできる。これらの重合性紫外線吸収剤や重合性色素や重合性紫外線吸収性色素の併用により、最終的に得られるポリマーの紫外線吸収性能と青色領域光吸収性能のバランスを微調整することが可能となる。特に、後述のように一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを眼内レンズ用材料に供する場合、眼内レンズの色調を調整したり、紫外線吸収能を十分に付与したりするためにこのような併用は有用である。
添加量としては、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上となるように調整し、また十分な重合速度や重合度を確保するために全ての共重合モノマー100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下となるように調整する。
【0049】
上記目的のため併用し得る重合性紫外線吸収剤としては、例えば特開2003−253248号公報に開示のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤や特許第2685980号公報に開示のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤を使用することができる。具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2',4'−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2'−ヒドロキシ−3'−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3'−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(2"−メタクリロイルオキシエトキシ)−3'−t−ブチルフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等のサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2−シアノ−3−フェニル−3−(3'−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
また上記のような目的のため併用し得る重合性色素としては、例えば特開平10−251537号公報に開示のアゾ系、アントラキノン系、ニトロ系、フタロシアニン系の重合性色素を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
重合性アゾ系色素の具体例としては、例えば、1−フェニルアゾ−4−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−フェニルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−ナフチルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(α−アントリルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−((4'−(フェニルアゾ)−フェニル)アゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(2',4'−キシリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(o−トリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、2−(m−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4,6−ビス(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−(m−ビニルアニリノ)−4−(4'−ニトロフェニルアゾ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチルオキシ)−4−(m−ビニルアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(p−ビニルアニリノ)−4−(1'−(o−トリルアゾ)−2'ナフチルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、N−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチル)−3−ビニルフタル酸モノアミド、N−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチル)−6−ビニルフタル酸モノアミド、3−ビニルフタル酸−(4'−(p−スルホフェニルアゾ)−1'−ナフチル)モノエステル、6−ビニルフタル酸−(4'−(p−スルホフェニルアゾ)−1'−ナフチル)モノエステル、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−フェニルアゾフェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(8'−ヒドロキシ−3',6'−ジスルホ−1'−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(1'−フェニルアゾ−2'−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(p−トリルアゾ)フェノール、2−アミノ−4−(m−(2'−ヒドロキシ−1'−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(2'−ヒドロキシ−1'−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(4'−ヒドロキシ−1'−フェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(4'−ヒドロキシフェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(3'−メチル−1'−フェニル−5'−ヒドロキシ−4'−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(3'−メチル−1'−フェニル−5'−ヒドロキシ−4'−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(p−フェニルアゾアニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、4−フェニルアゾ−7−(メタ)アクリロイルアミド−1−ナフトール等が挙げられる。
【0051】
重合性アントラキノン系色素の具体例としては、例えば、1,5−ビス((メタ)アクリロイルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、5−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、8−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ニトロ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ヒドロキシ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5'−ビス(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5−ビス(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(3'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(4'−ビニルベンゾイルオキシエチルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−(3'−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(4'−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(2'−ビニルベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3'−(メタ)アクリロイルアミノフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3'−(メタ)アクリロイルアミノベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−(β−エトキシカルボニルアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1,5−ジ−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−イソプロポキシカルボニルアリルアミノ)−5−ベンゾイルアミド−9,10−アントラキノン、2−(3'−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル)−アミノ−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(3'−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル)−アミノ−アニリノ)−6−ヒドラジノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス−((4"−メトキシアントラキノン−1"−イル)−アミノ)−6−(3'−ビニルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ビニルフェノキシ)−4−(4'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル−アミノ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0052】
重合性ニトロ系色素の具体例としては、例えば、o−ニトロアニリノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合性フタロシアニン系色素の具体例としては、例えば(メタ)アクリロイル化テトラアミノ銅フタロシアニン、(メタ)アクリロイル化(ドデカノイル化テトラアミノ銅フタロシアニン)等が挙げられる。
【0053】
上記のような目的のため併用し得る重合性紫外線吸収性色素の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−3(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収色素や、2−ヒドロキシ−4−(p−スチレノアゾ)安息香酸フェニル等の安息香酸系重合性紫外線吸収色素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
また、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーの共重合の際に架橋剤を配合したり、共重合モノマーとして分子内に2個以上の重合性基を有するマクロモノマーを用いたりすることにより、得られるポリマー内に三次元架橋構造を形成することができる。これにより、ポリマーの機械的強度や硬度を向上させたり、ポリマーからモノマー(本発明の色素化合物を含む)の溶出を抑制したりすることができる。また、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを後述のように眼内レンズ用材料に供する場合に、均一で透明で歪みのない光学性に優れた眼内レンズを得ることができたり、眼内レンズに耐久性(耐薬品性、耐熱性、耐溶媒性)を付与したりすることもできる。
架橋剤やマクロモノマーを配合する場合、その配合割合は全ての共重合モノマー混合物100重量部あたり、0.01〜10重量部の割合の範囲内で使用することが好ましい。0.01重量部未満ではその効果が得られにくく、また10重量部を超えると得られるポリマーが脆くなる傾向がある。
【0055】
また、上記のようなマクロモノマーとしては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0056】
また、適当な共重合モノマーを選択して、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーに種々の機能性を付与することもできる。
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーに酸素透過性を付与する場合は、共重合モノマーとしてシリコン含有(メタ)アクリレート類、シリコン含有スチレン誘導体類等のシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類等を選択すればよい。
ポリマーの強度を高めたり硬度を調節したりする場合は、共重合モノマーとしてアルキル(メタ)アクリレート類やスチレンを含めたスチレン誘導体類または(メタ)アクリル酸等を選択すればよい。
共重合モノマーとしてフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類やフッ素含有スチレン誘導体類等のフッ素含有モノマーを選択すれば、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に抗脂質汚染機能が付与されたものとすることができる。
【0057】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーに親水性を付与する場合は、共重合モノマーとしてヒドロキシ(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレート、N−ビニルラクタム類等の親水性基を有するモノマーを選択すればよく、後述のように一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に含水性の柔軟な眼内レンズを得ることができる。
共重合モノマーとして芳香族環を含有するモノマー、例えば、スチレン系モノマーや芳香族環含有(メタ)アクリレート類等を選択すれば、本発明のポリマーを高屈折率のレンズ用材料とすることができる。
上記のように一般式(1)で表される色素化合物のポリマーに種々の機能性を付与するための共重合モノマーを選択して配合する場合は、全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上とし、また全ての共重合モノマー混合物100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下となるように適宜調整する。
【0058】
前述のように一般式(1)で表される色素化合物は、紫外領域(波長380nm以下)及び青色領域(波長380〜500nm)の光線吸収特性を有するため、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは紫外光を遮断し及び青色領域光の強度を減じることができる。具体的には500nm付近より光線透過率が減少し、400nm以下では光線透過率が0%となることが好ましい。さらに好ましくは、紫外可視吸収スペクトルを測定するとチャートの立ち上がりが420〜500nm辺りにシャープに現れ、従来の色素化合物(BMAC等)よりも紫外・青色領域における光線透過抑制能に優れる。さらには、400nm以下の波長光を透過させないために、他の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。従って、後述のように眼内レンズ用材料とした場合に、眼に対する光線の悪影響を抑えることができる。
【0059】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーにおいては、一般式(1)で表される色素化合物は共重合によりポリマー鎖に直接結合するため、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーから一般式(1)で表される色素化合物が溶出することがない。これは40℃のエタノールに一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを24時間浸漬した前後で光線透過率のスペクトルに変化が生じないことで確認することができる。
また、前述のように一般式(1)で表される色素化合物において、重合性基と色素部位とをつなぐアミド結合はアルカリ条件下(例えばpH12以上)でも安定であるため、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーから色素部位が脱離することがない。その結果、従来のエステル結合を有する色素化合物を用いた共重合体では乏しかった、アルカリ条件下での安定性が実現され、アルカリ処理後のポリマーにおいても高い光線吸収特性を維持する。これは、4Nの水酸化ナトリウム水溶液に本発明のポリマーを室温下で4時間浸漬した後の、浸漬液における光線透過率が実質的に100%であることで確認することができる。
【0060】
<3>眼内レンズ
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは、眼内レンズ用材料とすることができる。
一般に色素化合物は、ポリマーに添加した場合にその硬度を上げてしまうところ、一般式(1)で表される色素化合物は柔軟性に優れるため、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを眼内レンズ用材料として用いて成形した眼内レンズは柔軟性を保持することが期待でき、施術時の取扱いが容易となる。
また、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは、光や化学薬剤に優れた耐性を示し、堅牢性も高く、ポリマーから色素部位が溶出することもないため、安全性が高く、脱色や変色のない、優れた眼内レンズを得ることができる。
その他に、一般式(1)で表される色素化合物はメガネ、サングラス、コンタクトレンズ等の材料とすることもでき、また、塗料や建材等にも使用できる。
また、一般式(1)で表される色素化合物のポリマーは、化学的に安定な色素部位を有しており、温度変化やpH変化が激しいことが予想される戸外や過酷な環境下でも劣化なく使用することができる。
【0061】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合は、公知の方法により成形することができる。例えば適当な型又は容器中で重合反応を行い、棒状、ブロック状、板状のポリマーを得た後、切削加工、研磨加工等の機械的加工により所望の形状に加工したり、あるいは所望の形状に対応した型の中で重合反応を行ってポリマー成形物を得た後、必要に応じて機械的に仕上げ加工を施したりする手法が挙げられる。
また、眼内レンズの支持部を、眼内レンズとは別に作製して後から取り付けても良いし、眼内レンズと同時に(一体的に)成形しても差支えない。
【0062】
一般式(1)で表される色素化合物のポリマーを成形して眼内レンズとする場合、レンズの表面を親水性化するために、必要に応じて表面改質処理を施してもよく、プラズマ処理または紫外線による処理が好ましく、コロナ放電処理、グロー放電処理または紫外線/オゾン処理がより好ましい。その際の処理装置及び処理方法としては、従来から知られている通常の装置及び方法を用いることができる。
【実施例】
【0063】
【化13】
【0064】
2−(4−ニトロフェニル)エチルアミン塩酸塩(1.72g)と炭酸水素ナトリウム(5.00g)を水(25mL)に溶かし、酢酸エチル(25mL)を加え、氷浴中で撹拌を行った。そこに、メタクリロイルクロリド(1.79g)を滴下した。10分間撹拌後、酢酸エチルで抽出を行い、水及び飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥を行い、吸引ろ過で乾燥剤を除去した。ヘキサンと酢酸エチルの混和溶媒を用いて、再結晶を行った。N−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]メタクリルアミドを黄白色の結晶として得た。収量は1.25 g(63%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:1.93(s,3H),2.99(t,2H,J=6.8Hz),3.60(q,2H,J=6.8Hz),5.32(t,1H,J=1.2Hz),5.61(s,1H),5.82(br.s,1H),7.37(d,2H,J=8.6Hz),8.17(d,2H,J=8.6Hz).
次いで、N−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]メタクリルアミド(1.20g)を、エタノール(15mL)と水(5mL)に溶解させた。塩化アンモニウム(364mg)と鉄粉(933mg)を加え80℃で4時間還流を行った。鉄粉をろ取し、ロータリーエバポレーターにて濃縮を行った。水および酢酸エチルを加え、抽出操作を行い、水及び飽和食塩水で洗浄を行った。硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ取後、濃縮操作を行い、目的物を淡赤色の油状物として得た。収量は1.01g(97%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:1.91(s,3H),2.74(t,2H,J=6.8Hz),3.51(q,2H,J=6.8Hz),3.61(br.s,2H),5.27(t,1H,J=1.4Hz),5.59(s,1H),5.76(br.s,1H),6.64(d,2H,J=8.3Hz),6.98(d,2H,J=8.3Hz).
【0065】
【化14】
【0066】
4−ニトロベンジルアミン塩酸塩(1.51g)と炭酸水素ナトリウム(4.13g)を水(25mL)に溶かし、酢酸エチル(25mL)を加え、氷浴中で撹拌を行った。そこに、メタクリロイルクロリド(1.26g)を滴下した。10分間撹拌後,酢酸エチルで抽出を行い、水及び飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥を行い、吸引ろ過で乾燥剤を除去した。その後、ヘキサンと酢酸エチルの混和溶媒を用いて、再結晶を行った。N−(4−ニトロベンジル)メタクリルアミドを黄白色の結晶として得た。収量は1.05 g(60%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:2.01(s,3H),4.61(d,2H,J=6.0Hz),5.41(t,1H,J=1.0Hz),5.76(t,1H,J=1.0Hz),6.29(br.s,1H),7.45(d,2H,J=8.8Hz),8.17(d,2H,J=8.8Hz).
次いで、N−(4−ニトロベンジル)メタクリルアミド(811mg)を、エタノール(12mL)と水(4mL)に溶解させた。塩化アンモニウム(183mg)と鉄粉(573mg)を加え80℃で4時間還流を行った。鉄粉をろ取し、ロータリーエバポレーターにて濃縮を行った。水および酢酸エチルを加え、抽出操作を行い、水及び飽和食塩水で洗浄を行った。硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤をろ取後、濃縮操作を行い、目的物を淡赤色の油状物として得た。収量は580mg(89%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:1.97(t,3H,J=1.3Hz),3.67(br.s,2H),4.37(d,2H,J=5.6Hz),5.31(t,1H,J=1.4Hz),5.68(br.t,1H),5.92(br.s,1H),6.65(d,2H,J=8.3Hz),7.09(d,2H,J=8.3Hz).
【0067】
<重合性紫外線吸収色素の合成>
上記のように合成した重合性アミノアリール化合物を用い、重合性紫外線吸収色素を合成した。以下、実施例1及び2として示す。
【0068】
[実施例1] 2,4−ジヒドロキシ−5−[4−[2−(メタクリルアミド)エチル]フェニルアゾ]ベンゾフェノン(HBZ−PHM)の合成
【0069】
【化15】
【0070】
N−[2−(4−アミノフェニル)エチル]メタクリルアミド(930mg)に、1M塩酸(15mL)を加え、氷冷下で亜硝酸ナトリウム(355mg)の水(5mL)溶液を滴下し1時間4℃にて撹拌し、ジアゾニウム塩を調製した。次いで、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(975mg)をエタノール(40mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(970mg)の水(40mL)溶液を加えた。この混合物に氷冷下、前述のジアゾニウム塩を含む溶液を滴下した。混合物を4℃で1時間、次いで室温で2時間攪拌し、4M塩酸を滴下してpHを6に調節した。この混合物に水(40mL)を加え、析出物をろ取し、水で洗浄した。乾燥させた後にクロロホルムに溶解させ、シリカゲルに吸着させ、酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行い精製し、橙色の結晶を得た。この結晶にメタノールを加え還流を行い、室温で一晩放置し、析出した目的物を橙色結晶として得た。収量は774mg(40%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:1.93(t,3H,J=1.0Hz),2.94(t,2H,J=6.8Hz),3.61(q,2H,J=6.8Hz),5.31(t,1H,J=1.0Hz),5.61(t,1H,J=1.0Hz),5.81(br.t,1H),6.58(s,1H),7.33(d,2H,J=8.5Hz),7.56(t,2H,J=7.2Hz),7.64(tt,1H,J=7.2Hz,2.4Hz),7.72−7.76(m,4H),8.22(s,1H),12.89(s,1H),13.93(s,1H).
【0071】
[実施例2] 5−[4−[2−(メタクリルアミド)メチル]フェニルアゾ]−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(HBZ−BZM)の合成
【0072】
【化16】
【0073】
N−(4−アミノベンジル)メタクリルアミド(574mg)に、1M塩酸(9mL)を加え、氷冷下で亜硝酸ナトリウム(210mg)の水(3mL)溶液を滴下し1時間4℃にて撹拌し、ジアゾニウム塩を調製した。次いで2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(637mg)をエタノール(25mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(644mg)の水(25mL)溶液を加えた。この混合物に氷冷下、前述のジアゾニウム塩を含む溶液を滴下した。混合物を4℃で1時間、次いで室温で2時間攪拌し、4M塩酸を滴下してpHを6に調節した。この混合物に水(25mL)を加え、析出物をろ取し、水で洗浄した。乾燥させた後にクロロホルムに溶解し、シリカゲルに吸着させ、酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行い精製し、橙色の結晶を得た。この結晶にメタノールを加え還流を行い、室温で一晩放置し、析出した目的物を橙色結晶として得た。収量は370mg(29%)であった。得られた化合物について、
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)のスペクトルデータを示す。
δ:2.00(t,3H,J=1.1Hz),4.57(d,2H,J=6.0Hz),5.38(t,1H,J=1.4Hz),5.73(br.t,1H),6.16(br.s,1H),6.57(s,1H),7.41(d,2H,J=8.5Hz),7.56(t,2H,J=7.4Hz),7.63(tt,1H,J=7.3Hz,2.4Hz),7.71−7.78(m,4H),8.22(s,1H),12.88(s,1H),13.89(s,1H).
【0074】
<重合性紫外線吸収色素と他の重合性モノマーとの共重合例>
実施例1で得られた重合性紫外線吸収色素を他の重合性モノマーと共重合させた。
[製造例1]
実施例1にて得られた重合性紫外線吸収色素(HBZ−PHM)0.03質量部、アクリル酸2−フェノキシエチル60質量部、アクリル酸エチル40質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5質量部を均一に配合し、80℃で40分間重合させ、厚さ1mmのポリマーシートを作製した。得られたポリマーシートをサンプルとして、波長220〜800nmの光線透過率を測定した。結果を
図1に示す。
さらに、このサンプルを40℃のエタノールに24時間浸漬して溶出処理を行った後、再度、光線透過率を測定したところ、溶出処理前後でスペクトルは変化しなかった。このことは、重合性紫外線吸収色素が材料中に化学的に結合していることを示しており、本発明の色素化合物を他の紫外線吸収剤と併用してポリマー合成に用いても、重合後に溶出することはないことが確認できた。なお、光線透過率の測定には紫外可視分光光度計を用いた(以降、同じ)。
【0075】
<重合性紫外線吸収色素、重合紫外線吸収剤および他の重合性モノマーとの共重合例>
実施例1にて得られた重合性紫外線吸収色素を他の重合性紫外線吸収剤とともに他の重合性モノマーと共重合性させた。
[製造例2]
紫外線吸収剤として2−[2´−ヒドロキシ−5´−(2´´−メタクリロイルオキシエトキシ)−3´−t−ブチルフェニル]−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾールをさらに0.15質量部配合した以外は製造例1と同様にポリマーシートを作製した。得られたシートをサンプルとして、製造例1と同様に波長220〜800nmの光線透過率を測定した。その結果を
図2に示す。溶出処理前後での光線透過率のスペクトルは変化せず、本発明の重合性紫外線吸収色素を他の重合性紫外線吸収剤と併用しても、共重合体成分として重合体中に取り込まれ、重合後に溶出することはないことが確認できた。
【0076】
<アルカリ条件下での安定性比較>
参考例1にて得られたHBZ−PHM(1重量部)とメタクリル酸メチル(26重量部)を、ジオキサン(52重量部)、N,N−ジメチルホルムアミド(22重量部)及び水(20重量部)の混合溶媒中に仕込み、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.4重量部を加え、アルゴン雰囲気下75℃で5時間重合して、HBZ−PHM共重合体を得た。
対照例として、HBZ−PHMに代えて特許文献6(特開2006−291006号公報)の合成例1に開示の手順に従い合成した2,4−ジヒドロキシ−5−(4−(2−(N−2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ)エチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン(BMAC)を用いて同様に重合反応を行い、BMAC共重合体を得た。
得られた各共重合体の粉末をエタノールで12時間ソクスレー抽出した後の、粉末ポリマー(200mg)をそれぞれエタノール(5mL)に懸濁し、4N−NaOH(5mL)を加えて室温で4時間攪拌した。なお、このときの試験溶液は、pH試験紙でpH12〜14であることを示していた。撹拌終了後、4N−HClで中和しさらにエタノール(15mL)を加えた。不溶物をろ去してろ液を観察したところ、HBZ−PHM共重合体では無色透明であった。一方、BMAC共重合体では、ろ液は黄色に着色した。さらに、それぞれのろ液の波長220〜800nmの光線透過率を測定した結果を
図3に示す。BMAC共重合体のアルカリ処理後のろ液はBMAC共重合体と同様の透過率パターンを示した。このことは、BMACの色素部位がアルカリ処理により共重合体から脱離したことを強く示唆している。一方、HBZ−PHM共重合体のアルカリ処理後のろ液はいずれの波長の光線も透過し、アルカリ処理によってpH12以上の条件にした時でも共重合体から色素成分が遊離せず、すなわちBMAC共重合体よりもpH変化に対して安定であり、さらにpH変化に対してほとんど影響を受けないことが確認された。