特許第6492413号(P6492413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6492413-紙箱 図000002
  • 特許6492413-紙箱 図000003
  • 特許6492413-紙箱 図000004
  • 特許6492413-紙箱 図000005
  • 特許6492413-紙箱 図000006
  • 特許6492413-紙箱 図000007
  • 特許6492413-紙箱 図000008
  • 特許6492413-紙箱 図000009
  • 特許6492413-紙箱 図000010
  • 特許6492413-紙箱 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492413
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】紙箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B65D5/72 D
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-77893(P2014-77893)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-199501(P2015-199501A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】香山 充
【審査官】 田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−208652(JP,A)
【文献】 特開平11−139456(JP,A)
【文献】 特開2001−240071(JP,A)
【文献】 米国特許第04081128(US,A)
【文献】 特開2000−085755(JP,A)
【文献】 特開2011−225230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00−5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙箱本体の内側に中板(9)を備えていて、この中板(9)に、紙箱本体の上部側からの中板(9)に対する引っ張りの操作で中板(9)が上下に分割されるように前記引っ張りの方向(A)と直交する方向に直線状にした不連続な切り込みを入れてなる分割線(19)を設けて、前記中板(9)が、紙箱本体の上部側の移動板部(20)とこの移動板部(20)に前記分割線(19)を介して連接する固定板部(21)とに区分されていて、前記引っ張りの操作により分割線(19)での近接した切り込みと切り込みとの間のつなぎ(26)が破断し、前記移動板部(20)が前記固定板部(21)から分離して引き上げ可能となる紙箱において、
前記分割線(19)は、中板幅方向での中央に位置する一本の切り込み(17)とこの中央に位置する一本の切り込み(17)の両側方であって中板側辺側に一本ずつにして位置する切り込み(16、18)との三本の切り込みを不連続に配してなるものであり、
前記つなぎ(26)を間にして隣り合う前記中板側辺側の切り込み(16、18)と前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)との内、前記中板側辺側の切り込み(16、18)に、該中板側辺側の切り込み(16、18)のつなぎ(26)側の端部から前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)側であって分割線(19)の長さ方向と交差する斜め方向に屈曲して延設されて前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)と非交差となる第一延長部(29)とこの第一延長部(29)から分割線(19)の長さ方向に屈曲して延設されて前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)と平行にして近接する第二延長部(30)とからなる延長切り込み(28)が連続しており
前記中板幅方向の中央の切り込み(17)と前記延長切り込み(28)との間に、つなぎ破断手段(27)が設けられ、
前記つなぎ破断手段(27)は、
前記つなぎ(26)から延長切り込み(28)の終端側(31)にかけての部分であって、前記引っ張り方向(A)と直交する方向を長手として、中板(9)に対する前記引っ張り時に延長切り込み(28)の終端側(31)が回動基部となって引っ張り方向(A)に回動可能な細板状とされた部分であり、
前記つなぎ破断手段(27)のつなぎ(26)側の部分(32)は、前記延長切り込み(28)の屈曲した部分に沿っていて前記つなぎ(26)を介して前記移動板部(20)に連しており、
分割線(19)における前記つなぎ(26)は、前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)を分割線(19)に直交する方向で通る中心線を間にして対称となる位置に設けられ、
前記つなぎ(26)に連続する前記つなぎ破断手段(27)は、前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)の両端部側それぞれに設けられていて一方のつなぎ破断手段(27)の形状と他方のつなぎ破断手段(27)の形状とは、前記中心線を間にして対称とされていることを特徴とする紙箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙箱、特に紙箱の使用者側が行なう開封操作などとして紙箱を構成している板紙の一部分を分離し易くするとともに、この紙箱の製造過程では前記分離部分が離れないようにした紙箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から粒状の菓子を収容している紙箱の一つのタイプには、外面を構成する面板の一つに振り出し口を有してその振り出し口を必要時に開いて振り出しなどにより収容物を取り出すことができるようにしたものがある。さらに具体的な構造としては、前記振り出し口の開け閉めに関して、振り出し口がある面板の紙箱本体での内面側に中板を配して振り出し口を箱内方から閉じるようにし、紙箱本体の上部にある天面板の一辺を回動中心として開くような回動操作と天面板を元に戻すための閉じの回動操作とに前記中板が連動して上がり下がりし、中板が上方に引っ張られることで振り出し口が開き、振り出し口の開き状態から中板が下がることで振り出し口が再閉されるようにした紙箱があり、天面板側の操作によって開いた振り出し口から粒状の菓子を振り出しできるようにしていたものであった。
【0003】
そして上記紙箱を一枚のブランクを組み起こして得るために、例えば特許文献1に示されているように、その中板を一枚のブランク中に構成していて、天面板側の動きに連動して移動する部分(振り出し口を閉鎖する箇所を含んでいる部分)と紙箱本体に対して固定となって移動しない部分とに区分し、移動部分と固定部分とを直線状の切り込みを不連続に配してなる分割線を介して連接させているものがあった。このような紙箱では、上述したように開封の際の天面板側の開き回動操作で分割線における切り込みと切り込みとの間のつなぎを切断することによって、移動部分が移動可能となるものであった。
【0004】
中板の一部であって振り出し口に対応する部分が開封に際して中板の固定となっている部分から離れるようにした上記紙箱も、粒状の収納物を振り出し口から取り出すことができる一般的な紙箱として縦長の形状に倣っているものであり、一例として特許文献1の紙箱の構造を概略的に説明すればつぎの通りである。
【0005】
図7に示すように、まず、振り出し口aとする開口がある正面板bと左右の側面板c、dと背面板eとが横一連にして連接されているとともに、一部分が貼着領域fとなって胴貼り(サック貼り)するときに一つの側面板cの内面側に貼り合わせて重ねる内側面板g、さらにこの内側面板gに中板hが連接されていて、サック貼りしてから角柱状などとして胴部が組み上げられたときに中板hが正面板bの紙箱本体での内面側に沿って配置されている。(図8参照)
【0006】
正面板b、左右の側面板c、d、背面板eとの下端側にはそれぞれ底部閉鎖のための面板が連接されていて、側面板c、dには下フラップiが連接されて折り込まれ、正面板bには内底面板jが連接して折り込まれ、さらに背面板eに連接された外底面板kが折り込まれて内底面板jに貼り合わせている。
【0007】
左右の側面板c、dと背面板eとの上端側にも同様に天部閉鎖のための面板が連接されていて、側面板c、dそれぞれの上端に上フラップlが連接されて折り込まれている。中板hの上端には貼着板としての内天面板mが連接されて前記上フラップlに重なるように折り曲げられ、これに背面板eの上端に連接の外天面板nが折り重ねられて貼り合わされていた。(図9
【0008】
中板hでは振り出し口aに対応する高さ位置より下位とする高さ位置にして、直線状の二本の切り込みoを不連続に配してなる分割線pを中板幅方向に亘って設け、箱上部側を移動板部qに、箱下部側を固定板部rにして両者を分割線pを介して上下に区分していた。移動板部q自体は上部に上記内天面板mが連接されているとともに分割線pを介して固定板部rに連接しているが、内側面板gには直接的には連接されず、固定板部rが折り部分を介して内側面板gに連接されている。
【0009】
そして、開封に際し、天面板側(外天面板と内面面板)を背面板上端部分を回動中心となるように上方に回動させることで、前記分割線pにおける切り込みoと切り込みoとの間のつなぎsを破断させ、これによって移動面板qが箱上部側に移動して振り出し口aが開放される。なお、移動板部qは、内側面板gの移動板部qに対応する側部を切り欠いた領域に延設された係止板部tを備え、移動板部qが上方移動したときに上フラップlに係止して、振り出し口aを開放する位置より上位置に移動しないように位置決めされる構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4081128号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した紙箱にあっては中板の移動板部が箱上部側からの引っ張りにより引き上げられるようにするためにその中板の幅方向に亘って分割線が設けられていて、前記移動板部を引っ張る操作がそれ程の引き上げ力を要するものとしないようにするためには、切り込み間のつなぎの幅を小さくすればよいものである。図9にて引っ張り上げる方向を矢印Aとして示した。
【0012】
しかしながら、上記分割線の方向は、内側面板と背面板との間の折り罫と直交する方向となっていて、サック貼りの際、即ち、中板が連接した状態の内側面板を背面板の紙箱本体の内面側に折り重ねるときに折りの振動が伝わるなどして、図10に示す如く分割線のつなぎが破断して移動板部が分離してしまう可能性が高く、つなぎの幅を小さくすることができない。そのため、製函された紙箱を開封するときの移動板部を引っ張り上げるときに比較的大きな力が必要となっている。そして、一般使用者側の開封性を考慮する上では紙箱の包材の厚さや種類も検討条件に入ることとなり、分割線の設計が非常に難しくなるという不具合があった。なお、サック貼り時の内側面板と中板との折り方向を図7中の矢印Bにて示した。
【0013】
そこで本発明は上記事情に鑑み、サック貼りの際のブランクに対する折り加工がなされたときに上記分割線のつなぎが破断しないようにしながらも、上記移動板部を固定板部から分離させるときの引っ張りに大きな力を要することのないようにすることを課題とし、製函時に中板が分離せず、かつ開封操作が容易に行なえる紙箱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、紙箱本体の内側に中板(9)を備えていて、この中板(9)に、紙箱本体の上部側からの中板(9)に対する引っ張りの操作で中板(9)が上下に分割されるように前記引っ張りの方向(A)と直交する方向に直線状にした不連続な切り込みを入れてなる分割線(19)を設けて、前記中板(9)が、紙箱本体の上部側の移動板部(20)とこの移動板部(20)に前記分割線(19)を介して連接する固定板部(21)とに区分されていて、前記引っ張りの操作により分割線(19)での近接した切り込みと切り込みとの間のつなぎ(26)が破断し、前記移動板部(20)が前記固定板部(21)から分離して引き上げ可能となる紙箱において、
前記分割線(19)は、中板幅方向での中央に位置する一本の切り込み(17)とこの中央に位置する一本の切り込み(17)の両側方であって中板側辺側に一本ずつにして位置する切り込み(16、18)との三本の切り込みを不連続に配してなるものであり、
前記つなぎ(26)を間にして隣り合う前記中板側辺側の切り込み(16、18)と前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)との内、前記中板側辺側の切り込み(16、18)に、該中板側辺側の切り込み(16、18)のつなぎ(26)側の端部から前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)側であって分割線(19)の長さ方向と交差する斜め方向に屈曲して延設されて前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)と非交差となる第一延長部(29)とこの第一延長部(29)から分割線(19)の長さ方向に屈曲して延設されて前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)と平行にして近接する第二延長部(30)とからなる延長切り込み(28)が連続しており
前記中板幅方向の中央の切り込み(17)と前記延長切り込み(28)との間に、つなぎ破断手段(27)が設けられ、
前記つなぎ破断手段(27)は、
前記つなぎ(26)から延長切り込み(28)の終端側(31)にかけての部分であって、前記引っ張り方向(A)と直交する方向を長手として、中板(9)に対する前記引っ張り時に延長切り込み(28)の終端側(31)が回動基部となって引っ張り方向(A)に回動可能な細板状とされた部分であり、
前記つなぎ破断手段(27)のつなぎ(26)側の部分(32)は、前記延長切り込み(28)の屈曲した部分に沿っていて前記つなぎ(26)を介して前記移動板部(20)に連しており、
分割線(19)における前記つなぎ(26)は、前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)を分割線(19)に直交する方向で通る中心線を間にして対称となる位置に設けられ、
前記つなぎ(26)に連続する前記つなぎ破断手段(27)は、前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)の両端部側それぞれに設けられていて一方のつなぎ破断手段(27)の形状と他方のつなぎ破断手段(27)の形状とは、前記中心線を間にして対称とされていることを特徴とする紙箱を提供して、上記課題を解消するものである。
【発明の効果】
【0016】
(請求項1の発明の効果)
本発明によれば、分割線(19)のつなぎ(26)を間にして相対する中板側辺側の切り込み(16、18)と中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)の内、中板側辺側の切り込み(16、18)に中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)に交差しない延長切り込み(28)を連接させて、中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)と延長切り込み(28)との間につなぎ破断手段(27)が設けられており、そのつなぎ破断手段(27)のつなぎ(26)側の部分(32)が、延長切り込み(28)の屈曲した部分に沿っていて前記つなぎ(26)を介して前記移動板部(20)に連しているので、移動板部(20)を引っ張って箱上部側に移動するときに、つなぎ破断手段(27)の延長切り込み(28)の終端側(31)が回動基部として引っ張り方向に回動する。
【0017】
そして、そのつなぎ破断手段(27)のつなぎ(26)側の部分(32)では、ねじれを生じ始める時点で、中板側辺側の切り込み(16、18)のつなぎ(26)側の端部から延長切り込み(28)に沿っている部分がそのねじれ変形に抗する働きをする一方、中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)のつなぎ(26)側の端部回りでは応力が集中し、この応力の集中によって裂けが前記中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)の端部から生じてつなぎ(26)が破断される。
【0018】
つなぎ破断手段(27)での延長切り込み(28)の終端側(つなぎ破断手段(27)の回動基部側)(31)では、このつなぎ破断手段(27)が回動することで、延長切り込み(28)の終端回りに応力が集中する可能性もあるが、中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)に沿った部分が直線状に延びているため、つなぎ破断手段(27)の回動時の変形が比較的広がった領域で生じることとなり、延長切り込み(28)の終端回りに応力が集中するのを防止できる。そのため、つなぎ破断手段(27)での延長切り込み(28)の終端側(31)が回動基部として固定板部(21)側に残、つなぎ(26)が確実に破断されることとなる。即ち、つなぎ破断手段(27)の破断位置を事前に設定できるものとなる。
【0019】
よって、分割線(19)のつなぎ(26)の幅を、製函に際して影響が出易くなるまでの狭いものとする必要はなくなり、良好に製函され、かつ簡単に中板(9)における移動板部(20)の引っ張りが簡単に行なえる紙箱が得られるという効果を備える。
【0020】
さらに、中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み(17)の両端部側それぞれに設けられるつなぎ破断手段(27)が対称の形状となっているので、移動板部(20)を引き上げるときにも、対称の関係にあるつなぎ破断手段(27)同士は互いに逆方向に回動するようになる。そのため、移動板部(20)は引っ張り方向(A)に対してぶれて側面板などにぶつかって摺接するということ無しに良好に引っ張り上げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る紙箱の一例を展開してブランクの状態での箱外面側を示す説明図である。
図2】サック貼りに際して一部の面板を折り重ねた状態を示す説明図である。
図3】紙箱の一例を示す説明図である。
図4】一例における中板の分割線の部分を拡大して示す説明図である。
図5】移動板部が引っ張り方向に移動する時点での分割線の状態を示す説明図である。
図6】移動板部が固定板部から分離した状態を示す説明図である。
図7】従来の紙箱を展開してブランクの状態での箱内面側を示す説明図である。
図8】紙箱の胴部分を断面で示す説明図である。
図9】従来の紙箱での移動板部を引っ張り上げて振り出し口を開放した状態を示す説明図である。
図10】サック貼りの折りに際して移動板部が分離する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに本発明を図1から図6に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る紙箱1を構成している面板を展開したブランクの状態で箱外面側として示しているものであり、図7図9に示した従来の紙箱を構成している面板と基本的には同一である。この図1に示すように、箱高さ方向において下向きに凸の緩やかな湾曲形状とした上端に開口である振り出し口2を近接させている正面板3と、左右の側面板4、5と、背面板6とが横一連にして連接されている。また、箱高さ方向に亘るようにして一部分を貼着領域としてサック貼りにて側面板4の内面側に貼り合わせて重ねる内側面板8が背面板6に連接され、この内側面板8に中板9が連接されていて、サック貼りしてから角柱状などとして胴部が組み上げられたときに中板9が正面板3の紙箱本体での内面側に沿って配置される。
【0023】
図示されているように正面板3と、左右の側面板4、5と、背面板6との下端側にはそれぞれ底部閉鎖のための面板が連接されており、側面板4、5には下フラップ10が連接されて折り込まれ、背面板6には内底面板11が連接して前記下フラップ10に重なるようにして折り込まれ、正面板3に連接された外底面板12が折り込まれて内底面板11に貼り合わせている。
【0024】
左右の側面板4、5と背面板6との上端側にも同様に天部閉鎖のための面板が連接されている。側面板4、5それぞれの上端に上フラップ13が連接されて折り込まれている。中板9の上端には貼着部材としての外天面板14が連接されて折り込まれた上フラップ13に重なるように折り曲げられ、そして背面板6の上端に連接の内天面板15が折り重ねられて貼り合わされており、前記外天面板14と内天面板15とが貼り合わせにより一体となって一つの天面板を構成する。
【0025】
中板9は、振り出し口2に対応する高さ位置より下位とする高さ位置にして、直線状の三本の切り込み16、17、18を不連続に配してなる分割線19を中板幅方向に亘って設けている。そして、従来の紙箱の場合と同様に、箱上部側を移動板部20とし、箱下部側を固定板部21にして上下に区分されていて、移動板部20と固定板部21とを区分する分割線19を介して両板部20、21が連接されている。
【0026】
上記固定板部21は内側面板8に連接されている。移動板部20にあっては箱上部への移動が行ない易くなるようにするために、内側面板8との間が切り欠かれており、内側面板8の上部側に移動板部20に向けて突出した形状の支持部22にのみ分離容易に連接されている。また、移動板部20には、箱上部へ引っ張り上げられて上フラップ13に係止することでその箱上部へ向けた移動が止まるようにするための係止板部23が、移動板部自体の両側辺を段の付いた切り欠き形状とすることで形成されている。
【0027】
さらに、上記移動板部20の分割線19側には、この移動板部20が固定板部21から分離していない状態で上記振り出し口2と相対しない位置であって、所定の高さ位置まで(上フラップに係止して位置決めされた位置まで)に到達したときに振り出し口2に重なる位置にして切り欠き部2が設けられている。この切り欠き部2は図示されているように、分離線19の中央に位置する切り込み17に達して半円状の開口として形成されている。
【0028】
紙箱1は図3に示されているように胴部の四方の外面を正面板3、左右の側面板4、5、背面板6として縦長とされ、箱底部を上記内底面板11と外底面板12との重ね合わせで閉じ、また箱上部を上記外天面板14と内天面板15との重ね合わせで閉じている。
【0029】
この紙箱1の開封は上述した従来の例と同じように正面板3の上端の弧状部分のやや上位置で移動板部20と外天面板14との間の折り部分で切り起こされた爪部25などに指先を掛けながら上方に箱天部の部分を引き上げるようにすることで、後述の構造とした分割線19の位置で移動板部20が固定板部21から分離し、正面板3の振り出し口2を箱内方から閉じていた前記移動板部20が位置決めされる高さ位置まで引っ張られて上昇することで振り出し口2の上縁部分に前記切り欠き部24が重なり、振り出し口2が開放される。図3中に引っ張りの方向を矢印Aで示した。
【0030】
また、移動板部20が箱上部での天面板側の戻しの回動操作が行なわれることで箱底部に向けて移動し、切り欠き部24が振り出し口2の最下部より下位置に下がることで再閉される。なお、ブランクの状態で破線として示されている部分は折り罫を示しており、この位置で折りが行なわれて組み起こし、所要位置を貼り合わせることで紙箱1が得られる。
【0031】
(分割線)
上記分割線19では、図示されているようにそれぞれ直線とされた三本の切り込み16、17、18が直線状にして不連続に並んで中板9の幅方向に亘って設けられている。図4に示されているように、三本の切り込みの内、中板幅方向の中央に位置する一本の切り込み17が長く形成され、この中央に位置する一本の切り込み17の両側方で中板9の両側辺側に一本ずつにして位置する切り込み内、中板9の自由端から入れられた短かい切り込み16がつなぎ26を間にして前記切り込み17と並び、内側面板8側から入れられた短かい切り込み18が同様につなぎ26を間にして切り込み17と並んでいる。
【0032】
本発明においては上記つなぎ26それぞれにつなぎ破断手段27が連続するように設けられていて、このつなぎ破断手段27の働きにより必要時につなぎ26が破断するようにしている。この実施の例では、二つのつなぎ26が、分割線19の中央をこの分割線19の長手方向に直交する方向で通る中心線(移動板部の中心線ともなる)を間にして対称位置にある。
【0033】
そして、つなぎ26に連続する二つのつなぎ破断手段27は、前記中心線を間にして対称となる形状に設けられている。このように一方のつなぎ破断手段27の位置と他方のつなぎ破断手段27の位置とが、前記中心線を間にして対称であり、また一方のつなぎ破断手段27の形状と他方のつなぎ破断手段27の形状とが、前記中心線を間にして対称である(図4参照)。以下では二つのつなぎ破断手段の内、一方のつなぎ破断手段を説明しているが、他方のつなぎ破断手段も位置と形状が対称となっている以外は他方のつなぎ破断手段は一方のつなぎ破断手段と同じであるので説明を省略する。
【0034】
(つなぎ破断手段)
中板両側辺側に一本ずつの短かい上記切り込み16と中板幅方向の中央に位置した一本の上記切り込み17との内、切り込み16のつなぎ26側に、固定板部21側に位置して切り込み17の下位置に入り込むようにした延長切り込み28が連続している。図4に拡大して示しているように、前記延長切り込み28は、切り込み16のつなぎ26側の端部から切り込み17側であって分割線19の長さ方向と交差する斜め方向に屈曲して延設されて、切り込み17とは非交差としている第一延長部29と、第一延長部29の端部から分割線19の長さ方向に屈曲して延設されて切り込み17と平行にして近接する直線状の第二延長部30とからなる。なお、前記第一延長部29は図においては直線状としているが、固定板部21側に若干ながら凸となるような緩やかな弧状であってもよいものである。
【0035】
そして、長い切り込み17と上記延長切り込み28との間には、短かい切り込み16の端部から延長切り込み28が連続することで細板状の上記つなぎ破断手段27が形成されている。このつなぎ破断手段27は、図4に示すようにつなぎ26から延長切り込み28の端部(終端)側にかけての部分であって、中板9(移動板部20)を引っ張る方向と直交する方向を長手とする前記細板状の形態とされた部分である。そして、中板9に対する引っ張り時に延長切り込み28の終端側31が回動基部となって引っ張り方向(矢印A方向)に向けて回動可能となるものである。
【0036】
また、上記つなぎ破断手段27のつなぎ26側の部分32は、延長切り込み28での上記第二延長部20から上記第一延長部29の屈曲した切り込み部分に沿っていて、つなぎ破断手段27の細板状部分の長手方向に対して曲がる形状となっており、つなぎ破断手段27のつなぎ26側の前記部分32が、移動板部20側に向けて曲がってつなぎ26に連続している。即ち、図4に示されているように、つなぎ破断手段27のつなぎ26側の端部32が、移動板部20側に向けて曲がり、前記つなぎ26を介して前記移動板部20に連接している。
【0037】
上述したようにつなぎ破断手段27において、延長切り込み28の終端側31を回動基部として引っ張り方向に向けて回動可能となるようにしており、また、つなぎ破断手段27のつなぎ26側の上記部分32は、つなぎ切断手段27の長手方向に対して曲がってつなぎ26に連続することで、つなぎ破断手段27のつなぎ26側の端部32が前記つなぎ26を介して移動板部20に連接しているので、移動板部20を引っ張って箱上部側に移動させるときに、つなぎ破断手段27が、延長切り込み28の終端側を回動の基部として引っ張り方向に回動する。図5参照
【0038】
つなぎ破断手段27のつなぎ26側の上記部分32でねじれを生じ始める時点で、延長切り込み28の第一延長部29の切断縁がそのねじれ変形に抗する働きをする。一方、切り込み17のつなぎ26側の端部回りでは包材の変形や延びが生じる余裕部分が無いので応力が集まり易く、第一延長部29の切断縁で生じる抗力の影響によっても切り込み17のつなぎ26側の端部回りへの応力の集中が増加することとなる。即ち、つなぎ破断手段27のつなぎ26側の端部32での第一延長部29に沿っている部分(切断縁)33が突っ張った状態になっているにも拘わらず、回動の動きが進むことで切り込み17のつなぎ26側の端部回りへの応力集中の度合いが増す。この応力の集中によって裂け34が切り込み17の端部から生じてつなぎ26が確実に破断されるものとなる。図5図6参照
【符号の説明】
【0040】
1…紙箱
2…振り出し口
9…中板
16、17、18…切り込み
19…分割線
20…移動板部
21…固定板部
23…係止板部
25…爪部
26…つなぎ
27…つなぎ破断手段
28…延長切り込み
29…第一延長部
30…第二延長部
33…第一延長部に沿う部分
34…裂け
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10