特許第6492414号(P6492414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492414
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/10 20060101AFI20190325BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   E04G9/10 104A
   E04G21/02 103Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-78812(P2014-78812)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-200093(P2015-200093A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 晴果
(72)【発明者】
【氏名】三谷 一房
(72)【発明者】
【氏名】福田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】水上 卓也
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−169147(JP,A)
【文献】 特開昭63−060309(JP,A)
【文献】 特開2000−145157(JP,A)
【文献】 特開2003−253881(JP,A)
【文献】 実開平03−002146(JP,U)
【文献】 特開2004−108086(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00286370(EP,A2)
【文献】 特開2012−067539(JP,A)
【文献】 特開2002−364078(JP,A)
【文献】 特開平10−140779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/10
E04G 21/02
E04G 17/06
E04G 17/075
E04F 13/02
E04F 13/04
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の内側に、前記型枠の間隔を保つスペーサー、及び、前記スペーサーの端部に連結されたコネクター部材が設けられ、前記コネクター部材の穴に差し込まれた締付けボルトが前記型枠に通されて前記型枠の外側に突出し、前記締付けボルトに前記型枠の外側からナットが締付けられた状態で、前記型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートが硬化した後に前記型枠を脱型し、前記コンクリートの表面から突出する突起物を前記コネクター部材の前記穴に差し込んだ状態で、前記コンクリートの表面に接着層を形成し、前記接着層から前記突起物を突出させる工程と、
前記コネクター部材の前記穴に軸部が差し込まれた係止部材のつば部で、前記接着層を押圧した後に、前記接着層及び前記係止部材の外側に仕上げ層を形成する工程と、
を有し、
前記突起物は前記係止部材であり、
前記係止部材では、筒部材の内部に前記軸部が通され、前記筒部材と前記軸部とが軸方向に相対移動することにより、前記筒部材が屈曲し、前記つば部が形成され、
前記型枠を脱型した後に、前記コネクター部材の前記穴から前記締付けボルトを取り外し、前記係止部材の前記軸部を前記コネクター部材の前記穴に差し込んだ状態で、前記接着層を形成し、その後、前記係止部材の前記筒部材を屈曲して前記つば部を形成することによって、当該つば部で前記接着層を押圧することを特徴とするコンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱や壁等のコンクリート構造物は、型枠内にコンクリートが打設され、コンクリートが硬化した後に型枠が取り外されることによって構築される。但し、型枠を取り外したコンクリートの表面をそのままにすると、外観が悪いので、モルタル等を一定厚みになるように塗布したり、モルタルの上に更にタイル等を貼り付けたりすることが一般に行われている。しかし、経年変化によって、モルタルやタイルが剥落してしまう問題があった。そこで、既存のモルタル層の表面に、モルタルを適宜厚みに塗り付けて下塗層を形成し、剥落防止用ネットを張り付けた後、コンクリート層にまで到達する穴を形成し、その穴にアンカーピンを打ち込み、最後に上塗層を形成する補修方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3051774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補修時に限らず、コンクリート構造物を構築する際にも、コンクリート表面に下塗層を形成した後にアンカーピンを打ち込み、アンカーピンで剥落防止用ネットを下塗層に押え付けることで、下塗層や剥落防止用ネットの剥落を抑制できる。しかし、上記の方法では、下塗層を形成して剥落防止用ネットを張り付けた後に、アンカーピンを打ち込むための穴を形成しなければならず、施工が煩雑である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物の構築方法を簡略化しつつ、コンクリートの表面に形成する接着層(モルタル、繊維ネット等)の剥落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのコンクリート構造物の構築方法は、型枠の内側に、前記型枠の間隔を保つスペーサー、及び、前記スペーサーの端部に連結されたコネクター部材が設けられ、前記コネクター部材の穴に差し込まれた締付けボルトが前記型枠に通されて前記型枠の外側に突出し、前記締付けボルトに前記型枠の外側からナットが締付けられた状態で、前記型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートが硬化した後に前記型枠を脱型し、前記コンクリートの表面から突出する突起物を前記コネクター部材の前記穴に差し込んだ状態で、前記コンクリートの表面に接着層を形成し、前記接着層から前記突起物を突出させる工程と、
前記コネクター部材の前記穴に軸部が差し込まれた係止部材のつば部で、前記接着層を押圧した後に、前記接着層及び前記係止部材の外側に仕上げ層を形成する工程と、
を有し、
前記突起物は前記係止部材であり、
前記係止部材では、筒部材の内部に前記軸部が通され、前記筒部材と前記軸部とが軸方向に相対移動することにより、前記筒部材が屈曲し、前記つば部が形成され、
前記型枠を脱型した後に、前記コネクター部材の前記穴から前記締付けボルトを取り外し、前記係止部材の前記軸部を前記コネクター部材の前記穴に差し込んだ状態で、前記接着層を形成し、その後、前記係止部材の前記筒部材を屈曲して前記つば部を形成することによって、当該つば部で前記接着層を押圧することを特徴とするコンクリート構造物の構築方法である。
このようなコンクリート構造物の構築方法によれば、係止部材によってコンクリートの表面に接着層が押え付けられるため、コンクリートからの接着層の剥落を抑制できる。また、コンクリートの表面から突出する突起物をコネクター部材の穴に差し込んだ状態で接着層を形成するため、突起物が差し込まれていた接着層の穴を、係止部材を差し込む穴にすることができる。また、コネクター部材の穴が塞がれないので、コネクター部材の穴を、係止部材を差し込む穴にすることができ、係止部材を差し込む穴をコンクリートに形成する必要がない。よって、コンクリート構造物の構築方法を簡略化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリート構造物の構築方法を簡略化しつつ、コンクリートの表面に形成する接着層(モルタル、繊維ネット等)の剥落を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは型枠内にコンクリートが打設された状態を示す図であり、図1Bはコネクター部材の概略斜視図である。
図2】型枠が脱型された状態を示す図である。
図3】接着層が形成された状態を示す図である。
図4】締付けボルトが取り外された状態を示す図である。
図5図5Aはコネクター部材にキャップが取り付けられた状態を示す図であり、図5Bはキャップの概略斜視図であり、図5Cは繊維ネットとキャップの位置関係を示す図である。
図6】タイルが貼り付けられた状態を示す図である。
図7図7A及び図7Bはキャップの変形例を示す図である。
図8】ボードアンカーの説明図である。
図9】コネクター部材にボードアンカーが取り付けられた状態を示す図である。
図10】接着層が形成された状態を示す図である。
図11】ボードアンカーが締め込まれた状態を示す図である。
図12】タイルが貼り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
===第1実施形態===
図1Aは、型枠1内にコンクリート10が打設された状態を示す図であり、図1Bは、コネクター部材3の概略斜視図である。図2は、型枠1が脱型された状態を示す図である。図3は、接着層11が形成された状態を示す図である。図4は、締付けボルト4が取り外された状態を示す図である。図5Aは、コネクター部材3にキャップ20が取り付けられた状態を示す図であり、図5Bは、キャップ20の概略斜視図であり、図5Cは、繊維ネット11aとキャップ20の位置関係を示す図である。図6は、タイル13が貼り付けられた状態を示す図である。なお、本願の図面では、図の錯綜を防ぐために、断面部等に示すべきハッチングを一部省略している。
【0014】
以下、X方向に厚さを有し、X方向の一方側(右側)の表面にタイル13が貼り付けられるコンクリート構造物の構築方法を例に挙げて説明する。まず、一対の板状の型枠1がX方向に間隔をもって対向配置されるように、コネクター部材3等によって、型枠1が組み付けられる。図1Bに示すように、コネクター部材3は、例えば樹脂等で形成された円錐台形状の部材であり、一方の円形面3aよりも、他方の円形面3bの方が、大きくなっている。また、コネクター部材3には、円形面3a,3bに直交する高さ方向に延び、小さい方の円形面3aに開口する第1ねじ穴301と、高さ方向に延び、大きい方の円形面3bに開口する第2ねじ穴302とが、形成されている。なお、第1ねじ穴301と第2ねじ穴302とは連通していてもよい。
【0015】
一対の型枠1の内側には、型枠1のX方向の間隔を保つために、X方向を長手方向とするスペーサーボルト2が複数設けられる(但し、図1Aにはスペーサーボルト2を1本だけ示す)。また、一対の型枠1の内側には、各スペーサーボルト2の両端部にそれぞれ連結されたコネクター部材3も設けられる。なお、スペーサーボルト2の端部は、詳しくは、コネクター部材3の第2ねじ穴302に螺合され、コネクター部材3に連結される。更に、各コネクター部材3の第1ねじ穴301に端部が差し込まれた(螺合された)締付けボルト4が、型枠1に通される。その結果、一対の型枠1からそれぞれX方向の外側に、締付けボルト4が突出した状態となる。
【0016】
そして、型枠1の外側面1bに当接し、X方向及び鉛直方向に直交する方向(Y方向)に延びるパイプ状の第1押圧材5を、締付けボルト4の鉛直方向の両側に設ける。その第1押圧材5にX方向の外側から当接する第2押圧材6を締付けボルト4に通した後、締付けボルト4にナット7を螺合して締付ける。その結果、コネクター部材3の小さい方の円形面3aが型枠1の内側面1aに当接し、一対の型枠1がX方向に間隔をもって保持される。
【0017】
なお、型枠1を組み付ける部材は、図1Aに示すものに限らない。例えば、コネクター部材3の形状は、円錐台形状に限らず、スペーサーボルト2と締付けボルト4を連結可能な形状の部材であればよい。また、スペーサーボルト2やコネクター部材3の第1,第2ねじ穴301,302にねじ山が形成されていなくてもよい。また、図示しないが、コネクター部材3の側面に凸部や凹部等を形成し、コネクター部材3の鉛直断面を非円形にすることで、コネクター部材3から締付けボルト4を取り外す際にコネクター部材3の供回りを防止できる。
【0018】
以上のように組み付けられた型枠1の内側に、コンクリート10を打設する。そして、打設したコンクリート10が硬化した後に、図2に示すように、型枠1を脱型する。詳しくは、ナット7、第2押圧材6、第1押圧材5、型枠1を、順に撤去する。その結果、図2に示すように、スペーサーボルト2、及び、コネクター部材3は、コンクリート10内に残置され、コネクター部材3の第1ねじ穴301に、締付けボルト4が差し込まれたままの状態となる。
【0019】
そして、コンクリート10の表面(外側面)10aから突出する締付けボルト4(突起物)をコネクター部材3の第1ねじ穴301に差し込んだ状態で、図3に示すように、コンクリート10のX方向右側の表面10aに接着層11を形成し、接着層11から締付けボルト4を突出させる。換言すると、接着層11の厚さ(X方向の長さ)よりも、コンクリート10の表面10aから突出する締付けボルト4の部位のX方向の長さの方が長くなるように、接着層11を形成する。
【0020】
本実施形態では、コンクリート10の表面10aに、モルタルを塗布するとともに、モルタルに繊維ネット(例えばガラス繊維ネットや合成樹脂ネット等)を埋め込んだものを、接着層11とし、繊維ネットに締付けボルト4が通される。そのため、締付けボルト4の配置に合わせて工場等で予め繊維ネットに穴を開けておいてもよいし、現場で繊維ネットに締付けボルト4を通すことによって繊維ネットに穴を開けるようにしてもよい。このように、接着層11に繊維ネットを設けることで、繊維ネットが、接着層11の上に形成される貼り付け層12(図6参照)と絡むため、接着層11と貼り付け層12の付着強度が高まる。よって、貼り付け層12やタイル13の剥落を抑制できる。但し、モルタルに繊維ネットを埋め込んだものを接着層11とするに限らず、例えば、短繊維入りのモルタルを塗布した接着層11や、ポリマーセメントモルタル等の樹脂系モルタルを塗布しただけの接着層11であってもよい。
【0021】
接着層11の形成後は、図4に示すように、コネクター部材3の第1ねじ穴301から締付けボルト4を取り外す。そうすると、接着層11に、コネクター部材3の第1ねじ穴301及び外部に連通する連通穴14が現れる。そこで、その連通穴14とコネクター部材3の第1ねじ穴301に、図5Aに示すように、キャップ20(係止部材)を差し込む。キャップ20は、コンクリート10に対する接着層11の位置を係止する部材であり、図5Bに示すように、コネクター部材3の第1ねじ穴301に螺合するねじ山が形成された軸部201と、軸部201の端部に連結された円板状のつば部202、即ち、軸部201から軸部201の径方向に突出するつば部202とを、有する。
【0022】
詳しくは、キャップ20の軸部201を、接着層11の連通穴14に通して、コネクター部材3の第1ねじ穴301に螺合させて締め込み、キャップ20のつば部202の内側面20aで、接着層11の表面11aを外側から押圧する。そうすることで、キャップ20のつば部202によって、接着層11はコンクリート10の表面10aに押え付けられ、また、キャップ20の軸部201に接着層11が引っ掛かるため、コンクリート10からの接着層11の剥落を抑制できる。
【0023】
更に、コネクター部材3は、小さい方の円形面3aが外側に位置するように、コンクリート10内に設けられている。つまり、X方向(コンクリート10の表面10aに直交する方向)における或る位置(例えばコンクリート10の表面10a上の位置)よりも、コンクリート10の中心側の位置(例えばコンクリート10の内部の位置)の方が、鉛直方向(コンクリート10の表面10aに沿う方向)に切ったコネクター部材3の断面が大きくなるように(3a<3b)、コネクター部材3が設けられている。そのため、コネクター部材3の大きい方の円形面3bが外側に位置する場合に比べて、コネクター部材3がコンクリート10から抜け出難くなっている。従って、コネクター部材3に取り付けられたキャップ20もコンクリート10から抜け出難く、キャップ20が接着層11を押圧する状態を保持できるので、コンクリート10からの接着層11の剥落をより確実に抑制できる。但し、大きい方の円形面3bが外側に位置するようにコネクター部材3を配置してもよい。
【0024】
なお、締付けボルト4は、接着層11のモルタルが完全に硬化した後に取り外してもよいし、完全に硬化する前に取り外してもよいが、接着層11の連通穴14が保持されるようにする。また、キャップ20の軸部201にねじ山を形成せず、キャップ20の軸部201をコネクター部材3の第1ねじ穴301に差し込むだけでもよい。その場合、キャップ20の周囲に接着剤を塗布したり、接着層11のモルタルが完全に硬化する前にキャップ20を取り付けたりして、キャップ20をコネクター部材3や接着層11に固定するとよい。
【0025】
また、接着層11に繊維ネットを設ける場合、図5Cに示すように、繊維ネット11aのY方向の幅W2を、キャップ20のY方向の配置間隔W1以上にしたり、繊維ネット11aの鉛直方向の長さL2を、キャップ20の鉛直方向の配置間隔L1以上にしたりすることが好ましい。そうすることで、1枚の繊維ネット11a上に少なくとも1個以上のキャップ20を配置でき、キャップ20によって繊維ネット11aの剥落を抑制できる。
【0026】
最後は、図6に示すように、接着層11及びキャップ20の外側に、モルタルを塗布して貼り付け層12を形成し、貼り付け層12の上からタイル13を貼り付け、コンクリート構造物1の構築を終了する。
【0027】
なお、本実施形態では、貼り付け層12(モルタル)及びタイル13を仕上げ層とするが、これに限らず、例えば、タイル13の代わりに石材等を貼り付けてもよいし、タイル13等を貼らずに平坦に塗られたモルタル層を仕上げ層にしてもよい。また、貼り付け層12をモルタルで形成するに限らず、例えば樹脂系接着剤でタイル13を貼り付けてもよい。また、タイル13の裏面にモルタル等を塗布したものを接着層11に貼り付けてもよい。
【0028】
以上のように、第1実施形態では(図3)、コンクリート10の表面10aから突出する締付けボルト4をコネクター部材3の第1ねじ穴301に差し込んだ状態で、コンクリート10の表面10aに接着層11を形成し、接着層11から締付けボルト4を突出させる。そのため、コンクリート10の表面10a上において、キャップ20を取り付ける位置には、接着層11であるモルタルが流入せず、接着層11である繊維ネットの穴も塞がれないので、締付けボルト4が差し込まれていた接着層11の連通穴14(図4)を、キャップ20を差し込む穴として利用できる。また、コネクター部材3の第1ねじ穴301にもモルタルが流入せず、第1ねじ穴301が塞がれないので、コネクター部材3の第1ねじ穴301を、キャップ20を差し込む穴として利用できる。よって、接着層11の形成後に、コンクリート10の配筋等に配慮しながら、キャップ20を差し込む穴をコンクリート20に形成する必要がない。つまり、締付けボルト4をコネクター部材3から取り外すだけで、キャップ20を取り付けることができるため、施工を簡略化でき、施工の効率化を図ることができる。
【0029】
また、接着層11から締付けボルト4を突出させることで、締付けボルト4を取り外し易くできる。また、接着層11から突出する締付けボルト4を、キャップ20を取り付けるべき位置の目印にできる。よって、施工性を高められる。
【0030】
また、コネクター部材3は、スペーサーボルト2と締付けボルト4のコネクターとしての役割と、キャップ20の取り付け部材としての役割を果たす。そのため、例えば、コネクター部材3をコンクリート10から取り外し、キャップ20を取り付けるための別の部材をコンクリート10に嵌め込む場合に比べて、施工を簡略化でき、部材数を減らせる。同様に、締付けボルト4は、型枠1を締付ける役割と、接着層11に連結穴14を形成する等の役割を果たす。そのため、例えば、接着層11を形成する際に、締付けボルト4を取り外し、コンクリート10の表面10aから突出する別の部材をコネクター部材3に差し込む場合に比べて、施工を簡略化でき、部材数を減らせる。
【0031】
<<変形例>>
図7A及び図7Bは、キャップ20の変形例を示す図である。前述の図5Bに示すキャップ20では、つば部202の上面20b(X方向外側の表面)が平坦な面であるが、これに限らない。例えば、図7Aに示すように、キャップ20が有するつば部202のX方向外側(貼り付け層12側、仕上げ層側)の表面20bに凸部203を形成し、つば部202のX方向外側の表面20bを凹凸形状にしてもよい。そうすることで、貼り付け層12のモルタルが、キャップ20の凸部203間に流入するため、貼り付け層12が硬化した際に、キャップ20と貼り付け層12の付着強度が高まる。つまり、キャップ20の凹凸形状によって貼り付け層12を係止でき、接着層11からの貼り付け層12の剥落を抑制できる。
【0032】
また、接着層11が完全に硬化する前にキャップ20を取り付ける場合には、図7Bに示すように、キャップ20が有するつば部202のX方向内側(接着層11側)の表面20aに、凸部204を形成してもよい。そうすることで、接着層11のモルタルが、キャップ20の凸部204間に流入するため、接着層11が硬化した際に、キャップ20と接着層11の付着強度が高まる。つまり、キャップ20が有するつば部202のX方向内側の表面20aの凹凸形状によって接着層11を係止でき、コンクリート10からの接着層11の剥落を抑制できる。
【0033】
===第2実施形態===
図8は、ボードアンカー30の説明図である。図9は、型枠1が脱型され、コネクター部材3にボードアンカー30が取り付けられた状態を示す図である。図10は、接着層11が形成された状態を示す図である。図11は、ボードアンカー30が締め込まれた状態を示す図である。図12は、タイル13が貼り付けられた状態を示す図である。第2実施形態では、キャップ20(図5B)の代わりに、ボードアンカー30(係止部材)によって、コンクリート10からの接着層11の剥落を抑制する。
【0034】
ボードアンカー30は、図8に示すように、筒状のソケット32(筒部材)と、ソケット32の内部に通されたねじ部材31(軸部)と、を有する。ソケット32は、ねじ部材31の頭部31a側である先端側に位置する第1筒部321と、後端側に位置する第2筒部322と、第1,第2筒部321,322間に位置する複数の割れ片323と、を有する。第1筒部321の先端には、ねじ部材31の頭部31aに当接可能なフランジ321aが形成されている。第2筒部322の内周面には、ねじ部材31に螺合するねじ山が形成されている。割れ片323は、ソケット32の周方向に沿って、開口部324と交互に配置される。
【0035】
以上の構成であるボードアンカー30において、ソケット32とねじ部材31とを軸方向に相対移動させると、即ち、ねじ部材31をソケット32の第2筒部322に螺合して締付けると、第2筒部322が第1筒部321に接近する。その結果、第1筒部321と第2筒部322の間で割れ片323が屈曲し、割れ片323がねじ部材31の径方向に突出する。例えば、割れ片323の数が4個である場合、ねじ部材31から4方向に割れ片323が突出する。
【0036】
そして、コンクリート構造物の構築の際には、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、まず、型枠1の内側にコンクリート10を打設し(図1A)、コンクリート10が硬化した後に型枠1を脱型する。但し、第2実施形態では、ナット7、第2押圧材6、第1押圧材5、型枠1とともに、締付けボルト4をコネクター部材3の第1ねじ穴301から取り外す。その後、図9に示すように、接着層11を形成する前に、ボードアンカー30のねじ部材31をコネクター部材3の第1ねじ穴301に差し込む。そうして、コンクリート10の表面10aからボードアンカー30(突起物)を突出させた状態で、コンクリート10の表面10aに接着層11(例えばモルタルに繊維ネットを埋め込んだ層)を形成し、図10に示すように、接着層11からボードアンカー30を突出させる。
【0037】
次に、図11に示すように、ボードアンカー30の割れ片323を屈曲し、ねじ部材31(軸部)から外方に突出するつば部323を形成することによって、そのつば部(割れ片)323で接着層11を外側から押圧する。そのために、ボードアンカー30のねじ部材31を、ソケット32の第2筒部322に螺合して締付け、更に、コネクター部材3の第1ねじ穴301にも螺合して締付けていく。そうすることで、ボードアンカー30の屈曲した割れ片323によって、接着層11はコンクリート10の表面10aに押え付けられ、また、ボードアンカー30に接着層11が引っ掛かるため、コンクリート10からの接着層11の剥落を抑制できる。最後は、図12に示すように、接着層11及びボードアンカー30の外側に貼り付け層12を形成し、貼り付け層12の上からタイル13を貼り付ける。
【0038】
以上のように、第2実施形態では、コンクリート10の表面10aから突出するボードアンカー30をコネクター部材3の第1ねじ穴301に差し込んだ状態で、コンクリート10の表面10aに接着層11を形成し、コネクター部材3の第1ねじ穴301及び接着層11に差し込まれたままのボードアンカー30によって、接着層11をコンクリート10に押圧する。従って、接着層11の形成後に、ボードアンカー30を取り付けるために、コンクリート10の配筋等に配慮しながら、接着層11からコンクリート10にまで到達する穴を形成する必要がなく、施工を簡略化でき、施工の効率化を図ることができる。また、第2実施形態では、汎用のボードアンカー30によって接着層11を係止でき、接着層11を係止する専用の部材を製造する必要がないため、低コスト化を図れる。
【0039】
なお、第1実施形態と同様に(図3)、締付けボルト4をコネクター部材3に差し込んだ状態で接着層11を形成した後に、締付けボルト4を取り外し、接着層11に形成された連通穴14(図4)及びコネクター部材3の第1ねじ穴301に、ボードアンカー30を差し込んでもよい。この場合も、ボードアンカー30を取り付けるための穴を後から形成する必要がなく、施工を簡略化できる。
【0040】
また、この実施形態では、ボードアンカー30、即ち、ソケット32の第2筒部322にねじ部材31を締込むことで、割れ片323を屈曲してつば部を形成する部材を、係止部材としているが、これに限らない。例えば、ハンマー等で叩き込むことで、筒部材を屈曲してつば部を形成する部材を、係止部材としてもよい。
【0041】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 型枠、2 スペーサーボルト(スペーサー)、3 コネクター部材、301 第1ねじ穴(穴)、302 第2ねじ穴、4 締付けボルト(突起物)、5 第1押圧材、6 第2押圧材、7 ナット、10 コンクリート、11 接着層、11a 繊維ネット、12 貼り付け層(仕上げ層)、13 タイル(仕上げ層)、14 連通穴、
20 キャップ(係止部材)、201 軸部、202 つば部、203 凸部、
204 凸部、30 ボードアンカー(突起物,係止部材)、31 ねじ部材(軸部)、32 ソケット(筒部材)、321 第1筒部、322 第2筒部、
323 割れ片(つば部)
図1
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図12