(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞とともに培地を供給して細胞培養を行う培養容器と、前記培養容器に培地を供給する培地容器とを少なくとも備え、前記培養容器と前記培地容器とが移送チューブで接続された細胞培養ユニットを筐体内に格納して、前記細胞培養ユニットにおいて細胞培養を行う細胞培養装置であって、
前記筐体内に、前記培養容器が収容される培養容器収容棚部と前記培地容器を収容する培地容器収容棚部とが設けられており、
前記培養容器収容棚部又は前記培地容器収容棚部が、重量検知手段を備え、
細胞培養の過程で前記培養容器内に入り込んだ気泡を取り除くにあたり、当該気泡を、前記移送チューブに取り付けられたポンプを作動させて、該移送チューブを通して前記培地容器に移送するとともに、前記培養容器収容棚部又は前記培地容器収容棚部が備える重量検知手段が、前記培養容器又は前記培地容器の重量変化を検知して、前記ポンプを停止して気泡の移送操作を終了し、その後、前記ポンプを逆作動させることによって、前記移送チューブ内の内容物が前記培養容器に戻されることを特徴とする細胞培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る細胞培養装置の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
本実施形態において、細胞培養装置1は、複数の細胞培養ユニットUを多段に格納して、それぞれの細胞培養ユニットUごとに細胞培養を個別に行うための装置である。かかる細胞培養装置1の外観概略図を
図1及び
図2に示すが、細胞培養装置1は、筐体2内が断熱壁20によって、所定の温度に調整可能なインキュベート槽3と保冷槽4とに仕切られた二槽構造となっている。そして、インキュベート槽3と保冷槽4とには、それぞれ独立して開閉できる前扉3a,4aが設けられている。
【0013】
細胞培養装置1に格納される細胞培養ユニットUは、例えば、
図3に示すように、細胞培養に用いるための第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30と、これらの培養容器U20,U30に培地を供給するための培地容器U10と、これらの容器U10,U20,U30を接続するための移送チューブU40及び培養容器接続チューブU42とを備えたものとすることができる。
【0014】
第一の培養容器U20は、細胞を注入して、最初に細胞培養が行われる培養容器であり、例えば、細胞を活性化させるための細胞培養に用いる活性化培養容器などとして好適に用いることができる。第一の培養容器U20を活性化培養容器として用いてリンパ球などの浮遊系細胞を活性化させる場合、第一の培養容器U20内の底面には、抗CD3抗体などの細胞を活性化させる物質が固相化される。
第二の培養容器U30は、第一の培養容器での細胞培養の後に、第一の培養容器における細胞懸濁液を移し換えて細胞培養を行うための容器であり、例えば、細胞を増殖させるための細胞培養に用いる増幅培養容器などとして好適に用いることができる。
このように、第一の培養容器U20を活性化培養容器として用いるとともに、第二の培養容器U30を増幅培養容器として用いることで、リンパ球などの浮遊系細胞を好適に増殖させることが可能となる。
【0015】
本実施形態において、これらの容器は、培地容器U10、第二の培養容器U30、第一の培養容器U20の順に、移送チューブU40に接続されている。なお、裏側から見た場合には、第一の培養容器U20、第二の培養容器U30、培地容器U10の順に、移送チューブU40に接続されており、これらの順は同一である。
培地容器U10は、送液用(送入及び送出を含む)のポートU11を備え、このポートU11において移送チューブU40に接続されている。
【0016】
第一の培養容器U20は、送液用のポートU21を備え、このポートU21において移送チューブU40に接続されている。
ポートU21は、
図3に示すように、第一の培養容器U20の周縁部における移送チューブU40側であって、かつ第二の培養容器U30に対して最も反対側に設けることが好ましい。このようにすれば、第一の培養容器U20から内容物を送出するにあたり、すなわち、第一の培養容器U20から細胞懸濁液を第二の培養容器U30に移送するにあたり、第一の培養容器U20をこのポートU21が下になるように傾けることで、細胞懸濁液が第一の培養容器U20に残留することを抑制することが可能となる。
【0017】
また、培地容器U10から培地を第一の培養容器U20に供給するときなどの細胞培養の過程で第一の培養容器U20に入り込んだ気泡を取り除くにあたり、ポートU21が上になるように第一の培養容器U20を傾けることで、第一の培養容器U20に入り込んだ気泡をポートU21の近傍に集めて、ポートU21から容易に取り除くことが可能となる。
【0018】
第二の培養容器U30は、送液用のポートU31及びポートU32を備え、2本の培養容器接続チューブU42の一方の端部がこれらのポートに接続され、他の端部が移送チューブU40に接続されている。移送チューブU40における培養容器接続チューブU42の接続部の間には、ポンプU41が取り付けられている。
すなわち、細胞培養ユニットUには、ポンプは1つのみ備えられており、第二の培養容器U30は、第二の培養容器U30と移送チューブU40とを接続する培養容器接続チューブU42により、移送チューブU40におけるポンプU41の両側で、移送チューブU40に接続された構成となっている。
【0019】
ポートU31は、
図3に示すように、第二の培養容器U30の周縁部における移送チューブU40側であって、かつ培地容器U10に対して最も反対側に設けることが好ましい。このようにすれば、第二の培養容器U30から内容物を送出するにあたり、すなわち、例えば、第二の培養容器U30から細胞懸濁液を空となった培地容器U10に移送して回収する場合には、第二の培養容器U30をこのポートU31が下になるように傾けることで、細胞懸濁液が第二の培養容器U30に残留することを抑制することが可能となる。
【0020】
また、第一の培養容器U20から細胞懸濁液を第二の培養容器U30に移送するときや、培地容器U10から培地を第二の培養容器U30に供給するときなどの細胞培養の過程で第二の培養容器U30に入り込んだ気泡を取り除くにあたり、ポートU31が上になるように第二の培養容器U30を傾けることで、第二の培養容器U30に入り込んだ気泡をポートU31の近傍に集めて、ポートU31から容易に取り除くことができる。
【0021】
これらの容器におけるポート数は、特に限定されるものではなく、その個数は任意のものにすることができる。
図3の例では、第一の培養容器U20には、ポートU21の他に、細胞注入用のポートU22が備えられている。また、第二の培養容器30には、ポートU31,U32の他に、増殖因子などを注入するための予備ポートU33とサンプリング用のポートU34が備えられている。
容器間で送液を行わない時は、各容器からの流路は、クリップなどの閉塞部材U44によって閉塞されている。すなわち、
図3の例では、各容器とポンプU41間の流路はクリップ止めされている。そして、容器間で送液を行うにあたって、送液を行う2つの容器についての閉塞部材U44のみ閉塞を解除して流路を開放し、ポンプU41による送液を行う。
【0022】
このように構成された細胞培養ユニットUにおいて細胞培養を行うには、まず、第一の培養容器U20にポートU22から細胞を注入する。
次に、ポンプU41を作動させ、このポンプU41によって、
図3に示すように、培地容器U10から第一の培養容器U20へ培地を移送する(同図矢印(1))。そして、第一の培養容器U20において、所定の期間、細胞培養が行われる。
第一の培養容器U20における細胞培養の後、ポンプU41によって、第一の培養容器U20から第二の培養容器U30へ細胞懸濁液を移送し(同図矢印(2))、次いで培地容器U10から第二の培養容器U30へ培地を移送する(同図矢印(3))。
【0023】
このとき、第一の培養容器U20から第二の培養容器U30への細胞懸濁液の移送は、ポンプU41の培地容器U10側において移送チューブU40に接続された培養容器接続チューブU42を経由して行う。
また、培地容器U10から第二の培養容器U30への培地の移送は、ポンプU41の第一の培養容器U20側において移送チューブU40に接続された培養容器接続チューブU42を経由して行う。
【0024】
このような細胞培養ユニットUによれば、培地容器U10から第一の培養容器U20への培地の移送と、第一の培養容器U20から第二の培養容器U30への細胞懸濁液の移送と、培地容器U10から第二の培養容器U30への培地の移送の3系統の移送を、1台のポンプU41のみを使用することで、適切に行うことができる。
【0025】
培地容器U10は、一般に、格納している培地のpHが培養期間中に大きく変化しないように、酸素及び二酸化炭素に対するガスバリア性を有するものが用いられる。培地中に含まれている高濃度の炭酸ガスが空気中に抜け、培地中の炭酸ガス濃度が低下し、結果としてpHが上昇することを回避するため、培地容器U10の内部から二酸化炭素が外部に漏れ出るのをできるだけ少なくすることが望ましく、また培地の酸化を防ぐことが望ましいためである。
【0026】
第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30は、軟包材を材料として袋状(バッグ型)に形成されており、内容物を確認できるように、一部又は全部が透明性を有している。また、これらの培養容器は、細胞の培養に必要なガス透過性(酸素及び二酸化炭素透過性)を有していることが必要であり、37℃、5%二酸化炭素濃度の培養環境下で使用することが好ましい。さらに、高い細胞増殖効率を実現するために、低細胞毒性、低溶出性、及び放射線滅菌適性を有することが好ましい。
【0027】
このような条件を満たす培養容器の材料としては、ポリエチレン系樹脂が好ましい。このポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸やメタクリル酸共重合体と金属イオンを用いたアイオノマー等が挙げられる。また、ポリオレフィン、スチレン系エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂等を用いることもできる。
【0028】
培地容器U10、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30の形状及びこれらの収容部の形状は、特に限定されず、
図3の例では、長方形状としている。これらの容器は、四辺をヒートシールにより密封して製造でき、またブロー成形による一体成型バッグとして製造することもできる。
各ポートは、移送チューブU40側に配置することが好ましく、収容部を、チューブの取り付け部分に向かって次第に狭くなるようにすることも好ましい。
【0029】
移送チューブU40及び培養容器接続チューブU42の材料は、使用環境に合わせて適宜選択すれば良いが、ガス透過性に優れるものが望ましい。例えば、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー等を用いることができる。また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、SEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)等を用いることができる。
【0030】
図3において、例えば、移送チューブU40におけるポンプU41を取り付ける部分にシリコーンチューブを用い、その他の部分に軟質塩化ビニル樹脂チューブを好適に用いることができる。
また、移送チューブU40におけるチューブ間の接続は、ルアーコネクターやその他の連結手段により行うことができる。さらに、移送チューブU40において、例えばピンチバルブや二方活栓、三方活栓等の流路開閉手段を設けても良い。
【0031】
ポンプU41の種類は特に限定されないが、細胞培養ユニットUにおける閉鎖系を実現しやすいことから、ペリスタポンプ(R)などのチューブローラポンプを好適に用いることができる。
【0032】
本実施形態では、このような細胞培養ユニットUを細胞培養装置1に格納するが、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30は、細胞培養に好適な温度(例えば、37℃)に維持されるように温度調整されたインキュベート槽3に格納され、培地容器U10は、培地の保存に好適な温度(例えば、4℃)に維持されるように温度調整された保冷槽4に格納される。
【0033】
図4に示すように、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30が格納されるインキュベート槽3には、複数のスライドレール31が高さ方向に沿って多段に列設されたインキュベート槽側支持フレーム30が設置されている。このインキュベート槽側支持フレーム30に列設されたスライドレール31のそれぞれには、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を収容する培養容器収容棚部32が、スライド可能に取り付けられて手前に引き出せるようになっている。このようにすることで、培養容器収容棚部32に第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を据えつけたり、取り外したりする際に、培養容器収容棚部32を手前に引き出して、これらの作業が容易にできるようにしてある。
なお、
図4に示す例では、培養容器収容棚部32には、その手前側に細胞培養ユニットUを構成するポンプU41、閉塞部材U44を取り付けているが、移送チューブU40などの図示は省略してある。
【0034】
また、培地容器U10が格納される保冷槽4においても同様に、複数のスライドレール41が高さ方向に沿って多段に列設された保冷槽側支持フレーム40が設置されている。そして、保冷槽側支持フレーム40に列設されたスライドレール41のそれぞれに、培地容器U10を収容する培地容器収容棚部42が、スライド可能に取り付けられて手前に引き出せるようになっている。これにより、培地容器収容棚部42に培地容器U10を据えつけたり、取り外したりする際にも、培地容器収容棚部42を手前に引き出して、これらの作業が容易にできるようにしてある(
図5参照)。
なお、
図5は、培地容器収容棚部42を手前に引き出した状態を平面視して示しており、培地容器収容棚部42には、その手前側に細胞培養ユニットUを構成する閉塞部材U44を取り付けているが、培地容器U10に設けられたポートU11及び移送チューブU40の図示は省略してある。
【0035】
このように、本実施形態にあっては、所定の温度に調整されたインキュベート槽3と保冷槽4とに、培養容器収容棚部32と培地供給容器収容棚部42とを対をなして別々に設け、培養容器収容棚部32に第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を収容するとともに、培地供給容器収容棚部42に培地容器U10を収容するようにして、複数の細胞培養ユニットUを多段に格納できるようにしてある。このようにすることで、本実施形態の細胞培養装置1によれば、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30と培地容器U10のそれぞれに適した温度環境下で、複数の細胞培養ユニットUを独立した状態で多段に格納して、それぞれの細胞培養ユニットUごとに細胞培養を個別に行うことができる。
なお、
図2では、対になった培養容器収容棚部32と培地容器収容棚部42とを手前に引き出した状態を示しているが、作図上、これらに収容される細胞培養ユニットUや、その他の付属機器などの図示は省略している。
【0036】
また、本実施形態にあっては、インキュベート槽側支持フレーム30に取り付けられた培養容器収容棚部32やその他の付属機器を、インキュベート槽側支持フレーム30ごとインキュベート槽3から取り出すことができるように、インキュベート槽側支持フレーム30は、インキュベート槽3に出し入れ自在に設置されている。同様に、保冷槽側支持フレーム40も保冷槽4に出し入れ自在に設置されており、保冷槽側支持フレーム40に取り付けられた培地容器収容棚部42やその他の付属機器を、保冷槽側支持フレーム40ごと保冷槽4から取り出すことができるようにしてある。これにより、細胞培養装置1の筐体2内に設置された機器類は、これらの支持フレーム30,40ごと取り出したり、各槽内に設置したりすることができるようになっている。
【0037】
細胞培養装置1をこのように構成することで、例えば、細胞培養装置1をメンテナンスなどする際に、筐体2内に設置された機器類を支持フレーム30,40ごと取り出して、筐体2側の作業スペースを確保することができ、これによって細胞培養装置1をメンテナンスなどする際の作業性をよくすることができる。さらに、例えば、細胞培養装置1に異常が発生したときなどには、細胞培養ユニットUを一つずつ取り出したりせずに、支持フレーム30,40ごと全部の細胞培養ユニットUを取り出して、短時間で対応することが可能になる。
支持フレーム30,40を筐体2内から取り出した後、これらは台車に載せて移動するようにしてもよいが、支持フレーム30,40には、これらを容易に移動できるようにキャスターなどの移動手段を設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態にあっては、細胞培養装置1に複数の細胞培養ユニットUを格納して、それぞれの細胞培養ユニットUで細胞培養を行うにあたり、細胞培養ユニットUが備える第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30における細胞培養の進行状況を計測するための計測ユニット5が、細胞培養装置1の筐体2の背板部21と培養容器収容棚部32との間に設置されている(
図4参照)。
【0039】
計測ユニット5は、培養容器U20,U30の被計測部位を撮像する撮像部51を備え、撮像データを解析して細胞数や細胞密度などを算出することによって、細胞培養の進行状況を計測することができるようになっていれば、その具体的な構成は問わない。図示する例では、CCDカメラと対物レンズとを有する撮像部51と、撮像部51に対向して配置された照明部52とを備えており、培養容器U20,U30の被撮像部位に上方から照明光を照射しつつ、培養容器U20,U30の被撮像部位を下方から撮像できるようになっている。
【0040】
特に図示しないが、本実施形態のように、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30が軟包材を材料として袋状(バッグ型)に形成されている場合には、計測ユニット5には、培養容器U20,U30の被撮像部位を撮像する際に、当該被撮像部位を押さえ付けて、その撓みをなくした状態で培養容器U20,U30の内部を明瞭に撮像できるように、押さえ部材を備えるようにしてもよい。
【0041】
計測ユニット5は、細胞培養装置1に格納された全ての細胞培養ユニットUについて、その細胞培養の進行状況を計測することができるように、筐体2内を上下に移動できるように設置される。例えば、インキュベート槽側支持フレーム30に取り付けられた支柱50に、モータなどの動力源により上下に移動できるように設置することができる。
さらに、本実施形態において、細胞培養ユニットUは、第一の培養容器U20と第二の培養容器U30とを備えるが、それぞれの培養容器U20,U30における細胞培養の進行状況を計測できるように、計測ユニットは、
図8に矢印で示すように、水平方向にも移動できるようにすることができる。
図8に示す例では、計測ユニット5を水平方向に移動できるようにガイド部材50a、50bに保持し、かかるガイド部材50a、50bを支柱50に上下移動可能に取り付けているが、具体的な機構はこれに限定されない。
【0042】
また、本実施形態において、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を収容する培養容器収容棚部32は、手前に引き出せるだけでなく、奥側に向かってもスライド可能とされている。これにより、計測ユニット5が筐体2内を移動して、計測対象の細胞培養ユニットUの計測位置に到達すると、かかる細胞培養ユニットUの第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を収容する培養容器収容棚部32が、計測ユニット5に向かって移動するようにしてある(
図4及び
図8参照)。そして、培養容器収容棚部32に収容された第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30の被計測部位が、計測ユニット5が備える撮像部51の撮像範囲に入ると、計測ユニット5による細胞培養の進行状況の計測が開始される。
このようにすることで、全ての細胞培養ユニットUについて、隣接する細胞培養ユニットUと干渉することなく、計測対象の細胞培養ユニットUにおける細胞培養の進行状況を一つの計測ユニット5で計測することができる。
【0043】
ここで、
図6〜
図8に、培養容器収容棚部32がスライドして移動する状態を平面視して示すが、培養容器収容棚部32は、
図6に示す状態から手前に引き出されると
図7に示す状態となり、これは、
図4において最下段に示す培養容器収容棚部32の位置に相当する。そして、
図6に示す状態から計測ユニット5に向かって移動すると
図8に示す状態となり、これは、
図4において下から四段目に示す培養容器収容棚部32の位置に相当する。
なお、
図6〜
図8に示す例では、培養容器収容棚部32には、その手前側に細胞培養ユニットUを構成するポンプU41と閉塞部材U44を取り付けているが、第一の培養容器U20に設けられたポートU21,U22、第二の培養容器U30に設けられたポートU31,U32,U33,U34、移送チューブU40及び培養容器接続チューブU42の図示は省略してある。
【0044】
また、前述したように、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30の内容物をそれぞれのポートU21,U31から移送するにあたり、これらのポートU21,U31が下になるように培養容器U20,U30を傾けることで、内容物の残留を抑制することができる。これとともに、培養容器U20,U30に入り込んだ気泡を取り除くにあたり、これらのポートU21,U31が上になるように培養容器U20,U30を傾けることで、培養容器U20,U30に入り込んだ気泡をポートU21,U31の近傍に集めて容易に取り除くことができる。
【0045】
本実施形態では、これを可能とするために、培養容器収容棚部32は、ポートU21,U31が下位又は上位に位置するように、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を傾かせる傾斜手段としての揺動プレート33を備えている。そして、この揺動プレート33上に培養容器U20,U30を据えつけることによって、培養容器U20,U30が培養容器収容棚部32に収容されるようになっている。
【0046】
本実施形態において、揺動プレート33は、これを支持する四つの揺動アーム34が対向する側縁のそれぞれに二つずつ取り付けられている。そして、これらの揺動アーム34を回動させることによって、揺動プレート33が揺動して培養容器U20,U30に水平面に対する傾きが生じるようにしているが、揺動プレート33の具体的な構成はこれに限定されない。培養容器U20,U30に設けられたポートU21,U31の位置に応じて、当該ポートU21,U31が下位又は上位になるように高低差をつけて培養容器U20,U30を傾かせることができるようになっていればよい。
なお、本実施形態では、このような揺動アーム34に支持された揺動プレート33を傾斜手段として備えるが、上記したように培養容器U20,U30を傾かせることができれば、所定の軸周りに回動して傾斜するように構成されたプレート上に培養容器U20,U30を据えつけて、これを傾斜手段としてもよい。
【0047】
また、揺動プレート33には、必要に応じて、
図6〜
図9に示すように、第二の培養容器U30の内容物を撹拌するための撹拌ローラ36を設けてもよい。撹拌ローラ36の具体的な構成は特に限定されず、第二の培養容器U30の上面に押し付けられた状態で往復移動して、軟包材からなる第二の培養容器U30を撓み変形させながら内容物を撹拌できるようになっていればよい。
なお、
図4では、撹拌ローラの図示を省略してある。
【0048】
また、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30に入り込んだ気泡をそれぞれのポートU21,U31から取り除くにあたり、取り除かれた気泡は、例えば、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30と、培地容器U10との間の閉塞部材U44の閉塞を解除して流路を開放し、ポンプU41を作動することにより、移送チューブU40を通して移送することにより、培地容器U10に流入させることができる。このとき、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30の内容物も一緒に培地容器U10に流入してしまうのを抑止するために、本実施形態にあっては、培地容器U10が収容される培地容器収容棚部42が、培地容器U10の重量変化を検知する重量検知手段43を備えている(
図5及び
図10参照)。
【0049】
すなわち、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30の内容物が、気泡と一緒に移送チューブU40を通って培地容器U10側に移送されてくると、当該内容物により重量が増加する。このときの重量増加を検知して、自動的に又は手動でポンプU41が停止するようにして、気泡の移送操作を終了するようにすれば、培養容器U20,U30の内容物が培地容器U10に流入してしまうのを抑止することができる。そして、ポンプU41を逆作動させることにより、移送チューブU40内に残留する当該内容物を培養容器U20,U30に戻すことができ、当該内容物を無駄にすることがない。
【0050】
なお、重量増加が検知されてからポンプU41が停止するまでの期間、及びポンプU41を逆作動させる期間は、移送チューブU40内の体積やポンプU41による送液速度などに応じて適宜設定することができる。
また、本実施形態では、培地容器収容棚部42が重量検知手段43を備えているが、培養容器収容棚部32が重量検知手段を備えるようにして、第一の培養容器U20又は第二の培養容器U30の内容物が流出する際の重量減少を検知して、気泡の移送操作を自動的に又は手動で停止するようにしても、培養容器U20,U30の内容物が培地容器U10に流入してしまうのを抑止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、培地容器U10をトレー44に載置して、このトレー44を介して培地容器収容棚部42に培地容器U10を収容するようにしている。すなわち、培地容器収容棚部42に培地容器U10を直接据えつけるのでなく、培地容器U10をトレー44に載置して、このトレー44ごと培地容器収容棚部42に収容するようにしている。
このようにすることで、例えば、細胞培養ユニットUを細胞培養装置1に格納する作業をするに際して、第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30も一緒にトレー44に載せて運ぶことができる。これにより、培地容器収容棚部42にトレー44を載置して培地容器U10を収容した後は、トレー44から第一の培養容器U20及び第二の培養容器U30を取り出して、これらを培養容器収容棚部32に据えつけることができ、これらの一連の作業を効率よく行うことができる。
また、トレー44を介して培地容器収容棚部42に培地容器U10を収容するにあたり、
図10に示すように、培地容器U10のポートU11が設けられている側が低くなるように、トレー44を傾けた状態にするのが好ましい。このようにすることで、培地容器U10から培地を培養容器U20,U30に供給する際に、培地容器U10に培地が残留することを抑制することができる。
【0052】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば、細胞培養装置1に格納される細胞培養ユニットUは、前述した例に限定されない。培養の対象となる細胞(培養細胞)とともに、この細胞を培養するために調製された培地が供給されて細胞培養を行う培養容器と、この培養容器に培地を供給するための培地容器とを備えていればよい。
また、培地容器の接続個数は特に限定されず、1つ又は2つ以上の培地容器を移送チューブに接続して、細胞培養ユニットUを構成することができる。さらに、細胞培養を終えた培養容器の内容物(細胞懸濁液)を回収する回収容器を移送チューブに接続して、細胞培養ユニットUを構成することもできる。
【0054】
また、前述した実施形態では、細胞培養装置1の筐体内が断熱壁20によって、インキュベート槽3と保冷槽4とに仕切られた二槽構造となっている例を示したが、培養容器収容棚部32と培地容器収容棚部42とが対をなしてインキュベート槽3と保冷槽4とに別々に設けられていれば、各槽3,4の具体的な構成は問わない。例えば、特に図示しないが、細胞培養装置1は、インキュベート槽3を形成する筐体と、保冷槽4を形成する筐体とを独立して設けてもよく、これらの筐体を連結させた構成としてもよい。