(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の梯子機構1では、梯子本体3が下部走行体5と上部作業体との間の十分に広い空間(上記操作部から離れた位置)に配置されていたので、作業者は、地上から一旦下部走行体5の外装パネルの上に移動し、さらにそこから上記操作部8にアクセスする必要があった。そのため、近年では、作業の効率化のために、作業者にとって地上から上記操作部8へ最短距離で移動したいという要請がある。つまり、地上から上記操作部8ないしその近傍に直接に梯子本体3を掛けたいとの要請がある。
【0009】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、下部走行体と上部作業体との間の狭い空間にも収納でき且つコンパクトに展開することが可能な梯子機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る梯子機構は、下部走行体及び当該下部走行体の上部に配置された上部作業体を有する車両に搭載されるものである。この梯子機構は、
一対の支柱及び当該支柱間に渡された踏桟を有し、上記上部作業体へのアクセスをアシストする梯子と、上記下部走行体に設けられ、軸方向が当該下部走行体の長手方向に沿って配置された第1支軸と、先端部に上記梯子が連結されると共に基端部が上記第1支軸に回動可能に支持されることによって、上記梯子が上記下部走行体と上記上部作業体との隙間に収納された収納姿勢及び上記下部走行体の側方に張り出された張出姿勢の間で姿勢変化することを許容する揺動アームと、上記揺動アームの先端部に配置され、上記梯子を回動可能に支持する第2支軸とを備える。この第2支軸の軸方向は、上記張出姿勢にある梯子が上記下部走行体の長手方向に沿う並行姿勢及び当該長手方向と交差する方向に沿う交差姿勢の間で姿勢変化するように
、上記支柱及び踏桟の双方と交差し且つ上記第1支軸の軸方向と交差している。
【0011】
この構成によれば、第1支軸が下部走行体に設けられ、しかも当該第1支軸の軸方向が下部走行体の長手方向に沿っている。揺動アームの基端部は、上記第1支軸に回動可能に支持されているから、揺動アームが上記第1支軸の周りに回動することによって、この揺動アームは、下部走行体の側方でフラップのように変位する。この揺動アームの先端部に梯子が設けられているから、揺動アームがフラップのように変位することによって、梯子は、収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化する。換言すれば、揺動アームが上記第1支軸の周りに回動して起立すると、梯子は、揺動アームの長さを回転半径とする円弧状の軌跡を描いて上方へ持ち上げられ、下部走行体と上部作業体との隙間に収納される。また、この状態から揺動アームが倒伏すると、梯子は、上記軌跡を描いて下部走行体の側方に張り出した位置に変位する。梯子は上記収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化するだけであるので、揺動アームの長さが抑えられる。
【0012】
梯子は、第2支軸を介して揺動アームの先端部に回動可能に支持されている。第2支軸が上記第1支軸と交差しているので、梯子が第2支軸の周りに回動することにより、この梯子は、並行姿勢と交差姿勢との間で姿勢変化する。すなわち、梯子が第2支軸の周りに回動することにより、当該梯子が下部走行体の長手方向に沿う姿勢(並行姿勢)となり、さらに回動することにより、当該梯子が下部走行体の長手方向と交差する方向に沿う姿勢(交差姿勢)となる。梯子が交差姿勢になると、この梯子が下部走行体に立て掛けられた状態となる。
【0013】
前述のように、上記第1支軸が上記下部走行体に設けられ且つ当該下部走行体の長手方向に延びるように配置されることにより、揺動アームをフラップのように変位させる構造がきわめて簡単になる。しかも、仮に下部走行体が隣接する二つの車軸を備えている場合(たとえばフロントアクスルが二軸で構成される場合)であっても、これら隣接する車軸間に上記第1支軸が配置され得る。この場合、揺動アームは、当該隣接する車軸間において起伏動作を行うことができる。
【0014】
(2) 上記第2支軸は、上記揺動アームの基端部に対して上記下部走行体の長手方向にオフセットされた位置に配置されているのが好ましい。
【0015】
この構成では、梯子が張出姿勢になった状態でさらに交差姿勢へと姿勢変化する際に、当該姿勢変化の回転中心(すなわち第2支軸)が、下部走行体の長手方向にずれている。したがって、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子の位置が、下部走行体の長手方向に調整され得る。これにより、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子を下部走行体のアクスルに対し所定位置に配置したいとの設計上の要請があったとしても、当該梯子を適切な位置に配置し得る。
【0016】
(3) 上記梯子は、一対の支柱と、当該支柱の長手方向に沿って並設された複数の踏桟と、当該支柱間に掛け渡され、上記第2支軸が係合するサポート部材とを有する。上記第2支軸は、上記一対の支柱の中央に対してオフセットされた状態で上記サポート部材と係合している。
【0017】
上記第2支軸が上記一対の支柱の中央に対してオフセットされることにより、並行姿勢から交差姿勢に姿勢変化する際に、当該梯子の位置が下部走行体の長手方向に調整され得る。これにより、梯子の位置がなお一層適切な位置に配置される。
【0018】
(4) 上記サポート部材は、隣り合う踏桟の間に配置され且つ上段側の踏桟に当接しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、サポート部材が隣り合う踏桟のうち上段側に当接して配置されているから、当該サポート部材と下段側の踏桟との間に十分な空間が確保される。したがって、作業者が当該梯子の踏桟に足を掛ける際にサポート部材が邪魔になることがない。
【0020】
(5) 上記張出姿勢且つ交差姿勢となった梯子の上端にステップを形成するクロスメンバが、上記一対の支柱間に掛け渡されているのが好ましい。
【0021】
この構成では、梯子の支柱に上記クロスメンバが設けられており、これがステップとして機能するから、梯子が交差姿勢にあるときに、作業者は、上記クロスメンバに足を掛けて上部作業体に移動することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、揺動アームの回動及び梯子の回転という二つの動作により、梯子をコンパクトにハンドリングして下部走行体と上部作業体との間に収納すると共に上部作業体への作業者のアクセスを可能なものとする。これにより、梯子は、上部作業体の直下(上部作業体と下部走行体との間の狭い空間)にも収納され、現場において梯子のハンドリングのための広いスペースを要することなく上部作業体に立て掛けられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る梯子機構の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る梯子機構が搭載されたラフテレーンクレーンの外観図である。
【0027】
このラフテレーンクレーン10は、下部走行体11及び上部作業体12並びに作業者が地上から上部作業体12へアクセスするための梯子機構(後述の梯子13及び梯子駆動装置14)を備えている。このラフテレーンクレーン10のフロントアクスル15は、いわゆる二軸構造であって、隣接する二つの車軸16、17が設けられている。なお、リアアクスル19は、単一の車軸を有する。
【0028】
下部走行体11は、下部フレーム18を有し、この下部フレーム18に上記フロントアクスル15及びリヤアクスル19が設けられている。フロントアクスル15が二つの車軸16、17を備えているのは、フロントアクスル15の軸重を車軸16及び車軸17に分散し、各車軸16、17に負荷される軸重を低減するために他ならない。したがって、フロントアクスル15及びリヤアクスル19の軸重が一定以下であれば、フロントアクスル15及びリヤアクスル19は共に単一の車軸で構成されてもよいし、リヤアクスル19の軸重が大きい場合は、リアアクスル19も複数の車軸を備える必要がある。
【0029】
下部フレーム18にエンジンユニット20が搭載されている。このエンジンユニット20は、ディーゼルエンジンを備え、フロントアクスル15及びリアアクスル19の駆動源となる。フロントアクスル15の車輪21、22及びリアアクスル19の車輪23は、図示されていないトランスミッションを介して駆動され、且つ図示されていない油圧シリンダにより操舵される。
【0030】
下部フレーム18の前端下部及び後端下部にそれぞれフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25が装備されている。上部作業体12の稼働時にフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25が張り出すことにより、下部走行体11が安定して接地される。さらに、上部作業体12へ油圧を供給する油圧ポンプ(不図示)が下部フレーム18に設けられている。この油圧ポンプは、上記ディーゼルエンジンを駆動源として駆動され、所定圧力の作動油を供給し、上部作業体12やフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25を作動させる。
【0031】
下部フレーム18に旋回ベアリング26を介して上部作業体12が搭載されている。この上部作業体12は、旋回台27を有し、当該旋回台27が下部フレーム18に対して旋回可能に支持されている。上部作業体12は、ブーム装置28を有し、当該ブーム装置28が根本支点ピンを介して旋回台27に連結されている。このブーム装置28と旋回台27との間に図示されていない起伏シリンダが介在されており、この起伏シリンダが伸縮することによって、ブーム装置28が上記根本支点ピンを中心として起伏動作をすることができる。また、ブーム装置28は、伸縮ブーム29を備えており、この伸縮ブーム29は、図示されていない伸縮シリンダを内蔵している。この伸縮シリンダが伸縮することによって、伸縮ブーム29が長手方向に伸縮する。さらに、ブーム装置28は、油圧モータで駆動されるウインチ(不図示)を備えており、このウインチが作動することによりワーク(吊荷)が昇降される。加えて、下部走行体11の運転及び上部作業体12の操作を行うための単一の操作部31が、旋回ベアリング26を介して設けられている。なお、上部作業体12の安定した作業のために、旋回台27の後端にカウンタウエイト32が設けられている。
【0033】
図2は、ラフテレーンクレーン10の側面図及び正面図である。
図3は、このラフテレーンクレーン10の要部拡大側面図である。
【0034】
本実施形態に係るラフテレーンクレーン10の特徴とするところは、上記梯子13及び梯子駆動装置14が設けられている点である。特に、これらが後述の機構及び構造を備えることにより、梯子13が上記操作部31と下部走行体11との間の狭い隙間33(
図3参照)に収納されると共に(後述の収納姿勢且つ並行姿勢:
図2(a)、
図3参照)、所要時には下部走行体11の側方にコンパクトに張り出すことができるようになっており(後述の張出姿勢且つ交差姿勢:
図2(b)(c)参照)、その結果、作業者が地上から直接に上記操作部31に簡単且つ迅速にアクセスすることができる。
【0036】
図4ないし
図7は、梯子13及び梯子駆動装置14の構造を示す斜視図である。これらの図は、梯子13が
図3に示す姿勢(並行姿勢且つ収納姿勢)にある状態を示している。
図4は、下部走行体11の斜め前方から見た梯子13及び梯子駆動装置14の斜視図、
図5は、下部走行体11の斜め後方から見た梯子13及び梯子駆動装置14の斜視図、
図6は、下部走行体11の内側斜め前方から見た梯子13及び梯子駆動装置14の斜視図、
図7は、下部走行体11の内側斜め後方から見た梯子13及び梯子駆動装置14の斜視図である。
【0037】
これらの図が示すように、梯子13は、梯子本体39と、これに設けられたサポート部材36及びクロスメンバ38とを備えている。梯子本体39は、一対の支柱34、35と、この支柱34、35間に渡された4本の踏桟37とを有する。これらは、典型的にはアルミニウム合金製のパイプ部材から構成される。本実施形態では、4本の踏桟37が設けられているが、踏桟37の本数は特に限定されるものではない。また、上記クロスメンバ38の断面形状は、同図が示すように略L字状に形成されており、後述のように作業者が足を掛けやすくなっている。このクロスメンバ38は、金属又は樹脂から構成され得る。
【0038】
サポート部材36は、アルミニウム合金又は鉄鋼材料から構成され得る。サポート部材36は、矩形板状の本体40と、一対の固定板41とを備えている。各固定板41は、梯子本体39の支柱34、35にそれぞれ固定されている。本体40は、各固定板41を介して上記支柱34、35に取り付けられ、隣り合う踏桟37の間に配置されている。つまり、固定板41は、上記支柱34、35を補強しつつ確実に本体40を支持している。また、本体40の長手方向(
図5及び
図7において矢印50に沿う方向:下部走行体11の長手方向)の縁部に一対のリブ64が設けられており、且つ当該リブ64同士を連結する補強板(不図示)が設けられている。これにより、本体40は、中空の箱状に形成されている。上記リブ64及び補強板は、本体40の剛性を向上させている。本実施形態では、サポート部材36は、上段側の踏桟37に当接している。サポート部材36が上段側の踏桟37に当接していることによる作用効果については後述される。
【0039】
図8は、梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢にある状態での当該梯子13及び梯子駆動装置14の構造を示す斜視図である。
【0040】
図4及び
図8が示すように、上記サポート部材36の本体40に梯子支軸42(特許請求の範囲に記載された「第2支軸」に相当)が貫通している。この梯子支軸42は、後述の揺動アーム43に設けられており、本体40に設けられた貫通孔に挿通されている。
図4が示すように、梯子支軸42の軸方向(矢印86に沿う方向)は、下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に対して交差(本実施形態では直交)している。梯子13は、この梯子支軸42を中心として矢印88の方向に沿って回動可能となっている。本実施形態では、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に寸法F1だけオフセットされている。また、梯子支軸42は、本体40の中央(すなわち、一対の支柱34、35の中央)に対して寸法F2だけオフセットされている。このように梯子支軸42がオフセットされていることによる作用効果については後述される。
【0041】
図9は、
図8の要部拡大分解斜視図である。
【0042】
これらの図が示すように、上記サポート部材36の本体40の裏面にシリンダ連結ピン44が立設されている。このシリンダ連結ピン44は、本体40と一体的に形成されており、上記貫通孔(上記梯子支軸42が挿通される貫通孔)からずれた位置に配置されている。後述される回動シリンダ45がシリンダ連結ピン44に連結されており、回動シリンダ45が伸縮することにより、上記梯子支軸42を中心とする回転モーメントが梯子本体39に作用し、梯子13が回動するようになっている。また、回動規制ピン46がシリンダ連結ピン44と並設されている。この回動規制ピン46も本体40と一体的に形成されている。この回動規制ピン46は、後述する位置決めシリンダ48が係合するようになっている。回動規制ピン46の先端部に平面部47(
図9参照)が形成されている。回動規制ピン46が位置決めシリンダ48と係合することによる作用効果及び上記平面部47が形成されることによる作用効果については後述される。
【0044】
図10は、梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢にある状態での当該梯子13及び梯子駆動装置14の構造を示す斜視図である。
【0045】
同図が示すように、梯子駆動装置14は、下部走行体11(
図3参照)に設けられたアーム支軸49(特許請求の範囲に記載された「第1支軸」に相当)と、これに支持された上記揺動アーム43と、この揺動アーム43の先端部に設けられた上記梯子支軸42(
図9参照)とを備えている。アーム支軸49は、円柱状を呈している。
図10が示すように、アーム支軸49の軸方向は、下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に沿っている。前述のように、アーム支軸49の軸方向と梯子支軸42の軸方向とは交差している(
図4参照)。アーム支軸49と梯子支軸42とが交差していることによる作用効果は後述される。
【0046】
図10が示すように、本実施形態では、下部走行体11にブラケット51が固定されており、このブラケット51にアーム支軸49が支持されている。このブラケット51は、鉄鋼材料からなり、細長の箱状に形成されている。具体的には、ブラケット51は、一対の側板52及び底板53(
図11参照)を有し、基端部54がボルト55(
図6及び
図7参照)により下部走行体11の側面に締結されている。すなわち、ブラケット51は、下部走行体11の側面から側方に張り出すように延びている。このブラケット51の先端部56に、上記一対の側板52間に掛け渡すように上記アーム支軸49が配置されている。
【0047】
揺動アーム43は、鉄鋼材料からなり、
図4及び
図10が示すように全体として略T字状に形成されている。この揺動アーム43は、脚部57及びヘッド部58を備えている。脚部57は、断面形状が矩形の細長の箱状に形成され、一対の側板59及び底板60(
図4及び
図5参照)を有する。本実施形態では、底板60の端部の幅寸法がヘッド部58側に向かって漸次拡大されており、底板60の端部が三角形状に形成されている。これにより、脚部57とヘッド部58との境界部位が補強されている。なお、この底板60の端部と対向する位置において、脚部57とヘッド部58との境界にリブ61(
図10参照)が設けられており、当該部位に応力が集中することが回避されている。
【0048】
図10が示すように、脚部57の基端部62に図示されていない貫通孔が矢印50の方向に沿って設けられており、この貫通孔に上記アーム支軸49が挿通されている。すなわち、脚部57の基端部62が上記ブラケット51の先端部56の内側(具体的には上記一対の側板52の間)に配置され、両者を連結するようにアーム支軸49が矢印50の方向に沿って嵌め込まれている。これにより、脚部57は、ブラケット51に対して回動自在となっている。
【0049】
ヘッド部58は、脚部57の先端部63に固定されている。ヘッド部58は、真直な棒状部材であって、矢印50の方向に沿って延びている。本実施形態では、ヘッド部58は、断面形状が矩形のパイプからなる。このヘッド部58に上記梯子支軸42が突設されている。前述のように、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に寸法F1だけオフセットされ、且つ梯子13の一対の支柱34、35の中央に対して寸法F2だけオフセットされている。この梯子支軸42は、前述のようにサポート部材36を支持している。
【0050】
上記位置決めシリンダ48は、ヘッド部58に内蔵されている(
図9及び
図10参照)。この位置決めシリンダ48が作動することによりシリンダロッドがスライドし、ヘッド部58の端縁から出入りする。シリンダロッドに設けられたロックピン85(
図9参照)がヘッド部58から突出することにより、上記サポート部材36に設けられた回動規制ピン46と係合する。なお、上記シリンダロッドがロックピン85を兼ねていてもよい。本実施形態では、位置決めシリンダ48は、直動シリンダであって、いわゆる空圧アクチュエータである。もっとも、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータが採用されてもよい。
【0051】
図10が示すように、回動シリンダ45が上記ヘッド部58の外側に設けられている。この回動シリンダ45は、直動シリンダである。本実施形態では、回動シリンダ45は、いわゆる空圧アクチュエータであるが、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータが採用されてもよい。回動シリンダ45のシリンダチューブは、ヘッド部58にピンを介して回動可能に連結されている。回動シリンダ45のシリンダロッドは、上記サポート部材36に立設されたシリンダ連結ピン44に回動可能に連結されている(
図9参照)。この回動シリンダ45が作動すると、前述のように、梯子支軸42を中心とする回転モーメントが梯子本体39に作用し、梯子13が梯子支軸42を中心にして回動する(
図4参照)。これにより、梯子13は、
図2(b)及び
図3が示すように、下部走行体11の長手方向に延びる並行姿勢となり、また、当該並行姿勢から
図2(c)が示すように、上記長手方向と交差する(本実施形態では直交する)交差姿勢にもなり、両姿勢間で相互に変位する。
【0052】
図10が示すように、上記ブラケット51と、揺動アーム43との間に揺動シリンダ65が設けられている。この揺動シリンダ65は、直動シリンダである。本実施形態では、揺動シリンダ65は、いわゆる空圧アクチュエータであるが、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータが採用されてもよい。揺動シリンダ65のシリンダチューブは、ピンを介してブラケット51の基端部54に回動自在に連結されている。揺動シリンダ65のシリンダロッドは、揺動アーム43の中間部にピンを介して回動自在に連結されている。この揺動シリンダ65が伸縮作動すると、揺動アーム43がアーム支軸49を中心として回動する。これにより、揺動アーム43は、
図2(a)が示すように起立して下部走行体11に収納された位置に変位し、また、同図(b)が示すように倒伏して下部走行体11から側方に張り出した位置に変位する。
【0053】
その結果、梯子13は、同図(a)及び
図3が示すように、下部走行体11と上部作業体12との間の隙間33に収納された姿勢(収納姿勢)に変化することができ、また、下部走行体11の側方に張り出した姿勢(張出姿勢)にも変化するすることができる。加えて、前述のように、回動シリンダ45が作動することにより、梯子13は、梯子支軸42を中心として回動するが、当該梯子支軸42が上記アーム支軸49と交差(本実施形態では直交)しているから、梯子13は、上記張出姿勢のまま上記並行姿勢と交差姿勢との間で変位する。つまり、梯子13は、
図2(a)が示すように上記隙間33に収納された姿勢から、同図(c)が示すように、下部走行体11から側方に張り出して、作業者が地上から直接に上部作業体12の操作部31にアクセスできる姿勢へと相互に姿勢変化することができる。
【0055】
図11は、梯子13が張出姿勢且つ並行姿勢にある状態での梯子駆動装置14の斜視図であって、下部走行体11の内側斜め下方から見た図である。
【0056】
同図が示すように、揺動アーム43に位置決め部材66が設けられている。本実施形態では、位置決め部材66は六角ボルト68及びロックナット69からなり、揺動アーム43の基端部62に設けられている。具体的には、脚部57の基端部62にボス67が固定されており、このボス67に上記六角ボルト68がねじ込まれている。ロックナット69が六角ボルト68と螺合しており、六角ボルト68をボス67に対して位置決めしている。
【0057】
前述のように、揺動シリンダ65が伸びると揺動アーム43がブラケット51に対して回動し(
図10参照)、下部走行体11に収納された状態から下部走行体11の側方に張り出す向きに変位する。このとき、位置決め部材66も揺動アーム43と共に回動する。本実施形態では、
図11が示すようにブラケット51に当接板70が固定されている。この当接板70は、平板からなり、ブラケット51の先端部56に溶接されている。揺動アーム43と共に回動する位置決め部材66は、ブラケット51に当接する。具体的には、上記六角ボルト68のヘッド部が当接板70に当接し、ブラケット51に対する揺動アーム43の上記向きへの回動が規制される。六角ボルト68が当接板70に当接することにより、梯子13は、張出姿勢に位置決めされる。なお、本実施形態では、位置決め部材66が当接板70に当接する構造となっているが、位置決め部材66が直接にブラケット51に当接する構造であってもよい。また、ブラケット51は、下部走行体11に固定されているので、上記位置決め部材66が下部走行体11に当接する構造であってもよい。
【0058】
図9が示すように、サポート部材36に位置決め部材71が設けられている。本実施形態では、位置決め部材71は六角ボルト72及びロックナット73からなり、サポート部材36の本体40に設けられている。具体的には、本体40に立設されたシリンダ連結ピン44の近傍にボス74が固定されており、このボス74に上記六角ボルト72がねじ込まれている。ロックナット73が六角ボルト72と螺合しており、六角ボルト72をボス74に対して位置決めしている。
【0059】
前述のように、回動シリンダ45が伸びるとサポート部材36が揺動アーム43に設けられた梯子支軸42を中心として回動し、梯子13は、下部走行体11の長手方向に延びる並行姿勢から上記交差姿勢の向きに回転する。このとき、位置決め部材71もサポート部材36と共に回動し、揺動アーム43のヘッド部58に当接する。本実施形態では、ヘッド部58の端縁部は、
図9が示すように切り欠かれている。具体的には、同図においてヘッド部58の端面75の上側が長手方向に切り欠かれており、これにより、端面75に連続し且つ当該端面75と直交する当接面76が形成されている。上記六角ボルト72のヘッド部が当接面76に当接することにより、揺動アーム43に対する梯子13の上記向きへの回転が規制され、梯子13は、交差姿勢からさらに上記向きに回転することが防止される。なお、本実施形態では、位置決め部材71が上記当接面76に当接する構造となっているが、上記ヘッド部58に当接面76が形成されることなく、位置決め部材71が直接にヘッド部58に当接する構造であってもよい。
【0060】
前述のように、本実施形態では、サポート部材36の本体40に回動規制ピン46が設けられている(
図9参照)。梯子13が交差姿勢となったときに位置決めシリンダ48が伸びると、ロックピン85がヘッド部58から突出して回動規制ピン46と係合する。これにより、梯子13は、交差姿勢から並行姿勢側への回転が規制される。特に本実施形態では、回動規制ピン46に平面部47が設けられているから、ロックピン85が回動規制ピン46と安定的に係合するという利点がある。このように、上記回動規制ピン46及びロックピン46並びに位置決め部材71により、交差姿勢となった梯子13は、いずれの方向にも回転が規制されるので、当該交差姿勢に確実に位置決めされる。その結果、作業者が梯子13に足を掛けた場合に、梯子13が安定し、安全に昇降が可能である。
【0061】
図3、
図10及び
図11が示すように、本実施形態では、下部走行体11に安定部材77が設けられている。この安定部材77は、鋼板からなり、固定リブ78(
図11参照)を介してブラケット51に取り付けられている。本実施形態では、安定部材77は、ボルトにより固定リブ78に締結されており、
図3が示すように、下部走行体11の車軸16、17間の空間を上方から覆うように配置されている。
【0062】
この安定部材77は、
図10、
図11が示すように切り欠かれている。具体的には、下部走行体11の側方から内側に向かって矩形の凹部79が形成されるように安定部材77が切り欠かれている。そして、この凹部79の内奥辺にさらに2つの嵌合溝80、81が設けられている(
図10参照)。梯子13が
図3及び
図4が示すように収納姿勢に変化したとき、梯子13は、安定部材77を上方から覆うように配置される。このとき、嵌合溝80にシリンダ連結ピン44及びボス74が進入し、嵌合溝81に回動規制ピン46(
図9参照)が進入する。嵌合溝80、81の形状は、それぞれシリンダ連結ピン44及びボス74並びに回動規制ピン46の外形に対応しており、嵌合溝80、81内でシリンダ連結ピン44、ボス74及び回動規制ピン46のがたつきが規制されている。これにより、ラフテレーンクレーン10が走行中に梯子13及び梯子駆動装置14に振動が加わったとしても、安定部材77によってこれらが大きく変位することが防止される。
【0063】
本実施形態では、安定部材77の縁部(矢印50に沿う縁部)に、側壁82、83が設けられている(
図7参照)。これら側壁82、83は、安定部材77と一体的に形成されており、安定部材77の縁部が屈曲されることにより形成されている。これら側壁82、83が設けられることにより、安定部材77の剛性が向上し、梯子13及び梯子駆動装置14の変位が確実に抑えられる。また、この側壁82に、貫通孔84が設けられている。この貫通孔84に上記ロックピン85が挿通可能となっている。
【0064】
図12は、梯子13が収納姿勢にある状態での梯子駆動装置14の斜視図であって、下部走行体11の内側斜め下方から見た図である。
【0065】
同図が示すように、梯子13が収納姿勢となったとき、位置決めシリンダ48は、揺動アーム43のヘッド部58と共に安定部材77の下側に配置される。この状態で位置決めシリンダ48が伸長作動すると、シリンダロッドと共にロックピン85が側壁82側に移動し上記貫通孔84に挿通される。この貫通孔84の形状は、ロックピン85の外形に対応されており、両者が嵌合することにより、揺動アーム43及び位置決めシリンダ48が安定部材77に対して位置決めされる。すなわち、梯子13は、梯子駆動装置14と共に安定部材77に確実に固定される。しかも、上記位置決めシリンダ48は、
図10が示すように梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢となったときに当該姿勢を維持する機能も発揮するので、梯子13が収納姿勢を維持する機能も兼ねている。
【0067】
図2が示すように、本実施形態に係るラフテレーンクレーン10では、梯子13が下部走行体11の車軸16と車軸17との間に配置され、しかも、下部走行体11と上部作業体12の操作部31との間の隙間33に収納されるから、梯子13は、上記操作部31の直下にて展開される。
【0068】
詳述すれば、
図4が示すように、下部走行体11の長手方向に沿ってアーム支軸49が設けられ、揺動アーム43の基端部62がアーム支軸49に回動可能に支持されているから、揺動アーム43は、アーム支軸49を回動中心として下部走行体11の側方でフラップのように変位する(
図2参照)。揺動アーム43の先端部63に梯子13が設けられているから、揺動アーム43の変位に伴って、梯子13は、下部走行体11の車軸16、17間で収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化する。揺動アーム43がアーム支軸49の周りに回動して起立すると、梯子13は、揺動アーム43の長さを回転半径とする円弧状の軌跡を描いて上方へ持ち上げられ、下部走行体11と上部作業体12との隙間33に収納される。この状態から揺動アーム43が倒伏すると、梯子13は、上記軌跡を描いて下部走行体11の側方に張り出した位置に変位する。さらに、梯子13は、梯子支軸42を介して揺動アーム43の先端部63に支持されており、梯子13が梯子支軸42の周りに回動することにより上記並行姿勢と交差姿勢との間で姿勢変化する(
図2(b)(c)参照)。梯子13が上記張出姿勢の状態で交差姿勢に変化すると、梯子13が下部走行体11に立て掛けられた状態となる。
【0069】
かかる構造では、梯子13はアーム支軸49を中心にして下部走行体11の側方に張り出すだけ(上記収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化するだけ)であるので、揺動アーム43は、その長さが抑えられてコンパクトに設計される。しかも、梯子13は、上記アーム支軸49と交差して配置された梯子支軸42を中心にして回転されるだけで、下部走行体11に立て掛けられた状態となる。すなわち、梯子13は、揺動アーム43の回動及び当該梯子13の回転という二つの動作により、コンパクトな動作で下部走行体11と上部作業体12との間の隙間33に収納されると共に上部作業体12への作業者のアクセスを可能な姿勢に展開する。これにより、梯子13は、上部作業体12の直下(本実施形態では、車軸16と車軸17との間の狭い空間)にも収納され、現場において梯子13のハンドリングのための広いスペースを要することなく上部作業体12に立て掛けられる。
【0070】
本実施形態では、梯子13がサポート部材36を介して上記梯子支軸42に支持されているから、梯子13はサポート部材36によって補強されている。しかも、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向にオフセットされているから、梯子13が張出姿勢の状態で並行姿勢から交差姿勢へと変化する際に、当該姿勢変化の回転中心(すなわち梯子支軸42)が、下部走行体11の長手方向にずれている。したがって、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子13の位置が、下部走行体11の長手方向に調整される。その結果、梯子13は、下部走行体11への取付部がフロントアクスル15の中央(車輪21、22の中間位置)に配置されていても、張出姿勢且つ交差姿勢となったときに、操作部31にアクセスし易い位置に展開できる。
【0071】
ところで、下部走行体11の車輪21、22がいわゆるフルステアリング状態であっても、張出姿勢且つ交差姿勢となった梯子13と車輪21、22との干渉は回避されなければならない。本実施形態では、梯子支軸42は、下部走行体11の側方に張り出される揺動アーム43のヘッド部58に位置するので、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子13の位置が下部走行体11の幅方向にさらに調整され得る。これにより、揺動アーム43の長さ及び回動角度が調整されるだけで、上記干渉を回避するための設計が容易になるという利点がある。
【0072】
また、サポート部材36が隣り合う踏桟37(上段側の踏桟37)に当接しているから、当該サポート部材36と下段側の踏桟37との間に十分な空間が確保される。したがって、作業者が踏桟37に足を掛ける際にサポート部材36が邪魔になることがない。
【0073】
さらに、梯子36の上端にクロスメンバ38が設けられているので、これがステップとして機能する。したがって、作業者は、梯子13が交差姿勢にあるときにクロスメンバ38に足を掛けて上部作業体12に移動することができる。