特許第6492511号(P6492511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492511
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】パターン形成体の製造方法及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   G03F7/20 502
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-207626(P2014-207626)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-75862(P2016-75862A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6206176(JP,B2)
【文献】 特開2001−324816(JP,A)
【文献】 特開2001−185076(JP,A)
【文献】 国際公開第95/002260(WO,A1)
【文献】 特許第6213278(JP,B2)
【文献】 特開2013−041202(JP,A)
【文献】 特開2009−244576(JP,A)
【文献】 特開2003−301059(JP,A)
【文献】 特開2011−216647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20−7/42、9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成用基板に対し、酸素を含む雰囲気中において、所定のパターンが形成されたマスクを介して真空紫外光を含む光を照射し、前記パターン形成用基板の光照射面に改質部と非改質部とを含むパターンが形成されたパターン形成体を製造するパターン形成体の製造方法であって、
前記真空紫外光が、波長180nm以上200nm以下の範囲に連続スペクトルを有する光であり、
前記真空紫外光の波長180nm以上200nm以下の範囲の照度が、波長160nm以上180nm以下の範囲の照度以上であることを特徴とするパターン形成体の製造方法。
【請求項2】
前記連続スペクトルに、1つ以上のピークを有することを特徴とする請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成用基板は、脂肪族化合物ポリマーからなる基板であることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成用基板は、環状オレフィンポリマー、又はその共重合体である環状オレフィンコポリマーからなる基板であることを特徴とする請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項5】
パターン形成用基板に対して離間して配置され、所定のパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと、
前記マスクを介して、前記パターン形成用基板上に真空紫外光を含む光を照射する真空紫外光光源部と、
前記マスクと前記パターン形成用基板との間隙を、酸素を含む雰囲気とする雰囲気制御部と、を備え、
前記真空紫外光光源部は、前記真空紫外光として、波長180nm以上200nm以下の範囲に連続スペクトルを有し、波長180nm以上200nm以下の範囲の照度が、波長160nm以上180nm以下の範囲の照度以上である光を照射することを特徴とする
光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外光を含む光を用いたパターニング処理によってパターン形成体を製造するためのパターン形成体の製造方法及び光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長200nm以下の真空紫外(Vacuum Ultra Violet:VUV)光は、半導体露光以外の様々な分野で用いられている。例えば、フォトレジストによるパターン形成工程を用いずに、VUVとマスクとを用いて、直接光で化学反応を引き起こして自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM膜)をパターニングする技術が開発されている。パターニングされたSAMは、例えば、有機薄膜トランジスタ用のゲート絶縁膜として用いられる。
【0003】
また、新たなデバイスの製造プロセスとして、有機基板上にVUV光を照射することにより、親水性、疎水性、反応性、電気的相互作用などの様々な機能性を有するパターンを当該基板上に形成することも要求されている。上記パターンを形成する基板としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)やシクロオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer:COC)等の環状オレフィン系樹脂があり、これらは、例えばバイオチップ等の生体機能マイクロデバイスに用いられる。
【0004】
パターン形成体の製造方法としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、SAM膜が形成された基板をパターン形成用基板とし、当該パターン形成用基板上のSAM膜にマスクを介してVUV光を照射することにより、SAM膜の一部をパターン状に除去するものである。ここでは、少なくとも酸素を含む反応性ガスの存在下において、SAM膜にVUV光を照射している。また、VUV光を照射するための光源として、メインピーク波長が172nmのエキシマ光を放射するエキシマランプ等を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5056538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸素を含む雰囲気中にVUV光を照射すると、当該VUV光によって酸素が分解されることによりオゾン等の活性酸素が生成される。上記特許文献1に記載の技術のように、マスクとSAM膜との間隙を、酸素を含む雰囲気とした場合、VUV光照射により当該間隙に活性酸素が発生する。このとき発生した活性酸素は、SAM膜におけるマスクで覆われた部分(非露光部分)に流れ込み、当該非露光部分でSAM膜と活性酸素との酸化分解反応が発生する。その結果、活性酸素によるSAM膜の部分的欠損が発生し、SAM膜に形成されるパターン精度の低下を引き起こす。
【0007】
このようなパターン精度の低下を引き起こす原因となる活性酸素の生成を抑制するために、VUV光の照射雰囲気をすべて不活性ガスでパージする等の対策を講じることも考えられるが、当該対策はコストの増大を招くため好ましくない。
そこで、本発明は、酸素を含む雰囲気中で、マスクを介してパターン形成用基板に真空紫外線を照射するパターニング処理において、マスクパターンに忠実なパターンを精度良く形成することができるパターン形成体の製造方法及び光照射装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るパターン形成体の製造方法の一態様は、パターン形成用基板に対し、酸素を含む雰囲気中において、所定のパターンが形成されたマスクを介して真空紫外光を含む光を照射し、前記パターン形成用基板の光照射面に改質部と非改質部とを含むパターンが形成されたパターン形成体を製造するパターン形成体の製造方法であって、前記真空紫外光が、波長180nm以上200nm以下の範囲に連続スペクトルを有する光であり、前記真空紫外光の波長180nm以上200nm以下の範囲の照度が、波長160nm以上180nm以下の範囲の照度以上である。
【0009】
本発明者は、光パターニングに用いる波長200nm以下の真空紫外光のうち、短波長側である波長180nm以下の範囲では酸素による光吸収が顕著に発生する一方で、波長180nm〜200nmの範囲では酸素による光吸収が少ないことを見出した。
上記のように、酸素を含む雰囲気中での光パターニングに際し、波長180nm〜200nmの範囲の真空紫外光(VUV光)を用いることで、180nmよりも短波長のVUV光を用いた場合と比較して、特にマスクとパターン形成用基板との間隙に発生する活性酸素(オゾン等)を抑制し、発生した活性酸素がマスク遮蔽部で覆われた部分(非露光部分)に流れ込むのを抑制することができる。したがって、パターン形成用基板の非露光部分で活性酸素による表面改質が行われるのを抑制することができ、良好なパターニングを実現することができる。
【0010】
また、マスクとパターン形成用基板との間隙における活性酸素の濃度が低減するため、当該間隙の僅かな変化に対する必要露光時間の変化の割合を小さくすることができる。そのため、マスクの撓みや基板の不均一な厚み等によって間隙のバラツキが生じても、必要露光時間のバラツキはなく、均一なパターニングを実現することができる。
さらに、光パターニングを効果的に行うための波長域(有効波長域)において連続スペクトルを有する光源を用いるので、有効波長域において単一のメインピークを有する光源(例えば、エキシマランプのように172nmにメインピークを有する光源)と比較して効果的にパターニング処理を行うことができる。
【0011】
また、前記真空紫外光の波長180nm以上200nm以下の範囲の照度、波長160nm以上180nm以下の範囲の照度以上であ
このように、活性酸素の発生が少ない波長領域の光を強く発光することで、パターン精
度をより高めることができる。
さらに、上記のパターン形成体の製造方法において、前記連続スペクトルに、1つ以上のピークを有していてもよい。
これにより、活性酸素の発生が少ない波長領域の光を強く発光することができ、パターン精度をより高めることができる。
【0012】
また、上記のパターン形成体の製造方法において、前記パターン形成用基板は、脂肪族化合物ポリマーからなる基板であってもよい。
このように、パターン形成用基板の材料として脂肪族化合物ポリマーを用いることで、VUV光照射による光励起、酸化分解反応を利用した、パターン形成用基板の表面改質が可能となる。
さらにまた、上記のパターン形成体の製造方法において、前記パターン形成用基板は、環状オレフィンポリマー、又はその共重合体である環状オレフィンコポリマーからなる基板であってもよい。
このように、パターン形成用基板の材料として環状ポリオレフィン樹脂を用いることで、パターン形成用基板のVUV光照射面における結合の分解、及び処理雰囲気中の酸素による酸化を行わせることができ、パターン形成用基板の表面改質が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る光照射装置の一態様は、パターン形成用基板に対して離間して配置され、所定のパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと、前記マスクを介して、前記パターン形成用基板上に真空紫外光を含む光を照射する真空紫外光光源部と、前記マスクと前記パターン形成用基板との間隙を、酸素を含む雰囲気とする雰囲気制御部と、を備え、前記真空紫外光光源部は、前記真空紫外光として、波長180nm以上200nm以下の範囲に連続スペクトルを有し、波長180nm以上200nm以下の範囲の照度が、波長160nm以上180nm以下の範囲の照度以上である光を照射する。
【0015】
このように、マスクとパターン形成用基板との間隙を、酸素を含む雰囲気とし、真空紫外光光源部から波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を照射する。そのため、180nmよりも短波長のVUV光を照射する場合と比較して、マスクとパターン形成用基板との間隙において発生する活性酸素(オゾン等)を抑制することができる。これにより、生成した活性酸素が非露光部分に回り込むことに起因したパターン精度の低下を解消することができる。
さらに、マスクとパターン形成基板との間隙における活性酸素の濃度が低減するため、当該間隙の僅かな変化に対する必要露光時間の変化の割合を小さくすることができる。したがって、均一なパターニングを実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパターン形成体の製造方法によれば、パターン形成用基板に対して酸素による光吸収の少ない真空紫外光を照射することができるので、真空紫外光を照射したときのオゾンの発生を抑制することができる。したがって、パターン形成用基板に対してマスクパターンに忠実なパターンを精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における光照射装置の構成例を示す図である。
図2】SFLから放出される光のスペクトル分布を示す図である。
図3図2の波長150nm〜300nmの範囲を拡大した図である。
図4】SFLの構成例を示す図である。
図5】エキシマランプから放出される光のスペクトル分布を示す図である。
図6】COCのパターン評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における光照射装置の構成例を示す図である。
光照射装置100は、真空紫外光(VUV光)を放射する真空紫外光光源装置10を備える。真空紫外光光源装置10は、光源11と、放物面ミラー12と、ランプハウジング13と、ランプハウジング13に設けられた窓部14とを備える。
光源11は点光源であり、例えば、VUV領域の光強度が強いフラッシュランプである。ここでは、光源11として、ショートアークフラッシュランプ(SFL)を用いている。
【0019】
SFL11から放出される光のスペクトル分布を図2に示す。また、図2における波長150nm〜300nmの範囲の拡大図を図3に示す。なお、図2及び図3において、横軸は波長[nm]、縦軸は光強度(分光放射照度)である。
図2及び図3に示すように、SFL11は、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を放射する。なお、ここでいう連続スペクトルとは、線スペクトルではなく、波長180nm〜200nmの範囲の全体にわたって発光波長が連続的に分布している状態をいう。
【0020】
また、SFL11は、図3に示すように、波長180nm〜200nmの範囲の照度が、波長160nm〜180nmの範囲の照度以上であるVUV光を放射することが好ましい。なお、ここでいう照度(単位:W/m2)とは、VUV光照射面の単位面積当たりに入射する放射束をいい、波長範囲における分光放射照度(単位:W/m2/nm)の積分値をいう。
必要に応じて、例えば波長180nm〜200nmの範囲の照度を波長160nm〜180nmの範囲の照度以上とするために、各種バンドパスフィルター等を併用して照射波長を適正化してもよい。
さらに、SFL11は、図3に示すように、波長180nm〜200nmの範囲の連続スペクトルに、1つ以上のピークを有するVUV光を放射することが好ましい。なお、ここでいうピークとは、前後に0.5nm離れた波長における分光放射照度に比べて、その中央の波長における分光放射照度が10%以上高いことをいう。
【0021】
次に、SFL11の具体的構成について説明する。図4は、SFL11の構成例を示す図である。
SFL11は、石英ガラス等の真空紫外光透過性材料からなる楕円球形状の発光管111aを備える。発光管111aの両端には第一封止管111bと第二封止管111cとが連設されている。また、第二封止管111cには封止用ガラス管112が挿入されており、両者は二重管部分で溶着されている。そして、発光管111a内には、例えばキセノン(Xe)やクリプトン(Kr)等の希ガスが単独で、あるいは、微量のHガス又はNガスと希ガスとの混合ガスが封入されている。
【0022】
発光管111a内には、互いに対向する一対の電極(第一の主電極(陽極)113aと第二の主電極(陰極)113b)が配置されている。ここで、一対の電極113a,113bの電極間距離dは、例えば1mm〜10mmである。
第一の主電極113aから管軸Cに沿って外方に伸びる電極棒114aは、第一封止管111bの端部から外部に導出されている。この電極棒114aは、第一封止管111bの端部において、段継ぎガラスなどの手段により封着(ロッドシール)されている。また、第二の主電極113bから管軸Cに沿って外方に伸びる電極棒114bは、封止用ガラス管112の端部から外部に導出されている。この電極棒114bは、封止用ガラス管112の端部において、段継ぎガラスなどの手段により封着(ロッドシール)されている。
一対の電極113a,113bは、例えば酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al)等の易電子放射性物質が含浸されたタングステン焼結体により構成されている。また、電極棒114a,114bは、例えばタングステンにより構成されている。
【0023】
また、発光管111a内の電極113a及び113bの間には、始動用補助電極として、一対のトリガ電極115a及び115bが配設されている。トリガ電極115a,115bは、例えば細い線状に形成されており、先端部が電極113aの先端と電極113bの先端とを結ぶ中心線上において互いに離間して位置するよう配置されている。
さらに、トリガ電極115a,115bは、先端に向かうに従って陽極113aに接近するよう管軸Cに対して傾斜して配置されている。一方のトリガ電極115aの先端と陽極113aの先端との離間距離、及び他方のトリガ電極115bの先端と陰極113bの先端との離間距離は、例えば、陽極113aと陰極113bとの電極間距離dが3.0mmである場合、それぞれ0.5mm〜1.5mmである。
トリガ電極115a,115bは、例えばニッケル、タングステンあるいはそれらを含む合金により構成されている。
【0024】
また、トリガ電極115aには、ロッド状の内部リード(内部リード棒)116aの一端が接続されている。内部リード116aは、電極棒114bに対して平行に管軸方向外方に伸び、第二封止管111cと封止用ガラス管112との二重管部分において、金属箔118aを介して外部リード117aに電気的に接続されている。これにより、箔シール構造が形成されている。同様に、トリガ電極115bには、ロッド状の内部リード(内部リード棒)116bの一端が接続されている。内部リード116bは、電極棒114bに対して平行に管軸方向外方に伸び、第二封止管111cと封止用ガラス管112との二重管部分において、金属箔118aとは周方向に異なる位置、例えば管軸Cを挟んで対向する位置に、金属箔118bを介して外部リード117bに電気的に接続されている。
【0025】
一対の内部リード116a,116bは、例えばタングステンにより構成されている。
さらに、発光管111a内には、始動用補助電極として、放電を安定して生じさせるためのスパーカ電極120が配設されている。
スパーカ電極120は、例えばアルミナ(Al)よりなる円柱状の頭部、及びこの頭部に連続する軸部を有する。そして、上記頭部に接続された例えばニッケルよりなる金属箔の一端が電極棒114bの外周面に接続されていると共に、上記軸部に例えばタングステンよりなる内部リード線(不図示)が接続されている。当該内部リード線は、第二封止管111cと封止用ガラス管112との二重管部分において、上述した金属箔118a,118bと電気的に絶縁された状態で、気密に埋設された金属箔を介して外部リード線(不図示)に電気的に接続されている。
【0026】
また、一対の内部リード116a,116b、電極棒114b、及びスパーカ電極120に係る内部リード線(不図示)には、共通のサポータ部材119が設けられており、このサポータ部材119が陰極113b、トリガ電極115a,115b、及びスパーカ電極120を適正な位置に配置する構成となっている。
電極棒114a,114b、トリガ電極115a,115bに係る外部リード117a,117b、及びスパーカ電極120に係る外部リード線(不図示)は、それぞれ外部の給電部(不図示)に接続されている。この給電部は、所定のエネルギーを蓄えるコンデンサを有する。そして、給電部は、当該コンデンサを充電することで一対の電極113aと113bとの間に高電圧を印加すると共に、スパーカ電極120、トリガ電極115a,115b及び陽極113aにパルス電圧を印加する。
【0027】
すると、先ず、スパーカ電極120で予備放電が行われて紫外線が放射され、この紫外線により陰極113b、陽極113a及びトリガ電極115a,115bから光電子が放出され、発光管111a内の例えばキセノンガスが電離される。その後、陰極113bと陽極113aとの間に予備放電路が形成されて陰極113bから陽極113aに向けて電子が放出され、これにより、陰極113bと陽極113aとの間でアーク放電(主放電)が生じる。これにより、SFL11が点灯し、真空紫外線が放射される。
この真空紫外線は、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有し、また、波長180nm〜200nmの範囲の照度が、波長160nm〜180nmの範囲の照度以上であるという特徴を有する。さらに、波長180nm〜200nmの範囲の連続スペクトルに、1つ以上のピークを有する。
【0028】
図1に戻って、SFL11から放射されたVUV光は、放物面ミラー12によって反射されて平行光となり、ランプハウジング13に設けられた窓部14から出射する。窓部14は、例えば、VUV光に対して高い透過率を有する合成石英で形成する。なお、窓部14は、例えば、石英より短波長の透過率が良いサファイアガラスやフッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等により形成されていてもよい。
【0029】
当該窓部14は、ランプハウジング13と気密に組み立てられており、ランプハウジング13内部には、ランプハウジング13に設けられたガス導入口13aから窒素(N2)ガスなどの不活性ガスAが導入され、当該ランプハウジング13の内部は不活性ガスがパージされている。これは、VUVが酸素による吸収減衰を激しく受けるためであり、ランプハウジング13内を窒素(N2)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)などの不活性ガスによりパージすることによりVUVの酸素による吸収減衰を防止することができる。また、ランプハウジング13内部に導入された不活性ガスAは、フラッシュランプ11や放物面ミラー12を冷却した後ランプハウジング13に設けられた排気口13bから排気される。
なお、ランプハウジング13内部は、例えば真空であってもよいし、僅かに酸素を含む雰囲気であってもよい。
【0030】
真空紫外光光源装置10から放射されたVUV光は、マスクMに入射され、当該マスクMを通してVUV光がワーク(パターン形成用基板)Wに照射される。マスクMは、例えば、ガラス等の光透過性基板上にクロム等の遮光材を蒸着・エッチングし、遮光部と該遮光部が設けられていない透光部とを含むパターン(照射パターン)を形成したものである。
マスクMとしては、例えば、バイナリーマスク、位相シフトマスクなどのフォトマスクを使用することができる。また、マスクMとして、金属等の遮光性基板に対して透光部である開口部がパターン状に設けられたメタルマスクを使用することもできる。
真空紫外光光源装置10の光出射側には、真空紫外光光源装置10から放射されマスクMに入射される光が進行する光路を包囲する包囲部材21が設けられている。マスクMは、包囲部材21に連結されたマスクステージ22によって水平状態を保って吸着保持されている。
【0031】
真空紫外光光源装置10の窓部14、包囲部材21、マスクステージ22及びマスクMの内部は閉空間となっている。包囲部材21はガス導入口21aが設けられており、閉空間となった包囲部材21内部にはガス導入口21aから窒素(N2)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)などの不活性ガスAが導入され、当該包囲部材21内部は不活性ガスがパージされている。これは、ランプハウジング13内部の不活性ガスがパージされているのと同じ理由による。また、包囲部材21内部に導入された不活性ガスAは、包囲部材21に設けられた排気口21bから排気される。
なお、包囲部材21内部は減酸素雰囲気にされていればよく、例えば真空であってもよい。
【0032】
ワークWは、ワークステージ23上に載置され、例えば真空チャック機構によりワークステージ23に吸着保持されている。また、ワークステージ23は、ステージ移動機構32によってXYZθ方向(図1の左右、前後、上下方向、およびZ軸を中心とした回転方向)に移動可能に構成されている。ステージ移動機構32は、制御部31によって駆動制御される。
マスクMとワークWとの間隙の雰囲気は、制御部(雰囲気制御部)31によって、大気雰囲気(酸素約20kPa)としている。
【0033】
具体的には、マスクMの光出射側に、マスクMを通過しワークWに照射される光が進行する光路を包囲する包囲部材24が設けられており、包囲部材24に形成された空気導入口24aからワークWとマスクMとの間に、空気Bが導入されている。空気導入口24aから導入された空気Bは、排気口24bから排気される。
なお、マスクMとワークWとの間隙の雰囲気は大気雰囲気に限定されるものではなく、酸素を含む雰囲気であればよい。
【0034】
ワークWには、有機成分を含む基板を用いることができる。例えば、基板材料として、脂肪族化合物ポリマーを用いることができる。基板材料の具体例としては、例えば、脂環式炭化水素基を有する環状ポリオレフィンがある。
環状ポリオレフィンの原料としては、例えばジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene:DCPD)やDCPDの誘導体(ノルボルネン誘導体)を用いる。ポリマーとしては、これらの環状オレフィンを単独重合することは立体障害の影響で困難であるので、αオレフィンと付加重合する方法や環状オレフィンの開環重合による方法を用いる。前者のポリマーをシクロオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer:COC)といい、後者のポリマーをシクロオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)という。
COCの分子構造は、例えば下記(1)式で表される。
【0035】
【化1】
【0036】
COCは、例えば、ノルボルネンと炭素数2〜30のαオレフィンとをメタロセン触媒にて付加共重合して得ることができる。本実施形態のパターン形成用基板(ワークW)を構成するCOCは、一例として、下記(2)式
【0037】
【化2】
〔式中、R8、R9、R10及びR11は同一または異なっていて、それぞれ水素原子または好ましくは1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基(例えば、C6〜C10アリールやC1〜C8アルキルなど)である〕
で示される少なくとも1種の多環式オレフィンを、下記(3)式
【0038】
【化3】
〔式中、R16、R17、R18およびR19は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子または好ましくは1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基(例えば、C6〜C10アリールやC1〜C8アルキルなど)である〕
で示される少なくとも1種の非環式オレフィンでメタロセン触媒の存在下で共重合して得られたものとする。
【0039】
多環式オレフィンの代表例はノルボルネンとテトラシクロドデセンであり、これらはいずれもC1〜C6アルキルで置換されていてもよい。これらの多環式オレフィンは、エチレンと共重合させるのが好ましい。より好ましくは、COCは、ノルボルネンとエチレンとを共重合したポリマーとする。
COPとしては、例えば、遷移金属ハロゲン化物と有機金属化合物から成るメタセシス重合触媒を用いて、シクロオレフィン系単量体を開環重合して得られた重合体を用いることができる。
【0040】
本実施形態のパターン形成用基板(ワークW)に用いるCOPの単量体の具体例としては、ノルボルネン、そのアルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体およびこれら置換または非置換のノルボルネン系単量体のハロゲン、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5,6−ジエトキシカルボニル−2−ノルボルネン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン等; ノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6,6−ジメチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メチル−6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−2,3,3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−デカヒドロ−1H−ベンゾインデン等; シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン等; シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロ−9H−フルオレン、5,8−メタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,4b,7,8,8a,9a−デカタヒドロ−9H−フルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン等; その他のシクロオレフィン、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロシクロペンタジエン、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、4−エチルシクロヘキセン等; 等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
なお、パターン形成用基板(ワークW)は、COCやCOPからなる基板に限定されるものではなく、例えば、アクリルやPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等、いずれの合成樹脂基板も適用可能である。また、C−H結合を有する合成樹脂に限定されず、ポリ4フッ化エチレン等のC−F結合を有する合成樹脂を適用することもできる。パターン形成用基板(ワークW)は、パターン形成体の用途に応じて適宜選択する。
【0042】
また、パターン形成用基板(ワークW)としては、適宜の素材からなる基材上に有機単分子膜(例えば、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM膜))が設けられたものを使用することもできる。
有機単分子膜が設けられる基材は、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、有機単分子膜を構成する分子の種類等を考慮して適宜選択される。具体的には、金、銀、銅、白金、鉄等の金属、石英ガラスや酸化アルミニウム等の酸化物、GaAsやInP等の化合物半導体、高分子材料等からなる種々の基材上に有機単分子膜を設けることができる。
【0043】
有機単分子膜を構成する材料としては、VUV光により励起され、分解され得る有機分子であれば適用可能である。有機単分子膜がSAM膜の場合には、基材表面と化学反応する官能基を有し、分子間の相互作用によって自己組織化するような有機分子であればよい。
具体的には、SAM膜を構成する有機分子として、以下の一般式(4)で示されるホスホン酸系化合物を使用することができる。
【0044】
【化4】
【0045】
上記(4)式中、Rは、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、好ましくは、置換又は非置換であって直鎖状又は分岐状のアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェノキシ基である。
このようなホスホン酸系化合物の具体例としては、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、6−ホスホノヘキサン酸、11−アセチルメルカプトウンデシルホスホン酸、11−ヒドロキシウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンホスホン酸、11−ホスホノウンデシルホスホン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、1,8−オクタンジホスホン酸、1,10−デシルジホスホン酸、1,12−ドデシルジホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−フルオロベンジルホスホン酸、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルホスホン酸、4−ニトロベンジルホスホン酸、12−ペンタフルオロフェノキシドデシルホスホン酸、(12−ホスホノドデシル)ホスホン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、11−ホスホノウンデカン酸等を挙げることができる。また、式(1)の化合物以外にも[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]ホスホン酸等の化合物も適用可能である。
また、SAM膜を構成する有機分子の別の例として、以下の一般式(5)で示されるチオール系化合物を使用することができる。
【0046】
【化5】
【0047】
上記(5)式中、Rは、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。また、チオール基がさらに置換された、上記(5)式の化合物の誘導体も適用可能である。
このようなチオール系化合物又はその誘導体の具体例としては、1−ブタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘプタンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ノナンチオール、1−オクタデカンチオール、1−オクタンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ペンタンチオール、1−プロパンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ウンデカンチオール、11−メルカプトウンデシルトリフルオロアセテート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、2−ブタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサンチオール、3−メルカプト−N−ノニルプロピオンアミド、3−メチル−1−ブタンチオール、4−シアノ−1−ブタンチオール、ブチル3−メルカプトプロピオネート、cis−9−オクタデセン−1−チオール、3−メルカプトプロピオン酸メチル、tert−ドデシルメルカプタン、tert−ノニルメルカプタン、1,11−ウンデカンジチオール、1,16−ヘキサデカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,3−ブタンジチオール、5,5’−ビス(メルカプトメチル)−2,2’−ビピリジン、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ベンゼン−1,4−ジチオール、(11−メルカプトウンデシル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、(11−メルカプトメルカプトウンデシル)ヘキサ(エチレングリコール)、(11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)、1(11−メルカプトウンデシル)イミダゾール、1−メルカプト−2−プロパノール、11−(1H−ピロール−1−イル)ウンデカン−1−チオール、11−(フェロセニル)ウンデカンチオール、11−アミノ−1−ウンデカンチオール塩酸塩、11−アジド−1−ウンデカンチオール、11−メルカプト−1−ウンデカノール、11−メルカプトウンデカンアミド、11−メルカプトウンデカン酸、11−メルカプトウンデシルヒドロキノン、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルリン酸、12−メルカプトドデカン酸、12−メルカプトドデカン酸NHSエステル、16−メルカプトヘキサデカン酸、3−アミノ−1−プロパンチオール塩酸塩、3−クロロ−1−プロパンチオール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト−1−ブタノール、6−(フェロセニル)ヘキサンチオール、6−アミノ−1−ヘキサンチオール塩酸塩、6−メルカプト−1−ヘキサノール、6−メルカプトヘキサン酸、8−メルカプト−1−オクタノール、8−メルカプトオクタン酸、9−メルカプト−1−ノナノール、トリエチレングリコールモノ−11−メルカプトウンデシルエーテル、1,4−ブタンジチオールジアセテート、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]ヘキサ(エチレングリコール)メチルエーテル、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]テトラ(エチレングリコール)、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]トリ(エチレングリコール)酢酸、[11−(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]トリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ヘキサ(エチレングリコール)モノ−11−(アセチルチオ)ウンデシルエーテル、S,S’−[1,4−フェニレンビス(2,1−エチンジイル−4,1−フェニレン)]ビス(チオアセタート)、S−[4−[2−[4−(2−フェニルエチニル)フェニル]エチニル]フェニル]チオアセテート、S−(10−ウンデセニル)チオアセテート、チオ酢酸S−(11−ブロモウンデシル)、S−(4−アジドブチル)チオアセテート、S−(4−ブロモブチル)チオアセテート(安定化剤として銅を含有)、チオ酢酸S−(4−シアノブチル)、1,1’,4’,1’’−テルフェニル−4−チオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、1−アダマンタンチオール、ADT、1−ナフタレンチオール、2−フェニルエタンチオール、4’−ブロモ−4−メルカプトビフェニル、4’−メルカプトビフェニルカルボニトリル、4,4’−ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、4,4’−ジメルカプトスチルベン、4−(6−メルカプトヘキシルオキシ)ベンジルアルコール、4−メルカプト安息香酸、9−フルオレニルメチルチオール、9−メルカプトフルオレン、ビフェニル−4,4−ジチオール、ビフェニル−4−チオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、m−カルボラン−1−チオール、m−カルボラン−9−チオール、p−テルフェニル−4,4’’−ジチオール、チオフェノール等を挙げることができる。
さらに、別の例として、SAM膜として以下の一般式(6)で示されるシラン系化合物を使用することができる。
【0048】
【化6】
【0049】
上記(6)式中、R〜Rは、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子を含んでいても良い、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。
このようなシラン系化合物の具体例としては、ビス(3−(メチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、クロロメチル(メチル)ジメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、ジエトキシ(メチル)ビニルシラン、ジメトキシ(メチル)オクチルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、N,N−ジメチル−4−[(トリメチルシリル)エチニル]アニリン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、メトキシ(ジメチル)オクチルシラン、オクテニルトリクロロシラン、トリクロロ[2−(クロロメチル)アリル]シラン、トリクロロ(ジクロロメチル)シラン、3−(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン塩酸塩、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−[(トリメチルシリル)エチニル]アニソール、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、アジドトリメチルシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、エトキシジメチルフェニルシラン、エトキシトリメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ(メチル)フェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジフェニルシランジオール、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシ−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、3−(トリエトキシシリル)プロピオニトリル、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリクロロ(オクタデシル)シラン、トリクロロ(オクチル)シラン、トリクロロシクロペンチルシラン、トリクロロ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)シラン、トリクロロビニルシラン、トリクロロ(フェニル)シラン、トリクロロ(フェネチル)シラン、トリクロロ(ヘキシル)シラン、トリメトキシ[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イル)エチル]シラン、トリメトキシ(オクタデシル)シラン、トリメトキシ(オクチル)シラン、トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリラート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(2−フェニルエチル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シラン、p−トリルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロドデシルトリクロロシラン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピル−トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、tert−ブチルトリクロロシラン、(3−ブロモプロピル)トリクロロシラン、(3−ブロモプロピル)トリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキサクロロジシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−ヨードプロピル)トリメトキシシラン等を挙げることができる。
以上のようなSAM膜を構成する種々の有機分子は、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0050】
ワークWのVUV照射処理は次のように行われる。
まず、制御部31は、真空チャック機構等を駆動制御し、マスクステージ22の所定の位置にセットされたマスクMを真空吸着により保持する。次に、制御部31はステージ移動機構32によりワークステージ23を下降し、ワークWをワークステージ23上に載置させた後、ステージ移動機構32によりワークステージ23を上昇し、ワークWを所定のVUV光照射位置にセットする。次に、制御部31は、ステージ移動機構32によりワークステージ23をXYθ方向に移動し、マスクMとワークWとの位置合わせ(アライメント)を行う。すなわち、マスクM上に印されたアライメント・マークとワークW上に印されたアライメント・マークを一致させる。
【0051】
マスクMとワークWの位置合わせが終了すると、真空紫外光光源装置10から平行光であるVUV光を、マスクMを介してワークW上に照射し、ワークW表面改質による光パターニング処理を行う。光パターニング処理が終了すると、制御部31は、ステージ移動機構32によりワークステージ23を下降し、ワークステージ23への真空の供給を停止し、照射済のワークWをワークステージ23から取り出し可能な状態とする。
【0052】
以上のように、本実施形態における光照射装置100では、パターンを形成したマスクMを用意し、マスクMとワークWを近接して平行に配置し、該マスクMを通してワークW表面の特性を変えたい部分のみに平行光のVUV光を照射する。このようにして、ワークW表面に改質部と非改質部とを含むパターンを形成する。
このとき、光照射装置100は、マスクMとワークWとの間隙を大気等の酸素を含む雰囲気とし、当該雰囲気中でワークWにVUV光を照射する。また、真空紫外光光源装置10は、ワークWに照射するVUV光として、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を放射する。
【0053】
本発明者は、光パターニングを効果的に行うための波長域(有効波長域)のうち、短波長側である波長160nm〜180nm以下の範囲では酸素による光吸収が顕著に発生する一方で、波長180nm〜200nmの範囲では酸素による光吸収が少ないことを見出した。さらに、本発明者は、光パターニングを効果的に行うには、エキシマランプのように有効波長域において単一のメインピークを有する光源(172nmにメインピークを有する)よりも、有効波長域において連続スペクトルを有する光源が好ましいことを見出した。
すなわち、酸素を含む雰囲気中にVUV光を照射した場合、酸素分子がVUVを吸収し励起状態となることで活性酸素(オゾンや一重項酸素原子)が発生するが、VUV光として、波長180nm〜200nmの範囲の光を用いることで、180nmよりも短波長のVUV光を用いた場合と比較して活性酸素の発生量を抑制することができる。
【0054】
マスクとワークとの間隙を、酸素を含む雰囲気とし、例えば図5に示すように180nmよりも短波長(例えば172nm)で且つ線スペクトルからなるVUV光を放射するエキシマランプをVUV光源として用いた場合、VUV光照射によりマスクとワークとの間隙に活性酸素が大量に発生する。この活性酸素はワーク表面の有機分子と反応し、当該有機分子を分解する。
【0055】
光パターニング処理においては、VUV光が照射されたワーク表面においてのみVUV光による酸化分解反応が発生し、パターンが形成されるのが理想である。しかしながら、上記のようにVUV照射時にマスクMとワークWとの間隙に大量の活性酸素が生成されると、当該活性酸素がワークW表面のうちマスクMの遮光部分で覆われた部分(非露光部分)に流れ込む。すると、活性酸素とワークW表面の非露光部分との酸化分解反応が発生し、非露光部分の有機分子が一部分解され、パターン精度が低下してしまう。
【0056】
これに対して、本実施形態では、上述したように、酸素を含む雰囲気中での光パターニング処理に際し、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を照射する。そのため、マスクMとワークWとの間隙において、VUV照射時の酸素による光吸収を抑制し、当該間隙に大量の活性酸素が生成されるのを抑制することができる。したがって、非露光部分に活性酸素が流れ込むのを抑制することができる。
このように、VUV光の波長を調整することで、VUV光照射時における活性酸素(オゾン)の生成量を調整することができる。したがって、VUV光照射により生成される活性酸素(オゾン)が原因で基板上に形成されるパターンの精度が低下するのを防止することができる。
さらに、有効波長域において連続スペクトルを有するVUV光を用いるので、例えば図5に示すエキシマランプから放射するVUV光のように、有効波長域において単一のメインピークを有する場合と比較して、より効果的に光パターニング処理を行うことができる。
【0057】
また、波長180nm〜200nmの範囲の連続スペクトルに、1つ以上のピークを有するVUV光を用いることで、活性酸素の発生が少ない波長領域の光の発光が強い光源を用いた光パターニング処理が可能となる。したがって、パターン精度をより高めることができる。
さらに、光源として、ショートアーク型フラッシュランプを適用するので、ワークWに対して上記条件を満たすVUV光を適切に照射することができる。
【0058】
また、ショートアーク型フラッシュランプの電極間距離dが1mm〜10mmと小さく設定することで、アークを小さくする、即ち点光源を実現することができる。このように、点光源とみなせる光源を用いることで、パターン形成用基板に入射するVUV光の視野角を小さくすることができる。つまり、マスクを介してパターン形成用基板に入射するVUV光の光軸をマスクに対し略垂直にすることができ、パターン形成用基板におけるマスクで遮蔽された部分(非露光部分)への光の回り込みを少なくすることができる。したがって、パターン線幅の微細化を実現することができる。
さらにまた、マスクMとワークWとを近接配置した場合でも、両者の間隙に充満する活性酸素の濃度が低減されるため、必要露光時間が上記間隙の僅かな変化に左右されず、必要露光時間の設定が容易になる。また、マスクMとワークWとの近接配置が可能となることで、パターン精度の更なる向上が可能となる。
【0059】
また、光パターニングに用いるVUV光として、酸素による光吸収の少ない波長を有するVUV光を用いるため、VUV光の照射雰囲気をすべて不活性ガスでパージする必要がない。そのため、コストを削減することができる。
ワークWとしては、例えばCOPやCOC等からなる有機基板を用いることができる。有機基板自体にVUV光を照射することで、当該基板の表面で酸化分解反応を引き起こし、表面改質効果を得ることができる。このとき、VUV照射により基板表面には極性官能基(親水性官能基)を形成することができ、様々な表面修飾が可能となる。この技術は、例えば、マイクロチップ基板の機能化に用いることができる。
【0060】
また、ワークWとしては、表面にSAM膜が形成された基板を用いることもできる。SAM膜にVUV光を照射することで、SAM膜の酸化分解除去反応を引き起こし、SAM膜の光パターニングが可能となる。パターニングされたSAMは、例えば、有機薄膜トランジスタ用のゲート絶縁膜として用いることができる。また、疎水性のSAMにVUV光を照射することによって親疎水性のパターンを形成し、その上に機能性インクを塗布することによって、微細な機能性パターンを形成することができる。
【0061】
(実施例1)
以下、実施例により本発明の効果を説明する。
まず、基板材料として、ノルボルネン誘導体とエチレン等のαオレフィンとをメタロセン触媒にて共重合したCOC、及びメタセシス重合触媒を用いてノルボルネン誘導体を開環重合したCOPを用い、それぞれパターン形成用基板を作製した。次に、各パターン形成用基板に対し、光源として図4に示すショートアークフラッシュランプ(SFL)と、エキシマランプとを用いて真空紫外光を照射し、それぞれパターニングを行った。その後、得られたパターンの精度評価を行った
【0062】
SFLとしては、電極間距離が3mmであり、発光管内に封入圧力5atmでキセノンガス(Xe)が封入されたものを用いた。また、当該SFLには、600Vで充電された容量20μFのコンデンサの充電エネルギー(3.6J)を10Hzで投入した。
エキシマランプとしては、二重管型であり、発光管内に封入圧力0.5atmでキセノンガス(Xe)が封入されたものを用いた。発光管の径はφ20mm、管軸方向の長さは80mmのものを用いた。また、当該エキシマランプには、100Wの電力を投入した。
【0063】
(パターニング方法)
それぞれのランプの中央直下40mmの位置にパターン形成用基板を配置し、マスクを介して露光を行った。マスクは、パターン形成用基板の上に20μm又は5μmのギャップを空けて配置した。ランプ−マスク間は窒素パージを行い、ギャップ(マスク−パターン形成用基板間)の雰囲気は、大気(酸素約20kPa)とし、1分間の露光をおこなった。
【0064】
その後、気相法によりSAMを形成し、蛍光色素TAMRA(Tetramethylrhodamine)を修飾し、20μm×100μmの露光領域(100μmの方向が、ランプの軸方向に相当する)における中央部のライン幅を、蛍光顕微鏡を用いて測定した。
SAMには、アミノ基末端を有するn-(6-aminohexyl)aminopropyltrimethoxysilaneから作製するアミノシランSAM(AHAPS−SAM)を用い、SAM形成時の加熱温度は100℃とした。
【0065】
図6に示すように、COC表面にマスクMを介してVUV光を照射すると、VUV酸化反応によりVUV照射表面に極性官能基が形成される。AHAPS−SAMは、この露光部表面の水酸基と有機シラン分子とが反応して形成され、蛍光色素TAMRAは、AHAPS−SAMの末端のアミノ基に結合される。そのため、蛍光色素TAMRAを修飾した後の基板を蛍光顕微鏡で測定すると、露光部が非露光部よりも明るく見える。したがって、COCに形成されたパターンの精度評価が可能となる。これは、COPについても同様である。
光源としてSFLを用いた場合とエキシマランプを用いた場合とでCOC,COPに形成されたパターンを測定した結果、表1に示す結果が得られた。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、酸素を含む雰囲気中においてパターニングを行う際に、光源として波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を放射するSFLを使用した場合、COC,COPに形成されたパターンがマスク寸法(20μmL/S)とほぼ同等の線幅を有していた。このように、光源として波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するSFLを使用することにより、光源にエキシマランプを使用する場合に比べて、マスクパターンに忠実なパターンが精度良く得られることが確認できた。
【0068】
また、SFLを使用した場合、ギャップ20μm、5μmのいずれの場合も高いパターン精度が得られる(ギャップの大小によるパターン精度の変化が小さい)ことが確認できた。すなわち、SFLを使用した場合は、エキシマランプを使用した場合に比べてギャップ依存性(ギャップによるパターン精度の変化)が小さいことが確認できた。
このように、COC,COP等の有機材料基板自体にVUV照射を行ってパターニングする場合、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を照射することで、良好なパターニングを実現できることが確認できた。
【0069】
(実施例2)
まず、基板の表面に、表2に示すホスホン酸系、シラン系及びチオール系の自己組織化単分子膜(SAM)を1nm〜3nmの厚さで形成し、パターン形成用基板を作製した。基板としては、ホスホン酸系SAMについては酸化アルミニウムの基板を用い、シラン系SAMについては石英ガラスの基板を用い、チオール系SAMについては金の基板を用いた。次に、各パターン形成用基板に対し、光源として図4に示すショートアークフラッシュランプ(SFL)と、エキシマランプとを用いて真空紫外光を照射し、それぞれパターニングを行った。その後、得られたパターンの精度評価を行った。
【0070】
SFLとしては、電極間距離が3mmであり、発光管内に封入圧力5atmでキセノンガス(Xe)が封入されたものを用いた。また、当該SFLには、600Vで充電された容量20μFのコンデンサの充電エネルギー(3.6J)を10Hzで投入した。
エキシマランプとしては、二重管型であり、発光管内に封入圧力0.5atmでキセノンガス(Xe)が封入されたものを用いた。発光管の径はφ20mm、管軸方向の長さは80mmのものを用いた。また、当該エキシマランプには、100Wの電力を投入した。
【0071】
(パターニング方法)
それぞれのランプの中央直下40mmの位置にパターン形成用基板を配置し、マスクを介して露光を行った。マスクは、パターン形成用基板の上に20μm又は5μmのギャップを空けて配置した。ランプ−マスク間は窒素パージを行い、ギャップ(マスク−パターン形成用基板間)の雰囲気は、大気(酸素約20kPa)とした。露光時間は、予め十分に大きなマスク開口部(10mm×10mm)を介してパターン形成用基板表面の露光を行い、その接触角(純水)が5°になるように露光時間を定めた。
その後、20μm×100μmの露光領域(100μmの方向が、ランプの軸方向に相当する)に、銀ナノインク(水系溶媒)10plをインクジェット塗布し、中央部のライン幅を、光学顕微鏡を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示すように、酸素を含む雰囲気中においてパターニングを行う際に、光源として波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を放射するSFLを使用した場合、SAM膜に形成されたパターンがマスク寸法(20μmL/S)とほぼ同等の線幅を有していた。このように、光源として波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するSFLを使用することにより、光源にエキシマランプを使用する場合に比べて、マスクパターンに忠実なパターンが精度良く得られることが確認できた。
【0074】
また、SFLを使用した場合、ギャップ20μm、5μmのいずれの場合も高いパターン精度が得られる(ギャップの大小によるパターン精度の変化が小さい)ことが確認できた。すなわち、SFLを使用した場合は、エキシマランプを使用した場合に比べてギャップ依存性(ギャップによるパターン精度の変化)が小さいことが確認できた。
このように、SAM等の有機単分子膜にVUV照射を行ってパターニングする場合、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有するVUV光を照射することで、良好なパターニングを実現できることが確認できた。
【0075】
(変形例)
なお、上記実施形態において、光源としてショートアーク型フラッシュランプを適用する場合について説明したが、光源から放射されるVUV光が波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有していればよく、光源としては種々の構成からなる光源を用いることができる。ここで、光源から放射されるVUV光は、波長180nm〜200nmの範囲に連続スペクトルを有していればよく、波長180nm〜200nmの範囲にピークがある必要はない。
【0076】
また、上記光源として点光源を適用する場合にも、ショートアーク型フラッシュランプに限定されず、種々の構成からなる光源を用いることができる。例えば、フラッシュランプに限定されず、電極間距離が1mm〜10mm程度と短く、アーク放電により発光するショートアークランプを適用することもできる。
さらに、上記実施形態においては、ワークWに照射されるVUV光の照度分布の均一性が求められる場合、例えば、光照射装置100を以下のように構成してもよい。
【0077】
真空紫外光光源装置10における放物面ミラー12を楕円集光ミラーとし、当該楕円集光ミラーの第1焦点にSFL11の発光部を配置する。また、窓部14から放出される光が集光される第2焦点にインテグレータを配置し、インテグレータからの光をコリメータレンズもしくはコリメータミラーで平行光にしてマスクMに照射する。
なお、インテグレータやコリメータレンズもしくはコリメータミラーは、真空紫外光光源装置10から放出されワークWに照射される光が進行する光路上に配置するので、これらはVUV領域の光透過性の良い材料で構成するものとする。
【符号の説明】
【0078】
10…真空紫外光光源装置、11…フラッシュランプ(SFL)、12…放物面ミラー、13…ランプハウジング、14…窓部、15…給電部、21…包囲部材、21a…ガス導入口、21b…排気口、22…マスクステージ、23…ワークステージ、24…包囲部材、24a…ガス導入口、24b…排気口、31…制御部、32…ステージ移動機構、111a…発光管、111b…第一封止管、111c…第二封止管、112…封止用ガラス管、113a…第一の主電極(陽極)、113b…第二の主電極(陰極)、114a,114b…電極棒、115a,115b…トリガ電極、116a,116b…内部リード、117a,117b…外部リード、118a,118b…金属箔、119…サポータ部材、120…スパーカ電極、M…マスク、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6