特許第6492526号(P6492526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492526
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20190325BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20190325BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01G11/78
   H01G9/08 E
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-215395(P2014-215395)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-81869(P2016-81869A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智昭
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−165455(JP,A)
【文献】 特開2012−172091(JP,A)
【文献】 特開2011−098759(JP,A)
【文献】 特開2004−327042(JP,A)
【文献】 特開2004−327046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01G 11/78
H01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸フィルムを含む基材層と、
前記基材層上に配置された金属箔層と、
前記金属箔層上に配置され、前記基材層と共に前記金属箔層をその間に挟み込む内層と、を備え、
前記基材層は、前記二軸延伸フィルムとして、二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一層を含み、
前記内層は、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを少なくとも一層含み、
前記基材層の上降伏点強度から前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの上降伏点強度を引いた値は、−1.53N/mm以上1.62N/mm以下である
蓄電装置用外装材。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率が縦方向及び横方向ともに3倍以上10倍以下である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率が前記基材層の前記二軸延伸フィルムの延伸倍率よりも大きい、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの上降伏点強度が40N/mm以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムは前記基材層よりも厚い、請求項1〜4の何れか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
前記基材層の厚さが15μm以上35μm以下であり、
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さが20μm以上50μm以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項7】
前記内層は、熱融着性を有するシーラント層をさらに含み、
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、前記シーラント層と前記金属箔層との間に配置されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項8】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムは前記シーラント層よりも厚い、請求項7に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項9】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、
前記シーラント層は、ポリプロピレン樹脂から形成されている、請求項7又は8に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の蓄電装置用外装材であって、前記内層同士が熱融着するように折り曲げられている蓄電装置用外装材と、
前記折り曲げられた蓄電装置用外装材の内側に配置される電池要素と、
を備える蓄電装置。
【請求項11】
前記蓄電装置用外装材は凹部を有しており、
前記電池要素は、当該凹部内に収容されている、請求項10に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用外装材及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置として、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限により蓄電装置の更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するためアルミニウム箔層を含む外装材により電池全体を覆う構成が採用されており、これはアルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池では、例えば外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池要素(正極、セパレータ、負極及び電解液等)を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで貼り合わせ、これにより、エンボスタイプのリチウムイオン電池を形成している。
【0003】
リチウムイオン電池のエネルギー密度は、冷間成型によって形成される凹部を深くするほど高くすることができる。しかし、形成される凹部が深いほど、成型時の外装材にピンホールや破断が起こり易く、成型性が低下してしまう。そこで、外装材の基材層に延伸ポリアミドフィルム等を用いてアルミニウム箔等の金属箔を保護することが行われている。その例として、例えば特許文献1では、基材層に、引張試験における0°、45°、90°及び135°の4方向の破断までの引張強さが150N/mm以上であり、かつ該4方向の伸びが80%以上であるフィルムを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−123800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、基材層に上述のような引張強さが強いフィルムを使用し、外装材に凹部を形成する深絞り成型を行った場合、成型加工後の外装材が基材層側へ反ってしまう問題が生じる。成型加工後の外装材の反り量が大きいと、外装材の搬送性、及び電池要素収容後のヒートシール時のハンドリング性に支障をきたす。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減することが可能な蓄電装置用外装材、及び、当該蓄電装置用外装材を備えた蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る蓄電装置用外装材は、二軸延伸フィルムを含む基材層と、基材層上に配置された金属箔層と、金属箔層上に配置され、基材層と共に金属箔層をその間に挟み込む内層と、を備え、基材層は、二軸延伸フィルムとして、二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一層を含み、内層は、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを少なくとも一層含む。
【0008】
上記蓄電装置用外装材では、基材層が二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一方を含んでいる。この場合、成型加工時に基材層が金属箔層を保護し、金属箔層の破断を抑制できるので、優れた成型性を維持することができる。また、上記蓄電装置用外装材では、内層に二軸延伸ポリオレフィンフィルムを含んでいる。この場合、電池要素側に設けられる内層の引張試験における上降伏点強度を増加させ、基材層の上降伏点強度に近づけることができる。このように基材層と内層の上降伏点強度を近づけることにより、成型加工により延伸された外装材の各層がそれぞれ延伸前の状態に戻ろうとする際に力のバランスが崩れて反りが生じるといったことを抑制でき、成型加工後の外装材の反り量を低減することが可能となる。
【0009】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率が縦方向及び横方向ともに3倍以上10倍以下であってもよい。延伸倍率が3倍以上であれば、十分な上降伏点強度を内層が得ることができ、成型加工後の反り量を低減することができる。また、延伸倍率が10倍以下であれば、内層の過剰な分子配向を避けることができ、成型加工時の延伸によるマイクロクラックの発生を防止することができる。
【0010】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率が基材層の二軸延伸フィルムの延伸倍率よりも大きくてもよい。この場合、内層の上降伏点強度を、基材層の上降伏点強度に近づけ、成型加工後の反り量をより確実に低減することができる。
【0011】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの上降伏点強度が40N/mm以上であってもよい。この場合、内層の上降伏点強度を、基材層の上降伏点強度に近づけ、成型加工後の反り量を低減することができる。
【0012】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムは基材層よりも厚くてもよい。この場合、内層の上降伏点強度を、基材層の上降伏点強度により近づけ、成型加工後の基材層側への反り量をより確実に低減することができる。
【0013】
上記蓄電装置用外装材において、基材層の厚さが15μm以上35μm以下であり、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さが20μm以上50μm以下であってもよい。基材層の厚さが15μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくく、外装材の成型性をより向上させることができる。また、基材層の厚さが35μm以下であることにより、成型加工後の基材層側への反り量を低減することができる。また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さが20μm以上であることにより、成型加工後の基材層側への反り量を低減することができる。また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さが50μm以下であることにより、成型加工後の内層側への反り量を低減することができる。
【0014】
上記蓄電装置用外装材において、内層は、熱融着性を有するシーラント層をさらに含み、二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、シーラント層と金属箔層との間に配置されていてもよい。この場合、シーラント層により蓄電装置用外装材にヒートシールによる封止性を付与することができるので、中間層が熱融着性を有する必要がなく、材料の選択肢を広げることができる。
【0015】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムはシーラント層よりも厚くてもよい。この場合、蓄電装置用外装材の総厚を抑えつつ、内層の上降伏点強度を高めやすい。
【0016】
上記蓄電装置用外装材において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、シーラント層は、ポリプロピレン樹脂から形成されていてもよい。この場合、中間層とシーラント層とは、同じ材料から形成されているので、両者の密着性を向上させることができる。
【0017】
また本発明は別の側面として蓄電装置に関する。この蓄電装置は、上記蓄電装置用外装材であって、内層同士が熱融着するように折り曲げられている蓄電装置用外装材と、折り曲げられた蓄電装置用外装材の内側に配置される電池要素と、を備える。この蓄電装置では、上記蓄電装置用外装材を備え、上述した理由により、上記蓄電装置用外装材が優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減するので、電池要素収容後のヒートシール時のハンドリング性を向上させることができる。
【0018】
上記蓄電装置において、蓄電装置用外装材は凹部を有しており、電池要素は、当該凹部内に収容されてもよい。この場合、より高いエネルギー密度を有するように電池要素を収容することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減する蓄電装置用外装材、及び、当該蓄電装置用外装材を備えた蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図2】成型加工後の外装材を模式的に示す図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)に示す成型加工後の外装材のb−b線に沿った断面図である。
図3】外装材を用いて二次電池を製造する工程を示す斜視図であり、(a)は、蓄電装置用外装材を準備した状態を示し、(b)は、エンボスタイプに成型加工された蓄電装置用外装材と電池要素とを準備した状態を示し、(c)は、蓄電装置用外装材の一部を折り返して周縁部をヒートシールした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[蓄電装置用外装材10]
まず、本実施形態に係る蓄電装置用外装材10(以下、単に「外装材10」とも記す。)について図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。外装材10は、正極、セパレータ、負極及び電解液等の電池要素を覆って、電池内部への水分の侵入を防止したり、内部で発生した物質(例えば、水分の侵入により発生するフッ酸等)の外部への流出を防止したりするための包装材である。外装材10は、図1に示すように、二軸延伸フィルムを含む基材層11と、基材層11上に配置された金属箔層13と、金属箔層13上に配置され、基材層11と共に金属箔層13をその間に挟み込む内層18と、を基本構成として備えている。外装材10には、基材層11と金属箔層13との間に基材接着層12が配置されていてもよい。即ち、基材層11上に配置された基材接着層12をさらに備え、金属箔層13が基材接着層12を介して基材層11上に配置されていてもよい。
【0023】
また、外装材10には、金属箔層13と内層18との間に腐食防止処理層14及び/又は内層接着層15が配置されていてもよい。即ち、外装材10は、金属箔層13上に配置された腐食防止処理層14及び/又は内層接着層15をさらに備え、内層18が腐食防止処理層14及び/又は内層接着層15を介して金属箔層13上に配置されていてもよい。なお、腐食防止処理層14及び内層接着層15が共に配置される場合、腐食防止処理層14が金属箔層13側に配置され、内層接着層15が内層18側に配置される。
【0024】
さらに、内層18は中間層(二軸延伸ポリオレフィンフィルム)16を少なくとも一層含む。内層18は、熱融着性を有するシーラント層17をさらに含んでもよい。即ち、内層18は、中間層16とシーラント層17との積層構成であって、中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、シーラント層17と金属箔層13との間に配置されていてもよい。外装材10では、基材層11が最外層であってもよく、シーラント層17が最内層であってもよい。即ち、外装材10は、蓄電装置用の容器として、基材層11を外側且つシーラント層17を内側にして、蓄電装置の電池要素を収容するものであってもよい。
【0025】
次に、外装材10を構成する各層についてより詳細に説明する。
【0026】
[基材層11]
基材層11は、蓄電装置を製造する際の後述する加圧熱融着工程における耐熱性を外装材10に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。基材層11は、二軸延伸フィルムとして、二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも一層を含んで構成される。基材層11が二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一層を含むことにより、成型加工時に金属箔層13を保護し、破断を抑制する。また、突刺強度又は衝撃強度に優れる点から、二軸延伸ポリエステルフィルムは二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、二軸延伸ポリアミドフィルムは二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。なお、基材層11は、二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの両層を含んで構成されていてもよい。
【0027】
基材層11の厚さは、例えば15μm〜35μmであることが好ましく、20μm〜30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが15μm以上であることにより、金属箔層13の保護効果が向上すると共に、成型加工により応力がかかっても破断しにくく、より優れた成型性を得ることができる。基材層11の厚さが35μm以下であることにより、成型加工後の特に基材層11側への反り量を低減することができる。また、基材層11の延伸倍率は、1.5倍以上3.5倍以下が好ましく、2倍以上3倍以下がより好ましい。当該延伸倍率が1.5倍以上であれば、成型加工において十分な強度が得られる。当該延伸倍率が3.5倍以下であれば、成型加工において十分な延性が得られる。
【0028】
また、基材層11の引張試験における上降伏点強度は、70N/mm以上150N/mm以下であることが好ましく、90N/mm以上130N/mm以下であることがより好ましい。当該上降伏点強度が70N/mm以上であれば、成型加工において十分な強度が得られる。当該上降伏点強度が150N/mm以下であれば、成型加工後の反り量を低減することができる。
【0029】
[基材接着層12]
基材接着層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。基材接着層12を構成する接着剤は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びアクリルポリオール等の主剤と、芳香族系ポリイソシアネート等の硬化剤とを含む2液硬化型のポリウレタン系接着剤であることが好ましい。基材接着層12は、外装材10の引張伸びを大きくする観点から、ポリエステルポリオールからなる主剤と、芳香族系ポリイソシアネートからなる硬化剤とを含む2液硬化型の芳香族ポリエステルウレタン系接着剤であることがより好ましい。上記ウレタン系接着剤を塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して、基材層11と金属箔層13とを強固に接着させることが可能となる。
【0030】
基材接着層12の厚さは、接着強度、追随性及び加工性等の点から、例えば1μm〜10μmであることが好ましく、3μm〜7μmであることがより好ましい。
【0031】
[金属箔層13]
金属箔層13は、防湿性、延展性等の加工性及びコストの面から、例えばアルミニウム箔から構成される。アルミニウム箔は、耐ピンホール性、及び成型加工時の延展性に優れる点から、鉄を含むことが好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量としては、0.5質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.7質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0032】
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び成型加工性の点から、例えば20μm〜60μmであることが好ましく、30μm〜50μmであることがより好ましい。
【0033】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制し、また、金属箔層13と内層接着層15との密着力を高める役割を果たす。
【0034】
腐食防止処理層14は、塗布型又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜であることが好ましい。この塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と内層接着層15の密着力をより強固にするので、電解液等の蓄電装置要素に対して優れた耐性が得られる。また、腐食防止処理層14は、必要とされる機能に応じて基材接着層12と金属箔層13の間に追加されてもよい。
【0035】
腐食防止処理剤の塗膜は、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理、及び、クロム酸塩とリン酸塩とフッ化物と各種熱硬化性樹脂とからなる腐食防止処理剤によるクロメート処理等により形成される。なお、腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上記した塗膜には限定されない。腐食防止処理層14は、例えば、リン酸塩処理及びベーマイト処理等によって形成された塗膜であってもよい。
【0036】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、例えば10nm〜5μmであることが好ましく、20nm〜500nmであることがより好ましい。
【0037】
[内層接着層15]
内層接着層15は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13と内層18を接着する層である。外装材10は、内層接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
【0038】
熱ラミネート構成における内層接着層15を構成する接着成分は、ポリオレフィン系樹脂を酸又はエポキシ化合物でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂又はエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で構成された場合の内層18と、極性を有することが多い腐食防止処理層14の両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、外装材10の電解液等の蓄電装置要素に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生しても内層接着層15の劣化による密着力の低下を防止しやすい。
【0039】
酸変性ポリオレフィン系樹脂の製造に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン系樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂における酸変性の方法としては、酸によってグラフト変性する方法、及び、酸を有する単量体を共重合する方法等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸及び酸無水物等が挙げられ、上記酸は無水マレイン酸であることが好ましい。内層接着層15は無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含むことがより好ましい。内層接着層15が無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むことにより、電解液が浸透しても内層18と金属箔層13との密着力を維持しやすくなる。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂の酸による変性率(例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.3質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0042】
熱ラミネート構成の内層接着層15は、さらに、スチレン系又はオレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。これにより、冷間成型時に内層接着層15にクラックが生じて白化することを抑制し易く、濡れ性の改善による密着力の向上及び異方性の低減による成膜性の向上等が期待できる。これらのエラストマーはポリオレフィン系樹脂中にナノメートルオーダーで分散、又はポリオレフィン系樹脂と相溶していることが好ましい。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂は、単独で内層接着層15を構成してもよく、2種以上を組み合わせて内層接着層15を構成してもよい。
【0044】
熱ラミネート構成の内層接着層15は、上記接着成分を押出し装置で押し出すことにより製造できる。熱ラミネート構成の内層接着層15の接着成分のメルトフローレート(MFR)は、230℃、荷重2.16kgfの条件において、4〜30g/10分であることが好ましい。熱ラミネート構成の内層接着層15の厚さは例えば5μm〜40μmであることが好ましい。
【0045】
ドライラミネート構成の内層接着層15における接着成分としては、例えば、基材接着層12で挙げたものと同様の2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。ドライラミネート構成の内層接着層15は、エステル基及びウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には内層接着層15は熱ラミネート構成であることが好ましい。
【0046】
[中間層16]
中間層16は、内層18の引張試験における上降伏点強度を増加させ、基材層11の上降伏点強度に近づけ、成型加工後の特に基材層11側への反り量を低減させるための層である。中間層16は、ポリオレフィン系樹脂からなり且つ二軸延伸されたフィルムである二軸延伸ポリオレフィンフィルムで構成される。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン系樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0047】
中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの引張試験における上降伏点強度は、20N/mm以上100N/mm以下であることが好ましく、40N/mm以上80N/mm以下であることがより好ましい。当該上降伏点強度が20N/mm以上であれば、成型加工後の反り量を低減することができる。当該上降伏点強度が100N/mm以下であれば、過剰な分子配向を避けることができ、成型加工時の延伸により、中間層16にマイクロクラックが発生することを抑制することができる。当該上降伏点強度と基材層11の引張試験における上降伏点強度との差は、50N/mm以内であることが好ましい。
【0048】
中間層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択されればよい。また、中間層16は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。さらに、中間層16はシーラント層として設置してもよく、シーラント層としての機能を兼ねる場合は、シーラント層17を省いてもよい。
【0049】
中間層16は、二軸延伸されていることにより、縦方向にも横方向にも高い強度を有する。中間層16の延伸倍率は、3倍以上10倍以下が好ましく、4倍以上8倍以下がより好ましい。延伸倍率が3倍以上であれば、十分な上降伏点強度を得ることができ、成型加工後の反り量を低減することができる。また、延伸倍率が10倍以下であれば、過剰な分子配向を避けることができ、成型加工時の延伸によるマイクロクラックの発生を防止することができる。
【0050】
中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率は、基材層11の二軸延伸フィルムの延伸倍率よりも大きいことが好ましい。即ち、中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率は、基材層11の二軸延伸フィルムの延伸倍率の1倍以上であることが好ましい。中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの延伸倍率は、例えば3倍以上10倍以下とされるのに対し、基材層11の二軸延伸フィルムの延伸倍率は、例えば2倍以上3倍以下とされる。
【0051】
中間層16を構成する二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さは、例えば20μm〜50μmであることが好ましく、30μm〜40μmであることがより好ましい。中間層16の厚さが20μm以上であることにより、成型加工後の基材層11側への反り量を低減することができる。また、中間層16の厚さが50μm以下であることにより、成型加工後の内層18側への反り量を低減することができる。なお、中間層16は、基材層11よりも厚くすることが好ましい。ポリオレフィンを二軸延伸しても、その上降伏点強度は、基材層11の上降伏点強度に対して不十分となり易い。中間層16の厚さを調節することにより、中間層16の上降伏点強度を基材層11の上降伏点強度により近づけることができるので、成型加工後の基材層11側への反り量をより確実に低減することができる。
【0052】
[シーラント層17]
シーラント層17は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層17としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン系樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、内層接着層15で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0053】
シーラント層17は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択されればよい。また、シーラント層17は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤及び粘着付与剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0054】
シーラント層17は、中間層16と同じ材料から形成されるものとすると、シーラント層17と中間層16との密着性が増し、剥離し難くなる。例えば、中間層16の二軸延伸ポリオレフィンフィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、シーラント層17をポリプロピレン樹脂から形成することで、このような効果を得ることができる。
【0055】
シーラント層17は、中間層16よりも薄くすることが好ましい。シーラント層17の厚さは、外装材10にヒートシールによる封止性を付与するという性能を発揮するために必要な厚さであればよく、それ以上に厚くする必然性が低い。一方、中間層16の厚さは、内層18が基材層11とバランスをとるために、厚くする方がよい。したがって、シーラント層17は、中間層16よりも薄くして、外装材10の総厚を抑えつつ、中間層16は、シーラント層17よりも厚くして、内層18の上降伏点強度を高めることが好ましい。
【0056】
[外装材10の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。ただし、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0057】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11〜S14を有する方法が挙げられる。
・工程S11:金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14を形成する工程。
・工程S12:金属箔層13の他方の面上に基材接着層12を介して基材層11を形成する工程。
・工程S13:腐食防止処理層14上に、内層接着層15を介して中間層16を形成する工程。
・工程S14:中間層16上に、シーラント層17を形成する工程。
【0058】
[工程S11]
腐食防止処理層14は、例えば、金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥することにより、金属箔層13の一方の面上に形成される。腐食防止処理剤としては、例えば、上述のセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、及びクロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されるものではなく、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、又はバーコート等の各種方法を採用できる。
【0059】
[工程S12]
基材層11は、例えば、金属箔層13の他方の面上に、基材接着層12を形成する接着剤を用いて、ドライラミネーション等の手法で貼り合わせられることにより、金属箔層13の他方の面上に形成される。基材層11と金属箔層13との接着性の向上のため、基材層11を形成した後の積層体を室温〜100℃の範囲でエージング(養生)してもよい。エージング時間は、例えば1〜10日である。
【0060】
[工程S13]
少なくとも金属箔層13及び腐食防止処理層14が積層された積層体の腐食防止処理層14側に、内層接着層15を介して中間層16が形成される。中間層16は、ドライラミネーション及びサンドイッチラミネーション等によって積層されてもよい。中間層16は、接着性向上の点から、例えばサンドイッチラミネーションによって積層されることがより好ましい。
【0061】
[工程S14]
中間層16上にシーラント層17が形成される。シーラント層17は、押出し成形によって形成されるのが好ましい。また、押出し成形後に密着力強化のため、熱ラミネーションしてもよい。
【0062】
以上説明した工程S11〜S14により、外装材10を得ることができる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記工程S11〜S14を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12、工程S13又は工程S14を行ってから工程S11を行ってもよい。
【0063】
[蓄電装置]
次に、外装材10を容器として備える蓄電装置について説明する。蓄電装置は、内層18同士が熱融着するように折り曲げられている蓄電装置用外装材10と、折り曲げられた蓄電装置用外装材10の内側に配置される電池要素1と、を備える(図3参照)。蓄電装置用外装材10は凹部を有しており、電池要素1は、当該凹部内に収容されている。上記容器は、2つの外装材10を内層18同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた外装材10の周縁部を熱融着して得られてもよく、また、1つの外装材10を中央部付近で折り返して重ね合わせ、同様に外装材10の周縁部を熱融着して得られてもよい。蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。
【0064】
次に、上述した外装材10を用いて蓄電装置を製造する方法について図2及び図3を参照して説明する。なお、ここでは成型加工後の外装材10の一例としてエンボスタイプ外装材30を用いて二次電池40を製造する場合について説明する。
【0065】
エンボスタイプ外装材30は、平面視矩形状をなす凹部として成型加工エリア32を有している。図3(a)及び図3(b)に示されるように、成型加工エリア32は、例えば矩形状の圧力面を有する押圧部材を外装材10の一部に対してその厚み方向に押圧することで形成される。また、押圧する位置、即ち成型加工エリア32は、長方形に切り出した外装材10の中央Sより、外装材10の長手方向の一方の端部に偏った位置に形成する。これにより、成型加工後に成型加工エリア32を形成していないもう片方の端部側を折り返し、蓋部34とすることができる。
【0066】
このような成型加工を行った後、エンボスタイプ外装材30に以下の工程が施されることで二次電池40が製造される。即ち、上記工程のように凹部としての成型加工エリア32を形成後、図3(b)及び図3(c)に示されるように、該凹部内に、電池要素1を配置し、エンボスタイプ外装材30を内層18同士、より具体的にはシーラント層17同士が向かい合うように折り返し、重ね合せる。重ねられたエンボスタイプ外装材30は、電池要素1から延在するタブリード2を挟持した状態で、周縁部の二辺がヒートシールされる。その後、真空状態において、残りの一辺から電解液を注入し、その残りの一辺をヒートシールして密封することで二次電池40を得る。なお、本発明の蓄電装置用外装材を使用した蓄電装置は、上記方法で製造したものには限定されない。
【0067】
このような外装材10によれば、基材層11を二軸延伸ポリエステルフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムにすることで優れた成型性を維持しつつ、内層18の中間層16を二軸延伸ポリオレフィンフィルムにすることで成型加工後の反り量を低減することが可能となる。つまり、外装材10では、基材層11が二軸延伸ポリエステルフィルム及び二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくともいずれか一方を含んでいるため、成型加工時に基材層11が金属箔層13を保護し、金属箔層13の破断を抑制できるので、優れた成型性を維持することができる。また、外装材10では、内層18に二軸延伸ポリオレフィンフィルムを含んでいるため、電池要素1側に設けられる内層18の引張試験における上降伏点強度を増加させ、基材層11の上降伏点強度に近づけることができる。このように基材層11と内層18の上降伏点強度を近づけることにより、成型加工により延伸された外装材10の各層がそれぞれ延伸前の状態に戻ろうとする際に力のバランスが崩れて反りが生じるといったことを抑制でき、成型加工後の外装材10の反り量を低減することが可能となる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0069】
[使用材料の準備]
まず、図1に示す構成を備えた外装材10(実施例及び比較例)の材料として、以下を準備した。具体的には、基材層11用の基材A−1〜A−7、基材接着層12用の接着剤、金属箔層13、腐食防止処理層14用の処理剤、内層接着層15用の樹脂、中間層16用のフィルムF−1〜F−10、及び、シーラント層17用の樹脂をそれぞれ準備した。
(基材層11)
・基材A−1:二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム(厚さ25μm、延伸倍率2.5倍、上降伏点強度2.25N/mm(90N/mm))
・基材A−2:二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム(厚さ15μm、延伸倍率2.5倍、上降伏点強度1.35N/mm(90N/mm))
・基材A−3:二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ25μm、延伸倍率2.5倍、上降伏点強度2.25N/mm(90N/mm))
・基材A−4:二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム(厚さ15μm、延伸倍率2.5倍)+層間接着層(厚さ8μm)+二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm、延伸倍率2.5倍)、総厚35μm、上降伏点強度2.8N/mm(80N/mm
・基材A−5:二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm、延伸倍率2.5倍、上降伏点強度1.08N/mm(90N/mm))
・基材A−6:二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム(厚さ25μm、延伸倍率2.5倍)+層間接着層(厚さ8μm)+二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm、延伸倍率2.5倍)、総厚45μm、上降伏点強度3.825N/mm(85N/mm
・基材A−7:無延伸ナイロン(Ny)フィルム(厚さ30μm、上降伏点強度0.15N/mm(5N/mm))
ここで、上述した延伸倍率は、縦方向、横方向ともに同じ値である。また、上降伏点強度は、幅1mmあたりの上降伏点強度(N/mm)であり、括弧内は、幅1mm、厚さ1mmあたりの上降伏点強度(N/mm)である。
(基材接着層12)
・接着剤B−1:ポリエステルウレタン系接着剤
(金属箔層13)
・金属箔C−1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)
(腐食防止処理層14)
・処理剤D−1:酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤
(内層接着層15)
・接着樹脂E−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)
(中間層16)
・フィルムF−1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、延伸倍率6倍、上降伏点強度2.205N/mm(63N/mm))
・フィルムF−2:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm、延伸倍率6倍、上降伏点強度1.26N/mm(63N/mm))
・フィルムF−3:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ50μm、延伸倍率6倍、上降伏点強度3.15N/mm(63N/mm))
・フィルムF−4:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、延伸倍率3倍、上降伏点強度1.4N/mm(40N/mm))
・フィルムF−5:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、延伸倍率10倍、上降伏点強度3.15N/mm(90N/mm))
・フィルムF−6:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ10μm、延伸倍率6倍、上降伏点強度0.63N/mm(63N/mm))
・フィルムF−7:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ60μm、延伸倍率6倍、上降伏点強度3.78N/mm(63N/mm))
・フィルムF−8:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、延伸倍率2倍、上降伏点強度1.05N/mm(30N/mm))
・フィルムF−9:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、延伸倍率11倍、上降伏点強度3.5N/mm(100N/mm))
・フィルムF−10:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ35μm、上降伏点強度0.175N/mm(5N/mm))
ここで、延伸倍率は、縦方向、横方向ともに同じ値である。また、上降伏点強度は、幅1mmあたりの上降伏点強度(N/mm)であり、括弧内は、幅1mm、厚さ1mmあたりの上降伏点強度(N/mm)である。
(シーラント層17)
・押出し樹脂G−1:ポリプロピレン樹脂(厚さ20μm)
【0070】
[外装材10の作成]
金属箔層13となる金属箔C−1の一方の面に処理剤D−1を塗布、乾燥して腐食防止処理層14を形成した。次に、金属箔層13における腐食防止処理層14とは反対側の面に、基材接着層12として接着剤B−1を用いたドライラミネート法により、基材A−1〜A−7のいずれかを貼り合せ、その後、60℃、6日間のエージングを行った。ここで、基材A−4及び基材A−6は接着剤B−1を介して二軸延伸ナイロン(Ny)フィルムと金属箔層13とを貼り合せた後、積層した二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム上に層間接着層(厚さ8μm)として接着剤B−1を用いて二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合せ、エージングを行った。
【0071】
次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側に押出し装置にて接着樹脂E−1を押出して内層接着層15を形成し、フィルムF−1〜F−10を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることで中間層16を形成した。その後、中間層16上に押出し装置にて押出し樹脂G−1を押出してシーラント層17を形成し、得られた積層体に対し、190℃で加熱圧着することで外装材10を作成した。
【0072】
このようにして作成した外装材10の実施例1〜14及び比較例1〜2は、以下の表1に示す構成であった。基材層11の厚さは、総厚で示す。
【表1】
【0073】
[成型加工後の反り量の評価]
次に、実施例1〜14及び比較例1〜2の各外装材10を、120mm×260mmのブランク形状に切り取り、シーラント層17が上方を向くように成型装置内に配置して、室温23℃、露点温度−35℃の成型環境下で成型深さ3mmに設定し、シーラント層17側から冷間成型を行った。パンチとしては、形状が70mm×80mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。パンチとダイとの間のクリアランスは0.2mmとした。また、成型加工エリア32を、ブランク形状の長手方向の一方の端部及び短手方向の両方の端部からそれぞれ25mmとなるように、ブランク形状の長手方向の一方の端部に寄せた状態で形成した。
【0074】
続いて、成型加工された各外装材10を、基材層11側に反っているサンプルは基材層11側を上面にして、シーラント層17側に反っているサンプルはシーラント層17側を上面にして室温23℃、露点温度−35℃の環境に60分静置させ、成型されていないエリアの端辺の反り量(静置面からの距離)を測定した。評価基準は、以下に従って行った。
「◎」:反り量が50mm未満であった。
「○」:反り量が50mm以上100mm未満であった。
「×」:反り量が100mm以上であった。
【0075】
[成型深さの評価]
また、実施例1〜14及び比較例1〜2の各外装材10を、150mm×190mmのブランク形状に切り取り、シーラント層17が上方を向くように成型装置内に配置して、室温23℃、露点温度−35℃の成型環境下で成型深さを変化させながら、シーラント層17側から冷間成型し、成型性を評価した。パンチとしては、形状が100mm×150mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。パンチとダイとの間のクリアランスは0.2mmとした。
【0076】
評価基準は、以下に従って行った。
「◎」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能である。
「○」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ4mm以上6mm未満の深絞り成型が可能である。
「×」:成型深さ4mm未満の深絞り成型で破断、クラックが生じる。
【0077】
[成型加工後のマイクロクラックの評価]
また、実施例1〜14及び比較例1〜2の各外装材10を、120mm×260mmのブランク形状に切り取り、シーラント層17が上方を向くように成型装置内に配置して、室温23℃、露点温度−35℃の成型環境下で成型深さ3mmに設定し、シーラント層17側から冷間成型を行った。パンチとしては、形状が70mm×80mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。パンチとダイとの間のクリアランスは0.2mmとした。また、成型エリアは、ブランク形状の長手方向の一方の端部及び短手方向の両方の端部からそれぞれ25mmとなるように、ブランク形状の長手方向の一方の端部に寄せた状態で成型を行った。
【0078】
成型加工エリア32を形成後、外装材10を折り返し、シーラント層17が向かい合うように重ね合わせ、その二辺をヒートシールした。そのうち、一辺にはタブリード2を介在させた。その後、真空状態において、残りの一辺から電解液を注入し、その残りの一辺をヒートシールして密封することで評価用サンプルを作成した。電解液は介在させたタブリード2と接触し、成型加工エリア32内部とタブリード2を介して、外部が導通するようにした。
【0079】
評価はタブリード2と外装材10の金属箔を端子接続し、25Vの電圧を30分間印加し、絶縁抵抗値を測定することで、マイクロクラックによる絶縁低下を評価した。評価基準は、以下に従って行った。
「◎」:絶縁抵抗値が2.5GΩ以上
「○」:絶縁抵抗値が200MΩ以上、2.5GΩ未満
「×」:絶縁抵抗値が200MΩ未満
【0080】
以下の表2に、実施例1〜14及び比較例1〜2の各外装材における、反り方向、反り量、成型深さ及びマイクロクラックの評価結果を示す。
【表2】
【0081】
表2に示すように、基材層11に、二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの少なくとも何れか一層を含み、総厚(厚さ)15μm以上35μm以下としたフィルムを用い、中間層16に厚さ20μm以上50μm以下、且つ延伸倍率3倍以上10倍以下の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた実施例1〜8では、成型加工後の反り量を大幅に低減できることが確認できた。しかも、これら実施例1〜8では、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能であると共に、中間層マイクロクラックによる絶縁性低下がないことから、成型性にも優れていることが確認できた。
【0082】
また、基材層11に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた実施例13では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、基材層11の厚さ不足により、反り量低減効果は、実施例1〜8には及ばなかった。また、成型深さの点で、成型性についても実施例1〜8には及ばなかった。なお、実施例13では、マイクロクラックにより絶縁性が低下する傾向はみられなかった。
【0083】
また、基材層11に総厚45μmの二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム(25μm)+層間接着層(8μm)+二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm)を用いた実施例14では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、基材層11が厚く、基材層11の上降伏点強度が高くなったため、反り量低減効果は、実施例1〜8には及ばなかった。なお、実施例14では、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能であると共に、マイクロクラックにより絶縁性が低下する傾向はみられなかった。
【0084】
また、中間層16に延伸倍率2倍の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた実施例11では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、中間層16の延伸倍率が低く、中間層16の上降伏点強度が十分に得られなかったため、反り量低減効果は、実施例1〜8には及ばなかった。なお、実施例11では、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能であると共に、マイクロクラックにより絶縁性が低下する傾向はみられなかった。
【0085】
また、中間層16に延伸倍率11倍の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた実施例12では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、中間層16の延伸倍率が高く、ポリプロピレンが強く分子配向したため、成型加工での延伸により、マイクロクラックが発生し、内層18の絶縁性低下をもたらした。なお、実施例12では、成型深さ6mm以上の深絞り成型は可能であった。
【0086】
また、中間層16に厚さ10μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた実施例9では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、中間層16の厚さが薄く、中間層16の上降伏点強度が十分に得られないため、反り量低減効果は、実施例1〜8には及ばなかった。なお、実施例9では、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能であると共に、マイクロクラックにより絶縁性が低下する傾向はみられなかった。
【0087】
また、中間層16に厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた実施例10では、成型加工後の反り量を低減できた。しかし、中間層16の厚さが厚く、中間層16の上降伏点強度が高くなりすぎたため、反り量低減効果は、実施例1〜8には及ばなかった。なお、実施例10では、成型深さ6mm以上の深絞り成型が可能であると共に、マイクロクラックにより絶縁性が低下する傾向はみられなかった。
【0088】
一方で、基材層11に無延伸ナイロン(Ny)フィルムを用いた比較例1では、基材層11の上降伏点強度が得られず、成型加工後の反り量が大幅に大きくなった。また、金属箔層13の保護効果も得られないため、成型深さの点で、成型性についても大幅に劣化した。
【0089】
また、中間層16に無延伸ポリプロピレンフィルムを用いた比較例2では、中間層16の上降伏点強度が得られず、成型加工後の反り量が大幅に大きくなった。
【0090】
以上から、基材層11に二軸延伸ナイロン(Ny)フィルム及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの少なくとも何れか一層を含むフィルムを用い、中間層16に二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いれば、優れた成型性を維持しつつ、成型加工後の反り量を低減できることが分かった。
【符号の説明】
【0091】
1…電池要素、10…蓄電装置用外装材、11…基材層、13…金属箔層、16…中間層(二軸延伸ポリオレフィンフィルム)、17…シーラント層、18…内層、30…エンボスタイプ外装材(蓄電装置用外装材)、32…成型加工エリア(凹部)、40…二次電池(蓄電装置)。
図1
図2
図3