特許第6492656号(P6492656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492656
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】往復動工具
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/30 20060101AFI20190325BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20190325BHJP
   A01G 3/06 20060101ALI20190325BHJP
   A01G 3/04 20060101ALI20190325BHJP
   A01D 34/13 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A01D34/30 G
   B26D1/06 B
   A01G3/06
   A01G3/04 501A
   A01D34/13 C
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-266317(P2014-266317)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123327(P2016-123327A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞穂
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−030543(JP,A)
【文献】 特開平08−172909(JP,A)
【文献】 特開2014−161251(JP,A)
【文献】 特開2008−220175(JP,A)
【文献】 特開2007−135435(JP,A)
【文献】 特開2014−097598(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0136003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/02 − 34/40
A01G 3/00 − 3/08
B25F 1/00 − 5/02
B26D 1/04 − 1/11
B27B 17/00 − 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源を収容したハウジングと、
前記駆動源で回転駆動される駆動軸の回転を往復動に変換する往復動変換部と、
前記往復動変換部によって駆動されて往復動するブレードとを備え、
ブレード組は、前記往復動変換部と、前記ブレードとを少なくとも有し、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に固定する第1の取付部と、
前記第1の取付部から離間した位置に設けられて、前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に固定する第2の取付部と
前記第1の取付部が、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態と取外し可能な状態との間で切替わることを規制する規制部材と、を有することを特徴とする往復動工具。
【請求項2】
駆動源と、
前記駆動源を収容したハウジングと、
相互に噛合して前記駆動源の回転を伝達する第1及び第2のスプラインと、
前記第2のスプラインに連動するカム機構と、
前記カム機構によって相対的に往復動される第1及び第2のブレードと、
前記第1及び第2のブレードを支持するブレードホルダとを備え、
ブレード組は前記第2のスプライン、前記カム機構、前記第1及び第2のブレード、並びに前記ブレードホルダを少なくとも有し、
前記ブレード組は、前記第2のスプラインの回転中心軸と同軸の穴部を有し、前記第1のスプラインを回転自在に支持する中心軸部材が前記穴部内に延びており、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に取り付ける第1の取付部は、前記中心軸部材とこれに螺合する第1の手動式締結具を有し、
前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に取り付ける第2の取付部は、前記第1の取付部から離間した位置に設けられていることを特徴とする往復動工具。
【請求項3】
相互に噛合して前記駆動源の回転を伝達する第1及び第2のスプラインと、を更に有し、
前記往復動変換部は、前記第2のスプラインに連動し、
前記ブレード組は、前記第2のスプラインの回転中心軸と同軸の穴部を有し、前記第1のスプラインを回転自在に支持する中心軸部材が前記穴部内に延びており、
前記第1の取付部は、前記中心軸部材とこれに螺合する第1の手動式締結具を有し、前記第1の手動式締結具により前記ブレード組を着脱可能に固定することを特徴とする請求項1に記載の往復動工具。
【請求項4】
前記第2の取付部は第2の手動式締結具により前記ブレード組を着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項5】
前記第2の手動式締結具は前記ハウジングの上面側に配置されていることを特徴とする請求項に記載の往復動工具。
【請求項6】
前記第1の取付部及び前記第2の取付部は、前記ブレードの長手方向に配列されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項7】
前記第1の取付部の中心と前記第2の取付部の中心とが前記ブレードの中心軸線上に位置していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項8】
前記ハウジングの延長部が前記ブレード組の上側に延在しており、前記第2の取付部は前記延長部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項9】
駆動源と、
前記駆動源を収容したハウジングと、
前記駆動源で回転駆動される駆動軸の回転を往復動に変換する往復動変換部と、
前記往復動変換部によって駆動されて往復動するブレードとを備え、
ブレード組は、前記往復動変換部と、前記ブレードとを少なくとも有し、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に固定する第1の取付部と、
前記第1の取付部から離間した位置に設けられて、前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に固定する第2の取付部とを有し、
前記第2の取付部は、作業者に操作されることで、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態から取外し可能な状態へと切替わる第2の被操作部を有し、
前記第1の取付部は、作業者に一方が操作された状態で他方が操作されることで、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態から取外し可能な状態へと切替わる2つの第1の被操作部を有することを特徴とする往復動工具。
【請求項10】
前記第2の被操作部は、前記駆動軸の軸方向において前記ハウジングから前記駆動源側に突出し、前記駆動軸の軸方向に垂直な方向に回動することを特徴とする請求項9に記載の往復動工具。
【請求項11】
前記第2の取付部は、前記第2の被操作部が作業者によって一度操作され前記ブレード組を前記ハウジングから取外し可能な状態になると、作業者によって再度操作されるまでは取外し可能な状態を維持することを特徴とする請求項10に記載の往復動工具。
【請求項12】
前記第1の取付部および前記第2の取付部は、作業者が手動で行う工具レスの操作で、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態と取外し可能な状態とに切替え可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の往復動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッジトリマや植木バリカン等の往復動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
相互に近接して支持された上刃と下刃(ブレード)の相対的な往復動により枝葉等の対象物を刈り込む往復動工具(携帯作業機)が従来から知られている。エンジンやモータ等の原動機にギヤを介して接続されたカム機構が、上刃と下刃を相対的に往復動させる。
【0003】
また、上刃と下刃を含むブレード組を交換容易とする構造が、本出願人提案の先願である特願2014−113575号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、往復動工具において上刃と下刃を交換する場合、作業者は、新しい上刃と下刃のカム係合部(長穴)を所定の位置に調整し、また上下カム板の回転位置を所定の角度に調整した上で、上下刃を上下カム板に係合させる必要がある。上下刃のカム係合部と上下カム板がうまく係合しないと前記の調整をやり直さなければならず、慣れない使用者にとってブレード交換は煩雑で敷居の高いものであった。
【0005】
これに対し、特願2014−113575号では、ハウジング内に固定された中心軸部材をブレード組に設けられた中心穴に通し、中心軸部材に設けられたネジ部にダイヤルノブを螺合させることによってブレード組をハウジングに着脱可能に装着する構成が記述されている。
【0006】
しかし、往復運動工具本体に取り付けられたブレード組のがたつき防止やブレード組の保持の安定化の観点から、さらなる工夫が望まれている。
【0007】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、ブレード組のがたつき防止やブレード組の保持の安定化を図ることができる往復動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、往復動工具である。この往復動工具は、駆動源と、前記駆動源を収容したハウジングと、前記駆動源で回転駆動される駆動軸の回転を往復動に変換する往復動変換部と、前記往復動変換部によって駆動されて往復動するブレードとを備え、
ブレード組は、前記往復動変換部と、前記ブレードとを少なくとも有し、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に固定する第1の取付部と、
前記第1の取付部から離間した位置に設けられて、前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に固定する第2の取付部と
前記第1の取付部が、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態と取外し可能な状態との間で切替わることを規制する規制部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、往復動工具である。この往復動工具は、駆動源と、前記駆動源を収容したハウジングと、相互に噛合して前記駆動源の回転を伝達する第1及び第2のスプラインと、前記第2のスプラインに連動するカム機構と、前記カム機構によって相対的に往復動される第1及び第2のブレードと、前記第1及び第2のブレードを支持するブレードホルダとを備え、
ブレード組は前記第2のスプライン、前記カム機構、前記第1及び第2のブレード、並びに前記ブレードホルダを少なくとも有し、
前記ブレード組は、前記第2のスプラインの回転中心軸と同軸の穴部を有し、前記第1のスプラインを回転自在に支持する中心軸部材が前記穴部内に延びており、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に取り付ける第1の取付部は、前記中心軸部材とこれに螺合する第1の手動式締結具を有し、
前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に取り付ける第2の取付部は、前記第1の取付部から離間した位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記第1の態様において、相互に噛合して前記駆動源の回転を伝達する第1及び第2のスプラインと、を更に有し、前記往復動変換部は、前記第2のスプラインに連動し、前記ブレード組は、前記第2のスプラインの回転中心軸と同軸の穴部を有し、前記第1のスプラインを回転自在に支持する中心軸部材が前記穴部内に延びており、
前記第1の取付部は、前記中心軸部材とこれに螺合する第1の手動式締結具を有し、前記第1の手動式締結具により前記ブレード組を着脱可能に固定する構成であるとよい。
【0012】
前記態様において、前記第2の取付部は第2の手動式締結具により前記ブレード組を着脱可能であるとよい。この場合、前記第2の手動式締結具は前記ハウジングの上面側に配置されているとよい。
【0013】
前記態様において、前記第1の取付部及び前記第2の取付部は、前記ブレードの長手方向に配列されているとよい。
【0014】
前記態様において、前記第1の取付部の中心と前記第2の取付部の中心とが前記ブレードの中心軸線上に位置しているとよい。
【0015】
前記態様において、前記ハウジングの延長部が前記ブレード組の上側に延在しており、前記第2の取付部は前記延長部に設けられているとよい。
【0016】
本発明の第3の態様は、往復動工具である。この往復動工具は、駆動源と、前記駆動源を収容したハウジングと、前記駆動源で回転駆動される駆動軸の回転を往復動に変換する往復動変換部と、前記往復動変換部によって駆動されて往復動するブレードとを備え、
ブレード組は、前記往復動変換部と、前記ブレードとを少なくとも有し、
前記ハウジングの底面側に前記ブレード組を着脱自在に固定する第1の取付部と、
前記第1の取付部から離間した位置に設けられて、前記ブレード組を前記ハウジングに着脱自在に固定する第2の取付部とを有し、
前記第2の取付部は、作業者に操作されることで、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態から取外し可能な状態へと切替わる第2の被操作部を有し、
前記第1の取付部は、作業者に一方が操作された状態で他方が操作されることで、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態から取外し可能な状態へと切替わる2つの第1の被操作部を有することを特徴とする
【0017】
前記第3の態様において、前記第2の被操作部は、前記駆動軸の軸方向において前記ハウジングから前記駆動源側に突出し、前記駆動軸の軸方向に垂直な方向に回動するとよい。前記第2の取付部は、前記第2の被操作部が作業者によって一度操作され前記ブレード組を前記ハウジングから取外し可能な状態になると、作業者によって再度操作されるまでは取外し可能な状態を維持するとよい。
前記態様において、前記第1の取付部および前記第2の取付部は、作業者が手動で行う工具レスの操作で、前記ブレード組を前記ハウジングに固定した状態と取外し可能な状態とに切替え可能であるとよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、往復動工具本体に取り付けられたブレード組のがたつき防止を図り得るとともに、ブレード組の保持の安定化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る往復動工具の側面図。
図2】前記往復動工具の、ブレード組を取り外した状態における底面図。
図3】前記往復動工具のブレード組の平面図。
図4】同側面図。
図5】前記往復動工具の要部拡大側断面図。
図6】同要部拡大底面図。
図7】第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に同軸かつ近接した未噛合状態でブレード組を最大限回動させた場合の前記往復動工具の底面図。
図8】第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に噛合した噛合状態でブレード組を基準回動位置にセットした場合の前記往復動工具の底面図。
図9図7の状態の前記往復動工具の正断面図。
図10図8の状態の前記往復動工具においてブレード組をダイヤルノブ6でハウジング1に固定し、ノブナット35によってブレード組支持部材30にブレード組を固定した状態の正断面図。
図11】前記往復動工具のダイヤルノブ6の斜視図。
図12】ブレード組支持部材30であって、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は底面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る往復動工具の側面図である。図2は、前記往復動工具の、ブレード組を取り外した状態における底面図である。図3は、前記往復動工具のブレード組の平面図である。図4は、同側面図である。図5は、前記往復動工具の要部拡大側断面図である。図6は、同要部拡大底面図である。図7は、第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に同軸かつ近接した未噛合状態でブレード組を最大限回動させた場合の前記往復動工具の底面図である。図8は、第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に噛合した噛合状態でブレード組を基準回動位置にセットした場合の前記往復動工具の底面図である。図9は、図7の状態の前記往復動工具の正断面図である。図10は、図8の状態の前記往復動工具においてブレード組をダイヤルノブ6でハウジング1に固定し、ノブナット35によってブレード組支持部材30にブレード組を固定した状態の正断面図である。図11は、前記往復動工具のダイヤルノブ6の斜視図である。図12は、ブレード組支持部材30の正面図、側面図及び底面図である。
【0023】
本実施の形態の往復動工具は、ヘッジトリマ(植木バリカンとも呼ばれる)であり、ハウジング1に駆動源となるエンジンやモータ等の原動機7(図5)を内蔵する。ハウジング1には、メインハンドル(リヤハンドル)1a及びサブハンドル(フロントハンドル)1bが設けられる。メインハンドル1aには、使用者が操作するトリガスイッチ1cが設けられる。飛散防護カバー1dは、ハウジング1の前端部に立設され、刈り込まれた対象物が使用者側に飛散することを防止する。ハウジング1の下部には、ブレード組20が取り付けられる。ブレード組20は、上刃2、下刃3、ブレードガイド4、ブレードホルダ5、カム機構11、及び第2のスプライン10を、図3及び図4に示すように一体化したものである。
【0024】
第1のブレードとしての上刃2及び第2のブレードとしての下刃3は、ブレードガイド4及びブレードホルダ5の間に上下から挟まれた状態で固定部材としてのネジ15a及びナット15b(図3)により、相互に近接しかつ摺動可能に支持される。上刃2及び下刃3の基端部は往復動変換部を構成するカム機構11と係合する。カム機構11は、上カム板部(第1のカム板部)11a、下カム板部(第2のカム板部)11b、及びフランジ部11cを含む。フランジ部11cは、上カム板部11aと下カム板部11bとの間に位置する、上カム板部11aと下カム板部11bより大径の円板状部である。上刃2の基端部にはカム係合部としての長穴2a(図3)が形成され、長穴2aの内周部が上カム板部11aの外周面と係合する。下刃3の基端部にも同様にカム係合部としての長穴(不図示)が形成され、当該長穴の内周部が下カム板部11bの外周面と係合する。フランジ部11cは、上刃2の長穴2a及び下刃3の長穴の短径(短手方向の内径)よりも大径であり、カム機構11が上刃2及び下刃3から抜けるのを防止する。カム機構11の上部には、第2のスプライン10が一体的に設けられている。フランジ部11cの中心軸は、第2のスプライン10の回転中心軸と一致する。図3及び図5に示すように、中心穴16は、第2のスプライン10の回転中心軸と同軸であり、第2のスプライン10、カム機構11、及びブレードホルダ5を貫通する。ブレードホルダ5には、ハウジング1側に突出するピン5aが所定数(図示の例では4つ)一体的に設けられている。
【0025】
図5に示すように、原動機7の出力軸(駆動軸)7aの先端部にはピニオン(ギヤ)8が設けられる。ピニオン8は、第1のスプライン9と噛合し、原動機7の回転を所定の減速比で第1のスプライン9に伝達する。第1のスプライン9は、例えば内側インボリュートスプラインであり、ハウジング1のギヤ収納空間1k内に支持される。具体的には、第1のスプライン9は、ハウジング1に固定された中心軸部材(ギヤシャフト)12に、止め輪13により抜け落ちないように回転自在に支持される。第1のスプライン9には、第2のスプライン10が噛合(スプライン嵌合)する。第2のスプライン10は、例えば外側インボリュートスプラインである。中心軸部材12は、ブレード組20に設けられた中心穴16を貫通し、ブレードホルダ5から下方に突出する。中心軸部材12の先端側外周面にはネジが形成されており(中心軸部材12の先端部がネジ部になっていて)、手動式締結具であるノブとしてのダイヤルノブ6が中心軸部材12に螺合することで、ブレード組20がハウジング1に対して着脱可能に装着される。原動機7の回転は、ピニオン8、第1のスプライン9、第2のスプライン10と伝達され、その結果として、第2のスプライン10と一体のカム機構11が回転する。カム機構11は、原動機7によって回転駆動され、原動機7の回転を刃2及び下刃3の往復動に変換する。
【0026】
図2及び図5に示すように、ハウジング1の前端側にはブレード組20の長手方向に延在し、ネジ15aに相対する位置に貫通穴31を有するブレード組支持部材30が配設(固着)されている。ブレード組支持部材30は、図12(A),(B),(C)に示すように、ハウジング1内に配置される固着部32及びハウジング1の外部(前方)に延在する延長部33を有するL字状に曲がった形状(例えば金属板)であり、固着部32の側縁にはスリット溝34が形成されていて、ハウジング1の内側に形成されたリブ25に嵌合する。貫通穴31は延長部33に形成されており、貫通穴31は、後述するブレード組20の回動可能範囲に対応するよう、ブレード組20の回動中心軸を中心とした長穴形状となっている。ブレード組20は、ブレード組側のネジ15a(固定部材)の貫通穴31を貫通した先端側に手動式締結具としてのノブナット35を係合(螺着)することでブレード組支持部材30に固定される。
【0027】
図11に示すように、ダイヤルノブ6は、ベース部6a、環状リブ6b、及びラチェット部6cを有する。ベース部6aは、側壁を有する略円板形状である。ベース部6aの中心部には、中心軸部材12と螺合するナット6dが一体的に設けられる(図5図6)。なお、ダイヤルノブ6は、ナット6dを除き例えば樹脂製である。ナット6dは例えば金属製である。環状リブ6bは、ベース部6aに立設され、ベース部6aの中心の周りを円周状に周回する。環状リブ6bの上端にはラチェット部6cが設けられる。図5に示すように、ハウジング1には緩み防止手段としての緩み止め片14b(例えば金属製)が設けられ、後述するが、図10に示すようにブレード組20の回動位置が基準回動位置に固定された際にブレードホルダ5の後部に設けられた貫通穴5bから突出した緩み止め片14bの下端部がダイヤルノブ6のラチェット部6cと係合する。この係合により、ダイヤルノブ6の緩み方向への回転が防止される。一方、ダイヤルノブ6は締付方向には容易に回転できる。緩み止め片14bは、ハウジング1の底面から下方に臨む操作部材14aを押すことで、ラチェット部6cとの係合が解除される。
【0028】
図2に示すように、ハウジング1の底面部には、第1の凹部1e、一対の第1の壁部1f、第2の凹部1g、一対の第2の壁部1h、ピンガイド凹部1i、及びピン嵌合凹部(係合部)1jが設けられる。各部は、ブレード組20の取付け作業、すなわち第1のスプライン9及び第2のスプライン10の歯同士を合わせて第1のスプライン9及び第2のスプライン10を相互に噛合させ、ブレード組20を所定の回動位置に固定する作業に関連する。
【0029】
第1の凹部1eは、第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に同軸かつ近接した未噛合状態において、第1のスプライン9及び第2のスプライン10の歯同士を合わせる際にブレードガイド4を回動可能とする(すなわちブレード組20を回動可能とする)ための空間を成す。第1の凹部1eの両側に位置する一対の第1の壁部1fは、ブレードガイド4の側面との係合(当接)により、前記未噛合状態におけるブレード組20の回動可能範囲の両端を定める(図9)。ピンガイド凹部1iは、ブレードホルダ5のピン5aと同数設けられる。各ピンガイド凹部1iは、前記未噛合状態においてブレード組20を回動させた際に各ピン5aが入り込むための空間を成す。ピンガイド凹部1iの内壁によっても、前記未噛合状態におけるブレード組20の回動可能範囲の両端を定めることができる。前記未噛合状態におけるブレード組20の回動可能範囲は、第2のスプライン10が第1のスプライン9に対してギヤの1ピッチ分以上回動可能な大きさとする。すなわち、前記回動可能範囲が第1のスプライン9及び第2のスプライン10のギヤの1ピッチ分以上となるように一対の第1の壁部1fの対向間隔、あるいはピンガイド凹部1iの内壁位置を定める。
【0030】
第2の凹部1gは、第1のスプライン9及び第2のスプライン10が噛合した噛合状態におけるブレードホルダ5の回動位置(すなわちブレード組20の回動位置)を、上刃2及び下刃3がハウジング1から真っ直ぐ前方に延びる位置(基準回動位置)に定めるために設けられる。すなわち、前記噛合状態において、上刃2及び下刃3がハウジング1から真っ直ぐ前方に延びるようにブレード組20及び第1のスプライン9の回動位置を調整すると(ブレード組20を基準回動位置に調整すると)、ブレードホルダ5が第2の凹部1gに嵌合する(図10)。そうすると、第2の凹部1gの両側に位置する一対の第2の壁部1hがブレードホルダ5の側縁と係合(当接)ないし近接対向し、これによりブレード組20の回動位置が基準回動位置に実質的に固定される。ピン嵌合凹部1jは、ブレードホルダ5のピン5aと同数設けられる。各ピン嵌合凹部1jには、前記噛合状態において基準回動位置に来たブレードホルダ5の各ピン5aが嵌合(係合)する。ピン嵌合凹部1jによっても、ブレード組20の回動位置を基準回動位置に実質的に固定できる。
【0031】
ハウジング1に対するブレード組20の好適な取付け手順を説明する。まず、底面が上を向くようにハウジング1を支持する。そして、第2のスプライン10を下にして、第2のスプライン10が第1のスプライン9と同軸になり、かつブレードガイド4がハウジング1の第1の凹部1e内に位置するように、ブレード組20をハウジング1に対して位置合わせする。この位置合わせは、ブレード組20の中心穴16にハウジング1から延びる中心軸部材12を通すことで容易に行える。位置合わせが済むと、第1のスプライン9及び第2のスプライン10が相互に同軸かつ近接した未噛合状態になる。その後、ブレード組20を回動させ(図7及び図9)、第1のスプライン9及び第2のスプライン10の歯の位置を合わせて両者を噛合させる。その際の回動可能範囲は、前述のように一対の第1の壁部1fあるいは各ピンガイド凹部1iの内壁により限定される。第1のスプライン9及び第2のスプライン10を相互に噛合させた後、ブレード組20を、図8に示すように上刃2及び下刃3がハウジング1から真っ直ぐ前方に延びる基準回動位置に調整する。すると、図10に示すようにブレードホルダ5がハウジング1の第2の凹部1gに嵌合し、またブレードホルダ5の各ピン5aが各ピン嵌合凹部1jに嵌合し、ブレード組20の回動位置が基準回動位置に固定される。その後、ハウジング1のカム機構11(往復動変換部)を収容する部分の底面側において、ブレードホルダ5を貫通して突出した中心軸部材12にダイヤルノブ6を螺合させ、かつハウジング1の上側においてブレード組支持部材30の貫通穴31を貫通したネジ15a先端部にノブナット35を螺着させれば、ハウジング1に対するブレード組20の取付けが完了する。ブレード組20をハウジング1から取り外す際には、操作部材14aを押して緩み止め片14bとダイヤルノブ6のラチェット部6cとの係合を解除した状態でダイヤルノブ6を緩み方向に回してダイヤルノブ6を中心軸部材12から取り外し、ノブナット35をネジ15aから取り外した後、ブレード組20を中心軸部材12から取り外せばよい。
【0032】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0033】
(1) ハウジング1にブレード組支持部材30を設けて、ブレード組20のハウジング1への固定を、手動式締結具としてダイヤルノブ6を用いる第1の取付部(中心軸部材12への取り付け)と、手動式締結具としてノブナット35を用いる第2の取付部(ブレード組支持部材30への取り付け)との2箇所で行うようにしたので、ダイヤルノブ6による1箇所で固定を行うのに比べて、ブレード組20をがたつき無くハウジング1に固定でき、ブレード組20の保持の安定化を図ることができる。とくに、ダイヤルノブ6を用いる第1の取付部と、ノブナット35を用いる第2の取付部がブレード(上刃2及び下刃3)の長手方向に配列されている(例えば前記第1の取付部の中心と前記第2の取付部の中心とが前記ブレードの中心軸線上に位置している)ので、ブレード組20の厚み方向に負荷が加わったときの耐久性の向上を図ることができる。
【0034】
(2) ブレード組20のハウジング1への固定を、第1の取付部のダイヤルノブ6と第2の取付部のノブナット35の複数の箇所で行うようにしたので、ダイヤルノブ6を取り外しただけではブレード組20がハウジング1から離脱することがない。また、ダイヤルノブ6はハウジング1の底面側に、ノブナット35はハウジング1の上面側に配されているから、ダイヤルノブ6を取り外した後、本体底面を下に向け、机や地面等の安定した場所に置いてノブナット35を取り外せば作業者の意図したタイミングでブレード組20を取り外すことができる。
【0035】
(3) ブレード組20の交換は、第1の取付部の手動式締結具としてダイヤルノブ6、及び第2の取付部の手動式締結具としてノブナット35を弛める又は締め付ける操作で行うことができ、工具レスであって作業性が良好である。
【0036】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について述べる。
【0037】
上記実施の形態では、ダイヤルノブ6とノブナット35を用いてブレード組20をハウジング1に固定しているが、ダイヤルノブ6を用いずに複数のノブナットを用いて行っても良い。例えば、中心軸部材12を挟んでブレード組20の長手方向の相反する向きに貫通穴を有するブレード組支持部材(一つの部品であっても複数の部品からなっても良い)を用い、ブレード組20側の固定部材に対して複数のノブナットを用いてブレード組20をブレード組支持部材に固定する構造としても良い。
【0038】
上記実施の形態では、ハウジング1に別の部品であるブレード組支持部材30を配設する構造としているが、ブレード組支持部材30はハウジング1と一体、即ちハウジング1の形状の一部がブレード組20の長手方向に延び、ブレード組20側の固定部材(ネジ等)に相対する位置に貫通穴を有するような構造であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 ハウジング、1a メインハンドル(リヤハンドル)、1b サブハンドル(フロントハンドル)、1c トリガスイッチ、1d 飛散防護カバー、1e 第1の凹部、1f 第1の壁部、1g 第2の凹部、1h 第2の壁部、1i ピンガイド凹部、1j ピン嵌合凹部(係合部)、1k ギヤ収納空間、2 上刃(第1のブレード)、2a 長穴(カム係合部)、3 下刃(第2のブレード)、4 ブレードガイド、5 ブレードホルダ、5a ピン、5b 貫通穴、6 ダイヤルノブ、6a ベース部、6b 環状リブ、6c ラチェット部、7 原動機、7a 出力軸、8 ピニオン(ギヤ)、9 第1のスプライン(第1のギヤ)、10 第2のスプライン(第2のギヤ)、11 カム機構、11a 上カム板部(第1のカム板部)、11b 下カム板部(第2のカム板部)、11c フランジ部、12 中心軸部材(ギヤシャフト)、13 止め輪、14a 操作部材、14b 緩み止め片、15a ネジ、15b ナット、16 中心穴、20 ブレード組、30 ブレード組支持部材、31 貫通穴、35 ノブナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12