【実施例】
【0084】
以下、実施例3は比較例4と読み替えるものとする。
[測定方法]
(1)融点(℃)
ポリマーの融点は、パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また、示差走査型熱量計において、融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
【0085】
(2)固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、次の方法で測定した。オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度η
rを、下記式により求めた。
・η
r=η/η
0=(t×d)/(t
0×d
0)
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η
0:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
3)
t
0:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
d
0:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
3)
次いで、相対粘度η
rから下記式により、固有粘度(IV)を算出した。
・IV=0.0242η
r+0.2634。
【0086】
(3)仮接着状態のシートの可動非晶量(%)
可動非晶量は、熱圧着一体化する前の仮接着状態のシートからランダムに試料2点を採取し、温度変調DSC(TA Instruments社製Q1000)を用いて、次の条件と式で測定と可動非晶量を算出し、平均値を算出した。また、完全非晶時の比熱変化量を0.4052J/g℃とした。
・測定雰囲気:窒素流(50ml/分)
・温度範囲 :0〜300℃
・昇温速度 :2℃/分
・試料量 :5mg
・可動非晶量[%]=(ガラス転移温度前後の比熱変化量[J/g℃])/完全非晶時の比熱変化量[J/g℃]×100。
【0087】
(4)平均単繊維直径(μm)
平均単繊維直径は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の単繊維の直径を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
【0088】
(5)不織布の目付(g/m
2)
目付は、30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の質量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
【0089】
(6)不織布の厚さ(mm)
厚さは、JIS L1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を0.01mm単位で厚さを測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
【0090】
(7)不織布の充填密度(−)
上記(5)、(6)でそれぞれ求めた目付(g/m
2)、厚さ(mm)、およびポリマー密度から、下記式を用いて算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。
【0091】
充填密度=目付(g/m
2)÷厚さ(mm)÷10
3÷ポリマー密度(g/cm
3)
なお、本発明の実施例におけるポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂のポリマー密度は1.38g/cm
3とした。
【0092】
(8)不織布の平滑度(秒)
平滑度は、ベック平滑度試験機を用い、JIS P8119(1998年版)に基づいて、不織布の表面、裏面についてそれぞれ5点の測定を実施した。5点の平均値の小数点以下第一位を四捨五入した値を表面と裏面の平滑度とした。ここで分離膜支持体として用いる際の、製膜面を表面、非製膜面を裏面とした。
【0093】
(9)不織布の沸騰水カール高さ(mm)
沸騰水カール高さは、不織布の任意の部分から縦(不織布長さ方向)25cm×横(不織布幅方向)25cmのサンプルを3個採取し、沸騰水中に5分間浸漬してから取り出し、平らな台上で不織布の平滑度が大きい面を上にして自然乾燥する。3個のサンプルそれぞれについて、両側辺の中央部の高さ(台との距離)を0.5mm単位で測定し、それらを平均し、小数点以下第二位を四捨五入して沸騰水カール高さを算出した。
【0094】
(10)不織布の引張強力(N/5cm)
引張強力は、JIS L1913(2010年版)の6.3.1に基づいて、5cm×30cmの不織布サンプルについて、つかみ間隔が20cmで、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点について強力を測定し、破断したときの強力を読み取り、少数点以下第一位を四捨五入した値を縦方向と横方向の引張強力とした。
【0095】
(11)製膜時のキャスト液裏抜け性
キャスト液裏抜け性は、作製したポリスルホン膜の裏面を目視で観察し、キャスト液の裏抜け性について、次の5段階で評価し、4〜5点を合格とした。
5点:キャスト液の裏抜けが全く見られない。
4点:わずかにキャスト液の裏抜けが見られる(面積比率5%未満)。
3点:キャスト液の裏抜けが見られる(面積比率5〜50%)。
2点:大部分でキャスト液の裏抜けが見られる(面積比率51〜80%)。
1点:ほぼ全面でキャスト液の裏抜けが見られる。
【0096】
(12)製膜時の膜折れ曲がり性
膜折れ曲がり性は、製膜時の巻き出しから巻き取りまでの分離膜支持体および膜の状態を目視で観察し、膜折れ曲がり性について、次の5段階で評価し、3〜5点を合格とした。
5点:膜折れ曲がりは全く見られない。
【0097】
4点:全長の10%未満で膜折れ曲がりが見られるが、巻き取りまでに元に戻り、折れ曲がっていない状態で巻き取られる。
【0098】
3点:全長の10〜50%で膜折れ曲がりが見られるが、巻き取りまでに元に戻り、折れ曲がっていない状態で巻き取られる。
【0099】
2点:全長の50%未満で膜折れ曲がりが見られ、折れ曲がった箇所は折れ曲がった状態で巻き取られる。
1点:全長の50%以上に渡って膜が折れ曲がり、折れ曲がった状態で巻き取られる。
【0100】
(13)分離膜落ち込み量(μm)
[流体分離素子]
ポリプロピレン製のネットからなる供給液流路材、海水淡水化用逆浸透膜、耐圧シート、および下記の透過液流路材を用い、有効膜面積40m
2のスパイラル型の流体分離素子(エレメント)を作製した。
【0101】
[透過液流路材]
溝幅が200μmで、溝深さが150μmで、溝密度が40本/インチで、そして厚さが200μmのポリエステル製シングルトリコット(ダブルデンビー編)を用いた。
【0102】
次に、作製した流体分離素子について、逆浸透圧が7MPaで、海水塩分濃度が3wt%で、運転温度が40℃の各条件で耐久性試験を実施し、1000時間運転後に流体分離素子を解体し、分離膜の透過液流路材への落ち込み量を測定した。落ち込み量は、1つの流体分離素子における任意の3点の分離膜断面について、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し測定し(単位:μm)、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。分離膜支持体と透過液流路材の重ね合わせる方向は、透過液流路材の溝方向に対し、分離膜支持体の不織布幅方向(横方向)が直交するようにした。
【0103】
[実施例1]
(芯成分)
固有粘度(IV)が0.65、融点が260℃、酸化チタンの含有量が0.3質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂を、水分率10ppmに乾燥したものを芯成分として用いた。
【0104】
(鞘成分)
固有粘度(IV)が0.66、イソフタル酸共重合率が11モル%、融点が230℃、酸化チタンの含有量が0.2質量%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を、水分率10ppmに乾燥したものを鞘成分として用いた。
【0105】
(紡糸・繊維ウエブ捕集)
上記の芯成分および鞘成分を、それぞれ295℃と290℃の温度で溶融し、口金温度が300℃条件で、芯成分と鞘成分の質量比率を80/20として、同心芯鞘型(断面円形)に複合して細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
【0106】
(予備熱圧着)
捕集された繊維ウエブを、上下1対の金属製フラットロール間に通し、各フラットロール表面温度が130℃で、線圧が490N/cmで予備熱圧着し、繊維径が10μm、目付が72g/m
2で、厚さが0.29mmで、可動非晶量が36%の仮接着状態のスパンボンド不織布(a)を得た。
【0107】
(熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(a)を、上が硬度(Shore D)91の樹脂製の弾性ロールで、中が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75の樹脂製の弾性ロールの1組の3本フラットロールの中−下間に通して熱圧着し、さらにその不織布を折り返して上−中間を通し熱圧着し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が29秒で、裏面の平滑度が11秒で、沸騰水カール高さが4.6mmのスパンボンド不織布を製造した。このときの3本フラットロールの表面温度は、上が130℃、中が190℃、下が140℃とし、線圧は1862N/cmとした。
【0108】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られたスパンボンド不織布50cm幅×10m長を、12m/minの速度で巻き出し、その上にポリスルホン(ソルベイアドバンスドポリマーズ社製の“Udel”(登録商標)−P3500)の16質量%ジメチルホルムアミド溶液(キャスト液)を45μm厚みで、室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中に室温(20℃)で10秒間浸漬した後、75℃の温度の純水中に120秒間浸漬し、続いて90℃の温度の純水中に120秒間浸漬し、100N/全幅の張力で巻き取り、ポリスルホン膜を作製した。このとき、キャスト液の裏抜けがわずかに見られ、また巻き出しから巻き取りの間に膜の折れ曲がりも無く、製膜性は良好であった。結果を表に示す。
【0109】
[実施例2]
目付と厚さを、表のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.15mmで、可動非晶量が38%の仮接着状態のスパンボンド不織布(b)を得た。
【0110】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(b)を2枚重ね合わせ、その積層不織布を、上が硬度(Shore D)91の樹脂製の弾性ロールで、中が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75の樹脂製の弾性ロールの1組の3本フラットロールの中−下間に通し熱圧着し、さらにその積層不織布を折り返して上−中間を通し熱圧着し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が35秒で、裏面の平滑度が13秒で、沸騰水カール高さが3.5mmのスパンボンド不織布を製造した。このときの3本フラットロールの表面温度は、上が130℃、中が190℃、下が140℃とし、線圧は1862N/cmとした。
【0111】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られたスパンボンド不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このとき、キャスト液の裏抜けが全く見られず、また巻き出しから巻き取りの間に膜の折れ曲がりも無く、製膜性は良好であった。結果を表に示す。
【0112】
[実施例3]
各フラットロールの表面温度を140℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.13mmで、可動非晶量が32%の仮接着状態のスパンボンド不織布(c)を得た。
【0113】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(c)を2枚重ね合わせ、実施例2と同様の条件で積層熱圧着を実施し、目付が72g/m
2で、厚さが0.09mmで、表面の平滑度が24秒で、裏面の平滑度が8秒で、沸騰水カール高さが6.2mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0114】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られたスパンボンド不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このとき、キャスト液の裏抜けが全く見られず、また90℃の温度の純水中に浸漬している間に全長の30%程度で膜の折れ曲がりが見られたものの、巻き取りまでに元に戻り製膜性は概ね良好であった。結果を表に示す。
【0115】
[実施例4]
芯成分樹脂の溶融温度を290℃とし、鞘成分樹脂の溶融温度を270℃とし、そして紡糸速度を4500m/minとしたこと以外は、実施例2と同様にして、平均繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.15mmで、可動非晶量が35%の仮接着状態のスパンボンド不織布(d)を得た。
【0116】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(d)を2枚重ね合わせ、実施例2と同様の条件で積層熱圧着を実施し、目付が72g/m
2で、厚さが0.09mmで、表面の平滑度が28秒で、裏面の平滑度が10秒で、沸騰水カール高さが4.9mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0117】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このときキャスト液の裏抜けが全く見られず、また90℃の温度の純水中に浸漬している間に全長の5%程度で膜の折れ曲がりが見られたものの、巻き取りまでに元に戻り製膜性は概ね良好であった。結果を表に示す。
【0118】
[実施例5]
積層熱圧着時の3本フラットロールの表面温度を、上が120℃、中が180℃、下が130℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、目付が72g/m
2で、厚さが0.10mmで、表面の平滑度が21秒で、裏面の平滑度が7秒で、沸騰水カール高さが7.7mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0119】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このときキャスト液の裏抜けが全く見られず、また90℃の温度の純水中に浸漬している間に全長の40%程度で膜の折れ曲がりが見られたものの、巻き取りまでに元に戻り製膜性は概ね良好であった。結果を表に示す。
【0120】
[実施例6]
芯成分と鞘成分の質量比率を85/15としたこと以外は、実施例2と同様にして、繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.15mmで、可動非晶量が38%の仮接着状態のスパンボンド不織布(e)を得た。
【0121】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(e)を2枚重ね合わせ、実施例2と同様の条件で積層熱圧着を実施し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が30秒で、裏面の平滑度が12秒で、沸騰水カール高さが4.1mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0122】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このときキャスト液の裏抜けが全く見られず、また90℃の温度の純水中に浸漬している間に全長の5%程度で膜の折れ曲がりが見られたものの、巻き取りまでに元に戻り製膜性は概ね良好であった。結果を表に示す。
【0123】
[実施例7]
口金温度を290℃、紡糸速度を4200m/minとしたこと以外は、実施例4と同様にして、繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.15mmで、可動非晶量が42%の仮接着状態のスパンボンド不織布(f)を得た。
【0124】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(f)を2枚重ね合わせ、実施例2と同様の条件で積層熱圧着を実施し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が37秒で、裏面の平滑度が14秒で、沸騰水カール高さが2.8mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0125】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られたスパンボンド不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このとき、キャスト液の裏抜けが全く見られず、また巻き出しから巻き取りの間に膜の折れ曲がりも無く、製膜性は良好であった。結果を表に示す。
【0126】
[実施例8]
口金温度を290℃、紡糸速度を4100m/minとしたこと以外は、実施例4と同様にして、繊維径が10μmで、目付が36g/m
2で、厚さが0.15mmで、可動非晶量が46%の仮接着状態のスパンボンド不織布(g)を得た。
【0127】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(g)を2枚重ね合わせ、実施例2と同様の条件で積層熱圧着を実施し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が40秒で、裏面の平滑度が15秒で、沸騰水カール高さが2.1mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0128】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られたスパンボンド不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このとき、キャスト液の裏抜けが全く見られず、また巻き出しから巻き取りの間に膜の折れ曲がりも無く、製膜性は良好であった。結果を表に示す。
【0129】
得られた不織布の特性は、表に示したとおりであり、実施例1〜8の不織布を分離膜支持体として用い分離膜を作製したところ、加工性は良好であり、さらに得られた分離膜を用いて流体分離素子を作製したところ、加工性は良好であった。また、作製した流体分離素子の耐久性評価を実施した結果、耐久性に優れたものであった。
【0130】
[比較例1]
各フラットロール表面温度を150℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維径10μm、目付が72g/m
2で、厚さが0.22mmで、可動非晶量が29%の仮接着状態のスパンボンド不織布(f)を得た。
【0131】
(熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(f)を、実施例1と同様の条件で熱圧着を実施し、目付が72g/m
2、厚さが0.10mm、表面の平滑度が17秒、裏面の平滑度が6秒、沸騰水カール高さが8.3mmのスパンボンド不織布を製造した。
【0132】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このときキャスト液の裏抜けがわずかに見られ、また90℃の温度の純水中に浸漬している間に全長の70%程度で膜の折れ曲がりが見られ、折れ曲がった状態で巻き取られ製膜性は不良であった。結果を表に示す。
【0133】
[比較例2]
固有粘度(IV)が0.65、融点が260℃、酸化チタンの含有量が0.3質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂を、水分率10ppmに乾燥し、295℃の温度で溶融し、口金温度300℃、断面円形にて細孔から紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して、移動するネットコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
【0134】
(予備熱圧着)
捕集した繊維ウエブを、上下1対の金属製フラットロール間に通し、各フラットロール表面温度が170℃で、線圧が490N/cmで予備熱圧着し、繊維径が10μm、目付が36g/m
2で、厚さが0.16mm、可動非晶量が36%の仮接着状態のスパンボンド不織布(g)を得た。
【0135】
(積層熱圧着)
得られた仮接着状態のスパンボンド不織布(g)を2枚重ね合わせ、その積層不織布を、上が硬度(Shore D)91の樹脂製の弾性ロールで、中が金属ロールで、下が硬度(Shore D)75の樹脂製の弾性ロールの1組の3本フラットロールの中−下間に通し熱圧着し、さらにその積層不織布を折り返して上−中間を通し熱圧着し、目付が72g/m
2で、厚さが0.12mmで、表面の平滑度が12秒で、裏面の平滑度が3秒で、沸騰水カール高さが10.4mmのスパンボンド不織布を製造した。このときの3本フラットロールの表面温度は、上が130℃、中が200℃、下が140℃とし、線圧は1862N/cmとした。
【0136】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このときキャスト液の裏抜けがわずかに見られ、また90℃の温度の純水中に浸漬している間にほぼ全長で膜の折れ曲がりが見られ、折れ曲がった状態で巻き取られ製膜性は不良であった。結果を表に示す。
【0137】
[比較例3]
(積層熱圧着)
実施例2と同様にして得た仮接着状態のスパンボンド不織布(b)を2枚重ね合わせ、上下1対の金属製フラットロールの間に通し熱圧着し、目付が72g/m
2で、厚さが0.08mmで、表面の平滑度が42秒で、裏面の平滑度が40秒で、沸騰水カール高さが2.9mmのスパンボンド不織布を製造した。このときの金属製フラットロールの表面温度は、上下ともに180℃とし、線圧は686N/cmとした。
【0138】
(分離膜形成)
[ポリスルホン膜]
得られた不織布50cm幅×10m長を用い、実施例1と同様の条件でポリスルホン膜を作成した。このとき巻き出しから巻き取りの間に膜の折れ曲がりは無かったものの、大部分でキャスト液の裏抜けが見られ、製膜性は不良であった。結果を表に示す。
【0139】
得られた不織布の特性は、表に示したとおりであり、比較例1〜3の不織布を分離膜支持体として用い分離膜を作製したところ加工性は不良であり、さらに該分離膜を用いて流体分離素子を作製したところ、比較例1と2は作製時に膜の折れ曲がりや丸まりが見られ加工性は不良であり、比較例3は膜を重ねた際に裏抜けした樹脂の摩擦が大きく加工性は不良であった。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
表中の略号は以下の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
co−PET:共重合ポリエチレンテレフタレート