(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492693
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電流センサユニット
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-13092(P2015-13092)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-138780(P2016-138780A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和幸
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 優
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑高
【審査官】
永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−213603(JP,A)
【文献】
特開平6−89823(JP,A)
【文献】
米国特許第4831327(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 19/00
H01F 38/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる一次導体が貫通する開口部を有した磁性体コアに巻回されたコイルによって一次導体から電源用電圧を取得する電源用変成器に、環状のロゴスキーコイルを用いて前記一次導体を流れる電流を計測する電流計測用変成器が組み合わされた電流センサユニットであって、
前記磁性体コアの開口部内に前記電流計測用変成器を配置し、
前記磁性体コアの軸心方向に対する前記環状のロゴスキーコイルの厚さは、前記磁性体コアの開口部の厚さ以下であることを特徴とする電流センサユニット。
【請求項2】
前記環状のロゴスキーコイルは、前記磁性体コアの開口部側面に沿って配置されることを特徴とする請求項1に記載の電流センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源用変成器に電流計測用変成器が組み合わされ、簡易な構成で小型化が可能で、電流計測における外乱の影響を抑えることができる電流センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電流を一次導体から絶縁して計測する際に、磁性体コアを使用することなく電流を検出するコアレス電流センサとして、ロゴスキーコイルがある。このロゴスキーコイルでは、一次導体が貫通するように空芯のコイルを配置すると、一次導体に流れる電流に対応した誘起電圧がコイルの両端に発生する。一次導体を流れる電流は、このロゴスキーコイルの誘起電圧を積分することによって得ることができる。このロゴスキーコイルは、磁気損失による発熱、飽和、ヒステリシスがなく、大電流計測では小型軽量化を図ることができる。
【0003】
特許文献1には、一次導体が貫通する開口部を有した磁性体コアに巻回されたコイルによって一次導体から電源用電圧を取得する電源用変成器に、ロゴスキーコイルを用いて前記一次導体を流れる電流を計測する電流計測用変成器が組み合わされた電流センサユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−326418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された電流センサユニットでは、電流計測用変成器を構成するロゴスキーコイルが、電源用変成器を構成する磁性体コアの軸心方向の一側面に沿って配置されている。このため、一次導体が貫通する電流センサユニットの開口部の厚さは、磁性体コアの軸心方向の厚さとロゴスキーコイルの軸心方向の厚さとの合計値となる。したがって、特許文献1に記載された電流センサユニットは、ロゴスキーコイルの取付によって大型化する。また、電流センサユニットの開口部の厚さが大きくなることから、開口部への一次導体の貫通配置の自由度が小さくなり、例えば、開口部を貫通する一次導体の形状設計の自由度が小さくなる。
【0006】
また、特許文献1では、ロゴスキーコイルを分割してロゴスキーコイルの体積を減少させ、ロゴスキーコイルの小型化を図っている。そして、分割したロゴスキーコイルは、中心部での単位長さ当たりの巻き数を少なくし、両端部での単位長さ当たりの巻き数を多くし、外乱の影響が小さくなるようにしている。この分割したロゴスキーコイルは、外乱の影響を小さくすることができるが、単位長さ当たりの巻き数が複雑であり、ロゴスキーコイルの構成が複雑なものとなる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源用変成器に電流計測用変成器が組み合わされる電流センサユニットであっても、簡易な構成で小型化が可能で、電流計測における外乱の影響を抑えることができる電流センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電流センサユニットは、電流が流れる一次導体が貫通する開口部を有した磁性体コアに巻回されたコイルによって一次導体から電源用電圧を取得する電源用変成器に、環状のロゴスキーコイルを用いて前記一次導体を流れる電流を計測する電流計測用変成器が組み合わされた電流センサユニットであって、前記磁性体コアの開口部内に前記電流計測用変成器を配置したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる電流センサユニットは、上記の発明において、前記磁性体コアの軸心方向に対する前記環状のロゴスキーコイルの厚さは、前記磁性体コアの開口部の厚さ以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる電流センサユニットは、上記の発明において、前記環状のロゴスキーコイルは、前記磁性体コアの開口部側面に沿って配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源用変成器を構成する磁性体コアの開口部内に電流計測用変成器を構成するロゴスキーコイルを配置し、磁性体コアの軸心方向の幅を小さくできるので、電流センサユニットの小型化が図れ、磁性体コアがロゴスキーコイルの磁気シールドとして機能するので、ロゴスキーコイルに対する外乱の影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である電流センサユニットの外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した電流センサユニットの構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した電流センサユニットのA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態である電流センサユニット1の外観構成を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した電流センサユニット1の構成を示す断面図である。さらに、
図3は、
図2に示した電流センサユニット1のA−A線断面図である。
図1〜
図3に示すように、電流センサユニット1は、一次導体2から電源用電圧を取得する電源用変成器10に、一次導体2を流れる電流を計測する電流計測用変成器20が組み合わせられている。
【0014】
電源用変成器10は、一次導体2が貫通する開口部3を有した磁性体コア11にコイル12が巻回され、コイル12の周囲は、コイル12を支持する非磁性絶縁体13で覆われる。一方、電流計測用変成器20は、周囲が非磁性絶縁体22で覆われて支持される環状のロゴスキーコイル21を有する。電流計測用変成器20は、磁性体コア11の開口部3内に配置される。また、ロゴスキーコイル21の開口には、一次導体2が貫通する。ロゴスキーコイル21は、磁性体コア11の開口部側面E1に沿って配置される。なお、電流計測用変成器20は、ロゴスキーコイル21の外周面の非磁性絶縁体22と、磁性体コア11の開口部側面E1の非磁性絶縁体13とが接着などで接合され、電源用変成器10に固定される。
【0015】
ここで、
図2に示すように、磁性体コア11の軸心方向(X方向)に対するロゴスキーコイル21の厚さW1は、磁性体コア11の開口部3の厚さW2以下であることが好ましい。ロゴスキーコイル21の厚さW1が磁性体コア11の厚さW2以下であると、ロゴスキーコイル21が磁性体コア11に覆われ、磁性体コア11が磁気シールドとして機能することによって、外乱の影響を抑えることができる。なお、従来の電流センサユニットは、磁性体コア11の開口部側面E1以外の外部側面E2に沿ってロゴスキーコイル21が配置されていたため、ロゴスキーコイル21が外乱の影響を受けやすかった。
【0016】
また、ロゴスキーコイル21の厚さW1が磁性体コア11の厚さW2以下であると、一次導体の軸心方向に対する電流センサユニット1の厚さは、磁性体コア11の厚さW2のみで決定される。すなわち、非磁性絶縁体13の厚さが薄い場合、電流センサユニット1の厚さは、磁性体コア11の厚さW2にコイル12の線径の2倍を加えたものとなる。一方、従来の電流センサユニットは、一次導体の軸心方向に対する磁性体コア11の一外部側面E2に沿ってロゴスキーコイル21が配置されていたため、従来の電流センサユニットの厚さは、少なくとも磁性体コア11の厚さW2とロゴスキーコイル21の厚さW1とを加えた厚さとなる。したがって、本実施の形態の電流センサユニット1の厚さは、従来の電流センサユニットに比較して小型化することができる。また、電流センサユニット1の厚さが小さくなることは、電流センサユニット1の開口部への一次導体2の貫通配置の自由度が大きくなり、例えば、電流センサユニット1の開口部を貫通する一次導体2の形状設計の自由度を大きくすることができる。なお、ロゴスキーコイル21の厚さW1が磁性体コア11の厚さW2以下でなくても、開口部3内のロゴスキーコイル21の厚さ分を小型化することができる。
【0017】
さらに、従来のロゴスキーコイルは、小型化を図るため、ロゴスキーコイルを分割していたが、各分割されたロゴスキーコイルは外乱の影響を抑えるために、中央部での単位長さ当たりの巻き数を少なくし、両端部での単位長さ当たりの巻き数を多くし、外乱の影響が小さくなるようにしていた。この結果、ロゴスキーコイルの単位長さ当たりの巻き数が複雑であり、結果的に電流センサユニットの構成が複雑なものとなっていた。
【0018】
なお、一次導体2に流れる電流は交流電流であり、ロゴスキーコイル21の誘起電圧は微分されたものであり、
図2に示すように、積分回路30によって誘起電圧を積分して一次導体2に流れる電流を計測する。また、積分回路30から出力された電流の実効値を計測する実効値回路31をさらに設けることが好ましい。一方、コイル12の誘起電圧は、電源回路40を介して所望電圧の電力を生成し、積分回路30、実効値回路31を含む各種回路に電源を供給する。
【0019】
また、上述した環状のロゴスキーコイル21は、空芯のコイルであるが、コイル内部に非磁性絶縁体を含ませてコイルを支持してもよい。また、ロゴスキーコイル21は、巻き線がワンターンを形成しないように巻き戻すことが好ましい。 この巻き戻しは、コイルの軸心を通る巻き戻し線を形成することによって実現され、ロゴスキーコイル21に鎖交する磁束による影響をなくすことができる。
【0020】
さらに、上述したロゴスキーコイル21は、コイルが物理的に連続して巻回されていたが、これに限らず、ロゴスキーコイル21は物理的に分割されたコイルが電気的に接続される構成としてもよい。例えば、特許文献1に記載されているように、4つの直線上のロゴスキーコイルに分割する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 電流センサユニット
2 一次導体
3 開口部
10 電源用変成器
11 磁性体コア
12 コイル
13,22 非磁性絶縁体
20 電流計測用変成器
21 ロゴスキーコイル
30 積分回路
31 実効値回路
40 電源回路
E1 開口部側面
E2 外部側面