特許第6492704号(P6492704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6492704ポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492704
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20190325BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20190325BHJP
【FI】
   C09D11/037
   C09D11/102
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-19491(P2015-19491)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-141754(P2016-141754A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成廣 治憲
(72)【発明者】
【氏名】野田 倫弘
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−147615(JP,A)
【文献】 特開2003−306629(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123124(WO,A1)
【文献】 特開2003−342509(JP,A)
【文献】 特開2004−323731(JP,A)
【文献】 特開平02−008268(JP,A)
【文献】 特開平07−232410(JP,A)
【文献】 特開2014−091849(JP,A)
【文献】 特開2006−037071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板にラミネートするためのポリエステルフィルム用インキ組成物であって、顔料(A)、バインダー樹脂(B)、添加剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有し、下記(1)および(2)を特徴とするポリエステルフィルム用インキ組成物。
(1)顔料(A)は、不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を含む。(2)添加剤(C)は、シラノール基をもつ平均粒子径1μm〜5μmのシリカ粒子(c1) およびシランカップリング剤(c2)を含む。
【請求項2】
バインダー樹脂(B)が、ポリウレタン樹脂(b1)を含み、
且つ、シランカップリング剤(c2)が、置換もしくは未置換のアミノ基含有のシランカップリング剤(c2−1)を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルム用インキ組成物。
【請求項3】
ポリウレタン樹脂(b1)が、分子内に少なくとも1つのエチレンイミン基を有し、
且つ、置換もしくは未置換のアミノ基含有のシランカップリング剤(c2−1)が、下記一般式1で表される化合物(c2−1−1)を含むことを特徴とする請求項2に記載のポリエステルフィルム用インキ組成物。
一般式1
【化1】


(式中、R1は、メトキシ基またはエトキシ基を表し、nは1〜6の整数を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換もしくは未置換のフェニル基または置換もしく
は未置換のアルキル基を表す。)
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載のポリエステルフィルム用インキ組成物を、ポリエステルフィルムに印刷してなる印刷物。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷物の印刷面に接着剤を介して金属板と貼付けてなる積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体からなる金属製缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物に関し、また該インキを塗布したポリエステルフィルムと金属製缶用の金属板とを接着剤を介して張り合わせた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属缶は高い酸素バリア性と遮光性を有し、強度にも優れることから、液体、固体を問わず様々な飲料や食品の容器として利用されてきた。金属缶は高い酸素バリア性と遮光性を有するため、プラスチックボトル等と比較しても中身を変質させることは少ない。しかし、外側から缶の中が確認できないため、そのままでは中身が分からないという問題がある。そのため、食品・飲料缶メーカーが自社の商品を外観で差別化するためには、缶外装への美粧性の付与が必要不可欠である。
【0003】
近年では、インキ組成物を印刷したポリエステルフィルムに、接着剤を介して金属板を貼り合わせた積層体を用いた、飲料缶や食品缶が実用化されている。この方法で得られる缶はラミネート缶とも呼ばれ、接着剤としては、例えば特開平11−301921号公報、特開平08−34289号公報、ポリエステル−エポキシ系やポリエステル−ポリイソシアネート系接着剤が用いられている。積層体は200℃以上の高温で焼き付けが行われ、その後成型されて滅菌処理としてレトルト工程を経る。
【0004】
インキ組成物をプラスチックフィルムへ印刷する方法としては様々な様式を使用することが可能であるが、特にポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物ではグラビア印刷方式が利用できる。グラビア印刷方式は高速印刷かつ高精細で大面積での印刷が可能であり、低コストでかつ生産性が高い。
【0005】
インキ組成物に含有される着色剤としては、優れた美粧性が得られるように、アルミニウム粒子等を使用した着色剤が使用される場合が多い。しかしながら、ラミネート缶に用いる印刷構成は多層の重ね刷りが多く、アルミニウム粒子を使用した顔料を含むインキ組成物を用いた場合、重ね刷り時の着肉不良(トラッピング不良)が発生しやすいという問題がある。
【0006】
また、アルミニウム粒子を着色剤として用いて得られたラミネート缶は、成型後に殺菌のための熱水によるレトルト処理を行った際、缶の接着剤層、印刷インキの印刷層、及び、プラスチックフィルムの各層間における接着性が低下しやすく、不良品などではデラミネーションとなるという問題があった。
【0007】
この問題を解決するためにアクリル樹脂で表面処理したアルミニウム粒子を使用する方法(特開2013−147615号公報)やセルロース誘導体で表面処理したアルミニウム粒子を使用する方法(特開2003−342509号公報)が提案されている。しかし、樹脂により表面処理したアルミニウム粒子は経時にてインキ組成物中での沈殿・ハードケーキ化が激しく、再分散して使用するには困難である。更には樹脂コーティングした分、アルミニウム本来の光沢感や輝度感が低下してしまい、美粧性が得られない。
【0008】
また、通常のアルミニウム粒子を用いたインキ組成物ではブロックイソシアネートおよびシランカップリング剤を使用する方法が提案されている(特許第4193405号公報)。しかし、ブロックイソシアネートとシランカップリング剤を併用した場合にはシランカップリング剤の加水分解過程で生成するアルコールがブロックイソシアネートと反応して逆に接着性が低下する場合がある。
【0009】
即ちアルミニウム粒子を含む顔料を有するインキ組成物を用いて得られたラミネート缶において、殺菌のために熱水によるレトルト処理を行った際、缶の金属表面、接着剤層、印刷インキの印刷層、及び、プラスチックフィルムの各層間における接着性の低下は、決定的な解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−301921号公報
【特許文献2】特開平08−34289号公報
【特許文献3】特開2013−147615号公報
【特許文献4】特開2003−342509号公報
【特許文献5】特許第4193405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、グラビア印刷などでの重ね刷り適性が良好であり、熱水レトルト処理後においても高い接着性を有するポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物を用いることで解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0013】
すなわち本発明は、金属板にラミネートするためのポリエステルフィルム用インキ組成物であって、顔料(A)、バインダー樹脂(B)、添加剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有し、下記(1)および(2)を特徴とするポリエステルフィルム用インキ組成物に関する。
(1)顔料(A)は、不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を含む。(2)添加剤(C)は、シラノール基をもつ平均粒子径1μm〜5μmのシリカ粒子(c1)およびシランカップリング剤(c2)を含む。
【0014】
また本発明は、バインダー樹脂(B)が、ポリウレタン樹脂(b1)を含み、
且つ、シランカップリング剤(c2)が、置換もしくは未置換のアミノ基含有のシランカップリング剤(c2−1)を含むことを特徴とする上記ポリエステルフィルム用インキ組成物に関する。
【0015】
また本発明は、ポリウレタン樹脂(b1)が、分子内に少なくとも1つのエチレンイミン基を有し、
且つ、置換もしくは未置換のアミノ基含有のシランカップリング剤(c2−1)が、下記一般式1で表される化合物(c2−1−1)を含むことを特徴とする上記ポリエステルフィルム用インキ組成物に関する。
一般式1
【化1】


(式中、R1は、メトキシ基またはエトキシ基を表し、nは1〜6の整数を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または置換もしくは未置換のフェニル基または置換もしく
は未置換のアルキル基を表す。)
【0016】
また本発明は、上記ポリエステルフィルム用インキ組成物を、ポリエステルフィルムに印刷してなる印刷物に関する。
【0017】
また本発明は、上記印刷物の印刷面に接着剤を介して金属板と貼付けてなる積層体に関する。
【0018】
また本発明は、上記積層体からなる金属製缶に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、グラビア印刷などでの重ね刷り適性が良好であり、かつ金属製缶用などの金属板と貼付けてなる積層体を成型後、熱水レトルト処理を行っても接着性が低下しないポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
本発明の特徴は顔料(A)、バインダー樹脂(B)、添加剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有するポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物であって、顔料(A)が不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を含み、更に添加剤(C)は、シラノール基をもつ平均粒子径1μm〜5μmのシリカ粒子(c1)およびシランカップリング剤(c2)を含むことである。
【0022】
本明細書において、シラノール基をもつ平均粒子径1μm〜5μmのシリカ粒子(c1)における平均粒子径は、コールターカウンター法によって求めた粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を表し、不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)における平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味する。
【0023】
シランカップリング剤(c2)は自身で加水分解してシラノール基が出来、それらが無機材料表面の水酸基と脱水縮合する性質を持っている。本発明ではアルミニウム粒子(a1)の表面の水酸基およびシラノール基を有するシリカ粒子(c1)を組み合わせることにより、シランカップリング剤(c2)の脱水縮合反応が、アルミニウム粒子(a1)間のみではなく、シリカ粒子(c1)間、およびアルミニウム粒子(a1)‐シリカ粒子(c1)間、と縮合反応サイトが複数になり、強固な凝集力を発生させる。そのため、ポリエステルフィルムあるいは接着剤、他のインキ層間で強い接着性が発現することを見出した。
【0024】
本発明における顔料(A)は不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を含む。不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)としては該当のものが適宜選択され、輝度感、隠ぺい性の点から粒子径は5μm〜20μmのものが好ましい。またハンドリングおよび安全性の観点からアルミニウム粒子は既存の溶剤との混合物(ペースト状)となっているものが好ましい。飽和脂肪酸で処理されたアルミニウム粒子はリーフィングタイプと呼ばれ、印刷面の表面にアルミニウム粒子が配向するため、印刷巻き取り時に裏移りしてしまうため、ブロッキング性の観点で好ましくない。また、不飽和脂肪酸としては、炭素数10〜24のアルケニル基もしくはアルキニル基を持つ脂肪酸が挙げられる。前記アルケニル基もしくはアルキニル基に含まれる不飽和基は、1〜3が好ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。アルミニウム粒子(a1)は、複数の不飽和脂肪酸で処理されていてもよい。
【0025】
更に顔料(A)は一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料併用することができる。例えば併用できる有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、などが挙げられる。更に具体的には耐熱性の観点からC.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメント レッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメント レッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、カーボンブラックなどがより好ましい。
【0026】
顔料(A)はインキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ組成物の総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、顔料(A)は不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子の他にも顔料を1種以上併用することができる。
【0027】
本発明におけるバインダー樹脂(B)は高分子材料ならば何でもよく、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、セルロース変性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、その含有量は、インキ組成物の総重量に対して5〜25重量%が好ましい。中でも特に好ましくはポリウレタン樹脂(b1)を含むものである。バインダー樹脂(B)にポリウレタン樹脂(b1)を含む場合、シランカップリング剤から生成するシラノール基と結合あるいは水素結合を形成し、ポリエステルフィルム、接着剤、あるいは他のインキ層と良好な接着性が発現する。
【0028】
ポリウレタン樹脂(b1)は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。例えば高分子ポリオール(b1−1)とポリイソシアネート(b1−2)からなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーとアミン系鎖延長剤(b1−3)を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂(b1)などが好ましい。
【0029】
高分子ポリオール(b1−1)としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられるが、なかでもポリエステルポリオール(b1−1−1)は高分子ポリオール(b1−1)100重量%中に50重量%以上含むものが好ましく、更にその他ダイマージオール、水添ダイマージオール、ひまし油変性ポリオールなどを併用しても良い。
【0030】
前記ポリエステルポリオール(b1−1−1)としては、例えば、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4−シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3,5−トリメチルペンタンジオール、2、4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−アルカンジオール、1,3−アルカンジオール、1−モノグリセライド、2−モノグリセライド、1−モノグリセリンエーテル、2−モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等のジオールとのエステル化反応により得られる縮合物等が挙げられ、なかでもバインダー樹脂として使用する場合は、アジピン酸と分岐構造を有するジオール(ネオペンチルグリコール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)からなるポリエステルポリオールが、顔料の分散安定性や耐レトルト物性や耐ブロッキング性、印刷適性を向上させる面で特に好ましい。これらのポリエステルポリオール(b1−1−1)は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。さらにヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0031】
本発明で使用するポリエステルポリオール(b1−1−1)の数平均分子量は、得られるポリウレタンの溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定され、通常は500〜100,000、好ましくは1000〜5,000の範囲内とするのがよい。該数平均分子量が500未満であればハードセグメントの量が多くなることによる溶解性の低下に伴い印刷適性が劣る傾向があり、他方100,000を越えるとハードセグメントの割合が少なくなり、乾燥性及び耐ブロッキング性が低下する傾向がある。なお、本発明に使用するポリオールの数平均分子量は、末端を水酸基として水酸基価から計算するものであり、(式1)により求められる。

(式1)ポリオールの数平均分子量=1000×56.1×水酸基の価数/水酸基価

本発明に用いるポリエステルポリオール(b1−1−1)の酸価は1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が1.0mgKOH/gより大きいと、ポリウレタン樹脂(b1)のワニスや印刷インキの経時増粘の傾向が大きくなるためである。
【0032】
高分子ポリオール(b1−1)はポリエーテルポリオール(b1−1−2)を含んでも良い。酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。特にポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコールは、アルコール系溶剤への溶解性が優れるため、ポリエステル系ポリウレタンに別の溶剤溶解性を付与することができる。これらの特性を発現させ、かつ耐水性などを低下させないためにポリエーテルポリオール(b1−1−2)の数分子量は700〜3000が好ましい。この中で、低温における安定性の観点から、酸化プロピレンからなるポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。しかしポリプロピレングリコールはポリエステルフィルムとの親和性が低いため、ポリエステルフィルムへの接着性の観点から、高分子ポリオール(b1−1)100重量%中のポリエーテルポリオール(b1−1−2)は50重量%以下であることが望ましい。
【0033】
本発明に使用されるポリイソシアネート(b1−2)としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4'−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ポリウレタン樹脂(b1)は、分子内に、エチレンイミン基を有することがより好ましい。ここで、エチレンイミン基は、アジリジンから水素原子を1つ取った1価の置換基である。ポリエステルフィルムは印刷する表面がコロナ放電処理されている場合が多く、フィルム表面にはカルボン酸基等の官能基が存在している。エチレンイミン基はこのカルボン酸基と反応し、フィルムとの接着性が飛躍的に向上させ、金属版に張り合わせた積層体におけるレトルト処理後のデラミネーションを抑制する。
【0035】
ポリウレタン樹脂中のエチレンイミン基は、ポリウレタン樹脂のいずれの部位に導入されても良く、例えば末端に導入されても良く、主鎖あるいは側鎖に導入されても良い。
【0036】
ポリウレタン樹脂にエチレンイミン基を導入する方法としては、例えば、水酸基とエチレンイミン基を有する化合物と他のジオールを混合し、ジイソシアネート化合物によりイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得て、その後に他のジアミン化合物をイソシアネート基含有プレポリマーと鎖延長反応をさせることにより導入する方法等が挙げられる。この場合、エチレンイミン基と1つの水酸基を有する化合物を用いた場合にはエチレンイミン基は樹脂末端に導入され、エチレンイミン基と複数の水酸基を有する化合物を用いた場合は主鎖骨格に導入される。
【0037】
エチレンイミン基と1つの水酸基を有する化合物の具体例としては、1‐(2‐ヒドロキシエチル)エチレンイミン、ビス(1-アジリジンプロパン酸)2‐[[3-(1‐アジリジニル)‐1‐オキソプロポキシ]メチル]‐2‐(ヒドロキシメチル)‐1、3‐プロパンジイル、1−フェニル−2−アジリジニルエタノール等が挙げられる。エチレンイミン基と複数の水酸基を有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパン‐トリ‐β‐アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン‐トリ‐β‐アジリジニルプロピオネート等が挙げられる。
【0038】
エチレンイミン基の量は、ポリウレタン樹脂(a)およびポリウレタン樹脂(b)を混合した樹脂固形分1g当たり一般式(1)で表されるエチレンイミン基を0.1×10- 3 〜10×10- 3 グラム当量の範囲が好ましい。0.1×10- 3 グラム当量を下回ると、印刷物の耐水性、即ち耐レトルト性が劣る。10×10- 3 グラム当量を上回るとインキ組成物の経時安定性が不良となる。
【0039】
本発明においては、公知の鎖延長剤を用い、ポリウレタン樹脂にウレア結合を導入することができる。アミン系鎖延長剤(b1−3)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また必要に応じて多官能のアミン系鎖延長剤も使用出来、具体的には、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3'-ジアミノジプロピルアミン)、N−(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン:(スペルミジン)、6,6−イミノジヘキシルアミン、3,7−ジアザノナン−1,9−ジアミン、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンが挙げられる。
【0040】
また、過剰反応停止を目的とした重合停止剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては例えば、1級、2級のアミノ基を有する化合物、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やアミノアルコール類等があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。この中で、1級、2級のアミノ基を有するアミノアルコール類は、末端停止剤として用いる場合、高温での反応を避けて、アミノ基のみ反応するよう制御する必要がある。これらの末端停止剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
ポリウレタン樹脂(b1)の合成法は、高分子ポリオール(b1−1)をポリイソシアネート(b1−2)と反応させたのちアミン系鎖延長剤(b1−3)および必要に応じて重合停止剤と反応させてポリウレタン樹脂にすることが好ましい。前記ポリウレタン樹脂(b1)は、高分子ポリオール(b1−1)とポリイソシアネート(b1−2)を必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であればウレタン化触媒を用いて10〜150℃の温度で反応させ(ウレタン化反応)、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーにアミン系鎖延長剤(b1−3)を反応させてポリウレタン樹脂(b1)を得るプレポリマー法、あるいは、高分子ポリオール(b1−1)とポリイソシアネート(b1−2)とアミン系鎖延長剤(b1−3)および(および重合停止剤)を一段で反応させてポリウレタン樹脂(b1)を得るワンショット法など公知の方法により製造することが出来る。また、アミン系鎖延長剤(b1−3)は、高分子ポリオール(b1−1)とともにポリイソシアネート(b1−2)とウレタン化反応で使用することもできる。
【0042】
プレポリマーを製造するに当たり、高分子ポリオール(b1−1)とポリイソシアネート(b1−2)との量は、ポリイソシアネート(b1−2)のイソシアネート基のmol数と高分子ポリオール(b1−1)の合計の水酸基のmol数の比であるNCO/OH比を1.1〜3.0の範囲となるようにすることが好ましい。この比が1.1より小さい場合はプレポリマーの分子量が伸び過ぎてしまい、鎖伸長反応が出来なくなり、3.0より大きい場合にはウレア結合が過剰になり、得られるプレポリマーの溶解性が低下する傾向が認められる。
【0043】
また、反応には溶剤を用いることが反応制御の面で好ましい。使用できる溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロルベンゼン、パークレンなどのハロゲン系炭化水素などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合し混合溶媒として用いることもできる。
【0044】
さらに、このウレタン化反応には触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオール化合物に対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0045】
上記で得られた末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとアミン系鎖延長剤(b1−3)であるジアミン、トリアミンなどとを10〜80℃で反応させ、末端に活性水素基を含有する高分子量のポリウレタン樹脂(b1)が得られる。
【0046】
重合停止剤を用いるときには、末端停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に末端停止剤を単独に添加して末端停止反応を行ってもよい。一方、末端停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。
【0047】
また、プレポリマー中のイソシアネート基の当量に対するアミン系鎖延長剤(b1−3)のアミノ基の合計mol数の比は1.01〜2.00、好ましくは1.03〜1.06の範囲となるようにして反応させる。この比が大きく、アミン系鎖延長剤(b1−3)の使用量が多い場合にはこれらが未反応のまま残存し、臭気が残りやすくなる傾向があり、この比が小さい場合には分子量が伸び過ぎてゲル化してしまう。
【0048】
ポリウレタン樹脂(b1)は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましい。10,000より小さいと、印刷物における耐ブロッキング性と耐溶剤性の確保が難しく、100,000より大きいと、本発明における溶剤への溶解性が劣ることから印刷適性の確保が難しい。
【0049】
ポリウレタン樹脂(b1)は、アミン価が1.0から20.0mgKOH/gであることが好ましい。アミン価が1.0より低いと、ポリエステルフィルムへの接着性の確保が難しく、20.0より大きいと、イソシアネート系硬化剤を添加した際のインキ安定性の確保が難しい。
【0050】
本発明における添加剤(C)はシラノール基を有する平均粒子径は1μm〜5μmのシリカ粒子(c1)およびシランカップリング剤(c2)を含むものである。
【0051】
シラノール基を有するシリカ粒子(c1)はシランカップリング剤(c2)との架橋反応という機能と、重ね刷りの印刷適性を向上させる機能を併せ持つ。架橋反応に関しては前述した通りであるが、重ね刷りではシリカ粒子(c1)は、印刷面を粗面にして表面張力を下げる働きがあるので、重ねるインキの濡れ広がり(レベリング性)が良くなり、綺麗に重ね印刷される。平均粒子径は1μm〜5μmの範囲であればよく、5μmより大きいと沈降を促進してしまい、1μmより小さいとレベリング性向上の効果が発現しない。添加量としてはインキ組成物100重量%に対して、0.1重量%〜2.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.3重量%〜1.0重量%である。
【0052】
有機材料との反応性および相互作用の強さの観点ではシランカップリング剤(c2)は置換もしくは未置換のアミノ基を含むもの(シランカップリング剤(c2‐1))が好ましく、アミノ基を介しての2量体となっていても良い。置換もしくは未置換のアミノ基を含有するシランカップリング剤(c2‐1)の中でも下記一般式(1)で表される構造のもの(c2−1−1)が好ましい。



一般式(1)
【化1】



(式中、R1はメトキシ基またはエトキシ基を表し、nは1〜6を表し、R2およびR3は水素原子または置換もしくは未置換のフェニル基または置換もしくは未置換のアルキル基を表す。)
【0053】
一般式(1)のR1は加水分解してシラノール基を形成する。そのシラノール基は無機材料表面(即ちシラノール基を有するシリカ粒子(c1)あるいはアルミニウム粒子(a1)など)、の水酸基と脱水縮合、および有機材料と水素結合し、置換もしくは未置換のアミノ基はポリエステルフィルム、接着剤およびバインダー樹脂(A)との結合あるいは水素結合を担う。そのため一般式(1)におけるR2およびR3はいずれか一方が水素原子であることが好ましく、他方は置換もしくは未置換のフェニル基もしくはアルキル基が好ましい。また、上記シランカップリング剤はインキ組成物100重量%に対して0.01重量%〜10.0重量%、好ましくは0.1重量%〜5.0重量%混合して用いられる。これより多い添加では副生成するメタノールないしエタノールが硬化反応を逆に阻害し、これより少ない添加量では十分な硬化反応が得られないことがある。
【0054】
本発明における置換もしくは未置換のフェニル基を具体的に例示すると、例えば、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、o−,m−およびp−アミノフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0055】
本発明において置換もしくは未置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等が挙げられる。
【0056】
添加剤(C)は、その他公知のものを適宜含むことができ、インキ組成物の製造においては必要に応じて公知の添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分などを使用することができる。
【0057】
本発明のインキ組成物に使用される有機溶剤(D)としては、トルエン、キシレンといった芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤など公知の溶剤を使用できる。
【0058】
本発明のインキ組成物における色相としては、アルミニウム粒子(a1)およびシリカ粒子(c1)のみ使用しても良いし、必要に応じて他の色相のインキ組成物(プロセス基本色として白の他に、黄、紅、藍、墨の合計5色、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色、更に透明黄、牡丹、朱、茶、パール)と混合して使用しても良い。
【0059】
顔料(A)は、インキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ組成物の総重量に対して1.0〜40.0重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を単独で使用する場合において添加量は好ましくはインキ組成物100.0重量%中に1.0重量%〜25.0重量%、更に好ましくは5.0重量%〜15.0重量%である。この範囲より多いと凝集力が不足するためレトルト処理にてデラミし、少ないと目的の輝度感が得られない。また、その他の顔料と不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を併用する場合は顔料の総和で1.0重量%〜40.0重量%、より好ましくは5.0重量%〜20.0重量%であり、顔料に対するアルミニウム粒子(a1)の重量比率は1:99〜99:1で適宜選択されるが、好ましくは30:70〜70:30である。
【0060】
顔料(A)を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、かつ、ラミネート適性の観点から10重量%以下でインキ中に含まれることが好ましい。さらに、0.1〜3重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0061】
本発明のインキ組成物は、ポリウレタン樹脂(b1)、顔料(A)などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂(b1)、および前記分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、更にポリウレタン樹脂(b1)、あるいは必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキ組成物を製造することができる。
【0062】
アルミニウム粒子(a2)は板状粒子であるため強い分散機(ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなど)ではその構造が変化してしまい、輝度感、隠ぺい性が低下してしまう可能性があるため、分散には透明メジウムあるいは他の色インキ混合物に徐々に添加しながら、ディスパー等で分散するのが好ましい。
【0063】
本発明のインキ組成物の製造方法について、顔料およびバインダー樹脂および有機溶剤からなる顔料分散体の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0064】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0065】
前記方法で製造されたインキ組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点からザーンカップ#4での粘度が10sec〜30sec程度、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から12sec〜22sec以下の範囲であることが好ましい。
【0066】
インキ組成物の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0067】
本発明のインキ組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で用いることができる。例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0068】
次に、本発明のインキ組成物を用いた印刷物に接着剤を介して金属板と張り合わせてなる積層体について説明する。本発明の積層体において、金属板と貼り合わせるフィルムは、ポリエステルフィルムであればよいが、エステル反復単位の75〜100重量%がエチレンテレフタレート単位からなるものが好適である。エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位としては、フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等のエステル単位を挙げることができる。ポリエステルフィルムは、本発明のインキ、更には接着剤との付着性を向上させるために、その表面はコロナ放電処理等の表面処理を施したものが好ましい。
【0069】
本発明において使用される金属板としては、熱延鋼板、冷延鋼板; 溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄− 亜鉛合金メッキ鋼板、亜鉛− アルミニウム合金メッキ鋼板、ニッケル− 亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル− 錫合金メッキ鋼板、ブリキ、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ターンメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板などの各種メッキ鋼板; ステンレススチール、ティンフリースチール、アルミニウム板、銅板、チタン板などの金属素材、及び必要に応じて、これらの金属素材に化成処理、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化膜処理などを行ったものを用いることができる。
【0070】
本発明における積層体の製造に用いられる接着剤としては、1液硬化型又は2硬化液型のポリアクリル樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ブロック化イシソアネート系接着剤およびこれらの併用系接着剤等が挙げられる。硬化反応の種類としては特に限定は無いが、ラミネート缶では焼き付け工程があるため、熱硬化反応によるものが好ましい。また、更に電子線やUV光線などによる硬化反応を補助的に用いても良い。
【0071】
本発明におけるポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物を印刷してなる印刷物に接着剤を介して金属板と張り合わせてなる積層体は、例えば、下記方法によって製造することができる。まず、厚さ5〜30μm程度のポリエステルフィルムのコロナ放電処理面に、前記本発明のインキ組成物をグラビア印刷方式にて乾燥膜厚0.3〜3μm程度となるように塗布し、必要に応じてタックフリーの状態になるまで40〜80℃の温度で乾燥させる。ついで、上記のようにして得られたインキ層を形成したポリエステルフィルムの印刷面に、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングなどそれ自体既知の塗装手段により接着剤を塗布し、150〜200℃ の温度で乾燥させる。上記のようにして得られたグラビアインキ層、接着剤層を有するポリエステルフィルムを、金属板と貼り合わせ、約150℃〜250℃の温度で短時間(通常、2秒以下程度)にて加熱ラミネートすることによって製造することができる。
【0072】
本発明におけるポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物を印刷してなる印刷物に接着剤を介して金属板と張り合わせてなる積層体は、飲料缶、食缶、雑缶、5ガロン缶などの缶用途やキャップなどの金属蓋用途に適する。さらに、魔法ビン、冷蔵庫外面などの家庭用機器の外面などにも適用できる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表わす。
【0074】
なお、水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰の無水酸でエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数である。酸価は、樹脂1g中に含有する酸基は中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で、測定方法は既知の方法でよく、一般的にはJIS K0070(1996年)に準じて行われる。アミン価の測定方法については、後述の通り行った。ポリウレタン樹脂の分子量(重量平均分子量)はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。アミン価の測定方法は、下記の通りである。
[アミン価の測定方法]
試料を0.5〜2g精秤する。(試料量:Sg)精秤した試料に中性エタノール(BDG中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.2mol/lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なう。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式1)によりアミン価を求めた。
(式1) アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S
【0075】
また、本実施例における銀インキとはアルミニウム粒子の光沢感(輝度感)が銀色を示し、金インキとは透明黄顔料(C.I.Pigment Yellow 83)とアルミニウム粒子の光沢感(輝度感)により金色を示す。
【0076】
(合成例1)
アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール(以下「PMPA2000」)200部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)46.7部およびトルエン61.7部を窒素気流下に80 ℃で4 時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液308部を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)20.2部、ジ−n−ブチルアミン(以下「DBA」)1.0部、トルエン280.5部およびメチルエチルケトン(以下「MEK」)280.5部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、アミン価6.1mgKOH/g、重量平均分子量35,000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0077】
(合成例2〜9)
アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタジオールから得られる数平均分子量1000、2000、および5000のポリエステルジオール(「PMPA1000」「PMPA2000」「PMPA5000」) を用意し、表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂溶液PU2〜PU9を得た。なお、表1 中の「PPA」とはアジピン酸と1,2―プロパンジオールとから得られるポリエステルジオール、「PCL」とはε−カプロラクトンを開環重合したポリカプロラクトンジオール、「PC」とはポリカーボネートジオール、「PPG」とはポリプロピレングリコールを指す。また、「TZ」はビス(1-アジリジンプロパン酸)2‐[[3-(1‐アジリジニル)‐1‐オキソプロポキシ]メチル]‐2‐(ヒドロキシメチル)‐1、3‐プロパンジイルを表し、「IPA」はイソプロパノールを表す。また本発明に使用したポリオールの数平均分子量は、水酸基価からポリマーが全てジオール分子であると仮定し、計算により求めた。
なお、合成例3、5、6、8および9はTZを使用し、ウレタンプレポリマーの合成段階でポリオールとイソシアネートと一緒に反応させる。
【0078】
【表1】
【0079】
(製造例1:銀インキ組成物の作成)
オレイン酸処理アルミニウムペーストTD280(東洋アルミニウム社製) 15 部、シラノール基を有するシリカ粒子(2.0μm:水澤化学工業株式会社製)1.0部、シランカップリング剤(トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン:東京化成社製)3.0部、ポリウレタン樹脂PU1を60部、MEK(メチルエチルケトン)/トルエン混合溶液21部の混合物を、ディスパー(500rpm)で10分撹拌して製造例1の金属板用銀インキ組成物R1を得た。
【0080】
(製造例2〜16:銀インキ組成物の作成)
表2-1に示す顔料、表1のポリウレタン樹脂(PU)および表2-1に記載する樹脂および添加剤を用い、製造例1と同様の方法により混合し、金属板用銀インキ組成物R2〜R16を得た。
なお、シリカ粒子としては、粒径が2.0μmおよび3.0μmのもの(水澤化学工業株式会社製)および0.5μm(コアフロント株式会社製)のものを使用した。
また、シランカップリング剤としては、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシランを用いた(いずれも東京化成社製)。トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランは、アミノ基を含有するシランカップリング剤(c2−1)に該当し、さらにトリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シランは、一般式(1)で表されるシランカップリング剤(c2−1−1)に該当する。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(塩ビ-酢ビ重合体)には、日信化学社製 ソルバインM5(固形分25%)を用いた。
【0081】
(製造例17:透明黄インキ組成物の作成)
ポリウレタン樹脂PU1を40部、C.I.Pigment Yellow 83を7部、MEK/トルエン混合溶液10部を混合し、ペイントシェーカーで1時間練肉した後、MEK/トルエン混合溶液43部を添加、混合して透明黄インキ組成物S1を得た。
【0082】
(製造例18:銀インキ組成物の作成)
オレイン酸処理アルミニウムペーストTD280(東洋アルミニウム社製) 15部、ポリウレタン樹脂PU3を60部、MEK(メチルエチルケトン)/トルエン混合溶液25部の混合物を、ディスパー(500rpm)で10分撹拌して製造例18の金属板用銀インキ組成物T1を得た。
【0083】
(製造例19〜33:銀インキ組成物の作成)
表2-2に示す顔料、表1のポリウレタン樹脂(PU)および表2-2に記載する樹脂および添加剤を用い、製造例18と同様の方法により混合し、金属板用銀インキ組成物T2〜T16を得た。
なお、シリカ粒子としては、粒径が0.5μm(コアフロント株式会社製)、2.0μm(水澤化学工業株式会社製)および8.5μmのもの(水澤化学工業株式会社製)を使用した。
また、シランカップリング剤としては、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシランを用いた(いずれも東京化成社製)。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(塩ビ-酢ビ重合体)には、日信化学社製 ソルバインM5(固形分25%)を用いた。
製造例19、23および25では、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネートとして、スミジュールBL3175(住化バイエル社製)を用いた。
【0084】
【表2-1】
【0085】
【表2-2】
【0086】
(製造例34〜49:金インキ組成物の作成)
金属板用銀インキ組成物R1〜R16をそれぞれ50部および透明黄インキ組成物S1を50部ディスパーで混合し、金属板用金インキ組成物U1〜U16を得た。
【0087】
(製造例50〜64:金インキ組成物の作成)
金属板用銀インキ組成物T1〜T16をそれぞれ50部および透明黄インキ組成物S1を50部ディスパーで混合し、金属板用金インキ組成物V1〜V16を得た。
【0088】
(実施例1)
<銀重ね印刷>
上記銀インキ組成物R1を用いて混合溶剤(トルエン:MEK:IPA=40:50:10) により 、粘度が17秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、レーザー版深35μm〜5μmのグラデーション版を備えたグラビア印刷機により、厚さ12μmのコロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績株式会社製)のコロナ放電処理面に印刷速度150m/minで2層重ね印刷し、印刷物W1を得た。
<金/銀重ね印刷>
上記金インキ組成物U1および銀インキ組成物R1を用いて混合溶剤(トルエン:MEK:IPA=40:50:10) により 、粘度が17秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、レーザー版深35μm〜5μmのグラデーション版を備えたグラビア印刷機により、厚さ12μmのコロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績株式会社製)のコロナ放電処理面に印刷速度150m/minで上記金インキ組成物と銀インキ組成物を重ね印刷し、印刷物X1を得た。
【0089】
(実施例2〜16、比較例1〜16)
<銀重ね印刷>
実施例1と同様の方法により、表3−1および表3−2に記載の銀インキ組成物R2〜R16およびT1〜T16を用いて、印刷物W2〜W16(実施例)およびY1〜Y16(比較例)を得た。
<金/銀重ね印刷>
実施例1と同様の方法により、表3−1および表3−2に記載の金インキ組成物U2〜U16、V1〜V16および銀インキ組成物R2〜R16およびT1〜T16を用いて、印刷物X2〜X16(実施例)およびZ1〜Z16(比較例)を得た。
【0090】
実施例1〜16および比較例1〜16にて得られた印刷物W1〜W16(実施例)およびY1〜Y16(比較例)、X2〜X16(実施例)およびZ1〜Z16(比較例)についてアルミニウム顔料再分散性、輝度、テープ接着性、耐ブロッキング性、耐レトルト性、およびトラッピング性の試験を行った。
【0091】
【表3-1】
【0092】
【表3-2】
【0093】
<アルミニウム顔料再分散性>
上記インキ組成物R1〜R16およびT1〜T16を25℃で7日間保存し、沈降したアルミニウムペーストをディスパーで再分散したときの再分散のしやすさを評価した。
○・・・・・・1分で再分散できる。
○△・・・・・5分で再分散できる。
△・・・・・・再分散に10分以上かかる。
△×・・・・・再分散は可能だが、部分的に再分散できない。
×・・・・・・再分散が困難。
○、○△は実用上問題がない範囲である。
【0094】
<輝度>
上記コロナ処理PETフィルムの印刷物W1〜W16およびY1〜Y16の35μm重ね部を小型光沢計マイクロトリグロス(反射角度60°)で評価して金属光沢を評価した。
輝度は光沢値100以上であれば実用上問題ない範囲である。
<テープ接着性>
上記コロナ処理PETフィルムの印刷物W1〜W16およびY1〜Y16の35μm重ね部を印刷直後に印刷面にセロハンテープを貼り付け5回ローラーで強く押し付けたのち、90°方向に素早く剥がしたときの印刷皮膜の外観状態を目視判定した。なお判定基準は次の通りとした。
○・・・全く剥がれなかった。
〇△・・・印刷皮膜の80%以上がフィルムに残った。
△・・・印刷皮膜の50〜80%がフィルムに残った。
△×・・・印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
×・・・・すべて剥がれた。
○、○△は実用上問題がない範囲である。
【0095】
<耐ブロッキング性>
印刷物W1〜W16およびY1〜Y16の35μm重ね部を用いて、上記コロナ処理PET印刷物の印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを重ねて、10kgf/cm2の加重をかけ、50℃‐80%RHの環境下に24時間放置させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を5段階評価した。
○・・・非印刷面へのインキの転移量0%。
○△・・・非印刷面へのインキの転移量10%未満。
△・・・転移量10%以上30%未満。
△×・・・転移量30%以上。
×・・・・全面密着。
○、○△は実用上問題がない範囲である。
【0096】
<耐レトルト性>
印刷物W1〜W16およびY1〜Y16の印刷面に、熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤を乾燥塗膜重量が5.5g/m2となるように塗布し、180℃で予備乾燥させた。次いで、缶用金属板としてティンフリースチール板を用い、接着剤層が設けられた前記印刷フィルムと缶用金属板とを接着層が缶用金属板と接するように重ね合わせ、ラミネーターを用いてロール圧5kg/cm2、ロール温度200℃ にて加熱ラミネートし、さらに210℃ で2分間加熱処理を施し、積層体を得た。
【0097】
得られた上記積層体を深絞りエリクセン成形機を使用して直径100mm、高さ10mm、12mmおよび14mmに絞り、125℃‐30分のレトルト処理を行い、外観(フィルムの剥離、ブリスターの発生)を目視で評価した。
○・・・・剥離無し。
○△・・・ごく僅かに剥離が見られる。
△・・・・絞り部で30%程度剥離。
△×・・・絞り部が60%剥離。
×・・・・前面剥離。
○、○△で実用上問題がない範囲である。
【0098】
<トラッピング性>
上記印刷物X1〜X16(実施例)およびZ1〜Z16(比較例)において、レーザー版深10μmにおける金インキ組成物/銀インキ組成物の重ね印刷効果(濡れ広がりの不良、がさつき)を評価した。
○・・・・銀インキの濡れ広がりが100%。
○△・・・銀インキの濡れ広がりが90%。
△・・・銀インキの濡れ広がりが50%。
△×・・・銀インキの濡れ広がりが30%。
×・・・・銀インキが網点になっている。
○、○△は実用上問題がない範囲である。
【0099】
評価結果から、顔料(A)、バインダー樹脂(B)、添加剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有するポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物であって、顔料(A)が不飽和脂肪酸で表面処理されたアルミニウム粒子(a1)を含み、添加剤(C)が、シラノール基をもつ平均粒子径1μm〜5μmのシリカ粒子(c1)およびシランカップリング剤(c2)を含むポリエステルフィルム貼付け金属板用インキ組成物が優れた重ね印刷適性を有し、かつ優れた美粧性(輝度)、テープ接着性、耐ブロッキング性、耐レトルト性、トラッピング性を有した印刷インキ組成物であることが分かった。