(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インフレーション製膜法により熱可塑性樹脂をシートとする製膜工程、複数の予熱ロールで予熱する予熱工程および延伸ロールを用いて延伸ロールの周速差により延伸する延伸工程を、この順に実施する延伸フィルムの製造方法であって、前記予熱工程において、最も製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(1)とすると、前記予熱ロール(1)のロール表面温度が次式(A)を満たすことを特徴とする延伸フィルムの製造方法。
・式(A):Tpr(1)≦Tss−5℃
(ここで、Tpr(1)は予熱ロール(1)のロール表面温度を表し、Tssはシートの幅方向の熱収縮の開始温度を表す。)
予熱工程において、2番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(2)とすると、前記予熱ロール(2)のロール表面温度が次式(B)を満たすことを特徴とする請求項1記載の延伸フィルムの製造方法。
・式(B):Tgs≦Tpr(2)≦Tgs+50℃
(ここで、Tpr(2)は予熱ロール(2)のロール表面温度を表し、Tgsはシートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。)
予熱工程において、n番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(n)として、n+1番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(n+1)とすると、予熱ロール(n)と予熱ロール(n+1)のロール表面温度が次式(C)を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の延伸フィルムの製造方法。
・式(C):Tpr(n)<Tpr(n+1)
(ここで、nは2以上の整数であり、Tpr(n)は予熱ロール(n)のロール表面温度を表し、Tpr(n+1)は予熱ロール(n+1)のロール表面温度を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の延伸フィルムの製造方法は、インフレーション製膜法により熱可塑性樹脂をシートとする製膜工程、複数の予熱ロールで予熱する予熱工程および延伸ロールを用いて延伸ロールの周速差により延伸する延伸工程を、この順に実施する延伸フィルムの製造方法であって、前記予熱工程において、最も製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(1)とすると、前記予熱ロール(1)のロール表面温度が次式(A)を満たすことが重要である。
・式(A):Tpr(1)≦Tss−5℃
(ここで、Tpr(1)は予熱ロール(1)のロール表面温度を表し、Tssはシートの幅方向の熱収縮の開始温度を表す。)
以下に、本発明を実施するための望ましい形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明の延伸フィルムの製造方法における製膜工程(以下、製膜工程という)では、延伸性や製造コストの観点から、溶融した熱可塑性樹脂を環状のダイから樹脂を筒状に押し出し、その中に空気を吹き込んで膨張させるインフレーション製膜法によって熱可塑性樹脂をシートとすることが重要であり、ドーナツ状の押出しダイとエアリングから構成される上向きのインフレーション製膜法や、冷却工程を備えた下向きインフレーション製膜法を用いることが好ましく、上向きのインフレーション製膜法を用いることが特に好ましい。また、本発明の延伸フィルムの製造方法においては、生産性の観点から、製膜工程と予熱工程の間に、製膜工程で得られたシートを一旦巻取り、巻き取ったシートを巻出す工程を含めてもよい。
【0012】
本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられる熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、得られた延伸フィルムの耐衝撃性や強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、多糖類、デンプンを含むポリマーなどの生分解性樹脂(詳細は後述する。)、ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン、エポキシ変性ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、および脂環式ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマーなどのその他の樹脂、およびこれらの樹脂の基となる単量体を共重合させて得られる共重合体が好ましく、脂肪族ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0013】
本発明の延伸フィルムの製造方法における予熱工程(以下、予熱工程という)では、製膜の安定性を高める観点から、複数の予熱ロールで未延伸シートを加熱することが重要である。
【0014】
また、予熱工程では、フィルムの幅方向の収縮を抑制する観点から、最も製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(1)とすると、前記予熱ロール(1)のロール表面温度が次式(A)を満たすことが重要である。
・式(A):Tpr(1)≦Tss−5℃
(ここで、Tpr(1)は予熱ロール(1)のロール表面温度を表し、Tssはシートの幅方向の熱収縮の開始温度を表す。)
ここで、シート(フィルム)の幅方向とはシート(フィルム)の搬送面に平行であり、フィルム製造時にシート(フィルム)が進行する方向と直交する方向をいう。
【0015】
また、同様の観点から、予熱ロール(1)のロール表面温度を前述の通りとした上で、2番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(2)とすると、前記予熱ロール(2)のロール表面温度が次式(B)を満たすことがより好ましい。
・式(B):Tgs≦Tpr(2)≦Tgs+50℃
(ここで、Tpr(2)は予熱ロール(2)のロール表面温度を表し、Tgsはシートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。)
さらに、同様の観点から、予熱ロール(1)及び/又は予熱ロール(2)のロール表面温度を前述の通りとした上で、n番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(n)として、n+1番目に製膜工程に近い位置の予熱ロールを予熱ロール(n+1)とすると、予熱ロール(n)と予熱ロール(n+1)のロール表面温度が次式(C)を満たすことがより好ましい。
・式(C):Tpr(n)<Tpr(n+1)
(ここで、nは2以上の整数であり、Tpr(n)は予熱ロール(n)のロール表面温度を表し、Tpr(n+1)は予熱ロール(n+1)のロール表面温度を表す。)
なお、フィルムの幅方向の収縮を抑制する観点からは、予熱ロール(1)、予熱ロール(2)、予熱ロール(n)、及び予熱ロール(n+1)のロール表面温度が式(A)〜式(C)の全てを満たす態様が、最も好ましい。
【0016】
本発明の延伸フィルムの製造方法における延伸工程(以下、延伸工程という)では、1本の延伸ロールによる1段階延伸を行っても、複数の延伸ロールによる多段階延伸を行ってもよい。延伸ロールのロール表面温度は、製膜安定性の観点から、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度〜シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度+60℃であることが好ましい。ここで、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度とは、インフレーション製膜法により得られたシートから5mgのサンプルを採取し、セイコー電子(株)製示差走査熱量計RDC220型を用いて、前記サンプルを室温23℃から昇温速度20℃/分で280℃まで昇温させ、280℃で5分間保持した後、液体窒素で急冷し、再度室温より昇温速度20℃/分で昇温させて必要熱量を測定して、得られた吸発熱曲線のガラス転移温度を示す曲線の段差が現れる温度を指す。なお、曲線の段差が複数確認される場合は、最も高温の段差が現れる温度を、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度とした。
【0017】
また、延伸工程における延伸倍率は、後述の空孔率、強度向上、および引裂き性向上の観点から、2〜10倍であることが好ましく、2〜7倍であることがより好ましい。
【0018】
本発明の延伸フィルムの製造方法においては、延伸により緊張状態となった分子構造を安定させる観点から、延伸工程の後に、冷却工程および熱処理工程をこの順に実施することが好ましい。なお、冷却工程とは、延伸工程を経て得られた延伸フィルムを冷却する工程を指し、熱処理工程とは、冷却された延伸フィルムを加熱する工程を指す。
【0019】
冷却工程では、ロール表面温度が5〜40℃である冷却ロールにより延伸フィルムを冷却することが好ましく、また、冷却ロールの本数は1本でも複数本でも好ましく採用することができる。
【0020】
熱処理工程では、延伸フィルムの加工性の観点から、ロール表面温度が50〜200℃である熱処理ロールを用いてフィルムを加熱することが好ましく、50〜150℃である熱処理ロールを用いることがより好ましく、50〜100℃である熱処理ロールを用いることが特に好ましい。
【0021】
また、熱処理工程では、延伸フィルムの熱収縮を抑制するために弛緩処理を行うことも好ましく、その場合の弛緩処理量は、0.1%以上30%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の延伸フィルムの製造方法で得られた延伸フィルムは、延伸フィルムの耐水性と透湿性を両立させる観点から、その空孔率が5〜40%であることが好ましい。延伸フィルムの空孔率が40%を超えると、延伸フィルムの耐水性が不足することがあり、延伸フィルムの空孔率が5%未満になると、延伸フィルムの透湿性が不十分となることがある。なお、延伸フィルムが十分な耐水性を保つ観点から、空孔率の上限は30%がより好ましい。また、延伸フィルムが十分な透湿性を確保する観点から、空孔率の下限は10%がより好ましい。
【0023】
延伸フィルムの空孔率を5〜40%とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り得に制限されないが、例えば、後述の通り、好ましい量の充填剤(Y)を加え、延伸倍率を好ましい範囲として延伸フィルムを製造することが挙げられる。また、後述の通り、好ましい種類および含有比率で、ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)を組み合わせることによっても、空孔率を調整することができる。
【0024】
本発明の延伸フィルムの製造方法で得られた延伸フィルムは、生分解性樹脂(X1)を含むことが好ましい。ここで、生分解性樹脂とは、JIS K6950:2000(ISO14851)、JIS K6951:2000(ISO14852)、JIS K6953−1:2011(ISO14855)、JIS K6953−2:2010(ISO14855)、JIS K6955:2006(ISO17556)のいずれかの方法で評価した結果、1年以内に60%以上の生分解度を有することが確認された樹脂を意味する。
【0025】
本発明の延伸フィルムの製造方法においては、前述の生分解性樹脂の要件を満たす樹脂であれば、特に制限されることなしに生分解性樹脂(X1)として用いることができる。生分解性樹脂(X1)の具体例としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、多糖類、デンプンを含むポリマーおよびポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートおよびポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)などが挙げられる。
【0027】
脂肪族芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)およびポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)などが挙げられる。
【0028】
多糖類の具体例としては、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂およびキトサンなどのグルコサミン系樹脂が挙げられる。
【0029】
デンプンを含むポリマーの具体例としては、熱可塑性デンプンやノバモント社の生分解性樹脂「Mater−Bi(登録商標)」などが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、生分解性樹脂(X1)としては、バイオマス性、コストおよび加工性などの観点から、ポリ乳酸系樹脂が好ましく用いられ、後述のポリ乳酸系樹脂(x1)がより好ましく用いられる。ポリ乳酸系樹脂の市販品としては、Nature Works社製(Ingeo(登録商標) Biopolymer(ポリ乳酸樹脂))が挙げられる。
【0031】
ポリ乳酸系樹脂(x1)とは、L−乳酸ユニットおよび/又はD−乳酸ユニットを主たる構成成分とする重合体を指し、ここで、主たる構成成分とするとは、重合体100質量%中において乳酸ユニットの質量割合が最大であることを意味する。乳酸ユニットの質量割合は、重合体全体を100質量%としたときに70質量%〜100質量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるポリL−乳酸とは、ポリ乳酸中の全乳酸ユニットを100mol%としたときに、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。一方、ポリD−乳酸とは、ポリ乳酸重合体中の全乳酸ユニットを100mol%としたときに、D−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。
【0033】
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。具体的には、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が大きくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低下して非晶に近づき、逆に、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が小さくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなる。同様に、ポリD−乳酸も、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。具体的には、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が大きくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低下して非晶に近づき、逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が小さくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなる。
【0034】
本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は、延伸フィルムの機械強度を維持する観点から、全乳酸ユニットを100mol%としたときに80〜100mol%であることが好ましく、85〜100mol%であることがより好ましい。
【0035】
また、生分解性樹脂(X1)として用いられるポリ乳酸系樹脂(x1)は、結晶性ポリ乳酸系樹脂(x11)と非晶性ポリ乳酸系樹脂(x12)の混合物であることが好ましい。ここで、結晶性ポリ乳酸系樹脂(x11)とは、ポリ乳酸系樹脂を100℃の温度の加熱下24時間放置した後に、昇温速度20℃/分の条件で25℃から250℃で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解ピークが観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。非晶性ポリ乳酸系樹脂(x12)とは、同様の条件で測定を行った場合に、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
【0036】
ポリ乳酸系樹脂(x1)は、乳酸と乳酸以外の他の単量体ユニットを共重合させて得られる重合体であってもよい。ここで、他の単量体ユニットとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、および1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。なお、本発明の延伸フィルムの製造方法により得られた延伸フィルムを生分解性が必要な用途に使用する際には、上記した単量体ユニットの中でも、生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
【0037】
上記の他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂(x1)の重合体中の単量体ユニット全体を100mol%としたときに、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。
【0038】
また、ポリ乳酸系樹脂(x1)は、主成分がポリL−乳酸の場合はポリD−乳酸を、また、主成分がポリD−乳酸の場合はポリL−乳酸を、混合したものとすることも好ましい態様である。混合するポリD−乳酸またはポリL−乳酸の量は、延伸フィルム中のポリ乳酸系樹脂(x1)の合計を100質量%としたときに、20質量%以上50質量%未満が好ましく、30質量%以上50質量%未満がより好ましい。このようにポリD−乳酸またはポリL−乳酸を混合することで、形成されるステレオコンプレックス結晶は、通常のポリ乳酸の結晶(α結晶)よりも融点が高くなるため、延伸フィルムの耐熱性が向上する。なお、ここでいう主成分とは、延伸フィルム中のポリ乳酸系樹脂(x1)の合計を100質量%としたときに、50質量%を超える成分(ポリL−乳酸またはポリD−乳酸)のことを意味する。
【0039】
本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるポリ乳酸系樹脂(x1)の質量平均分子量は、延伸フィルムの実用的な機械特性、耐水性、および分解性を満足させる観点から、50,000〜240,000であることが好ましく、60,000〜200,000であることがより好ましく、70,000〜160,000であることが特に好ましい。ここでいう質量平均分子量とは、クロロホルム溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0040】
本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられる熱可塑性樹脂がポリ乳酸系樹脂(x1)を含む場合、ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)をさらに含むことにより、得られた延伸フィルムの透湿性と分解性を向上させることができる。
【0041】
ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)としては、生分解性樹脂(X1)として例示したポリ乳酸系樹脂以外の樹脂の他、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ変性ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、オレフィン−アクリル共重合ポリマー、エポキシ変性オレフィン−アクリル共重合ポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、および樹脂系の可塑剤(x21)などを使用することができる。
【0042】
熱可塑性樹脂(x2)として好適な樹脂系の可塑剤(x21)の具体例としては、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリアルキレンエーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤およびアクリレート系可塑剤などが挙げられる。
【0043】
このような可塑剤の中でも、延伸フィルム全体の生分解性を維持する観点からは、生分解性を有するものを用いることが好ましい。さらに、可塑剤の耐ブリードアウト性、延伸フィルムの耐熱性、および耐ブロッキング性の観点からは、例えば数平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールなど、常温(20℃±15℃)で固体状、すなわち、融点が35℃を超えるものを用いることが好ましい。また、生分解性樹脂(X1)であるポリ乳酸系樹脂(x1)との溶融加工温度を合わせるという観点からは、融点が150℃以下であるものを用いることが好ましい。
【0044】
上記3つの観点から、ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)として使用される樹脂系の可塑剤(x21)は、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸系セグメントとを有するブロック共重合体、および/又はポリエステル系セグメントとポリ乳酸系セグメントとを有するブロック共重合体であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の延伸フィルムの製造方法において、ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)としては、前記樹脂系の可塑剤(x21)の他に樹脂系の可塑剤以外の熱可塑性樹脂(x22)が好ましく用いられる。
【0046】
樹脂系の可塑剤以外の熱可塑性樹脂(x22)は、脂肪族ポリエステル系樹脂および脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂であることが特に好ましい。なお、樹脂系の可塑剤以外の熱可塑性樹脂(x22)における脂肪族ポリエステル系樹脂には、ポリ乳酸系樹脂(x1)は含まないものとする。
【0047】
好ましく用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンサクシネート系樹脂が挙げられ、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂としてはポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)が挙げられる。特に、ポリブチレンサクシネート系樹脂が最も好ましく用いられる。
【0048】
本発明の延伸フィルムの製造方法で得られた延伸フィルムは、分解性と耐水性を両立させる観点から、充填剤(Y)を含むことが好ましい。ここで、充填剤(Y)とは、諸性質を改善するために基材として加えられる物質、あるいは増量、増容および製品のコスト低減などを目的として添加される不活性物質をいう。このような充填剤(Y)としては、無機充填剤および/または有機充填剤が挙げられる。
【0049】
無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムおよび硫酸カルシウムなどの各種硫酸塩、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、アルミナなどの各種酸化物、その他、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、珪酸塩鉱物、ヒドロキシアパタイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイトおよびゼオライトなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、塩化リチウムおよびフッ化リチウムなどの各種塩などを挙げることができる。
【0050】
無機充填剤の市販品については、炭酸カルシウムとして、味の素ファインテクノ社製の商品名“トップフローH200”、丸尾カルシウム社製の商品名“カルテックスR”、および三共製粉社製の商品名“TOR−2018”が挙げられる。延伸フィルムの全成分100質量%中に、充填剤(Y)を1〜70質量%含むことが好ましい。延伸フィルムの全成分100質量%中に充填剤(Y)を1〜70質量%含むことで、分解性、耐水性に優れた延伸フィルムとすることができる。
【0051】
また、有機充填剤の例としては、シュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガンおよびマグネシウムなどのテレフタル酸塩、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸およびメタクリル酸などのビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂および熱硬化性フェノール樹脂などを含む有機微粒子、木粉やパルプ粉などのセルロース系粉末、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材および衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維およびココナツ繊維などの植物繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、およびアクリル繊維などの合成繊維などを挙げることができる。
【0052】
これらの充填剤(Y)の中でも、延伸フィルムの透湿性向上、強度や伸度等の機械特性の維持、および低コスト化の観点から、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、クレー、およびモンモリロナイトが好ましく用いられる。
【0053】
無機充填剤又は有機充填剤の平均粒径は、延伸フィルムの多孔化、透湿性向上の観点から、0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜8μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜3μmであることが最も好ましい。充填剤(Y)の平均粒径を0.01μm以上とすることにより、充填剤を延伸フィルム中に高充填することが可能となり、また、平均粒径を10μm以下とすることにより、延伸フィルムの延伸性が良好となる。その結果、延伸フィルムの多孔化、透湿性向上が可能となる。なお、ここでいう平均粒径とは、レーザー回折散乱式の方法で測定される累積分布50%平均粒子径とする。
【0054】
また、充填剤(Y)は、延伸フィルム中に充填剤(Y)を均一に分散させる観点から、必要に応じて、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、オキサゾリン基およびリン酸エステル基などから選択される少なくとも1種以上の官能基を有する化合物で表面処理することが好ましい。表面処理した充填剤を用いることにより、充填剤(Y)とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との親和性が向上し、充填剤(Y)の凝集が抑制されて分散性が向上するため、延伸フィルム中に充填剤(Y)を均一に分散させることが可能となる。
【0055】
また、延伸フィルム中での充填剤(Y)の分散性を向上させるため、本発明の延伸フィルムの製造方法で用いる組成物には、分散剤を添加することも可能である。
【0056】
また、充填剤(Y)の含有量は、延伸フィルムの全成分を100質量%としたときに、10〜65質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0057】
本発明の延伸フィルムの製造方法により得られた延伸フィルムは、耐水性と分解性に優れた延伸フィルムであり、耐水性と分解性を必要とする、マルチフィルムなどの農業用材料や薫蒸シートなどの林業用材料、紙おむつ、ナプキンおよびライナーなどの衛生材料、レジ袋、ゴミ袋、食品用、および工業製品用などの各種包装材料などに好適に使用される。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0059】
[測定および評価方法]
(1)シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)
インフレーション製膜法により得られたシートから5mgのサンプルを採取し、セイコー電子(株)製示差走査熱量計RDC220型を用いて、前記サンプルを室温23℃から昇温速度20℃/分で280℃まで昇温させ、280℃で5分間保持した後、液体窒素で急冷し、再度室温より昇温速度20℃/分で昇温させて必要熱量を測定した。
得られた吸発熱曲線の、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す曲線の段差が現れる温度を、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)とした。なお、ガラス転移温度ピークが複数確認される場合は、最も高温の段差を、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)とした。
【0060】
(2)シートの幅方向の熱収縮の開始温度(℃)
インフレーション製膜法により得られたシートから、シートの幅方向の長さが25mm、シートの長手方向の長さが4mmである短冊状のサンプルを切り出し、熱機械分析装置(SII社製 TMA6100)を用いて、荷重29.6mN/mm
2、昇温10K/分、サンプル長15mm設定の条件で収縮が開始される温度を測定した。前記の収縮が開始される温度を、シートの幅方向の熱収縮の開始温度とした。なお、シートの長手方向とは、シート製造時にシートが進行する方向をいう。
【0061】
(3)延伸フィルムの空孔率(%)
延伸フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気下で比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をその延伸フィルムの比重(ρ)とした。
【0062】
次に、前記試料を220℃、5MPaの条件で熱プレスし、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作製した。このようにして得られたシートの比重を上記の方法で同様に3回測定し、平均値を比重dとした。延伸フィルムの比重ρと空孔を完全に消去したシートの比重dから、次の式により空孔率を算出した。
・空孔率(%)=〔(d−ρ)/d〕×100
(4)延伸フィルムの目付量(g/m
2)
延伸フィルムをA4サイズ(210mm×297mm、0.06237m
2)の大きさに切取り、質量を測定して、次の式により目付量を算出した。
・目付量(g/m
2)=A4サイズの質量(g)×(1(m
2)/0.06237(m
2))
(5)延伸安定性
インフレーション製膜法で製膜したシートを、延伸工程で延伸した際に、安定して延伸できたフィルムの長さより、次のように判定を行った。本発明では、○と△を合格とした。
○:1000m以上
△:500m以上1000m未満
×:500m未満
(6)ロール表面温度(℃)
各ロールの表面を横河メータ&インスルメンツ株式会社製DIGITAL THERMOMETER(TX10)で測定した。
測定は、ロールの回転を停止して、ロールの中央部分で行った。
【0063】
[熱可塑性樹脂(A)]
・熱可塑性樹脂(A1−1)
ポリ乳酸系樹脂(x1)、質量平均分子量=200,000、D体含有量=1.4mol%、融点=166℃の結晶性ポリ乳酸系樹脂(x11)
・熱可塑性樹脂(A1−2)
ポリ乳酸系樹脂(x1)、質量平均分子量=200,000、D体含有量=12.0mol%、融点=無しの非晶性ポリ乳酸系樹脂(x12)
上記の質量平均分子量は、日本Warters(株)製、Warters2690を用い、ポリメチルメタクリレートを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。
【0064】
また、上記の融点は、ポリ乳酸系樹脂(x1)を100℃の温度の熱風オーブン中で24時間加熱させた後に、セイコーインスツル社製示差走査熱量計RDC220を用い、試料5mgをアルミニウム製受皿にセットし、25℃から昇温速度20℃/分で250℃の温度まで昇温した際の結晶融解ピークのピーク温度として求めた。
【0065】
[ポリ乳酸系樹脂(x1)以外の熱可塑性樹脂(x2)]
・熱可塑性樹脂(a2−1)
ポリブチレンサクシネート系樹脂(三菱化学社製、商品名“GSPla”(登録商標)AZ91PN)樹脂系の可塑剤以外の熱可塑性樹脂(x22)である。
・熱可塑性樹脂(a2−2)
数平均分子量が8,000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.05質量部とを混合し、撹拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気下160℃の温度で3時間重合することにより、数平均分子量が8,000のポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量が2,500のポリ乳酸セグメントを有するブロック共重合体可塑剤(樹脂系の可塑剤(x21)であり親水性樹脂である)を得た。
【0066】
なお、熱可塑性樹脂(A1−1)および熱可塑性樹脂(A1−2)は、JIS K6950:2000(ISO14851)、JIS K6951:2000(ISO14852)、JIS K6953−1:2011(ISO14855)、JIS K6953−2:2010(ISO14855)、JIS K6955:2006(ISO17556)のいずれかの方法で評価した結果、1年以内に60%以上の生分解度を有することが確認されたが(生分解性樹脂(X)に該当することが確認できたが)、熱可塑性樹脂(a2−1)および熱可塑性樹脂(a2−2)は、いずれの方法によっても1年以内に60%以上の生分解度を有することが確認されなかった(生分解性樹脂(X)に該当しないことが確認できた)。
【0067】
[充填剤(B)]
・充填剤(B1)
炭酸カルシウム(三共製粉社製、商品名“TOR−2018”、平均粒子径1.7μm)。
【0068】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表1に示す熱可塑性樹脂(A1−1)を4.5質量%、熱可塑性樹脂(A1−2)を13.3質量%、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂(a2−1)を23.8質量%、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂(a2−2)を17.3重量%および充填剤(B1)を41.3質量%からなる混合物を、シリンダー温度190℃のスクリュー径20mmの減圧ベント付き2軸押出機に供し、減圧ベント部を脱気しながら溶融混練し、ギアポンプで計量しながら、190℃の温度に加熱されたリングダイに導き、直径50mmのリングダイから吐出し、エアリングで冷却しながら空気の圧力によりブロー比2.2になるように膨らませた後に、シート状に折りたたんで巻き取った。巻き取った未延伸シートの厚みは80μm、未延伸シートの幅方向の熱収縮開始温度は40℃、未延伸シートを構成する樹脂のガラス転移温度は40℃であった。
【0069】
このようにして得られた未延伸シートを、表2に示すロール本数、ロール表面温度の予熱工程、延伸工程、冷却工程および熱処理工程から構成されるロール式延伸機に導き、表2に示す延伸倍率、熱処理温度・時間で延伸を行い、表2に示す目付量(g/m
2)と空孔率(%)の延伸フィルムを得た。実施例1〜5では、予熱工程でのシート幅収縮が小さく、皺もなく安定して延伸フィルムが得られた。一方、比較例1〜3では、予熱工程でシート幅収縮が大きく、皺が発生して延伸工程でのシート破れが多発し、延伸安定性が不良であった。結果を表2に示す。
【0070】
(実施例6〜10、比較例4〜6)
延伸フィルムを得るための混合物を、表1に示す熱可塑性樹脂(A1−1)を6.5質量%、熱可塑性樹脂(A1−2)を19.1質量%、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂(a2−1)を23.9質量%、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂(a2−2)を9.7重量%および充填剤(B1)を41質量%からなる混合物とし、表3に示すロール本数、ロール表面温度の予熱工程、延伸工程、冷却工程および熱処理工程から構成されるロール式延伸機に導き、表3に示す延伸倍率、熱処理温度・時間で延伸を行った以外は実施例1〜5および比較例1〜3と同様の方法により表3に示す目付量(g/m
2)と空孔率(%)の延伸フィルムを得た。実施例6〜10では、予熱工程でのシート幅収縮が小さく、皺もなく安定して延伸フィルムが得られた。一方、比較例4〜6では、予熱工程でのシート幅収縮が大きく、皺が発生して延伸工程でのシート破れが多発し、延伸安定性が不良であった。結果を表3に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
各成分の質量%は、原料全体を100質量%として算出した。
【0073】
【表2】
【0074】
シートガラス転移温度とは、未延伸シートを構成する樹脂のガラス転移温度を指す。
【0075】
【表3】
【0076】
シートガラス転移温度とは、未延伸シートを構成する樹脂のガラス転移温度を指す。