特許第6492738号(P6492738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492738
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】シナリオ統合装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20190325BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20190325BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20190325BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G09B9/00 B
   G06Q50/20
   H02J3/00 170
   H02J13/00 301A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-30761(P2015-30761)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-151751(P2016-151751A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】林 和久
(72)【発明者】
【氏名】河合 博
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】難波 輝政
(72)【発明者】
【氏名】宮本 利幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 龍太郎
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−241731(JP,A)
【文献】 特開2010−271591(JP,A)
【文献】 特開2011−107455(JP,A)
【文献】 特開平08−110809(JP,A)
【文献】 特開2014−191466(JP,A)
【文献】 特開2001−297133(JP,A)
【文献】 特開2009−240096(JP,A)
【文献】 特開平10−322908(JP,A)
【文献】 特開2000−122519(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0017609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56
G09B17/00−19/26
G06Q10/00−10/10
G06Q30/00−30/08
G06Q50/00−50/20
G06Q50/26−99/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生する事象に対する対応を訓練するために、複数の機関でそれぞれの所定の管理範囲において作成される訓練用シナリオを統合するシナリオ統合装置であって、
前記機関と前記所定の管理範囲とを対応付けた管理範囲情報を予め記憶する管理範囲情報記憶部と、
前記機関において前記管理範囲情報に基づいて作成された前記訓練用シナリオを前記機関からそれぞれ受信するシナリオ受信部と、
前記シナリオ受信部によって受信された前記訓練用シナリオに含まれる前記事象と、前記管理範囲情報記憶部により記憶された前記管理範囲情報とに基づいて、複数の前記機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する統合シナリオ作成部と、
前記統合シナリオ作成部によって作成された前記統合シナリオに基づいた、前記機関のための前記訓練用シナリオを、前記機関にそれぞれ送信するシナリオ送信部と、
を備えるシナリオ統合装置。
【請求項2】
前記シナリオ受信部によって受信された複数の前記訓練用シナリオにおける不一致を判定する不一致判定部をさらに備え、
前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成する、請求項1に記載のシナリオ統合装置。
【請求項3】
前記不一致判定部は、複数の前記訓練用シナリオにおいて、前記機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオと、前記機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオとが、時系列的に矛盾する事象を含む場合、前記第1の訓練用シナリオと前記第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定し、
前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成し、作成した前記統合シナリオにおいて、事象の時系列に基づいて事象を並べ替え、前記統合シナリオを作成する、請求項2に記載のシナリオ統合装置。
【請求項4】
前記不一致判定部は、複数の前記訓練用シナリオにおいて、前記機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオに含まれる事象と、前記機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオに含まれる事象とが、関連して発生する関係において矛盾する場合、前記第1の訓練用シナリオと前記第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定し、
前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成し、作成した前記統合シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、前記関連事象が発生する前記機関の事象として前記統合シナリオに追加する、請求項2に記載のシナリオ統合装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシナリオ統合装置が実行する方法であって、
前記シナリオ受信部が、前記機関において前記管理範囲情報に基づいて作成された前記訓練用シナリオを前記機関からそれぞれ受信するシナリオ受信ステップと、
前記統合シナリオ作成部が、前記シナリオ受信ステップによって受信された前記訓練用シナリオに含まれる前記事象と、前記管理範囲情報記憶部により記憶された前記管理範囲情報とに基づいて、複数の前記機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する統合シナリオ作成ステップと、
前記シナリオ送信部が、前記統合シナリオ作成ステップによって作成された前記統合シナリオに基づいた、前記機関のための前記訓練用シナリオを、前記機関にそれぞれ送信するシナリオ送信ステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シナリオ統合装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や発電プラントでは、事故や災害等に対する訓練がシナリオを用いて行われている。例えば、発電プラントでは、事故や災害等であっても電力安定供給の確保と、良質な電力品質維持等とを図るため、中央給電指令所、基幹給電制御所及び制御所は、運転シミュレータを活用して復旧訓練を実施している。このような訓練を支援するシステムを開示するものとして特許文献1や特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1の電力系統訓練シミュレータは、電気所模擬指令の入力を受付け、これによる電気所開閉所の状態変化と発電機状態変化を模擬し、模擬結果に基づきメモリに記憶されている系統データを更新し、少なくとも1つの制御システム模擬手段が、メモリからの系統データを情報伝送手段を介して入力するよう構成されている。このため、電力系統訓練シミュレータは、制御システム模擬手段が並行して作用し、複数のコントロールセンターのオペレータを同時に訓練できるようにする。
【0004】
特許文献2のシステムは、既に開発済みのシナリオを利用して、コンポーネントを連携させたシナリオを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−316652号公報
【特許文献2】特開2010−49397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2で開示された技術は、複数の機関が連携して対応しなければならないような事象に対する総合的な訓練をするためのシナリオを作成するものではない。訓練が自所や研修所内のみで個別に行われるのであれば、各所において、個別のシナリオが作成されることにしてもよいが、他所と連携した総合訓練を実施する場合は、各所で個別のシナリオが作成されると、訓練情報の内容をインストラクタが電話等で調整しながら実施しなければならない。
【0007】
そこで、他所と連携した総合訓練のシナリオを容易に作成することができる技術が求められている。
【0008】
本発明は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを容易に作成することができるシナリオ統合装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、以下のような解決手段を提供する。
(1) 発生する事象に対する対応を訓練するために、複数の機関でそれぞれの所定の管理範囲において作成される訓練用シナリオを統合するシナリオ統合装置であって、前記機関と前記所定の管理範囲とを対応付けた管理範囲情報を予め記憶する管理範囲情報記憶部と、前記機関において前記管理範囲情報に基づいて作成された前記訓練用シナリオを前記機関からそれぞれ受信するシナリオ受信部と、前記シナリオ受信部によって受信された前記訓練用シナリオに含まれる前記事象と、前記管理範囲情報記憶部により記憶された前記管理範囲情報とに基づいて、複数の前記機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する統合シナリオ作成部と、前記統合シナリオ作成部によって作成された前記統合シナリオに基づいた、前記機関のための前記訓練用シナリオを、前記機関にそれぞれ送信するシナリオ送信部と、を備えるシナリオ統合装置。
【0010】
(1)に係るシナリオ統合装置は、機関と所定の管理範囲とを対応付けた管理範囲情報に基づいて作成された訓練用シナリオを機関からそれぞれ受信し、受信した訓練用シナリオに含まれる事象と、管理範囲情報とに基づいて、複数の機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオに基づいた、機関のための訓練用シナリオを各機関にそれぞれ送信する。
【0011】
すなわち、(1)に係るシナリオ統合装置は、訓練用シナリオに含まれる事象と、各機関の管理範囲情報とに基づいて、各機関で作成された訓練用シナリオを統合した統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオに基づいた訓練用シナリオを各機関に送信する。
したがって、(1)に係るシナリオ統合装置は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを容易に作成することができる。
【0012】
(2) 前記シナリオ受信部によって受信された複数の前記訓練用シナリオにおける不一致を判定する不一致判定部をさらに備え、前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成する、(1)に記載のシナリオ統合装置。
【0013】
したがって、(2)に係るシナリオ統合装置は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを、不一致ではないように(例えば、事象と事象との時間的発生順や、関連性に矛盾がないように)、容易に作成することができる。
【0014】
(3) 前記不一致判定部は、複数の前記訓練用シナリオにおいて、前記機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオと、前記機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオとが、時系列的に矛盾する事象を含む場合、前記第1の訓練用シナリオと前記第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定し、前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成し、作成した前記統合シナリオにおいて、事象の時系列に基づいて事象を並べ替え、前記統合シナリオを作成する、(2)に記載のシナリオ統合装置。
【0015】
したがって、(3)に係るシナリオ統合装置は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを、事象の発生時刻に矛盾がないように、容易に作成することができる。
【0016】
(4) 前記不一致判定部は、複数の前記訓練用シナリオにおいて、前記機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオに含まれる事象と、前記機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオに含まれる事象とが、関連して発生する関係において矛盾する場合、前記第1の訓練用シナリオと前記第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定し、前記統合シナリオ作成部は、前記不一致判定部によって不一致ではないと判定された複数の前記訓練用シナリオに基づいて前記統合シナリオを作成し、作成した前記統合シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、前記関連事象が発生する前記機関の事象として前記統合シナリオに追加する、(2)に記載のシナリオ統合装置。
【0017】
したがって、(4)に係るシナリオ統合装置は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを、事象間の関連性に矛盾がないように、容易に作成することができる。
【0018】
(5) (1)に記載のシナリオ統合装置が実行する方法であって、前記シナリオ受信部が、前記機関において前記管理範囲情報に基づいて作成された前記訓練用シナリオを前記機関からそれぞれ受信するシナリオ受信ステップと、前記統合シナリオ作成部が、前記シナリオ受信ステップによって受信された前記訓練用シナリオに含まれる前記事象と、前記管理範囲情報記憶部により記憶された前記管理範囲情報とに基づいて、複数の前記機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する統合シナリオ作成ステップと、前記シナリオ送信部が、前記統合シナリオ作成ステップによって作成された前記統合シナリオに基づいた、前記機関のための前記訓練用シナリオを、前記機関にそれぞれ送信するシナリオ送信ステップと、を備える方法。
【0019】
したがって、(5)に係る方法は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを容易に作成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを、容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置と、各機関とがネットワークを介して接続されているシステムの例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置の管理範囲情報記憶部の例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置による統合シナリオの作成の例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置により、基幹給電制御所の訓練用シナリオに含まれる上位の事象に関連する下位の事象を、制御所の訓練用シナリオに追加する場合の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置により、制御所の訓練用シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、基幹給電制御所の訓練用シナリオに追加する場合の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10の構成を示すブロック図である。シナリオ統合装置10は、管理範囲情報記憶部31と、シナリオ受信部11と、不一致判定部12と、統合シナリオ作成部13と、シナリオ送信部14とを備え、シナリオ統合装置10は、発生する事象に対する対応を訓練するために、複数の機関(例えば、基幹給電制御所52や制御所等)でそれぞれの所定の管理範囲において作成される訓練用シナリオを統合する。各部を詳述する。
【0023】
管理範囲情報記憶部31は、機関と所定の管理範囲とを対応付けた管理範囲情報を予め記憶する。具体的には、管理範囲情報記憶部31は、例えば、基幹給電制御所52と、基幹給電制御所52の管理下である制御所とを対応付けた管理範囲情報を予め記憶する。管理範囲情報記憶部31は、さらに、制御所と、制御所の管理範囲(例えば、管理する母線や線路等の地域情報等)とを対応付けるとしてもよい。
管理範囲情報は、通信装置を介して取得されて管理範囲情報記憶部31に記憶されるとしてもよいし、キーボード等の入力装置から入力されて管理範囲情報記憶部31に記憶されるとしてもよい。
【0024】
シナリオ受信部11は、機関において管理範囲情報に基づいて作成された訓練用シナリオを機関からそれぞれ受信する。具体的には、訓練用シナリオは、機関の管理範囲情報(例えば、制御所の場合、制御所の管理範囲の母線や線路等の情報)に基づいて、その機関が管理する範囲において発生する事象を含んで作成される。
シナリオ受信部11は、それぞれの機関において作成された訓練用シナリオを、例えば、通信ネットワークを介して受信する。
【0025】
統合シナリオ作成部13は、シナリオ受信部11によって受信された訓練用シナリオに含まれる事象と、管理範囲情報記憶部31により記憶された管理範囲情報とに基づいて、複数の機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する。具体的には、統合シナリオ作成部13は、各機関によって作成された訓練用シナリオに基づいて、事象の発生時刻順に事象を並べ替えたり、事象に関連する関連事象を自動的に作成し追加したりして、複数の機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成する。
【0026】
不一致判定部12は、シナリオ受信部11によって受信された複数の訓練用シナリオにおける不一致を判定する。統合シナリオ作成部13は、不一致判定部12によって不一致ではないと判定された複数の訓練用シナリオに基づいて統合シナリオを作成する。
【0027】
具体的には、不一致判定部12は、複数の訓練用シナリオにおいて、機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオと、機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオとが、時系列的に矛盾する事象を含む場合、第1の訓練用シナリオと第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定する。例えば、不一致判定部12は、第1の訓練用シナリオの事象発生時刻と、第2の訓練用シナリオの事象発生時刻とが同時である場合であって、同時に発生することがないような場合に、第1の訓練用シナリオと第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定する。また、不一致判定部12は、第1の訓練用シナリオの事象発生時刻と、第2の訓練用シナリオの事象発生時刻との前後関係が発生し得ない関係である場合に、第1の訓練用シナリオと第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定する。
【0028】
統合シナリオ作成部13は、不一致判定部12によって不一致ではないと判定された複数の訓練用シナリオに基づいて統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオにおいて、事象の時系列に基づいて事象を並べ替え、統合シナリオを作成する。
【0029】
また、不一致判定部12は、複数の訓練用シナリオにおいて、機関のうち第1の機関から受信した第1の訓練用シナリオに含まれる事象と、機関のうち第2の機関から受信した第2の訓練用シナリオに含まれる事象とが、関連して発生する関係において矛盾する場合、第1の訓練用シナリオと第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定する。例えば、不一致判定部12は、時系列的に先に発生する事象である上位の事象(例えば、基幹給電制御所52の訓練用シナリオに含まれる系統ルート断)と、上位の事象に関連して発生する下位の事象(例えば、制御所の訓練用シナリオに含まれる線路UV遮断)との関係において矛盾する場合、第1の訓練用シナリオと第2の訓練用シナリオとが不一致であると判定する。関係が矛盾する場合とは、系統ルート断の発生時刻が、線路UV遮断の発生時刻よりも後の時刻である場合や、発生時刻同士が略同時ではなく、発生時刻同士が所定の時間よりも離れているような場合である。
【0030】
統合シナリオ作成部13は、不一致判定部12によって不一致ではないと判定された複数の訓練用シナリオに基づいて統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、関連事象が発生する機関の事象として統合シナリオに追加する。関連事象には、例えば、制御所で発生する基幹給電制御所側の送電線事故という事象に関連する、基幹給電制御所52の制御所側の送電線事故という事象等も含まれる。
【0031】
シナリオ送信部14は、統合シナリオ作成部13によって作成された統合シナリオに基づいた、機関のための訓練用シナリオを、機関にそれぞれ送信する。具体的には、シナリオ送信部14は、統合シナリオに含まれる事象を、機関ごとに時系列順に並べ、訓練用シナリオとして各機関に送信する。なお、送信された訓練シナリオは、各機関において、追加書き込みされたり、修正されたりするとしてもよい。シナリオ統合装置10は、各機関の現状に合わせて修正可能な訓練用シナリオとして提供することができる。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10と、各機関とが運転制御ネットワーク及び統合訓練ネットワークを介して接続されているシステムの例を示す図である。機関として、例えば、中央給電指令所51と、基幹給電制御所52と、複数の制御所(制御所A53、制御所B54)と、研修所55とが、存在する。シナリオ統合装置10は、統合訓練ネットワークを介して、各機関が作成した訓練用シナリオを受信する。
シナリオ統合装置10は、受信した訓練用シナリオを統合し、統合した統合シナリオに基づいた、各機関用の訓練用シナリオを、総合訓練ネットワークを介して、各機関に送信する。各機関において、訓練用計算機は、受信した訓練用シナリオに基づいて、運転シミュレータ(インストラクタ卓等)を介して、模擬的に事象を発生させる。なお、訓練用計算機は、統合シナリオに基づいた指令により作動するとしてもよいし、訓練用シナリオに含まれる事象の発生時刻に基づいて作動するとしてもよい。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10の管理範囲情報記憶部31の例を示す図である。
管理範囲情報記憶部31に記憶される管理範囲情報は、機関と、管理範囲とを対応付けている。例えば、管理範囲情報は、基幹給電制御所52と、制御所A53等とを対応付け、基幹給電制御所52が管理する制御所A53への系統における系統ルート断事故という事象と、制御所A53における線路UV遮断、送電線過負荷及び母線電圧低下という事象とが、上位の事象と下位の事象との関係にあることを記憶している。
また、管理範囲情報は、基幹給電制御所52が管理する制御所A側の送電線事故という事象と、制御所A53における基幹給電制御所側の送電線事故という事象とが、互いに関連する事象の関係にあることも記憶している。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10による統合シナリオ500の作成の例を示す図である。
図4の例において、基幹給電制御所52は、事象521を含む訓練用シナリオ520を作成し、制御所A53は、事象531と事象532とを含む訓練用シナリオ530を作成し、制御所B54は、事象541と事象542と事象543とを含む訓練用シナリオ540を作成する。
シナリオ統合装置10は、作成された訓練用シナリオ520,530,540において、事象が時系列的に矛盾しないこと、かつ、事象の関連性において矛盾しないことを判断する。シナリオ統合装置10は、矛盾しない(すなわち、一致する)と判断した場合、上位の事象521に関連する下位の事象5311,5411を自動的に作成し、その下位の事象が発生する機関の事象として、統合シナリオ500に追加する。
さらに、シナリオ統合装置10は、事象543に関連する関連事象5211と、事象532に関連する関連事象5212とを自動的に作成し、その事象が発生する機関の事象として、統合シナリオ500に追加する。次に、シナリオ統合装置10は、統合シナリオ500の事象を発生時刻順に並べる。
シナリオ統合装置10は、統合シナリオ500に基づいて、各機関ごとに事象を発生時刻順に並べた訓練用シナリオ5200,5300,5400を作成する。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10により、基幹給電制御所52の訓練用シナリオに含まれる上位の事象に関連する下位の事象を、制御所の訓練用シナリオに追加する場合の例を示す図である。図5において、管理範囲3101は、管理範囲情報記憶部31に記憶された基幹給電制御所52の管理範囲を表している。同様に、管理範囲3102と、管理範囲3103とは、それぞれ、制御所A53の管理範囲と、制御所B54の管理範囲とを表している。そして、関連範囲3110は、基幹給電制御所52の管理範囲3101と、制御所A53の管理範囲3102及び制御所B54の管理範囲3103とが、管理範囲情報記憶部31に記憶された管理範囲情報によって、関連していることを表している。管理範囲3101及び管理範囲3102における図中の×印や、管理範囲3103における図中のコメント(例えば、母線電圧低下)は、訓練用シナリオ5201,5301,5401の事象を表している。
図5の例は、基幹給電制御所52の訓練用シナリオ5201に、上位の事象、例えば、事故種別の送電線事故として「系統ルート断」が含まれる例である。この例の場合、図5が示すように、シナリオ統合装置10は、基幹給電制御所52の「系統ルート断」に基づいて関連する下位の事象、例えば、制御所A53の「線路UV遮断」、「送電線過負荷」、及び「母線電圧低下」を、制御所A53の訓練用シナリオ5301に追加し、さらに、「系統ルート断」に基づいて関連する下位の事象、例えば、制御所B54の「母線電圧低下」を、制御所B54の訓練用シナリオ5401に追加する。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10により、制御所の訓練用シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、基幹給電制御所52の訓練用シナリオに追加する場合の例を示す図である。
図6(1)の例は、制御所A53で作成された訓練用シナリオに、事象として制御所A53の基幹給電制御所側の「送電線事故(地絡)瞬時」が含まれる例である。この例の場合、シナリオ統合装置10は、制御所A53の基幹給電制御所側の「送電線事故(地絡)瞬時」の関連事象として、基幹給電制御所52の訓練用シナリオに、制御所A側の「送電線事故」の事象を追加する。図6(1)の基幹給電制御所52の管理範囲3101において、関連事象としての制御所A側の「送電線事故」の事象を×印で表している。
図6(2)の例は、制御所B54で作成された訓練用シナリオに、事象として制御所B54の基幹給電制御所側の「送電線事故(地絡)永久」が含まれる例である。この例の場合、シナリオ統合装置10は、制御所B54の基幹給電制御所側の「送電線事故(地絡)永久」の関連事象として、基幹給電制御所52の訓練用シナリオに、制御所B側の「送電線過負荷」の事象を追加する。図6(2)の基幹給電制御所52の管理範囲3101において、関連事象としての制御所B側の「送電線過負荷」の事象を×印で表している。
【0037】
図7は、本発明の一実施形態に係るシナリオ統合装置10の処理の例を示すフローチャートである。シナリオ統合装置10は、コンピュータ及びその周辺装置が備えるハードウェア並びに該ハードウェアを制御するソフトウェアによって構成される。以下の処理は、制御部(例えば、CPU)が、所定のソフトウェアに従い実行する処理である。
【0038】
ステップS101において、CPU(シナリオ受信部11)は、訓練用シナリオを受信する。より具体的には、CPUは、各機関において管理範囲情報に基づいて作成された訓練用シナリオを各機関からそれぞれ受信する。
【0039】
ステップS102において、CPU(不一致判定部12)は、受信した複数の訓練用シナリオが不一致か否かを判断する。より具体的には、CPUは、複数の訓練用シナリオにおいて、事象同士の発生が時系列的に矛盾するか否か、事象同士が発生し得ない関係であるか否かを判断する。この判断が、YESの場合、訓練用シナリオ同士が不一致であると判断し、CPUは、処理をステップS106に移し、この判断が、NOの場合、CPUは、処理をステップS103に移す。
【0040】
ステップS103において、CPU(統合シナリオ作成部13)は、関連事象を追加する。より具体的には、CPUは、複数の訓練用シナリオにおいて、一の訓練用シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、その関連事象が発生する機関の事象として追加する。
【0041】
ステップS104において、CPU(統合シナリオ作成部13)は、事象を発生時刻順に並べ替えて、統合シナリオを作成する。より具体的には、CPUは、事象の発生時刻を昇順にソートし、発生時刻順に事象を並べ替えた統合シナリオを作成する。
【0042】
ステップS105において、CPU(シナリオ送信部14)は、統合シナリオを機関ごとの訓練用シナリオとし、各機関に送信する。より具体的には、CPUは、統合シナリオから、機関ごとに事象を発生時刻順に並べた訓練用シナリオを作成し、作成した訓練用シナリオを各機関に送信する。その後、CPUは処理を終了する。
【0043】
ステップS106において、CPU(不一致判定部12)は、訓練用シナリオが不一致であることを示すメッセージを出力する。その後、CPUは処理を終了する。
【0044】
本実施形態によれば、シナリオ統合装置10は、機関と所定の管理範囲とを対応付けた管理範囲情報に基づいて作成された訓練用シナリオを機関からそれぞれ受信し、受信した訓練用シナリオに含まれる事象と、管理範囲情報とに基づいて、複数の機関を連携した訓練をするための統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオに基づいた、機関のための訓練用シナリオを各機関にそれぞれ送信する。さらに、シナリオ統合装置10は、複数の訓練用シナリオにおいて、時系列的に矛盾する事象を含む場合や、訓練用シナリオに含まれる事象同士の関係において矛盾する場合、訓練用シナリオ同士が不一致であると判定する。シナリオ統合装置10は、訓練用シナリオ同士が不一致ではないと判定した場合、訓練用シナリオに含まれる事象の時系列に基づいて事象を並べ替えた統合シナリオを作成し、作成した統合シナリオに含まれる事象に関連する関連事象を、関連事象が発生する機関の事象として統合シナリオに追加する。そして、シナリオ統合装置10は、統合シナリオに基づいた、機関のための訓練用シナリオを、各機関にそれぞれ送信する。
したがって、シナリオ統合装置10は、各機関が連携して総合的な訓練を行うためのシナリオを容易に作成することができる。さらに、シナリオ統合装置10は、統合シナリオとして、複数の訓練用シナリオを容易に1つにすることができるため、事故発生から事故復旧までの事故事象を正確に模擬できるようなシナリオを容易に作成することができる。また、シナリオ統合装置10は、リアルで実態にあった訓練を行うための訓練用シナリオや、事故や災害時における対応の改善や被災影響緩和に関する技術力の向上が図れるような訓練用シナリオを容易に作成することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。
例えば、本実施形態では、統合シナリオに基づく訓練用シナリオを各機関に送信し、各機関において訓練用シナリオに基づいて、訓練が実施されるとしたが、統合シナリオシミュレータにより、統合シナリオに基づいて、各機関の訓練用計算機を一括して作動させるとしてもよい。統合シナリオシミュレータは、各機関を連携した総合的な訓練の進捗を管理することができる。
また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
10 シナリオ統合装置
11 シナリオ受信部
12 不一致判定部
13 統合シナリオ作成部
14 シナリオ送信部
31 管理範囲情報記憶部
51 中央給電指令所
52 基幹給電制御所
53 制御所A
54 制御所B
55 研修所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7