(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両の中には、ユーザがアクセルを踏み込んだときのアクセル開度を検出するアクセルポジションセンサを2個設け、各アクセルポジションセンサから出力される開度の差分が所定値以上になったときに、アクセルポジションセンサの特性異常を検出するものがある。
【0003】
アクセルポジションセンサの特性異常が検出された場合、車両の制御装置は、2個のアクセルポジションセンサから得た開度の平均値を計算し、この平均値に大幅な出力抑制をかけ、アクセル開度を決定する。このように決定されたアクセル開度に基づいてモータの駆動が制御される。
【0004】
なお、電制スロットル式内燃機関のフェールセーフ制御装置も知られている。このフェールセーフ制御装置は、アクセル開度センサに対してオープン,ショートの診断や不整合診断を行い、2個のアクセル開度センサのうち1個が故障と診断されたときには、故障と診断されていないアクセル開度センサで検出されたアクセル開度と、故障時の上限値(正常時より小さい上限値)と、前記検出されたアクセル開度に対し、その増大変化率を故障時の上限変化率(正常時より小さい上限変化率)以下の値に制限する処理を行ったアクセル開度と、の中から最も小さい値を使用する(下記、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述の平均値に大幅な出力抑制をかけ、アクセル開度を決定する方法だと、アクセルポジションセンサの特性異常の生じ方によっては問題が生じる。例えば、故障が生じているアクセルポジションセンサの出力値が大きくなっている場合には、平均アクセル開度も大きくなるため、走行している車両が大きく加速する。ユーザはこのような加速は予期していないため、アクセルペダルの踏込みと、車両の加速とに大きなずれが生じ、ユーザの加速フィーリングに違和感が発生する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アクセルポジションセンサの特性異常を検出した場合に、ユーザの加速フィーリングに違和感が発生することを防止する車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両は、駆動源と、アクセルペダルと、前記アクセルペダルの開度を検出する第1のアクセルポジションセンサと、前記アクセルペダルの開度を検出する第2のアクセルポジションセンサと、前記第1のアクセルポジションセンサの出力に対応する第1の電圧値と、前記第2のアクセルポジションセンサの出力に対応する第2の電圧値とに基づいて、前記駆動源を駆動させる制御部と、走行速度を取得する取得手段と、を備える。また、前記制御部は、前記アクセルペダルが踏み込まれたときに、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値とに基づいて前記第1又は前記第2のアクセルポジションセンサの異常を検出する検出手段と、前記検出手段により前記異常を検出したときは、前記取得手段により取得される走行速度から所定加速度分に相当する第3の電圧値を求め、前記第3の電圧値に相当する加速を超えない加速となるように前記駆動源を制御する加速制御手段と、
前記第1の電圧値と前記第2の電圧値との平均電圧値に応じた第4の電圧値を算出する算出手段と、前記第4の電圧値に走行速度が大きいほど小さく設定されるゲインを乗じた値、及び前記第3の電圧値のいずれが低い電圧値であるかを判定する電圧値判定手段と、を備え、前記加速制御手段は、前記電圧値判定手段により低いと判定された電圧値に相当する加速を超える加速とならないように前記駆動源を制御する。
【0009】
この車両によると、アクセルポジションセンサの特性異常を検出した場合に、ユーザの加速フィーリングに違和感が発生することを防止することができる。
【0011】
さらに、車両は、
第4の電圧値に走行速度が大きいほど小さく設定されるゲインを乗じた値と第3の電圧値とのいずれか低い電圧値に応じて駆動源をできるようになる。これにより、ユーザの加速フィーリングの違和感をさらに防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両によれば、アクセルポジションセンサの特性異常を検出した場合に、ユーザの加速フィーリングに違和感が発生することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、車両1の後部にモータ部(駆動源)2が搭載されている。モータ部2の駆動トルクが後輪軸3に伝達される。また、後輪軸3の両端には後輪3a,3bが装着される。前輪軸4の両端には前輪4a,4bが装着される。
【0016】
車両1には、ユーザが車両1の加速を指示するためのアクセルペダル5が設けられている。アクセルペダル5の近傍には、アクセルペダル5の開度を検出するアクセルポジションセンサS1(第1のアクセルポジションセンサ)と、アクセルペダル5の開度を検出するアクセルポジションセンサS2(第2のアクセルポジションセンサ)とが配置される。なお、アクセルポジションセンサS1の最大出力電圧値は、アクセルポジションセンサS2の最大出力電圧値よりも大きく、本実施形態においては、アクセルポジションセンサS2の最大出力電圧値は、アクセルポジションセンサS2の出力電圧値に、アクセルポジションセンサS1の最大出力電圧値をアクセルポジションセンサS2の最大出力電圧値で除した値を乗じた値となるように設定されている。例えば、アクセルポジションセンサS1の最大出力電圧値は、5Vであり、アクセルポジションセンサS2の最大出力電圧値は、2.5Vである。
【0017】
車両1には、車両1の走行速度を検出する車速センサS3が配置される。本実施形態においては、車速センサS3が後輪軸3の回転速度を検出し、後述する車速演算部23により回転速度に基づいて走行速度が演算される場合で説明するが、車速センサS3を含むセンサ部を設け、車速センサS3が検出した後輪軸3の回転速度に基づいて、該センサ部が車速を演算し、後述するエンジンECU11に出力するように構成しても良い。
【0018】
また、車両1には、車両制御装置10が設けられている。車両制御装置10は、エンジンECU(Electric-Control-Unit)、及びモータ駆動部12を含む。
【0019】
エンジンECU11には、モータ駆動部12、アクセルポジションセンサS1,S2、及び車速センサS3が接続される。
【0020】
エンジンECU11は、モータ駆動部12を用いた駆動制御を含む制御を実行する。例えば、エンジンECU11は、アクセルポジションセンサS1の出力に対応する電圧値V1(第1の電圧値)と、アクセルポジションセンサS2の出力に対応する電圧値V2(第2の電圧値)とに基づいて、モータの回転数を制御する指令(電圧値等)をモータ駆動部12に送信することにより、モータ部2を制御する。なお、アクセルポジションセンサS1,S2から入力される電圧値V1,V2に基づいて、モータ部2の駆動を制御する処理の詳細については後述する。
【0021】
モータ駆動部12は、エンジンECU11から受け取る指令に基づいて、バッテリ電源(図示省力)からモータ部2に供給する電力を変換させ、モータ部2を作動させることにより後輪軸3及び後輪3a,3bを回転させて車両1を走行させる。
【0022】
図2は、エンジンECU11がフェールセーフ制御を実行するための機能ブロックを示している。
【0023】
図2に示すように、エンジンECU11は、平均値演算部21、車速演算部22、出力制限演算部23、加速制限演算部24、及び出力電圧判定部25を有している。
【0024】
平均値演算部21は、アクセルポジションセンサS1から入力される電圧値V1(第1の電圧値)、アクセルポジションセンサS2から入力される電圧値V2(第2の電圧値)から平均電圧値V3を演算する。
【0025】
車速演算部22は、車両1の走行速度を演算する。
【0026】
出力制限演算部23は、平均値演算部21で演算した平均電圧値V3に対して、車速演算部22により演算した車速に応じた電圧値の出力抑制を行う。これにより、出力抑制された電圧値V4が求められる。より詳細には、平均電圧値V4は、電圧値V1と電圧値V2との平均電圧値V3に対し、車両1の走行速度に応じて設定されたゲインを乗じた値であり、該ゲインは、平均電圧値V4がゲインを乗じる前の平均電圧値V3以下となるよう設定される。また、該ゲインは、車両1の走行速度が大きいほど小さく設定されることが望ましい。
【0027】
加速制限演算部24は、車速演算部22により演算された走行速度に基づいて、車両1の走行速度から所定加速度分に相当する電圧値V5(第3の電圧値)を求める。
【0028】
出力電圧判定部25は、電圧値V5を超えないように、電圧値V4、電圧値V5のいずれの電圧値を出力するかを判定する。
【0029】
図3は、エンジンECU11が実行するフェールセーフ制御の一例を示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すように、エンジンECU11は、アクセルポジションセンサS1、S2の出力を常に監視しており、アクセルポジションセンサS1が出力する電圧値V1−2×アクセルポジションセンサS2が出力する電圧値V2の絶対値が所定値以上であるか否かを判定する(ST101:検出手段)。これにより、アクセルペダル5が踏み込まれたときに、電圧値V1と、2×電圧値V2とに基づいて、アクセルポジションセンサS1又はS2の特性異常を検出することが可能になる。
【0031】
エンジンECU11が所定値以上でないと判断した場合(ST101:NO)、エンジンECU11は、アクセルポジションセンサS1,S2の電圧値V1,V2に基づいて、モータ部2を駆動する(ST107)。
【0032】
一方、エンジンECU11が所定値以上であると判断した場合(ST101:YES)、エンジンECU11は、アクセルポジションセンサS1から入力される電圧値V1(第1の電圧値)、アクセルポジションセンサS2から入力される電圧値V2(第2の電圧値)から平均電圧値V3を演算する。
【0033】
次に、エンジンECU11は、車速センサS3から入力される回転速度の情報に基づいて、車両1の走行速度を演算する(ST103:取得手段)。
【0034】
次に、エンジンECU11は、ステップST102において演算した平均電圧値V3に対して、ST104において演算した車速に応じた電圧値の出力抑制を行い、電圧値V4(第4の電圧値)を算出する(ST104:算出手段)。これにより、アクセルポジションセンサS1,S2の一方が異常値を検出したとしても電圧値の出力がある程度抑制される。
【0035】
次に、エンジンECU11は、ステップST104において演算した走行速度に基づいて、その走行速度から所定加速度分に相当する電圧値V5を算出する(ST105)。ここで、所定加速度分は、例えば、走行状態からユーザが0.1Gの加速を感じない加速度であるが、任意に設定することが可能である。
【0036】
次に、エンジンECU11は、電圧値V5に相当する加速を超える加速とならないように、電圧値V4、電圧値V5のいずれの電圧値を出力するかを判定する(ST106:電圧値判定手段)。
【0037】
次に、エンジンECU11は、ステップST107の判定結果に基づいて、電圧値をモータ駆動部12に出力し、モータ駆動部12は、受け取った電圧値に応じてモータ部12を駆動する(ST107:加速制御手段)。
【0038】
図4は、フェールセーフ制御の効果の一例を説明するための図である。
図4において、縦軸が出力電圧値、横軸が時間Tである。また、
図4には、グラフg1〜g5が示されている。グラフg1は、アクセルポジションセンサS1の出力電圧値V1を示している。グラフg2は、アクセルポジションセンサS2の出力電圧値V2を示している。グラフg3は、出力抑制後の平均電圧値である電圧値V4を示している。グラフg4は、走行速度から所定加速度分に相当する電圧値V6を示している。グラフg5(本発明)は、モータ部2の制御用として採用される出力電圧値を示している。
【0039】
より詳細には、グラフg5(本発明)では、時間T11においては、グラフg3(電圧値V4)がグラフg4(電圧値V5)より小さい電圧値であるためグラフg3(電圧値V4)を採用し、時間T12においては、グラフg4(電圧値V5)がグラフg3(電圧値V4)より小さい電圧値であるためグラフg4(電圧値V5)を採用している。つまり、ドライバがアクセルペダル5を踏み込んだときに、時間T12のようにアクセルポジションセンサS1に異常が発生して出力電圧値Vが大きくなっても、エンジンECU11は、モータ駆動部12に出力する出力電圧値をグラフg4(電圧値V4)に示す電圧値を超えないように制御している。
【0040】
以上のように説明した車両1によると、アクセルポジションセンサS1,S2の特性異常を検出した場合に、グラフg5に示す出力電圧値Vがモータ部2の駆動用の出力電圧値となる。このため、車両1が現在の走行速度から所定加速度(例えば、0.1G)を超える加速度となることがなく、ユーザの加速フィーリングに違和感が発生することを防止することができる。
【0041】
また、例えば、車速(走行速度)と電圧値とで出力トルクを定めており、同じ電圧であれば車速が上昇するにしたがって出力トルクが減っていき、かつ、一定の電圧値によって加速を制限する構成になっている制御の場合、車速が上昇すると、ドライバがアクセルペダル5をより踏み込まなければ、加速ができなくなる。このため、車速が上昇していくといずれかの車速でドライバがアクセルペダル5を踏み込んでも加速しなくなる状態が生じる。これに対して、上記実施形態の車両1によると、車両1の走行速度(車速)から所定加速度までは加速する構成になっている。これにより、フェールセーフ制御時でも、ドライバの加速フィーリングを確保することが可能になる。
【0042】
また、アクションポジションセンサS1,S2の出力電圧レンジが異なるため、アクセルポジションセンサS2に異常があり、異常出力値が増幅されるような場合であっても、適切なフェールセーフ制御を行うことができる。すなわち、アクセルポジションセンサS1,S2の最大出力電圧値が異なる場合に、より好適な制御を実現することができる。
【0043】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)駆動源と、アクセルペダルと、前記アクセルペダルの開度を検出する第1のアクセルポジションセンサと、前記アクセルペダルの開度を検出する第2のアクセルポジションセンサと、前記第1のアクセルポジションセンサの出力に対応する第1の電圧値と、前記第2のアクセルポジションセンサの出力に対応する第2の電圧値とに基づいて、前記駆動源を駆動させる制御部と、走行速度を取得する取得手段と、を備える車両であって、前記制御部は、前記アクセルペダルが踏み込まれたときに、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値とに基づいて前記第1又は前記第2のアクセルポジションセンサの異常を検出する検出手段と、前記検出手段により前記異常を検出したときは、前記取得手段により取得される走行速度から所定加速度分に相当する第3の電圧値を求め、前記第3の電圧値に相当する加速を超えない加速となるように前記駆動源を制御する加速制御手段と、
を備えることを特徴とする車両。
(2)前記第1の電圧値と前記第2の電圧値との平均電圧値に応じた第4の電圧値を算出する算出手段と、前記第4の電圧値及び前記第3の電圧値のいずれが低い電圧値であるかを判定する電圧値判定手段と、を備え、前記加速制御手段は、前記電圧値判定手段により低いと判定された電圧値に相当する加速を超える加速とならないように前記駆動源を制御する、ことを特徴とする(1)に記載の車両。