(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられている複数のころと、前記複数のころを周方向に間隔をあけて保持する環状の保持器と、を備え、前記外輪と前記内輪との間に潤滑油が軸方向一方側から流入可能となるころ軸受であって、
前記保持器は、前記外輪の軸方向一方側の外輪端部と前記内輪の軸方向一方側の内輪端部との間に位置する環状部と、前記環状部から軸方向他方側に延びて設けられている複数の柱部と、を有し、
前記環状部は、前記外輪端部の内周面に環状隙間を有して対向する外側の環状面、及び前記内輪端部の外周面に環状隙間を有して対向する内側の環状面を有し、
前記外側の環状面及び前記内側の環状面の内の少なくとも一方であって当該環状面の内の軸方向他方側を除く領域に、前記保持器が一方向に回転すると前記環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流す溝形状を有する溝が形成されている、ころ軸受。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す円すいころ軸受90では、外輪97の内周面98が軸方向一方側(
図5の左側)から他方側(
図5の右側)に向かって拡径しており、円すいころ軸受90(内輪95)が回転すると、外輪97と内輪95との間を潤滑油が軸方向一方側から他方側(
図5の場合、左側から右側)に向かって流れる作用(ポンプ作用)が生じる。この作用により、軸受外部の潤滑油が、軸方向一方側から軸受内部に流入する。
【0007】
軸受内部に流入した潤滑油は、前記撹拌抵抗を生じさせる。このため、軸受内部を通過する潤滑油が多くなると撹拌抵抗も増大し、この結果、ころ軸受90の回転トルク(回転抵抗)が増加する。
【0008】
そこで、
図5に示す円すいころ軸受90では、保持器91の環状部92が折り曲げ部93を有していることにより、この折り曲げ部93と内輪95の端部の外周面96との間からの潤滑油の流入を抑制し、撹拌抵抗を減少させている。しかし、軸受の回転トルクを低減するためには、撹拌抵抗をより一層減少させるのが望ましい。
【0009】
なお、前記のように軸受外部の潤滑油が外輪と内輪との間(軸受内部)に流入可能となるころ軸受は、
図5に示すような円すいころ軸受90以外にもある。例えば、図示しないが、外輪の内周面や内輪の外周面のうち、軌道面以外の部分の形状(傾斜形状)によって、潤滑油が軸方向一方側から外輪と内輪との間に流入したり、保持器の回転に起因して、潤滑油が軸方向一方側から外輪と内輪との間に流入したりする場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、ころ軸受の回転トルクの更なる低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられている複数のころと、前記複数のころを周方向に間隔をあけて保持する環状の保持器と、を備え、前記外輪と前記内輪との間に潤滑油が軸方向一方側から流入可能となるころ軸受であって、前記保持器は、前記外輪の軸方向一方側の外輪端部と前記内輪の軸方向一方側の内輪端部との間に位置する環状部と、前記環状部から軸方向他方側に延びて設けられている複数の柱部と、を有し、前記環状部は、前記外輪端部の内周面に環状隙間を有して対向する外側の環状面、及び前記内輪端部の外周面に環状隙間を有して対向する内側の環状面を有し、前記外側の環状面及び前記内側の環状面の内の少なくとも一方に、前記保持器が一方向に回転すると前記環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流す溝形状を有する溝が形成されている。
【0012】
本発明によれば、軸受が回転して保持器が回転すると、この保持器が有する軸方向一方側の環状部に形成されている前記溝によって、環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流すことができる。このため、軸方向一方側の軸受外部から軸受内部への潤滑油の流入を抑制することができ、撹拌抵抗を低下させ、ころ軸受の回転トルクを低減することが可能となる。
【0013】
また、前記溝は、前記環状部の軸方向一方側の側面において開口しているのが好ましい。この場合、保持器が一方向に回転することで環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流す前記溝の機能を高めることができる。
【0014】
また、保持器が一方向に回転することで、前記溝によって環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流すことができるが、回転が停止している状態では、このような作用は発生しない。
そこで、前記溝は、当該溝が形成されている前記環状面の内の軸方向他方側を除く領域に形成されているのが好ましく、この場合、前記溝は、当該溝が形成されている環状面を軸方向に貫通しない構成となる。このため、回転が停止している状態で、溝を通じて潤滑油が軸受内部に入りにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸方向一方側の軸受外部から軸受内部への潤滑油の流入を抑制することができ、軸受内部の潤滑油量を減らすことで撹拌抵抗を低下させ、ころ軸受の回転トルクを低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔軸受の全体構成〕
図1は、本発明のころ軸受の実施の一形態を示す縦断面図である。本実施形態のころ軸受は、円すいころ軸受1であり、この円すいころ軸受1は、外輪2と、この外輪2の径方向内側に設けられている内輪3と、これら外輪2と内輪3との間に設けられている複数の円すいころ4と、これら円すいころ4を保持している環状の保持器10とを備えている。そして、この円すいころ軸受1は潤滑油(オイル)によって潤滑される。
【0018】
内輪3は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その外周には、複数の円すいころ4が転動するテーパー状の内輪軌道面3aが形成されている。また、内輪3は、内輪軌道面3aの軸方向一方側(
図1では左側)に設けられ径方向外側に突出する小鍔部5と、内輪軌道面3aの軸方向他方側(
図1では右側)に設けられ径方向外側に突出する大鍔部6とを有している。
【0019】
外輪2も、内輪3と同様、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その内周には、内輪軌道面3aに対向し複数の円すいころ4が転動するテーパー状の外輪軌道面2aが形成されている。
【0020】
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪軌道面3aと外輪軌道面2aとを転動する。円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面4aを有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面4bを有している。この大端面4bは、内輪3の大鍔部6の鍔面7と摺接する。
【0021】
保持器10は、軸方向一方側の小径環状部11、軸方向他方側の大径環状部12、及び周方向に間隔をあけて設けられている複数の柱部13を有している。小径環状部11と大径環状部12とは円環状であり、軸方向に所定間隔離れて設けられている。柱部13は、小径環状部11から軸方向他方側に延びて設けられ大径環状部12と繋がっている。つまり、柱部13は、環状部11,12を連結している。両環状部11,12の間であって周方向で隣り合う二つの柱部13,13の間に形成される空間が、円すいころ4を収容(保持)するポケット14となる。本実施形態の保持器10は、樹脂製(合成樹脂製)であり、射出成形によって成形することができる。
【0022】
保持器10は、内輪3と外輪2との間に形成されている環状空間(以下、軸受内部ともいう)に設けられており、各ポケット14に一つの円すいころ4を収容し、複数の円すいころ4を周方向に等しい間隔をあけて配置し保持している。
本実施形態の小径環状部11は、外輪2の軸方向一方側の端部8(以下、外輪端部8ともいう。)と、内輪3の軸方向一方側の端部である小鍔部5(以下、内輪端部5ともいう。)との間に位置している。
【0023】
図1に示す円すいころ軸受1では、外輪2の内周面(外輪軌道面2a)が、軸方向一方側から他方側に向かって拡径している。このため、円すいころ軸受1(本実施形態では内輪3)が回転すると、内輪3と外輪2との間に形成されている環状空間を潤滑油が軸方向一方側から他方側に向かって流れる作用(ポンプ作用)が生じる。このような円すいころ軸受1の回転に伴うポンプ作用により、軸受外部の潤滑油が、軸方向一方側から、外輪2と内輪3との間の環状空間(軸受内部)に流入可能となり、流入した潤滑油は、軸方向他方側から流出する。つまり、潤滑油が軸受内部を通過する。以上より、
図1に示す円すいころ軸受1では、軸方向一方側が潤滑油の流入側となり、軸方向他方側が潤滑油の流出側となる。
【0024】
図2は、保持器10の小径環状部11及びその周囲の拡大断面図である。小径環状部11は、外輪端部8の内周面21に環状隙間A1を有して対向する外側の環状面(以下、外環状面31という。)を有している。また、この小径環状部11は、内輪端部5の外周面22に環状隙間A2を有して対向する内側の環状面(以下、内環状面32という。)を有している。本実施形態では、外輪端部8の内周面21及び小径環状部11の外環状面31は、円すいころ軸受1の中心線C(
図1参照)を中心とするストレート形状の円筒面からなり、また、内輪端部5の外周面22及び小径環状部11の内環状面32は、前記中心線C(
図1参照)を中心とするストレート形状の円筒面からなる。
【0025】
外輪端部8の内周面21と外環状面31とは接近しており、径方向外側の環状隙間A1の径方向寸法は微小(例えば、半径で1.5mm未満)となるように設定されている。これにより、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油が、環状隙間A1を通じて軸受内部に流入するのを抑制することができる。
また、内輪端部5の外周面22と内環状面32とは接近しており、径方向内側の環状隙間A2の径方向寸法は微小(例えば、半径で1.5mm未満)となるように設定されている。これにより、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油が、環状隙間A2を通じて軸受内部に流入するのを抑制することができる。
以上より、内輪端部5と外輪端部8との間には環状開口部が形成されるが、小径環状部11は、この環状開口部を内輪端部5及び外輪端部8それぞれとの間で微小な環状隙間A1,A2をあけて塞ぐ構成となっている。
【0026】
このように、環状隙間A1,A2を微小隙間とすることで、軸受内部に流入する潤滑油量を抑制し、軸受回転時における円すいころ4の撹拌抵抗を低減することができるが、本実施形態の円すいころ軸受1では、この撹拌抵抗を更に低減するために、小径環状部11には溝41,42(
図3及び
図4参照)が形成されている。
【0027】
図3は、小径環状部11を径方向内側から見た図である。
図3に示す矢印Rは、保持器10の回転方向を示している。小径環状部11が有する内環状面32には、複数の溝42が形成されている。各溝42は同じ溝形状であり、周方向(回転方向)に沿って等間隔で配置されている。各溝42は、保持器10が一方向(矢印R方向)に回転すると、
図2に示す環状隙間A2に存在する潤滑油を、軸方向一方側へ向かって流す(排出する)溝形状を有している。
【0028】
溝42について具体的に説明する。溝42は、円すいころ軸受1の中心線C(
図1参照)に平行であって内環状面32上に存在する仮想線L2に対して傾斜した溝形状を有している。
図3において、仮想線L2に対する溝42の長手方向(溝長手方向)の傾斜角度を「α2」で示している。溝42は、軸方向一方側から他方側に向かうにしたがって、保持器10の回転方向(矢印R方向)に向かうように傾斜している。
【0029】
この溝42が内環状面32に形成されていることで、保持器10が一方向(矢印R方向)に回転すると、
図2に示す環状隙間A2に存在する潤滑油は、溝42に沿って流れるが、この溝42に沿って流れる際に、軸方向一方側、つまり、軸受外部側へ流れる成分をこの潤滑油に生じさせる。
なお、この溝42は、保持器10の回転により環状隙間A2の潤滑油を軸方向一方側へ流す(押し出す)作用を生じさせればよく、
図3に示す溝42は、全体として直線状の溝であるが、湾曲していてもよい。溝42を湾曲させる場合、矢印R方向と反対の方向に凸となるように湾曲させる。
【0030】
また、
図3に示すように、溝42は、小径環状部11の軸方向一方側の側面33において開口している。つまり、溝42の軸方向一方側の端部42aは、小径環状部11の側面33上に位置している。
これに対して、溝42の軸方向他方側の端部42bは、小径環状部11の軸方向他方側の側面34において開口していない。つまり、溝42は、小径環状部11の内環状面32を貫通しておらず、内環状面32の内の軸方向他方側の端部35を除く領域K2に形成されている。なお、前記側面34はポケット面となる。
【0031】
図4は、小径環状部11を径方向外側から見た図である。
図4に示す矢印Rは、保持器10の回転方向を示している。小径環状部11が有する外環状面31には、複数の溝41が形成されている。各溝41は同じ溝形状であり、周方向(回転方向)に沿って等間隔で配置されている。各溝41は、保持器10が一方向(矢印R方向)に回転すると、
図2に示す環状隙間A1に存在する潤滑油を、軸方向一方側へ向かって流す(排出する)溝形状を有している。
【0032】
溝41について具体的に説明する。溝41は、円すいころ軸受1の中心線C(
図1参照)に平行であって外環状面31上に存在する仮想線L1に対して傾斜した溝形状を有している。
図4において、仮想線L1に対する溝41の長手方向(溝長手方向)の傾斜角度を「α1」で示している。溝41は、軸方向一方側から他方側に向かうにしたがって、保持器10の回転方向(矢印R方向)に向かうように傾斜している。
【0033】
この溝41が外環状面31に形成されていることで、保持器10が一方向(矢印R方向)に回転すると、
図2に示す環状隙間A1に存在する潤滑油は、溝41に沿って流れるが、この溝41に沿って流れる際に、軸方向一方側、つまり、軸受外部側へ流れる成分をこの潤滑油に生じさせる。
なお、この溝41は、保持器10の回転により環状隙間A1の潤滑油を軸方向一方側へ流す(押し出す)作用を生じさせればよく、
図4に示す溝41は、全体として直線状の溝であるが、湾曲していてもよい。溝41を湾曲させる場合、矢印R方向と反対の方向に凸となるように湾曲させる。
【0034】
また、
図4に示すように、溝41は、小径環状部11の軸方向一方側の側面33において開口している。つまり、溝41の軸方向一方側の端部41aは、小径環状部11の側面33上に位置している。
これに対して、溝41の軸方向他方側の端部41bは、小径環状部11の軸方向他方側の側面34において開口していない。つまり、溝41は、小径環状部11の外環状面31を貫通しておらず、外環状面31の内の軸方向他方側の端部36を除く領域K1に形成されている。
【0035】
以上の構成を備えている円すいころ軸受1によれば、内輪3が回転して保持器10が回転すると、この保持器10が有する軸方向一方側の小径環状部11の内環状面32(
図3参照)に形成されている溝42によって、環状隙間A2の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流すことができ、また、これと共に、小径環状部11の外環状面31(
図4参照)に形成されている溝41によって、環状隙間A1の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流すことができる。このため、軸方向一方側の軸受外部から、小径環状部11の径方向内側及び径方向外側を通じて、軸受内部へ潤滑油が流入するのを抑制することができ、軸受内部の潤滑油量を減らすことで撹拌抵抗を低下させ、円すいころ軸受1の回転トルクを低減することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、溝41,42は、小径環状部11の軸方向一方側の側面33において開口していることから、保持器10が矢印R方向に回転することで環状隙間A1,A2の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流す機能を高めることができる。
【0037】
このように、保持器10が矢印R方向に回転することで、溝41,42によって環状隙間A1,A2の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流すことができるが、保持器10(軸受)の回転が停止している状態では、このような作用は発生しない。
そこで、本実施形態では、前記のとおり、溝41は、外環状面31の内の軸方向他方側の端部36を除く領域K1に形成されており、また、溝42は、内環状面32の内の軸方向他方側の端部35を除く領域K2に形成されている。このため、保持器10の回転が停止している状態において、溝41,42を通じて潤滑油が軸受内部に入りにくい。
【0038】
また、
図2において、小径環状部11の軸方向一方側の側面33は、その半径方向内寄りの領域に、半径方向外側に向かって軸方向内側に傾斜する内側傾斜面46を有している。この内側傾斜面46は、円筒状である内環状面32と鋭角で交差する円すい面となっている。このため、小径環状部11の軸方向一方側の内周端部は、内側傾斜面46と内環状面32とが鋭角に交差する角部55から成る。そして、この角部55の軸方向位置は、内輪3の側面3bよりも軸方向他方側に位置している。
【0039】
ここで、円すいころ軸受1(内輪3)が回転した場合の軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油の流れについて説明する。円すいころ軸受1(内輪3)が回転することで、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油には、遠心力によって径方向外側向きの力が作用し、潤滑油の一部は内輪3の側面3bに沿って流れる(
図2参照)。
そこで、本実施形態では、前記のとおり、角部55の軸方向位置がこの側面3bよりも軸方向他方側に位置していることから、側面3bに沿って流れる潤滑油は環状隙間A2に届きにくくなるので、環状隙間A2を通過しようとする潤滑油を減らすことができる。
【0040】
そして、
図3に示すように、環状隙間A2を通過しようとする潤滑油が存在していても、内環状面32には、前記溝42が形成されていることから、保持器10が回転することで、この潤滑油を軸方向一方側へ送り出すことができ、環状隙間A2を通じて軸受内部に流れる潤滑油量を減らすことができる。この結果、円すいころ軸受1の撹拌抵抗を低減することが可能となる。
【0041】
また、
図2において、小径環状部11の軸方向一方側の側面33は、その半径方向外寄りの領域に、半径方向外側に向かって軸方向一方側に傾斜する外側傾斜面45を有している。この外側傾斜面45は、円筒状である外環状面31と鋭角で交差する円すい面となっている。このため、小径環状部11の軸方向一方側の外周端部は、外側傾斜面45と外環状面31とが鋭角に交差する角部52から成る。そして、この角部52の軸方向位置は、外輪2の軸方向一方側の側面2bの軸方向位置と概ね一致している。なお、
図2に示す実施形態では、角部52は側面2bよりも僅かに軸方向一方側に位置している。
【0042】
この構成によれば、遠心力によって、小径環状部11の側面33に沿って流れてきた潤滑油が、遠心力によって角部52から外方に飛ばされたときに、その飛散する方向は外輪2の側面2bから離れた向きとなるので、環状隙間A1を通過しようとする潤滑油を減らすことができる。
【0043】
そして、
図4に示すように、環状隙間A1を通過しようとする潤滑油が存在していても、外環状面31(
図4参照)には、前記溝41が形成されていることから、保持器10が回転することで、この潤滑油を軸方向一方側へ送り出すことができ、環状隙間A1を通じて軸受内部に流れる潤滑油量を減らすことができる。この結果、円すいころ軸受1の撹拌抵抗を低減することが可能となる。
【0044】
なお、前記実施形態では、小径環状部11の外環状面31及び内環状面32の双方に、溝41,42を形成する場合について説明したが、外環状面31及び内環状面32の内の一方にのみ、保持器10が一方向(矢印R方向)に回転すると環状隙間の潤滑油を軸方向一方側へ向かって流す溝41(42)を形成してもよい。例えば、内環状面32にのみ溝42が形成されており、外環状面31は平滑な面であってもよい。
【0045】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の円すいころ軸受は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、軸方向一方側から潤滑油が軸受内部へ流入可能となるころ軸受として、円すいころ軸受1について説明したが、円筒ころ軸受であってもよい。
また、前記実施形態では、保持器10の小径環状部11の側面33を、折れ曲がっている形状としているが、これに限らず、平面であってもよい。