(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の整流素子は、前記アンテナ端子から入力される高周波信号の振幅が前記電源電圧で決まる所定の電圧レベルよりも小さいときは導通せず、前記振幅が前記所定の電圧レベルより大きいときに導通することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の復調回路。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグは、個体の識別や商品管理等に利用され、無線で通信を行う。
【0003】
図1に示す一般的なRFIDタグ100は、アンテナ101と、LSIC(Large-Scaled Integrated Circuit)等のチップ105を有する。チップ105は、アンテナ端子102及び103で受信された無線信号から電力供給を受け、無線信号に含まれる命令やデータを処理する。電圧生成部106は、供給された電力から電源電圧vdd及びvssを生成する。アナログ部110の復調回路111は、アンテナ端子102、103で受信された信号pwrp及びpwrmから論理処理に用いる制御命令やデータを取り出し、復調信号(demout)をデータサンプリング回路12に供給する。信号pwrpとpwrmは互いに逆相であり、論理処理用のデータや制御命令が振幅変調(ASK: Amplitude Shift Keying)により搬送波に重畳されている。
【0004】
図2に復調回路111の構成例を示す。復調回路111は入力信号pwrp(またはpwrm)を抵抗分圧して得られる信号askl、askhの差分に基づいてデータ値を検出し、復調信号(demout)を出力する。データサンプリング回路12は、復調信号をクロックに同期させてロジック部7に転送する(datain)。ロジック部7から出力された返信応答のためのデータ(dataout)は、アナログ部110の送信レート調整回路14でタイミング調整され(modin)、変調回路13で変調されてアンテナ端子102及び103に出力される。
【0005】
図3に示すように、アンテナ端子102、103が受ける電力の大きさは変動する。
図3は、電圧生成部106による整流動作の概念図であり、細い実線は信号波形pwrp、破線は信号波形pwrmである。小電力入力とは、生成すべきvdd-vss間の電圧ターゲットよりもpwrpとpwrmの振幅が小さい場合であり、電圧生成回路106は昇圧ポンプ機能を用いてvddとvssの間に所定の電圧を発生させる。大電力入力とは、生成すべきvdd-vss間の電圧ターゲットよりもpwrpとpwrmの振幅が大きい場合であり、電圧生成回路106はvddとvssの間の電圧を所定の電圧値に制限する。アンテナ端子102、103が受ける電力の大きさはリーダライタ等の通信相手とRFIDタグ100の間の距離に影響される。
【0006】
図4は、RFIDタグ100とリーダライタ200の間の通信距離と、RFIDタグ100が受信する電力の関係を示す図である。
図4の上部で、太い円弧は強い電力を、細い円弧は弱い電力を示す。
図4の下部で、横軸はリーダライタ200からの距離、縦軸を電力として、リーダライタ200から送出される電力を示す。RFIDタグの種類に応じて(タグA、タグB、タグC等)、動作可能な受信電力が異なる。RFIDタグ100がリーダライタ200に近い位置で通信を行う場合、RFIDタグ100は大きな電力をアンテナ端子102、103で受信する。RFIDタグ100がリーダライタ200から遠ざかるとRFIDタグ100がリーダライタ200から受信する電力は小さくなる。
図4の例では、タグAは受信可能な電力がタグBやタグCよりも高く、距離d4の位置では受信電力不足でリーダライタ200と通信できない。タグBは受信可能な電力がタグAやタグCよりも低く、距離d4の位置でもリーダライタ200と通信可能であるが、距離d1までリーダライタ200に近づくと通信できなくなる。タグCはタグBと同等の小電力でも通信可能であり、かつタグAと同等の大電力でも通信可能である。タグCは距離d1からd4までの全ての範囲でリーダライタ200との通信が可能であり、タグAやタグBと比較してユーザにとって使いやすい製品となる。したがって、RFIDタグ100の受信可能な電力範囲は、大電力から小電力までカバーできる範囲であることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態を説明する前に、
図5〜
図9を参照して、発明者が見出した技術課題、すなわち受信電力の変動に起因するRFIDタグの動作特性の悪化を説明する。第1に、小電力入力時に復調回路111でのデータ値の判別が困難になる。これを回避しようとすると、大電力入力時に復調回路111の信号検出用のトランジスタが入力閾値に対してマージンレスとなりやすく、応答が遅くなる。第2に、受信電力レベルの変動により、通信中に復調回路111に入力される信号の直流電圧レベルや差電圧が変化するため、復調回路111の信号検出特性が悪くなる。さらに、「L」データ入力時にはキャリアの振幅が小さくなることから、小電力入力時と類似した状態になり、「H」データ入力時には大電力入力時と類似した状態となる。これらはいずれもRFIDタグの動作特性の悪化の原因となる。
【0014】
図5に示すように、復調回路111では各種の信号波形が生成される。
図2の構成ではアンテナ端子102と電源電圧vssの間に、整流素子であるダイオードD01と、抵抗R1、R2、R3が直列接続される。ダイオードD01はたとえばnMOSトランジスタである。
図5の上段及び中段で、信号pwrpはアンテナ端子102から入力された信号である。信号envは、入力信号pwrpの包絡線のうち高い電圧側の電圧値からダイオード(nMOSトランジスタ)D01の閾値電圧vthが低くなった電圧波形であり、時間的な遅延が反映されている。
【0015】
信号asklは、R2とR3の間のノードから取り出される電圧波形であり、envとvssの間を抵抗分割した電圧を有する。信号asklは第1アンプ(AMP1)に入力され、負帰還制御(平均化)される。信号asklfは、第1アンプ(AMP1)の出力に対してローパスフィルタ(LPF)を通過させた成分であり、第2アンプ(AMP2)の一方の入力端子に接続される。信号askhは、復調回路111のR1とR2の間のノードから取り出される電圧波形であり、envとvssの間を抵抗分割した電圧を有する。信号askhは第2アンプ(AMP2)の他方の入力端子に接続される。askhの電圧がasklfの電圧よりも高いときは、復調回路111の出力demoutは「H」となり、askhの電圧がasklfの電圧よりも低いときは、demoutは「L」となる。これにより、
図5の下段に示すように、受信したpwrpの振幅が大きいときは「H」データとして判定され、pwrpの振幅が小さいときは「L」データとして判定される。
【0016】
図6は、大電力時と小電力時の各信号の電圧レベルの概念を示す図である。
図3にも示したように、大電力時は入力信号pwrpは電源電圧vdd及びvssと交差する振幅で振動する。そのため、信号envは電源電圧vddに近い電圧、かつpwrpの最も高い電圧よりもD01の閾値電圧vthnだけ低い電圧となる。小電力時には、昇圧により電源電圧vdd、vssが入力信号pwrpから生成されるため、入力信号pwrpはvdd、vssと交差せず、vddとvssの間で振動する。そのため、信号envは(vdd-vss)/2よりもvssに近い側で、pwrpの最も高い電圧よりもダイオードD01の閾値電圧vthnだけ低い電圧となる。大電力時には、askhとaskl(またはasklf)はvssからvddに寄った電圧となりやすい。小電力時には、askhとaskl(またはasklf)はvddからvssに寄った電圧となりやすい。
【0017】
図7は、復調回路111の第2アンプ(AMP2)の回路構成を示す。第2アンプ(AMP2)は信号検出用のアンプであり、askhとaskl(またはasklf)の差電圧から信号の「H」と「L」を判定する。しかし、
図6に示すように、小電力時にはaskhとaskl(またはasklf)の差電圧Δvは大電力時と比較して小さくなることと、vddとvssの間の電圧も小さくなることのため、受信が困難になりやすい。
【0018】
これを回避するために、第2アンプ(AMP2)は入力信号をpMOSで受ける構成にして、小電力時にaskh入力端子のゲート入力電圧vinが大きく取れるようにする。しかし、このように設計した場合、大電力時にaskhが高くなると、小電力時に比べて第2アンプ(AMP2)のゲート入力電圧vinが小さくなりやすい(
図6参照)。すなわち、askhを受けるpMOSトランジスタがオンしにくくなる(入力閾値に対してマージンレスとなりやすい)。大電力時にaskh入力端子の入力ゲート電圧vinが小さいと、askhとasklの差電圧Δvが大きいにもかかわらず、第2アンプ(AMP2)の応答が遅くなる。
【0019】
図8は、
図2の第1アンプ(AMP1)の回路構成を示す。第1アンプ(AMP1)でも第2アンプ(AMP2)と同様の問題が起きる。第1アンプ(AMP1)は、復調回路111のasklの平均化電圧を生成するアンプである。アンテナ端子102に入力される信号pwrpの振幅の変動により、第1アンプ(AMP1)に入力される信号の直流(DC)レベルや差電圧Δvが変わる。小電力時の検出電圧が(vdd-vss)/2よりも低くなった場合に入力ゲート電圧vinを大きく取れるようにするために第1アンプ(AMP1)への入力をpMOSトランジスタで受ける構成とする。そうすると、大電力時に負帰還を受けるトランジスタのゲート入力電圧vinが小さくなり、入力閾値に対してマージンレスとなりやすい。その結果、第1アンプ(AMP1)の応答が遅くなる。
【0020】
図9は、第2の課題を説明する図である。RFIDタグ100とリーダライタ200との通信は、搬送波(キャリア)の振幅の大きさまたは振幅の有無による「H」と「L」のデータの組み合わせによって行われる。
図9に示すように、通信データの符号により入力信号pwrpの振幅期間の割合が変わると、復調回路111で生成される信号askhとasklの電圧が変わる。第1アンプ(AMP1)から出力される平均化電圧やLPF通過後の信号asklfは、askhやasklの電圧変化に対して時間遅れがある。そのため、第2アンプ(AMP2)の差電圧検出特性が悪化する。
【0021】
また、
図9に示すように、askhの電圧変動により第2アンプ(AMP2)の入力ゲート電圧vin、すなわちvddとaskhとの間の電圧が変動する。入力ゲート電圧vinの変化は信号askhの変化に起因し、
図9ではこの変化はΔVaskhで表わされている。入力ゲート電圧vinの変動によっても第2アンプ(AMP2)の応答特性が悪化する。
【0022】
実施形態では、上述した技術課題を解決して、ワイドレンジの電力変動に対して安定した動作を実現する復調回路と、これを用いた無線タグ装置を提供する。
【0023】
図10は、実施形態の復調回路が適用される無線タグ装置1の概略図である。無線タグ装置1は、アンテナ2と、LSIC等のチップ5を有する。チップ5は、電圧生成部6、ロジック部7、アナログ部10を有する。チップ5内の回路は、アンテナ端子3p、3mから入力される高周波(RF)の信号pwrp、pwrmから電力供給を受けて、種々の処理を行う。
【0024】
アナログ部10は、復調回路11、データサンプリング回路12、変調回路13、送信レート調整回路14、及び発振回路15を有する。データサンプリング回路12と変調回路13と送信レート調整回路14の機能構成は、
図1のデータサンプリング回路12、変調回路13、及び送信レート調整回路14と同じであり、説明を省略する。発振回路15は、データサンプリングに用いるクロック(clki)、送信レート調整に用いるクロック(clko)、ロジック部7で各種論理処理に用いるクロック(clkl)等を生成する。ロジック部7の機能構成は
図1のロジック部7と同じであり、説明を省略する。
【0025】
図11は、電圧生成部6の回路構成例を示す。電圧生成部6は、整流回路21、シャント回路22、低電圧検出回路23、及び基準電圧生成回路24を有する。整流回路21はアンテナ端子3p、3mから入力される信号pwrp及びpwrmから、電源電圧vdd及びvssを生成する。小電力時にvdd-vss間の電圧のターゲットよりも入力信号pwrp、pwrmの振幅が小さいときは、整流回路21はダイオードと容量で構成される昇圧ポンプ27の機能を用いて、vdd-vss間に必要な電圧を発生させる。低電圧検出回路23は、生成された電圧が小さい場合に、アナログ部10とロジック部7を非活性にする。シャント回路22は大電力時にvdd-vss間の電圧が昇圧動作により高くなりすぎないように電圧を制限する。シャント回路22での電圧制御は、基準電圧生成回路24で生成された基準電圧vrefを用いて行われる。電源電圧vddとvssの抵抗分割ノードvmsntを検出対象とし、vmsntがvrefよりも高くなるとvddとvssを短絡することで電圧制御する。電源起動時には、vrefは理想の電圧値に到達していない。このときにシャント回路が誤動作するのを防止するため、低電圧検出回路23で定電圧を検出しているときには(xrstが「L」レベル)、vddとvssの間のシャントを無効にする制御を行ってもよい。
【実施例1】
【0026】
図12は、実施例1の復調回路11Aの回路構成を示す。復調回路11Aは、アンテナ端子3pと電源電圧vssの間に、直列接続された第1ダイオード(D01)71及び分圧回路70と、分圧回路70の一部の抵抗と並列接続された第2ダイオード(D02)72を有する。この例では、第1ダイオード71と第2ダイオード72としてMOSトランジスタを用いており、分圧回路70は直列接続された抵抗75(R01)、抵抗76(R02)、抵抗77(R03)、及び抵抗78(R04)を有する。
【0027】
実施形態の特徴として、第2ダイオード72が分圧回路70の抵抗の一部(
図12では抵抗78)と並列接続されている。第2ダイオード72を分圧回路70の抵抗の一部と並列接続することで、大電力時にaskhとasklがvdd寄りになるのを防止する。
【0028】
分圧回路70の抵抗(R01)75と抵抗(R02)76の間のノードから信号askhが取り出され、信号検出用の第2アンプ(AMP2)82の一方の入力に接続される。分圧回路70の抵抗(R02)76と抵抗(R03)77の間のノードから信号asklが取り出される。信号asklは平滑化用の第1アンプ(AMP1)81で平滑化され、ローパスフィルタ(LPF)で遮断周波数より高い周波数成分が除去される。ローパスフィルタ(LPF)の出力信号asklfは、信号検出用のアンプ(AMP2)82の他方の入力に接続される。第2アンプ82は2つの信号の差分を出力する。この差電圧は増幅され、復調信号(demout)が復調回路11Aから出力される。
【0029】
分圧回路70の抵抗(R03)77と抵抗(R04)78の間のノードから信号asksが取り出される。信号asksは、抵抗(R04)78と並列接続される第2ダイオード72のドレインとゲートに入力される。第2ダイオード72のソースは電源電圧vssに接続されている。第2ダイオード72のオン抵抗は抵抗78の抵抗よりも小さいが、小電力時の電流ではオンしないように閾値電圧が設定されている。すなわち、第2ダイオード72は、小電力時にはONしないが大電力時にオンする非線形素子である。大電力時に第2ダイオード72に流れる電流は抵抗78の電流よりも十分に大きくなる。
【0030】
説明を簡単にするために分圧回路70の抵抗75、76、77、78の抵抗比を1:1:0.5:0.5とすると、第2ダイオード72がない場合は、信号askhはenvとvssの間の電圧を2/3の分圧比で分圧したものである。第2ダイオード72を挿入することで、大電力時には第2ダイオード72が導通して、信号askhはenvとvssの間の電圧を3/5の分圧比で分圧したものになる。この分圧比の差分だけ、askhの電圧レベルはvss側に近くなる。
【0031】
一方、小電力の場合は、第2ダイオード72が挿入されていても導通しないので、信号askhは常にenvとvssの間の電圧を2/3の分圧比で分圧したものとなる。すなわち、従来と同等の動作を行う。
【0032】
信号asklについても同様に、第2ダイオード72がない場合は、信号asklはenvとvssの間の電圧を1/3の分圧比で分圧したものである。第2ダイオード72を挿入することで大電力時には第2ダイオード72が導通して、信号asklはenvとvssの間の電圧を1/5の分圧比で分圧したものになる。この分圧比の差分だけ、asklの電圧レベルはvss側に近くなる。他方、小電力の場合は、第2ダイオード72が挿入されていても導通しないので、信号askhは常にenvとvssの間の電圧を1/3の分圧比で分圧したものとなる。すなわち、従来と同等の動作を行う。
【0033】
図13は、大電力時に復調回路11Aで生成される各種信号の電圧レベルを、従来の復調回路111での電圧レベルと比較して示す図である。従来構成では、大電力時にaskhの電圧がvdd寄りになるため、第2アンプ82の入力受け側のpMOSトランジスタに印加される電圧vinを十分にとることができない。これに対し、実施例では
図12の構成とすることで、大電力時にaskhがvdd寄りになるのを防止して、vinを大きくすることができる。したがって、第2アンプ82の応答特性が向上する。
【0034】
また、大電力時のasklの増大を防止できるので、第1アンプ81で負帰還を受けるpMOSの入力電圧(vddとasklの差)を大きくすることができ、第1アンプ81の応答特性が向上する。
【0035】
図14は、小電力時に復調回路11Aで生成される各種信号の電圧レベルを、従来の復調回路111での電圧レベルと比較して示す図である。上述のように、第2ダイオード72は、小電力時の電流ではオンしないように閾値電圧が設定されており、従来と同様に第1アンプ81と第2アンプ82の入力受け側のpMOSトランジスタの電圧vinを十分にとることができる。
【0036】
このように、実施形態ではasklやaskhが入力信号pwrpの電圧に依存して変動することを抑制し、動作を安定化することができる。また、小電力時には第2ダイオード72はオフのままであることから、余分な電流消費が発生せず、従来通り低電力で動作することができる。
【0037】
図15と
図16は、
図14の変形例を示す。第1ダイオード71と第2ダイオード72はMOSトランジスタに限定されず、PN接合ダイオード83、84を用いてもよい。
図15の復調回路11Bでは、抵抗78と並列接続される第2ダイオードとして、PN接合ダイオード83を用いている。PN接合ダイオード83は電源電圧vssに接続されている。
図16の復調回路11Cでは、第1ダイオードとしてと第2ダイオードの双方にPN接合ダイオード83、84を用いている。これらの構成でも、大電力時にaskh、asklがvdd寄りになってアンプ81、82への入力電圧vinが小さくなることを防止できる。
【実施例2】
【0038】
図17は、実施例2の復調回路11Dの回路構成を示す。復調回路11Dは、実施例1の構成に加えて、分圧回路70の別の抵抗(R02)76と並列に接続される第3ダイオード73を有する。
【0039】
実施例1の構成で、第2ダイオード(D02)72がオフしている状態では、抵抗78に流れる電流をIr04、抵抗値をR02としたとき、信号asksの電圧はIr04*R02で表される。第2ダイオード72がオンした場合、asksの電圧は第2ダイオード72の閾値電圧Vthd02まで低下する。この電圧(Ir04*R04−Vthd02)は抵抗(R01)75、抵抗(R02)76、抵抗(R03)77により分配されるため、第2ダイオード72がオンすると、第2ダイオード72がオフしていたときと比較してaskhとasklの間の差電圧Δvは増大する。
【0040】
図18は、askhとasklの差電圧Δvの変動を示す図である。
図18の上段は、askhとasklの差電圧Δvが大きい場合(ΔV1)、下段はaskhとasklの差電圧Δvが小さい場合(ΔV2)の各種信号の電圧レベルを示す。搬送波(キャリア)が入力されている状態では、askhはasklfよりも高い状態である。データ通信のためにキャリアの振幅がなくなる(もしくは小さくなる)とaskhがasklfよりも低い電圧となることでデータ「L」が認識される。キャリアの振幅がなくなる(もしくは小さくなる)とaskhの電圧は低下を始めるが、最初のasklfとの差電圧が大きいと、askhがasklfと交差するまでの時間が長くなる。すなわち、復調回路11のデータ検出に遅延が生じる。また、検出結果で「L」期間の幅が短く判定されるおそれがある。
【0041】
これらの問題は、第3ダイオード73を抵抗
76と並列に接続することで解決することができる。第3ダイオード73の閾値電圧をVthd03とすると、ΔV2<Vthd03<ΔV1に設定することで、askhとasklの間の差電圧ΔvがVthd03より大きくなることを防止する。askhとasklの間の差電圧ΔvがΔV1であった場合と比較すると、第3ダイオード73を追加することで
図18の上段から下段への変化となるため、検出遅延は減少する。また、「L」パルス幅が短く判定される事態を防止することができる。
【0042】
なお、第3ダイオード73は、MOSトランジスタに替えてpn接合ダイオードとしてもよい。
【実施例3】
【0043】
図19は第3実施形態の復調回路11Eの回路構成を示す。実施例1と実施例2では、第1ダイオード(D01)で検出する包絡線を、高い電圧側の包絡線としていた。実施例3では、第1ダイオード(D01)85で低い電圧側の包絡線を検出する。一例として、第1ダイオード(D01)85と第2ダイオード(D02)86にpMOSトランジスタを用る。また、アンテナ端子3pと電源電圧vddの間に、第1ダイオード71と分圧回路70を直列接続し、第2ダイオード86が分圧回路70の抵抗の一部(この例では抵抗(R04)78)と並列接続され、電源電圧vddに接続されている。第2ダイオード86は、小電力時の電流ではオンしないように閾値電圧が設定されている。また、第2ダイオード86のオン抵抗は抵抗78の抵抗よりも小さい。
【0044】
分圧回路70の抵抗(R01)75と抵抗(R02)76の間のノードから信号asklが取り出され、信号検出用の第2アンプ(AMP2)92の一方の入力に接続される。分圧回路70の抵抗(R02)76と抵抗(R03)77の間のノードから信号askhが取り出される。信号askhは平滑化用の第1アンプ(AMP1)91で平滑化され、ローパスフィルタ(LPF)で遮断周波数より高い周波数成分が除去される。ローパスフィルタ(LPF)の出力信号askhfは、信号検出用のアンプ(AMP2)92の他方の入力に接続される。第2アンプ92は2つの信号の差分を出力する。この差電圧は増幅され、復調信号(demout)が復調回路11Eから出力される。
【0045】
図20は、第2アンプ92の構成例を示す。第2アンプ92で入力askhfとasklを受けるトランジスタはnMOSトランジスタである。
図19のように、第2ダイオード86を抵抗78と並列接続することで、大電力時にasklとvssの間の入力電圧vinを大きくとることができ、応答特性が良好になる。
【0046】
図21は、第1アンプ91の構成例を示す。第1アンプ91で、askhを受けとるトランジスタと負帰還を受け取るトランジスタはnMOSトランジスタである。
図19の構成により、大電力時に入力電圧vinを大きくとることができ、応答特性が良くなる。
【0047】
図22は、小電力時に復調回路11Eで生成される各種信号の信号波形を示す。信号envはvssから第1ダイオード85の閾値電圧vthだけ高い電圧である。第2アンプ92は、asklがaskhfよりも小さいときにデータ「H」と判定し、asklがaskhfよりも大きいときに「L」と判定し、復調信号demoutを出力する。
【0048】
図23は、大電力時の復調回路11Eで生成される各種信号の電圧レベルを、従来の復調回路111での電圧レベルと比較して示す図である。従来構成では、大電力時にasklやaskhの電圧値がvss寄りになるため、第1アンプ91及び第2アンプ92への入力電圧vinを十分にとることができない。これに対し、実施例3では
図19の構成により、大電力時にaskl及びaskhがvss寄りになるのを防止してvinを大きくすることができる。これにより第1アンプ91と第2アンプ92の応答特性が向上する。
【0049】
図24は、小電力時の復調回路11Eの各種信号の電圧レベルを示す。小電力時には、第2ダイオード86がオフとなることから、余分な電流消費を生じさせずに、第1アンプ91と第2アンプ92の入力電圧vinを従来と同様に十分にとることができる。
【0050】
なお、
図19の構成に、実施例2のように第3ダイオードを追加してもよいし、ダイオードをpMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを用いてもよい。第3ダイオードを接続する場合は、抵抗76と並列に接続され、かつ抵抗76と抵抗77の間のノードから取り出されるaskhに接続される。
【0051】
以上のように、分圧回路の一部の抵抗と並列に整流素子を接続することで、復調回路11の特性を改善することができる。従来よりも幅広い入力レンジに対して復調動作が可能となり、通信中の包絡線電圧の変化に対しても安定してデータを検出することができる。