(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492853
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの成形方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
B29D30/26
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-61997(P2015-61997)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-179642(P2016-179642A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−086488(JP,A)
【文献】
特開2012−086487(JP,A)
【文献】
特開2015−020413(JP,A)
【文献】
特開2010−036478(JP,A)
【文献】
特開2013−071288(JP,A)
【文献】
特開2009−208373(JP,A)
【文献】
特開2004−106644(JP,A)
【文献】
特開2012−131167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナの外周側にカーカス材が配置された筒状のバンド部材の筒軸方向両端部それぞれの所定の位置にビード部材を外挿して設置し、次いで、前記バンド部材の外周側に環状の規制体を配置して前記バンド部材の筒軸方向中央部を膨張させつつ、前記規制体により前記バンド部材の筒軸方向中央部の膨出量を規制した状態にして、前記バンド部材の筒軸方向両端部それぞれの前記ビード部材を設置した位置よりも筒軸方向外側の部分をターンアップすることにより前記一対のビード部材を前記カーカス材で包み込んで円筒状の中間グリーンタイヤを成形し、次いで、前記規制体を退避させた後の前記中間グリーンタイヤの外周面に対し、予め円筒状に形成されたベルト部材の内周面を接合してグリーンタイヤを成形する空気入りタイヤの成形方法において、
前記ターンアップする前の前記バンド部材の筒軸方向両外側それぞれに周方向に間隔をあけて筒軸方向に延在する複数の押上レバーを配置し、これら押上レバーを前記バンド部材の筒軸方向中央側に向かって移動させるとともにその移動方向反対側端部を中心にして前記バンド部材の径方向外側に回動させて、前記押上レバーの移動方向側端部を前記バンド部材に当接させてターンアップさせ、その際に、前記押上レバーの移動方向側端部を、前記規制体の内周面と膨張している前記バンド部材の外周面との間に入り込ませて、前記押上レバーを筒軸方向に移動させつつ、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心とした前記バンド部材の径方向外側への回動を前記規制体により規制して前記ターンアップを行なうことを特徴とする空気入りタイヤの成形方法。
【請求項2】
前記規制体として、周方向に連続した状態の円環状の規制体を用いる請求項1に記載の空気入りタイヤの成形方法。
【請求項3】
前記規制体として、周方向に間隔をあけて配置される複数の円弧状のセグメントを用いる請求項1に記載の空気入りタイヤの成形方法。
【請求項4】
前記複数の円弧状のセグメントのうち少なくとも1つのセグメントの円弧長さを異ならせる請求項3に記載の空気入りタイヤの成形方法。
【請求項5】
インナーライナの外周側にカーカス材が積層された筒状のバンド部材が外周面に設置される成形ドラムと、前記バンド部材の筒軸方向両端部をターンアップするターンアップ機構と、前記成形ドラムの外周面に設置された前記バンド部材の外周側の筒軸方向中央部のセット位置とこのセット位置から外れた退避位置とに移動可能に設置される環状の規制体と、予め円筒状に形成されたベルト部材を前記成形ドラムに搬送する移送機とを備え、前記成形ドラムがドラム軸方向両端部にビードセット部を有し、前記ターンアップ機構がそれぞれのビードセット部のドラム軸方向外側に設置されて、前記成形ドラム上で成形された中間グリーンタイヤの外周面に前記ベルト部材の内周面を接合してグリーンタイヤを成形する構成にした空気入りタイヤの成形装置において、
前記ターンアップ機構が、ドラム周方向に間隔をあけて配置されてドラム軸方向に延在する複数の押上レバーと、これら押上レバーを前記成形ドラムのドラム軸方向中央側に向かって移動させる移動機構とを備えて、
前記中間グリーンタイヤを成形する際に、前記成形ドラムの外周面に配置された前記バンド部材の筒軸方向中央部を膨張させつつ、前記セット位置に配置した前記規制体により前記バンド部材の筒軸方向中央部に膨出量を規制した状態にして、前記押上レバーをドラム軸方向中央側に向かって移動させるとともに、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心にして前記押上レバーをドラム径方向外側に回動させてその移動方向側端部を前記バンド部材の筒軸方向両端部に当接させてターンアップする構成にし、かつ、前記押上レバーの移動方向側端部を、前記規制体の内周面と膨張している前記バンド部材の外周面との間に入り込ませ、前記押上レバーを筒軸方向に移動させつつ、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心とした前記バンド部材の径方向外側への回動を前記規制体により規制して前記ターンアップを行なう構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの成形装置。
【請求項6】
前記規制体が、周方向に連続した状態の円環状の規制体により構成される請求項5に記載の空気入りタイヤの成形装置。
【請求項7】
前記規制体が、周方向に間隔をあけて配置される複数の円弧状のセグメントによる構成される請求項5に記載の空気入りタイヤの成形装置。
【請求項8】
前記複数の円弧状のセグメントのうち少なくとも1つのセグメントの円弧長さが異なっている請求項7に記載の空気入りタイヤの成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの成形方法および装置に関し、さらに詳しくは、円筒状の中間グリーンタイヤの外周面に、予め円筒状に形成されたベルト部材を接合してグリーンタイヤを成形する際に、バンド部材をより確実にターンアップさせることができるとともに、メンテナンス頻度を少なくして生産性の向上に寄与する空気入りタイヤの成形方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤはグリーンタイヤを加硫することにより製造される。このグリーンタイヤを成形する方法として、インナーライナの外周側にカーカス材が配置された筒状のバンド部材と、このバンド部材の筒軸方向両端部に配置された一対のビード部材とからなる中間グリーンタイヤを成形し、次いで、予め円筒状に成形されたベルト部材を中間グリーンタイヤに外挿するように配置して、中間グリーンタイヤの外周面に接合する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
この成形方法では、中間グリーンタイヤを成形する際に、筒状のバンド部材の筒軸方向中央部を膨張させた状態にする。次いで、ターンアップブラダを膨張させることによりバンド部材の筒軸方向両端部をターンアップさせて対向するバンド部材の部分に密着させて、それぞれのビード部材をカーカス材で包み込んで円筒状の中間グリーンタイヤを成形する。次いで、予め円筒状に形成したベルト部材を中間グリーンタイヤに外挿させて配置した後、ベルト部材の内周面を中間グリーンタイヤの外周面に接合してグリーンタイヤを成形する。
【0004】
ターンアップする際にバンド部材の筒軸方向中央部が膨出し過ぎると、後工程において円筒状のベルト部材を中間グリーンタイヤに外挿させることができなくなる。そこで、バンド部材の筒軸方向中央部の外周側に環状の規制体を配置して、この規制体によりバンド部材の過剰な膨出を規制している。しかしながら、この規制体に膨張させたターンアップブラダが接触することがあり、両者の接触が繰り返されるとターンアップブラダが損傷するという問題がある。そのため、ターンアップブラダを頻繁にメンテナンスする必要が生じる。ターンアップブラダが損傷するとタイヤの成形工程が中断するので生産性が低下する。さらには、カーカス材等の曲げ剛性がある程度高くなると、ターンアップブラダでは、ターンアップさせたバンド部材の筒軸方向両端部を対向するバンド部材の部分に不十分に密着させることが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−106644号公報
【特許文献2】特開2012−86487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、円筒状の中間グリーンタイヤの外周面に、予め円筒状に形成されたベルト部材を接合してグリーンタイヤを成形する際に、バンド部材をより確実にターンアップさせることができるとともに、メンテナンス頻度を少なくして生産性の向上に寄与する空気入りタイヤの成形方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの成形方法は、インナーライナの外周側にカーカス材が配置された筒状のバンド部材の筒軸方向両端部それぞれの所定の位置にビード部材を外挿して設置し、次いで、前記バンド部材の外周側に環状の規制体を配置して前記バンド部材の筒軸方向中央部を膨張させつつ、前記規制体により前記バンド部材の筒軸方向中央部の膨出量を規制した状態にして、前記バンド部材の筒軸方向両端部それぞれの前記ビード部材を設置した位置よりも筒軸方向外側の部分をターンアップすることにより前記一対のビード部材を前記カーカス材で包み込んで円筒状の中間グリーンタイヤを成形し、次いで、前記規制体を退避させた後の前記中間グリーンタイヤの外周面に対し、予め円筒状に形成されたベルト部材の内周面を接合してグリーンタイヤを成形する空気入りタイヤの成形方法において、前記ターンアップする前の前記バンド部材の筒軸方向両外側それぞれに周方向に間隔をあけて筒軸方向に延在する複数の押上レバーを配置し、これら押上レバーを前記バンド部材の筒軸方向中央側に向かって移動させるとともにその移動方向反対側端部を中心にして前記バンド部材の径方向外側に回動させて、前記押上レバーの移動方向側端部を前記バンド部材に当接させてターンアップさ
せ、その際に、前記押上レバーの移動方向側端部を、前記規制体の内周面と膨張している前記バンド部材の外周面との間に入り込ませて、前記押上レバーを筒軸方向に移動させつつ、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心とした前記バンド部材の径方向外側への回動を前記規制体により規制して前記ターンアップを行なうことを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤの成形装置は、インナーライナの外周側にカーカス材が積層された筒状のバンド部材が外周面に設置される成形ドラムと、前記バンド部材の筒軸方向両端部をターンアップするターンアップ機構と、前記成形ドラムの外周面に設置された前記バンド部材の外周側の筒軸方向中央部のセット位置とこのセット位置から外れた退避位置とに移動可能に設置される環状の規制体と、予め円筒状に形成されたベルト部材を前記成形ドラムに搬送する移送機とを備え、前記成形ドラムがドラム軸方向両端部にビードセット部を有し、前記ターンアップ機構がそれぞれのビードセット部のドラム軸方向外側に設置されて、前記成形ドラム上で成形された中間グリーンタイヤの外周面に前記ベルト部材の内周面を接合してグリーンタイヤを成形する構成にした空気入りタイヤの成形装置において、前記ターンアップ機構が、ドラム周方向に間隔をあけて配置されてドラム軸方向に延在する複数の押上レバーと、これら押上レバーを前記成形ドラムのドラム軸方向中央側に向かって移動させる移動機構とを備えて、前記中間グリーンタイヤを成形する際に、前記成形ドラムの外周面に配置された前記バンド部材の筒軸方向中央部を膨張させつつ、前記セット位置に配置した前記規制体により前記バンド部材の筒軸方向中央部に膨出量を規制した状態にして、前記押上レバーをドラム軸方向中央側に向かって移動させるとともに、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心にして前記押上レバーをドラム径方向外側に回動させてその移動方向側端部を前記バンド部材の筒軸方向両端部に当接させてターンアップする構成に
し、かつ、前記押上レバーの移動方向側端部を、前記規制体の内周面と膨張している前記バンド部材の外周面との間に入り込ませ、前記押上レバーを筒軸方向に移動させつつ、前記押上レバーの移動方向反対側端部を中心とした前記バンド部材の径方向外側への回動を前記規制体により規制して前記ターンアップを行なう構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中間グリーンタイヤを成形する際に膨張させるバンド部材の筒軸方向中央部の膨出量を規制体により規制する構成でありながら、バンド部材の筒軸方向両端部に押上レバーを当接させてターンアップさせるので、規制体に押上レバーが接触してもターンアップ機構が損傷して機能しなくなる可能性はターンアップブラダを用いる場合に比して遥かに低くなる。それ故、ターンアップ機構のメンテナンス頻度を少なくすることができる。また、ターンアップ機構の故障により成形工程が中断することを防止するには有利になるのでタイヤの生産性向上にも寄与する。さらには、カーカス材等の曲げ剛性が高い場合であっても、ターンアップブラダを用いる場合に比してバンド部材をより確実にターンアップさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの成形装置の概要を縦断面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の成形ドラムおよび規制体を側面視で例示する説明図である。
【
図3】規制体の変形例を側面視で示す説明図である。
【
図4】バンド部材に規制体を外挿した状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】バンド部材の筒軸方向中央部の膨出量を規制した状態で膨張させる工程を縦断面視で例示する説明図である。
【
図6】バンド部材の方向両端部をターンアップする工程を縦断面視で例示する説明図である。
【
図7】中間グリーンタイヤの外周面にベルト部材の内周面を接合する工程を断面視で例示する説明図である。
【
図8】ターンアップ工程の別の実施形態を縦断面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気入りタイヤの成形方法および成形装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1、
図2に例示する本発明の空気入りタイヤの成形装置を用いて中間グリーンタイヤG1を成形し、次いで、この中間グリーンタイヤG1を加工してグリーンタイヤG2を成形する。この成形装置は、成形ドラム1と、ターンアップ機構3と、環状の規制体8と、予め円筒状に形成されたベルト部材15を成形ドラム1に搬送する移送機9とを備えている。ターンアップ機構3および規制体8は中間グリーンタイヤG1を成形する際に使用し、移送機9はグリーンタイヤG2を成形する際に使用する。
【0013】
成形ドラム1は、ドラム軸方向に間隔をあけて配置された一対のサイドドラム部2を有している。それぞれのサイドドラム部2にはドラム径方向に拡縮移動可能なビードセット部2aが設けられている。ビードセット部2aは、ドラム周方向に連続的にあるいは断続的に形成されている。
【0014】
成形ドラム1のドラム軸方向両端部に配置されたそれぞれのビードセット部2aのドラム軸方向外側にはターンアップ機構3が設置されている。ターンアップ機構3は、ドラム周方向に間隔をあけて配置されてドラム軸方向に延在する複数の押上レバー4と、これら押上レバー4を成形ドラム1のドラム軸方向中央側に向かって移動させる移動機構7とを備えている。
【0015】
押上レバー4は金属や硬質樹脂等の剛体により形成されている。押上レバー4のドラム軸方向位置は、移動機構7によって制御されて任意の位置に移動されて固定できる構成になっている。
【0016】
この実施形態では、成形ドラム1のドラム軸方向中央側に向かって移動する押上レバー4の移動方向端部には圧着ローラ5aが設けられ、移動方向反対側端部には回動軸5bが設けられている。押上レバー4は回動軸5bを中心にしてドラム径方向外側に回動する。押上レバー4は、例えばドラム周方向に中心角度2°〜5°の等ピッチで設けられる。
【0017】
押上レバー4には、ゴムやスプリング等により形成された拡径抑制リング6が外嵌されている。拡径抑制リング6は単数でも複数でもよい。この実施形態では、複数の拡径抑制リング6がドラム軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0018】
この実施形態の規制体8は、円弧状の複数のセグメント8a、8b、8cにより形成されていて、これらセグメント8a、8b、8cを周方向に連続した状態に連結させて円環状になっている。規制体8はこの実施形態のように複数のセグメント8a、8b、8cに分割された構造ではなく、一体化した円環体を用いることもできる。
【0019】
規制体8は周方向に切れ目なく連続する形態に限定されず、
図3に例示するように周方向に間隔をあけて配置される複数の円弧状のセグメント8a、8b、8cにより形成することもできる。このように周方向に断続する円環状の規制体8の場合は、すべてのセグメント8a、8b、8cの円弧長さの合計が、切れ目なく円環状にした場合の円周長さの50%以上であることが必要である。
【0020】
また、規制体8は1つに限らず、ドラム軸方向に複数配置することもできる。この場合は、複数の規制体8はそれぞれ独立別個に移動させる構成にする。
【0021】
以下に本発明の空気入りタイヤの成形方法の手順の一例を説明する。
【0022】
まず、
図4に例示するように、インナーライナ11の外周側にカーカス材12が配置された筒状のバンド部材10を準備する。詳述すると、カーカス材12の筒軸方向両端部の最内周側にはサイド部材14が配置されている。バンド部材10にはその他に適宜必要な部材が用いられる。
【0023】
このバンド部材10を
図4に例示するように成形ドラム1の外周面に配置して、バンド部材10の筒軸方向両端部それぞれの所定の位置(ビードセット部2aに相当する位置)にビード部材13を外挿して設置する。ビード部材13は、円環状のビードとビードの外周側に接合されたビードフィラにより構成されていて、ビードの内周面をバンド部材10の外周面に仮圧着させる。バンド部材10は成形ドラム1上で成形することも、別の場所で成形したものを用いることもできる。
【0024】
次いで、
図5に例示するようにバンド部材10の外周側の所定のセット位置に環状の規制体8を配置する。次いで、バンド部材10の内側に空気を注入してバンド部材10の筒軸方向中央部を膨張させるとともに、一対のサイドドラム部2のドラム軸方向の間隔を小さくするように少なくとも一方のサイドドラム部2を移動させる。これにより、バンド部材10(インナーライナ11およびカーカス材12)の筒軸方向中央部は外周側に膨張するが、規制体8の内周面に当接して膨出量が規制された状態になる。
【0025】
この状態で
図6に例示するように押上レバー4を成形ドラム1のドラム軸方向中央部に向かって移動させるともに、回動軸5bを中心にしてバンド部材10の径方向外側に回動させる。これにより、押上レバー4の移動方向側端部にある圧着ローラ5aがバンド部材10の内周面に当接して、バンド部材10の筒軸方向両端部それぞれのビード部材13を設置した位置よりも筒軸方向外側の部分をターンアップする。
【0026】
ターンアップさせたバンド部材10を、圧着ローラ5aによる押圧力によって、対向するバンド部材10の部分に圧着させて一対のビード部材13をカーカス材12により包み込んで円筒状の中間グリーンタイヤG1を成形する。このターンアップ工程では、押上レバー4が拡径抑制リング6によって径方向外側への回動が抑制されてバンド部材10の筒軸方向両端部がしっかりとターンアップされる。
【0027】
次いで、セット位置にある規制体8を、中間グリーンタイヤG1から離れた退避位置に退避させる。中間グリーンタイヤG1に対しては、
図7に例示するように予め円筒状に形成されたベルト部材15を移送機9によって移送する。ベルト部材15は、ベルト材16の外周面にトレッドゴム17が積層されて形成されている。ベルト部材15には適宜、その他の必要な部材が用いられる。
【0028】
移送したベルト部材15を中間グリーンタイヤG1に外挿した状態にして、中間グリーンタイヤG1を径方向外側にさらに膨張させて、その外周面にベルト部材15の内周面を接合してグリーンタイヤG2を成形する。中間グリーンタイヤG1とベルト部材16とはステッチャー等によってしっかりと接合させる。成形したグリーンタイヤG2は加硫用モールドの中に配置され後、所定温度および所定圧力で加硫されて空気入りタイヤが完成する。
【0029】
上記のとおり本発明によれば、バンド部材10の筒軸方向両端部に押上レバー4を当接させてターンアップさせるので、規制体8に押上レバー4が接触してもターンアップ機構3が損傷して機能しなくなる可能性はターンアップブラダを用いる場合に比して遥かに低くなる。また、押上レバー4のドラム軸方向位置は、移動機構7によって精度よく制御されるので、規制体8に押上レバー4が接触すること自体が回避される。
【0030】
それ故、ターンアップ機構3のメンテナンス頻度を少なくすることができる。また、ターンアップ機構3が故障して成形工程が中断することも回避できるのでタイヤの生産性向上にも寄与する。加えて、カーカス材12等の曲げ剛性が高い場合であっても、ターンアップブラダを用いる成形方法に比してバンド部材10をより確実にターンアップさせることができる。
【0031】
図8に例示するようにターンアップをすることもできる。この実施形態では、押上レバー4の移動方向側端部(圧着ローラ5a)を、規制体8の内周面と膨張しているバンド部材10の外周面との間に入り込ませている。そして、押上レバー4を筒軸方向に移動させつつ、押上レバー4の回動軸5bを中心としたバンド部材10の径方向外側への回動を規制体8により規制してターンアップを行なっている。
【0032】
この実施形態では、圧着ローラ5aが規制体8の内周面に当接して支えられ状態になり、規制体8が拡径抑制リング6として機能する。そのため、より強力にバンド部材10の筒軸方向両端部をターンアップさせることができる。したがって、カーカス材12等の曲げ剛性が特別に高い仕様のタイヤであっても安定してターンアップを行って成形することができる。
【0033】
図3に例示したように複数の円弧状のセグメント8(8a〜8c)を周方向に間隔をあけて配置する場合は、少なくとも1つのセグメント8の円弧長さを他のセグメント8の円弧長さと異ならせるとよい。例えば、すべてのセグメント8の円弧長さをそれぞれ異ならせる。これにより、成形される中間グリーンタイヤG1(ひいてはグリーンタイヤG2)は、成形する際に使用するセグメント8に起因して、構成部材(主にカーカス材12)が正多角形状に近似する形状になるような悪影響が生じない。
【0034】
これにより、製造したタイヤにもその悪影響がなくなるので、走行時にタイヤに特定の周波数で過大な振幅が生じる不具合を防止でき、RFVを低減するには有利になる。セグメント8の数は複数であれば特に限定されないが、例えば、3〜11程度、好ましくは3以上の素数にする。セグメント8の数を3以上の素数にすることにより、製造したタイヤのRFVを低減するには一段と有利になる。
【符号の説明】
【0035】
1 成形ドラム
2 サイドドラム部
2a ビードセット部
3 ターンアップ機構
4 押上レバー
5a 圧着ローラ
5b 回動軸
6 拡径抑制リング
7 移動機構
8 規制体
8a、8b、8c セグメント
9 移送機
10 バンド部材
11 インナーライナ
12 カーカス材
13 ビード部材
14 サイド部材
15 ベルト部材
16 ベルト材
17 トレッドゴム
G1 中間グリーンタイヤ
G2 グリーンタイヤ