特許第6492876号(P6492876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492876
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-69886(P2015-69886)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188060(P2016-188060A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松藤 登美男
(72)【発明者】
【氏名】服部 隆
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−123810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0085330(US,A1)
【文献】 特開2014−076790(JP,A)
【文献】 特開平10−230762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールに相対移動可能に支持されるアッパレールと、
前記ロアレールに対する前記アッパレールの相対移動の規制と許容とを切り替えるロック機構とを備え、
前記ロック機構は、
前記アッパレールと前記ロアレールとの間に挿入されるとともに前記アッパレールに揺動可能に支持される操作レバーと、
前記アッパレールと前記ロアレールとの間に前記操作レバーの揺動方向と同方向に変位可能に設けられ、前記操作レバーに連動することにより前記アッパレール及び前記ロアレールの両レールと係合して前記相対移動を規制するロック位置と前記両レールのどちらか一方との係合が解消されて前記相対移動を許容するアンロック位置との間を変位するロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置に保持されるように前記操作レバーを付勢する付勢部材とを有する車両用のシートスライド装置であって、
前記ロアレール及び前記ロック部材の一方に設けられ前記揺動方向に延びる係合爪と、
前記ロアレール及び前記ロック部材の他方に設けられ前記ロック部材が前記ロック位置に位置するときに前記係合爪と係合し前記ロック部材が前記アンロック位置に位置するときに前記係合爪と係合しない係合孔と、
前記アッパレール及び前記ロック部材の一方に固定され前記揺動方向に延びる軸状部材と、
前記アッパレール及び前記ロック部材の他方に設けられ前記軸状部材の軸方向変位を許容する孔部とを備え、
前記軸状部材及び前記孔部の協働により前記孔部に対する前記軸状部材の軸まわりの回転を規制する回転規制部を構成する車両用のシートスライド装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用のシートスライド装置において、
前記軸状部材は、軸心から外周までの間の距離を複数有し、
前記孔部は、その内周面において前記軸状部材の外周面と前記軸心からの距離が異なる複数箇所で接触する形状を有し、
これら前記軸状部材及び前記孔部により前記回転規制部を構成する車両用のシートスライド装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用のシートスライド装置において、
前記ロック部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記操作レバーが操作されることにより揺動する前記操作レバーに押圧されるアンロック方向被押圧部と、前記付勢部材の付勢力により揺動する前記操作レバーに押圧されるロック方向被押圧部とを有する車両用のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートスライド装置は、車体に取り付けられるロアレールと、シートに取り付けられるアッパレールとを備える。ロアレールは、その延伸方向に沿ってアッパレールを相対移動可能に支持する。また、車両用のシートスライド装置は、ロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制可能なロック機構を備える。
【0003】
特許文献1の車両用のシートスライド装置は、次に示すロック機構を備える。すなわち、ロック機構は、アッパレールの上方で当該アッパレールに対し上下方向に変位可能に支持されるロック部材と、アッパレールとロック部材との間に介在されロック部材を上方に付勢するコイルスプリングとを有する。ロック部材は、コイルスプリングの付勢方向すなわちアッパレールに対し上方に変位することによりロアレールに延設された係合爪と係合し、コイルスプリングの付勢力に抗する方向すなわちアッパレールに対し下方に変位することにより係合爪との係合が解消される。また、ロック機構は、操作レバーを有し、当該操作レバーの操作を通じてロアレールとアッパレールとの相対移動の規制と許容との切り替えが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ロック部材がアッパレールの上方に位置しているため、少なくとも操作レバーの一部がアッパレールの上方に位置するように当該操作レバーを配設する必要があり、車両用のシートスライド装置全体として大型化を招いていた。
【0006】
また、車両の走行に伴う振動によってロック部材がアンロック位置へ変位するのを防ぐため、通常、操作レバーは板ばねなどのスプリングによって、その位置が保持されている。すなわち、ロック機構は2つのスプリングを必要として、この点においても車両用のシートスライド装置の大型化を招いていた。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型の車両用のシートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、車両用のシートスライド装置は、ロアレールに相対移動可能に支持されるアッパレールと、前記ロアレールに対する前記アッパレールの相対移動の規制と許容とを切り替えるロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記アッパレールと前記ロアレールとの間に挿入されるとともに前記アッパレールに揺動可能に支持される操作レバーと、前記アッパレールと前記ロアレールとの間に前記操作レバーの揺動方向と同方向に変位可能に設けられ、前記操作レバーに連動することにより前記アッパレール及び前記ロアレールの両レールと係合して前記相対移動を規制するロック位置と前記両レールのどちらか一方との係合が解消されて前記相対移動を許容するアンロック位置との間を変位するロック部材と、前記ロック部材が前記ロック位置に保持されるように前記操作レバーを付勢する付勢部材とを有する車両用のシートスライド装置であって、前記ロアレール及び前記ロック部材の一方に設けられ前記揺動方向に延びる係合爪と、前記ロアレール及び前記ロック部材の他方に設けられ前記ロック部材が前記ロック位置に位置するときに前記係合爪と係合し前記ロック部材が前記アンロック位置に位置するときに前記係合爪と係合しない係合孔と、前記アッパレール及び前記ロック部材の一方に固定され前記揺動方向に延びる軸状部材と、前記アッパレール及び前記ロック部材の他方に設けられ前記軸状部材の軸方向変位を許容する孔部とを備え、前記軸状部材及び前記孔部の協働により前記孔部に対する前記軸状部材の軸まわりの回転を規制する回転規制部を構成することを要旨とする。
【0009】
従来の車両用のシートスライド装置では、アッパレールとロアレールとの相対移動の規制を保持するために、操作レバーを付勢するものとロック部材を付勢するものとの複数個の付勢部材が必要であった。
【0010】
その点、この構成によれば、アッパレールとロアレールとの間に操作レバー及びロック部材を配置し、これら操作レバー及びロック部材が変位する方向を同方向としたことにより、単一の付勢部材でアッパレールとロアレールとの相対移動の規制を保持することができる。従来よりも構成の数が少なくなること、及びアッパレールとロアレールとの間に操作レバー及びロック部材が収容されることにより、車両用のシートスライド装置の小型化が図られるとともに、当該シートスライド装置の組み付けにかかる工数も抑制される。また、ロック機構の構成が全てロアレールとアッパレールとの間に収容される点も、シートスライド装置の小型化に寄与する。
【0012】
従来、軸状部材及び孔部を複数個設けることによりアッパレールに対するロック部材の回転を規制していた。これにより、ロアレールに対するロック部材の回転も規制されるので、係合爪と係合孔との係脱が好適に維持されていた。
【0013】
その点、この構成によれば、単一の軸状部材及び単一の孔部を採用しても、アッパレール及びロアレールに対するロック部材の回転が規制され、係合爪と係合孔との係脱が好適に行われる。さらに、軸状部材及び孔部を複数個設ける必要がないので、装置の組み付け工数が抑制される。
【0014】
上記構成において、前記軸状部材は、軸心から外周までの間の距離を複数有し、前記孔部は、その内周面において前記軸状部材の外周面と前記軸心からの距離が異なる複数箇所で接触する形状を有し、これら前記軸状部材及び前記孔部により前記回転規制部を構成することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、軸心からの距離が異なる複数箇所で軸状部材と孔部とが接触するので、アッパレールに対するロック部材の回転が規制される。
上記構成において、前記ロック部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記操作レバーが操作されることにより揺動する前記操作レバーに押圧されるアンロック方向被押圧部と、前記付勢部材の付勢力により揺動する前記操作レバーに押圧されるロック方向被押圧部とを有することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、アッパレールとロアレールとの相対移動の規制と許容とを操作レバーの操作を通じてより好適に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用のシートスライド装置は、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用のシートスライド装置の全体を示す側面図。
図2】車両用のシートスライド装置の骨格部分を示す斜視図。
図3】車両用のシートスライド装置の分解斜視図。
図4】(a)は支持ピンの斜視図、(b)は支持ピンの上面図。
図5】(a)はロック部材の斜視図、(b)はロック部材の分解斜視図、(c)はロック部材の上面図、(d)は車幅方向から見たロック部材の側面図、(e)は前方から見たロック部材の正面図。
図6】(a)はロック状態にある車両用のシートスライド装置の側面図、(b)は(a)の一部拡大図、(c)はアンロック状態にある車両用のシートスライド装置の側面図、(d)は(c)の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用のシートスライド装置の一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に対して傾動自在に設けられたシートバック3と、このシートバック3の上端に設けられたヘッドレスト4とを備えている。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、車両の床部Fには、車両の前後方向に延びる一対のロアレール5が車幅方向に並設されている。これら各ロアレール5には、その長手方向(車両の前後方向)において当該各ロアレール5に対し相対移動するアッパレール6が取り付けられている。このアッパレール6は、その上部においてシート1を支持する。なお、ロアレール5及びアッパレール6は、車両用のシートスライド装置10を構成する。
【0021】
図3に示すように、ロアレール5は、底壁部51、外壁部52、上壁部53、及び内壁部54から構成される。
底壁部51は、前後方向に延びる平板であって、車両の床部F(図1参照)に固定されている。外壁部52は、前後方向に延びる平板であって、その短手方向が上方向に向かうように底壁部51の車幅方向両側の縁部に連続している。上壁部53は、前後方向に延びる平板であって、その短手方向が対向する外壁部52側に向かうように外壁部52の上側の縁部に連続している。内壁部54は、前後方向に延びる平板であって、その短手方向が下方向(底壁部51側)に向かうように上壁部53同士が対向する縁部に連続している。なお、内壁部54の下側の縁部と底壁部51の上面との間は離間している。また、内壁部54には、車両の前後方向において等間隔で切りかかれることにより複数の係合爪55が形成されている。
【0022】
図3に示すように、アッパレール6は、上壁部61、側壁部62、及び折返部63から構成される。上壁部61は、車両の前後方向に延びる平板であって、シート1(図1参照)の下部に固定されている。側壁部62は、前後方向に延びる平板であって、その短手方向がした方向に向かうように上壁部61の車幅方向両側の縁部に連続している。折返部63は、側壁部62の下側の縁部に連続し、対向する側壁部62と反対側に向かって折り返されている。
【0023】
アッパレール6は、折返部63がロアレール5を構成する外壁部52、上壁部53及び内壁部54に囲まれた空間内に位置するようにロアレール5に取り付けられる。これにより、ロアレール5に対するアッパレール6の車両の前後方向における相対移動が許容されるとともに、上下方向及び車幅方向への相対移動が規制される。
【0024】
なお、底壁部51と外壁部52との連結部分と折返部63との間、外壁部52と上壁部53との連結部分と折返部63との間のそれぞれには、長尺の棒の両端にボール状の転動体が取り付けられてなる円滑部材7が介在されている。これらにより、ロアレール5に対するアッパレール6の車両の前後方向における円滑な相対移動が確保される。
【0025】
図3に示すように、シートスライド装置10は、さらに、ロック機構11を備える。ロック機構11は、操作レバー12、レバースプリング13、及びロック部材14を有する。
【0026】
操作レバー12は、前後方向に延びる軸状の部材である。操作レバー12は、ロアレール5とアッパレール6との間、正確には、底壁部51、上壁部61、及び2つの側壁部62に囲われる空間に挿入される。なお、図2に示すように、車幅方向の左右に設けられる一対の操作レバー12は、その前方側の端部同士が操作ハンドル8により連結されている。
【0027】
レバースプリング13は、支持部13aと、当該支持部13aから後方に延びる板ばね部13bとを有する。レバースプリング13は、支持部13aの上部において、アッパレール6、正確には上壁部61の下面に締結具9を介して固定される(図6(a)及び図6(c)参照)。また、支持部13aには、前後方向に貫通し操作レバー12が挿通される支持孔13cが設けられている。支持部13aは、操作レバー12の長手方向の端部が上下方向に揺動するように支持孔13cを介して操作レバー12の長手方向中央部にある揺動中心部12aを支持する(図6(a)及び図6(c)参照)。
【0028】
板ばね部13bは、操作レバー12の揺動中心部12aよりも後方側を上方向に向かって付勢する。なお、板ばね部13bには、操作レバー12と係合してレバースプリング13に対する操作レバー12の前方への変位を規制する規制部13dが設けられている。
【0029】
図3,5の各図に示すようにロック部材14は、本体部15と、ガイド部16とを備える。
図5(a)〜(e)に示すように、本体部15は、前後方向から見たとき車幅方向における中央部15aが両端部15bよりも上方に盛り上がった板状をなす。中央部15aには上下方向に連通する連結孔15cが設けられている。両端部15bには上下方向に連通する3つの係合孔15dが前後方向に並設されている。係合孔15dの内径は係合爪55の外径よりも大きく設定され、係合孔15dの並設間隔は係合爪55が設けられる間隔に対応するように設定されている(図6(a)〜(d)の各図参照)。
【0030】
図5(a)〜(e)に示すように、ガイド部16は、上下方向に延びて連結孔15cに下側から圧入される軸部16aを有する。軸部16aには、上下方向に延びて当該上下方向から見たとき前後方向の長さaが車幅方向の長さbよりも長い(a>b)楕円とされたガイド孔16bが設けられている。また、軸部16aの下側の端部には、前方に向かって延びるガイド片16cが設けられている。
【0031】
ロック部材14は、レバースプリング13の取り付け位置よりもさらに車両後方側において、ロアレール5とアッパレール6との間に位置するように、ガイド孔16bの内径よりも若干小さい外径を有する支持ピン18を介してアッパレール6に取り付けられる(図3図4(a)及び図4(b)、並びに図6(a)及び図6(c)の各図参照)。
【0032】
図4(a)及び図4(b)に示すように、支持ピン18は、ガイド孔16bと同様に上下方向から見たときの形状が楕円とされた軸部18aと、軸部18aの上側の端部である締結部18bと、軸部18aの下側の端部であるフランジ部18cとから構成される。上下方向から見たとき軸部18aの前後方向の長さa’は、ガイド孔16bの前後方向の長さaより若干短く車幅方向の長さbよりも長く設定されている(a>a’>b)。また、軸部18aの車幅方向の長さb’はガイド孔16bの車幅方向の長さbよりも若干短く設定されている(b>b’)。なお、軸部18aの軸長は、軸部16aの軸長と係合爪55の長さを足し合わせた長さよりも長く設定されている。また、フランジ部18cは、ガイド孔16bの内径よりも大きい外径を有する。なお、支持ピン18が軸状部材に、ガイド孔16bが孔部に、それぞれ相当する。
【0033】
図6(a)〜(d)に示すように、支持ピン18は、ガイド孔16bに軸部18aが挿通された状態で、締結部18bを通じてアッパレール6の下面に固定される。これにより、ロック部材14は、アッパレール6に対する前後方向への変位が規制されて、当該アッパレール6と一体で前後方向に変位する。また、ロック部材14は、係合孔15dに係合爪55が進入して前後方向におけるロアレール5とアッパレール6との相対移動が規制されるロック位置と、係合孔15dから係合爪55が離脱して前後方向におけるロアレール5とアッパレール6との相対移動が許容されるアンロック位置との間を変位する。
【0034】
また、ガイド孔16b及び軸部18aはともに楕円とされ、軸部18aの前後方向の長さa’が、ガイド孔16bの前後方向の長さaよりも若干短く車幅方向の長さbよりも長く設定されている(a>a‘>b)。これにより、ロック部材14に支持ピン18周りの回転方向への力が入力されても、ガイド孔16bの内周面と軸部18aの外周面とが複数箇所で接触する。このため、ロック部材14は支持ピン18周りに回転しない。すなわち、ロック部材14はロアレール5に対しても回転しない。なお、ガイド孔16b及び軸部18aの協働により回転規制部が構成される。
【0035】
なお、図6(a)及び図6(c)に示すように、ロック部材14は、操作レバー12の後方側の端部が本体部15の下面及びガイド片16cの上面を押圧可能とされる位置に設けられる。したがって、車両のユーザは、操作レバー12の操作を通じてロック部材14をロック位置とアンロック位置との間で変位させることができる。なお、本体部15がロック方向被押圧部に、ガイド片16cがアンロック方向被押圧部に、それぞれ相当する。
【0036】
<車両用のシートスライド装置の動作>
次に、車両用のシートスライド装置10の動作について説明する。
図6(a)〜(d)に示すように、操作レバー12は、揺動中心部12aの後方側においてレバースプリング13(板ばね部13b)により上方に付勢されている。したがって、操作レバー12の後方側の端部に押圧されるロック部材14は、操作レバー12に操作が入力されない通常時、ロック位置に保持される。これにより、ロアレール5に対するアッパレール6の前後方向における相対移動が規制される。
【0037】
レバースプリング13の付勢力に抗して、車両のユーザが操作レバー12の前方側の端部(操作ハンドル8)を上方に操作されると、揺動中心部12aの後方側の端部がガイド片16cを下方向に押圧してロック部材14がロック位置からアンロック位置に変位する。これにより、ロアレール5に対するアッパレール6の前後方向における相対移動が許容される。この状態でシート1に前方又は後方へ向かう力を加えることにより、当該シート1を前方又は後方に移動させることができる。
【0038】
なお、レバースプリング13への操作を解放すると、レバースプリング13の付勢力により、ロック部材14がアンロック位置からロック位置へ復帰する。これにより、再度ロアレール5に対するアッパレール6の前後方向における相対移動が規制される。
【0039】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)ロアレール5とアッパレール6との間に、操作レバー12、レバースプリング13、及びロック部材14を配設した。
【0040】
レバースプリング13は、操作レバー12の長手方向中央部である揺動中心部12aを当該操作レバー12が上下方向に揺動可能に支持するとともに、当該操作レバー12の揺動中心部12aよりも後方側を上方に向かって付勢する。
【0041】
ロック部材14は、支持ピン18により上下方向に変位可能にアッパレール6に取り付けられ、ロアレール5の係合爪55と係合するロック位置と、ロック位置よりも下方に設けられ係合爪55との係合が解消されるアンロック位置との間を変位する。また、ロック部材14は、操作レバー12の後方側の端部と係合し、当該操作レバー12と連れ動きする。
【0042】
このように、操作レバー12及びロック部材14がともにロアレール5とアッパレール6との間に配設されること、これら操作レバー12及びロック部材14の変位する方向を同方向としたことにより、単一のレバースプリング13でロック部材14をロック位置に保持することができる。すなわち、複数の付勢部材を必要とすることなく、ロアレール5とアッパレール6との相対移動を規制する状態を保持することができる。従来よりも構成が少なくなるので、シートスライド装置10の小型化が図られるとともにシートスライド装置10の組み付けにかかる工数も抑制される。さらに、ロアレール5とアッパレール6との間にロック機構11の構成が収容される点についても、シートスライド装置10の小型化に寄与する。
【0043】
(2)ロック部材14は、上下方向に延びるガイド孔16bを有する。当該ガイド孔16bは、上下方向から見たとき前後方向の長さaが車幅方向の長さbよりも長い楕円とされている。
【0044】
支持ピン18は、上下方向に延びる軸部18aを有する。当該軸部18aは、上下方向から見たとき前後方向の長さa’が車幅方向の長さb’よりも長い楕円とされている。また、軸部18aの前後方向の長さa’は、ガイド孔16bの前後方向の長さaよりも若干短く車幅方向の長さbよりも長く(a>a‘>b)設定されている。さらに、軸部18aの車幅方向の長さb’は、ガイド孔16bの車幅方向の長さbよりも若干短く(b>b’)設定されている。
【0045】
すなわち、ガイド孔16bの内径は軸部18aの外径よりも若干大きいので、ロック部材14は、ガイド孔16bに支持ピン18が挿通されることを通じて上下方向への変位が可能とされた状態でアッパレール6に取り付けられる。
【0046】
また、ガイド孔16b及び軸部18aはともに楕円であること、軸部18aの前後方向の長さa’が、ガイド孔16bの前後方向の長さaよりも若干短く車幅方向の長さbよりも長く(a>a‘>b)設定されていることにより、ロック部材14に支持ピン18周りの回転方向への力が入力されても、ガイド孔16bの内周面と軸部18aの外周面とが複数箇所で接触する。このため、ロック部材14は支持ピン18周りに回転しない。すなわち、ロック部材14はロアレール5に対しても回転しない。これにより、上下方向に貫通するロック部材14の係合孔15dと下方向に延びるロアレール5の係合爪55との係脱が好適に行われる。
【0047】
(3)また、ガイド孔16b及び軸部18aを一組設けるだけであることから、従来と比較してシートスライド装置10の組み付けにかかる工数も抑制される。
(4)ロック部材14は、レバースプリング13の付勢力に抗して操作レバー12の前方側の端部に連続する操作ハンドル8が引き上げ操作されたに、下方向に変位する操作レバー12の後方側の端部に押圧されるガイド片16cを有する。また、ロック部材14は、レバースプリング13の付勢力によって上方向に変位する操作レバー12の後方側の端部に押圧される本体部15を有する。これにより、ユーザは、操作レバー12への操作及び操作の解消を通じて、ロアレール5とアッパレール6との相対移動の規制と許容とを好適に切り替えることができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、ガイド片16cは省略してもよい。このように構成した場合でも、レバースプリング13の付勢力に抗して操作レバー12を操作すれば、ロック部材14は重力を受けて下方向、すなわちアンロック位置に向かって変位することができる。
【0049】
・上記実施形態において、軸部18a及びガイド孔16bは、ともに上下方向からみたときの形状が楕円されたが、この形状に限るものではない。例えば三角形や四角形等に代表される角を有する多角形であれば、少なくとも軸心から辺までの距離と軸心から角までの距離とが異なるので、上記実施形態の(2)及び(3)の効果を得ることができる。また、支持ピン18に対するロック部材14の回転が規制されればよいので、軸部18aの形状とガイド孔16bの形状とが異なっていてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、操作レバー12は、レバースプリング13を介してアッパレール6に揺動可能に支持されたが、アッパレール6に直接支持される構成であってもよい。
【0051】
・上記実施形態において、ロック部材14を構成する本体部15は、中央部15aが端部15bよりも盛り上がった形状とされていたが、平板状であってもよい。
・上記実施形態において、レバースプリング13は板ばねであったが、これに限定されるものではない。操作レバー12に付勢力を付与することによりロック部材14をロック位置に保持できるものであれば、種々の構成を適用することができる。
【0052】
・上記実施形態において、車両用のシートスライド装置10は、車幅方向に一対のロック機構11を有していたが、どちらか一方だけでもよい。この場合、操作ハンドル8を省略することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…シート、5…ロアレール、6…アッパレール、7…円滑部材、8…操作ハンドル、9…締結具、10…シートスライド装置、11…ロック機構、12…操作レバー、12a…揺動中心部、13…レバースプリング、14…ロック部材、15…本体部、15d…係合孔、16…ガイド部、16a…軸部、16b…ガイド孔、16c…ガイド片、18…支持ピン、18a…軸部、55…係合爪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6