特許第6492881号(P6492881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492881
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/12 20060101AFI20190325BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20190325BHJP
   F02D 13/06 20060101ALI20190325BHJP
   F02D 17/02 20060101ALI20190325BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20190325BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F02D41/12 330J
   F02D21/08 301C
   F02D13/06 C
   F02D17/02 Q
   F02D43/00 301H
   F02D43/00 301N
   F02D43/00 301Z
   F02D45/00 312G
   F02D45/00 312F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-71066(P2015-71066)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191340(P2016-191340A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】福田 利実
(72)【発明者】
【氏名】山下 正行
(72)【発明者】
【氏名】平石 文昭
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−009635(JP,A)
【文献】 特開2005−264927(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0202435(US,A1)
【文献】 特開2007−016611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−45/00
F02D 13/06
F02D 17/02
F02D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒の燃焼室に接続される吸気通路及び排気通路と、
前記吸気通路又は前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記排気通路に設けられる排気浄化装置と、
前記排気浄化装置よりも上流の前記排気通路と前記吸気通路とを結ぶ排気還流通路を通じて排気の一部を還流ガスとして吸気に導入する排気ガス再循環装置と、
前記排気通路と前記排気還流通路の接続部と前記排気浄化装置との間に設けられ前記排気浄化装置への排気の流量を調整する排気調整弁と、
前記排気還流通路に設けられ前記吸気通路へ導入される還流ガスの流量を調整する還流ガス調整弁と、
前記燃料噴射装置による燃料噴射を停止させた状態でエンジンの回転が継続する燃料カット状態から、燃料の噴射を再開してその燃料が燃焼する燃焼状態へと移行する際に、その燃焼状態への移行が、エンジンの回転数が所定以下となって燃焼を再開させる自然復帰時であるか否かの復帰種別を判別する燃焼復帰状態判別手段と、
を備え、
前記燃焼復帰状態判別手段により判別された前記復帰種別に基づいて、前記排気調整弁及び前記還流ガス調整弁の動作を制御し、
前記排気調整弁よりも上流の前記排気通路に空燃比センサを備え、
前記燃料カット状態である場合には、該燃料カット状態以前に比べて前記排気調整弁の開度を低減するとともに、前記還流ガス調整弁の開度を増加し、
前記復帰種別が前記自然復帰時である場合には、前記燃料噴射装置による燃料噴射を再開し、その後、前記空燃比センサの情報に基づき前記燃焼状態への移行が確認されれば、前記排気調整弁を開放し、その後、前記還流ガス調整弁を閉鎖する
エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記燃焼復帰状態判別手段による前記復帰種別の判別は、前記自然復帰時と、前記燃料カット状態からのアクセル操作に基づく再加速要求時とを区別するものである
請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
燃焼室内における燃料の燃焼が安定しているか否かの判別する燃焼判別手段を備え、
前記排気調整弁を開放した後、前記還流ガス調整弁の閉鎖は、前記燃焼判別手段が燃焼が安定していると判別した後に行う
請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記燃焼判別手段による燃焼の安定の判別は、エンジンの回転数又はクランク角速度や角加速度が所定範囲にあること、あるいは、排気通路における排気圧が所定値以下であることに基づいて行われる
請求項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記復帰種別が前記再加速要求時である場合には、前記空燃比センサの情報に関わらず、前記燃料噴射装置による燃料噴射の再開と、前記排気調整弁の開放と、前記還流ガス調整弁の閉鎖を同時に行う
請求項1から4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス再循環装置を備えたエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるエンジンには、排気ガス再循環装置が備えられる場合が多い。排気ガス再循環装置は、エンジンの燃焼室から排気通路を通じて大気に排出される排気ガスの一部を吸気通路に還流させることにより、燃焼室内における燃焼温度を低下させ、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)等の排出を抑制している。
【0003】
ところで、車両の減速時等において、エンジンへの燃料噴射を停止させた状態でエンジンが稼働している状態、いわゆる燃料カット状態となる場合がある。燃料カット状態では、燃焼を伴うことなくエンジンの回転は継続しているため、吸気通路から燃焼室へ導入される空気(新気)は、酸素濃度が高く温度が低い状態のまま排気通路へと流入する。このため、排気通路の下流側に設けられている排気浄化装置の温度が低下して活性温度を下回ると、排気の浄化性能が低下してしまう。したがって、燃焼が再開した際の排気浄化装置の浄化性能が問題となる。
【0004】
このような排気浄化装置の浄化性能低下を抑制する手段として、例えば、燃焼再開時に空燃比をリッチ化することにより、排気ガス温度を上昇するとともに排気ガス中の酸素を低減する手法がある。しかし、この手法では、本来使う必要がない無駄な燃料を消費してしまうことになる。そこで、排気通路に排気の流量を調整する排気調整弁(絞り弁)を設け、燃料カット時に、排気浄化装置への排気の供給量を制限させる方法がある。また、排気調整弁を閉弁させたときに、所定の条件で還流ガス調整弁の開度を増大させることにより、排気圧の上昇を抑制させる技術もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−16611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術では、燃料カット時において、排気浄化装置への排気の供給量を制限し、また、吸気通路への還流ガスの供給量を増大させることにより、排気浄化装置の温度低下と、排気圧の上昇を抑制している。
【0007】
ところで、この燃料カット状態から、燃料の燃焼を再開させる際のエンジンの運転状況、すなわち、燃焼復帰時のエンジンの運転状況は、その時の走行環境に応じて様々である。燃焼復帰時の状況として、例えば、燃料カットの継続中に、エンジンの回転数が所定以下となって燃焼を再開させるいわゆる自然復帰時や、燃料カット状態におけるアクセルの踏み込みによる再加速要求時等が挙げられる。
【0008】
これらの燃焼復帰時において、排気浄化装置での排気の浄化性能の維持及び必要な出力の確保のためには、復帰後のエンジンの運転状況に応じて、きめ細かな制御を行うことが求められる。しかし、上記の技術では、運転状況に応じた制御の対応については、何ら開示されていない。
【0009】
そこで、この発明の課題は、燃料カット状態から燃料の燃焼状態への復帰時において、種々の運転状況に応じて、排気浄化装置での排気の浄化性能、エンジンの必要な出力を適切に確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、気筒の燃焼室に接続される吸気通路及び排気通路と、前記吸気通路又は前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記排気通路に設けられる排気浄化装置と、前記排気浄化装置よりも上流の前記排気通路と前記吸気通路とを結ぶ排気還流通路を通じて排気の一部を還流ガスとして吸気に導入する排気ガス再循環装置と、前記排気通路と前記排気還流通路の接続部と前記排気浄化装置との間に設けられ前記排気浄化装置への排気の流量を調整する排気調整弁と、前記排気還流通路に設けられ前記吸気通路へ導入される還流ガスの流量を調整する還流ガス調整弁と、前記燃料噴射装置による燃料噴射を停止させた状態でエンジンの回転が継続する燃料カット状態から、燃料の噴射を再開してその燃料が燃焼する燃焼状態へと復帰する際に、その燃焼状態への復帰が、エンジンの回転数が所定以下となって燃焼を再開させる自然復帰時であるか否かの復帰種別を判別する燃焼復帰状態判別手段と、を備え、前記燃焼復帰状態判別手段により判別された前記復帰種別に基づいて、前記排気調整弁及び前記還流ガス調整弁の動作を制御するエンジンの制御装置を採用した。
【0011】
このとき、前記燃焼復帰状態判別手段による前記復帰種別の判別は、前記自然復帰時と、前記燃料カット状態からのアクセル操作に基づく再加速要求時とを区別するものである構成を採用することができる。
【0012】
また、各構成において、前記排気調整弁よりも上流の前記排気通路に空燃比センサを備え、前記燃料カット状態である場合には、該燃料カット状態以前に比べて前記排気調整弁の開度を低減するとともに、前記還流ガス調整弁の開度を増加し、前記復帰種別が前記自然復帰時である場合には、前記燃料噴射装置による燃料噴射を再開し、その後、前記空燃比センサの情報に基づき前記燃焼状態への移行が確認されれば、前記排気調整弁を開放し、その後、前記還流ガス調整弁を閉鎖する構成を採用することができる。
【0013】
さらに、燃焼室内における燃料の燃焼が安定しているか否かの判別する燃焼判別手段を備え、前記排気調整弁を開放した後、前記還流ガス調整弁の閉鎖は、前記燃焼判別手段が燃焼が安定していると判別した後に行う構成を採用することができる。
【0014】
前記燃焼判別手段による燃焼の安定の判別は、エンジンの回転数又はクランク角速度や角加速度が所定範囲にあること、あるいは、排気通路における排気圧が所定値以下であることに基づいて行われる構成を採用することができる。
【0015】
これらの各構成において、前記復帰種別が前記再加速要求時である場合には、前記空燃比センサの情報に関わらず、前記燃料噴射装置による燃料噴射の再開と、前記排気調整弁の開放と、前記還流ガス調整弁の閉鎖を同時に行う構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、燃料カット状態から燃焼状態への復帰が、自然復帰時であるか否かの判別に基づいて、排気調整弁及び還流ガス調整弁の動作を制御するようにしたので、燃焼状態への復帰時において、種々の運転状況に応じて、排気浄化装置での排気の浄化性能、エンジンの必要な出力等を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態を示すエンジンの要部拡大平面図である。
図2】この発明の燃料カット時の制御を示すフローチャートである。
図3】この発明の燃焼復帰時の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、この発明のエンジン1の平面図である。
【0019】
この実施形態のエンジン1は、自動車用の4サイクルガソリンエンジンである。エンジン1のシリンダ内にはピストンが収容され、シリンダの内壁面、及び、ピストンの上面等により燃焼室2が形成されている。
【0020】
エンジン1は、各シリンダの燃焼室2内に吸気を送り込む吸気通路4、燃焼室2から引き出された排気通路5、吸気通路4の燃焼室2への接続部である吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射装置6等を備えている。また、その燃焼室2内には点火手段が備えられている。燃料噴射装置6は、燃焼室2内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁である場合もある。
【0021】
図面では、この発明に直接関係する部材、手段を中心に示し、他の部材等については図示省略している。また、図面では、三つのシリンダを有するエンジンを示しているが、エンジンの気筒数は任意であり、単気筒、二気筒、四気筒、あるいは、それ以上の多気筒であってもよい。
【0022】
各シリンダの吸気通路4の燃焼室2への開口部である吸気弁孔は、吸気バルブによって開閉される。また、燃焼室2から引き出された排気通路5の燃焼室2への開口部である排気弁孔は、排気バルブによって開閉される。
【0023】
吸気通路4には、その吸気通路4への空気(新気)の導入量を調整するスロットルバルブ3を備えている。スロットルバルブ3は、バタフライ弁形式の弁体の動作により、吸気通路4の流路の断面積を増減させて、流路を通過する空気量を調整する。
【0024】
排気通路5には、空気(酸素)と燃料の比率を検出する空燃比センサ21を備えている。この実施形態では、空燃比センサ21として、センサに流れる電流値の変化により空燃比を測定するエア・バイ・フューエル・センサ(エー・バイ・エフ・センサ)を採用している。空燃比センサ21としては、他にも、ラフ・センサや、O2センサ等を採用してもよい。
【0025】
また、排気通路5には、排気ガス中に含まれる有害成分を除去又は低減する排気浄化装置22を備えている。この実施形態は、ガソリンエンジンであるので、排気浄化装置22として三元触媒を採用している。三元触媒は、排気ガス中の、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等を除去又は低減する機能を有する。エンジンの仕様によっては、三元触媒以外の排気浄化装置22を採用する場合もある。
【0026】
また、エンジン1には、クランクシャフトの回転角速度や回転角加速度を検出することにより、エンジンの回転数を検出する回転センサ7を備えている。この実施形態では、回転センサ7として、クランクシャフトの端部に取り付けられたタイミングロータの回転を読み取るクランク角センサを採用しているが、エンジンの駆動力伝達経路の途中や、エンジンの回転によって駆動される補機類等、あるいは、その他の場所に設けられる周知の回転センサを用いてもよい。
【0027】
これらの吸気バルブや排気バルブ、燃料噴射装置6、点火手段、スロットルバルブ3、空燃比センサ21、排気浄化装置22、その他エンジンの動作に必要な機器は、それぞれケーブルを通じて、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)30に備えられた制御手段によって制御される。また、エンジンやその周囲に設けられるセンサ類からの必要な情報は、電子制御ユニット30が取得する。
【0028】
また、排気通路5と吸気通路4とは、排気ガス再循環装置10を構成する排気還流通路11によって連通している。排気ガス再循環装置10は、エンジンから排出される排気ガスの一部を、還流ガスとして吸気通路4に還流する機能を有する。排気還流通路11は、排気ガス再循環装置10の上流側の排気通路5に接続される。
【0029】
排気通路5において、その排気通路5と排気還流通路11の接続部と、排気浄化装置22との間には、排気浄化装置22への排気の流量を調整する排気調整弁20を備えている。排気調整弁20は、バタフライ弁形式の弁体の動作により、排気通路5の流路の断面積を増減させて、流路を通過する排気ガス量を調整する。前述の空燃比センサ21は、この排気調整弁20の上流側の排気通路5に設けられる。
【0030】
排気還流通路11には、還流ガスの温度を下げるための還流ガスクーラ12が設けられている。また、排気還流通路11の還流ガスクーラ12の下流側、すなわち、吸気通路4側には、流路を開閉することにより通過するガス量を調整できる還流ガス調整弁13が設けられている。還流ガス調整弁13は、吸気通路4へ導入される還流ガスの流量を調整する機能を有する。
【0031】
還流ガス調整弁13の制御と、吸気通路4内に設けたスロットルバルブ3等の制御に伴う吸気通路4内の圧力状態に応じて、排気還流通路11を通じて、エンジンから排出される排気ガスの一部が、必要な量だけ還流ガスとして吸気通路4に還流する。これらの制御も、運転状況に応じて、電子制御ユニット30が行う。
【0032】
以下、このエンジンの制御について、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、燃料カットを行う際における制御を示すフローチャートである。図3は、燃料カット状態から燃焼状態への復帰の際における制御を示すフローチャートである。
【0033】
まず、通常の燃料の燃焼を伴う運転状態から、燃焼を伴わない燃料カット状態への移行の際の制御について説明する。一般に、車両の減速時等において、アクセルペダルのOFFにより燃料噴射を停止させると、運転状況は、燃焼室2での燃料の燃焼を伴うことなくエンジン1の回転が継続している状態、いわゆる燃料カット状態へ移行する。
【0034】
燃料カット状態への移行の際、燃焼を伴うことなくエンジン1の回転は継続するため、吸気通路4から燃焼室2へ導入される空気(新気)は、そのまま排気通路5へと流入する。この状態を継続すると、排気通路5の下流側に設けられている排気浄化装置22の温度が低下して活性温度を下回ると、排気の浄化性能が低下してしまう。そこで、電子制御ユニット30は、排気ガスの一部又は全部を排気還流通路11を通じて吸気通路4に導入することにより、温度の低い排気ガス、すなわち、燃焼を伴わないで燃焼室2から排出される気体が、排気浄化装置22へ流入するのを抑制する指令を発信する。
【0035】
図2において、ステップS21で、排気ガス再循環装置10の制御がON状態への切り替え指示がされた場合、すなわち、還流ガスを吸気側に導入するべき要求が電子制御ユニット30で成された場合に、続くステップS22では、その際の要求されている運転状況が、燃料カット状態であるか否かを判別する。燃料カット状態でない場合は、通常の排気ガス再循環装置10の制御を継続する(ステップS26へ)。
【0036】
要求されている運転状況が燃料カット状態である場合には、ステップS23において、燃料噴射の停止とスロットルバルブ3の閉操作が行われる。そして、ステップS24では、還流ガス調整弁13が開状態とされる。最後に、ステップS25では、排気調整弁20が閉状態とされる。これにより、排気浄化装置22の温度低下は抑制される。
【0037】
なお、排気浄化装置22には、温度センサ23が備えられている。この温度センサ23により取得された排気浄化装置22の温度に基づいて、還流ガス調整弁13や排気調整弁20の開度を調整してもよい。例えば、排気浄化装置22の温度が充分に高い場合には、温度の低い排気ガスを多少は排気浄化装置22へ送り込んでも問題ないと考えられるので、還流ガス調整弁13や排気調整弁20を中間開度に設定することができる。また、例えば、排気浄化装置22の温度が活性温度付近である場合には、温度の低い排気ガスを排気浄化装置22へ送り込むことは好ましくないと考えられるので、還流ガス調整弁13を全開に排気調整弁20を全閉に設定することができる。また、その活性温度と現在温度との差の値に基づいて、例えば、還流ガス調整弁13を3分の2の開度に、排気調整弁20を3分の1の開度にといったように、それぞれの開度を調整してもよい。すなわち、活性温度に対して現在温度が低いほど、還流ガス調整弁13の開度を大きく、排気調整弁20の開度を小さく設定することができる。以上のように、要求されている運転状況が燃料カット状態である場合には、燃料カット状態とする以前に比べて排気調整弁20の開度を低減するとともに、還流ガス調整弁13の開度を増加させる制御が行われる。
【0038】
次に、燃料カット状態から、燃料の燃焼を再開させる際の制御について説明する。燃料カット状態から燃焼状態への復帰の際のエンジンの運転状況は、その時の走行環境に応じて様々である。燃焼復帰時の状況として、例えば、燃料カットの継続中に、エンジンの回転数が所定以下となって燃焼を再開させるいわゆる自然復帰時や、燃料カットの継続中に、アクセルの踏み込みによる再加速要求時等が挙げられる。
【0039】
図3において、ステップS1で、排気ガス再循環装置10の制御がOFF状態への切り替え指示である場合、すなわち、還流ガスの吸気側への導入を停止するべき要求が電子制御ユニット30で成された場合に、続くステップS2では、その際の要求されている燃料カット状態の解除、すなわち、燃料カット状態から燃焼状態への復帰が、上記した自然復帰時であるか否かを判別する。
【0040】
ここで、電子制御ユニット30は、燃料カット状態から燃焼状態への復帰が、エンジンの回転数が所定以下となって燃焼を再開させる自然復帰時であるか否かの復帰種別を判別する燃焼復帰状態判別手段を備えている。燃焼状態への復帰が自然復帰時であるか否かは、この燃焼復帰状態判別手段が行う。
【0041】
復帰種別が自然復帰時であるか否かは、例えば、エンジンの回転数が、アイドリング状態よりもやや上に設定された燃料カット復帰回転数を下回っているか否かで判別することができる。エンジンの回転数が燃料カット復帰回転数を下回っていれば、復帰種別は自然復帰時であり、エンジンの回転数が燃料カット復帰回転数以上であれば、復帰種別は自然復帰時ではないと判別できる。
【0042】
また、アクセルペダルのON/OFFを検出することによっても、復帰種別を判別することができる。アクセルペダルがOFFであれば、復帰種別は自然復帰時であり、アクセルペダルがONであれば、復帰種別は自然復帰時ではないと判別できる。あるいは、アクセルペダルがONであっても、その踏み込み量が所定量に満たない場合は、復帰種別は自然復帰時であると判別するように設定してもよい。
【0043】
復帰種別が自然復帰時である場合は、ステップS3へ移行する。復帰種別が自然復帰時でない場合は、ステップS9へ移行する。
【0044】
ステップS3以下では、復帰種別が自然復帰時である場合に設定された制御を行う。復帰種別が自然復帰時であると判別されると、ステップS3では、自然復帰時に対応した燃料噴射量、スロットル開度が決定され、ステップS4で、その燃料噴射、スロットルバルブ3の開放が実行される。このときにスロットル開度は、エンジンのアイドリング回転を維持するのに必要十分な開度、すなわち、概ね、全閉状態からアイドリングに対応する程度の範囲の小さい開度である。
【0045】
ステップS5では、空燃比センサ21からの情報に基づいて、燃焼室2内で燃料の燃焼が再開されたかどうかを検知する。例えば、空燃比が所定値を下回れば、酸素が減少しているという観点から燃焼が再開していると判別することができる。
【0046】
空燃比センサ21の情報に基づき燃焼状態への復帰が確認されれば、ステップS6へ移行する。燃焼が確認できなければ、ステップS3へ戻り、再度、適切な燃料噴射量、スロットル開度が決定される。
【0047】
ステップS6では、排気調整弁20を開放し、排気ガスを排気浄化装置22側へ供給する。燃焼が再開されているので、排気温度は燃料カット状態の時より高まっている。このため、排気浄化装置22の浄化性能には支障しないようになっている。
【0048】
次に、ステップS7では、燃焼室2内における燃料の燃焼が安定しているか否かの判別を行う。電子制御ユニット30は、燃料の燃焼が安定しているか否かの判別する燃焼判別手段を備えている。燃焼が安定しているか否かは、エンジンの回転数又はクランク角速度や角加速度が所定範囲にあること、あるいは、排気通路5における排気圧が所定値以下であることに基づいて、燃焼判別手段が判別する。
【0049】
ステップS8では、排気調整弁20を開放した後において、燃焼判別手段が、燃焼が安定していると判別した後に、還流ガス調整弁13の閉鎖を行う。燃焼が安定していれば、排気浄化装置22の温度維持を目的に行う還流ガスの導入は、もはや不要と考えられるからである。
【0050】
これにより、自然復帰時の制御を終了する(ステップS12)。この制御により、燃料カット状態におけるエンジンの回転停止を回避する自然復帰を行いつつ、排気浄化装置22での排気の浄化性能を維持することができる。
【0051】
ステップS2において、復帰種別が自然復帰時でないと判別された場合、ステップS9では、さらに、その復帰種別が、燃料カット状態からのアクセル操作に基づく再加速要求時であるかどうかを判別する。
【0052】
ステップS9において、復帰種別が再加速要求時である場合には、空燃比センサ21の情報に関わらず、常に、ステップS10で、再加速要求時に対応した燃料噴射量、スロットル開度が決定され、続くステップS11において、燃料噴射装置6による燃料噴射の再開と、排気調整弁20の開放と、還流ガス調整弁13の閉鎖の制御が行われる。ステップS9において、復帰種別が再加速要求時でない場合には、通常の排気ガス再循環装置10の制御を継続する。復帰種別が再加速要求時である場合における燃料噴射の再開と、排気調整弁20の開放と、還流ガス調整弁13の閉鎖は、同時に行われる。
【0053】
これにより、再加速要求時の制御を終了する(ステップS12)。この制御により、排気浄化装置での排気の浄化性能、再加速時に必要なエンジンの出力等を、適切に且つ早期に確保するこができる。また、従来から行っていた、排気浄化装置22への酸素供給を減らすことを目的とする強制的なリッチ化制御が不要となり、無駄な燃料消費を低減することができる。
【0054】
この実施形態では、自動車用の4サイクルガソリンエンジンを例に、この発明の構成を説明したが、排気浄化装置と排気ガス再循環装置を備えたエンジンであれば、ディーゼルエンジン等の他の形式のエンジンにおいても、この発明を適用できる。
【0055】
ディーゼルエンジンの場合、排気浄化装置22としては、例えば、ディーゼル微粒子フィルターや酸化触媒等を採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2 燃焼室
3 スロットルバルブ
4 吸気通路
5 排気通路
6 燃料噴射装置
7 回転センサ
10 排気ガス再循環装置
11 排気還流通路
12 還流ガスクーラ
13 還流ガス調整弁
20 排気調整弁
21 空燃比センサ
22 排気浄化装置
23 温度センサ
30 電子制御ユニット(Electronic Control Unit)
図1
図2
図3