【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る杭継手装置は、
環形状を有し、杭の端部に固定可能な第1固定部材と、
環形状を有し、前記第1固定部材と同軸に配置可能な第2固定部材と、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材の外周に沿って配置可能な少なくとも1つの連結部材と、
前記第1固定部材及び前記少なくとも1つの連結部材のうち一方から突出し、他方に設けられた複数の第1凹部にそれぞれ挿入可能な複数の第1凸部と、
前記第2固定部材及び前記少なくとも1つの連結部材のうち一方から突出し、他方に設けられた複数の第2凹部にそれぞれ挿入可能な複数の第2凸部と、
を備え、
前記複数の第1凸部が前記複数の第1凹部に挿入され且つ前記複数の第2凸部が前記複数の第2凹部に挿入された組み立て状態で前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離又は角度が変化することを許容するように、前記複数の第1凹部又は前記複数の第2凹部の形状、寸法又は配置が決定されている。
【0006】
上記構成(1)によれば、組み立て状態で、第1固定部材と第2固定部材との間の距離又は角度が変化することを許容するように、複数の第1凹部又は複数の第2凹部の形状、寸法又は配置が決定されているので、例えば地震時に、杭に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記複数の第1凸部は、前記第1固定部材に螺合可能な複数のボルトによって構成され、
前記複数の第2凸部は、前記第2固定部材に螺合可能な複数のボルトによって構成され、
前記複数の第1凹部及び複数の第2凹部のうち一方又は両方は、前記第1固定部材又は前記第2固定部材の軸線方向に沿ってそれぞれ延在する複数の長孔によって構成されている。
【0008】
上記構成(2)によれば、第1凸部及び第2凸部がボルトによって構成され、第1凹部又は第2凹部が長孔によって構成されているので、簡単な構成にて確実に、杭に作用する曲げモーメントを低減することができる。
一方、第1凹部又は第2凹部が長孔によって構成されているので、簡単な構成にて確実に、第1固定部材と第2固定部材との間の距離又は角度を適当な大きさに規制することができる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(2)において、
前記組み立て状態において、前記第1固定部材及び前記第2固定部材の周方向にて前記複数の第1凹部の位置と前記複数の第2凹部の位置が相互に異なるように、前記連結部材での前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部の位置が決定されている。
【0010】
上記構成(3)によれば、第1凹部の位置と第2凹部の位置が周方向にて異なっているので、第1凸部を構成するボルトと第2凸部を構成するボルトが相互に干渉することを防止することができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記複数の第1凸部及び前記複数の第2凸部のうち一方は、前記第1固定部材又は前記第2固定部材に螺合可能な複数のボルトによって構成され、
前記複数の第1凸部及び前記複数の第2凸部のうち他方は、前記第1固定部材、前記第2固定部材又は前記連結部材と一体に形成された突起によって構成されている。
【0012】
上記構成(4)によれば、第1凸部及び第2凸部のうち一方がボルトによって構成されているので、簡単な構成にて確実に、第1固定部材又は第2固定部材に連結部材を固定しながら、杭に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0013】
(5)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
環形状を有し、前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に同軸に配置可能な中間部材と、
前記少なくとも1つの連結部材を前記中間部材に固定するための複数のボルトと、
を更に備え、
前記少なくとも1つの連結部材は複数の前記連結部材によって構成され、
前記複数の第1凸部は、前記第1固定部材又は前記複数の連結部材とそれぞれ一体に形成された複数の突起によって構成され、
前記複数の第2凸部は、前記第2固定部材又は前記複数の連結部材とそれぞれ一体に形成された複数の突起によって構成されている。
【0014】
上記構成(5)によれば、第1固定部材と第2固定部材の間に配置された中間部材に連結部材を固定しながら、杭に作用する曲げモーメントを低減することができる。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(5)において、
前記複数の突起は、前記複数のボルトよりも大きな横断面積を有し、
前記複数の突起は、前記第1固定部材又は前記第2固定部材の軸線方向にて相対変位可能に前記複数の第1凹部又は前記複数の第2凹部に挿入されている。
【0016】
上記構成(6)によれば、突起は第1凹部又は第2凹部に対し相対変位可能であるので、第1固定部材と第2固定部材との間隔又は角度が変化し、突起が第1凹部又は第2凹部の周縁に衝突したとき、突起に剪断荷重が作用する。このような使用状況でも、突起は中間部材に連結部材を固定するためのボルトよりも大きな横断面積を有し高強度であるので、突起は高い信頼性を有する。この結果として、上記構成(6)の杭継手装置は高い信頼性を有する。
【0017】
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(6)の何れか1つにおいて、
前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離又は角度が大きくなるほど、前記複数の第1凸部又は前記複数の第2凸部に作用する摩擦力が大きくなるように、前記複数の第1凸部、前記複数の第1凹部、前記複数の第2凸部又は前記複数の第2凹部の形状が決定されている。
【0018】
上記構成(7)によれば、第1固定部材に対し第2固定部材が傾斜したときに、傾斜が大きくなるほど、第1凸部又は第2凸部に作用する摩擦力が大きくなる。このため、第1固定部材に対し第2固定部材が傾斜する過程で、第1固定部材と第2固定部材との間で伝達される曲げモーメントを徐々に増大させることができる。この結果、杭継手装置や杭に作用する曲げモーメントの急激な上昇を抑制することができ、杭継手装置や杭の耐久性を確保することができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記複数の第1凸部及び前記複数の第2凸部のうち一方又は両方は複数のボルトによって構成され、
前記組み立て状態において、前記複数のボルトの頭部と対向する前記少なくとも1つの連結部材の各々の外面は、前記第1固定部材及び前記第2固定部材の軸線方向に対し傾斜している。
【0020】
上記構成(8)によれば、簡単な構成にて、第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離又は角度が大きくなるほど、第1凸部又は第2凸部に作用する摩擦力を増大させることができる。
【0021】
(9)幾つかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記複数の第1凸部及び前記複数の第2凸部のうち一方又は両方は複数の突起によって構成され、
前記組み立て状態において、前記複数の突起と対向する前記複数の第1凹部又は前記複数の第2凹部の底面は、前記第1固定部材及び前記第2固定部材の軸線方向に対し傾斜している。
【0022】
上記構成(9)によれば、簡単な構成にて、第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離又は角度が大きくなるほど、第1凸部又は第2凸部に作用する摩擦力を増大させることができる。
【0023】
(10)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(9)の何れか1つにおいて、
前記第1凹部又は前記第2凹部の内部に配置され、前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の距離又は角度が大きくなるほど大きな反力を発生させる弾性部材を更に備える。
【0024】
上記構成(10)によれば、第1固定部材に対し第2固定部材が傾斜したときに、傾斜が大きくなるほど弾性部材が圧縮される。このため、第1固定部材に対し第2固定部材が傾斜する過程で、弾性部材を介して、第1固定部材と第2固定部材との間で伝達される曲げモーメントを徐々に増大させることができる。この結果、杭継手装置や杭に作用する曲げモーメントの急激な上昇を抑制することができ、杭継手装置や杭の耐久性を確保することができる。
【0025】
(11)幾つかの実施形態では、上記構成(10)において、
前記弾性部材はエラストマによって構成されている。
上記構成(11)によれば、エラストマによって構成された弾性部材を第1凹部又は第2凹部の内部に配置することで、第1凹部又は第2凹部の内部に異物が進入することが防止される。これによって、第1凹部又は第2凹部に対する第1凸部又は第2凸部の相対的な変位が、異物によって阻害されることが防止される。