特許第6492963号(P6492963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6492963
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/12 20060101AFI20190325BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20190325BHJP
   G01G 23/01 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01G19/12 A
   G01G19/52 F
   G01G23/01 Z
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-103046(P2015-103046)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-217880(P2016-217880A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中西 亮太
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−241445(JP,A)
【文献】 特開2006−010446(JP,A)
【文献】 特開2003−002255(JP,A)
【文献】 特開2003−318996(JP,A)
【文献】 米国特許第5906393(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/12
G01G 19/52
G01G 23/01
G01L 5/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重センサと、該荷重センサに双方向通信可能に接続された制御装置とを備え、
前記荷重センサは、
シートに加わる荷重に応じた荷重検知信号に基づき所定の演算周期ごとに荷重情報を取得するとともに、前記荷重検知信号と所定の故障検知閾値に相当する閾値信号との大小関係に基づいて故障情報を取得する第1の制御部と、
前記故障情報が故障有りの状態に切り替わることで、所定時間内における前記演算周期ごとの前記荷重情報を故障検知時荷重情報として記憶する荷重情報記憶部とを有し、
前記制御装置は、前記演算周期よりも長い所定の通信周期ごとに前記荷重情報及び前記故障情報を受信する第2の制御部を有し、該第2の制御部は、
前記故障情報が故障有りの状態を表すときに、前記荷重情報記憶部に記憶された前記所定時間内における前記演算周期ごとの前記故障検知時荷重情報を前記通信周期ごとに順次、受信して前記故障検知時荷重情報を再生する波形再生部と、
前記再生された前記故障検知時荷重情報に基づいて故障の有無を判定する故障判定部とを備えた、荷重検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重検出装置において、
前記第2の制御部には、車両衝突の有無を検知する衝突検知センサの検知信号が入力されており、
前記第2の制御部は、前記故障判定部が故障有りと判定したとき、前記衝突検知センサの前記検知信号が車両衝突無しの状態を表すときに、前記故障判定部による故障有りの判定をキャンセルする判定キャンセル部を有した、荷重検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の荷重検出装置において、
前記荷重情報記憶部は、前記所定時間の終期で前記荷重情報の記憶・更新が停止されるリングバッファである、荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重検出装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この荷重検出装置は、荷重センサと、該荷重センサに双方向通信可能に接続された制御装置(ECU)とを備える。そして、荷重センサは、シート本体に加わる荷重に応じた荷重検知信号を出力する荷重検知素子と、荷重検知信号に基づき荷重情報を取得する第1の制御部(制御部)とを有する。第1の制御部は、荷重検知信号と所定の故障検知閾値に相当する閾値信号との大小関係に基づいて故障情報を併せて取得するように構成されている。これは、例えば荷重検知信号が過大となる際に、車両衝突など修理を要する現象(故障)が発生している可能性が高いことによる。
【0003】
一方、制御装置は、荷重センサから荷重情報及び故障情報を受信する第2の制御部(CPU)を有する。第2の制御部は、荷重情報に基づいて、例えばシートが空席状態か着席状態かの乗員の有無を判定する。あるいは、第2の制御部は、故障情報に基づいて、例えば修理を促すための報知をすべく、インジケータを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−32312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、第2の制御部は、第1の制御部に依存する故障情報を受信して、該故障情報に合わせて所要の処理を行うのみである。これは、荷重情報を取得する第1の制御部の演算周期に比べて、荷重情報等を受信する第2の制御部の通信周期が著しく長く設定されており、故障情報を自身で取得し得るように第2の制御部の通信周期を短縮することは困難なためである。
【0006】
一方、第1の制御部は、荷重検知信号と閾値信号との大小関係のみに基づいて故障情報を取得することから、その信頼性には自ずと限界がある。従って、例えば修理が不要であるにも関わらず、該修理を促す報知が第2の制御部によって徒に行われる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、通信負荷を増加することなく、修理を促す報知の信頼性をより向上することができる荷重検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する荷重検出装置は、荷重センサと、該荷重センサに双方向通信可能に接続された制御装置とを備え、前記荷重センサは、シートに加わる荷重に応じた荷重検知信号に基づき所定の演算周期ごとに荷重情報を取得するとともに、前記荷重検知信号と所定の故障検知閾値に相当する閾値信号との大小関係に基づいて故障情報を取得する第1の制御部と、前記故障情報が故障有りの状態に切り替わることで、所定時間内における前記演算周期ごとの前記荷重情報を故障検知時荷重情報として記憶する荷重情報記憶部とを有し、前記制御装置は、前記演算周期よりも長い所定の通信周期ごとに前記荷重情報及び前記故障情報を受信する第2の制御部を有し、該第2の制御部は、前記故障情報が故障有りの状態を表すときに、前記荷重情報記憶部に記憶された前記所定時間内における前記演算周期ごとの前記故障検知時荷重情報を前記通信周期ごとに順次、受信して前記故障検知時荷重情報を再生する波形再生部と、前記再生された前記故障検知時荷重情報に基づいて故障の有無を判定する故障判定部とを備える。
【0009】
この構成によれば、前記第2の制御部は、前記波形再生部において、前記所定時間内における前記演算周期ごとの前記故障検知時荷重情報を受信・再生するとともに、前記故障判定部において、当該再生された前記故障検知時荷重情報に基づいて故障の有無を判定する。この場合、前記第2の制御部は、前記故障判定部における故障の有無の判定において、前記第1の制御部における前述の閾値判定に準じた閾値判定に加えて、例えば前記荷重情報が増加及び減少の一方から他方に切り替わるまでの経過時間やそれらの変動か収束するまでの経過時間といった前記故障検知時荷重情報の推移を利用することができる。このため、前記故障判定部における故障の有無の判定精度をより向上させることができる。そして、例えば前記故障判定部が故障有りと判定した際に前記第2の制御部が修理を促す適宜の報知をさせる場合には、当該報知の信頼性をより向上させることができる。一方、前記第2の制御部は、前記波形再生部において、前記荷重情報記憶部に記憶された前記所定時間内における前記演算周期ごとの前記故障検知時荷重情報を前記通信周期ごとに順次、受信すればよいため、通信負荷を増加しなくてもよい。
【0010】
上記荷重検出装置について、前記第2の制御部には、車両衝突の有無を検知する衝突検知センサの検知信号が入力されており、前記第2の制御部は、前記故障判定部が故障有りと判定したとき、前記衝突検知センサの前記検知信号が車両衝突無しの状態を表すときに、前記故障判定部による故障有りの判定をキャンセルする判定キャンセル部を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、前記衝突検知センサの前記検知信号が車両衝突無しの状態を表すのであれば、前記判定キャンセル部により前記故障判定部による故障有りの判定がキャンセルされることで、前記報知の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0012】
上記荷重検出装置について、前記荷重情報記憶部は、前記所定時間の終期で前記荷重情報の記憶・更新が停止されるリングバッファであることが好ましい。
この構成によれば、前記リングバッファに対する前記演算周期ごとの前記荷重情報の記憶・更新は、記憶済みの前記荷重情報の中で最も古い前記荷重情報を書き換えるとともに、この段階で最も古くなる前記荷重情報が記憶される記憶領域を先頭の記憶領域に設定すればよいため、処理負荷をより軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、通信負荷を増加することなく、修理を促す報知の信頼性をより向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】荷重検出装置の第1の実施形態が適用されるシートの骨格部についてその構造を示す側面図。
図2】同実施形態の荷重検出装置についてその荷重センサの電気的構成を示すブロック図。
図3】同実施形態の荷重検出装置についてそのECUの電気的構成を示すブロック図。
図4】(a)〜(e)は、それぞれ荷重検知電圧、バッファの記憶領域、故障検知ビット、再生波形データ及びECUの受信する荷重情報の時間的推移を示すタイムチャート。
図5】同実施形態の荷重検出装置についてその荷重センサによる荷重情報の記憶態様を示すフローチャート。
図6】同実施形態の荷重検出装置についてその荷重センサによるECUに対する送信情報の設定態様を示すフローチャート。
図7】同実施形態の荷重検出装置についてそのECUによる故障判定態様を示すフローチャート。
図8】(a)〜(e)は、荷重検出装置の第2の実施形態について、それぞれ荷重検知電圧、バッファの記憶領域、故障検知ビット、再生波形データ及びECUの受信する荷重情報の時間的推移を示すタイムチャート。
図9】同実施形態の荷重検出装置についてその荷重センサによる荷重情報の記憶態様を示すフローチャート。
図10】荷重検出装置の第3の実施形態について、そのECUによる故障判定態様を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、荷重検出装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両のフロアの上面には、シートの幅方向(図1において紙面に直交する方向)に並設されて前後方向に延在する対のロアレール1が固定されるとともに、両ロアレール1の各々には、アッパレール2が前後方向に移動可能に装着されている。
【0016】
両アッパレール2の各々の上面には、前後一対のセンサ本体10を介して所定の間隔をおいてロアアーム3が固定・支持されている。このロアアーム3は、シートSEの座面を構成するシートクッション4の骨格をなすものである。なお、各アッパレール2の前後で対をなすセンサ本体10は、反対側の分も含めて合計4個が配設されている。
【0017】
センサ本体10は、第1ブラケット11及び第2ブラケット12と、起歪体13と、荷重センサ14とを備えている。そして、荷重センサ14は、歪みゲージ15及び信号処理装置20を備えている。第1ブラケット11は、アッパレール2の先端部においてその上面に固定されており、第2ブラケット12は、ロアアーム3の先端部においてその下面に固定されている。起歪体13は、板状に成形されており、その一側端部及び他側端部はそれぞれ第1ブラケット11の上面及び第2ブラケット12の下面に固着されている。そして、起歪体13は、その中間部において撓み部13aを形成している。
【0018】
荷重センサ14の歪みゲージ15はこの撓み部13aの上面に貼着されており、信号処理装置20は第1ブラケット11に支持される起歪体13の一側端部の上面に搭載されている。起歪体13は、第2ブラケット12から上下方向の荷重が加わることで、第1ブラケット11に支持される一側端部を支点に曲げ変形する。歪みゲージ15は、この起歪体13(撓み部13a)の曲げ変形に伴う歪み量に応じて、ゲージ電圧を発生させるものである。このゲージ電圧は、基本的にシートSEに加わる荷重に応じてリニアに変動する。そして、信号処理装置20は、このゲージ電圧に基づいて荷重情報及び故障情報を取得等する。
【0019】
なお、ロアアーム3には、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)30が支持されており、このECU30には全て(4個)のセンサ本体10に設けられた荷重センサ14(信号処理装置20)が信号線Wを介してディジタル双方向通信可能に接続されている。このECU30は、これら荷重センサ14が取得した荷重情報を受信して、例えばシートSEが空席状態か着席状態かの乗員の有無を判定する。
【0020】
次に、荷重センサ14及びECU30の電気的構成について説明する。
図2に示すように、荷重センサ14の信号処理装置20は、アナログ信号処理部21と、A/D変換部22と、比較器23と、D/A変換部24と、ロジック回路を内蔵する第1の制御部としての制御部25と、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)からなる書き換え可能な不揮発性のメモリ26と、RAMからなる荷重情報記憶部としてのバッファ27と、通信インタフェース28とを備えている。そして、制御部25は、通信インタフェース28に接続された信号線Wを介してECU30と接続されている。この制御部25は、ECU30との間での通信インタフェース28を介した各種信号の送受、メモリ26及びバッファ27に対する各種情報(データ)の書き込み・読み出し等を行う。なお、制御部25及びECU30(CPU31)間の送受信は、所定の通信周期Tc(例えば100[ms])ごとに繰り返される。
【0021】
ここで、歪みゲージ15は、シートSEに加わる荷重に応じたその歪み量に応じてゲージ電圧V1を発生し、これをアナログ信号処理部21に出力する。アナログ信号処理部21は、ゲージ電圧V1を増幅して荷重検知信号としての荷重検知電圧V2を生成し、これをA/D変換部22及び比較器23に出力する。
【0022】
A/D変換部22は、前述の通信周期Tcよりも十分に短い制御部25の所定の演算周期Ta(例えば10[μs])に合わせて荷重検知電圧V2をA/D変換して荷重情報信号を生成する。制御部25は、この荷重情報信号を入力することで荷重情報としてメモリ26に書き込み・記憶する。これにより、荷重センサ14において演算周期Taごとに荷重情報が取得される。つまり、メモリ26には、制御部25の演算周期Taに合わせて最新の荷重情報が更新・記憶されている。
【0023】
一方、比較器23には、D/A変換部24からの閾値信号Sが併せて出力されている。詳述すると、メモリ26には所定の故障検知閾値が予め記憶されており、制御部25は、当該故障検知閾値を読み込んで故障検知閾値情報信号を生成し、これをD/A変換部24に出力する。D/A変換部24は、故障検知閾値情報信号をD/A変換して閾値信号Sを生成し、これを比較器23に出力する。
【0024】
比較器23は、荷重検知電圧V2と、閾値信号Sとを大小比較することでその比較結果に応じたレベル(ハイ又はロー)の信号を制御部25に出力する。具体的には、比較器23は、荷重検知電圧V2が閾値信号S以下のときにはローレベルとなり、荷重検知電圧V2が閾値信号Sよりも大きくなったときにはハイレベルとなる信号を出力する。これは、図4(a)に示すように、例えば車両衝突など修理を要する現象が発生しているとき、荷重検知電圧V2が過大となることが確認されていることによる。閾値信号Sの生成に係る故障検知閾値は、故障を検知する好適な値に設定されている。
【0025】
制御部25は、演算周期Taごとに比較器23の出力信号を監視するとともに、該出力信号のレベルに基づいて故障を検知し、これを故障情報としての故障検知ビットとしてメモリ26に書き込み・記憶する。図4(c)に示すように、この故障検知ビットは、荷重検知電圧V2が閾値信号S以下で比較器23の出力信号がローレベルの状態を維持するときに「0」の状態を維持し、荷重検知電圧V2が閾値信号Sよりも大きくなって当該出力信号がハイレベルになったときにはそれ以降は「1」の状態を維持する。つまり、故障検知ビットは、故障が検知されることでその前後で論理が切り替わる。
【0026】
また、図4(b)に示すように、制御部25は、故障検知ビットが「0」から「1」に切り替わると、それ以降の所定時間Td(例えば200[μs])内で演算周期Taごとに取得される荷重情報を故障検知時荷重情報として全てバッファ27に記憶する。図4(b)では、便宜的に演算周期Taごとに故障検知時荷重情報が記憶されるバッファ27の記憶領域を一列に並んだ四角形で表している。所定時間Tdは、例えば車両衝突時の衝撃によって変動する荷重情報の推移を略包含できる時間に基づき設定されている。つまり、所定時間Td内で演算周期Taごとに取得された全ての故障検知時荷重情報同士を順番につなぐことで、故障が検知されたときの荷重情報(荷重検知電圧V2)の波形が概ね再生可能となっている。故障検知時荷重情報の個数Nが所定時間Tdを演算周期Taで除した値(=Td/Ta、例えば20)に一致することはいうまでもない。
【0027】
さらに、制御部25は、ECU30との間の各種信号の送受タイミングに合わせて(通信周期Tcごとに)荷重情報及び故障検知ビットを通信インタフェース28を通じてECU30に送信する。特に、制御部25は、所定時間Td内の故障検知時荷重情報の全てがバッファ27に記憶された状態にあるとき、ECU30との間の各種信号の送受タイミングに合わせて当該故障検知時荷重情報を一つずつ順番に、通信インタフェース28を通じてECU30に送信する。つまり、ECU30では、故障検知ビットが「0」から「1」に切り替わった後に制御部25において演算周期Taごとに取得された故障検知時荷重情報を、通信周期Tcごとにゆっくりと受信することになる。なお、通信インタフェース28は、ECU30との間で送受する各種信号を所定の通信用フォーマットに成形するためのものである。
【0028】
図3に示すように、ECU30は、第2の制御部としてのCPU(Central Processing Unit)31と、電源回路32と、通信インタフェース34とを備えている。そして、CPU31は、通信インタフェース34に接続された信号線Wを介して全ての荷重センサ14(制御部24)と個別に接続されている。また、CPU31は、通信インタフェース34を介して、エアバッグ装置のエアバッグECU41と接続されるとともに、例えばインストルメントパネルに設置されたインジケータ42と接続されている。通信インタフェース34は、荷重センサ14等との間で送受する各種信号を所定の通信用フォーマットに成形するためのものである。なお、CPU31は、各種プログラム及びマップ等を記憶したROM、各種データ等の読み書き可能なRAM等を内蔵している。
【0029】
CPU31は、各荷重センサ14との間の各種信号の送受タイミングに合わせて(通信周期Tcごとに)、最新の荷重情報及び故障検知ビットを通信インタフェース34を通じて受信する。そして、CPU31は、全ての荷重センサ14から受信した荷重情報を合計してシート上荷重情報を算出し、これに基づいて前述の乗員の有無を判定する(乗員判定部)。
【0030】
そして、CPU31は、通信インタフェース34を介してエアバッグECU41に対し乗員の有無の判定結果を表す情報を出力する。エアバッグECU41は、取得した情報に基づきエアバッグの作動を好適に制御する。
【0031】
また、CPU31は、いずれかの荷重センサ14から受信した故障検知ビットが「1」のとき、当該荷重センサ14のバッファ27に記憶された一の故障検知時荷重情報を通信インタフェース34を通じて受信して、当該故障検知時荷重情報を再生波形データDi(i=1〜N)として記憶する(波形再生部)。具体的には、CPU31は、通信周期Tcごとにバッファ27に記憶された全ての故障検知時荷重情報(所定時間Td内の故障検知時荷重情報)を古い順番に一つずつ通信インタフェース34を通じて受信する。
【0032】
図4(d)に示すように、隣り合う再生波形データDi(i=1〜N)同士の全てを順番につないだ波形は、通信周期Tcが相対的に長い分だけ時間的に延びているものの、故障が検知されたときの荷重情報(荷重検知電圧V2)の波形(図4(a)参照)を概ね再生していることが確認される。
【0033】
なお、図4(e)には、通信周期TcごとにCPU31が通信インタフェース34を通じて受信する最新の荷重情報を黒塗りの四角印で表している。また、通信周期TcごとにCPU31が通信インタフェース34を通じて受信する故障検知ビットが「1」であること、即ち故障検知の状態であることを×印で表している。同図から明らかなように、CPU31は、故障検知ビットが「0」のときには最新の荷重情報を受信しており、故障検知ビットが「1」になることで最新の荷重情報の受信に加えて再生波形データDiを取得していることが確認される。
【0034】
バッファ27に記憶された全ての故障検知時荷重情報の受信が完了すると、CPU31は、それら全ての故障検知時荷重情報の再生波形データDi(i=1〜N)に基づいて、例えば以下に示す<1>〜<4>の少なくとも一つの手順に基づいて故障検知条件を満たすか否かを判断する(故障判定部)。そして、CPU31は、その判断結果に応じて故障検知の処理を行い、あるいは故障検知キャンセルの処理を行う。具体的には、CPU31は、故障検知の処理において、インジケータ42を点灯するべく通信インタフェース34を介してインジケータ42に駆動信号を出力し、故障検知キャンセルの処理においてインジケータ42に対する駆動信号の出力を中止する。
【0035】
<1>CPU31は、先頭の再生波形データDi(i=1)が閾値信号S(故障検知閾値)相当の所定の上限閾値データDtuよりも大きいか否かを判断(再判断)する。そして、CPU31は、再生波形データDi(i=1)が上限閾値データDtuよりも大きいと判断されれば故障検知の処理を行い、再生波形データDi(i=1)が上限閾値データDtu以下と判断されれば故障検知キャンセルの処理を行う。
【0036】
<2>CPU31は、その後の再生波形データDi(i=l>1)が負数相当の所定の下限閾値データDtdを下回るか否かを判断する。そして、CPU31は、再生波形データDiが下限閾値データDtdを下回ると判断されれば故障検知の処理を行い、再生波形データDiが下限閾値データDtd以上と判断されれば故障検知キャンセルの処理を行う。これは、荷重検知電圧V2が過大となった後に著しく減少する際に、例えば車両衝突など修理を要する現象が発生している可能性が高いことによる。
【0037】
<3>CPU31は、再生波形データDi(i=l>1)が下限閾値データDtdを下回ったとき、その際の番号lが所定番号Lを下回るか否か、即ち再生波形データDiが急減しているか否かを判断する。そして、CPU31は、番号lが所定番号Lを下回って再生波形データDiが急減していると判断されれば故障検知の処理を行い、番号lが所定番号L以上で再生波形データDiが急減していないと判断されれば故障検知キャンセルの処理を行う。これは、荷重検知電圧V2が過大となった後に急減する際に、例えば車両衝突など修理を要する現象が発生している可能性が高いことによる。
【0038】
<4>CPU31は、更にその後の再生波形データDi(i=m>l)が正数に戻って一定範囲に収束したとき、その際の番号mが所定番号Mを下回るか否か、即ち再生波形データDiが急減してからの復帰・収束が迅速か否かを判断する。そして、CPU31は、番号mが所定番号Mを下回って再生波形データDiの急減からの復帰・収束が迅速であると判断されれば故障検知の処理を行い、番号mが所定番号M以上で再生波形データDiの急減からの復帰・収束が迅速でないと判断されれば故障検知キャンセルの処理を行う。これは、荷重検知電圧V2が急増減した後に速やかに復帰・収束した際、例えば車両衝突など修理を要する現象が発生している可能性が高いことによる。
【0039】
つまり、CPU31は、その演算能力を活用して、<1>〜<4>の少なくとも一つの手順に基づきより高度な故障判定を行う。
次に、図5に示すフローチャートに基づいて、荷重センサ14の制御部25による故障検知時荷重情報の記憶態様について総括して説明する。この処理は、演算周期Taごとに繰り返し実行されるものである。
【0040】
処理がこのルーチンに移行すると、制御部25は、ステップS1において、A/D変換部22におけるサンプリング時間が経過したか(荷重検知電圧V2のA/D変換が完了したか)否かに基づいて荷重更新条件が成立したか否かを判断する。そして、制御部25は、荷重更新条件の成立を待って、ステップS2に移行し、前述の比較器23の出力信号に基づいて、故障検知の有無を判断する。
【0041】
ステップS2で故障検知があると判断されると、制御部25は、ステップS3に移行して、バッファ27にN個の故障検知時荷重情報(所定時間Td内の全ての故障検知時荷重情報)が溜まったことを意味するサイズ上限の状態にあるか否かを判断する。そして、サイズ上限の状態でないと判断されると、制御部25は、ステップS4に移行し、記憶領域の順番に従ってこのときの荷重情報を故障検知時荷重情報としてバッファ27に記憶・更新する。そして、制御部25はステップS5に移行する。一方、サイズ上限の状態であると判断されると、制御部25は、バッファ27を更新することなく(バッファ27の更新を停止して)そのままステップS5に移行する。また、制御部25は、ステップS2で故障検知がないと判断される場合も、そのままステップS5に移行する。つまり、ステップS2〜S4の処理により、故障検知があるときには、当初の記憶領域が空白になっているバッファ27にN個の故障検知時荷重情報が溜まるまで演算周期Taの都度、バッファ27の更新が繰り返される。
【0042】
ステップS5において、制御部25は、このときの荷重情報に基づいて荷重演算を行う。これは、制御部25により取得される荷重情報が実際の荷重に相関するものの、該荷重自体の数値を表していない場合にこれに一致するように演算・記憶させて情報の汎用性を向上させるためである。その後、制御部25は、処理を一旦終了する。
【0043】
次に、図6に示すフローチャートに基づいて、荷重センサ14の制御部25によるECU30に対する送信情報(応答データ)の設定態様について総括して説明する。この処理は、演算周期Taごとに繰り返し実行されるものである。
【0044】
処理がこのルーチンに移行すると、制御部25は、ステップS11において、ECU30からの要求があるか否かを判断する。この要求の有無は、例えば通信周期TcごとにECU30から送信される要求信号の有無に基づいて判断される。そして、制御部25は、ECU30からの要求がないと判断されればそのまま処理を一旦終了し、あると判断されればステップS12に移行してECU30に送信すべき追加バッファデータがあるか否かを判断する。具体的には、バッファ27にN個の故障検知時荷重情報(所定時間Td内の全ての故障検知時荷重情報)が溜まったサイズ上限の状態にあって、ECU30に未送信の故障検知時荷重情報があるか否かを判断する。
【0045】
ステップS12で追加バッファデータがあると判断されると、制御部25は、ステップS13に移行して、追加バッファデータから応答データを設定する。具体的には、制御部25は、ECU30に未送信の故障検知時荷重情報のうち、最も古い故障検知時荷重情報を読み込んで、これをECU30に対する送信情報として設定する。一方、ステップS12で追加バッファデータがないと判断されると、制御部25は、ステップS14に移行して、追加バッファデータがないことを表す応答データ(例えば「0」)を設定する。
【0046】
ステップS13又はステップS14で追加バッファデータの有無に応じて応答データを設定した制御部25は、ステップS15に移行して、他応答データを設定する。具体的には、制御部25は、メモリ26から最新の荷重情報及び故障検知ビットを読み込んで、これをECU30に対する送信情報として設定する。その後、制御部25は、処理を一旦終了する。なお、ステップS13又はステップS14で設定された応答データは、ステップS15で設定された他応答データと共にECU30に送信されるように構成されている。従って、例えばステップS13で追加バッファデータから応答データが設定される場合には、最新の荷重情報及び故障検知ビットと共にバッファ27の最も古い未送信の故障検知時荷重情報がECU30に送信される。
【0047】
次に、図7に示すフローチャートに基づいて、ECU30のCPU31による故障判定態様について総括して説明する。この処理は、荷重センサ14(制御部25)に対する前述の要求に合わせて通信周期Tcごとに繰り返し実行されるものである。
【0048】
処理がこのルーチンに移行すると、CPU31は、ステップS21において、荷重更新が完了したか否かを判断する。具体的には、CPU31は、要求に伴って制御部25から送信された最新の荷重情報等(応答データ)の到達が完了しているか否かを判断する。そして、CPU31は、荷重更新の完了を待って、ステップS22に移行し、故障検知ビットの論理(「0」又は「1」)に基づいて、故障検知の有無を判断する。
【0049】
ステップS22で故障検知があると判断されると、CPU31は、ステップS23に移行して故障ダイアグカウントCNTをアップ(インクリメント)するとともに、ステップS24に移行してこのときにバッファ27から読み込み・送信された故障検知時荷重情報を再生波形データDiとして設定する。一方、ステップS22で故障検知がないと判断されると、CPU31は、ステップS25に移行して故障ダイアグカウントCNTをクリアする(「0」にする)とともに、ステップS26に移行して現在までに設定された再生波形データDiの全てを破棄(リセット)する。なお、故障ダイアグカウントCNTは、故障検知ビットが連続して「1」となる通信回数、即ち故障検知ビットが「1」の状態を継続している時間を表すものである。
【0050】
ステップS24又はステップS26の処理を行ったCPU31は、ステップS27に移行して故障ダイアグカウントCNTが所定の閾値以上か否か、即ち故障検知ビットが「1」の状態を一定時間継続しているか否かを判断する。そして、故障ダイアグカウントCNTが所定の閾値以上と判断されると、CPU31は、再生波形データを取得済みか否か、即ち全ての再生波形データDi(i=1〜N)の設定が完了したか否かを判断する。なお、ステップS27における判断は、閾値が値「N」であればステップS28における判断と実質的に同等である。換言すれば、ステップS27における判断によって、閾値が値「N」以外に設定されるときに、ステップS28における判断とは別に故障検知ビットが「1」の状態を継続している時間を監視できる。
【0051】
ステップS28で再生波形データを取得済みと判断されると、CPU31は、ステップS29に移行して、前述の<1>〜<4>の少なくとも一つの手順に基づいて、再生波形データDi(i=1〜N)が故障検知条件を満たすか否かを判断する。そして、再生波形データDi(i=1〜N)が故障検知条件を満たすと判断されると、CPU31は、ステップS30に移行して故障検知・報知の処理を行い、処理を一旦終了する。具体的には、CPU31は、通信インタフェース34を介してインジケータ42に駆動信号を出力して該インジケータ42を点灯駆動する。これにより、運転者等の乗員に対し、ディーラー等の整備工場に車両を持ち込むなどの対処を行うことが促される。
【0052】
一方、ステップS27において故障ダイアグカウントCNTが所定の閾値未満と判断されると、CPU31は処理を一旦終了する。これは、何らかの事情で故障検知ビットが一時的に「1」の状態になった場合、故障でない可能性が高いためである。同様に、ステップS28において再生波形データを取得済みでないと判断されると、CPU31は処理を一旦終了する。
【0053】
また、ステップS29において再生波形データDi(i=1〜N)が故障検知条件を満たさないと判断されると、CPU31はステップS31に移行して、荷重センサ14のメモリ26に記憶されている故障検知ビットをクリアする(「0」にする)べく、該当の要求信号を設定する。この要求信号が、例えば次回の通信タイミングで通信インタフェース34等を通じて荷重センサ14(制御部25)に送信されると、制御部25は、メモリ26に記憶されている故障検知ビットをクリアするとともに、バッファ27に記憶されているN個の故障検知時荷重情報の全てをクリアするようになっている。
【0054】
続いて、CPU31は、ステップS32に移行して故障ダイアグカウントCNTをクリアするとともに、ステップS33に移行して全ての再生波形データDi(i=1〜N)を破棄する。そして、CPU31は処理を一旦終了する。
【0055】
以上の説明から明らかなように、故障検知ビットの論理に関わらず、ステップS29で故障検知条件を満たさない限り、インジケータ42が点灯することはない。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0056】
(1)本実施形態では、CPU31は、所定時間Td内における演算周期Taごとの故障検知時荷重情報を受信・再生するとともに、当該再生された故障検知時荷重情報(再生波形データDi)に基づいて故障の有無を判定する。この場合、CPU31は、ステップS29における故障の有無の判定において、制御部25における前述の閾値判定に準じた閾値判定(<1>の手順)に加えて、<2>〜<4>の少なくとも一つの手順に基づいて、例えば故障検知時荷重情報が増加及び減少の一方から他方に切り替わるまでの経過時間やそれらの変動か収束するまでの経過時間といった故障検知時荷重情報の推移(<3>〜<4>の手順)を利用することができる。このため、故障の有無の判定精度をより向上させることができる。そして、故障有りと判定(ステップS29でYES)した際にCPU31が行う修理を促す報知の信頼性をより向上させることができる。一方、CPU31は、バッファ27に記憶された所定時間Td内における演算周期Taごとの故障検知時荷重情報を通信周期Tcごとに順次、受信すればよいため、通信負荷を増加しなくてもよい。つまり、通信能力(演算能力)の小さい簡易且つ安価なCPU31のまま、故障の有無の判定精度を向上させることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、荷重検出装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、主として第1の実施形態の荷重センサ14の制御部25による故障検知時荷重情報の記憶態様を変更した構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では、図2に示すように、バッファ27に代えてリングバッファ51を採用している。リングバッファ51は、制御部25が取得した直近のN個分の荷重情報を常時記憶している。そして、制御部25は、演算周期Taごとに新たに取得した荷重情報をN個のうちの最古の荷重情報が記憶されてリングバッファ51の記憶領域に書き込む(上書きする)とともに、新たに最古となる荷重情報が記憶されてリングバッファ51の記憶領域を先頭の記憶領域に設定する。つまり、リングバッファ51には、N個分の荷重情報が古い順番に管理された状態で記憶されている。
【0058】
従って、図8(a)に示すように、荷重検知電圧V2が閾値信号Sよりも大きくなって比較器23の出力信号がハイレベルとなった時点でも、リングバッファ51には直近のN個分の荷重情報が記憶された状態にある。
【0059】
なお、制御部25は、演算周期Taごとに比較器23の出力信号を監視するとともに、該出力信号のレベルに基づいて故障を検知し、これを故障情報としての故障検知ビットとしてメモリ26に書き込み・記憶することは第1の実施形態と同様である。図8(c)に示すように、故障が検知されることでその前後で故障検知ビットの論理が切り替わることはいうまでもない。
【0060】
また、図8(b)に示すように、制御部25は、故障検知ビットが「0」から「1」に切り替わると、新たな荷重情報の記憶・更新を許可するリングバッファ51の最終の記憶領域を設定する。図8(b)では、便宜的にリングバッファ51の更新が停止される段階で荷重情報が記憶されるリングバッファ51の記憶領域を一列に並んだ四角形で表しており、特に更新が停止される最終の記憶領域にはハッチングを付している。同図から明らかなように、リングバッファ51の更新が停止された状態では、該リングバッファ51には荷重検知電圧V2が閾値信号Sよりも大きくなるまで急増する推移を含むように荷重情報が故障検知時荷重情報として記憶されている。つまり、所定時間Td内で演算周期Taごとに取得された全ての故障検知時荷重情報同士を順番につなぐことで、故障が検知される以前の状態を含む荷重情報(荷重検知電圧V2)の波形が概ね再生可能となっている。
【0061】
制御部25は、ECU30との間の各種信号の送受タイミングに合わせて(通信周期Tcごとに)荷重情報及び故障検知ビットを通信インタフェース28を通じてECU30(CPU31)に送信することは第1の実施形態と同様である。特に、制御部25は、リングバッファ51の更新が停止された状態にあるとき、ECU30との間の各種信号の送受タイミングに合わせてリングバッファ51の故障検知時荷重情報を一つずつ古い順番に、通信インタフェース28を通じてECU30に送信する。つまり、ECU30では、リングバッファ51の更新が停止されるタイミング(所定時間Tdの終期)までに制御部25において演算周期Taごとに取得されたN個分の故障検知時荷重情報を、通信周期Tcごとにゆっくりと受信することになる。
【0062】
ECU30(CPU31)は、いずれかの荷重センサ14から受信した故障検知ビットが「1」のとき、当該荷重センサ14のリングバッファ51に記憶された一の故障検知時荷重情報を通信インタフェース34を通じて受信して、該故障検知時荷重情報を再生波形データDi(i=1〜N)として記憶する(波形再生部)。
【0063】
図8(d)に示すように、隣り合う再生波形データDi(i=1〜N)同士の全てを順番につないだ波形は、通信周期Tcが相対的に長い分だけ時間的に延びているものの、故障が検知される以前の状態を含む荷重情報(荷重検知電圧V2)の波形(図8(a)参照)を概ね再生していることが確認される。
【0064】
なお、図8(e)には、通信周期TcごとにCPU31が通信インタフェース34を通じて受信する最新の荷重情報を黒塗りの四角印で表している。また、通信周期TcごとにCPU31が通信インタフェース34を通じて受信する故障検知ビットが「1」であること、即ち故障検知の状態であることを×印で表している。同図から明らかなように、CPU31は、故障検知ビットが「0」のときには最新の荷重情報を受信しており、故障検知ビットが「1」になることで最新の荷重情報の受信に加えて再生波形データDiを取得していることが確認される。
【0065】
次に、図9に示すフローチャートに基づいて、荷重センサ14の制御部25による故障検知時荷重情報の記憶態様について総括して説明する。この処理は、演算周期Taごとに繰り返し実行されるものである。
【0066】
処理がこのルーチンに移行すると、制御部25は、前述のステップS1、S2の処理を行い、ステップS2で故障検知があると判断されると、ステップS41に移行してリングバッファ51の更新停止タイミング、即ち新たな荷重情報(故障検知時荷重情報)の記憶・更新を許可するリングバッファ51の最終の記憶領域を設定する。この更新停止タイミングの設定は、故障検知ビットが「0」から「1」に切り替わるときに行われるもので、故障検知ビットが「1」の状態を継続する間は当初の設定が維持されるようになっている。
【0067】
次に、制御部25は、ステップS42に移行して更新停止タイミングに到達したか否か、即ちステップS41で設定されたリングバッファ51の最終の記憶領域に新たな荷重情報が記憶・更新されたか否かを判断する。そして、更新停止タイミングに到達していないと判断されると、制御部25は、ステップS43に移行し、記憶領域の順番に従ってこのときの荷重情報をリングバッファ51に記憶・更新する。そして、制御部25は、前述のステップS5に移行して該当の処理を行い、処理を一旦終了する。また、ステップS42において更新停止タイミングに到達していると判断されると、制御部25は、そのままステップS5に移行して該当の処理を行い、処理を一旦終了する。
【0068】
つまり、ステップS2,S41〜S43の処理により、故障検知があるときには、ステップS41で設定されたリングバッファ51の最終の記憶領域に新たな荷重情報が記憶・更新されるまで演算周期Taの都度、リングバッファ51の更新が繰り返される。これにより、リングバッファ51にN個の故障検知時荷重情報が記憶される。
【0069】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、リングバッファ51に対する演算周期Taごとの荷重情報の記憶・更新は、記憶済みの荷重情報の中で最も古い荷重情報を書き換えるとともに、この段階で最も古くなる荷重情報が記憶される記憶領域を先頭の記憶領域に設定すればよいため、制御部25の処理負荷をより軽減することができる。
【0070】
(2)本実施形態では、リングバッファ51の更新停止タイミングの設定によって、CPU31は、故障検知ビットが「0」から「1」に切り替わる以前の故障検知時荷重情報を再生波形データDiとして取得することができる。
【0071】
(第3の実施形態)
以下、荷重検出装置の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態は、前記第1又は第2の実施形態における故障判定に際して、衝突検知センサの検知信号を利用するように変更した構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0072】
図3に示すように、ECU30のCPU31には、車両衝突の有無を検知する衝突検知センサ43が通信インタフェース34を介して接続されており、衝突検知センサ43の検知信号が入力されている。この衝突検知センサ43は、例えば車両の前部に設置されるサテライトセンサーからなり、車両衝突の有無の状態を表す検知信号を出力する。そして、CPU31は、故障判定に際して衝突検知センサ43の検知信号を利用する。
【0073】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて、ECU30のCPU31による故障判定態様について説明する。この処理は、図7のステップS29までは同様であるため、それ以降の処理について説明する。同図に示すように、ステップS29で再生波形データDi(i=1〜N)が故障検知条件を満たすと判断されると(ステップS29でYES)、CPU31は、ステップS51に移行し、衝突検知センサ43の検知信号に基づいて、衝突検知の有無を判断する。
【0074】
ここで、衝突検知がないと判断されると、CPU31は、ステップS31に移行して前述の故障検知条件を満たさないと判断される場合(ステップS29でNO)と同様に処理する。つまり、CPU31は、衝突検知がないと判断される場合(ステップS51でNO)には、荷重センサ14の故障がないと見なして故障有りの判定をキャンセルする(判定キャンセル部)。
【0075】
一方、ステップS51で衝突検知があると判断されると、CPU31は、ステップS30に移行して前述の故障検知・報知の処理を行い、処理を一旦終了する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1又は第2の実施形態の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
【0076】
(1)本実施形態では、衝突検知センサ43の検知信号が車両衝突無しの状態を表すのであれば、CPU31は、ステップS29における故障有りの判定をキャンセルする。このため、ステップS30における故障検知・報知の信頼性をいっそう向上させることができる。
【0077】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第3の実施形態において、衝突検知センサ43はエアバッグECU41に接続されていてもよい。この場合、ECU30は、エアバッグECU41を通じて衝突検知センサ43の検知信号(若しくは当該検知信号に基づいて所定の処理を施された衝突検知情報を含む信号)を受信すればよい。
【0078】
・前記各実施形態において、所定時間Tdの設定は一例であり、例えば複数倍の長さに延長してもよい。これは、現状の所定時間Tdが、車両衝突時の衝撃によって変動する荷重情報の推移を略包含できる時間に設定されていることで、当該延長された所定時間(Td)内で同様の荷重情報の推移の繰り返しが認められた場合、例えば乗員がシートSEを叩くなど人為的な原因によることを確認できるためである。
【0079】
・前記各実施形態において、バッファ27又はリングバッファ51に記憶される故障検知時荷重情報の信号処理装置20及びECU30間の送受信は、故障検知ビットが「1」のときに自動的に行うようにしてもよいし、「1」の故障検知ビットを受信したECU30からの要求信号に対して信号処理装置20が応答するかたちで行うようにしてもよい。
【0080】
・前記各実施形態において、バッファ27又はリングバッファ51に故障検知時荷重情報を記憶する所定時間Tdは任意である。また、バッファ27又はリングバッファ51に記憶される故障検知時荷重情報の個数は任意である。さらに、バッファ27又はリングバッファ51に対する故障検知時荷重情報の更新周期は、演算周期Taの整数倍であってもよい。つまり、バッファ27又はリングバッファ51に対する故障検知時荷重情報の更新を、演算周期Taの1又は複数回おきに行うようにしてもよい。要は、CPU31が、再生された故障検知時荷重情報(再生波形データDi)に基づいて故障の有無を好適に判定できるのであればよい。
【0081】
・前記各実施形態において、再生波形データDiの物理量は、荷重値に相関する電圧値(荷重検知電圧V2相当)であってもよい。
・前記各実施形態において、制御部25による故障情報の取得は、荷重検知電圧V2をA/D変換した荷重情報と故障検知閾値との大小関係に基づいて行ってもよい。
【0082】
・前記各実施形態において、CPU31は、例えば荷重情報に基づいて乗員が大人なのか子供なのかを判定してもよい。
・前記各実施形態において、荷重センサ14の個数は「4」に限定されるものではなく、自然数であればよい。
【0083】
・前記各実施形態において、MCU(マイコン)からなる制御部25を採用してもよい。
・前記各実施形態において、センサ本体10の構造は一例であって、シートSEに加わる荷重を検出し得るのであればその他の構造を採用してもよい。
【0084】
・前記各実施形態において、故障検知時の報知(ステップS30)は、例えばスピーカ又はブザーの発声で行ってもよい。
【符号の説明】
【0085】
SE…シート、14…荷重センサ、25…制御部(第1の制御部)、27…バッファ(荷重情報記憶部)、30…ECU(制御装置)、31…CPU(第2の制御部、波形再生部、故障判定部、判定キャンセル部)、43…衝突検知センサ、51…リングバッファ(荷重情報記憶部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10