【0012】
本発明で使用される変性ゴムは、分子内にスルホン酸基と、アミノ基およびヒドラジノ基から選択された少なくとも1つの基と、を有する変性用化合物によって、エポキシ化天然ゴムのエポキシ基を変性したゴムである。
エポキシ化天然ゴム(ENR)は公知であり、市販されているものを適宜使用することができる。エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、例えば20〜50mol%が好ましい。
本発明で使用される変性用化合物は、分子内にスルホン酸基と、アミノ基およびヒドラジノ基から選択された少なくとも1つの基と、を有する。変性用化合物としては、例えば、ヒドラジノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、1−ナフチルアミン−4−スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)等が挙げられるが、中でも変性用化合物は、スルホン酸基、および、アミノ基およびヒドラジノ基から選択された少なくとも1つの基が、ベンゼン環またはナフタレン環にそれぞれ個別に結合した構造を有することが好ましい。このような変性用化合物は、ベンゼン環またはナフタレン環の存在によって、カーボンブラックとの親和性をさらに高めることができる。
【0016】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記変性ゴムを1〜30質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを10〜80質量部配合してなることを特徴とする。
カーボンブラックの配合量が10質量部未満であると、補強性が悪化する。
逆にカーボンブラックの配合量が80質量部を超えると、発熱性が悪化する。
さらに好ましいカーボンブラックの配合量は、20〜70質量部である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0020】
(変性ゴム1の製造)
エポキシ化天然ゴムとして、クンプーランガスリー社製のENR50(エポキシ化率50mol%)を用い、変性用化合物としてp−ヒドラジノベンゼンスルホン酸をENR50に対して2.5質量%加え、加熱温度120℃、混合時間10分の条件で両者を混合し、変性ゴム1を得た。
【0021】
(変性ゴム2の製造)
上記の変性ゴム1の製造において、p−ヒドラジノベンゼンスルホン酸の添加量を5質量%に変更し、変性ゴム2を得た。
【0022】
(変性ゴム3の製造)
上記の変性ゴム1の製造において、p−ヒドラジノベンゼンスルホン酸を1−ナフチルアミン−6−スルホン酸に変更し、変性ゴム3を得た。
【0023】
(変性ゴム4の製造)
上記の変性ゴム3の製造において、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸の添加量を5質量%に変更し、変性ゴム4を得た。なお、エポキシ化天然ゴムのエポキシ基は、変性用化合物によって約5mol%の割合で変性されている。
【0024】
上記の変性ゴム1および2について、FT−IR分析を行った。
図1は、得られたFT−IRスペクトルである。なお
図1では、未変性のエポキシ化天然ゴムのFT−IR分析の結果も併せて示した。
図1から、スルホニル基の吸収の波数である1080cm
−1およびエポキシ基の吸収の波数である910cm
−1を参照すると、未変性のエポキシ化天然ゴム(スペクトルa)に比べ、変性ゴム1(スペクトル1)および変性ゴム2(スペクトル2)は、エポキシ基が減少し、スルホニル基が増加している。したがって、エポキシ化天然ゴムのエポキシ基が変性用化合物によって変性されていることが確認された。
【0025】
実施例1〜8および比較例1〜4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した(NP混合)。
NP混合における混合温度は150℃である。
続いて、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し(FN混合)、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、FN混合における混合温度は100℃である。
次に得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で170℃、10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0026】
BL引張A値:ダンベル3号を500mm/minにて引張ることにより室温で測定した。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬くて伸びる性質が優れ、破断強度に優れることを示す。
高温A値:前記のBL引張A値の測定において、測定温度を100℃に変更した。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど破断強度に優れることを示す。
耐摩耗性:JIS K6264に基づき、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温において測定した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを意味する。
結果を表1に示す。
【0027】
比較例4
比較例2において、変性用化合物としてp−ヒドラジノベンゼンスルホン酸をENR50に対して2.5質量%の割合で、FN混合時に添加したこと以外は比較例2を繰り返した。この比較例4では、FN混合が低温のため変性用化合物がENRのエポキシ基と反応しないものと推測される。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
*1:NR(STR20)
*2:未変性ENR(クンプーランガスリー社製ENR50(エポキシ化率50mol%))
*3:変性ゴム1(上記で製造した変性ゴム1)
*4:変性ゴム2(上記で製造した変性ゴム2)
*5:変性ゴム3(上記で製造した変性ゴム3)
*6:変性ゴム4(上記で製造した変性ゴム4)
*7:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シーストN、窒素吸着比表面積(N
2SA)=74m
2/g)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*9:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸)
*10:老化防止剤(フレキシス製サントフレックス6PPD)
*11:硫黄(アクゾノーベル(株)製クリステックスHS OT 20)
*12:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーNS)
【0030】
前記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜8で得られたタイヤ用ゴム組成物は、特定の変性用化合物を用いてエポキシ化天然ゴムのエポキシ基を変性した変性ゴムを用いるとともに、ジエン系ゴムに対し該変性ゴムおよびカーボンブラックを特定量配合したので、比較例1のタイヤ用ゴム組成物に比べて、カーボンブラック等の補強性充填剤を高分散化させ、優れた耐摩耗性および破断特性を付与することができた。
比較例2および3は、未変性ENRを配合した例であるので、耐摩耗性が改善されなかった。
比較例4は、変性用化合物がENRのエポキシ基と反応していないため、耐摩耗性が改善されなかった。