(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
棚並び方向に沿って複数の棚が並べられた並列棚群のうち少なくとも1つの棚が、棚並び方向に沿って移動することで棚同士の間に棚間通路を形成することができる移動棚となっている移動棚装置において、
移動棚が、移動方向上の障害物を検出する障害物センサを備えており、
前記移動棚装置には、外部から入力される移動指令および前記障害物センサから発信される障害物検出信号に基づき前記移動棚の動作を制御する制御手段が設けられており、
前記障害物センサが、検出範囲内の障害物の有無を検出可能な測域センサであって、
前記検出範囲として、棚並び方向の寸法が棚同士の間に形成される棚間通路の幅の規定値以下に設定された移動前検出範囲と、前記棚並び方向の寸法が前記移動前検出範囲よりも短く設定された移動中検出範囲と、が設定されており、
前記障害物センサが発信する前記障害物検出信号として、前記移動前検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動前障害物検出信号と、前記移動中検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動中障害物検出信号と、が設定されており、
前記制御手段は、
停止状態の移動棚を移動させる移動指令を受けた際に、前記移動指令が示す移動対象の移動棚の前記障害物センサが前記移動前障害物検出信号を発信している場合には前記移動対象の移動棚を移動開始させないように制御を行い、
前記移動棚が移動している間は、その移動棚の前記障害物センサが前記移動中障害物検出信号を発信している場合にその移動棚を停止させるように制御を行うこと
を特徴とする移動棚装置。
移動中の移動棚の障害物センサが移動中障害物検出信号を発信している場合に、制御手段がその移動棚を停止させるにあたっては、移動状態から停止状態となるまでに移動棚が移動し得る制動距離が移動棚の制動能力の限りにおいて最小となるように緊急停止動作を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の移動棚装置。
棚同士の間に形成される棚間通路の幅の規定値が外部より変更可能となっており、前記棚間通路の幅の規定値が変更された際には、その変更後に移動棚が一度移動した後に、変更後の棚間通路の幅の規定値に応じて移動前検出範囲が変更されること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の移動棚装置。
移動中検出範囲の棚並び方向寸法は、移動中の移動棚に対して緊急停止動作が行われた際にその移動棚が移動状態から停止状態となるまでに移動し得る制動距離以上に設定されていること
を特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の移動棚装置。
棚並び方向に沿って複数の棚が並べられた並列棚群のうち少なくとも1つの棚が、棚並び方向に沿って移動することで棚同士の間に棚間通路を形成することができる移動棚となっている移動棚装置の制御方法において、
前記移動棚に備えられた、検出範囲内の障害物の有無を検出可能な測域センサである障害物センサによって移動方向上の障害物を検出し、
停止状態の移動棚を移動させようとする際には、棚並び方向の寸法が棚同士の間に形成される棚間通路の幅の規定値以下に設定された移動前検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動前障害物検出信号をその移動棚の前記障害物センサが発信している場合にはその移動棚を移動開始させないように制御を行う一方で、
前記移動棚が移動している間は、棚並び方向の寸法が前記移動前検出範囲よりも短く設定された移動中検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動中障害物検出信号をその移動棚の前記障害物センサが発信している場合にその移動棚を停止させるように制御を行うこと
を特徴とする移動棚装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、障害物検出用センサーの検出距離を、移動棚の走行開始時点から長検出距離にしておき、棚間通路の幅が長検出距離より短くなるまでその長検出距離を維持するので、この長検出距離は走行開始時点での棚間通路幅よりも短くしておかねばならない。そのため、走行開始時点では棚間通路内の全体を検出範囲に含めることができない。
【0007】
また、特許文献1に記載の発明においては、障害物検出用センサーの検出距離を適切な時点で長検出距離から短検出距離に切り換えるためには、移動棚が現在どこまで進んだかを調べる必要がある。そのため、特許文献1に記載の移動棚装置においては、移動棚の駆動車輪にパルスエンコーダーを取り付け、そのパルスエンコーダーの発する信号を基に移動棚の現在位置を演算する現在位置検出用コントローラーを設けているが、設けるべき機器が多くなって構築コストが高くつく問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、移動棚の移動開始前に棚間通路内の障害物の有無を調べるにあたって、棚間通路内の全体を調べることが可能な移動棚装置および移動棚装置の制御方法を提供することを目的とする。
また、低コストで構築可能な移動棚装置を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る移動棚装置は、棚並び方向に沿って複数の棚が並べられた並列棚群のうち少なくとも1つの棚が、棚並び方向に沿って移動することで棚同士の間に棚間通路を形成することができる移動棚となっている移動棚装置において、前記移動棚装置には、外部から入力される移動指令に基づき前記移動棚の動作を制御する制御手段が設けられており、前記制御手段は、停止状態の移動棚を移動させる移動指令を受けた際に、前記移動指令が示す移動対象の移動棚の移動の向きの側に形成されている前記棚間通路内に障害物が存在する場合には前記移動対象の移動棚を移動開始させないように制御を行い、前記移動棚が移動している間は、その移動棚の前方直近領域に障害物が存在する場合にその移動棚を停止させるように制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、移動棚の移動開始前には棚間通路内の障害物の有無を確認する一方で、移動開始後は前方直近領域内での障害物の有無を確認することになる。つまりは障害物の有無を確認する対象の範囲を、移動棚が停止状態であるか移動中であるかによって切り換えることで、移動開始後は移動方向先の他の棚を障害物として検出してしまうことを避けながらも、移動開始前には棚間通路内の全体を調べることが可能となっている。
さらに、移動棚の現在位置を調べるのではなく、移動棚が停止状態であるか移動中であるかによって障害物の有無を確認する対象の範囲を切り換えるので、移動棚の現在位置を調べる必要がない。
【0010】
また、本発明に係る移動棚装置は、上記構成に加えて、移動棚が、移動方向上の障害物を検出する障害物センサを備えており、移動棚装置の制御手段が、前記移動棚の動作を前記障害物センサから発信される障害物検出信号にも基づいて制御し、前記障害物センサが、検出範囲内の障害物の有無を検出可能な測域センサであって、前記検出範囲として、棚並び方向の寸法が棚同士の間に形成される棚間通路の幅の規定値以下に設定された移動前検出範囲と、前記棚並び方向の寸法が前記移動前検出範囲よりも短く設定された移動中検出範囲と、が設定されており、前記障害物センサが発信する前記障害物検出信号として、前記移動前検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動前障害物検出信号と、前記移動中検出範囲内に障害物が存在する場合に発信される移動中障害物検出信号と、が設定されており、前記制御手段が、停止状態の移動棚を移動させる移動指令を受けた際に、前記移動指令が示す移動対象の移動棚の前記障害物センサが前記移動前障害物検出信号を発信している場合には前記移動対象の移動棚を移動開始させないように制御を行い、前記移動棚が移動している間は、その移動棚の障害物センサが前記移動中障害物検出信号を発信している場合にその移動棚を停止させるように制御を行うように構成してもよい。
この構成によれば、障害物センサの検出範囲が複数種類設定され、どの範囲に障害物があるかによって異なる種類の信号が発信されることになる。そのため、障害物の有無を確認する対象の範囲を移動棚が停止状態か移動中かによって切り換える制御を行うにあたって、障害物センサの検出範囲そのものを変更する必要はなく、移動棚が停止状態か移動中かに応じて、どの種類の信号が発信されているかを確認するだけでよくなり、比較的簡単な制御で本発明の実現が可能となる。
また、移動前検出範囲の棚並び方向寸法を棚間通路幅の規定値(移動棚装置を備えた設備の運営者が設定する、所望の棚間通路の大きさ)と同等に設定すると、移動前(停止状態)では棚間通路内の全体について障害物の有無を調べることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る移動棚装置は、移動中の移動棚の障害物センサが移動中障害物検出信号を発信している場合に、制御手段がその移動棚を停止させるにあたっては、移動状態から停止状態となるまでに移動棚が移動し得る制動距離が移動棚の制動能力の限りにおいて最小となるように緊急停止動作を行うように構成してもよい。
この構成によれば、移動棚に比較的近い位置に障害物が存在するときには、なるべく素早く(なるべく移動距離を短くして)緊急停止させることになるので、移動棚が障害物と接触してしまうおそれを低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る移動棚装置は、移動棚に、移動中の移動棚が停止すべき位置を検出するための停止位置検出センサが設けられており、前記停止位置検出センサの検出範囲は、その棚並び方向寸法が移動前検出範囲よりも短くかつ移動中検出範囲よりも長くなっており、前記移動中の移動棚が停止すべき位置を前記停止位置検出センサが検出した際に、制御手段がその移動中の移動棚を緊急停止動作よりも小さい減速度で減速させて停止させるように構成してもよい。
この構成によれば、移動棚が本来停止すべき位置に接近したときには比較的小さな減速度での減速が行われるため、本来停止すべき位置での停止の際には移動棚にさほど大きな慣性力が生じないこととなり、棚内に保管されている物品に衝撃を与えることなく移動棚を正常停止させることができる。
【0013】
また、本発明に係る移動棚装置は、停止位置検出センサを設ける構成に替えて、障害物センサの検出範囲として、その棚並び方向寸法が移動前検出範囲よりも短くかつ移動中検出範囲よりも長くなっている停止位置検出範囲を設定し、移動中の移動棚の前記障害物センサが前記停止位置検出範囲内に障害物を検出した際に、制御手段がその移動棚を緊急停止動作よりも小さい減速度で減速させて停止させるように構成してもよい。
この構成によれば、棚内に保管されている物品に衝撃を与えることなく移動棚を本来停止すべき位置にて正常停止させる制御を行うにあたって、移動棚が停止すべき位置に接近したことを障害物センサで検出することが可能となるため、停止位置検出センサを設ける必要がなく、より低コストで正常停止の制御を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る移動棚装置は、上記構成に加えて、棚同士の間に形成される棚間通路の幅の規定値が外部より変更可能となっており、前記棚間通路の幅の規定値が変更された際には、その変更後に移動棚が一度移動した後に、変更後の棚間通路の幅の規定値に応じて移動前検出範囲が変更されるように構成してもよい。
この構成によれば、例えば移動棚装置において棚間通路を普段は一本だけしか形成しないように運用されていたとしても、棚間通路の幅を普段の1/2とすることで棚間通路を二本形成することが可能となる。適切な棚間通路幅は棚間通路を何本形成するかによって異なるが、棚間通路の幅の規定値を変更することで、ひいては形成する棚間通路の本数を変更することが可能となる。そして、その変更後の棚間通路幅に応じて移動前検出範囲が変更されるため、棚間通路幅(および形成する棚間通路の本数)を変更しても問題なく棚間通路内全体の障害物の有無を確認できる。また、棚間通路の幅が変更された直後は、その時点で形成されている棚間通路の幅はまだ変更前の規定値の寸法のままであるので、移動棚が一度移動して棚間通路の幅が変更後の規定値の寸法となった後に移動前検出範囲を変更するのが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る移動棚装置は、上記構成に加えて、移動棚に、その移動棚に隣接している棚間通路の幅を測定可能な棚間通路幅測定センサが設けられており、前記棚間通路幅測定センサが測定した棚間通路の幅に応じて移動前検出範囲が変更されるように構成してもよい。
この構成によれば、設備内機器の動作ムラや作業者の手動操作などが原因で移動開始前の移動棚の位置が本来の停止位置からズレていたとしても、実際に形成されている棚間通路の幅に応じて移動前検出範囲が変更されることになるので、問題なく棚間通路内全体の障害物の有無を確認できる。
【0016】
また、本発明に係る移動棚装置は、上記構成に加えて、移動中検出範囲の棚並び方向寸法は、移動中の移動棚に対して緊急停止動作が行われた際にその移動棚が移動状態から停止状態となるまでに移動し得る制動距離以上に設定されているように構成してもよい。
この構成によれば、移動中検出範囲内に障害物が発見された場合には、その障害物と衝突する前に緊急停止することをより確実に行えるようになる。
【0017】
そして、本発明に係る移動棚装置の制御方法は、並び方向に沿って複数の棚が並べられた並列棚群のうち少なくとも1つの棚が、棚並び方向に沿って移動することで棚同士の間に棚間通路を形成することができる移動棚となっている移動棚装置の制御方法において、停止状態の移動棚を移動させようとする際には、その移動棚の移動の向きの側に形成されている前記棚間通路内に障害物が存在する場合にはその移動棚を移動開始させないように制御を行う一方で、前記移動棚が移動している間は、その移動棚の前方直近領域に障害物が存在する場合にその移動棚を停止させるように制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、移動開始後は移動方向先の他の棚を障害物として検出してしまうことを避けながらも、移動開始前には棚間通路内の全体について障害物の有無を調べることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動棚が移動を開始する前にはその移動方向前方(移動指令が示す移動の向き)の棚間通路内の全体について障害物の有無を調べることができるので、作業者が棚間通路の端で作業中の場合にもその作業者を障害物として発見することが可能となり、作業者が棚間通路内に居るまま移動棚を移動開始させてしまうことを確実に防ぐことができる。
さらに、障害物の有無を確認する対象の範囲を切り換えるために移動棚の現在位置を調べる必要がないので、移動棚の現在位置を正確に検出するための機器を設けなくともよく、低コストで移動棚装置を構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の実施形態の一例としての移動棚装置の斜視図を示す。
移動棚装置10は複数(ここでは3台)の移動棚11を含んでおり、これら移動棚11の移動経路Wの両外端位置にはそれぞれ固定棚13が配置されている。各移動棚11は、固定棚13同士の間において移動経路W上を往復走行することにより、移動棚11同士の間または移動棚11と固定棚13との間に、移動棚11または固定棚13に対して積荷Tの受け渡し作業を行うための棚間通路34を形成することができる。
なお、以下においては、移動経路Wに沿う方向を棚並び方向または前後方向、移動経路Wに直交する方向を左右方向と呼称し、移動経路W上での移動棚11の移動方向の一方側を前方、他方側を後方とし、前方を基準として
図1中の矢印に示すように前後左右の区別を行う。
【0021】
[固定棚]
図1に示すように、固定棚13は、鋼などの耐荷重性のある材質による棒状材と板状材を組み合わせて積荷Tを収納可能となっている棚本体13aからなり、この棚本体13aを構成する棒状材のうち上下方向に延びる支柱13bは、その下端が移動棚装置10の床面にボルト留めなどにより固定されている。また、左右方向最外端(左端および右端)の支柱13bの下端近くには、光反射板19が取り付けられており、後述するフォトリフレクタからの光を反射できるようになっている。
【0022】
[移動棚]
移動棚11は、固定棚13の棚本体13aと同様に積荷Tを収納可能な棚本体11aと、この棚本体11aを下部で支持する下部フレーム体12を備えている。下部フレーム体12は耐荷重材質製のフレーム材を組み合わせた矩形枠状になっており、棚本体11aのサイズに合わせて、左右方向に幅広(例えば約15m)で、棚並び方向は左右方向に比べて短くなっている(例えば約2m)。
また、この下部フレーム12の下方左右端には、フォトリフレクタなどの光電センサおよび光反射板からなる停止位置検出センサ17が取り付けられている。停止位置検出センサ17の光電センサがフォトリフレクタである場合には、棚並び方向に向けて投光した光がその先で光反射板により反射されて帰ってくるか否かによって、固定棚13あるいは他の移動棚11に接近しているか否か、すなわち停止すべき位置に至っているか否かが検出できるようになっている。この停止位置検出センサ17は、移動棚11の前後両側に設けられている。
そして、移動棚11を実際に移動させるための手段として、下部フレーム体12の下方(
図1では見えない位置)に、走行手段(例えば車輪)が、左右方向に複数設けられている。こうした走行手段は移動棚11全体の重量を分散して支持できるように例えば移動棚11内での積荷T用収納区画の左右区切りとなる支柱11b(上下方向の棒状材)の土台近くに設けるとよく、
図1で例示されているように収納区画が1つの移動棚11あたり上下3層、前後2段、左右4列の場合、走行手段は左右方向を4列に仕切っている5本の支柱11bに対応して5基設けられることとなる。この走行手段、例えば
図2に示す駆動車輪14を駆動モータ18などで駆動する(回転させる)ことにより、移動棚11を床面上で走行させることができる。この移動方式では、移動棚11の走行を案内するためのレールは必要ない。
そして、移動棚11の下部フレーム体12の前面側には、
図2に示すように、接触ストッパ36が取り付けられている。この接触ストッパ36は移動棚11の前方側へ突出している。そのため、移動棚11が棚間通路34を閉じるように移動して前方側の他の棚に接近した際、棚本体11aよりも先に接触ストッパ36が他の棚と接触することになるため、棚本体11a全体が他の棚と接触して収納している積荷Tへ大きな衝撃を与えてしまうのを防ぐことができる。また、この接触ストッパ36にバネなどの緩衝用の機構を組み込んでおくことにより、他の棚との接触時に発生する衝撃を緩和することができる。
【0023】
[障害物センサ]
そして、移動棚11の前方下部には、棚間通路34内の障害物の有無を検出するための障害物センサ30が設けられている。この障害物センサ30は、
図2(a),(b)に示すように、移動棚11の下部(床面近く)にセンサカバー32を介して取り付けられている。
障害物センサ30はその周囲の所定範囲内に存在する物体を検出することが可能な測域センサであり、例えば半導体レーザーを用いたスキャナ式レンジセンサを用いることができる。ここで示す障害物センサ30はその本体部の形状が円柱状になっており、その円柱側面部(スキャナ式レンジセンサの場合、投光・受光面となる箇所)を移動棚前方に向けて露出した状態で、その上下側および背面側をセンサカバー32で覆われている。このセンサカバー32が支持ブラケット38を介して移動棚11の下部フレーム体12に取り付けられることにより、障害物センサ30は移動棚11の棚本体11aと床面との間に配置されている。
センサカバー32は障害物センサ30を上下側から支持するとともに、前方へ向けてやや突出した形状になっており、障害物センサ30が前方側の障害物と直接衝突することがないように構成されている。また、このセンサカバー32は
図2(b)に示すように平面視形状が略台形状になっており、その台形内に障害物センサ30を配置することにより、どの方向から障害物が接近してきたとしても、その障害物は障害物センサ30より先にセンサカバー32へ接触することになるよう構成されている。
なお、センサカバー32は前述のとおり前方側へやや突出しているが、
図2(b)に示すように、接触ストッパ36よりは突出しておらず、移動棚11が他の棚に接近した場合にはセンサカバー32よりも先に接触ストッパ36が他の棚と接触することになる。これにより、センサカバー32および障害物センサ30が大きな衝撃を受けてしまうことが防がれる。
【0024】
<検出範囲>
障害物センサ30がスキャナ式レンジセンサの場合、障害物センサ30は自身を中心とした扇形(例えば中心角270°・半径20m)の走査範囲内における物体の存在を検出することが可能である。しかし、実際に障害物として認識する必要があるのは、その走査範囲内のうち特定の領域に侵入している物体のみである。そこで、障害物センサ30は、「この範囲内に物体が存在する場合に障害物有りと認識する」ための「検出範囲」を設定できるようになっている。
この検出範囲は、
図3に示すように、走査範囲40の内側でいくつかの種類の範囲を設定することができる。これらの範囲はどれか一つしか設定できないというわけではなく、複数の範囲を共存させて設定することができる。そして、障害物センサ30はこれらのうちどの範囲に障害物が存在するかに応じて、異なる種類の信号を発することができる。
例えば、左右方向・棚並び方向の寸法が棚間通路34と同等(例えば左右方向15m・棚並び方向3m)になっている移動前検出範囲42と、左右方向の寸法は棚間通路34と同等だが棚並び方向寸法は非常に短く(例えば0.4m)なっている移動中検出範囲44の2つの検出範囲を設定することができる。なお、移動中検出範囲44の棚並び方向寸法は、停止位置検出センサ17が他の棚の存在を検出することが可能な範囲である停止位置検出範囲46の棚並び方向寸法(例えば0.5m)よりも短くするのが好ましい。
このように検出範囲を設定した場合、障害物センサ30は、移動前検出範囲42内に障害物が存在するときには移動前障害物検出信号を発信し、移動中検出範囲44内に障害物が存在するときには移動中障害物検出信号を発信する。ここで、
図3に示す移動中検出範囲44は移動前検出範囲42内に含まれているため、移動中検出範囲44内に障害物が存在する場合には、移動前検出範囲42内にも障害物が存在することとなるので、移動前障害物検出信号と移動中障害物検出信号の両方が発信されることになる。
なお、障害物センサ30の検出範囲は任意に変更可能であり、例えば障害物センサ30をコンピュータと接続した上で、検出範囲設定用のソフトウェアにより走査範囲40を画像として表示させて、その走査範囲40内で検出範囲の境界線を示す図形(長方形など)を描く、あるいは検出範囲を定義する数値(奥行き寸法、幅寸法など)を直接入力する、などの方法により、検出範囲の設定を編集することが可能である。
【0025】
[移動棚制御器]
移動棚装置10には、
図4のブロック図に示すように、移動棚11の移動を制御する移動棚制御手段としての移動棚制御器50が設けられている。この移動棚制御器50は移動棚11に直接取り付けられたプロセッサとして構成してもよいが、ここでは、移動棚制御器50は移動棚11から離れた位置に用意され移動棚11の各機器(停止位置検出センサ17、駆動モータ18、障害物センサ30など)と無線または有線で通信するコンピュータとして構成されたものとして説明する。
移動棚制御器50は、移動棚11の状態を検出する各種検出器からの信号に基づき、移動棚11の移動を制御する。すなわち、ここでは停止位置検出センサ17が検出する他の棚への接近の有無と、障害物センサ30が検出する障害物の位置に基づき、駆動モータ18の回転を制御する。
そして、移動棚制御器50は、移動棚装置10内の作業者または遠隔地にいるユーザーからの動作指令を伝達する指令装置60(移動棚11に直接取り付けられた操作パネルや、移動棚11とは別体に用意されたリモコンなど)と通信可能になっており、指令装置60から移動棚11を移動させるように指令を受けたときに、移動棚11の移動を開始させる。
【0026】
[移動制御]
<停止状態>
以下、
図1に示す3つの移動棚11のうち前後方向中央のもの、つまり前方には通路が開いており後方には他の移動棚11がある状態から移動を始める移動棚11の移動制御について、
図1〜
図5に基づき説明する。
図1中の前後方向中央の移動棚11においては、下方の前後左右端に設けられた停止位置検出センサ17のうち、前方側の停止位置検出センサ17が、前方には他の棚が存在しないことを検出し、後方側の停止位置検出センサ17が、後方には他の移動棚11が存在することを検出する。このとき、停止位置検出センサ17からの信号を受信する移動棚制御器50は、この移動棚11の状態について、停止状態であるものと判断する。
【0027】
<走行開始前の判定>
<<棚間通路が開いているかどうかの判定>>
指令装置60から、いずれかの停止状態の移動棚11を移動(前進または後退)させるよう指令が発せられると、移動棚制御器50がその指令を受信する(
図5中のステップS01)。
指令を受信した移動棚制御器50はまず、その指令による移動方向側に既に他の棚が存在していないかどうかを判断する。すなわち、移動させるよう指令された移動棚11について、指令が前進であるなら前方に、後退であるなら後方に他の棚が存在しているかどうかを、移動させるよう指令された移動棚11に設けられた停止位置検出センサ17からの信号に基づき判断し(
図5中のステップS02)、移動方向先に他の棚が存在する(
図5中のステップS02の判定がNO:棚間通路34が閉じている)場合には進行不能であることを通知する信号を指令装置60に返す(
図5中のステップS03)。
【0028】
<<棚間通路内に障害物が存在するかどうかの判定>>
そして、移動方向先に他の棚が存在しない場合、すなわち棚間通路34が開いている場合(
図5中のステップS02の判定がYESの場合)には、移動棚制御器50は、その棚間通路34内に作業者などの障害物が存在するかどうかを確認する(
図5中のステップS04)。この確認には、障害物センサ30が発する検出信号が用いられる。
障害物センサ30は、左右方向・棚並び方向の寸法が棚間通路34と同等になっている移動前検出範囲42(
図3)内に障害物があると移動前障害物検出信号を発信するため、移動棚制御器50は、移動前障害物検出信号が発信されているか否かを確認することによって、棚間通路34内に障害物が存在するかどうかを判断することができる。
そして、移動前障害物検出信号が発信されている場合には、棚間通路34内に障害物が存在している(
図5中のステップS04の判定がYESである)ことになるため、移動棚11の移動を行うべきではない。そこでこの場合、移動棚制御器50は、進行不能であることを通知する信号を指令装置60に返す(
図5中のステップS05)。
【0029】
<走行開始>
移動方向先に他の棚が存在せず(棚間通路34が開いており)、かつ棚間通路34内に障害物がなくて(
図5中のステップS04の判定がNOであって)進行可能である場合には、移動棚11の各駆動モータ18を指令に応じた回転方向および回転速度で駆動させて、移動経路Wに沿う前後方向の移動、すなわち移動棚11の前進または後退を開始する(
図5中のステップS06)。
【0030】
<移動中における障害物検出>
移動棚11が前進または後退の移動をしている間も、移動棚制御器50は、移動棚11に設けられた障害物センサ30が発信する検出信号を受信し続ける。
移動棚11が移動すると棚間通路34が狭まることになるため、移動方向側に存在する他の棚(移動棚11または固定棚13)が移動前検出範囲42内に入ることになる。そのため、移動棚11の移動中においては、障害物センサ30は移動前障害物検出信号を発信し続けることになる。しかし、移動棚制御器50は、移動前障害物検出信号が発信されているかどうかを移動棚11の移動中においては確認しないため、他の棚が移動前検出範囲42内に入っても、棚間通路34に障害物が存在しているとは判定されない。
移動棚11の移動中に移動棚制御器50が確認するべきなのは、間もなく衝突が発生しそうなほど近距離に障害物が迫っているかどうか、すなわち、移動棚11の移動方向のすぐ先に作業者などの障害物が存在しているかどうかである。そこで、移動棚制御器50は、移動中の移動棚11の前方側(移動方向側)の障害物センサ30が移動中障害物検出信号を発信しているかどうかを確認する(
図5中のステップS07)。
【0031】
<緊急停止制御>
移動中障害物検出信号が発信されている場合、棚並び方向寸法が非常に短く設定されている移動中検出範囲44内に障害物が存在する(
図5中のステップS07の判定がYESである)、すなわち移動棚11の移動方向のすぐ先に障害物が存在していることになる。
その場合には、移動棚11と障害物との衝突を防止するため、直ちに移動棚11を停止させなければならない。そこで、移動棚制御器50は緊急停止制御を実行し、移動棚11を緊急停止させる(
図5中のステップS08)。
この緊急停止制御においては、移動中障害物検出信号の発信が確認されてから(緊急停止制御を開始してから)移動棚11が停止するまでの間に移動棚11が移動してしまう距離(制動距離)をできるだけ短くすることが好ましい。そこで、移動棚制御器50は、
図2中には図示していないブレーキ機構(制動手段)をその最大の制動能力で動作させたり、駆動モータ18を瞬間的に逆回転させたりして、制動距離が最小となるよう、移動棚11に緊急停止動作を行わせる。
ここで、この緊急停止動作を行うことによって移動棚11と障害物との衝突を確実に防止できるようにするためには、緊急停止動作を行うかどうかの判断基準となる移動中検出範囲44の棚並び方向寸法が、緊急停止動作によっても移動棚11が停止するまでに移動してしまう制動距離以上の寸法に設定されているとよい。そのため、移動中検出範囲44を設定するにあたっては、移動棚11を緊急停止させた場合の制動距離を予め調べておくのが好ましい。
移動中検出範囲44の棚並び方向寸法が、緊急停止動作の際の制動距離以上に設定されていれば、例えば移動棚11が移動開始してから狭まっていく棚間通路34内に作業者が侵入してしまったとしても、移動棚11とその作業者との距離が制動距離よりも短くなってしまう(緊急停止が間に合わない距離になってしまう)よりも前に緊急停止動作が行われることになるため、移動棚11が作業者と衝突してしまう前に移動棚11を停止させることができる。
【0032】
<移動の継続>
一方、移動中検出範囲44内に障害物が存在しない場合(
図5中のステップS07の判定がNOの場合)、移動棚制御器50は、停止位置検出センサ17が移動方向先に他の棚の存在を検出していないかどうかを確認する(
図5中のステップS09)。
停止位置検出センサ17による検出がない場合(
図5中のステップS09の判定がNOの場合)、つまり未だ他の棚に接近しておらず、停止すべき位置へ至っていない場合には、
図5中のステップS07からステップS09を繰り返す。すなわち、障害物センサ30が移動中検出範囲44内に障害物の存在を検出するか、停止位置検出センサ17が他の棚を検出する(移動棚11が停止すべき位置に到達する)まで、移動棚11ステップS06で開始した前進または後退を継続する。
【0033】
<正常停止制御>
そして、停止位置検出センサ17が移動方向先に他の棚の存在を検出したなら(
図5中のステップS07の判定がYESなら)、移動棚制御器50は、移動棚11が停止すべき位置へ到達したと判断し、
図2には図示しないブレーキ機構を動作させる、あるいは駆動モータ18の回転速度を継時的に減少させていくなどの方法により正常停止制御を実行する(
図5中のステップS10)。
この正常停止制御においては、緊急停止動作に比べて小さい減速度での移動棚11の減速が行われる。そのため、停止の過程において移動棚11に収納されている積荷Tに作用する慣性力が緊急停止動作時に比べて小さくなるので、正常停止の際に積荷Tが移動棚11から落下したり、収納位置がズレてしまったりするおそれは少ない。
なお、
図3に示すように停止位置検出センサ17の停止位置検出範囲46の棚並び方向寸法は、停止中検出範囲44の棚並び方向寸法よりも長いので、停止位置検出センサ17が他の棚を検出してから正常停止制御により移動棚11を減速させていく過程で、他の棚が移動中検出範囲44内に入ることになる。しかし、その時点では既に正常停止制御が開始されてからある程度時間が経過しているため、移動棚11は十分に減速されていることになる。よって緊急停止動作による急激な停止を行わずとも、もはや移動棚11と他の棚との接触により大きな衝撃は発生しない状態になっている。そこで、正常停止制御中は他の棚が移動中検出範囲44内に入っても緊急停止動作には移行せず、正常停止制御を継続する。
【0034】
<待機>
図5中のステップS03またはステップS05において移動棚11が進行不能であることを通知する信号が指令装置60に返された場合、ステップS08において移動棚11の緊急停止動作が実行された場合、そしてステップS10において移動棚11が正常停止させられた場合のいずれも、その後には移動棚11が停止状態になる。移動棚11が停止状態の間においては、移動棚制御器50は、その移動棚11に対する新たな移動指令が指令装置60から発行されるまで待機する(
図5中のステップS11)。
【0035】
以上のように制御される移動棚11を有する移動棚装置10においては、移動棚11の移動開始前には移動前検出範囲42内すなわち棚間通路34内全体に相当する範囲内の障害物の有無を確認するため、作業者が棚間通路34の端(他の棚の近く)で作業中の場合にもその作業者を障害物として発見することが可能となり、作業者が棚間通路34内に居るまま移動棚11を移動開始させてしまうことを確実に防ぐことができる。ここで、移動前検出範囲42の棚並び方向寸法が、棚間通路34幅の規定値(所望の棚間通路34の大きさ)と同等に設定されていれば、移動前に棚間通路34内の全体について障害物の有無を調べることが可能となる。
その一方で、移動開始後は移動前検出範囲42内の障害物の有無ではなく移動棚11の前方直近領域である移動中検出範囲44内の障害物の有無を確認するため、移動開始後は移動方向先の他の棚を障害物として検出してしまうことを避けることが可能となっている。
このような障害物の有無を確認する対象の範囲の切り換えを、移動棚11の現在位置を調べるのではなく、移動棚11が停止状態であるか移動中であるかに応じて行うため、移動棚11の現在位置を正確に検出するための機器を設ける必要がなく、低コストで移動棚装置10を構築することができる。
【0036】
また、障害物の有無を確認する対象の範囲を移動棚11が停止状態か移動中かに応じて切り換えるにあたって、障害物センサ30の検出範囲そのものを変更するのではなく、障害物センサ30の発する信号の種類を確認することで、どの範囲内に障害物があるかを認識することができるので、障害物センサ30は単にどの範囲内に障害物があるかに応じた信号を発信する動作を続けるだけでよい。そのため障害物センサ30の動作や設定を移動棚11の移動中に変更する必要がなく、比較的単純な制御で本発明の制御方法を実行することができる。また、既存の設備内に障害物センサ30を持たない移動棚装置が構築済みであったとしても、移動棚11に障害物センサ30を取り付け、移動棚制御器50による制御の流れ内に障害物センサ30の出力信号に応じた制御ルーチンを付け加えるだけで本実施形態と同等の制御を実現することが可能であるため、構築済みの移動棚装置に対しても本実施形態の構成を容易に適用できる。
【0037】
また、移動中において移動棚11の前方直近領域(移動中検出範囲44)内に障害物が存在するときには、なるべく制動距離を短くして緊急停止させる。さらに移動中検出範囲44の棚並び方向寸法がその制動距離以上に設定されていることにより、移動棚11の移動中に棚間通路42内へと作業者などの障害物が侵入してしまったとしても、移動棚11がその障害物と接触してしまう前に停止させることができ、衝突を防止できる。
その一方で、移動棚11が本来停止すべき位置(他の棚の近くなど)に接近したときには緊急停止動作よりも緩やかな正常停止制御により比較的小さな減速度での減速が行われるため、本来停止すべき位置での停止の際には移動棚11にさほど大きな慣性力が生じないこととなり、収納されている積荷Tに衝撃を与えることなく移動棚11を正常停止させることができる。
【0038】
なお、上記の実施形態においては、棚間通路34内および移動棚11の前方直近領域内の障害物の有無を、複数の検出範囲を設定可能な測域センサである障害物センサ30を用いて検出しているが、障害物の存在を調べるための手段はこれに限るものではない。障害物の存在を調べるための手段は、移動前には棚間通路34内全体を調べ、移動中には移動棚11の移動方向先のすぐ前方を調べられるようになっていればよい。例えば、移動棚11に棚間通路34内を撮影するカメラを取り付け、撮影された画像を解析することにより棚間通路34内または前方直近領域内の障害物の有無を確認するようにしてもよいし、移動棚11の前方直近領域内の障害物の有無を確認するためには短距離の検出範囲を有する光学センサを用いるようにしてもよい。また、移動棚11および棚間通路34の左右方向寸法が大きく、一基のセンサやカメラなどだけでは棚間通路34全体について障害物の有無を調べ切れない場合には、センサなどを複数設けてもよい。例えば障害物センサ30を左右方向に離間して複数設けて、障害物センサ30のうちいずれか1つでも障害物を検出しているものがあれば、移動棚制御器50は棚間通路34内に障害物が存在すると判定する、というように構成してもよい。
【0039】
また、上記の実施形態においては、移動棚11が本来の停止位置に接近したことを確認するために、
図3に示す停止位置検出範囲46内に他の棚が入ったことを検出可能な停止位置検出センサ17(
図1)を用いているが、これに代えて、障害物センサ30で停止位置への接近を検出するようにしてもよい。例えば、移動前検出範囲42と移動中検出範囲44に加えて、停止位置検出範囲46も、障害物センサ30の検出範囲として設定された複数種類の範囲の一つとしておく。そして、停止位置検出範囲46内に障害物が存在する場合には障害物センサ30が停止位置検出信号を移動棚制御器50へと発信するよう設定しておき、停止位置検出信号が発信されている場合には移動棚11を正常停止させるよう移動棚制御器50が制御を行うことにより、停止位置検出センサ17を設けなくとも移動棚11が本来の停止位置に接近したことの確認および正常停止制御を行うことができる。
このようにすると、停止位置検出センサ17が必要なくなるので、より低コストで移動棚装置10を構築できるという利点がある。
このようにして障害物センサ30に停止位置検出センサ17の役割を兼任させる場合、障害物センサ30が停止位置を検出するために確認する範囲は停止位置検出センサ17の検出範囲と厳密に同じでなくともよい。例えば、停止位置検出センサ17が移動棚11の左右方向端部に設けられているため、
図3に示す停止位置検出範囲46は移動棚11の左右方向端部付近のみの領域となっているが、障害物センサ30ならば棚間通路34の左右方向全体を対象として検出を行うことができるので、左右方向寸法が移動棚11の左右方向寸法と同等に(かつ棚並び方向寸法は移動前検出範囲より小さくそして移動中検出範囲より大きく)なっている範囲を障害物センサ30の停止位置検出範囲として設定してもよい。
【0040】
また、上記の実施形態においては、
図1,
図6(a)に示す通り棚間通路34を移動棚装置10において一本のみ形成しているが、
図6(b)に示すように複数本(ここでは二本)の棚間通路34を形成するようにしてもよい。そして、この棚間通路34の本数を外部から(例えば指令装置60を用いて)変更できるようにしてもよい。このようにする場合、棚間通路34の幅(棚並び方向寸法)の規定値が外部から変更されることに等しいため、棚間通路34の幅と同等の棚並び方向寸法に設定されている移動前検出範囲42の大きさも、その変更後の棚間通路34の幅に合わせて変更する必要がある。例えば、指令装置60から棚間通路34の幅の規定値を変更する(棚間通路34の本数を変更する)指令が発行された際、移動棚制御器50が障害物センサ30に変更後の棚間通路34の幅の規定値を通知して、障害物センサ30は移動前検出範囲42の棚並び方向寸法をその変更後の規定値と等しく(またはそれ以下の値に)変更するとよい。このようにすれば、棚間通路34の幅(および形成する棚間通路34の本数)を変更しても問題なく棚間通路34内全体の障害物の有無を確認できる。
なお、棚間通路34が一本のみ形成されている状態から棚間通路34を二本とする設定へ変更された直後は、その時点で形成されている棚間通路34は一本のままであるので、棚間通路34の幅の規定値が変更された直後の移動棚11の移動開始時点では、変更前の棚間通路34の幅の規定値に合わせた移動前検出範囲42の設定(すなわち、棚間通路34が一本のみの場合の設定)を変更せずに引き続き使用して、その移動が完了して棚間通路34が二本となってから移動前検出範囲42の設定を変更するとよい。同様に、棚間通路34を二本とする設定から棚間通路34を一本のみとする設定へ変更された場合も、棚間通路34の設定変更後に移動棚11を一度移動させた後に移動前検出範囲42の設定を変更するとよい。
また、棚間通路34が一本のみ形成されている状態から棚間通路34を二本(またはそれ以上)とする設定へ変更された直後の移動棚11の移動においては、その移動棚11が停止すべき位置(停止位置)は他の棚の近くではなく、他の棚から(変更後の)棚間通路34一本分離れた位置となるため、設定変更後の停止位置に合わせて、停止位置を検出する方法も変更する必要がある。例えば、予め床面に棚間通路34の設定の種類に応じて複数種類の停止位置マーカを設置しておき(例えば棚間通路34が一本の場合の停止位置と二本の場合の停止位置とで異なる波長の光を反射する反射板を設置しておき)、停止位置センサ17で棚間通路34の設定の種類に応じた停止位置マーカを検出する(例えば停止位置センサ17が光学センサならば反射光の波長がどの種類の反射板に対応した波長になっているかを確認する)ようにしたり、あるいは、障害物センサ30の停止位置検出範囲44の棚並び方向寸法を、設定変更後の棚間通路34の幅と同程度の寸法に変更したりすることで、設定変更後の停止位置を検出できるようにして、移動棚11を設定変更後の停止位置で正しく停止できるようにすることが好ましい。
【0041】
また、上記の実施形態においては、棚間通路34の幅は予め与えられた規定値となっていることを前提とし、移動前検出範囲42はその棚間通路34の幅の規定値に応じて設定されているが、
図6(a),
図6(b)に示すように、移動棚11に光学測定器やカメラなどを用いて現時点の棚間通路34の幅を測定することが可能な棚間通路幅測定センサ48を設けておき、この棚間通路幅測定センサ48が測定した棚間通路34の幅に応じて移動前検出範囲42の設定(特に棚並び方向寸法)を変更するようにしてもよい。このようにすると、移動開始前の移動棚11の位置が本来の停止位置からズレていたとしても、実際に形成されている棚間通路34について正しく障害物の有無を確認することができる。また、棚間通路34の幅の規定値を変更することが可能な構成としている場合にも、
図6(b)に示すように、棚間通路幅測定センサ48による測定を行うことでその変更後の棚間通路34の幅を確認し、移動前検出範囲42の設定を変更後の棚間通路34の幅の規定値に合わせて正しく変更することが可能となる。