特許第6493159号(P6493159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6493159-外装補強用シート及び成形体 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493159
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】外装補強用シート及び成形体
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/36 20060101AFI20190325BHJP
   D21H 19/12 20060101ALI20190325BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20190325BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20190325BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   D21H13/36 Z
   D21H19/12
   D04H1/26
   D04H1/4209
   B60R13/02 A
   B60R13/02 B
   B60R13/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-214181(P2015-214181)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-82366(P2017-82366A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】土井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】楠本 将憲
(72)【発明者】
【氏名】若林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩義
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−142251(JP,A)
【文献】 特開2015−025211(JP,A)
【文献】 特開平05−169580(JP,A)
【文献】 実開平06−057636(JP,U)
【文献】 特開平05−269908(JP,A)
【文献】 特開平02−018039(JP,A)
【文献】 特開昭63−162230(JP,A)
【文献】 特開2015−107646(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/007534(WO,A1)
【文献】 特開2014−000718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B60R 13/01− 13/08
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
D04H 1/00− 18/04
D06N 1/00− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を含む外装補強用シートであって、
前記バインダー成分の含有量は、前記外装補強用シートの全質量に対して25質量%以下であり、
前記バインダー成分は、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂は、前記外装補強用シートにスプレー塗布されている、外装補強用シート。
【請求項2】
前記天然パルプ繊維の含有量は、前記無機強化繊維と前記天然パルプ繊維の合計質量に対して、20質量%以上80質量%以下である請求項1に記載の外装補強用シート。
【請求項3】
前記天然パルプ繊維の含有量は、前記外装補強用シートの全質量に対して15質量%以上である請求項1又は2に記載の外装補強用シート。
【請求項4】
坪量が10g/m2以上120g/m2以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の外装補強用シート。
【請求項5】
密度が0.03g/cm3以上0.9g/cm3以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の外装補強用シート。
【請求項6】
前記無機強化繊維の繊維径は、3μm以上15μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の外装補強用シート。
【請求項7】
前記無機強化繊維の繊維長は、3mm以上35mm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の外装補強用シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の外装補強用シートを、熱可塑性樹脂含有部材の少なくとも一方の面に配して成形されてなる成形体。
【請求項9】
自動車用内装部材として用いられる請求項8に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装補強用シート及び成形体に関する。具体的には、本発明は、無機強化繊維と天然パルプ繊維とバインダー成分を含む外装補強用シート、及び、該外装補強用シートを、熱可塑性樹脂含有部材の少なくとも一方の面に配して成形されてなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維や炭素繊維、パルプ繊維からなる繊維シートが知られている。このような繊維シートは、各繊維を水中や空気中で分散させてシート状に抄造することで得られる。繊維シートは、様々な用途に用いられているが、近年は内装材といった建材の表面に貼合する用途にも用いられている。内装材には機械的強度が要求されるため、繊維シートを貼合することで内装材全体の機械的強度を高めることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、発泡シート等の芯材の表面に積層される繊維シート、及び芯材と繊維シートを成形してなる積層体(成形体)が開示されている。特許文献1では、繊維シートとして、ガラス繊維シート又は炭素繊維シートが用いられている。特許文献2では、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維からなるシートが繊維シートとして用いられている。また、特許文献3では、発泡層の両面に非発泡層が積層された積層体が開示されており、非発泡層として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂製のフィルム、繊維シート、熱可塑性樹脂等と強化繊維を複合したシートが開示されている。
【0004】
特許文献1〜3においては、繊維シートを用いて成形体や積層体を形成することで発泡性の芯材を補強することができ、機械的強度を高めることができるとされている。さらに、軽量性や吸音性を高めることも検討されており、車両用内装材等への応用も期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−121638号公報
【特許文献2】特開2002−205350号公報
【特許文献3】特開2006−321159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の繊維シートを表層に配して成形体を成形した場合、その強度をある程度高めることはできる。しかし、成形後の繊維シートと芯材の接着性が良好ではない場合があり、このような場合は、成形体の強度を十分に高めることができないという問題があった。
【0007】
また、繊維シートを表層に配して成形された成形体は、車両用内装材としても用いられている。車両用内装材の表面は、車両に乗用する人の肌に直接接触することがあるため、成形体の表面には、良好な表面質感等も求められている。しかし、従来の繊維シートを用いた場合、車両用内装材の表面質感が劣る場合があり、改善が求められていた。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、芯材に積層し成形した際に、その強度を高め得る外装補強用シートであって、成形後の芯材との接着性が良好な外装補強用シートを提供することを目的として検討を進めた。さらに、本発明者らは、成形体の表面質感を良化させ得る外装補強用シートを提供することも目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を含む外装補強用シートにおいて、バインダー成分の含有量を所定範囲内とすることにより、強度に優れた成形体であって、表面質感が良化した成形体が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を含む外装補強用シートであって、バインダー成分の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して25質量%以下である外装補強用シート。
[2] 天然パルプ繊維の含有量は、無機強化繊維と天然パルプ繊維の合計質量に対して、20質量%以上80質量%以下である[1]に記載の外装補強用シート。
[3] 天然パルプ繊維の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して15質量%以上である[1]又は[2]に記載の外装補強用シート。
[4] 坪量が10g/m2以上120g/m2以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の外装補強用シート。
[5] 密度が0.03g/cm3以上0.9g/cm3以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の外装補強用シート。
[6] 無機強化繊維の繊維径は、3μm以上15μm以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の外装補強用シート。
[7] 無機強化繊維の繊維長は、3mm以上35mm以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の外装補強用シート。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の外装補強用シートを、熱可塑性樹脂含有部材の少なくとも一方の面に配して成形されてなる成形体。
[9] 自動車用内装部材として用いられる[8]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形体の強度及び表面質感を高め得る外装補強用シートを得ることができる。本発明の外装補強用シートは、車両用内装材等の人の肌に直接触れる部材の表層を構成するシートとして好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の外装補強用シートを熱可塑性樹脂含有部材(芯材)に積層して成形した成形体の構成及び、外装補強用シートと芯材の接着性の評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(外装補強用シート)
本発明は、無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を含む外装補強用シートに関する。ここで、バインダー成分の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して25質量%以下である。
本発明の外装補強用シートは上記構成を有するため、熱可塑性樹脂を含む芯材(以下、熱可塑性樹脂含有部材ともいう)に積層し加熱加圧成形を行うことで得られる成形体の強度を高めることができる。また、本発明の外装補強用シートは、熱可塑性樹脂を含む芯材との接着性が高い点にも特徴がある。さらに、本発明の外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材から成形された成形体は、天然パルプ繊維を表面に含有するため、表面質感にも優れている。ここで、表面質感がよいことは、成形体の表面に触れた際の触感が柔軟であることをいい、具体的には、チクチク感(tingling)や表面のゴワゴワ感(stiff)が低減されていることをいう。
以上のように、本発明の外装補強用シートは、内装材等の芯材として用いられる熱可塑性樹脂含有部材の表面(外装)に貼合されるものであって、芯材を補強するために用いられるシートであるから、外装補強用シートと呼ぶことができる。
【0015】
本発明の外装補強用シートは、熱可塑性樹脂含有部材に積層された後に成形され、成形後は熱可塑性樹脂含有部材を補強する機能を持つ。なお、本発明では、外装補強用シートは熱可塑性樹脂含有部材の表層に配された後に成形される用途に用いられることが好ましいが、それ自体が単層でシート状物を形成してもよいし、熱可塑性樹脂含有部材以外の芯材等に貼合される用途に用いられてもよい。
【0016】
バインダー成分の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して25質量%以下であればよい。バインダー成分の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらい好ましい。なお、バインダー成分の含有量の下限値は0.1質量%であることが好ましい。
バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、成形後の熱可塑性樹脂含有部材との接着性を高めることができる。これにより、成形体の曲げ強度等に代表される機械的強度を高めることができる。
また、バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、外装補強用シートを表面に有する成形体の表面質感を向上させることができる。ここで、表面質感がよいことは、成形体の表面に触れた際の触感が柔軟であることをいい、具体的には、チクチク感(tingling)や表面のゴワゴワ感(stiff)が低減されていることをいう。
【0017】
本発明の外装補強用シートにおいては、無機強化繊維の含有量は、無機強化繊維と天然パルプ繊維の合計質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。また、天然パルプ繊維の含有量は、無機強化繊維と天然パルプ繊維の合計質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。このように無機強化繊維と天然パルプ繊維の質量比を上記範囲内とすることにより、成形体の強度をより効果的に高めることができる。また、無機強化繊維と天然パルプ繊維の質量比を上記範囲内とすることにより、成形体の表面質感をより効果的に高めることができる。
【0018】
また、無機強化繊維と天然パルプ繊維の合計含有量は、外装補強用シートの全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。無機強化繊維と天然パルプ繊維の合計含有量を上記範囲内とすることにより、成形体の強度をより効果的に高めることができ、さらに成形体の表面質感を高めることができる。
【0019】
本発明の外装補強用シートの坪量は、10g/m2以上120g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上110g/m2以下であることがより好ましく、15g/m2以上100g/m2以下であることがさらに好ましく、15g/m2以上60g/m2以下であることが特に好ましい。外装補強用シートの坪量を上記範囲内とすることにより、成形体とした際に、熱可塑性樹脂含有部材等との接着性をより効果的に高めることができる。これにより、より優れた強度を有する成形体を得ることができる。さらに、外装補強用シートの坪量を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂含有部材を効果的に隠蔽することができ、意匠性を発揮することもできる。
【0020】
本発明の外装補強用シートの密度は、0.03g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましく、0.05g/cm3以上0.8g/cm3以下であることがより好ましく、0.1g/cm3以上0.6g/cm3以下であることがさらに好ましい。外装補強用シートの密度を上記範囲内とすることにより、外装補強用シート自体の強度を高めることができ、かつ成形体とした際には成形体の強度を高めることもできる。
【0021】
本発明の外装補強用シートは、無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を同一層に含む単層シートであることが好ましい。また、外装補強用シート中においては、無機強化繊維と、天然パルプ繊維は均一に混合されていることが好ましい。ここで、無機強化繊維と、天然パルプ繊維が均一に混合されているとは、無機強化繊維の全本数のうち50%以上の無機強化繊維が天然パルプ繊維と接している状態をいう。
【0022】
(無機強化繊維)
無機強化繊維としては、例えば、炭素繊維やガラス繊維等を挙げることができる。中でも、無機強化繊維としては、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0023】
無機強化繊維の繊維径は、3μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上13μm以下であることがよい好ましい。ここで、無機強化繊維の繊維径は、数平均繊維径であり、本明細書において、数平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を測定した繊維径の平均値である。無機強化繊維の繊維径を上記範囲内とすることにより、外装補強用シートを表面に有する成形体の表面質感を向上させることができる。
【0024】
無機強化繊維の繊維長は、3mm以上100mm以下であることが好ましく、3mm以上50mm以下であることがより好ましく、3mm以上35mm以下であることがさらに好ましく、3mm以上20mm以下であることが特に好ましい。ここで、無機強化繊維の繊維長は、質量平均繊維長であり、本明細書において、質量平均繊維長は、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。無機強化繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、無機強化繊維の解繊を促進することができ、単繊維化した無機強化繊維の割合を高めることができる。これにより、外装補強用シートを表面に有する成形体の表面質感を向上させることができる。さらに、外装補強用シート自体の強度や、成形体の強度を高めることができる。
【0025】
無機強化繊維は、上述した範囲内の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。ガラス繊維は、このような形態であることにより、外装補強用シート中に均一に分散することができる。
【0026】
無機強化繊維の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上75質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが特に好ましい。無機強化繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、より効果的に、熱可塑性樹脂含有部材の補強を行うことができる。さらに外装補強用シート自体の強度を高めることもでき、また表面質感を向上させることができる。
【0027】
(ガラス繊維)
無機強化繊維はガラス繊維であることが好ましい。本発明で用いるガラス繊維としては、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)及び耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものを挙げることができる。
【0028】
ガラス繊維は、丸ガラスであってもよく、扁平ガラスであってもよい。ここで、丸ガラスとは、繊維の断面形状が略円形のものである。なお、繊維の断面形状とは、ガラス繊維の長さ方向に対し、垂直方向のカット面の形状のことをいう。扁平ガラスとは、繊維の断面形状が扁平(異形)であるものであり、略円形ではないものをいう。具体的には、扁平形状とは、繊維の断面形状が、中心点を通過する最大長で定義される長径と、中心点を通過する最小長で定義される短径を有する形状をいう。扁平形状としては、例えば、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型等を例示することができる。
【0029】
(炭素繊維)
無機強化繊維は炭素繊維であってもよい。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等の炭素繊維を用いることができる。これらの炭素繊維は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら炭素繊維の中でも、工業規模における生産性及び機械特性の観点から、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0030】
(天然パルプ繊維)
天然パルプ繊維を構成するパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等も挙げられる。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス、竹、とうもろこし等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。天然パルプ繊維として上述した天然パルプの1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記天然パルプの中でも、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプを好ましく用いることができ、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)をより好ましく用いることができる。
【0031】
天然パルプ繊維のカナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)は、300ml以上800ml以下であることが好ましく、300ml以上700ml以下であることがより好ましく、350ml以上650ml以下であることがさらに好ましい。ここでカナディアン・スタンダード・フリーネスとは、JIS P 8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS P 8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。天然パルプ繊維のカナディアン・スタンダード・フリーネスを上記範囲内とすることにより、天然パルプ繊維の絡み合いが十分となり、天然パルプ繊維が外装補強用シートから脱落することを効果的に防止することができる。また、熱可塑性樹脂含有部材に含まれる熱可塑性樹脂が外装補強用シートに嵌入しやすくなるため、成形体において熱可塑性樹脂含有部材と外装補強用シートの接着性をより効果的に高めることができる。
【0032】
天然パルプ繊維の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。天然パルプ繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、外装補強用シート自体の強度を高め、熱可塑性樹脂含有部材の補強をしつつも、外装補強用シートを表面に有する成形体の表面質感をより効果的に向上させることができる。さらに外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材の接着性も良好となる。
【0033】
(バインダー成分)
本発明の外装補強用シートは、バインダー成分を含む。バインダー成分は、無機強化繊維や天然パルプ繊維の接点に存在する結着成分である。バインダー成分の形状は特に限定されないが、例えば、粒子形状や繊維形状とすることができる。さらにバインダー成分は、水溶液やエマルジョンに分散させた状態で用いてもよい。
【0034】
バインダー成分の含有量は、外装補強用シートの全質量に対して25質量%以下である。バインダー成分の含有量は、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。なお、バインダー成分の含有量の下限値は0.1質量%であることが好ましい。バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂含有部材との接着性を高め、熱可塑性樹脂含有部材と外装補強用シートを含む成形体の曲げ強度を高めることができる。また、バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、外装補強用シートを表面に有する成形体の表面質感を向上させることができる。
【0035】
バインダー成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドーアクリル酸エステルーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。中でも、バインダー成分としては、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール(PVA)樹脂から選択される少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0036】
バインダー成分として用いられるアクリル樹脂は、アクリル繊維であってもよく、アクリル樹脂を含むエマルジョンや、アクリル樹脂を水中に分散させた溶液であってもよい。中でも、本発明では、アクリル樹脂エマルジョンを用いることが好ましい。このような水溶液やエマルジョンをスプレーや含浸等の方法で付与することで、バインダー成分を含む外装補強用シートを得ることもできる。
【0037】
ポリビニルアルコール(PVA)樹脂は、繊維状のポリビニルアルコール(PVA)樹脂、粒状のポリビニルアルコール(PVA)樹脂いずれも好ましく使用することができる。また、ポリビニルアルコール(PVA)の溶液をスプレーもしくは含浸法により付与することもできる。
【0038】
バインダー成分の形状が繊維形状の場合、バインダー繊維の繊維長は、3mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましく、20mm以上であることが特に好ましい。なお、バインダー繊維の繊維長は、50mm以上とすることもできる。また、バインダー繊維の繊維長は、150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましく、75mm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書においてバインダー繊維の繊維長は、質量加重平均繊維長であり、100本の繊維について測定した繊維長の平均値である。
【0039】
また、バインダー成分の形状が繊維形状の場合、バインダー繊維の繊維径は3μm以上25μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、バインダー繊維の繊維径は数平均繊維径であり、100本の繊維の繊維径を測定した繊維径の平均値である。
【0040】
バインダー成分の形状が粒子形状の場合、バインダー粒子の平均1次粒子径は、3μm以上7000μm以下であることが好ましく、30μm以上3000μm以下であることがより好ましく、100μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。なお、バインダー粒子が球形ではない場合は、バインダー粒子の平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡写真により粒子の投影面積を求め、同じ面積を有する円の直径を平均1次粒子径とする。バインダー粒子の平均1次粒子径を上記範囲内とすることにより、網の抄き上げが可能となり湿式抄紙法で外装補強用シートを得ることができる。
【0041】
(その他の成分)
外装補強用シートは、上述したバインダー成分以外の熱可塑性繊維を含んでもよい。但し、外装補強用シートが上述したバインダー成分以外の熱可塑性繊維を含む場合は、バインダー成分と熱可塑性樹脂の合計含有量が25質量%以下であることが好ましい。上述したバインダー成分以外の熱可塑性繊維としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリプロピレンが挙げられる。
【0042】
(外装補強用シートの製造方法)
本発明の外装補強用シートの製造工程は、無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を混合したスラリーを、湿式抄紙する工程を含むことが好ましい。この湿式抄紙する工程で使用される抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
【0043】
抄紙工程では、無機強化繊維と、天然パルプ繊維と、バインダー成分を混合したスラリーをワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、脱水、乾燥することで外装補強用シートを得る。
スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。脱水工程では、紙の製造で通常使用されている脱水方法が採用でき、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
【0044】
本発明の外装補強用シートの製造工程においては、抄紙工程後に得られるシートにさらにバインダー成分をスプレー塗布または含浸する工程を設けることも好ましい。例えば、繊維状のバインダー成分は、無機強化繊維と天然パルプ繊維の混合スラリー中に添加して抄紙した後に、繊維状以外のバインダー成分については、水溶液やエマルジョンとして、シートを得た後に添加することができる。なお、バインダー成分のスプレー塗布工程の後には、さらに乾燥工程を設けることが好ましい。このように水溶液やエマルジョンのバインダー成分を後添することで、外装補強用シートの表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた外装補強用シートを得ることができる。さらに、強度に優れた成形体を成形することができる。
【0045】
(成形体)
本発明は、上述した外装補強用シートを、熱可塑性樹脂含有部材の少なくとも一方の面に配して成形されてなる成形体に関するものでもある。本発明の成形体においては、芯材として熱可塑性樹脂含有部材を用いており、かつ上述した構成を有する外装補強用シートを有しているため、成形後の外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材の接着性を高めることができる。このため、成形体は優れた強度を発揮し得る。
また、外装補強用シートは、成形体の表層を覆うように配されるものであることが好ましい。このような成形体は、表面質感にも優れている。なお、外装補強用シートは、熱可塑性樹脂含有部材の少なくとも一方の面に配されて成形されればよいが、熱可塑性樹脂含有部材の両面に配されて成形されてもよい。
【0046】
熱可塑性樹脂含有部材に含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
【0047】
熱可塑性樹脂含有部材は、上記樹脂からなる部材であってもよいが、上記樹脂の他に、強化繊維等を含む複合材料であってもよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維から選択される少なくとも一種の繊維と、熱可塑性樹脂を含む複合材料であってもよい。この場合、熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂含有部材の全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0048】
熱可塑性樹脂含有部材は、発泡性部材であってもよい。この場合、熱可塑性樹脂含有部材には予め発泡剤を添加しておくことが好ましい。例えば、熱分解型発泡剤等を添加しておくことで、成形体を成形する際に熱可塑性樹脂含有部材を発泡体にすることもできる。また、あらかじめ芯材のみを加熱して発泡させておき、その後表面材と貼合することもできる。なお、熱可塑性樹脂含有部材が発泡性部材である場合は、射出発泡成形により得られた部材も好ましく用いることができる。熱可塑性樹脂含有部材を発泡性部材とすることにより、成形体をより軽量化することができる。
【0049】
本発明の成形体は、優れた強度及び表面質感を有するため、車両用内装材や室内内装材として好ましく用いられる。中でも、自動車用内装部材として好ましく用いられる。本発明の成形体は、芯材を熱可塑性樹脂含有部材とすることで、軽量化が可能となり、このような成形体を自動車用内装部材として用いることにより、燃費の低減にも寄与することができる。
【0050】
本発明の成形体の曲げ弾性勾配は、25N/cm/kg/m2以上であることが好ましく、30N/cm/kg/m2以上であることがより好ましく、35N/cm/kg/m2以上であることがさらに好ましく、40N/cm/kg/m2以上であることが特に好ましい。成形体の曲げ弾性勾配を上記範囲内とすることにより、成形体の剛性を高めることができ、使用時に意図せず折れることなどを抑制することができる。
なお、成形体の曲げ弾性勾配は、幅50mm、長さ150mmの成形体を用い、支点間距離を100mmとして、JIS K 7203に準ずる曲げ試験を行い、その曲げ弾性率を算出する式において算出する。
【0051】
(成形体の製造方法)
成形体を成形する際には、外装補強用シートを熱可塑性樹脂含有部材の表面に積層して、目的とする形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。成形体の製造工程においては、外装補強用シートをバインダー成分が流動する温度であって無機強化繊維及び天然パルプ繊維が熱劣化しない温度帯で加熱加圧成形をすることが好ましい。具体的には、加熱温度は、150℃以上600℃以下であることが好ましく、150℃以上300℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。このような温度域とすることで、天然パルプの熱劣化や熱による変色を抑制することができる。また、圧力としては、0.5MPa以上20MPa以下が好ましい。
【0052】
加熱加圧成形の方法としては、各種存在する加熱加圧成形の方法の中でも、大型の航空機などの成形体部材を作製する際によく使用されるオートクレーブ法や、金型プレス法が好ましく挙げられる。設備や成形工程でのエネルギー使用量、使用する成形用の治具や副資材等の簡略化、成形圧力、温度の自由度の観点からは、金属製の型を用いて成形を行う金型プレス法を用いることが好ましく、これらは用途に応じて選択することができる。
【0053】
金型プレス法には、ヒートアンドクール法やスタンピング成形法を採用することができる。ヒートアンドクール法は、外装補強用シートを熱可塑性樹脂含有部材の表面に積層した積重体を型内に予め配置しておき、型締とともに加圧、加熱を行い、次いで型締をおこなったまま、金型の冷却により冷却をおこない成形体を得る方法である。スタンピング成形法は、予め該積重体を遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置で加熱し、熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形体型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。また、低密度の成形体を得る場合など、成形時の温度が比較的低い場合は、ホットプレス法を採用することもできる。
本発明では、熱可塑性樹脂含有部材の両表面に外装補強用シートを積層した積重体を加熱加圧成形することが好ましく、このような積重体を用いることにより、加熱加圧成形後の金型離型性を高めることができる。このため、金型に離型処理を施さなくても成形体を容易に離型することができ、かつ、金型の内部が樹脂により汚染されることも抑制される。
【0054】
成形用の金型は大きく2種類に分類され、1つは鋳造や射出成形などに使用される密閉金型であり、もう1つはプレス成形や鍛造などに使用される開放金型である。成形時の分解ガスや混入空気を型外に排除する観点からは開放金型が好ましいが、過度の樹脂の流出を抑制するためには、成形加工中においては開放部をできるだけ少なくし、樹脂の型外への流出を抑制するような形状を採用することも好ましい。
【0055】
さらに、金型には打ち抜き機構、タッピング機構から選択される少なくとも一種を有する金型を使用することができる。2段プレス機構を用いるなどの工夫で、熱プレス後に連続して、成形体を打ち抜き加工することも可能である。また、成形体は、その使用目的などによってはリブやボス等の強度補強・加工用の突起やネジ穴の形成、意匠性の付与を目的とした模様の付与を行うことができる。
【0056】
また、成形体の製造工程においては、成形体を成形すると同時、或いは成形後にアウトサート成形やインサート成形によって、より複雑な形状部材を接着することも可能である。
【0057】
(積重体)
本発明は、上述したような外装補強用シートを熱可塑性樹脂含有部材の表面に積層した積重体に関するものであってもよい。なお、外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材は、加熱加圧成形により、一体成形されることが好ましいが、外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材を接着剤等で接着した積重体を加熱加圧成形してもよい。すなわち、本発明において、積重体には、外装補強用シートを熱可塑性樹脂含有部材の表面に積層した態様と、外装補強用シートを、接着剤層等を介して熱可塑性樹脂含有部材の表面に積層した態様が含まれる。
本発明では、このような積重体を加熱加圧成形するため、金型離型性を高めることができ、成形体の生産効率を高めることもできる。
【0058】
また、積重体は、外装補強用シートと熱可塑性樹脂含有部材をそれぞれ加熱加圧成形した後に、接着剤等で接着したものであってもよい。接着後の積重体はさらに加熱加圧成形により、一体成形されてもよい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0060】
(実施例1)
天然パルプ(セニブラ社製、NBKPパルプシート、水分20%)を、3.0質量%濃度となるように水中に投入し、ディスインテグレーターを用いて10分間離解し、表1に示すカナディアン・スタンダード・フリーネスのパルプスラリーを得た。得られたスラリーを0.2質量%濃度となるよう水で希釈し、撹拌して均一な濃度のパルプスラリーを得た。
次に、別の容器に水を投入し、表1に示す繊維径及び繊維長のガラス繊維(オーウェンスコーニング社製、CS06DAGP195)を投入し、分散剤としてラッコールALをガラス繊維の質量に対し0.1質量%となるように添加した。再び水を追加して、ガラス繊維濃度を0.2質量%濃度とした。得られたガラス繊維スラリーをアジテーター(スリーワンモーター)を用いて15分間撹拌し、均一に分散したガラス繊維スラリーを得た。
そして、天然パルプ繊維とガラス繊維の配合比が表1の比率となるよう、各スラリーを混合し、ガラス繊維含有パルプスラリーを得た。
【0061】
ガラス繊維含有パルプスラリーに、繊維状PVAバインダー(VPB105−1)を、表1に示す配合比となるように添加し、撹拌して均一に混合した。得られたスラリーを内寸が25cm×25cmの熊谷理機工業社製の手抄き機でシート化し、温度110℃のフェロタイプ乾燥機を用いて乾燥した。乾燥後のシートの坪量は表1に示す通りであった。得られたシートに、アクリル樹脂エマルジョン(大日本インキ社製、GM−1000)の1.0質量%濃度の液を、外装補強用シートの全質量に対する比率が表1に示す通りとなるようにスプレー添加した。その後、110℃の熱風乾燥機で乾燥させて外装補強用シートを得た。
【0062】
(実施例2〜4)
坪量を表1に示す通りとした以外は実施例1と同様にして外装補強用シートを得た。
【0063】
(実施例5〜7)
ガラス繊維、天然パルプ繊維及びバインダー成分の添加量を表1に示す通り変更した以外は、実施例2と同様にして外装補強用シートを得た。
【0064】
(実施例8)
ガラス繊維の繊維長及び繊維径を表1に示す通りとした以外は、実施例2と同様にして外装補強用シートを得た。
【0065】
(実施例9)
天然パルプ繊維を、ディスインテグレーターで離解した後、更にテスト用シングルディスクリファイナー(熊谷理機社製)を用いて処理し、カナディアン・スタンダード・フリーネスを表1に示す通りとした以外は、実施例2と同様にして外装補強用シートを得た。
【0066】
(比較例1〜3)
ガラス繊維、天然パルプ繊維及びバインダー成分の添加量を表1に示す通り変更した以外は、実施例2と同様にして外装補強用シートを得た。
【0067】
<熱可塑性樹脂含有部材(芯材)との貼合>
熱可塑性樹脂含有部材(芯材)として、天然パルプ、PP樹脂繊維及びPP・PE芯鞘バインダー樹脂繊維を混抄した坪量800g/m2のシート(配合比:天然パルプ/PP樹脂/PP・PE芯鞘バインダー樹脂繊維=40/50/10)を準備した。この芯材と、外装補強用シートを各々幅60mm、長さ160mmの長方形に切断し、芯材の両表面に外装補強用シートを配し、プレス圧5MPa、プレス温度240℃で40秒間プレスした。その後、70℃に冷却して取り出し、外装補強用シートを両面に有する成形体を作成した。得られた成形体の4辺を5mmずつトリミングし、幅50mm、長さ150mmの成形体を得た。
【0068】
(評価)
<接着性>
図1に示すように成形体40の外装補強用シート10の端部に粘着テープ50を貼り付け、成形体40と略90°方向になるように粘着テープ50を上方に持ち上げて熱可塑性樹脂含有部材(芯材)20から外装補強用シート10を矢印の方向に引き剥がした。尚、粘着テープ50の接着範囲は端部より10mmとした。引き剥がした後の芯材20の状態を観察し、下記の通りA〜Dの4段階で評価した。なお、Aが最も接着性が良好であり、Dが最も接着性が悪いものであり、C評価以上を合格レベルとした。
A:芯材の全面に天然パルプ繊維が付着している。
B:天然パルプ繊維が付着していない部分が芯材の面積の5%未満である。
C:天然パルプ繊維が付着していない部分が芯材の5%以上30%未満である。
D:天然パルプ繊維が付着していない部分が芯材の面積の30%以上である。
【0069】
<手触り感>
日常生活や日常業務においてガラス繊維不織布等の無機繊維含有不織布に触れない成人10名を被験者とし、以下の通り手触り感を評価した。
<<評価方法>>
(1)天然パルプ繊維100%の濾紙(アドバンテック社製、FILTER PAPER 5C)を人差し指の腹で軽く3回なでる。
(2)成形体の表面を同様に3回なでる。
(3)チクチク感について、以下の3段階で評価を行う
甲:成形体は、濾紙に比べてチクチク感を全く感じない。
乙:成形体は、濾紙に比べわずかにチクチク感を感じる。
丙:成形体は、濾紙に比べ明らかにチクチク感を感じる。
(4)得られた結果を集計し、以下の通りA〜Dの4段階で評価した。なお、B評価以上を合格レベルとした。
A:甲と判定した者が8名以上、乙と判定した者が2名以下、丙と判定した者が0名
B:甲と判定した者が3名以上7名以下、乙と判定した者が7名以下、丙と判定した者が0名
C:丙と判定した者が1名以上2名以下
D:丙と判定した者が3名以上
【0070】
<単位目付量(kg/m2あたり)の曲げ弾性勾配)>
上述した幅50mm、長さ150mmの成形体を用い、支点間距離を100mmとして、JIS K 7203に準ずる曲げ試験を行い、その曲げ弾性率を算出する式において、曲げ弾性勾配で表される値を算出し、単位目付け量(kg/m2)当りの曲げ弾性勾配(N/cm/kg/m2)を算出した。
【0071】
【表1】
【0072】
上記の評価結果を表1に示した。実施例で得られた外装補強用シートを貼合した成形体においては接着性、曲げ弾性勾配、手触り感ともに良好であった。一方、ガラス繊維を含有しない比較例1においては曲げ弾性勾配が明らかに劣る結果となった。また、天然パルプ繊維を含有しない比較例2は手触り感が特に悪く、接着性にも劣っていた。バインダー量が多い比較例3においては、熱可塑性樹脂含有部材のPP樹脂が嵌入しにくいため接着性に劣る結果であった。
【符号の説明】
【0073】
10 外装補強用シート
20 熱可塑性樹脂含有部材(芯材)
40 成形体
50 粘着テープ
図1