【実施例】
【0070】
(実施例1)
KOD−PCNA変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA(配列番号23)(pKODPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
【0071】
(実施例2)
Pfu−PCNA変異体の作製
パイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたパイロコッカス・フリオサス株由来のPCNA(配列番号24)(pPfuPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
【0072】
実施例1および実施例2で作製したプラスミドを表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
(実施例3−1)
KOD DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例におけるPCNAの評価に用いるために、KOD DNAポリメラーゼの種々の変異体を以下の方法で作製した。
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号11)(pKOD)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
(実施例3−2)
Pfu DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例におけるPCNAの評価に用いるために、Pfu DNAポリメラーゼの種々の変異体を以下の方法で作製した。
パイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたパイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号12)(pPfu)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
実施例3−1、および3−2で作製したプラスミドは表2および表3に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
(実施例4)
改変型耐熱性PCNAの作製
実施例1および2で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、改変型耐熱性PCNAを得た。
【0078】
(実施例5)
改変型耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例3−1および3−2で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼを得た。
【0079】
上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は、前記の(13)に記載の[DNAポリメラーゼ活性測定法]に従い行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
【0080】
(実施例6)
PCNAの評価
PCNAが単独でDNAにロードできるかを確認するため、実施例1で作製したKOD−PCNA変異体(M73L、M73L/E143R、M73L/R109A/E143A、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A、M73L/E143F、M73L/E143A)を用いてdUTP存在下PCRでの増幅量の違いを、上記(6)で示した増幅増強活性の測定方法に従い、Human β−グロビンの1.3kbを増幅することで比較した。この際、DNAポリメラーゼには、実施例3−1で作製したKOD V93K変異体を用いた。なお、上述のとおり、M73L変異を野生型に相当するものとみなす。
PCRにはKOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、およびを0.2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号13及び14)、10ngのヒトゲノムDNA(Roche社製)、抗体と混合した1Uの酵素を含む50μlの反応液を94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→60℃、30秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0081】
図1は、種々のPCNA変異体を250ng添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いたPCNA変異体はM73L、M73L/E143R、M73L/R109A/E143A、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A、M73L/E143F、M73L/E143Aの計7種である。
今回用いたKOD V93K変異体はdUTPの阻害を受けて増幅量が少ない。PCNA添加なしやM73L変異体ではほとんどバンドが確認されなかったが、他のKOD−PCNA変異体の添加でしっかりとしたバンドが確認された。PCNAは多量体を形成し核酸の合成反応を促進するが、通常、RFCの働きなしではDNAにロードできず反応が進まない。M73L/E143R、M73L/R109A/E143A、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A、M73L/E143F、M73L/E143Aの改変は、多量体形成に関わる部位への改変であり、適度に多量体形成が弱まったため、PCNAがDNAにロードでき、PCR増幅量を向上させたことが考えられる。
【0082】
一方、実施例2で作製したPfu−PCNA変異体(M73L、M73L/D143R、M73L/R109A/D143A、M73L/D147A、M73L/R82A/D143A、M73L/D143A)を用いて上記と同様の実験を行った。その結果、Pfu−PCNA M73L変異体では、ほとんどバンドが確認できなかったが、他のPfu−PCNA変異体(M73L/D143R、M73L/R109A/D143A、M73L/D147A、M73L/R82A/D143A、M73L/D143A)の添加でしっかりとしたバンドが確認された。
【0083】
(実施例7)
PCNA添加による血液からの増幅
反応液に添加する血液量を変えて、様々なPCNA変異体の添加でクルード(血液)耐性を評価した。比較には、PCNAの添加なしとKOD−PCNA変異体(M73L/E143R、M73L、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A)を用い、HBgの3.6kbの増幅量の違いを比較した。DNAポリメラーゼには、KOD −Plus−を用いた。
【0084】
PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、dNTPs、MgSO
4、酵素液(KOD −Plus−)を用い、1×PCR Buffer、および1.0mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号17および18)、1UのKOD −Plus−を含む50μlの反応液中に、血液を反応液に対して8%になるように加え、PCNAなしと様々な濃度のPCNA変異体(0.5μg、1μg、2μg、4μg)を添加したものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→68℃、4分を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0085】
図2は、試料として血液を用い、反応液に占める血液の割合を8%になるよう反応液を調製して、種々のPCNA変異体を0.5μg、1μg、2μg、4μg添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いたPCNA変異体はM73L/E143R、M73L、M73L/D147A、M73L/R82A/E143Aの計4種である。各写真の0.5、1、2、4は添加されたPCNAの量(μg)を示す。
結果、PCNA添加なし、M73Lの変異体では4μg添加しても血液から直接増幅が確認されないところ、M73L/E143R、M73L/D147A、M73L/R82A/E143Aの変異体は0.5μg添加すれば血液が8%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図2)。多量体形成に関わる部位に変異を入れ単独でDNAにロードするPCNA変異体は、PCR反応系に添加すればクルード耐性が上がることが示される。
【0086】
(実施例8)
市販(古細菌由来)酵素とPCNA添加による血液からの増幅
KOD DNAポリメラーゼ以外のファミリーBに属する酵素にもPCNAの添加でクルード(血液)耐性が向上するかを評価した。
比較には、KOD −Plus−(Toyobo社製)、PrimeSTAR HS(タカラバイオ製)、MightyAmp(タカラバイオ製)、PrimeSTAR GXL(タカラバイオ製)のポリメラーゼを用い、血液、反応液に対して8%存在下でHBgの3.6kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0087】
PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、dNTPs、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.0mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号17および18)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、血液を反応液に対して16%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→68℃、4分を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0088】
図3は、試料として血液を用い、反応液に占める血液の割合を16%になるよう反応液を調製して、種々の酵素にKOD−PCNA M73L/D147Aを添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いた酵素はKOD −Plus−、PrimeSTAR HS、MightyAmp、PrimeSTAR GXLの計4種である。各写真の1はKOD−Plus−、2はPrimeSTAR HS、3はMightyAmp、4はPrimeSTAR GXLの結果を示し、−はPCNAなし、+はPCNAを添加したこと示す。
結果、KOD−Plus−、PrimeSTAR GXLではPCNA添加なしで血液16%から直接増幅が確認されないところ、PCNA M73L/D147Aを添加することでしっかりとしたバンドが確認された。PrimeSTAR HS、MightyAmpではPCNA添加なしで血液16%から直接増幅がみられたが、PCNA M73L/D147Aを添加することで増幅量が大幅に向上することが確認された(
図3)。PCNA変異体を添加すればクルード(血液)耐性が上がり、増幅できなかったものが増幅できた。また、増幅量が血液の阻害によって抑えられていたものが、PCNA変異体の添加によって改善され増幅量が増えたことが示された。PrimeSTAR HS、MightyAmp、PrimeSTAR GXLはファミリーBに属する古細菌由来のポリメラーゼで調製されている。PCNA変異体はKODポリメラーゼだけでなく、様々なファミリーBに属するポリメラーゼに効果があることが示された。
【0089】
(実施例9)
PCNA添加による植物ライセートからの増幅
KOD DNAポリメラーゼの変異体にPCNAの添加でクルード(植物)耐性が向上するかを評価した。
比較には、KOD H147E変異体、KOD Y7A/V93K変異体、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼを用い、rbcL 1.3kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0090】
鋳型にはイネの葉3mm角をBufferA(100mM Tris−HCl(pH9.5)、1M KCl、10mM EDTA)100μlに添加し、95℃、10分の熱処理を行ったものをライセートとして用いた。
KOD変異体のPCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、dNTPs、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号15および16)、KOD抗体と混合した1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%、4%、8%、16%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃ 30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
Taq DNAポリメラーゼはToyobo社製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo社製)と混合したものを用いた。反応は1×BlendTaqに添付のBuffer、2mM dNTPs、10pmolのプライマー(上記と同様)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%、4%、8%、16%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、94℃、30秒→65℃、30秒→68℃、1、5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0091】
図4は、試料として植物ライセートを用い、反応液に占めるライセートの割合を2、4、8、16%になるよう反応液を調製して、種々の酵素にKOD−PCNA M73L/D147Aを添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いた酵素はKOD H147E変異体、KOD Y7A/V93K変異体、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼの計4種である。
各写真の1、2、8、16は添加された植物ライセートの割合(%)を示し、−はPCNAなし、+はPCNAを添加したこと示す。
結果、PCNA添加なしのKOD H147E、KOD Y7A/P36H/N210Dでは植物ライセートを8%以上添加すると阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは植物ライセートが8%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図4)。同様にKOD Y7A/V93Kでも、PCNAなしでは4%の植物ライセートで阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは植物ライセートが4%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された。PCNA変異体はKOD DNAポリメラーゼの変異体にも効果があることが示された。
一方、ファミリーBに属するポリメラーゼではないTaqポリメラーゼではPCNAの添加でクルード(植物)耐性の変化は見られなかった。TaqポリメラーゼにはPCNA変異体を添加してもクルード耐性は変わらないことが示される。
【0092】
(実施例10)
市販のファミリーBに属する酵素とPCNA添加による植物ライセートからの増幅
市販されている様々なファミリーBに属する酵素にもPCNAの添加でクルード(植物)耐性が向上するかを評価した。
比較には、KOD−Plus−、KOD Dash、PrimeSTAR GXLを用い、rbcL 1.3kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0093】
鋳型にはイネの葉3mm角をBufferA(100mM Tris−HCl(pH9.5)、1M KCl、10mM EDTA)100μlに添加し、95℃、10分の熱処理を行ったものをライセートとして用いた。
PCRは、それぞれ添付のBufferを用い、推奨の反応液中に15pmolのプライマー(配列番号15および16) と、植物ライセートを反応液に対して1%、2%、4%、6%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0094】
図5は、試料として植物ライセートを用い、反応液に占めるライセートの割合を1、2、4、6%になるよう反応液を調製して、種々の酵素にKOD−PCNA M73L/D147Aを添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いた酵素はKOD −Plus−、KOD Dash、primeSTAR GXLの計3種である。
各写真の1、2、4、6は添加された植物ライセートの割合(%)を示し、−はPCNAなし、+はPCNAを添加したことを示す。
結果、PCNA添加なしのKOD−Plus−では植物ライセートを1%以上で、KOD Dash、PrimeSTAR GXLでは2%以上で阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは植物ライセートが4%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図5)。
【0095】
(実施例11)
PCNA添加による糞便からの増幅
PCNAの添加でクルード(糞便)耐性が向上するかを評価した。
酵素には、KOD−Plus−を用い、HBgの3.6kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0096】
阻害物質には10%糞便懸濁液を95℃で10分熱処理したものを用いた。
PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、dNTPs、MgSO
4、酵素(KOD −PLUS−)を用い、1×PCR Buffer、および1.0mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号17および18)、5ngヒトゲノム、1Uの酵素を含む50μlの反応液中に、糞便を反応液に対して0.2%、0.4%、0.8%、1.6%になるように加え、PCNAなしとKOD PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→68℃、4分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0097】
図6は、ヒトゲノムからHBg3.6kを増幅する反応液に阻害物質である糞便を0%、0.2%、0.4%、0.8%、1.6%の割合になるよう添加し、KOD−PCNA M73L/D147AありなしでPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いた酵素はKOD −Plus−である。
各写真の0、0.2、0.4、0.8、1.6は添加された糞便の割合(%)を示し、−はPCNAなし、+はPCNAを添加したことを示す。
結果、PCNA添加なしのKOD−Plus−では糞便を0.2%以上添加すると阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは糞便が0.4%含まれていてもバンドが確認された(
図6)。PCNA変異体は糞便の阻害にも耐性能を向上させる効果があることが示された。
【0098】
(実施例12)
dUTPを含む反応液を用いたPCNA添加による血液からの増幅
dUTPを含むPCR反応系でもPCNAの添加でクルード(血液)耐性が向上するかを評価した。
酵素には、KOD Y7A/V93K変異体を用い、HBgの482bpの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0099】
PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号19および20)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、KOD抗体と混合した1Uの酵素を含む50μlの反応液中に、血液を反応液に対して0.002%、0.02%、0.2%、2%、5%、10%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0100】
図7は、試料として血液を用い、dUTPを含む反応液に血液を0.002%、0.02%、0.2%、2%、5%、10% の割合になるよう添加して、KOD−PCNA M73L/D147Aの添加ありなしでPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。各写真の−はPCNAなし、+はPCNAを添加したこと示す。
結果、PCNA添加なしのKOD Y7A/V93Kでは血液を10%添加すると阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは血液が10%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図7)。PCNA変異体はdUTP存在下のPCRでも効果があることが示された。
【0101】
(実施例13)
dUTPを含む反応液を用いたPCNA添加による血液からの増幅
図7と同様、dUTPを含むPCR反応系でもPCNAの添加でクルード(血液)耐性が向上するかを評価した。
酵素には、KOD Y7A/V93K変異体、KOD Y7A/P36H/N210Dを用い、HBgの1.3kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはPfu−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0102】
PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号13および14)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、KOD抗体と混合した1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、血液を反応液に対して0.02%、0.2%、0.5%、2%、5%、10%になるように加え、PCNAなしとPfu−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0103】
図8は、試料として血液を用い、反応液に占める血液の割合を0.02%、0.2%、0.5%、2%、5%、10% になるよう反応液を調製して、KOD Y7A/V93K変異体および、KOD Y7A/P36H/N210DにPfu−PCNA M73L/D147Aを添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。各写真の−はPCNAなし、+はPCNAを添加したことを示す。
結果、PCNA添加なしでは阻害がかかり血液から増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは血液が10%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図8)。
図7と同様、PCNA変異体はdUTP存在下のPCRでも効果があることが示された。
【0104】
(実施例14)
PCNA添加による植物ライセートからの増幅
dUTPを含むPCR反応系でもPCNAの添加でクルード(植物)耐性が向上するかを評価した。
比較には、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼを用い、rbcL 1.3kbの増幅量の違いを比較した。PCNAにはKOD−PCNA M73L/D147Aを用いた。
【0105】
鋳型にはイネの葉3mm角をBufferA(100mM Tris−HCl(pH9.5)、1M KCl、10mM EDTA)100μlに添加し、95℃、10分の熱処理を行ったものをライセートとして用いた。
KOD Y7A/P36H/N210DのPCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号15および16)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP) 、KOD抗体と混合した1Uの酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%、4%、8%、16%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃ 30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
Taq DNAポリメラーゼはToyobo社製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo社製)と混合したものを用いた。反応は1×BlendTaqに添付のBuffer、10pmolのプライマー(上記と同様)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%、4%、8%、16%になるように加え、PCNAなしとKOD−PCNA M73L/D147Aを250ng加えたものを比較した。反応は94℃、2分の前反応の後、94℃、30秒→65℃、30秒→68℃、1、5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0106】
図9は、試料として植物ライセートを用い、反応液に占めるライセートの割合を2、4、8、16%になるよう反応液を調製して、種々の酵素にKOD−PCNA M73L/D147Aを添加しPCR反応を行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いた酵素はKOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼの計2種である。
各写真の1、2、8、16は添加された植物ライセートの割合(%)を示し、−はPCNAなし、+はPCNAを添加したことを示す。
結果、PCNA添加なしのKOD Y7A/P36H/N210Dでは植物ライセートを4%以上添加すると阻害がかかり増幅が確認されないところ、PCNAの変異体を添加したものは植物ライセートが8%含まれていてもしっかりしたバンドが確認された(
図9)。PCNA変異体はdUTPを含む反応液でも効果があることが示された。
一方、ファミリーBに属するポリメラーゼではないTaqポリメラーゼではPCNAの添加でクルード(植物)耐性の変化は見られなかった。TaqポリメラーゼにはPCNA変異体を添加してもクルード耐性は変わらないことが示される。
【0107】
(実施例15)
体組織(爪、髪、口腔粘膜)からのPCR
爪や髪、口腔粘膜を鋳型に、PCRができるかを検討した。爪は爪きりで切断した一片を、髪は1本を、50mM NaOH180μlに添加し、95℃10分の熱処理で破砕を行い、その後、1M Tris−HCl(pH8.0)20μlを加え中和した上清を鋳型として用いた。口腔粘膜は綿棒で採取した粘膜を200μlの水に懸濁したものを鋳型として用いた。
酵素には1Uあたり0.8μgのKOD抗体と混合したKOD(野生型)とKOD Y7A/V93K変異体とKOD Y7A/P36H/N210D変異体を用い、HBgの482bpのPCRを行い増幅の違いを比較した。
上記と同様、PCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO
4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO
4、15pmolのプライマー(配列番号19および20)、抗体と混合した1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、通常のdNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)を0.2mM添加したものと、dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)を0.2mMになるよう添加したものをそれぞれ用い、鋳型には上記サンプル1μlを用いた。また、各反応液にPCR増強因子であるKOD−PCNA M73L/E143R変異体を250ng添加したものも実施した。94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
【0108】
図10は、試料として爪、髪、口腔粘液を用い、種々のDNAポリメラーゼによるPCR反応を、KOD由来のPCNA変異体(M73L/E143R)の存在下で行い、得られた産物を電気泳動した結果を示す。用いたDNAポリメラーゼは、KOD(野生型)、KODの変異体2種(Y7A/V93K、Y7A/P36H/N210D)の計3種である。各写真の左側がdTTPを用いた場合、右側がdUTPを用いた場合である。1レーンは爪を試料とした場合、2レーンは髪、3レーンは口腔粘膜である。それそれの「+」レーンは、KOD由来のPCNA変異体(M73L/E143R)の存在下であり、「−」はPCNAなしであることを示す。
結果、野生型のKOD DNAポリメラーゼはdUTP存在下で増幅が確認されないところ、減少した塩基類似体検出活性を持つKOD Y7A/V93KやKOD Y7A/P36H/N210D変異体ではdUTP存在下でもバンドが確認された(
図10)。そこにPCNAを添加した結果、添加していないものと比べ増幅量が向上していることが確認された。
【0109】
KODの他の変異体(P36H、P36K、P36R、V93K、V93R、Y7A/P36H、Y7A/P36R、Y7A/V93R、P36H/H147E、P36K/H147E、P36R/H147E、V93K/H147E、V93R/H147E、Y7A/P36H/H147E、Y7A/P36R/H147E、Y7A/V93K/H147E、Y7A/V93R/H147E、P36H/N210D、P36K/N210D、P36R/N210D、V93K/N210D、V93R/N210D、Y7A/P36R/N210D、Y7A/V93K/N210D、Y7A/V93R/N210D、P36H/I142R、P36R/I142R、V93K/I142R、V93R/I142R、Y7A/P36H/I142R、Y7A/P36R/I142R、P36H/D141A/E143A、P36R/D141A/E143A、V93K/D141A/E143A、V93R/D141A/E143A、Y7A/P36H/D141A/E143A、Y7A/P36R/D141A/E143A)でも同様の反応条件で、体組織(爪、髪、口腔粘膜)からの増幅を確認し、dUTP存在下でもしっかりとしたバンドが確認できた。またこれらに、KOD−PCNA変異体(M73L/D147A、M73L/R109A/E143A、M73L/E143R)、Pfu−PCNA変異体(M73L/D143R)を添加すると、上記と同様、増幅量の向上が確認できた。
【0110】
実施例16
糞便からの増幅
dUTP、糞便存在下で遺伝子増幅ができるかを評価した。
酵素には、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼを用い、サルモネラのinvA遺伝子約700bpの増幅の違いをSYBR GREEN Iを用いたリアルタイムPCR、および融解曲線で比較した。KOD Y7A/P36H/N210D変異体にはPCR増強因子としてKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものも実施した。
【0111】
阻害物質には10%糞便懸濁液を95℃で10分熱処理したものを用いた。
KOD Y7A/P36H/N210DのPCRは、KOD Dash(Toyobo社製)添付のBufferを用い、1×PCR Buffer、50コピーのサルモネラゲノム、4pmolのプライマー(配列番号25および26)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP) 、1/30000 SYBR GREEN I、KOD抗体と混合した0.4Uの酵素を含む20μlの反応液中に、糞便を反応液に対して0、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5%になるように加え、95℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃ 10秒→68℃、30秒を50サイクル繰り返すスケジュールでLightCycler2.0(Roche社)を用いて行った。KOD−PCNA M73L/D147Aは上記反応系に100ng加え、PCNAなしのものと比較した。
Taq DNAポリメラーゼはToyobo社製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo社製)と混合したものを用いた。反応は1×Taqに添付のBuffer(Mg別添タイプ)、50コピーのサルモネラゲノム、4pmolのプライマー(上記と同様)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP、dCTP、dGTP)、4mM MgSO
4、1/30000 SYBR GREEN I、抗体と混合した1Uの酵素を含む20μlの反応液中に、糞便を反応液に対して0、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5%になるように加え、95℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃ 10秒→68℃、30秒を50サイクル繰り返すスケジュールでLightCycler2.0(Roche社)を用いて行った。
それぞれ、反応終了後、融解曲線解析にて、80℃後半に出現する目的ピークを確認した。
【0112】
実施例16のCq値を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
表4はdUTP、糞便存在下で行ったリアルタイムPCRのCq値(LightCycler2.0のデフォルト設定)を示す。N.D.は増幅が見られず、Cq値が求められなかったことを示す。
結果、Taqポリメラーゼでは0.5%の糞便を添加すると増幅が見られなくなるところ、KOD Y7A/P36H/N210Dでは2.5%の糞便を添加しても増幅が確認された。また、PCNAありなしを比較すると、PCNAを添加したものの方が、Cq値が小さく、優れたPCR効率を示していることがわかった。
【0115】
図12は、dUTP、糞便存在下でPCRを用い、得られた増幅産物の融解曲線解析の結果を示す。用いたポリメラーゼはKOD Y7A/P36H/N210D変異体、KOD Y7A/P36H/N210D変異体にKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したもの、Taqポリメラーゼの計3種である。
1はKOD Y7A/P36H/N210Dの結果を、2はKOD Y7A/P36H/N210DにKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものの結果を、3はTaqポリメラーゼの結果を示す。
結果、KOD Y7A/P36H/N210DではdUTP、糞便存在下からでも増幅が確認され、糞便の添加でピークは低くなるものの、2.5%を添加しても、目的ピークを確認することができた。PCNAを添加したものでも同様に、2.5%の添加でも目的ピークを確認することができた。しかし、Taqポリメラーゼでは0.25%の添加で目的ピークが消失しており、糞便の影響で阻害を受けたことが示唆された(
図12)。
【0116】
KODの他の変異体(Y7A/V93K、P36H、P36K、P36R、V93K、V93R、Y7A/P36H、Y7A/P36R、Y7A/V93R、P36H/H147E、P36K/H147E、P36R/H147E、V93K/H147E、V93R/H147E、Y7A/P36H/H147E、Y7A/P36R/H147E、Y7A/V93K/H147E、Y7A/V93R/H147E、P36H/N210D、P36K/N210D、P36R/N210D、V93K/N210D、V93R/N210D、Y7A/P36R/N210D、Y7A/V93K/N210D、Y7A/V93R/N210D、P36H/I142R、P36R/I142R、V93K/I142R、V93R/I142R、Y7A/P36H/I142R、Y7A/P36R/I142R、P36H/D141A/E143A、P36R/D141A/E143A、V93K/D141A/E143A、V93R/D141A/E143A、Y7A/P36H/D141A/E143A、Y7A/P36R/D141A/E143A)でも同様に2.5%糞便が含まれる反応系で増幅を確認し、dUTP存在下でもしっかりとしたバンドが確認できた。
【0117】
またPCNAも、KOD−PCNA M73L/E143R、M73L/R82A/E143A、M73L/R109A/E143A、Pfu−PCNA M73L/D143R、M73L/D147A、M73L/R82A/D143A、M73L/R109A/D143Aの変異体で、同様の反応を行い、PCNA添加なしに比べPCR効率の向上が確認できた。
【0118】
Pfu DNAポリメラーゼ変異体でも同様に2.5%糞便が含まれる反応系で増幅を確認し、P36H、V93R、Y7A/P36H、Y7A/V93Kの変異体で、dUTP存在下でもしっかりとしたバンドが確認できた。
【0119】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。