(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1熱交換媒体を冷却する冷凍サイクル(12)を有すると共に、前記第1熱交換媒体と該第1熱交換媒体よりも高温の第2熱交換媒体とが循環し、複数の機器(11a、11b、11c、11d)のそれぞれへ前記第1熱交換媒体または前記第2熱交換媒体を供給する熱マネージメントシステム(10)の一部を構成する流路切替弁であって、
該熱マネージメントシステムにおいて、前記第1熱交換媒体または前記第2熱交換媒体としての前記流体の流れを切り替える請求項1ないし8のいずれか1つに記載の流路切替弁。
前記弁体は、該弁体の回転動作が停止される際には、前記1または2以上の弁体開口の全部の周縁(302d、302e)が前記第1シール部と前記第2シール部との何れにも重ならない回転位置で停止される請求項1ないし9のいずれか1つに記載の流路切替弁。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態において熱マネージメントシステム10の概略構成を示したブロック図である。この
図1に示す熱マネージメントシステム10は、例えばハイブリッド車などの自動車に搭載されるシステムである。熱マネージメントシステム10は、冷凍サイクル12によって冷水と温水とを生成し、空調用の熱交換器を含む複数の機器11a、11b、11c、11dにその冷水と温水とを供給することで冷却または温調を行う。その複数の機器11a、11b、11c、11dとしては、例えばインバータ、走行用のエンジン、電動機、バッテリなどを挙げることができる。
【0017】
言い換えれば、その熱マネージメントシステム10では、第1熱交換媒体としての冷水と、その冷水よりも高温の第2熱交換媒体としての温水とが循環する。そして、熱マネージメントシステム10は、複数の機器11a、11b、11c、11dのそれぞれへその冷水と温水とを択一的に切り替えて供給する。なお、
図1の矢印FL1は冷水が流れる向きを示し、矢印FL2は温水が流れる向きを示し、矢印FL3は冷凍サイクル12の冷媒が流れる向きを示している。また、本実施形態では第1熱交換媒体および第2熱交換媒体は何れも、不凍液が混合された水溶液すなわち液体であるが、気体であっても構わない。
【0018】
熱マネージメントシステム10は、
図1に示すように、冷凍サイクル12、冷水用ポンプ13、温水用ポンプ14、冷水供給通路16、温水供給通路17、三方弁である複数の入口側切替弁18a、18b、18c、および三方弁である複数の出口側切替弁19a、19b、19cを主要構成要素として備えている。
【0019】
冷凍サイクル12は、熱マネージメントシステム10で循環する冷水を冷却すると共に、熱マネージメントシステム10で循環する温水を加熱する。要するに、冷凍サイクル12は、その冷水から温水へ熱を移動させるヒートポンプとしての役割を果たす。
【0020】
冷凍サイクル12は蒸気圧縮冷凍サイクルであり、圧縮機121、水冷コンデンサ122、膨張弁123、およびチラー124を有している。これらの構成機器121、122、123、124は、配管によって環状に接続され、冷媒が循環する冷媒循環路を構成する。
【0021】
圧縮機121は、チラー124から冷媒を吸い込み、その吸い込んだ冷媒を圧縮してから水冷コンデンサ122へ吐出する。水冷コンデンサ122は、冷媒と温水とを熱交換させる熱交換器である。水冷コンデンサ122は、冷媒から温水へ放熱させることにより、冷媒を凝縮させると共に温水を加熱する。
【0022】
膨張弁123には水冷コンデンサ122から冷媒が流入する。膨張弁123は、その水冷コンデンサ122から流入した冷媒を減圧膨張させ、その減圧膨張後の冷媒をチラー124へ流出させる。チラー124は、冷媒と冷水とを熱交換させる熱交換器である。チラー124には膨張弁123から冷媒が流入し、チラー124は、冷水から冷媒へ吸熱させることにより、その冷媒を蒸発させると共に冷水を冷却する。
【0023】
冷水用ポンプ13は冷水吸入口13aと冷水吐出口13bとを有し、その冷水吸入口13aから吸入した冷水を冷水吐出口13bから吐出する。その冷水吐出口13bから吐出された冷水は、チラー124で冷却されてから冷水供給通路16へと流れる。
【0024】
温水用ポンプ14は温水吸入口14aと温水吐出口14bとを有し、その温水吸入口14aから吸入した温水を温水吐出口14bから吐出する。その温水吐出口14bから吐出された温水は、水冷コンデンサ122で加熱されてから温水供給通路17へと流れる。
【0025】
複数の切替弁18a、18b、18c、19a、19b、19cはそれぞれ、熱マネージメントシステム10において、冷水または温水としての流体の流れを切り替える。詳細には、第1入口側切替弁18aは、第1の機器11aの入口側へ接続された第1入口配管20aに冷水供給通路16と温水供給通路17とを択一的に連通させる流路切替弁である。また、第1出口側切替弁19aは、第1の機器11aの出口側へ接続された第1出口配管21aを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aと温水用ポンプ14の温水吸入口14aとへ択一的に連通させる流路切替弁である。
【0026】
第1入口配管20aから第1の機器11aへ流入した冷水または温水は、第1の機器11aの内部で熱交換してから第1出口配管21aへ流出する。すなわち、第1の機器11aに冷水が流入すれば第1の機器11aはその冷水によって冷却され、第1の機器11aに温水が流入すれば第1の機器11aはその温水によって加熱される。
【0027】
第1入口側切替弁18aと第1出口側切替弁19aは互いに連動して作動させられる。詳細には、第1入口側切替弁18aが冷水供給通路16を第1入口配管20aへ連通させる場合には、第1出口側切替弁19aは、第1出口配管21aを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる。そのとき、温水供給通路17へ接続された第1入口側切替弁18aのポートは第1入口側切替弁18aによって閉塞され、温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ接続された第1出口側切替弁19aのポートは第1出口側切替弁19aによって閉塞される。
【0028】
逆に、第1入口側切替弁18aが温水供給通路17を第1入口配管20aへ連通させる場合には、第1出口側切替弁19aは、第1出口配管21aを温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる。そのとき、冷水供給通路16へ接続された第1入口側切替弁18aのポートは第1入口側切替弁18aによって閉塞され、冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ接続された第1出口側切替弁19aのポートは第1出口側切替弁19aによって閉塞される。
【0029】
第2入口側切替弁18bは、第2の機器11bの入口側へ接続された第2入口配管20bと第3の機器11cの入口側へ接続された第3入口配管20cとを択一的に温水供給通路17へ連通させる流路切替弁である。また、第2出口側切替弁19bは、第2の機器11bの出口側へ接続された第2出口配管21bと第3の機器11cの出口側へ接続された第3出口配管21cとを択一的に温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる流路切替弁である。
【0030】
第2入口配管20bから第2の機器11bへ流入した温水は、第2の機器11bの内部で熱交換してから第2出口配管21bへ流出する。すなわち、第2の機器11bに温水が流入すれば第2の機器11bはその温水によって加熱される。
【0031】
第2入口側切替弁18bと第2出口側切替弁19bは互いに連動して作動させられる。詳細には、第2入口側切替弁18bが第2入口配管20bを温水供給通路17へ連通させる場合には、第2出口側切替弁19bは、第2出口配管21bを温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる。そのとき、第3入口配管20cへ接続された第2入口側切替弁18bのポートは第2入口側切替弁18bによって閉塞され、第3出口配管21cへ接続された第2出口側切替弁19bのポートは第2出口側切替弁19bによって閉塞される。
【0032】
逆に、第2入口側切替弁18bが第3入口配管20cを温水供給通路17へ連通させる場合には、第2出口側切替弁19bは、第3出口配管21cを温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる。そのとき、第2入口配管20bへ接続された第2入口側切替弁18bのポートは第2入口側切替弁18bによって閉塞され、第2出口配管21bへ接続された第2出口側切替弁19bのポートは第2出口側切替弁19bによって閉塞される。
【0033】
第3入口側切替弁18cは、第3入口配管20cと第4の機器11dの入口側へ接続された第4入口配管20dとを択一的に冷水供給通路16へ連通させる流路切替弁である。また、第3出口側切替弁19cは、第3出口配管21cと第4の機器11dの出口側へ接続された第4出口配管21dとを択一的に冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる流路切替弁である。
【0034】
第3入口配管20cから第3の機器11cへ流入した冷水または温水は、第3の機器11cの内部で熱交換してから第3出口配管21cへ流出する。すなわち、第3の機器11cに冷水が流入すれば第3の機器11cはその冷水によって冷却され、第3の機器11cに温水が流入すれば第3の機器11cはその温水によって加熱される。
【0035】
また、第4入口配管20dから第4の機器11dへ流入した冷水は、第4の機器11dの内部で熱交換してから第4出口配管21dへ流出する。すなわち、第4の機器11dに冷水が流入すれば、第4の機器11dはその冷水によって冷却される。
【0036】
第3入口側切替弁18cと第3出口側切替弁19cは互いに連動して作動させられる。詳細には、第3入口側切替弁18cが第3入口配管20cを冷水供給通路16へ連通させる場合には、第3出口側切替弁19cは、第3出口配管21cを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる。そのとき、第4入口配管20dへ接続された第3入口側切替弁18cのポートは第3入口側切替弁18cによって閉塞され、第4出口配管21dへ接続された第3出口側切替弁19cのポートは第3出口側切替弁19cによって閉塞される。
【0037】
逆に、第3入口側切替弁18cが第4入口配管20dを冷水供給通路16へ連通させる場合には、第3出口側切替弁19cは、第4出口配管21dを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる。そのとき、第3入口配管20cへ接続された第3入口側切替弁18cのポートは第3入口側切替弁18cによって閉塞され、第3出口配管21cへ接続された第3出口側切替弁19cのポートは第3出口側切替弁19cによって閉塞される。
【0038】
更に、第2、第3入口側切替弁18b、18cおよび第2、第3出口側切替弁19b、19cは、第3の機器11cへ冷水と温水との両方を流入させることなくその冷水と温水との一方を流入させるように互いに連動して制御される。
【0039】
すなわち、第2入口側切替弁18bが第3入口配管20cを温水供給通路17へ連通させ且つ第2出口側切替弁19bが第3出口配管21cを温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる場合には、第3入口側切替弁18cは第4入口配管20dを冷水供給通路16へ連通させ且つ第3出口側切替弁19cは第4出口配管21dを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる。
【0040】
逆に、第3入口側切替弁18cが第3入口配管20cを冷水供給通路16へ連通させ且つ第3出口側切替弁19cが第3出口配管21cを冷水用ポンプ13の冷水吸入口13aへ連通させる場合には、第2入口側切替弁18bは第2入口配管20bを温水供給通路17へ連通させ且つ第2出口側切替弁19bは第2出口配管21bを温水用ポンプ14の温水吸入口14aへ連通させる。
【0041】
このように熱マネージメントシステム10では、各切替弁18a、18b、18c、19a、19b、19cの制御により、冷水用ポンプ13が吐出する冷水と、温水用ポンプ14が吐出する温水は、互いに合流することがない別個の熱媒体回路を循環することになる。
【0042】
次に本実施形態の切替弁18a、18b、18c、19a、19b、19cの構造について説明する。
図2には第1入口側切替弁18aが示されているが、他の切替弁18b、18c、19a、19b、19cも第1入口側切替弁18aと同様の構造を備えているので、以下では第1入口側切替弁18aについて説明する。そして、他の切替弁18b、18c、19a、19b、19cについての説明を省略する。また、以下の説明では、第1入口側切替弁18aを、単に流路切替弁18aと呼ぶ。
【0043】
図2に示すように、流路切替弁18aは回転式流路切替弁であり、回転部30と非回転部である弁本体32とシール部材34と弁駆動部36とを備えている。
【0044】
弁駆動部36は、不図示の電子制御装置の電気的な制御に従って回転部30を回転させる駆動源であり、弁本体32の上側に配置されている。弁駆動部36は、例えば、歯車列等の減速機構と電動モータとを含んで構成されている。
【0045】
回転部30を単体で模式的に表すと回転部30は
図3の通りであり、
図2および
図3に示すように、その回転部30は、一体成形された回転部軸301と弁体302とを有している。回転部軸301は、弁軸心CLvを中心とした円柱形状を成しており、弁体302から弁駆動部36側へ突き出ている。そして、回転部軸301は、弁駆動部36に対し動力伝達可能に連結されている。なお、本実施形態では、弁軸心CLvは上下方向に沿った軸心となっている。また、回転部30は例えば樹脂製である。
【0046】
弁体302は、
図3および
図4に示すように、弁駆動部36から回転駆動力が伝達されることにより、回転部軸301と一体に弁軸心CLvまわりに回転する。例えば、弁体302は、
図4において時計回りにも反時計回りにも回転する。弁軸心CLvに直交する仮想断面で切断した弁体302の外形は、弁軸心CLvを中心とした円形状を成している。
【0047】
また、弁体302は、その弁体302の外周面として弁体外周面302aを有している。その弁体外周面302aは、弁径方向DRrの外側を向き且つ弁軸心CLvを取り巻くように延設されている。なお、その弁径方向DRrとは弁軸心CLvの径方向である。
【0048】
また、弁体302には、弁径方向DRrの外側へ向いて開口した2つの弁体開口302b、302cが形成されている。この2つの弁体開口302b、302cは何れも円形の開口である。そして、この2つの弁体開口302b、302cは弁体302の内部で互いに連通している。すなわち、2つの弁体開口302b、302cのうちの一方の開口である第1弁体開口302bは、弁体302に形成され流体が流通する弁体流路の一端を形成し、他方の開口である第2弁体開口302cは、その弁体流路の他端を形成している。
【0049】
また、第1弁体開口302bは第2弁体開口302cに対し弁周方向DRcへ並んで配置され、第1弁体開口302bの向きは、弁軸心CLvまわりにおいて第2弁体開口302cの向きに対し直交する向きになっている。なお、弁周方向DRcとは弁軸心CLvの周方向である。
【0050】
図2および
図4に示すように、弁本体32は例えば樹脂製であり、弁本体32には弁室321が形成されている。その弁室321には、弁体302とシール部材34とが収容されている。また、弁本体32は、本体内周面322を弁本体32の内部に有している。
【0051】
その弁本体32の本体内周面322は弁室321を形成している。詳細には、本体内周面322は、弁体外周面302aに対向して弁室321に面している。
【0052】
また、弁本体32には、弁室321から弁径方向DRrへそれぞれ貫通した3つの開口孔32a、32b、32cが形成されている。その3つの開口孔32a、32b、32cは何れも、孔の軸方向に直交する孔断面が円形状を成す孔である。
【0053】
その3つの開口孔32a、32b、32cのうちの第1開口孔32aは第1入口配管20a(
図1参照)に接続されている。また、第2開口孔32bは、冷水供給通路16の一部を構成する配管20e(
図1参照)に接続され、第3開口孔32cは、温水供給通路17の一部を構成する配管20f(
図1参照)に接続されている。
【0054】
また、第2開口孔32bおよび第3開口孔32cは第1開口孔32aに対し弁周方向DRcへ並んで配置され、第2開口孔32bの向きおよび第3開口孔32cの向きはそれぞれ、第1開口孔32aの向きに対し直交する向きになっている。但し、第2開口孔32bは、弁周方向DRcにおいて第1開口孔32aに対し第3開口孔32c側とは反対側に配置されている。
【0055】
回転部30の第1弁体開口302bは、弁体302の回転位置に応じて、弁本体32の第1開口孔32aと第2開口孔32bとの何れかに相対向して連通する。その一方で、第2弁体開口302cは、弁体302の回転位置に応じて、第1開口孔32aと第3開口孔32cとの何れかに相対向して連通する。
【0056】
具体的には、弁体302は、弁駆動部36の駆動により、少なくとも、
図4の回転位置である第1弁体位置と、
図4の回転位置から時計回りに90°回転した回転位置である第2弁体位置との何れかに位置決めされる。そして、弁体302がその第1弁体位置にある場合には、第1弁体開口302bは第1開口孔32aに相対向して連通すると共に、第2弁体開口302cは第3開口孔32cに相対向して連通する。また、弁体302が第2弁体位置にある場合には、第1弁体開口302bは第2開口孔32bに相対向して連通すると共に、第2弁体開口302cは第1開口孔32aに相対向して連通する。
【0057】
シール部材34は、弾力性を有する例えばゴム等の弾性体で構成されている。シール部材34は、
図2および
図4に示すように、弁室321内において、弁体302に対し弁径方向DRrでの外側に配置され、その弁体302を環状に取り囲むように形成されている。例えば、
図5の斜視図に示すように、シール部材34は弁体302を取り囲んでいる。
【0058】
また、シール部材34は、
図4に示すように、弁体外周面302aと本体内周面322との間で弁径方向DRrに挟まれている。
【0059】
シール部材34を単体で模式的に表すとシール部材34は
図6の通りであり、その
図6および
図4に示すように、シール部材34は、第1シール部341と第2シール部342と第3シール部343と第4シール部344と第1連結部345と第2連結部346と第3連結部347と第4連結部348とを有している。
【0060】
第1連結部345は第1シール部341と第2シール部342とを連結し、第2連結部346は第1シール部341と第3シール部343とを連結している。そして、第3連結部347は第2シール部342と第4シール部344とを連結し、第4連結部348は第3シール部343と第4シール部344とを連結している。なお、4つのシール部341、342、343、344をまとめて記載する際には、シール部341〜344と記載する。また、4つの連結部345、346、347、348をまとめて記載する際には、連結部345〜348と記載する。
【0061】
そして、シール部材34のうち弁体外周面302aと本体内周面322とに接触している部位は、その両方の面302a、322によって押圧される。例えば、弁体302の回転位置によってはシール部材34の一部分が弁体開口302b、302cの何れかと重なり弁体外周面302aと接触しなくなるが、
図4では、シール部材34の全体が上記両方の面302a、322によって押圧されている。
【0062】
すなわち、4つのシール部341〜344および4つの連結部345〜348は全て、弁体外周面302aと本体内周面322との間でそれぞれ挟圧される。そのとき、その4つのシール部341〜344および4つの連結部345〜348は全て、弁体外周面302aと本体内周面322とにより弁径方向DRrに圧縮されることによって弾性変形させられる。
【0063】
図4および
図7に示すように、シール部材34の4つのシール部341、342、343、344は何れも、互いに同じ円環形状を成している。
【0064】
詳細には、第1シール部341は、第1開口孔32aの径方向(すなわち、孔径方向)における所定のシール幅W1をもって第1開口孔32aまわりに延設されることにより環状に形成されている。すなわち、第1シール部341は、第1開口孔32aの本体内周面322側の周縁322aを取り巻くように延設されている。そして、第1シール部341は、第1弁体開口302bと第2弁体開口302cとのうちの一方の弁体開口が第1開口孔32aに相対向して連通している場合に、その一方の弁体開口と第1開口孔32aとの間で流通する流体(例えば冷水または温水)の漏れを防止する。
【0065】
また、第2シール部342は、第2開口孔32bの径方向における所定のシール幅W2をもって第2開口孔32bまわりに延設されることにより環状に形成されている。すなわち、第2シール部342は、第2開口孔32bの本体内周面322側の周縁322bを取り巻くように延設されている。そして、第2シール部342は、第1弁体開口302bが第2開口孔32bに相対向して連通している場合に、その第1弁体開口302bと第2開口孔32bとの間で流通する流体の漏れを防止する。
【0066】
なお、第3、第4シール部343、344についても上記の第1および第2シール部341、342と同様であり、例えば各シール部341、342、343、344のシール幅は互いに同じである。但し、三方弁と四方弁とでシール部材34を共通化するために第4シール部344は設けられているので、三方弁である本実施形態の流路切替弁18aでは、第4シール部344に対応する開口孔は弁本体32に設けられていない。
【0067】
第1連結部345は、弁軸心CLvの軸方向における第1連結部345の幅WC1が第1シール部341のシール幅W1に揃うように形成されている。例えば、各連結部345〜348の幅および各シール部341〜344のシール幅は何れも同じになっている。
【0068】
第1連結部345は、第1シール部341に連結された第1連結端部345aと、第2シール部342に連結された第2連結端部345bとを有している。詳しくは、その第1連結端部345aは、第1シール部341のうち、弁周方向DRcで第1連結部345側へ最も張り出した箇所に連結されている。その一方で、第2連結端部345bは、第2シール部342のうち、弁周方向DRcで第1連結部345側へ最も張り出した箇所に連結されている。すなわち、第1連結部345は、第1シール部341と第2シール部342との相互間隔A1が弁周方向DRcで最も小さくなっている箇所に配置されている。
【0069】
また、各連結端部345a、345bと弁体302との関係に着目すれば、第1連結部345のうち少なくとも各連結端部345a、345bはそれぞれ、弁体外周面302aにより弁径方向DRrの外側へ押圧されることによって弾性変形させられる。なお、第2〜4連結部346、347、348もそれぞれ上記の第1連結部345と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0070】
また、シール部材34は、弁体302の回転に引き摺られて回転しないように、弁本体32の内側に係止されている。例えば
図7および
図8に示すように、弁本体32は、弁室321において、弁径方向DRrの内側へ突き出た凸部323を有している。その凸部323は、本体内周面322のうちシール部材34の周囲の領域で突き出ている。そのため、シール部材34は、その凸部323によって弁周方向DRcに係止され、弁本体32に対し相対回転不能となっている。なお、
図7および
図8を見易く図示するために、
図7では弁本体32の凸部323にハッチングが付され、
図8では回転部30の図示が省略されている。
【0071】
また、電子制御装置による流路切替弁18aの制御において、回転部30は、弁体302が第1弁体位置と第2弁体位置との間の途中位置たとえば
図9および
図10に示す途中位置で停止しないように回転させられる。要するに、弁体302が回転する場合、弁体302は第1弁体位置または第2弁体位置では停止するが、それらの間の途中位置では停止しない。シール部材34のシール性能を良好に保つためである。
【0072】
すなわち、弁体302は、その弁体302の回転動作が停止される際には、第1弁体開口302bの周縁302dと第2弁体開口302cの周縁302eとが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される。言い換えれば、弁体302は、弁体外周面302aに形成された全部の弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される。
【0073】
例えば
図9および
図10に示す途中位置では、第1弁体開口302bの周縁302dは第2シール部342と部分的に重なると共に、第2弁体開口302cの周縁302eは第1シール部341と部分的に重なっている。従って、この
図9および
図10に示す途中位置では、弁体302の回転は停止されない。
【0074】
その一方で、
図5に示す第1弁体位置では、第1弁体開口302bの全体が円環状の第1シール部341の内側に位置すると共に、第2弁体開口302cの全体が円環状の第3シール部343の内側に位置する。従って、弁体開口302b、302cの何れの周縁302d、302eも、第1〜第3シール部341、342、343に重ならない。また、第2弁体位置でも同様である。従って、弁体302は、第1弁体位置または第2弁体位置で停止される。
【0075】
なお、弁体302は、第1弁体開口302bの周縁302dまたは第2弁体開口302cの周縁302eが第4シール部344に重なる回転位置で停止されても構わない。第4シール部344に対応する開口孔が弁本体32に設けられておらず、第4シール部344が弁体302によって恒久的に変形させられても、その第4シール部344の恒久的な変形はシール部材34のシール性能に影響しないからである。
【0076】
ここで、本実施形態と比較される比較例の流路切替弁90について説明する。その比較例の流路切替弁90(
図17参照)は、本実施形態の流路切替弁18aに対しシール部材34を、
図11に示すシール部材92に置き換えたものである。その比較例のシール部材92は、特許文献1のシール部材と同様のものである。すなわち、比較例のシール部材92は、4つのシール部341〜344と、それらを連結する円筒状の連結壁921とを有している。このシール部材92は、本実施形態のシール部材34と同様、
図12〜14に示すように、弁室321内にて弁体302を環状に取り囲むように形成されている。
【0077】
また、
図14および
図15に示すように、弁径方向DRrにおいて連結壁921の厚みは各シール部341〜344に比して薄くなっているので、各シール部341〜344は連結壁921から弁径方向DRrの内側へ突き出ている。そのため、各シール部341〜344は連結壁921に対して弁径方向DRrに段差を生じ、連結壁921と弁体302との間には径方向隙間が生じている。すなわち、連結壁921は、弁体外周面302aにより弾性変形させられてはいない。
【0078】
比較例の流路切替弁90では、
図15〜17に示すように、弁体302が、例えば第1弁体開口302bが第1開口孔32aに相対向して連通する第1弁体位置にある場合には、シール部341〜344の全体が弁体外周面302aに接触している。そのため、弁体302の回転に対する回転抵抗の主な原因は、圧縮されたシール部341〜344の反発力Frに起因した摩擦力である。弁体302の摺動抵抗になるこの摩擦力は、弁体302の回転の際に弁体302の回転抵抗を定常的に生じさせるものであり、その回転抵抗を一時的に大きくする原因にはならない。なお、
図15では第2弁体開口302cの図示は省略されており、このことは後述の
図18でも同様である。
【0079】
これに対し、比較例の流路切替弁90において弁体302が、
図15〜17に示す第1弁体位置から
図18の矢印ARrのように回転すると、第1弁体開口302bが第2開口孔32bと相対向する直前で、シール部材92は
図18〜20に示す状態になる。すなわち、シール部材92は、第2シール部342が第1弁体開口302bの周縁302dに重なった状態になる。
【0080】
そうなると、第2シール部342は弁体外周面302aに押圧された押圧状態から解放され、第1弁体開口302b内へ僅かに入り込むことになる。その状態から弁体302が更に回転すると、シール部材92の第2シール部342は、第1弁体開口302b内へ僅かに入り込んだ解放状態から上記押圧状態に戻ることになる。
【0081】
このとき、その第2シール部342は第1弁体開口302bの周縁302dに
図20のように引っ掛かり、
図18のCx部分にて弁体302の回転を妨げる。すなわち、弁体302が回転する過程で、シール部材92の第2シール部342が上記解放状態から押圧状態に戻るときに、弁体302は第2シール部342に一時的に引っ掛かる。これに起因して、その弁体302を回転させるための回転トルクTbは、弁体302が回転する過程において、
図21に示すように一時的に大きくなる。更に、シール部材92が例えばゴム製の場合、そのシール部材92は低温環境下では弾力性の低下により硬くなり、高温環境下では体積膨張するので、弁体302の回転時における弁体302の引っ掛かりは何れの環境下でも顕著になる。
【0082】
本実施形態の流路切替弁18aでは、この一時的に大きくなった回転トルクTbの最大値であるピークトルクを低減するようにシール部材34が構成されている。
【0083】
すなわち、本実施形態によれば、第1連結部345は、第1シール部341と第2シール部342との相互間隔A1が弁周方向DRcで最も小さくなっている箇所に配置されている。そして、第1連結部345のうち少なくとも各連結端部345a、345bはそれぞれ、弁体外周面302aにより弁径方向DRrの外側へ押圧されることによって弾性変形させられる。更に、第2〜4連結部346、347、348もそれぞれ上記の第1連結部345と同様である。
【0084】
従って、弁径方向DRrにおいて内側向きのシール部材の凸凹が抑えられ、弁体302が回転する際に、各シール部341〜344が各弁体開口302b、302cの周縁302d、302eに引っ掛かり難くなる。
【0085】
例えば
図22に示すように、第2シール部342の一部分が弁体外周面302aに接触していなくても、弁体外周面302aに押圧される第1連結部345の弾性変形に伴って第2シール部342も弾性変形する。そのため、弁体302が
図22の矢印ARrのように時計回りに回転する際に、第1弁体開口302bの周縁302dは第2シール部342に引っ掛かり難い。
【0086】
このようなことから本実施形態では、
図18等に示した上記比較例と比較して、
図23の矢印AR1に示すように、弁体302を回転させるための回転トルクTbの最大値を低減することができる。
【0087】
なお、
図23では、本実施形態の回転トルクTbは破線L1で示され、上記比較例の回転トルクTbは実線Lxで示されている。また、
図23の回転トルクTbのうちの通常時のトルクは、弾性体であるシール部材34の圧縮率と、シール部材34および弁体外周面302aのそれぞれの表面状態に支配されているので、矢印AR2に示すように、上記比較例と比較して大きくなっている。本実施形態では4つの連結部345〜348が圧縮されて、上記比較例よりも弁体302の摺動抵抗が大きくなっているからである。
【0088】
ここで、弁駆動部36は、
図23に示された回転トルクTbの最大値以上のトルクを出力できなければ弁体302を円滑に回転させることはできないので、弁駆動部36の支配的な設計点は、その回転トルクTbの最大値すなわちピークトルクである。そして、上記のように本実施形態では、そのピークトルクを低減できるので、弁駆動部36の小型化を図ることが可能である。更に言えば、通常の流路切替弁では弁駆動部36が流路切替弁全体の半分程度の体積を占めるので、その弁駆動部36の小型化により流路切替弁18aの小型化を容易に図ることができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、4つの連結部345〜348は全て、
図4に示すように、弁体外周面302aと本体内周面322とにより弁径方向DRrに圧縮されることによって弾性変形させられる。従って、4つの連結部345〜348は4つのシール部341〜344と同様に弁体302に接触するので、弁体302を回転させる際の回転トルクTb変動幅を抑えることが容易である。
【0090】
また、本実施形態によれば
図7に示すように、第1連結部345は、弁軸心CLvの軸方向における第1連結部345の幅WC1が第1シール部341のシール幅W1に揃うように形成されている。そして、他の第2〜4連結部346、347、348もそれぞれその第1連結部345と同様である。従って、特許文献1のように円筒状の壁を介して各シール部341〜344が連結されている構成と比較して、シール部材34を構成する部品の点数を増やすことなく、シール部材34の材料(例えばゴム材料)の使用量を減らすことが可能である。本実施形態では、シール部材34を構成する部品の点数は1である。
【0091】
また、本実施形態によれば、流路切替弁18aは、
図1に示す熱マネージメントシステム10の一部を構成し、その熱マネージメントシステム10において、冷水または温水が流れる流路を切り替える。従って、上述のように流路切替弁18aを小型化することにより、熱マネージメントシステム10をコンパクトに構成することが可能である。
【0092】
また、本実施形態によれば
図4に示すように、弁体302は、その弁体302の回転動作が停止される際には、全部の弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される。従って、弾力性を有するシール部材34が不均一に圧縮変形させられた状態で長時間放置されることを回避することが可能である。これにより、シール部材34が局所変形を起こすことが回避され、流路切替弁18aの性能悪化となるシール漏れの発生を防止することが可能である。
【0093】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の第3実施形態以降でも同様である。
【0094】
図24および
図25に示すように、本実施形態のシール部材34が有するシール部341、342は2つであり、連結部345、346も2つであり、本実施形態は、この点において第1実施形態と異なっている。従って、本実施形態の弁本体32は図示されていないが、本実施形態の開口孔32a、32bは例えば2つである。また、本実施形態の2つの連結部345、346の形状も第1実施形態と異なっている。
【0095】
具体的には、2つの連結部345、346のうちの一方である第1連結部345は、第1シール部341に連結された第1連結端部345aと、第2シール部342に連結された第2連結端部345b(
図4および
図6参照)とを有している。更に、第1連結部345は、その第1連結端部345aと第2連結端部345bとの間に中間部345cを有している。また、第1連結部345の全体にわたって、弁径方向DRrにおける第1連結部345の厚みは、第1シール部341および第2シール部342の厚みに比して小さくなっている。
【0096】
そして、第1連結端部345aは、
図25に示すように、弁径方向DRrにおける第1連結部345の内側にて中間部345cから第1シール部341へと連続的に(例えば滑らかに)連なる内周側部345dを有している。このことは、第2連結端部345bにおいても同様である。従って、第1連結部345のうち各連結端部345a、345bはそれぞれ、第1実施形態と同様に、弁体外周面302aにより弁径方向DRrの外側へ押圧されることによって弾性変形させられる。
【0097】
ここで、上記「中間部345cから第1シール部341へと連続的に連なる」とは、段差が全く無いことだけに限らず、シール部材34に対し弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが引っ掛からずに摺動する程度の段差や面の屈曲が存在することを含んだ意味である。
【0098】
また、弁径方向DRrにおける第1連結部345の厚みは、第1連結部345のうち中間部345cにて最も薄くなっている。そして、その弁径方向DRrにおける第1連結部345の厚みは、その第1連結部345の中央部分から弁周方向DRcにて第1シール部341または第2シール部342に近いほど漸増している。
【0099】
なお、2つの連結部345、346のうちの他方である第2連結部346も上記の第1連結部345と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0100】
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、第1連結端部345aは、弁径方向DRrにおける第1連結部345の内側にて中間部345cから第1シール部341へと連続的に連なる内周側部345dを有している。このことは、第1連結部345の第2連結端部345bでも、第2連結部346の両方の端部でも同様である。従って、弁径方向DRrでのシール部材34の内側において、各連結部345、346と各シール部341、342との段差が抑えられ、弁体302が回転する際に、各シール部341、342が弁体開口302b、302cの周縁302d、302e(
図4参照)に引っ掛かり難くなる。その結果、弁体302を回転させるための回転トルクTbの最大値を低減することができる。
【0102】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主として説明する。
【0103】
図26および
図27に示すように、本実施形態のシール部材34は、弁軸心CLvを中心とした筒形状の筒状部350を有している。本実施形態は、この点において第2実施形態と異なっている。
【0104】
具体的に、その筒状部350は、第1シール部341と第2シール部342とを連結する連結壁としての役割を果たしている。従って、
図27において二点鎖線で表示されているように、第1連結部345および第2連結部346は、筒状部350の一部分として構成されている。
【0105】
ここで、第1連結部345および第2連結部346が筒状部350に含まれていることを除けば、第1連結部345および第2連結部346の構成は、第2実施形態と同様である。例えば
図28および
図29に示すように、第1連結部345の第1連結端部345aは、第2実施形態と同様の内周側部345dを有している。
【0106】
なお、弁径方向DRrにおける筒状部350の厚みすなわち径方向厚みは、例えば、第1連結部345の中間部345cおよび第2連結部346の中間部と同じになっている。その第2連結部346の中間部は、第2連結部346の中で第1連結部345の中間部345cに相当する部分である。
【0107】
本実施形態では、前述の第2実施形態と共通の構成から奏される効果を第2実施形態と同様に得ることができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、シール部材34は、弁軸心CLvを中心とした筒形状を成し第1シール部341と第2シール部342とを連結する筒状部350を有している。そして、第1連結部345および第2連結部346は、筒状部350の一部分として構成されている。従って、筒状部350を弁本体32に係止することにより、シール部材34を弁本体32に対して相対回転不能に係止することが可能である。
【0109】
なお、本実施形態は第2実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第1実施形態と組み合わせることも可能である。
【0110】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
【0111】
図30〜32に示すように、本実施形態では、シール部材34のうち各連結部345、346の形状が第3実施形態と異なっている。
【0112】
具体的に、弁径方向DRrにおける第1連結部345の厚みすなわち1連結部345の径方向厚みは、弁周方向DRcにおける第1連結部345の全長にわたって均一になっている。そして、第1連結部345は、筒状部350のうち第1および第2連結部345、346周りに形成された内周面350aに対し弁径方向DRrの内側へ膨らんでいる。例えば、その内周面350aに対する第1連結部345の内側膨らみ量Riは、全てのシール部341、342と同じ又は同程度となっている。
【0113】
本実施形態では、第1連結部345は、筒状部350のうち第1および第2連結部345、346周りに形成された外周面350bに対しては膨らんでも凹んでもいない。
【0114】
なお、第2連結部346も上記の第1連結部345と同様に構成されている。
【0115】
本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
【0116】
また、本実施形態は第3実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第1実施形態と組み合わせることも可能である。
【0117】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第4実施形態と異なる点を主として説明する。
【0118】
図33に示すように、本実施形態では、シール部材34は、第1実施形態と同様に4つのシール部341〜344と、4つの連結部345〜348とを有している。そして、4つの連結部345〜348は何れも、筒状部350の外周面350bに対し弁径方向DRrの外側へ膨らんでいる。例えば、その外周面350bに対する各連結部345〜348の外側膨らみ量は何れも、全てのシール部341〜344と同じ又は同程度となっている。これらの点で、本実施形態は第4実施形態と異なっている。
【0119】
なお、本実施形態のシール部材34のうち、4つのシール部341〜344と4つの連結部345〜348とに着目すれば、そのシール部341〜344および連結部345〜348の形状は第1実施形態のものと同じである。
【0120】
本実施形態では、前述の第4実施形態と共通の構成から奏される効果を第4実施形態と同様に得ることができる。
【0121】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態において、
図2の流路切替弁18aは熱マネージメントシステム10に用いられるものであるが、流路切替弁18aの用途は、熱マネージメントシステム10に限られない。
【0122】
(2)上述の各実施形態において、
図2の流路切替弁18aは三方弁であるが、四方弁であってもよいし、流体の流路を断接する開閉弁(すなわち、遮断弁)であってもよい。また、弁体302には、弁体外周面302aに形成された弁体開口302b、302cだけでなく、例えば
図34に示すように弁体302の下面に形成された下部開口302fが設けられていても差し支えない。
【0123】
この
図34の流路切替弁18aでは、下部開口302fは、弁体302の回転位置に関わらず流路切替弁18a外部の外部配管へ連通している。そして、
図34の流路切替弁18aは、その外部配管を第1開口孔32aと第2開口孔32bとに択一的に連通させる三方弁として構成されている。
【0124】
例えば
図34に示された弁体302の回転位置では、下部開口302fとつながる外部配管は第1弁体開口302bを介して第1開口孔32aへ連通している。そして、その
図34の回転位置から弁体302が反時計回りに90°回転させられると、その外部配管は第2弁体開口302cを介して第2開口孔32bへ連通する。
【0125】
また、上述の第1実施形態において弁体302は、弁体302の弁体外周面302aに形成された全部の弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される。これに関し、例えば
図34のように、弁体302は、弁体外周面302aに形成された弁体開口302b、302cの周縁302d、302eの何れかが、第1シール部341と第2シール部342とを連結する連結部345、346に重なる位置で停止されても構わない。シール部材34のシール性能に影響しないからである。例えば
図34では、弁体302は、第2弁体開口302cの周縁302eが第1連結部345に重なる位置で停止されている。
【0126】
なお、
図34の流路切替弁18aでは、弁体302の2つの弁体開口302b、302cのうちの1つは無くても差し支えない。弁体302が180°回転することで、流路切替弁18aは三方弁として機能し得るからである。
【0127】
(3)上述の第1実施形態において、
図4の弁本体32には3つの開口孔32a、32b、32cが設けられている。これに関し、その3つの開口孔32a、32b、32cの呼称が互いに異なっていれば、それらの開口孔32a、32b、32cのうち何れが第1開口孔、第2開口孔、または第3開口孔と呼ばれても構わない。弁本体32の開口孔に対応していない第4シール部344を除く3つのシール部341、342、343の呼称に関しても同様である。
【0128】
(4)上述の各実施形態において、弁体302は、弁体外周面302aに形成された全部の弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される。このようにすることは、シール部材34のシール性能を維持する上で好ましい。
【0129】
しかしながら、シール部材34のシール性能が維持されれば、必ずしもそのようにすることに限定される必要はない。例えば、弁体302は、エンジンが停止される際に、全部の弁体開口302b、302cの周縁302d、302eが第1〜第3シール部341、342、343の何れにも重ならない回転位置で停止される、とされてもよい。
【0130】
このようにしたとしても、上述の各実施形態と同様に、シール部材34が不均一に圧縮変形させられた状態で長時間放置されることを回避することが可能である。従って、シール漏れの発生を防止することが可能である。なお、エンジンが停止されたか否かの判定は、例えばイグニッションスイッチの操作信号またはエンジン回転速度センサの検出信号などに基づいて行うことが可能である。
【0131】
(5)上述の第2実施形態において、シール部材34が有する全ての連結部345、346が、その連結部345、346の途中で切り離すことができないように構成されている。しかしながら、これは一例であり、シール部材34が有する全ての連結部345、346のうちの一の連結部が、弁周方向DRcの途中にて断接可能に構成されていてもよい。
【0132】
例えば
図35の例では、第1連結部345が、弁周方向DRcの途中にて断接可能に構成されている。すなわち、その第1連結部345は、切離し可能に構成された断接部345eを、弁周方向DRcにおける第1連結部345の途中に有している。その断接部345eの構造は種々想定されるが、例えば
図35のように、その断接部345eは、鉤状部分同士が互いに嵌り合うことで、弁周方向DRcの引張り力に対抗できるように連結される。
【0133】
シール部材34を上述した
図35の例のようにすれば、シール部材34単体を例えば平面に沿うように展開することが可能である。従って、シール部材34の部品単体を製造する製造過程では、第1連結部345を切り離した形状で、シール部材34を製造することが可能である。そして、シール部材34の製造後の工程たとえば流路切替弁18aを組み立てる工程において、第1連結部345の断接部345eを挟んだ一方側と他方側とを互いに接続し、シール部材34を環形状にすることが可能である。
【0134】
(6)上述の第2実施形態において、第1シール部341と第2シール部342とは2つの連結部345、346によって互いに連結されている。これに関し、シール部材34は、その2つの連結部345、346のうちの一方の連結部の中央部分で切断された形状を成していても差し支えない。
【0135】
例えば
図36の例では、第2連結部346が、互いに切り離された第1シール延設部346aと第2シール延設部346bとに置き換えられている。その第1シール延設部346aは、第2連結部346を弁周方向DRcでの中央部分で切り離して得られた第1シール部341側の部位に相当し、第1シール部341から延設されるようにして形成されている。また、第2シール延設部346bは、第2連結部346を弁周方向DRcでの中央部分で切り離して得られた第2シール部342側の部位に相当し、第2シール部342から延設されるようにして形成されている。
【0136】
シール部材34を上述した
図36の例のようにすれば、
図35の例と同様に、シール部材34単体を例えば平面に沿うように展開することが可能である。そして、
図36のシール部材34は、弁室321内に組み込まれることで、環形状または略環形状になる。
【0137】
(7)上述の各実施形態において、
図1の熱マネージメントシステム10では、温水用ポンプ14から吐出された温水は水冷コンデンサ122で加熱されるが、例えばエンジン等の他の加熱源によって加熱されても差し支えない。
【0138】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0139】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0140】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0141】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、シール部材の連結部は、第1シール部に連結された第1連結端部と第2シール部に連結された第2連結端部とを有し、第1シール部と第2シール部との相互間隔が周方向で最も小さくなっている箇所に配置されている。そして、その連結部のうち少なくとも第1連結端部および第2連結端部はそれぞれ、弁体外周面により弁径方向の外側へ押圧されることによって弾性変形させられる。
【0142】
また、第2の観点によれば、連結部は、弁体外周面と本体内周面とにより弁径方向に圧縮されることによって弾性変形させられる。従って、連結部が第1および第2シール部と同様に弁体に接触するので、弁体を回転させる際の回転トルク変動幅を抑えることが容易である。
【0143】
また、第3の観点によれば、連結部は、第1連結端部と第2連結端部との間に中間部を有している。そして、その第1連結端部は、弁径方向における連結部の内側にて中間部から第1シール部へと連続的に連なる内周側部を有している。従って、シール部材の径方向内側において、第1連結端部と第1シール部との段差が抑えられ、弁体が回転する際に、第1シール部が弁体開口の周縁に引っ掛かり難くなる。その結果、弁体を回転させるトルクの最大値を低減することができる。
【0144】
また、第4の観点によれば、連結部は周方向の途中にて断接可能に構成されている。従って、シール部材の部品単体を製造する製造過程では連結部を切り離しておき、シール部材の製造後において、例えば流路切替弁を組み立てる工程において、その連結部を接続することが可能である。
【0145】
また、第5の観点によれば、シール部材は、弁軸心を中心とした筒形状を成し第1シール部と第2シール部とを連結する筒状部を有している。そして、連結部は、その筒状部の一部分として構成されている。従って、筒状部を弁本体に係止することにより、シール部材を弁本体に対して相対回転不能に係止することが可能である。
【0146】
また、第6の観点によれば、連結部は、筒状部のうちその連結部周りに形成された内周面に対し弁径方向の内側へ膨らんでいる。
【0147】
また、第7の観点によれば、連結部は、筒状部のうちその連結部周りに形成された外周面に対し弁径方向の外側へ膨らんでいる。
【0148】
また、第8の観点によれば、連結部は、弁軸心の軸方向における連結部の幅が第1シール部のシール幅に揃うように形成されている。従って、特許文献1のように円筒状の壁を介して各シール部が連結されている構成と比較して、シール部材を構成する部品の点数を増やすことなく、シール部材の材料の使用量を減らすことが可能である。
【0149】
また、第9の観点によれば、流路切替弁は熱マネージメントシステムの一部を構成し、その熱マネージメントシステムにおいて、流体の流れを切り替える。従って、流路切替弁を小型化することにより、熱マネージメントシステムをコンパクトに構成することが可能である。
【0150】
また、第10の観点によれば、弁体は、その弁体の回転動作が停止される際には、弁体開口の全部の周縁が第1シール部と第2シール部との何れにも重ならない回転位置で停止される。従って、弾力性を有するシール部材が不均一に圧縮変形させられた状態で長時間放置されることを回避することが可能である。これにより、シール部材が局所変形を起こすことが回避され、流路切替弁の性能悪化となるシール漏れの発生を防止することが可能である。
【0151】
また、第11の観点によれば、弁体は、エンジンが停止される際には、弁体開口の全部の周縁が第1シール部と第2シール部との何れにも重ならない回転位置で停止される。従って、上記と同様に、シール部材が不均一に圧縮変形させられた状態で長時間放置されることを回避することが可能である。これにより、シール漏れの発生を防止することが可能である。