(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2コイルの両方は、前記径方向から見て前記第3配線部と前記第4配線部とが互いに接するか或いは重なるように構成されている、請求項1に記載の回転型磁気結合装置。
前記第1及び第2コイルの少なくとも一方は、積層方向に前記ループコイルが重なるように層状に形成された多層ループコイルである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回転型磁気結合装置。
前記フレキシブル基板は、前記径方向から見て前記第3配線部と前記第4配線部とが互いに接するか或いは重なるように1周以上丸められて円筒状に形成される、請求項6に記載の回転型磁気結合装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態による回転型磁気結合装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、回転型磁気結合装置1は、送電ユニット1Aと受電ユニット1Bとの組み合わせからなり、送電ユニット1Aから受電ユニット1Bに電力をワイヤレスで伝送するものである。
【0022】
送電ユニット1Aは、入力直流電圧を例えば100kHzの交流電圧に変換して出力する送電回路110と、交流電圧により交流磁束を発生させる送電コイル6と、受電ユニット1B側から送信される交流信号を受信する受信コイル9と、受信コイル9が受信した交流信号に基づき、送電回路110から出力される交流電圧を制御する制御回路150とを備えている。
【0023】
受電ユニット1Bは、送電コイル6が発生させる交流磁束の少なくとも一部を受けて交流電圧を発生する受電コイル7と、受電コイル7に発生した交流電圧を例えばDC24Vの直流電圧に変換する受電回路120と、受電回路120の出力電圧又は出力電流の大きさを示す交流信号を生成する信号生成回路140と、受信コイル9に交流信号を送信する送信コイル8とを備えている。受電回路120の出力電圧は例えば負荷130に供給される。
【0024】
送電回路110は、入力直流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路111と、電源回路111が出力する所定の直流電圧を例えば100kHzの交流電圧に変換する電圧変換回路112と有している。制御回路150は、受信コイル9が受信した交流信号に基づき、電源回路111から出力される所定の直流電圧の大きさを制御し、これにより送電回路110から出力される交流電圧を制御する。
【0025】
信号生成回路140は、例えば10MHzの交流信号を出力する発振回路141と、受電回路120の出力電圧又は出力電流の大きさに応じて発振回路141の電源電圧を生成する電源電圧生成回路142とを有しており、電源電圧生成回路142は、受電回路120の出力電圧又は出力電流と目標値との差に基づき、発振回路141の電源電圧を制御する。
【0026】
このように、受電ユニット1Bの出力が送信コイル8及び受信コイル9を介して送電ユニット1Aにフィードバックされることにより、受電ユニット1Bの出力を一定に制御することができる。
【0027】
本実施形態において電力伝送用の交流電圧の周波数が100kHzであるのに対し、信号伝送用の交流信号の周波数は10MHzであり、電力伝送用の交流電圧の周波数の100倍である。信号伝送用の交流信号の周波数は、電力伝送用の交流電圧の周波数の10倍以上であることが好ましい。信号伝送用の交流信号の周波数が電力伝送用の交流電圧の周波数の10倍以上であれば、電力伝送用の交流電圧の高調波が交流信号に対するノイズとなって出力信号波形が歪むことがないので、電力伝送側との混信を避けることができ、交流信号の伝送品質を確保ことができる。
【0028】
本実施形態において、送電コイル6と受電コイル7との組み合わせは回転体に組み込まれた電力系の回転トランスT
Pを構成しており、送信コイル8と受信コイル9との組み合わせは電力系の回転トランスT
Pと同じ回転体に組み込まれた信号系の回転トランスT
Sを構成している。
【0029】
図2は、本実施形態による回転型磁気結合装置1の構造を示す分解斜視図である。また
図3は、
図2の回転型磁気結合装置1を送電ユニット1Aと受電ユニット1Bとに分けて示す分解斜視図である。また、
図4は、
図3の回転型磁気結合装置1の送電ユニット1Aと受電ユニット1Bとを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【0030】
図2〜
図4に示すように、回転型磁気結合装置1は、回転体である回転シャフト2のフランジ部2aに取り付けられて回転シャフト2と一緒に回転する回転ボビン3と、非回転体である支持体4に取り付けられて回転シャフト2と一緒に回転しない固定ボビン5と、固定ボビン5に設けられた送電コイル6及び受信コイル9と、回転ボビン3に設けられた受電コイル7及び送信コイル8と、送電コイル6及び受信コイル9に接続された送電回路基板11aと、受電コイル7及び受信コイル9に接続された受電回路基板11bとを備えている。本実施形態において回転シャフト2は金属製であり、回転ボビン3及び固定ボビン5の中心部を貫通している。
【0031】
回転ボビン3及び固定ボビン5は樹脂製であって、各々は互いに嵌合可能なカップ形状を有している。詳細には、回転ボビン3は開口部が下向きのカップ形状であり、固定ボビン5は開口部が上向きのカップ形状であり、回転ボビン3は固定ボビン5に回転自在に嵌合されて外観上は固定ボビン5と一体化される。固定ボビン5は支持体4に固定されているので回転シャフト2と一緒に回転しない。なお、固定ボビン5及び回転ボビン3の上下方向は便宜的なものであって、固定ボビン5を上側、回転ボビン3を下側に配置することも可能であることは言うまでもない。
【0032】
回転ボビン3及び固定ボビン5は共に二重の円筒状の側壁構造を有している。詳細には、回転ボビン3は、円形の上面部3a(主面部)と、上面部3aの最外周よりも径方向の内側に設けられた円筒状の外側側面部3bと、外側側面部3bよりも径方向の内側に設けられた内側側面部3cとを備えている。また固定ボビン5は、円形の底面部5a(主面部)と、底面部5aの最外周よりも径方向の少し内側に設けられた外側側面部5bと、外側側面部5bよりも径方向の内側に設けられた内側側面部5cとを備えている。
図4に示すように、回転ボビン3を固定ボビン5に嵌め合わせたとき、回転ボビン3の外側側面部3bと内側側面部3cは、固定ボビン5の外側側面部5bと内側側面部5cとの間のスペース内に配置される。
【0033】
送電コイル6は固定ボビン5の外側側面部5bの外周面に多重に巻回された導線からなり、受電コイル7は回転ボビン3の外側側面部3bに多重に巻回された導線からなる。送電コイル6及び受電コイル7にある程度の太さの導線を用いることにより、大きな電流を流すことができ、大きな電力のワイヤレス伝送が可能となる。
【0034】
送電コイル6及び受電コイル7は回転シャフト2の周囲を囲むように回転シャフト2と同軸配置されている。本実施形態において、受電コイル7は送電コイル6よりも径方向の内側に同心円状に配置されているが、受電コイル7が送電コイル6よりも径方向の外側に同心円状に配置されるように構成してもよい。送電コイル6の開口部は回転シャフト2の延在方向(回転軸Z方向)を向いており、受電コイル7の開口部も回転シャフト2の延在方向(回転軸方向)を向いているので、受電コイル7のコイル軸の向きは送電コイル6のコイル軸の向きと同じである。したがって、受電コイル7の開口部は送電コイル6の開口部と重なっており、受電コイル7と送電コイル6との間には強い磁気結合が生じている。
【0035】
送信コイル8は、回転ボビン3の内側側面部3cの外周面に設けられている。また、受信コイル9は、固定ボビン5の内側側面部5cの外周面に設けられている。送信コイル8及び受信コイル9は、各々の開口部が回転シャフト2の周囲を囲むように回転シャフト2と同軸配置されている。本実施形態において、受信コイル9は送信コイル8よりも径方向の内側に同心円状に配置されているが、受信コイル9が送信コイル8よりも径方向の外側に同心円状に配置されるように構成してもよい。以上の構成により、送信コイル8及び受信コイル9のコイル軸は、回転体の径方向に放射状に延在しており、受信コイル9の開口部は送信コイル8の開口部と径方向に重なり合っている。
【0036】
回転ボビン3及び固定ボビン5の内側及び外側には磁性体(フェライトコア)が設けられている。詳細には、回転ボビン3の内側側面部3c上の送信コイル8に重ねて設けられた中間磁性体10aと、送信コイル8及び受信コイル9よりも径方向の内側(固定ボビン5の内側側面部5cの内側)であって送信コイル8及び受信コイル9と回転シャフト2との間に配置された内側磁性体10bと、固定ボビン5の外側側面部5b上の送電コイル6に重ねて設けられた外側磁性体10cと、回転ボビン3の上面部3aを覆う上面磁性体10dと、固定ボビン5の底面部5aを覆う底面磁性体10eとを備えている。
【0037】
中間磁性体10a(第1磁性体)は、送電コイル6及び受電コイル7の組み合わせからなる電力系の回転トランスT
Pと送信コイル8及び受信コイル9の組み合わせからなる信号系の回転トランスT
Sとの間に配置されて両者を磁気的に分離する役割を果たすものである。この構成によれば、送電コイル6及び受電コイル7と送信コイル8及び受信コイル9との間が磁気的に遮断されるため、電力伝送と信号伝送の互いの影響を一層小さくすることができる。
【0038】
内側磁性体10b(第2磁性体)は、最内周に配置された受信コイル9よりも径方向の内側に配置されており、特に、回転シャフト2の周囲を囲むように回転シャフト2と受信コイル9との間に配置されている。この構成によれば、送信コイル8及び受信コイル9の組み合わせからなる信号系の回転トランスの近傍に金属製の回転シャフト2が配置されたとしても、送信コイル8及び受信コイル9が発生する磁束が回転シャフト2と鎖交することによる渦電流損失を低減することができる。
【0039】
外側磁性体10c(第3磁性体)は、最外周に配置された送電コイル6よりも径方向の外側に配置されている。この構成によれば、送電コイル6及び受電コイル7の組み合わせからなる電力系の回転トランスT
Pの近傍に金属部材が配置されたとしても、送電コイル6及び受電コイル7が発生する磁束が金属部材と鎖交することによる渦電流損失を低減することができる。
【0040】
上面磁性体10d及び底面磁性体10e(第4磁性体)は、外側磁性体10cと共に回転ボビン3及び固定ボビン5からなる円筒状のケース全体を覆う磁性カバーを構成している。この構成によれば、4つのコイルの回転軸方向の両側に磁路を形成することができ、送電コイル6及び受電コイル7が発生する磁束の閉磁路と送信コイル8及び受信コイル9が発生する磁束の閉磁路の両方を確保することができる。したがって、電力損失及び信号損失をさらに低減することができる。
【0041】
回転ボビン3の上面部3a上には上面磁性体10dを介して受電回路基板11bが取り付けられている。受電コイル7の一端及び他端は、受電回路基板11bに接続される。このような接続を実現するためには、回転ボビン3の上面部3aや上面磁性体10dに配線用のスリットや貫通孔が設けられていることが好ましい。
【0042】
固定ボビン5の底面部5a上には底面磁性体10eを介して送電回路基板11aが取り付けられている。送電コイル6の一端及び他端は、送電回路基板11aに接続される。このような接続を実現するためには、固定ボビン5の底面部5aや底面磁性体10eに配線用のスリットや貫通孔が設けられていることが好ましい。
【0043】
図4に示すように、電力系の回転トランスT
Pを構成する送電コイル6及び受電コイル7は、信号系の回転トランスT
Sを構成する送信コイル8及び受信コイル9よりも回転体の径方向の外側に同心円状に配置されている。この構成によれば、送信コイル8及び受信コイル9を送電コイル6及び受電コイル7よりも径方向の外側に配置する場合に比べて、送電コイル6及び受電コイル7の開口サイズ(ループサイズ)を大きくすることができ、より強い磁気結合を得ることができる。また、この構成によれば、第1及び第2コイルのインダクタンスを高めることができる。したがって、回転トランス全体の小型化を図りながら、より大きな電力の非接触伝送が可能となる。
【0044】
図5は、送信コイル8の構成を示す図であって、(a)は展開平面図、(b)は斜視図である。
【0045】
図5(a)に示すように、送信コイル8は、細長い略矩形のフレキシブル基板13(絶縁フィルム)の表層又は内層に導体パターンを印刷したものである。なおフレキシブル基板13も完全な矩形である必要はなく、外周の一部が飛び出したり凹んだりしていてもよい。
【0046】
本実施形態による送信コイル8は約1ターンのループコイルであり、フレキシブル基板13の外周に沿ってできるだけ大きなループを描くように形成されている。詳細には、送信コイル8は、フレキシブル基板13の一方の長辺13aに沿って延びる第1配線部8a、他方の長辺13bに沿って延びる第2配線部8b、一方の短辺13cに沿って延びる第3配線部8c、他方の短辺13dに沿って延びる第4配線部8dを含み、第3配線部8c、第1配線部8a、第4配線部8d及び第2配線部8bがこの順で連続的に形成されたものである。第3配線部8cはフレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1側に位置するループコイルの一方の折り返し部をなしており、第4配線部8dはフレキシブル基板13の長手方向の他端13e
2側に位置するループコイルの他方の折り返し部をなしている。送信コイル8の一端8e
1及び他端8e
2は、不図示のリード線を介して受電回路基板11bに接続される。
【0047】
図5(b)に示すように、送信コイル8のフレキシブル基板13は回転軸Zの周囲を囲むように丸められて円筒体を形成しており、フレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1が他端13e
2に連結されることにより、第3配線部8cは第4配線部8dに近接配置されている。送信コイル8は円筒面に形成されているので、第1配線部8a及び第2配線部8bは円周方向に延在しており、また第3配線部8c及び第4配線部8dは回転軸Zと平行に延在している。
【0048】
送信コイル8は、フレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1側から回転軸Zの周りを時計回りで周回した後、フレキシブル基板13の長手方向の他端13e
2側で折り返し、回転軸Zの周りを反時計回りで周回して、フレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1側に戻る。したがって、回転軸方向に延びる第3配線部8cはループコイルの長手方向の一端側の折り返し部を構成しており、また回転軸方向に延びる第4配線部8dはループコイルの長手方向の他端側の折り返し部を構成している。
【0049】
なお第3配線部8cは、第1配線部8aの一端又は第2配線部8bの一端から回転軸Z方向に折り曲げられたものであればよく、また第4配線部8cは、第1配線部8aの他端又は第2配線部8bの他端から回転軸Z方向に折り曲げられたものであればよく、必ずしも回転軸Zと平行に延在している必要はない。したがって、回転軸Zに対して斜めに配線されたものであってもよい。
【0050】
本実施形態において、第3配線部8cは第4配線部8dに近接配置されるが、両者は回転軸Zと直交する径方向から見て(つまり、円筒面に対して平面視で)重なっておらず、さらに互いに接していない。そのため、円筒面に形成されたループコイルの長手方向(周方向)の一端側の折り返し部と他端側の折り返し部との間には隙間Gが形成されている。なお
図5(b)の送信コイル8は、一対の端子(8e
1,8e
2)が下向きの状態であり、使用時には
図2のように一対の端子が上向きとなるように上下反転して設置される。
【0051】
受信コイル9の基本的な構成は送信コイル8と同じであるが、送信コイル8の内側に収まるように受信コイル9のフレキシブル基板13のほうがより小さく丸められると共に、ループコイルの長手方向の両端の折り返し部どうしが回転軸Zと直交する径方向から見て互いに接するか或いは重なるように構成されている点が送信コイル8と異なっている。
【0052】
図6は、受信コイル9の構成を示す斜視図である。
【0053】
図6に示すように、受信コイル9のフレキシブル基板13は回転軸Zの周囲を囲むように丸められて円筒体を形成しており、フレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1が他端13e
2に連結されることにより、第3配線部9cは第4配線部9dに近接配置されている。受信コイル9は円筒面に形成されているので、第1配線部9a及び第2配線部9bは円周方向に延在しており、また第3配線部9c及び第4配線部9dは回転軸Zと平行に延在している。回転軸方向に延びる第3配線部9cはループコイルの長手方向の一端側の折り返し部を構成しており、また回転軸方向に延びる第4配線部9dはループコイルの長手方向の他端側の折り返し部を構成している。受信コイル9の一端9e
1及び他端9e
2は、不図示のリード線を介して送電回路基板11aに接続される。
【0054】
本実施形態においては、フレキシブル基板13の長手方向の一端13e
1が他端13e
2と深く重なることにより、第3配線部9cは第4配線部9dと回転軸Zの径方向から見て重なっており、両者の間に隙間Gは形成されていない。したがって、第3及び第4配線部9c,9dの形成領域を除いた円筒体の周方向のほぼ全周をループコイルの開口部の形成領域とすることができ、受信コイル9の開口サイズを最大限に広げることができる。
【0055】
図7(a)〜(c)は、送信コイル8と受信コイル9との組み合わせ例を示す図であって、(a)は受信コイル9の長手方向の両端の折り返し部どうしが重なっている場合、(b)及び(c)は受信コイル9の長手方向の両端の折り返し部どうしが重なっていない場合を示している。なお
図7(a)〜(c)のいずれにおいても送信コイル8の長手方向の両端の折り返し部どうしは重なっておらず、両者の間には隙間Gが形成されている。また
図7(d)は、
図7(a)〜(c)に示す送信コイル8が360度回転したときの受信コイル9の出力変化を示すグラフであって、横軸は受信コイル9に対する送信コイル8の回転角度、縦軸は出力電圧(mV)をそれぞれ示している。ここで、グラフの横軸の回転角度がゼロ度の位置(基準角度)は、
図7(a)〜(c)に示すように、送信コイル8の隙間Gと受信コイル9の折り返し部どうしの重なり部分、あるいは受信コイル9の隙間Gとが重なる位置とする。
【0056】
図7(b)のように、受信コイル9のフレキシブル基板13の長手方向の端部どうしがまったく重ならないかあるいは重なりが浅いため、受信コイル9の折り返し部どうしが平面視で重ならず、これにより第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gが形成される場合には、送信コイル8の隙間Gと受信コイル9の隙間Gが重なるタイミングで磁気結合が一時的に強まり、受信コイル9の受信感度が高くなり、信号電圧の出力変動が生じる。このような信号電圧の出力変動は、電力制御に対するノイズとなる。
【0057】
また
図7(c)に示すように、受信コイル9のフレキシブル基板13の長手方向の端部どうしの重なりが深いため、受信コイル9の折り返し部どうしが平面視で重ならず、これにより第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gが形成される場合にも、送信コイル8の隙間Gと受信コイル9の隙間Gが重なるタイミングで信号電圧の出力変動が生じ、さらに
図7(b)の場合よりも出力電圧が全体的に低くなる。
【0058】
しかし、
図7(a)に示すように、受信コイル9の第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gがない場合には、
図7(d)に示すように送信コイル8が360度回転して受信コイル9に対する位置関係が変化しても、送信コイル8及び受信コイル9の開口部の重なり面積の変化を抑えることができ、受信コイル9からの信号電圧の出力変動を低減することができる。したがって、回転体に用いられる回転型磁気結合装置において、回転体の回転量に応じてコイルどうしの位置関係が変化したとしても安定した出力特性を得ることができる。
【0059】
図8(a)〜(f)は、受信コイル9の長手方向の両端の折り返し部を構成する第3配線部9cと第4配線部9dの位置関係の詳細な説明図である。
【0060】
図8(a)に示すように、受信コイル9の第3配線部9cの外側エッジEc
1と第4配線部9dの外側エッジEd
1との距離が離れている場合には、両者の間に隙間Gが形成されるため、上述した送信コイル8の回転に伴う出力変動の問題が生じる。また
図8(b)に示すように、受信コイル9の第3配線部9cが第4配線部9dを超えて深く重なる場合には、第3配線部9cの内側エッジEc
2と第4配線部9dの内側エッジEd
2との間に隙間Gが形成されるため、送信コイル8の回転に伴う出力変動の問題が生じる。
【0061】
一方、
図8(c)及び(d)示すように、受信コイル9の第3配線部9cの一部が第4配線部9dの一部と重なっている場合には、第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gが形成されないので、送信コイル8の回転に伴う信号電圧の出力変動の問題はない。第3配線部9cが第4配線部9dと完全に重なっている場合も同様である。
【0062】
また、
図8(e)に示すように、受信コイル9の第3配線部9cと第4配線部9dが重ならない場合であっても、第3配線部9cの外側エッジEc
1と第4配線部9dの外側エッジEd
1が接する場合には、第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gが形成されないので、送信コイル8の回転に伴う出力変動の問題は生じない。
【0063】
さらに
図8(f)に示すように、受信コイル9の第3配線部9cと第4配線部9dが重ならない場合であっても、第3配線部9cの内側エッジEc
2と第4配線部9dの内側エッジEd
2が接する場合には、第3配線部9cと第4配線部9dとの間に隙間Gが形成されないので、送信コイル8の回転に伴う出力変動の問題は生じない。
【0064】
以上のように、受信コイル9の長手方向の両端に位置するループコイルの折り返し部どうしが互いに接するか或いは重なるように構成されている場合には、送信コイル8の回転に伴う受信コイル9の出力電圧の変動を抑えることができる。
【0065】
図9(a)は、送電コイル6と受電コイル7との磁気結合状態を説明するための略断面図であり、
図9(b)は、送信コイル8と受信コイル9との磁気結合状態を説明するための略断面図である。
【0066】
図9(a)に示すように、電力系の回転トランスT
Pを構成する送電コイル6及び受電コイル7の開口部は回転軸Zの方向を向いており、送電コイル6及び受電コイル7と鎖交する磁束φ
1の向きは矢印D
1で示すように回転軸Zと平行である。
【0067】
一方、
図9(b)に示すように、信号系の回転トランスT
Sを構成する送信コイル8及び受信コイル9の開口部は回転軸Zと直交する径方向を向いており、送信コイル8及び受信コイル9と鎖交する磁束φ
2の向きは、矢印D
2で示すように回転軸Zと直交する径方向である。このように、磁束φ
2の向きは磁束φ
1の向きと直交しているので、電力系及び信号系の回転トランスの一方の磁場が他方の磁場に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0068】
図10は、受信コイル9の第1の変形例を示す図であって、(a)は展開平面図、(b)は斜視図である。
【0069】
図10(a)及び(b)に示すように、受信コイル9は、非常に長いフレキシブル基板13の外周に沿ってループコイルを形成した後、フレキシブル基板13を多重(ここでは二重)に丸めて円筒体を形成したものである。なおフレキシブル基板13の周回数は特に限定されず、何周であってもよい。
図6に示すような受信コイル9を形成する場合には、ループコイルの長手方向の一端側の折り返し部を構成する第3配線部9cと他端側の折り返し部を構成する第4配線部9dとの間に隙間Gが形成されないようにフレキシブル基板13の長手方向の両端の重なりを調整すればよい。このような受信コイル9によれば、ループコイルのインダクタンスを高めて磁気結合を強めることができる。
【0070】
受信コイル9を多重に丸めた円筒体で構成する場合、送信コイル8も受信コイル9と同じ周回数で多重に丸めた円筒体で構成することが好ましい。ここで、
図5に示すような送信コイル8を形成する場合には、ループコイルの長手方向の一端側の折り返し部を構成する第3配線部9cと他端側の折り返し部を構成する第4配線部9dとの間に隙間Gが形成されるようにフレキシブル基板13の長手方向の両端の重なりを調整すればよい。
【0071】
図11は、受信コイル9の第2の変形例を示す図であって、(a)は展開平面図、(b)は受信コイル9の斜視図、(c)は受信コイル9の比較例を示す斜視図である。
【0072】
図11(a)に示すように、受信コイル9は、複数ターン(ここでは3ターン)のループコイルを含む平面スパイラルコイルとして構成されていてもよい。詳細には、平面スパイラルコイルの第1ターンは第1配線部9a
1、第2配線部9b
1、第3配線部9c
1、第4配線部9d
1を含み、第2ターンは第1配線部9a
2、第2配線部9b
2、第3配線部9c
2、第4配線部9d
2を含み、第3ターンは第1配線部9a
3、第2配線部9b
3、第3配線部9c
3、第4配線部9d
3を含む。第3ターンの第2配線部9b
3は、スルーホール導体9t及び引き出し導体9fを介して端子9e
2に接続されている。なお平面スパイラルパコイルのターン数は特に限定されず、何ターンであってもよい。
【0073】
図11(b)に示すように、受信コイル9を3ターンの平面スパイラルコイルで構成する場合には、3本の第3配線部9c
1,9c
2,9c
3のセットと3本の第4配線部9d
1,9d
2,9d
3のセットとが平面視で完全に重なるか或いは接することが好ましい。例えば
図11(c)に示すように第1ターンの第3配線部9c
1と第1ターンの第4配線部9d
1の1本ずつだけが重なる場合、送信コイル8及び受信コイル9の開口部の重なり面積の変化が大きくなるため、送信コイル8の回転に伴う出力電圧の変動を十分に抑制することができない。しかし、3本の第3配線部及び3本の第4配線部のセットどうしが完全に重なるようにした場合には、送信コイル8の回転に伴う信号電圧の出力変動を抑制することができる。
【0074】
受信コイル9を
図11(a)及び(b)のような平面スパイラルコイルとして構成する場合、送信コイル8も受信コイル9と同一ターン数の平面スパイラルコイルとして構成することが好ましい。この場合、送信コイル8は、
図11(c)に示すように第1ターンの第3配線部9c
1と第1ターンの第4配線部9d
1の1本だけが重なるように構成してもよく、3本の第3配線部9c
1,9c
2,9c
3と3本の第4配線部9d
1,9d
2,9d
3とがまったく重ならないように構成してもよい。
【0075】
図12(a)〜(c)は、受信コイル9の第3の変形例を示す平面図であって、特に多層コイルの各層のパターンレイアウトを示すものである。
【0076】
図12(a)〜(c)に示すように、受信コイル9は、積層方向にループコイルが重なるように層状に形成された多層コイルであってもよい。詳細には、1層目13L
1の第1ターンのループコイルは、第1配線部9a
1、第2配線部9b
1、第3配線部9c
1、第4配線部9d
1を含み、2層目13L
2の第2ターンのループコイルは、第1配線部9a
2、第2配線部9b
2、第3配線部9c
2、第4配線部9d
2を含み、3層目13L
3の第3ターンのループコイルは、第1配線部9a
3、第2配線部9b
3、第3配線部9c
3、第4配線部9d
3を含む。第1ターン及び第2ターンのループコイルの端部どうしは第1スルーホール導体9t
1を介して接続され、第2ターン及び第3ターンのループコイルの端部どうしは第2スルーホール導体9t
2を介して接続される。さらに、第3ターンのループコイルの終端は第3スルーホール導体9t
3及び引き出し導体9fを介して端子9e
2に接続される。
【0077】
受信コイル9を
図12のような多層コイルで構成する場合、送信コイル8も受信コイル9と同一ターン数の多層コイルで構成することが好ましい。この場合、送信コイル8は、ループコイルの長手方向の両端の折り返し部を構成する第3配線部9c
1,9c
2,9c
3と第4配線部9d
1,9d
2,9d
3との間に隙間Gが形成されるようにフレキシブル基板13の長手方向の両端の重なりを調整すればよい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態による回転型磁気結合装置1は、送信コイル8(第1コイル)及び受信コイル9(第2コイル)それぞれの開口部が回転体の回転軸Zの周囲を囲むように配置されたループコイルであり、ループコイルは、回転体の周方向に延在する第1及び第2配線部9a,9bと、第1配線部9aの一端又は第2配線部9bの一端から回転軸Z方向に折り曲げられた第3配線部9cと、第1配線部9aの他端又は第2配線部9bの他端から回転軸方向に折り曲げられた第4配線部9dとを含み、送信コイル8及び受信コイル9の少なくとも一方(例えば受信コイル9)の第3配線部9cと第4配線部9dとが回転軸Zと直交する径方向から見て互いに接するか或いは重なるように構成されているので、回転体の回転に伴って送信コイル8及び受信コイル9の位置関係が変化しても、送信コイル8及び受信コイル9の開口部の重なり面積の変化を抑えることができ、送信コイル8及び受信コイル9間の伝達比の変化を抑制することができる。したがって、回転体に用いられる回転型磁気結合装置1において、回転体の回転によらず電力又は信号の安定した出力特性を得ることができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、
図13(a)に示すように送信コイル8が隙間Gを有する構造、受信コイル9が隙間Gを有しない構造としたが、本発明はこのような構造に限定されず、例えば
図13(b)に示すように送信コイル8が隙間Gを有しない構造、受信コイル9が隙間Gを有する構造であってもよい。さらにまた、
図13(c)に示すように送信コイル8及び受信コイル9の両方が隙間Gを有しない構造であってもよい。
図13(c)に示すように送信コイル8及び受信コイル9の両方が隙間Gを有しない構造であれば、送信コイル8及び受信コイル9の開口部の重なり面積の変化を十分に抑えることができ、回転体の回転に起因する受信コイル9の出力電圧の変動をさらに抑制すると共に、両者の磁気結合を強めて伝送効率をさらに高くすることが可能である。
【0081】
また、上記実施形態においては、コイル6、7からなる回転トランスを電力伝送用、コイル8、9からなる回転トランスを信号伝送用としているが、コイル6、7からなる回転トランスとコイル8、9からなる回転トランスの両方を電力伝送用としてもよい。さらには、コイル6、7からなる回転トランスとコイル8、9からなる回転トランスの両方を信号伝送用とすることも可能である。
【0082】
また、上記実施形態においては、電力系の回転トランスT
Pを構成する送電コイル6及び受電コイル7が信号系の回転トランスT
Sを構成する送信コイル8及び受信コイル9よりも回転体の径方向の外側に配置されているが、径方向の内側に配置することも可能である。しかし、送信コイル8及び受信コイル9よりも径方向の外側に配置した場合には、送電コイル6及び受電コイル7の開口サイズを大きくすることができるので、より大きな電力を伝送することができる。
【0083】
また、上記実施形態において、中間磁性体10aは、電力系と信号系に共通の磁路を提供する単一の磁性体であるが、中間磁性体10aを2つに分け、一方の中間磁性体を電力系の回転トランスT
P用の磁路、他方の中間磁性体を信号系の回転トランスT
S用の磁路とすることも可能である。