特許第6493358号(P6493358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493358
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】移植ハンド
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/08 20060101AFI20190325BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20190325BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A01G9/08 610B
   A01G9/00 C
   A01G31/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-212842(P2016-212842)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-68222(P2018-68222A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】和田 亨
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】東田 哲
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕二
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−242652(JP,A)
【文献】 特開2000−166408(JP,A)
【文献】 特開平11−318222(JP,A)
【文献】 特開2000−093027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を移植する移植装置が備える移植ハンドであって、
前記苗が植え付けられた苗床片を把持可能な一対のアームを備え、
前記アームは、下方に向けて気体を噴出するための噴出口を有し、
前記噴出口は、上面視した場合に前記アームにより挟み込まれた前記苗床片の外周を囲うように設けられており、
前記噴出口から噴出した前記気体は、上下方向において前記苗床片を射影した領域よりも外側にはみ出る前記苗の根に対して、当該根を前記領域内に吹き寄せるように吹き付けられる移植ハンド。
【請求項2】
前記アームは、下方に向けて延びる複数の爪を有し、前記爪が前記苗床片を挟み込むことで前記苗床片を把持する請求項1に記載の移植ハンド。
【請求項3】
前記爪は、一対の前記アームにおいて互いに対向するように二本ずつ設けられ、前記アームが前記苗床片を把持する際に、前記アームが延びる方向において前記苗床片の端部寄りとなる部分と接触するように設けられている請求項2に記載の移植ハンド。
【請求項4】
前記爪は、前記苗の移植先のパネルに設けられた穴の縁に対応するように面取りされた面取り部を有している請求項2又は請求項3に記載の移植ハンド。
【請求項5】
前記アームは、上下方向に亘って延びる凹部を有し、
前記凹部は、一対の前記アームにおいて互いに対向するように設けられ、前記アームが前記苗床片を把持する際に、前記アームが延びる方向において前記苗床片の中央部分と対応する位置に設けられている請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の移植ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を移植する移植装置が備える移植ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載の移植装置が知られている。この移植装置は、例えば水耕栽培される苗等が植え付けられたスポンジ状の苗床片をチャック(把持)するチャックアーム(移植ハンド)を備え、チャックアームが定植パネルに支持される苗床片を育用パネルに設けられた穴に上方から挿入することで移植する。通常、こうした苗床片においては苗の根の一部が苗床片の下面から外方へ広がるように延びているため、外方へ広がった苗の根を育用パネルの穴に案内しながら苗を移植する必要がある。そこで、特許文献1の移植装置は、育用パネルの穴を介して苗の根を下方から吸引する吸引装置を備えている。すなわち、吸引装置により苗の根を引き揃えつつ、チャックアームが苗床片を育用パネルに挿入して苗を移植する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−166408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の移植装置においては、チャックアームが苗床片を育用パネルに移植する際、外方へ広がった苗の根を引き揃えるために吸引装置が育用パネルの穴から吸引し続ける。そのため、苗床片の下面から外方へは広がらずに苗床片の真下に向けて延びた根の部分も含めて、苗の根全体が吸引装置の吸引によって下方に引っ張り続けられるため、苗を移植する際に苗の根に大きく負荷がかかる虞がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、苗を移植する際に苗の根にかかる負荷を低減できる移植ハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する移植ハンドは、苗を移植する移植装置が備える移植ハンドであって、前記苗が植え付けられた苗床片を把持可能な一対のアームを備え、前記アームは、下方に向けて気体を噴出するための噴出口を有し、前記噴出口は、前記アームにより挟み込まれた前記苗床片の外周を囲うように設けられている。
【0007】
この構成によれば、アームが苗床片を把持した状態で噴出口から気体が噴出されると、噴出された気体が苗床片に沿って下方へ流れる。このとき、噴出口から噴出される気体は、苗床片の下面から延びる苗の根のうち苗床片から外方に向けて広がる一部の根に対して作用する。そして、苗床片から外方に広がる苗の根は、噴出された気体によって、苗床片の下方に向けて吹き寄せられる。すなわち、苗の根全体に気体を吹き付けることなく苗の根を下方に向けて引き揃えることができる。したがって、苗を移植する際に苗の根にかかる負荷を低減できる。
【0008】
上記移植ハンドにおいて、前記アームは、下方に向けて延びる複数の爪を有し、前記爪が前記苗床片を挟み込むことで前記苗床片を把持することが好ましい。
この構成によれば、例えば、移植先のパネルに設けられた穴に対して苗床片を上方から挿入して移植するような場合において、下方に延びる爪をその穴に挿入させることで、苗床片をスムーズに穴に挿入することができる。
【0009】
上記移植ハンドにおいて、前記爪は、一対の前記アームにおいて互いに対向するように二本ずつ設けられ、前記アームが前記苗床片を把持する際に、前記アームが延びる方向において前記苗床片の端部寄りとなる部分と接触するように設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、通常、苗は苗床片の中央部分に植え付けられているため、アームが苗床片を把持する際には、苗を避けるように爪が苗床片に接触する。すなわち、爪が接触することによって苗が傷ついてしまう虞を低減できる。
【0011】
上記移植ハンドにおいて、前記爪は、前記苗の移植先のパネルに設けられた穴の縁に対応するように面取りされた面取り部を有していることが好ましい。
この構成によれば、例えば、移植先のパネルに設けられた穴に対して苗床片を上方から挿入して移植するような場合において、爪に面取り部が設けられていない構成と比較して、爪が穴の縁と接触してしまう虞を低減できる。
【0012】
上記移植ハンドにおいて、前記アームは、上下方向に亘って延びる凹部を有し、前記凹部は、一対の前記アームにおいて互いに対向するように設けられ、前記アームが前記苗床片を把持する際に、前記アームが延びる方向において前記苗床片の中央部分と対応する位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、通常、苗は苗床片の中央部分に植え付けられているため、アームが苗床片を把持する際には、凹部により苗を避けるようにアームが苗床片に接触する。すなわち、アームが接触することによって苗が傷ついてしまう虞を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、苗を移植する際に苗の根にかかる負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】移植ハンドを備える移植装置の一実施形態を模式的に示す正面図。
図2】把持部の斜視図。
図3】移植ハンドの上面図。
図4図3における4−4線矢視断面図。
図5】移植ハンドが苗床片を把持しているときの断面図。
図6】移植ハンドが苗床片を第2パネルの穴に挿入しているときの断面図。
図7】移植ハンドの変形例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、移植ハンドを備える移植装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、移植装置11は、植物の苗Sを移植する移植機構12と、苗Sを搬送する搬送機構13とを備えている。なお、本実施形態における移植装置11は、例えばウレタンなどで構成されたスポンジ状のブロックである苗床片Nに植え付けられた苗Sを苗床片Nごと移植する装置である。
【0017】
搬送機構13は、移植前の苗Sが複数載置された第1パネル14を搬送する第1搬送部15と、苗Sの移植先である第2パネル16を搬送する第2搬送部17とを有している。第1パネル14は、トレイ状に設けられ、その底壁に上下方向Zに貫通する複数の溝18を有している。そして、第1パネル14に載置される苗Sは、溝18を介して苗床片Nの下面から苗Sの根Neが下方に延びている。一方、第2パネル16は、板状に設けられ、その上面から下面に亘って上下方向Zに貫通する複数の穴19を有している。すなわち、移植機構12は、第1パネル14に載置された苗床片Nを第2パネル16の穴19に挿入することで、第1パネル14から第2パネル16へ苗Sを移植する。なお、第2パネル16に設けられる穴19は、円形状に開口している。
【0018】
第1搬送部15及び第2搬送部17は、例えばコンベヤなどで構成され、互いに隣り合うように配置されている。また、第1搬送部15及び第2搬送部17は、それぞれ第1パネル14及び第2パネル16を互いにすれ違う方向に搬送している。なお、第1搬送部15及び第2搬送部17は、それぞれ第1パネル14及び第2パネル16を互いに同一の方向に搬送する構成でもよい。ここで、本実施形態においては、搬送機構13が第1パネル14及び第2パネル16を搬送する方向と沿う方向を奥行方向Xと呼称する。
【0019】
移植機構12は、苗床片Nを把持する把持部20と、把持部20を移動させる移動機構30とを有している。移動機構30は、奥行方向X及び上下方向Zと交差する幅方向Yにおいて搬送機構13を挟み込むように配置される一対のフレーム31と、搬送機構13を跨ぐように一対のフレーム31に架設される第1レール部32と、第1レール部32に対して移動可能に取り付けられる第1スライダー33とを有している。また、移動機構30は、第1スライダー33に対して第1レール部32が位置する側とは反対側に取り付けられる第2レール部34と、第2レール部34に対して移動可能に取り付けられる第2スライダー35とを有している。第1レール部32は幅方向Yに沿って延び、第1スライダー33は第1レール部32に沿って幅方向Yに移動可能とされている。また、第2レール部34は上下方向Zに延び、第2スライダー35は第2レール部34に沿って上下方向Zに移動可能とされている。
【0020】
そして、この第2スライダー35には、奥行方向X及び上下方向Zに沿ってL字状に屈曲する金具36を介して把持部20が取り付けられている。すなわち、把持部20は、第2レール部34及び第2スライダー35によって上下方向Zに移動可能とされている。また、把持部20は、第1レール部32及び第1スライダー33によって、第2レール部34及び第2スライダー35とともに幅方向Yに移動可能とされている。まとめると、把持部20は、搬送機構13の上方において、移動機構30により幅方向Y及び上下方向Zに沿って移動自在とされている。
【0021】
図2に示すように、把持部20は、苗床片Nを把持可能な一対のアーム41を有する移植ハンド40と、移植ハンド40を駆動させる駆動部21とを有している。駆動部21は、例えばアクチュエーターなどで構成され、その上面には、第2スライダー35と把持部20とを固定する金具36が図示しないねじにより取り付けられている。また、駆動部21は、移植ハンド40に駆動力を伝達する板状の伝達部材22を介してそれぞれのアーム41と接続されている。そして、駆動部21は、一対のアーム41が幅方向Yにおいて対称的に移動するようにアーム41同士の距離を変化させる。すなわち、移植ハンド40は、駆動部21がアーム41同士の距離を小さくするようにアームの位置を変位させることで苗床片Nを把持する。なお、駆動部21から延びる伝達部材22は、図示しないねじによってアーム41とねじ止めされている。
【0022】
移植ハンド40を構成するアーム41は、奥行方向Xに沿って延びるように設けられ、伝達部材22と接続される接続部42と、接続部42において駆動部21が位置する側とは反対側となる端面43の下部から延びるように設けられる延伸部44とを有している。なお、本実施形態におけるアーム41は、接続部42及び延伸部44が互いにねじ止めされて構成されているが、接続部42及び延伸部44が一体的に形成される構成でもよい。
【0023】
アーム41を構成する延伸部44は、その下面45から下方に向けて延びる複数の爪46を有している。本実施形態における爪46は、一対のアーム41において互いに対向するように二本ずつ設けられ、各アーム41において奥行方向Xで重なるように設けられている。また、爪46は、延伸部44において、アーム41の延びる方向である奥行方向Xにおいて接続部42が位置する基端側とは反対側の先端側寄りとなる位置に設けられている。また、爪46は、一対のアーム41を構成するそれぞれの延伸部44において互いに対向する面である内側面47と、爪46同士の互いに対向する面とが連続するように延びている。また、爪46は、角柱状に設けられ、第2パネル16において円形状に開口する穴19の縁に対応するように面取りされた面取り部48を有している。そして、一対のアーム41は、幅方向Yにおいて対向する爪46同士で苗床片Nを挟み込むことで苗床片Nを把持する。
【0024】
ここで、苗Sを移植する移植ハンド40としては、苗Sに極力負荷をかけないように苗床片Nを把持することが好ましい。通常、こうした苗床片Nにおいては、その中央部分に苗Sが植え付けられている。そのため、本実施形態における移植ハンド40は、アーム41が苗床片Nを把持する際に、爪46が奥行方向Xにおいて苗床片Nの端部寄りとなる部分と接触するように構成されている。
【0025】
また、アーム41は、延伸部44において爪46が設けられるその先端側寄りとなる位置に、上下方向Zにおいて延伸部44の上面49から下面45に亘って延びる凹部50を有している。凹部50は、幅方向Yにおいて内側面47から凹むように設けられている。
【0026】
また、凹部50は、奥行方向Xにおいて二本の爪46の間となる位置に設けられ、一対のアーム41において互いに対向するように設けられている。すなわち、凹部50は、アーム41が苗床片Nを把持する際に、奥行方向Xにおいて苗床片Nの中央部分と対応する位置に設けられている。上述したように、通常、こうした苗床片Nにおいてはその中央部分に苗Sが植え付けられているため、苗床片Nの上面においてその中央部分から苗Sの芽が延びている。要するに、凹部50は、アーム41が苗床片Nを把持する際に、アーム41が苗Sの芽を挟み込まないようにするために設けられている。まとめると、アーム41は、爪46及び凹部50により、苗Sにかかる負荷を低減しつつ苗床片Nを把持することが可能とされている。
【0027】
図3及び図4に示すように、移植ハンド40が有するアーム41の延伸部44には、例えば空気などの気体を噴出するための噴出口51が設けられている。噴出口51は、延伸部44の下面45に開口し、上面視した場合にアーム41の爪46及び凹部50を囲うように略U字状に延びる細いスリットとして設けられている。ここで、本実施形態における苗床片Nは、直方体状をなしているため、上面視すると矩形状をなしている。そのため、本実施形態における噴出口51は、アーム41が苗床片Nを把持した状態において上面視すると、苗床片Nよりも一回り大きな矩形状をなすように設けられている。すなわち、噴出口51は、アーム41が苗床片Nを把持する際にその苗床片Nの外周を囲うように設けられている。
【0028】
また、アーム41の延伸部44には、噴出口51から噴出する気体を供給するための供給口52がそれぞれ設けられている。供給口52は、延伸部44の上面49において二つずつ開口し、延伸部44内に設けられた気体流路53を介して噴出口51と連続している。なお、この気体流路53も、アーム41を上面視した際に、噴出口51と同様に略U字状をなすように設けられている。供給口52には、図示しないチューブが接続され、チューブを介して気体が供給される。そして、供給口52を通じて供給された気体は、噴出口51から下方に向けて噴出される。噴出口51は、供給口52に対し、その開口が小さく形成されることで、気体の流れる流路として抵抗が高くなるように構成されている。そのため、供給口52から供給される気体は、延伸部44内で加圧されたうえで噴出口51から噴出される。
【0029】
次に、上記のように構成された移植ハンド40の作用について説明する。
図5に示すように、移植ハンド40が苗Sを移植する際、アーム41の爪46が苗床片Nを上方から挟み込んで把持する。このとき、苗床片Nは、爪46の接触に伴って弾性変形する。また、アーム41の延伸部44に設けられた噴出口51からは、供給口52から供給される気体Aが下方に向けて噴出している。噴出口51から噴出される気体Aは、苗床片Nの外周面に沿うようにして下方へ流れる。この気体Aは、苗床片Nの下面から延びる苗Sの根Neのうち苗床片Nから外方に広がる一部の根Neに作用する。すなわち、上下方向Zにおいて苗床片Nを射影した領域を領域Rとすると、この領域Rよりも外側にはみ出る苗Sの根に対して、気体Aが吹き付けられる。そして、気体Aが吹き付けられた苗Sの根Neは、領域R内に収まるように下方に向けて吹き寄せられる。具体的には、図5において二点鎖線で示すように、領域Rよりも外側にはみ出る苗Sの根Neが、気体Aが吹き付けられることで領域R内に収まるように吹き寄せられる。要するに、噴出口51から噴出する気体Aは、所謂エアカーテンの役割を有し、苗Sの根Neが領域R外へはみ出さないように苗Sの根Neを下方に向けて引き揃える。
【0030】
図6に示すように、アーム41に把持される苗床片Nは、爪46とともに第2パネル16の穴19に上方から挿入される。このとき、苗床片Nの下面から延びる苗Sの根Neが下方に向けて引き揃えられているため、苗床片Nを穴19に挿入する際に、苗Sの根Neが穴19の縁に接触する虞が低減される。そして、移植ハンド40は、苗床片Nを穴19に挿入した後、アーム41同士の距離が大きくなるように変位して苗床片Nの把持を解除する。アーム41による苗床片Nの把持が解除されると、苗床片Nは、穴19内において苗床片N自身の復元力により元の形状に復帰し、第2パネル16に保持される。なお、苗Sを移植する際、アーム41の爪46が第2パネル16の穴19の縁に接触することがある。この場合、角柱状をなす爪46には、穴19の縁に対応するように面取りされた面取り部48が設けられているため、苗Sを移植する際に爪46が穴19の縁に接触する虞が低減される。
【0031】
上記の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)アーム41が苗床片Nを把持した状態で噴出口51から気体Aが噴出されると、噴出された気体Aが苗床片Nに沿って下方へ流れる。このとき、噴出口51から噴出される気体Aは、苗床片Nの下面から延びる苗Sの根Neのうち苗床片Nから外方に向けて広がる一部の根Neに対して作用する。そして、苗床片Nから外方に広がる苗Sの根Neは、噴出された気体Aによって、苗床片Nの下方に向けて吹き寄せられる。すなわち、苗Sの根Ne全体に気体Aを吹き付けることなく苗Sの根Neを下方に向けて引き揃えることができる。したがって、苗Sを移植する際に苗Sの根Neにかかる負荷を低減できる。
【0032】
(2)移植先の第2パネル16に設けられた穴19に対して苗床片Nを上方から挿入して苗Sを移植する際、アーム41の先端から下方に延びる爪46をその穴19に挿入させることで、苗床片Nをスムーズに穴19に挿入することができる。
【0033】
(3)爪46は、アーム41が苗床片Nを把持する際に、奥行方向Xにおいて苗床片Nの端部寄りとなる部分と接触するように設けられている。通常、苗Sは苗床片Nの中央部分に植え付けられているため、アーム41が苗床片Nを把持する際には、苗Sを避けるように爪46が苗床片Nに接触する。すなわち、爪46が接触することによって苗Sが傷ついてしまう虞を低減できる。
【0034】
(4)第2パネル16の穴19の縁に対応するように面取りされた面取り部48が爪46に設けられている。そのため、第2パネル16に設けられた穴19に対して苗床片Nを上方から挿入して苗Sを移植する場合、爪46に面取り部48が設けられていない構成と比較して、爪46が穴19の縁に接触してしまう虞を低減できる。
【0035】
(5)凹部50は、アーム41が苗床片Nを把持する際に、奥行方向Xにおいて苗床片Nの中央部分と対応する位置に設けられている。通常、苗Sは苗床片Nの中央部分に植え付けられているため、アーム41が苗床片Nを把持する際には、凹部50により苗Sを避けるようにアーム41が苗床片Nに接触する。すなわち、アーム41が接触することによって苗Sが傷ついてしまう虞を低減できる。
【0036】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。また、以下の変更例は、適宜組み合わせてもよい。
・爪46は、円柱状に設けられていてもよい。この場合、面取り部48は不要となる。
【0037】
・爪46は、各アーム41において三本以上設けられていてもよいし、一本でもよい。
・爪46は、一対のアーム41において幅方向Yで互いに対向するように設けられていなくともよい。各アーム41に設けられる爪46は、奥行方向Xで互い違いになるように設けられてもよい。
【0038】
・爪46は、それぞれのアーム41において奥行方向Xで重なるように設けられていなくともよい。
・アーム41に爪46を設けず、アーム41の延伸部44によって苗床片Nを挟み込む構成でもよい。
【0039】
図7に示すように、噴出口51は、苗床片Nの外周を囲うように延びる細いスリットに限らず、苗床片Nの外周を囲うように間隔をあけて開口する複数の細孔で構成されていてもよい。
【0040】
・噴出口51から噴出される気体Aは、空気以外でもよい。
・アーム41が把持する苗床片Nは、例えば球形状であってもよい。この場合、アーム41が有する噴出口51は、上面視した場合に苗床片Nを囲うべく円形状をなすように設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
11…移植装置、19…穴、40…移植ハンド、41…アーム、46…爪、48…面取り部、50…凹部、51…噴出口、A…気体、N…苗床片、Ne…根、S…苗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7