【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0035】
走査型電子顕微鏡(SEM)観察:
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000を用い、倍率100000倍、電圧2Vで観察した。
判定;
I. ドライエッチング残渣の除去状態
E:ドライエッチング残渣が完全に除去された。
P:ドライエッチング残渣の除去が不十分であった。
E判定を合格とした。
II. タングステンのダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンに変化が見られなかった。
G:タングステンの表面に少し荒れが見られた。
P:タングステンに大きな穴が見られた。
EおよびG判定を合格とした。
III. コバルトのダメージ
E:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてコバルトに僅かに変化が見られた。
P:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られた。
EおよびG判定を合格とした。
IV. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:Low−k膜がわずかにくぼんでいた。
P:Low−k膜が大きくくぼんでいた。
EおよびG判定を合格とした。
V. ハードマスクのダメージ
E:洗浄前と比べてハードマスクに変化が見られなかった。
P:ハードマスクに剥がれまたは形状の変化が見られた。
E判定を合格とした。
【0036】
(実施例1〜34)
試験には、
図1と
図2に示したような配線構造の断面を有する半導体素子を使用し、洗浄効果を調べた。ドライエッチング残渣1を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)の除去状態とタングステン3(
図2)、コバルト4(
図1)、Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)のダメージを判断した。なお、
図1に示す半導体素子は、銅などの配線材料8を囲むようにバリアメタル7で覆い、コバルト4でキャップした構成となっている。
【0037】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜34においては、タングステン3、コバルト4、Low−k膜2、及びハードマスク6のダメージを防ぎながら、ドライエッチング残渣1を完全に除去していることがわかる。また、いずれの実施例においても、バリアメタル7ならびにバリア絶縁膜5にはダメージが見られなかった。
【0038】
(比較例1)
水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水53.491質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2A)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかったものの、Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)、コバルト4(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだ。よって、比較例1の洗浄液2Aは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0039】
(比較例2)
水酸化カリウム1.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水68.491質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2B)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかったものの、Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)、コバルト4(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだ。よって、比較例2の洗浄液2Bは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0040】
(比較例3)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水81.991質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2C)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できた。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、薬液処理後にコバルト4上に異物の発生が見られた。よって、比較例3の洗浄液2Cは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0041】
(比較例4)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、及び水52質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2D)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例4の洗浄液2Dは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0042】
(比較例5)
水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、水酸化カリウム0.02質量%、2−フェニル−4−メチルイミダゾール2質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル20質量%、及び水67.98質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2E)(先行技術文献に記載した特許文献1に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例5の洗浄液2Eは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0043】
(比較例6)
水酸化カリウム0.2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム15質量%、グリセリン30質量%、ピラゾール0.1質量%、及び水54.7質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2F)(先行技術文献に記載した特許文献2に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例6の洗浄液2Fは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0044】
(比較例7)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、及び水51.9質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2G)(先行技術文献に記載した特許文献3に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例7の洗浄液2Gは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0045】
(比較例8)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、及び水51.8質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2H)(先行技術文献に記載した特許文献4に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例8の洗浄液2Hは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0046】
(比較例9)
水酸化テトラメチルアンモニウム12質量%、過酸化水素5質量%、水酸化カリウム2質量%、トリエタノールアミン35質量%、及び水46質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2I) (先行技術文献に記載した特許文献5に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できたものの、Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)、タングステン3(
図2)及びコバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例9の洗浄液2Iは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0047】
(比較例10)
水酸化カリウム2.6質量%、過酸化水素0.9質量%、オルト過ヨウ素酸2質量%、エチレンジアミン0.03質量%、ジエチレントリアミン0.01質量%、サーフィノール465 0.02質量%、セチルトリメチルアンモニウムクロリド0.02質量%、N−メチルピロリドン10質量%、及び水84.42質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2J)(先行技術文献に記載した特許文献6に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できた。Low−k膜2(
図1と
図2)とコバルト4(
図1)のダメージは防いだものの、タングステン3(
図2)とハードマスク6(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例10の洗浄液2Jは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0048】
(比較例11)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、ベンゾトリアゾール0.12質量%、硫酸銅質量0.0008質量%、及び水51.879質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2K)(先行技術文献に記載した特許文献7に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できた。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)及びタングステン3(
図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(
図1)にダメージが見られた。よって、比較例11の洗浄液2Kは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0049】
(比較例12)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、及び水84.42質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2L)(先行技術文献に記載した特許文献8に相当)を用いて
図1と
図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。Low−k膜2(
図1と
図2)、ハードマスク6(
図1)、タングステン3(
図2)及びコバルト4(
図1)のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1(
図1と
図2)は除去できなかった。よって、比較例12の洗浄液2Lは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0050】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
K
2SO
4:硫酸カリウム
K
2CO
3:炭酸カリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
Cs
2CO
3:炭酸セシウム
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEAH:水酸化テトラエチルアンモニウム
TPAH:水酸化テトラプロピルアンモニウム
TBAH:水酸化テトラブチルアンモニウム
【0051】
【表2】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステン3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステン3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ