特許第6493396号(P6493396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6493396-半導体素子の洗浄液及び洗浄方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493396
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】半導体素子の洗浄液及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190325BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 7/38 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20190325BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20190325BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
   C11D7/50
   C11D7/32
   C11D7/38
   C11D17/08
   C11D7/06
   C11D7/12
   C11D7/10
   H01L21/308 G
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-516318(P2016-516318)
(86)(22)【出願日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2015061948
(87)【国際公開番号】WO2015166826
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-95321(P2014-95321)
(32)【優先日】2014年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊行
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲司
【審査官】 土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−075285(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/101907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/06
C11D 7/18
C11D 7/32
C11D 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率膜と、コバルト、コバルト合金及びタングステンプラグの少なくとも1種とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、ハードマスク、低誘電率膜及びバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子に、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001質量%以上0.01質量%未満、および水を含む洗浄液を用いて、ドライエッチング残渣を除去することを特徴とする半導体素子の洗浄方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属化合物が、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、およびヨウ化セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記4級アンモニウム水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1または2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記水溶性有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
低誘電率膜と、コバルト、コバルト合金及びタングステンプラグの少なくとも1種とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、ハードマスク、低誘電率膜及びバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子を洗浄して、ドライエッチング残渣を除去するための洗浄液であって、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001質量%以上0.01質量%未満および水を含む、前記洗浄液。
【請求項6】
前記洗浄液がアルカノールアミンを含まない、請求項に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記洗浄液が、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001〜0.1質量%および水のみを含む、請求項またはに記載の洗浄液。
【請求項8】
前記アルカリ金属化合物が、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、およびヨウ化セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項からのいずれかに記載の洗浄液。
【請求項9】
前記4級アンモニウム水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項からのいずれかに記載の洗浄液。
【請求項10】
前記水溶性有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項からのいずれかに記載の洗浄液。
【請求項11】
低誘電率膜と、コバルト、コバルト合金及びタングステンプラグの少なくとも1種とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、ハードマスク、低誘電率膜及びバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子を、請求項5〜10のいずれかに記載の洗浄液を用いて洗浄して、ドライエッチング残渣を除去することを含む、基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造工程において、低誘電率膜、タングステンなどの配線材料、コバルト、ハードマスク、バリアメタル、及びバリア絶縁膜のダメージを抑制し、被処理表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体素子の製造は、通常、シリコンウェハなどの素子上に、導電用配線素材となる金属膜などの導電薄膜や、導電薄膜間の絶縁を行う目的の層間絶縁膜を形成した後、その表面にフォトレジストを均一に塗布して感光層を設け、これに選択的に露光し、現像処理を実施し所望のレジストパターンを作製する。次いでこのレジストパターンをマスクとして層間絶縁膜にドライエッチング処理を施すことにより、該薄膜に所望のパターンを形成する。そして、レジストパターンおよびドライエッチング処理により発生した残渣物(以下、「ドライエッチング残渣」と称す)などを酸素プラズマによるアッシング法や洗浄液を用いる洗浄方法などにより完全に除去するという一連の工程が一般的にとられている。
【0003】
近年、デザインルールの微細化が進み、信号伝送遅延が高速度演算処理の限界を支配するようになってきた。そのため、導電用配線素材がアルミニウムから、電気抵抗のより低い銅へと移行し、層間絶縁膜はシリコン酸化膜から低誘電率膜(比誘電率が3より小さい膜。以下、「Low-k膜」と称す)への移行が進んでいる。しかし、配線の微細化が進行するに従い、配線を流れる電流密度が増大することにより銅のエレクトロマイグレーションが起こりやすくなる。そのため銅に代わる信頼性の高い配線材料としてコバルトを用いた技術が提唱されている。また、銅のキャップメタルとしてコバルト合金を導入することにより、銅のエレクトロマイグレーションが抑制できるとの報告もある。また、0.2μm以下の配線パターンではレジストを膜厚1μmで塗布すると、配線パターンのアスペクト比(レジスト膜厚をレジスト線幅で割った比)が大きくなりすぎ、配線パターンが倒壊するなどの問題が生じている。これを解決するために、実際に形成したいパターン膜とレジスト膜の間にチタン(Ti)系やシリコン(Si)系の膜(以下、「ハードマスク」と称す)を挿入し、一旦レジストパターンをハードマスクにドライエッチングで転写し、その後、このハードマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより実際に形成したい膜にパターンを転写するハードマスク法が使われることがある。この方法は、ハードマスクをエッチングするときのガスと、実際に形成したい膜をエッチングするときのガスとを換えることができる。ハードマスクをエッチングするときにはレジストとの選択比がとれ、実際の膜をエッチングするときにはハードマスクとの選択比がとれるガスを選ぶことができるので、薄いレジストで、パターンを形成できる利点がある。また、基板との接続を行うコンタクトプラグには、タングステンでできたコンタクトプラグ(以下、「タングステンプラグ」と称す)が使用される。
【0004】
ドライエッチング残渣を酸素プラズマで除去する場合、Low-k膜が酸素プラズマなどに曝されてダメージを受け、電気特性が著しく劣化するという問題が生じる。そのため、Low-k膜が使用される半導体素子製造においては、Low-k膜、コバルト、バリアメタル、及びバリア絶縁膜のダメージを抑制しつつ、酸素プラズマ工程と同程度にドライエッチング残渣を除去する方法が求められる。さらにコンタクトプラグが露出する層でも使用するために、タングステンのダメージを抑制することも求められる場合がある。また、ハードマスクを用いる場合には、ハードマスクに対するダメージも抑制しなければならない。
【0005】
特許文献1には、無機塩基と4級アンモニウム水酸化物と有機溶剤と防食剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではドライエッチング残渣を十分に除去することができない(後述する比較例5を参照)。
【0006】
特許文献2には、KOHと4級アンモニウム水酸化物と有機溶剤とピラゾールと水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではドライエッチング残渣を十分に除去することができない(後述する比較例6を参照)。
【0007】
特許文献3には、ベンゾトリアゾールなどを用いたコバルトの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ドライエッチング残渣を十分に除去することができない(後述する比較例7を参照)。
【0008】
特許文献4には、5−アミノ−1H−テトラゾールと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの組み合わせを用いたコバルトの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ドライエッチング残渣を十分に除去することができない(後述する比較例8を参照)。
【0009】
特許文献5には、酸化剤と4級アンモニウム水酸化物とアルカノールアミンとアルカリ金属水酸化物と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではドライエッチング残渣を除去することができたが、タングステン、コバルトLow−k膜とハードマスクのダメージを抑制することができず、本目的には使用できない(後述する比較例9を参照)。
【0010】
特許文献6には、酸化剤とアミンと4級アンモニウム水酸化物とアルカリ金属水酸化物と有機溶剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではタングステンとハードマスクのダメージを十分抑制することができず、本目的には使用できない(後述する比較例10を参照)。
【0011】
特許文献7には、銅(II)イオンとベンゾトリアゾールなどを用い、コバルト上に腐食防止膜を形成するコバルトの腐食防止方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ドライエッチング残渣を除去することができたが、コバルトのダメージを十分抑制することはできない(後述する比較例11を参照)。
【0012】
特許文献8には、フッ素化合物と金属腐食防止剤と不動態化剤と水を含む洗浄液による配線形成方法が提案されている。しかし、この洗浄液ではドライエッチング残渣を十分に除去することができないため、本目的には使用できない(後述する比較例12を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−118101号公報
【特許文献2】国際公開第2013−187313号公報
【特許文献3】特開2011−91248号公報
【特許文献4】特開2012−182158号公報
【特許文献5】特開2009−75285号公報
【特許文献6】特開2009−231354号公報
【特許文献7】特開平6−81177号公報
【特許文献8】特開2013−533631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、半導体回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステンプラグ、ハードマスク、バリアメタル、及びバリア絶縁膜のダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する洗浄液及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の本発明によって上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 低誘電率膜と、コバルト、コバルト合金及びタングステンプラグの少なくとも1種とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、ハードマスク、低誘電率膜及びバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子に、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001〜0.1質量%および水を含む洗浄液を用いて、ドライエッチング残渣を除去することを特徴とする半導体素子の洗浄方法である。
<2> 前記アルカリ金属化合物が、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、およびヨウ化セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<1>に記載の洗浄方法である。
<3> 前記4級アンモニウム水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<1>または<2>に記載の洗浄方法である。
<4> 前記水溶性有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄方法である。
<5> 上記<1>から<4>のいずれかに記載の洗浄方法により製造された基板である。
<6> 低誘電率膜と、コバルト、コバルト合金及びタングステンプラグの少なくとも1種とを有する基板上に、ハードマスクパターンを形成し、次いでこのハードマスクパターンをマスクとして、ハードマスク、低誘電率膜及びバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子を洗浄して、ドライエッチング残渣を除去するための洗浄液であって、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001〜0.1質量%および水を含む、前記洗浄液である。
<7> 前記洗浄液がアルカノールアミンを含まない、上記<6>に記載の洗浄液である。
<8> 前記洗浄液が、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001〜0.1質量%および水のみを含む、上記<6>または<7>に記載の洗浄液である。
<9> 前記洗浄液中における過酸化水素の含有量が、0.0001質量%以上0.01質量%未満である、上記<6>から<8>のいずれかに記載の洗浄液である。
<10> 前記アルカリ金属化合物が、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、およびヨウ化セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<6>から<9>のいずれかに記載の洗浄液である。
<11> 前記4級アンモニウム水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<6>から<10>のいずれかに記載の洗浄液である。
<12> 前記水溶性有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、上記<6>から<11>のいずれかに記載の洗浄液である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄液および洗浄方法を使用することにより、半導体回路の製造工程において、Low-k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステンプラグ、ハードマスク、バリアメタル、及びバリア絶縁膜のダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を選択的に除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ドライエッチング残渣除去前の半導体素子のハードマスクを含んだコバルト キャップメタルを含む構造の概略断面図である。
図2】ドライエッチング残渣除去前の半導体素子のタングステンプラグ構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明におけるドライエッチング残渣の洗浄液は、半導体素子を製造する工程で使用されるもので、コバルトあるいはコバルト合金、タングステンプラグ、ハードマスク、バリアメタル、バリア絶縁膜およびLow−k膜のダメージを抑制するものである。
【0019】
本発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、硝酸セシウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、およびヨウ化セシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属化合物は単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて配合してもよい。
【0020】
本発明に使用されるアルカリ金属化合物の濃度範囲は0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜15質量%、特に好ましくは0.01〜12質量%である。上記範囲内であるとドライエッチング残渣を効果的に除去することができる。一方、20質量%より大きい場合は、Low−k膜にダメージを与える懸念がある。
【0021】
本発明に使用される4級アンモニウム水酸化物の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。これらの4級アンモニウム水酸化物は単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて配合してもよい。
【0022】
本発明に使用される4級アンモニウム水酸化物の濃度範囲は0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜28質量%、より好ましくは1〜25質量%、特に好ましくは2〜23質量%である。上記範囲内であるとドライエッチング残渣を効果的に除去することができる。
【0023】
本発明に使用される水溶性有機溶媒の具体例としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびスルホランが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて配合してもよい。
【0024】
本発明に使用される水溶性有機溶媒の濃度範囲は0.01〜60質量%、好ましくは0.1〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。上記範囲内であるとドライエッチング残渣を効果的に除去することができる。一方、0.01質量%未満ではコバルトにダメージを与えるか、薬液処理後コバルト上に異物が発生する場合がある。
【0025】
本発明に使用される過酸化水素の濃度範囲は0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.05質量%、より好ましくは0.002〜0.01質量%、更に好ましくは上限は0.01質量%未満、特に好ましくは上限は0.009質量%以下である。0.0001質量%未満ではコバルトにダメージを与える場合がある。一方、0.1質量%より大きい場合は、タングステン、及びハードマスクにダメージを与える場合がある。
【0026】
本発明の洗浄液は、経済的な観点からアルカノールアミンを含まない態様が好ましい。
また、本発明の洗浄液は、アルカリ金属化合物0.001〜20質量%、4級アンモニウム水酸化物0.1〜30質量%、水溶性有機溶媒0.01〜60質量%、過酸化水素0.0001〜0.1質量%および水のみを含む態様が好ましい。
【0027】
本発明の洗浄液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用洗浄液に使用されている添加剤を配合してもよい。例えば、ピリジン骨格、ピラゾール骨格、ピリミジン骨格、イミダゾール骨格、又はトリアゾール骨格などを有する金属防食剤、あるいはキレート剤、界面活性剤、消泡剤などを添加することができる。
【0028】
本発明の洗浄液を使用する温度は10〜80℃、好ましくは20〜70℃の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体基体により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄方法は、必要に応じて超音波を併用することができる。
本発明の洗浄液を使用する時間は0.5〜60分、好ましくは1〜10分の範囲であり、エッチングの条件や使用される半導体基体により適宜選択すればよい。
本発明の洗浄液を使用した後のリンス液としては、アルコールのような有機溶剤を使用することもできるが、水でリンスするだけでも十分である。
【0029】
本発明が適用できる半導体素子および表示素子は、シリコン、非晶質シリコン、ポリシリコン、ガラスなどの基板材料、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン及びこれらの誘導体などの絶縁材料、コバルト、コバルト合金、タングステン、チタン-タングステンなどの材質、ガリウム−砒素、ガリウム−リン、インジウム−リン、インジウム−ガリウム−砒素、インジウム−アルミニウム−砒素などの化合物半導体、クロム酸化物などの酸化物半導体などを含む。
【0030】
一般的なLow−k膜として、ヒドロキシシルセスキオキサン(HSQ)系やメチルシルセスオキサン(MSQ)系のOCD(商品名、東京応化工業社製)、炭素ドープ酸化シリコン(SiOC)系のBlack Diamond(商品名、Applied Materials社製)、Aurora(商品名、ASM International社製)、Coral(商品名、Novellus Systems社製)、および無機系のOrion(商品名、Trikon Tencnlogies社製)を使用することができる。しかし、Low−k膜はこれらに限定されるものではない。
【0031】
一般的なバリアメタルとして、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、マンガン、マグネシウムならびにこれらの酸化物を使用することができる。しかし、バリアメタルはこれらに限定されるものではない。
【0032】
一般的なバリア絶縁膜として、窒化シリコン、炭化シリコン、窒化炭化シリコンなどを使用することができる。しかし、バリア絶縁膜はこれらに限定されるものではない。
【0033】
一般的なハードマスクとして、シリコン、チタン、アルミニウム、タンタルの酸化物または窒化物または炭化物を使用することができる。これらの材料は2種類以上を積層して使用することもできる。しかし、ハードマスクはこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0035】
走査型電子顕微鏡(SEM)観察:
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU9000を用い、倍率100000倍、電圧2Vで観察した。
判定;
I. ドライエッチング残渣の除去状態
E:ドライエッチング残渣が完全に除去された。
P:ドライエッチング残渣の除去が不十分であった。
E判定を合格とした。
II. タングステンのダメージ
E:洗浄前と比べてタングステンに変化が見られなかった。
G:タングステンの表面に少し荒れが見られた。
P:タングステンに大きな穴が見られた。
EおよびG判定を合格とした。
III. コバルトのダメージ
E:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られなかった。
G:洗浄前と比べてコバルトに僅かに変化が見られた。
P:洗浄前と比べてコバルトに変化が見られた。
EおよびG判定を合格とした。
IV. Low−k膜のダメージ
E:洗浄前と比べてLow−k膜に変化が見られなかった。
G:Low−k膜がわずかにくぼんでいた。
P:Low−k膜が大きくくぼんでいた。
EおよびG判定を合格とした。
V. ハードマスクのダメージ
E:洗浄前と比べてハードマスクに変化が見られなかった。
P:ハードマスクに剥がれまたは形状の変化が見られた。
E判定を合格とした。
【0036】
(実施例1〜34)
試験には、図1図2に示したような配線構造の断面を有する半導体素子を使用し、洗浄効果を調べた。ドライエッチング残渣1を除去するため、表1に記した洗浄液に表2に示した温度、時間で浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。洗浄後の半導体素子をSEMで観察することにより、ドライエッチング残渣1(図1図2)の除去状態とタングステン3(図2)、コバルト4(図1)、Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)のダメージを判断した。なお、図1に示す半導体素子は、銅などの配線材料8を囲むようにバリアメタル7で覆い、コバルト4でキャップした構成となっている。
【0037】
表2に示した本発明の洗浄液を適用した実施例1〜34においては、タングステン3、コバルト4、Low−k膜2、及びハードマスク6のダメージを防ぎながら、ドライエッチング残渣1を完全に除去していることがわかる。また、いずれの実施例においても、バリアメタル7ならびにバリア絶縁膜5にはダメージが見られなかった。
【0038】
(比較例1)
水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水53.491質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2A)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかったものの、Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)、コバルト4(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだ。よって、比較例1の洗浄液2Aは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0039】
(比較例2)
水酸化カリウム1.5質量%、グリセリン30質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水68.491質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2B)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかったものの、Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)、コバルト4(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだ。よって、比較例2の洗浄液2Bは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0040】
(比較例3)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、過酸化水素0.009質量%、及び水81.991質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2C)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できた。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、薬液処理後にコバルト4上に異物の発生が見られた。よって、比較例3の洗浄液2Cは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0041】
(比較例4)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、及び水52質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2D)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例4の洗浄液2Dは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0042】
(比較例5)
水酸化テトラメチルアンモニウム10質量%、水酸化カリウム0.02質量%、2−フェニル−4−メチルイミダゾール2質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル20質量%、及び水67.98質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2E)(先行技術文献に記載した特許文献1に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例5の洗浄液2Eは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0043】
(比較例6)
水酸化カリウム0.2質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム15質量%、グリセリン30質量%、ピラゾール0.1質量%、及び水54.7質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2F)(先行技術文献に記載した特許文献2に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例6の洗浄液2Fは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0044】
(比較例7)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、及び水51.9質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2G)(先行技術文献に記載した特許文献3に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例7の洗浄液2Gは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0045】
(比較例8)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、5−アミノ−1H−テトラゾール0.1質量%、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.1質量%、及び水51.8質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2H)(先行技術文献に記載した特許文献4に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例8の洗浄液2Hは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0046】
(比較例9)
水酸化テトラメチルアンモニウム12質量%、過酸化水素5質量%、水酸化カリウム2質量%、トリエタノールアミン35質量%、及び水46質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2I) (先行技術文献に記載した特許文献5に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できたものの、Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)、タングステン3(図2)及びコバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例9の洗浄液2Iは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0047】
(比較例10)
水酸化カリウム2.6質量%、過酸化水素0.9質量%、オルト過ヨウ素酸2質量%、エチレンジアミン0.03質量%、ジエチレントリアミン0.01質量%、サーフィノール465 0.02質量%、セチルトリメチルアンモニウムクロリド0.02質量%、N−メチルピロリドン10質量%、及び水84.42質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2J)(先行技術文献に記載した特許文献6に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できた。Low−k膜2(図1図2)とコバルト4(図1)のダメージは防いだものの、タングステン3(図2)とハードマスク6(図1)にダメージが見られた。よって、比較例10の洗浄液2Jは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0048】
(比較例11)
水酸化カリウム1.5質量%、水酸化テトラメチルアンモニウム16.5質量%、グリセリン30質量%、ベンゾトリアゾール0.12質量%、硫酸銅質量0.0008質量%、及び水51.879質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2K)(先行技術文献に記載した特許文献7に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できた。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)及びタングステン3(図2)のダメージは防いだものの、コバルト4(図1)にダメージが見られた。よって、比較例11の洗浄液2Kは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0049】
(比較例12)
ベンゾトリアゾール0.1質量%、1,2,4−トリアゾール0.1質量%、フッ化アンモニウム5質量%、ホウ酸1質量%、及び水84.42質量%を含む水溶液(表3、洗浄液2L)(先行技術文献に記載した特許文献8に相当)を用いて図1図2に示した半導体素子を洗浄し、表4に洗浄条件と評価結果を示した。Low−k膜2(図1図2)、ハードマスク6(図1)、タングステン3(図2)及びコバルト4(図1)のダメージは防いだものの、ドライエッチング残渣1(図1図2)は除去できなかった。よって、比較例12の洗浄液2Lは、本発明の対象である半導体集積回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステン、バリアメタル、バリア絶縁膜及びハードマスクのダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去する目的には使用できないことがわかる(表4)。
【0050】
【表1】
KOH:水酸化カリウム
SO:硫酸カリウム
CO:炭酸カリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
CsCO:炭酸セシウム
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TEAH:水酸化テトラエチルアンモニウム
TPAH:水酸化テトラプロピルアンモニウム
TBAH:水酸化テトラブチルアンモニウム
【0051】
【表2】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステン3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
除去状態I:ドライエッチング残渣1の除去状態
ダメージII:タングステン3のダメージ
ダメージIII:コバルト4のダメージ
ダメージIV:Low−k膜2のダメージ
ダメージV:ハードマスク6のダメージ
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の洗浄液及び洗浄方法を使用することにより、半導体回路の製造工程において、Low−k膜、コバルトあるいはコバルト合金、タングステンプラグ、ハードマスク、バリアメタル、及びバリア絶縁膜のダメージを抑制し、被処理物表面のドライエッチング残渣を除去することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0055】
1:ドライエッチング残渣
2:Low−k膜
3:タングステンプラグ
4:コバルト
5:バリア絶縁膜
6:ハードマスク
7:バリアメタル
8:配線材料(銅)
図1
図2