特許第6493432号(P6493432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493432
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20190325BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20190325BHJP
【FI】
   F24F11/86
   F24F110:10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-33244(P2017-33244)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138841(P2018-138841A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 克寿
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌由
(72)【発明者】
【氏名】辻 堅志
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−178284(JP,A)
【文献】 特開2008−175507(JP,A)
【文献】 特開2014−126286(JP,A)
【文献】 特開2015−068614(JP,A)
【文献】 特開2016−196971(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/045777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/86
F24F 110/10
F25B 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)及び熱源側熱交換器(13)を有する熱源ユニット(2)と、減圧装置(15)及び利用側熱交換器(16)を有する複数の利用ユニット(3)とを備え、前記熱源ユニット(2)に前記複数の利用ユニット(3)が並列に接続されることによって冷媒回路(10)が形成され、前記熱源側熱交換器(13)を凝縮器とし前記利用側熱交換器(16)を蒸発器とすることによって冷房運転を行う空気調和装置(1)において、
前記各利用ユニット(3)の要求能力に関する空気の状態を検出する検出センサ(26)と、
前記検出センサ(26)による検出結果に基づいて前記各利用ユニット(3)における要求能力を取得し、最も高い要求能力に応じて、前記圧縮機(11)によって調整される前記利用側熱交換器(16)内の蒸発温度(Te)と前記減圧装置(15)によって調整される所定の冷媒状態(SH)との目標値(Tem,SHm)をそれぞれ設定し、最も要求能力が高い利用ユニット(3)以外の他の利用ユニット(3)において冷房温度(Tf)が目標冷房温度(Tfm)よりも所定値(Δt)以上低下したときに、当該利用ユニット(3)の冷房能力を低下させるように前記冷媒状態(SH)の目標値(SHm)を変更する制御装置(30)を備え、
前記熱源ユニット(2)が、前記熱源側熱交換器(13)を蒸発器とし前記利用側熱交換器(16)を凝縮器とする暖房運転に切替え可能な切替装置(12)を更に備え、
前記制御装置(30)が、暖房運転を行う際に、前記各利用ユニット(3)における要求能力を取得し、最も高い要求能力に応じて、前記圧縮機(11)によって調整される前記利用側熱交換器(16)の凝縮温度(Tc)と、前記減圧装置(15)によって調整される所定の冷媒状態(SC)との目標値(Tcm,SCm)をそれぞれ設定し、最も要求能力が高い利用ユニット(3)以外の他の利用ユニット(3)において暖房温度(Tf)が目標暖房温度(Tfm)より上昇しても前記冷媒状態(SC)の目標値(SCm)を維持する、空気調和装置。
【請求項2】
前記冷媒状態(SH)が過熱度であり、
前記制御装置(30)は、前記他の利用ユニット(3)において冷房温度(Tf)が目標冷房温度(Tfm)よりも所定値(Δt)以上低下したときに、低下前よりも前記過熱度(SH)の目標値(SHm)を高く設定する、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御装置(30)は、前記他の利用ユニット(3)において冷房温度(Tf)が目標冷房温度(Tfm)よりも所定値(Δt)以上低下したときに、低下前よりも前記減圧装置(15)における冷媒流路を絞るように当該減圧装置(15)を制御する、請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記利用ユニット(3)が、冷却対象に直接的に温度調整された空気を吹き付けるスポット方式とされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の利用ユニットを熱源ユニットに並列に接続した空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場のように広く連続した空間では、複数の作業領域に対して個別に冷房又は暖房を行うことによって、各作業領域の作業者に快適な環境を与えるスポット方式の空気調和装置が利用されている。例えば、特許文献1には、各作業領域に設置される複数の室内機と、各室内機に冷媒を循環させる1台の室外機と、室内機及び室外機の運転を制御する制御盤とを備え、各室内機から作業者に向けて温度調整された空気を吹き出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように複数の室内機を1台の室外機に接続した空気調和装置で冷房運転を行う場合、通常、全ての室内機の熱交換器(蒸発器)における蒸発温度が一定の目標値となるように圧縮機を制御するとともに、各室内機の要求能力に応じて蒸発器を流れる冷媒流量を調整し、蒸発器出口における過熱度が目標値となるように膨張弁の制御を行っている。しかしながら、この場合、蒸発温度の目標値が一定であるために、全ての室内機の要求能力が小さいときであっても圧縮機が必要以上に高回転数で運転され、圧縮機の駆動エネルギーが無駄に消費されることがあった。
【0005】
一方、複数の室内機の要求能力のうち最も高い要求能力に応じて蒸発温度の目標値を適宜変更することによって、圧縮機を適切な回転数で運転し、省エネルギー化を図ることも考えられる。しかしながら、この場合、要求能力が小さい室内機では必要以上に冷却され、快適性が低下することがある。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み、省エネ性と快適性とを両立させることが可能な空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧縮機及び熱源側熱交換器を有する熱源ユニットと、減圧装置及び利用側熱交換器を有する複数の利用ユニットとを備え、前記熱源ユニットに前記複数の利用ユニットが並列に接続されることによって冷媒回路が形成され、前記熱源側熱交換器を凝縮器とし前記利用側熱交換器を蒸発器とすることによって冷房運転を行う空気調和装置において、
前記各利用ユニットの要求能力に関する空気の状態を検出する検出センサと、
前記検出センサによる検出結果に基づいて前記各利用ユニットにおける要求能力を取得し、最も高い要求能力に応じて、前記圧縮機によって調整される前記利用側熱交換器内の蒸発温度と前記減圧装置によって調整される所定の冷媒状態との目標値をそれぞれ設定し、最も要求能力が高い利用ユニット以外の他の利用ユニットにおいて冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに、当該利用ユニットの冷房能力を低下させるように前記冷媒状態の目標値を変更する制御装置を備え、
熱源側ユニットは、前記熱源側熱交換器を蒸発器とし前記利用側熱交換器を凝縮器とする暖房運転に切替え可能な切替装置を更に備え、
前記制御装置が、暖房運転を行う際に、前記各利用ユニットにおける要求能力を取得し、最も高い要求能力に応じて、前記圧縮機によって調整される前記利用側熱交換器の凝縮温度と、前記減圧装置によって調整される所定の冷媒状態との目標値をそれぞれ設定し、最も要求能力が高い利用ユニット以外の他の利用ユニットにおいて暖房温度が目標暖房温度より上昇しても前記冷媒状態の目標値を維持する
【0008】
以上の構成を有する空気調和装置は、複数の利用ユニットの要求能力のうちも最も高い要求能力に応じて利用側熱交換器の蒸発温度の目標値を設定するので、実際の冷房負荷に応じた適切な回転数で圧縮機を運転することができ、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。また、上記のように蒸発温度を設定した場合、最も要求能力が高い利用ユニット以外の他の利用ユニットでは冷房が過剰になる可能性があるが、冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに所定の冷媒状態の目標値を変更して冷房能力を低下させることによって、当該他の利用ユニットの冷房温度を確実に目標温度に到達させて快適性を確保し、その後、冷房能力を下げることによって過剰な冷房を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記冷媒状態は過熱度であり、
前記制御装置は、前記他の利用ユニットにおいて冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに、低下前よりも前記過熱度の目標値を高く設定することが好ましい。
この構成によれば、冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに、利用側熱交換器において早期に冷媒を蒸発させて冷房能力を好適に低下させることができる。
【0010】
前記制御装置は、前記他の利用ユニットにおいて冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに、低下前よりも前記減圧装置における冷媒流路を絞るように当該減圧装置を制御することが好ましい。
この構成によれば、冷房温度が目標冷房温度よりも所定値以上低下したときに、利用側熱交換器を流れる冷媒流量を低下させて冷房能力を好適に低下させることができる。
【0011】
前記利用ユニットは、冷却対象に直接的に温度調整された空気を吹き付けるスポット方式とされることが好ましい。
スポット方式の利用ユニットは、当該利用ユニットが設置された空間の温度を調整するというよりも、冷却対象に対して直接的に温度調整された空気を吹き付けることで冷却対象の快適性を得るものであるため、上記のように利用ユニットの冷房温度を確実に目標温度に到達させることが快適性を得るためにより有効となる。
【0013】
本発明は、暖房運転を行う場合においても、複数の利用ユニットの要求能力のうちも最も高い要求能力に応じて利用側熱交換器の凝縮温度の目標値を設定するので、実際の暖房負荷に応じた適切な回転数で圧縮機を運転することができ、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。また、上記のように凝縮温度を設定した場合、最も要求能力が高い利用ユニット以外の他の利用ユニットでは暖房が過剰になる可能性がある。しかし、上記の冷房運転と同様に、暖房温度が目標暖房温度よりも所定値以上上昇したときに所定の冷媒状態の目標値を変更して暖房能力を下げるような制御を行ったとすると、利用側熱交換器に冷媒が溜まって空気調和装置の冷媒回路全体の冷媒循環量が減少し、暖房運転が不安定になる可能性がある。そのため、暖房運転を行う場合は、暖房が過剰になったとしても所定の冷媒状態の目標値を維持することによって暖房能力を低下させないようにすることで、空気調和装置における暖房運転の信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、省エネ性と快適性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る空気調和装置を示す概略構成図である。
図2】空気調和装置の冷媒回路を示す模式図である。
図3】空気調和装置の制御装置の機能を示す構成図である。
図4】モリエル線図上に冷凍サイクルを表した図である。
図5】目標蒸発温度及び目標過熱度を設定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
<空気調和装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施の形態に係る空気調和装置を示す概略構成図である。
本実施形態の空気調和装置1は、例えば、工場4のような広く連続した空間内に設定された複数の作業領域5に対して、それぞれ個別に温度調整された空気を吹き出すように構成されたスポット方式の空気調和装置である。
【0019】
空気調和装置1は、1つ又は複数の室外機(熱源ユニット)2と、複数の室内機(利用ユニット)3とを備え、これら室外機2と室内機3とは冷媒連絡配管17によって接続されている。室外機2は、工場4の外に設置され、室内機3は、工場4内の複数の作業領域5のそれぞれに対応して設置されている。各室内機3は、スポット状に空気を吹き出す吹出口3aを備えており、作業領域5において作業を行っている作業者Mに対して吹出口3aから吹き出された空気を直接的に吹き付け、快適な作業環境を与えるように構成されている。
【0020】
図2は、空気調和装置1の冷媒回路を示す模式図である。本実施形態の空気調和装置1は、1台の室外機2に対して複数の室内機3が並列に接続されることによって、冷媒が流通される冷媒回路10が形成されている。また、空気調和装置1は、全体の運転制御を行う制御装置30を備えている。
【0021】
(室内機3の構成)
各室内機3には、室内膨張弁(減圧装置)15、室内熱交換器16等が設けられ、これらは冷媒配管によって接続されている。また、室内機3には、送風ファン22等が設けられている。
【0022】
室内膨張弁15は、冷媒回路10を流れる冷媒を減圧して冷媒の流量を調節するための弁である。室内熱交換器16は、例えば、クロスフィン式のフィンアンドチューブ型熱交換器が採用される。送風ファン22は、室内熱交換器16の近傍に配置され、室内熱交換器16を通過する空気流を生成することによって、室内熱交換器16を流れる冷媒と空気との間で熱交換を行い、温度調整された空気を吹出口3aから吹き出すように構成されている。
【0023】
室内機3には、上記以外に各種のセンサが設けられている。室内熱交換器16の液側には、液状態又は気液二相状態の冷媒の温度を検出する液側温度センサ24が設けられている。室内熱交換器16のガス側には、ガス状態の冷媒の温度を検出するガス側温度センサ25が設けられている。また、室内機3の吹出口3aの近傍には、吹出口3aから吹き出した空気の温度を検出する吹出温度センサ(冷房又は暖房温度センサ)26が設けられている。
【0024】
(室外機2の構成)
室外機2には、圧縮機11、四路切換弁(切替装置)12、室外熱交換器13、室外膨張弁14、アキュムレータ20、オイルセパレータ21等が設けられ、これらは冷媒配管によって接続されている。また、室外機2には、送風ファン23が設けられている。四路切換弁12と室内熱交換器16とはガス側冷媒連絡配管17aにより接続され、室外膨張弁14と室内膨張弁15とは液側冷媒連絡配管17bにより接続されている。
【0025】
圧縮機11は、ケーシング内に図示しない圧縮要素及び圧縮要素を駆動するモータが収容された密閉型圧縮機とされている。モータは、図示しないインバータ装置を介して電力が供給され、インバータ装置の出力周波数、すなわちモータ回転数を変化させることによって、圧縮機11の運転容量を変更できるように構成されている。
【0026】
四路切換弁12は、冷媒の流れの方向を切り替えるための弁であり、空調運転の一つとしての冷房運転時には、圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13のガス側とを接続し、圧縮機11の吸入側とガス側冷媒連絡配管17aとを接続する。また、四路切換弁12は、暖房運転時には、圧縮機11の吐出側とガス側冷媒連絡配管17aとを接続し、圧縮機11の吸入側と室外熱交換器13のガス側とを接続する。
【0027】
室外熱交換器13は、例えば、クロスフィン式のフィンアンドチューブ型熱交換器が採用される。室外膨張弁14は、冷媒回路10を流れる冷媒を減圧するための弁である。送風ファン23は、室外熱交換器13の近傍に配置され、室外熱交換器13を通過する空気流を生成することによって、室内熱交換器16を流れる冷媒と空気との間で熱交換を行う。
【0028】
アキュムレータ20は、四路切換弁12と圧縮機11の吸入側との間に接続された密閉容器であり、冷媒に含まれる気相から液相を分離し、気相のみを圧縮機11に供給する。オイルセパレータ21は、圧縮機11から吐出される冷媒に含まれた冷凍機油を分離して圧縮機11に戻すために用いられる。
【0029】
室外機2の内部冷媒回路の端末部には、ガス側閉鎖弁18と液側閉鎖弁19とが設けられている。ガス側閉鎖弁18は四路切換弁12側に配置されており、液側閉鎖弁19は室外膨張弁14側に配置されている。ガス側閉鎖弁18にはガス側冷媒連絡配管17aが接続され、液側閉鎖弁19には液側冷媒連絡配管17bが接続される。
【0030】
室外機2には、上記以外に各種のセンサが設けられている。例えば、圧縮機11の吸入側には、吸入圧力センサ27が設けられている。また、圧縮機11の吐出側には、吐出圧力センサ28が設けられている。
【0031】
(制御装置30の構成)
制御装置30は、各室内機3に設けられた室内制御部や室外機2に設けられた室外制御部等により構成されている(いずれも図示せず)。制御装置30は、マイクロコンピュータ、メモリ、通信インタフェース等により構成されており、室内機3及び室外機2に設けられた各種センサの信号が入力される。また、制御装置30は、圧縮機11、弁12,14,15、送風ファン22,23等の動作を制御する。制御装置30は、室内機3に接続されたリモートコントローラ等を介して、各室内機3における吹出温度(冷房温度又は暖房温度)の目標値(設定温度)の入力を受付可能である。
【0032】
図3は、空気調和装置1の制御装置30の機能を示す構成図である。
制御装置30は、機能的に、要求能力取得部31と、目標冷媒温度設定部32と、目標冷媒状態設定部33と、目標冷媒状態変更部34と、圧縮機制御部35と、膨張弁制御部36とを備えている。
【0033】
要求能力取得部31は、各室内機3における要求能力を取得する機能部である。目標冷媒温度設定部32は、室内熱交換器16及び室外熱交換器13における蒸発温度又は凝縮温度の目標値を設定する機能部である。目標冷媒状態設定部33は、所定の冷媒状態、本実施形態では冷媒の過熱度又は過冷却度の目標値を設定する機能部である。目標冷媒状態変更部34は、冷媒の過熱度又は過冷却度の目標値を所定の条件に基づいて変更する機能部である。この所定の条件については実際の空気調和装置の運転制御とともに説明する。
【0034】
圧縮機制御部35は、圧縮機11の動作を制御する機能部である。本実施形態の圧縮機制御部35は、目標冷媒温度設定部32によって設定された蒸発温度又は凝縮温度の目標値に基づいて圧縮機11を運転制御するように構成されている。
膨張弁制御部36は、室内膨張弁15及び室外膨張弁14の動作を制御する機能部である。特に、本実施形態では、目標冷媒状態設定部33及び変更部34によって設定された冷媒状態(室内熱交換器16における過熱度又は過冷却度)に基づいて室内膨張弁15の開度を制御するように構成されている。
【0035】
(冷房運転)
上記構成の空気調和装置1において、冷房運転を行う場合には、四路切換弁12が図2において実線で示す状態に保持される。圧縮機11から吐出された高温高圧のガス状冷媒は、オイルセパレータ21及び四路切換弁12を経て、凝縮器としての室外熱交換器13に流入し、送風ファン23の作動により室外空気と熱交換して凝縮・液化する。液化した冷媒は、全開状態の室外膨張弁14を通過し、液側冷媒連絡配管17bを通って各室内機3に流入する。室内機3において、冷媒は、室内膨張弁15で所定の低圧に減圧され、さらに蒸発器としての室内熱交換器16で作業領域5(図1参照)内空気と熱交換して蒸発する。そして、冷媒の蒸発によって冷却された空気は、送風ファン22によって作業領域5内に吹き出され、作業者Mに吹き付けられる。また、室内熱交換器16で蒸発して気化した冷媒は、ガス側冷媒連絡配管17aを通って室外機2に戻り、四路切換弁12及びアキュムレータ20を経て圧縮機11に吸い込まれる。
【0036】
(暖房運転)
他方、暖房運転を行う場合には、四路切換弁12が図2において破線で示す状態に保持される。圧縮機11から吐出された高温高圧のガス状冷媒は、オイルセパレータ21及び四路切換弁12を経て凝縮器としての各室内機3の室内熱交換器16に流入し、作業領域5内の空気と熱交換して凝縮・液化する。冷媒の凝縮によって加熱された空気は、送風ファン22によって作業領域5内に吹き出され、作業者Mに吹き付けられる。室内熱交換器16において液化した冷媒は、全開状態の室内膨張弁15から液側冷媒連絡配管17bを通って室外機2に戻る。室外機2に戻った冷媒は、室外膨張弁14で所定の低圧に減圧され、さらに室外熱交換器13で室外空気と熱交換して蒸発する。そして、室外熱交換器13で蒸発して気化した冷媒は、四路切換弁12及びアキュムレータ20を経て圧縮機11に吸い込まれる。
【0037】
<冷房運転の制御>
冷房運転を行う場合における空気調和装置1の基本的な制御について説明する。冷房運転を行う場合、本実施形態の空気調和装置1は、各室内機3から吹き出される空気の吹出温度(冷房温度)Tfが、それぞれ目標値(設定温度)Tfmとなるように制御される。この目標値Tfmは、各室内機3においてリモートコントローラ等を介して制御装置30に入力される。
【0038】
室外機2における圧縮機11は、蒸発器としての室内熱交換器16の蒸発温度Teが予め設定された目標値Temとなるように、制御装置30の圧縮機制御部35によって運転回転数が制御される。この蒸発温度Teは、図4の蒸発圧力P1において冷媒が蒸発する温度であり、液側温度センサ24によって検出される冷媒の温度である。液側温度センサ24によって検出された蒸発温度Teが目標蒸発温度Temよりも高い場合(Te>Tem)、運転回転数を増大させるように圧縮機11が制御され、蒸発温度Teが目標蒸発温度Temよりも低い場合(Te<Tem)、運転回転数を減少させるように圧縮機11が制御される。目標蒸発温度Temは、全ての室内機3において同一である。
【0039】
また、室内機3における室内膨張弁15は、室内熱交換器16の出口における冷媒過熱度SH(図4参照)が予め設定された目標値SHmとなるように、制御装置30の膨張弁制御部36によって開度が制御される。例えば、冷媒過熱度SHが目標値SHmよりも大きい場合(SH>SHm)、開度を大きくして冷媒流路を拡げ、室内熱交換器16を流れる冷媒の流量を増大させるように室内膨張弁15が制御される。逆に、冷媒過熱度SHが目標値SHmよりも小さい場合(SH<SHm)、開度を小さくして冷媒流路を絞り、室内熱交換器16を流れる冷媒流量を減少させるように室内膨張弁15が制御される。冷媒過熱度SHは、ガス側温度センサ25によって検出された室内熱交換器16の出口における冷媒温度と、液側温度センサ24によって検出された室内熱交換器16の入口における冷媒温度(蒸発温度Te)との差により取得することができる。
【0040】
以上のような圧縮機11及び室内膨張弁15の制御によって、各室内機3の吹出温度Tfが目標値(設定温度)Tfmとなるように制御される。
なお、室内熱交換器16の出口における冷媒過熱度SHは、上述の方法だけに限らず、吸入圧力センサ27により検出される圧縮機11の吸入圧力を蒸発温度Teに対応する飽和温度値に換算し、ガス側温度センサ25による検出値からその飽和温度値を差し引くことによって求めることもできる。
【0041】
(目標蒸発温度Tem及び目標過熱度SHmの設定)
図5は、目標蒸発温度Tem及び目標過熱度SHmを設定する手順を示すフローチャートである。
室内熱交換器16における冷媒の目標蒸発温度Temは、室内機3における要求能力に応じて制御装置30の目標冷媒温度設定部32によって設定される。具体的には、目標蒸発温度Temは、複数の室内機3の要求能力のうち、最も大きな要求能力に基づいて設定される。
【0042】
図5のステップS1において、室内機3の要求能力は、制御装置30の要求能力取得部31によって、次式(1)のように、吹出温度センサ26により検出された実際の吹出温度Tfから各室内機3で予め設定された目標吹出温度Tfmを差し引いた差分温度ΔTfにより求められる。したがって、当該差分温度ΔTfが大きい程、要求能力が大きくなる。
ΔTf=Tf−Tfm ・・・ (1)
【0043】
そして、図5のステップS2において、目標蒸発温度Temは、制御装置30の目標冷媒温度設定部32によって、例えば、最も要求能力が大きな室内機3の目標吹出温度Tfmよりも数℃〜十数℃程度低い温度に設定される。また、各室内機3における要求能力は、運転中、常時取得されており、要求能力の変化に伴って目標蒸発温度Temが変更される。なお、吹出温度Tfと目標吹出温度Tfmとの差分温度ΔTfに基づいて要求能力を決めることは一例であり、例えば吹出温度Tfの代わりに、室内機3の吸込温度や室内機3を流れる冷媒のその時点での蒸発温度もしくは凝縮温度を用いてもよい。
【0044】
室内機3における室内熱交換器16の出口の目標過熱度SHmは、目標蒸発温度Temに適した値が予め定められており、これらの各値SHm、Temは、互いに対応付けられた状態で制御装置30の記憶部に記憶されている。したがって、制御装置30は、最も大きな要求能力に応じて目標蒸発温度Temを設定した後、図5のステップS3において、目標冷媒状態設定部33によって、当該目標蒸発温度Temに適した目標過熱度SHmを記憶部から読み出して設定する。そして、各室内機3においては、室内熱交換器16の出口の過熱度SHが目標過熱度SHmとなるように、室内膨張弁15の開度が制御される。
【0045】
なお、目標過熱度SHmは、目標蒸発温度Temに応じて設定された値から運転状況の変化に応じて適宜、最適な値に変更することができる。例えば、複数の室内機3における目標吹出温度Tfmの平均値の変化、複数の室内機3における吹出温度Tfの平均値の変化、或いは、室内熱交換器16における冷媒圧力(低圧値)又は室外熱交換器13における冷媒圧力(高圧値)の変化等に応じて目標過熱度SHmを変更し、運転効率を高めるようにしてもよい。
【0046】
以上のように、最も大きい要求能力に合わせて目標蒸発温度Temと目標過熱度SHmとを設定した場合、これらは全ての室内機3に対して適用される値であるため、要求能力が小さい室内機3では必要以上に空気が冷却され、目標吹出温度Tfmよりも大きく低下した空気を吹き出すことによって作業領域5の作業者Mに不快感を与えてしまう可能性がある。そのため、本実施形態の制御装置30は、図5のステップS4において、各室内機3の吹出温度Tfが目標吹出温度Tfmに対して所定の関係を満たしたときに、その室内機3における目標過熱度SHmを個別に変更する制御を行うように構成されている。
【0047】
具体的には、次の式(2)に示すように、室内機3からの吹出温度Tfが、目標吹出温度Tfmを越えて所定値Δt以上低下したときに、目標過熱度SHmを変更し、冷房能力を低下させる制御を行う。
Tf≦Tfm−Δt ・・・ (2)
【0048】
例えば、吹出温度Tfが目標吹出温度Tfmよりも(Δt=)2℃以上低下したときに目標過熱度SHmを大きくする制御を行う。目標過熱度SHmが大きくなると、室内膨張弁15は、より開度を小さくして冷媒流量を減少させるように制御され、室内熱交換器16における冷房能力が低下するため、吹出温度Tfは次第に上昇し、作業者Mに適温の空気を吹き付けることができる。
【0049】
なお、上記式(2)のように、吹出温度Tfが、目標吹出温度Tfmを越えてさらに所定値Δt以上低下してから目標過熱度SHmを変更しているのは、吹出温度Tfを確実に目標吹出温度Tfmに到達させて作業者Mに吹き付けることによって所望の快適性を与えるようにするためである。また、式(2)を満たしたときに冷房能力を低下させることによって、過剰な冷房を抑制することができる。
【0050】
<暖房運転の制御>
暖房運転を行う場合も、基本な運転制御は冷房運転と略同様である。すなわち、空気調和装置1は、各室内機3から吹き出される空気の吹出温度(暖房温度)Tfが、それぞれ目標値(設定温度)Tfmとなるように制御される。この目標値Tfmは、各室内機3においてリモートコントローラ等を介して制御装置30に入力される。
【0051】
室外機2における圧縮機11は、凝縮器としての各室内機3の室内熱交換器16の凝縮温度Tcが予め設定された目標値Tcmとなるように制御装置30の圧縮機制御部35によって運転回転数が制御される。この凝縮温度Tcは、図4の凝縮圧力P2において冷媒が凝縮する温度であり、凝縮温度Tcが目標凝縮温度Tcmよりも低い場合(Tc<Tcm)、運転回転数を増大させるように圧縮機11が制御され、凝縮温度Tcが目標凝縮温度Tcmよりも低い場合(Tc>Tcm)、運転回転数を減少させるように圧縮機11が制御される。目標凝縮温度Tcmは、全ての室内機3において同一である。
【0052】
また、室内機3における室内膨張弁15は、室内熱交換器16の出口における冷媒過冷却度SC(図4参照)が予め設定された目標値SCmとなるように、制御装置30の膨張弁制御部36によって開度が制御される。例えば、冷媒過冷却度SCが目標値SCmよりも大きい場合(SC>SCm)、開度を大きくして室内熱交換器16を流れる冷媒の流量を増大させるように室内膨張弁15が制御される。逆に、冷媒過冷却度SCが目標値SCmよりも小さい場合(SC<SCm)、開度を小さくして室内熱交換器16を流れる冷媒流量を減少させるように室内膨張弁15が制御される。冷媒過冷却度SCは、吐出圧力センサ28により検出される圧縮機11の吐出圧力を凝縮温度Tcに対応する飽和温度値に換算し、この冷媒の飽和温度値から液側温度センサ24により検出される冷媒温度を差し引くことによって求めることができる。
【0053】
以上のような圧縮機11及び室内膨張弁15の制御によって、各室内機3の吹出温度Tfが目標値Tfmとなるように制御される。
【0054】
(凝縮温度の設定)
室内熱交換器16における冷媒の目標凝縮温度Tcmは、室内機3における要求能力に応じて制御装置30の目標冷媒温度取得部によって設定される。具体的には、目標凝縮温度Tcmは、複数の室内機3の要求能力のうち、最も大きな要求能力に基づいて設定される。
【0055】
室内機3の要求能力は、制御装置30の要求能力取得部によって、各室内機3の吹出温度センサ26により検出された実際の吹出温度Tfから、各室内機3で予め設定された目標吹出温度Tfmを差し引いた差分温度ΔTfにより求められる。したがって、当該差分温度ΔTfが大きい程、要求能力が大きくなる。
【0056】
そして、目標凝縮温度Tcmは、例えば、最も要求能力が大きな室内機3の目標吹出温度Tfmよりも数℃〜十数℃程度高い温度に設定される。また、各室内機3における要求能力は、運転中、常時取得されており、要求能力の変化に伴って目標凝縮温度Tcmが変更される。
【0057】
室内機3における室内熱交換器16の出口の目標過冷却度SCmは、目標凝縮温度Tcmに適した値が予め定められており、これらの各値SCm、Tcmは、互いに対応付けられた状態で制御装置30の記憶部等に記憶されている。したがって、制御装置30は、目標冷媒温度設定部32によって、最も大きな要求能力に応じて目標凝縮温度Tcmを設定した後、目標冷媒状態設定部33によって、当該目標凝縮温度に適した目標過冷却度SCmを記憶部から読み出して設定する。そして、各室内機3においては、室内熱交換器16の出口の過冷却度SCが目標過冷却度SCmとなるように、室内膨張弁15の開度が制御される。
【0058】
以上のように、最も大きい要求能力に合わせて目標凝縮温度Tcmと目標過冷却度SCmとを設定した場合、これらは全ての室内機3に対して適用される値であるため、要求能力が小さい室内機3では必要以上に空気が加熱され、目標吹出温度Tfmよりも大きく上昇した空気を吹き出すことによって作業領域5の作業者Mに不快感を与えてしまう可能性がある。冷房運転の場合は、上述したように、各室内機3において、吹出温度Tfが目標吹出温度Tfmに対して所定の関係を満たしたときに、その室内機3における目標過熱度SHmを個別に変更する制御を行うように構成されている。
【0059】
しかしながら、暖房運転の場合、冷房運転と同様の考えで目標過冷却度SCmを増大する方向へ変更した場合、特定の室内熱交換器16内で液冷媒が溜まり、空気調和装置1の冷媒回路全体を流れる冷媒量が不足してしまう可能性がある。したがって、本実施形態では、暖房運転の際に、吹出温度Tfが目標吹出温度Tfmよりも大きく上昇したとしても、目標過冷却度SCmを変更せずに、暖房能力を維持するように構成されている。これにより、空気調和装置1の信頼性を高めることができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において種々変更することが可能である。
例えば、上記実施形態におけるスポット方式の利用ユニットは、屋外に設定されていてもよい。また、本発明の空気調和装置は、スポット方式の利用ユニットを備えたものに限らず、部屋の内部等の空間全体の温度を調整する利用ユニットを備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :空気調和装置
2 :室外機(熱源ユニット)
3 :室内機(利用ユニット)
10 :冷媒回路
11 :圧縮機
12 :四路切換弁(切替装置)
13 :室外熱交換器(熱源側熱交換器)
15 :室内膨張弁(減圧装置)
16 :室内熱交換器(利用側熱交換器)
26 :吹出温度センサ(検出センサ)
30 :制御装置
SC :過冷却度(所定の冷媒状態)
SCm :目標過冷却度
SH :過熱度(所定の冷媒状態)
SHm :目標過熱度
Tc :凝縮温度
Tcm :目標凝縮温度
Te :蒸発温度
Tem :目標蒸発温度
Tf :吹出温度(冷房温度、暖房温度)
Tfm :目標吹出温度
ΔTf :差分温度(要求能力)
Δt :所定値
図1
図2
図3
図4
図5