特許第6493492号(P6493492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6493492
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】MRI音声通話装置における防音構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   A61B5/055 390
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-223123(P2017-223123)
(22)【出願日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501494230
【氏名又は名称】小林 興弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 興弘
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6114963(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0226816(US,A1)
【文献】 特開2004−8356(JP,A)
【文献】 特開昭63−286145(JP,A)
【文献】 実開昭62−74810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20 − 33/64
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクを被検者の頭部を支持するマットに内蔵し被検者の音声をマットのマイクからピックアップするようにしたMRIの通話用マットにおいて、マイクの周辺を囲繞するように弾性体からなる防音材を配置し、該防音材が被検者の重量で変形圧縮することによってマイクの周辺を音響的に密封し、MRIの騒音から前記防音材によってマイクを遮蔽するようにしたことを特徴とするMRI用通話装置
【請求項2】
防音材が異なる材料によりマイク周辺を二重に囲繞するようにしたことを特徴とする請求項1記載のMRI用通話装置
【請求項3】
マットに埋め込まれたマイクの先端が、被検者の重量で前記防音材が変形圧縮したときに被検者に接触するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のMRI用通話装置
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging system磁気共鳴画像装置)の騒音環境下で診断を受ける被験者とMRI装置を操作する医師との間で片方向通話及び双方向通話を行う事が出来る装置においてマイク側の防音性能を高めることに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRI装置の診断性能が向上し高度な診断を行う高精細診断画像が得られるようになり多くの病院でMRI装置の導入が図られ医療分野における重要な装置とし毎日多くの患者(被験者)の診断などに使われている。
【0003】
MRI装置は周知のごとく高磁場を発生させて被験者の患部に磁場を照射させる事により細胞の変化を高精細な画像で検知診断する事が出来る進んだ装置である。
【0004】
しかし高精細な画像を得る為には高磁場を発生させなくてはならない。この高磁場を発生させる為にはMRI装置のコイルに断続的に高電圧を加えて発生させる。
【0005】
コイルに高電圧を断続的に与える事によりコイルに大きな電流が流れることにより同時に大きな騒音が発生する。
【0006】
現在のMRI装置はコイルに断続的な大電流を加える方式でこの騒音を少なくする取り組みは種々行われているが、現時点で無くす事は困難である。
【0007】
このようなMRIの騒音環境下で被験者の診断を行わなくてはならず、通常の診断時間でも短くて15分長くて30分から40分位の時間を必要とする。
この間、被験者は固定されて動くことができない上に騒音を我慢しなくてはならないためその苦痛は図り知れない。
【0008】
MRIで診断中に被験者が受ける苦痛とは閉所恐怖症、心臓疾患、呼吸困難、騒音恐怖、等で被験者は恐怖等を感じたとしても、MRIの騒音下に置かれているため、医師にその症状を言葉で伝えることが困難である。
【0009】
従来のMRI装置では、被験者が検査を継続できないような異状状態になった場合に手で非常ボタンを握って押す手段は従来からあるが、このような被験者がパニックになっているような非常時に押しボタンを押すことが出来る場合は極めて少く、被験者の意思に沿った対応ができない状況が継続してしまうことが有るため、その改善が求められていた。
【0010】
又、従来のMRI装置室には検査人である医師から被験者へ音声で情報を伝える事が出来る手段として、MRI室モニタースピーカーを設置することが提案されていたが、MRI室モニタースピーカーの場合は、MRI装置の診断が停止した状態では騒音レベルは低く静かで、被験者はMRI室モニタースピーカーにより医師の音声を聞くことが可能である。
【0011】
しかし一旦MRI装置が動作を開始する事によりMRIの騒音レベルは大きくなり医師の指示が騒音にマスキングされて被験者はこれらのMRI室モニタースピーカーで医師の音声を聞く事が困難になってしまう問題が有った。
【0012】
一方、MRI装置の動作時には、医師は常時被験者の状態を把握する必要があり、被験者は体の状態が悪くなったり、何等かの理由により検査が継続できなくなった場合には、迅速に検査が継続できないことを医師に伝える事が必要で、尚且つ医師は被験者からの意思表示に基づいて適切な対応を迅速に行う事が出来る装置の要望が高まっている。
さらに被験者からの意思表示は一方的なものではなく、医師が被験者の状態を正確に把握できるためには音声通話により医師と被験者の間で双方向の会話ができることが望ましい。
【0013】
上記のような状況を改善するため、出願人は先に光マイクを用いて被検者を固定するマットにマイクを埋め込み被検者の頚椎から音声を拾う発明を行い特許第6114963号として登録されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−8356号公報
【特許文献2】特開2006−186499号公報
【特許文献3】特開2007−82914号公報
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記した特許第6114963号において、MRI動作中の高磁場環境及び騒音環境の中でも常時、医師と被験者とが通話が行なうことができるようにしたことによって、医師は診断中に被験者の異状状態を迅速に検知し把握することができ、必要に応じて装置の停止を行ったり又は被験者に対して音声により迅速に応答することを可能にしたが、被検者がマイクの位置から少しずれる等した場合に、わずかな隙間からマイクに飛び込むMRIの騒音を拾ってしまうことが有り、被検者の音声に騒音が乗ってしまう場合が有って、聞きづらくなる現象が生じている。
そのため、被検者の状態にかかわらずどのような場合でもMRIの作動状態における騒音を拾うことなく被検者の音声のみをピックアップできるようすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明に係るMRI用通話装置においては、マイク1を被検者の頭部を支えるマット2に内蔵し被検者の音声をマット2に埋め込まれたマイク1からピックアップするようにしたMRIの通話用マット2において、マイク1の周辺を囲繞するように弾性体からなる防音材3a、3bを配置し、該防音材3a、3bが被検者の重量で変形することによって被検者の頸部と防音材3a、3bによってマイクの周辺を密封し、MRIの騒音から前記防音材3a、3bによってマイク1を遮蔽するようにしたことを特徴とするMRI用通話装置である。
【0018】
請求項2の発明に係るMRI通話装置においては、防音材3a、3bが異なる材料によりマイク周辺を二重に囲繞するようにしたことを特徴とする請求項1記載のMRI用通話装置である。
【0019】
請求項3の発明に係るMRI通話装置においては、マットに埋め込まれたマイク1の先端1aが、被検者の重量で前記防音材3a、3bが変形したときに被検者に接触するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のMRI用通話装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係るMRI通話装置においては、被検者の頭部を支えるマット2に埋め込まれたマイク1の周囲にマイク1の周辺を囲繞するように弾性体からなる防音材3a、3bを配置し、被検者の重量で変形することによってマイク1周辺を密封するようにしたことによって、MRIの騒音からマイク1を遮断することができる効果が有る。
【0021】
請求項2の発明においては、マイク1を囲繞する防音材3a、3bを異なる材料で二重に構成したことにより、防音する周波数帯を広げることがで、効果的にMRIの騒音を遮蔽できるものである。
【0022】
請求項3の発明に係るMRI通話装置においては、マイク1の構造が先の特許第6114963号に記載したように、被検者の頸部に当接することによって骨伝導及び軟骨伝導によって音声をピックアップするものであるから、マット2に埋め込まれたマイク1の先端1aが、被検者の重量で前記防音材3a、3bが変形したときに被検者に接触するように構成されることによって被検者の音声を効果的にピックアップすることができるものである。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の頭部を支えるマットとその構造を示す図
図2】本発明の使用状態を説明するための概略図
図3】本発明の枕における信号伝達を説明するための図
図4】本発明の騒音低減効果を示すための図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0026】
図1は本発明のMRI音声通話装置の基本となる騒音下で騒音を低減させて被験者の音声を医師へ伝える事ができるマイク1が埋め込まれたマット2の実施例を示したものである。
【0027】
この実施例における、マイク1は、本出願人の先の登録特許第6114963号に記載したように、光マイクセンサーユニットで構成され、光マイクセンサーユニットは、先の特許に記載したように音響キャビティー内に光マイク1bを設け、被検者に接触する部分に接触振動板1aを設けることによって、接触振動板1aの振動を音響キャビティー1cを通して光マイク1bで音声をピックアップするようにしたものである。詳細は先の特許第6114963号に記載しており、本発明においてはマイク1がマット2に埋め込まれていれば足りるので詳細な説明を省略する。
また、マイク1及び被検者の頭部を支持するマット等の本発明のMRI用通話装置を構成する全ての部品は非磁性材料で構成されておりMRI画像へのノイズ影響を与えないようになっている。
【0028】
図1は本発明のMRI用通話装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)はA−B断面図、(c)はC−D断面図である。
マット2は傾斜部2bによって被検者の頸部を支える前部と頭部を支える後部から構成されており、後部2aは前部から遠ざかるにつれて厚みが少なくなるようにテーパー状に構成され、被検者の後頭部を支えるように構成したものである。
マット2の全部は中央に被検者の頸部を支える逆台形状の窪みを有しており窪みの底部にはマイク1すなわち光マイクセンサーユニットが埋め込まれており、マイク1の周辺にはマイク1を囲繞するように防音材3a、3bが配置されており、被検者がマット2に頭部を載せたときに防音材3a、3bが被検者の重量で撓むことによって被検者の頸部がマイク1の先端すなわち先の特許に記載した接触振動板に当接するようにしたものである。
【0029】
図2は被検者と本発明のマット2との関係を説明するための図で、模式的に示したものである。
図2(a)は被検者4がMRIのベッドに寝た状態を横から見た図で、4aは被検者の頭部、4bは被検者の頸部であり、5はMRIのコイルを示している。
図2(a)から分かるように、被検者4がMRIのベッドに仰向けに寝た状態において、頭部がマット2の後部2aに支えられ、頸部は図2(b)に示すようにマット2の両側の傾斜部2bによってガイドされ、被検者の頸部4bがマイク1と接触する位置にガイドされていて、音声をピックアップしやすい適正位置に来るように構成されている。
【0030】
また、被検者4の頸部4bがマット2の傾斜部2bによってマイク1上部すなわち接触振動板1aに当接する位置にガイドされるものである。
被検者4がMRIのベッドに寝た場合、被検者の頭部4aや頸部4bの重量によって防音材3a、3bを押し潰す状態になり、マイク1の周辺が防音材3a、3bによってマイクを音声的に遮蔽するものである。
したがって、マイク1は周囲から音声的に遮断されたことにより、MRIの騒音がマイク1に飛び込ことが無くなるもので、被検者の頸部の振動による被検者の音声信号のみをマイク1から創出することができるものである。
【0031】
なお、図2において、1cは光マイク1bから音声によって光変調された信号を外部に導出するための光ファイバーである。
図3はマイク1の光マイクセンサー1bでピックアップした被検者の音声信号をMRIを操作する人に音声として伝えるための経路を図示したもので、光ファイバー1cで導出された光信号は、磁気的に遮蔽されたMRIの置かれている部屋から外部に導出され、光/電気変換装置6によって電気信号に変換され、音声アンプ7によって増幅されてスピーカー8によって音声として再生されるものである。
【0032】
なお、実施例においては防音材を3a、3bの2つの部材で構成したが、1つの部材で構成することも、3つの部材以上で構成することもできることはもちろんである。
【0033】
図4は本発明によってMRIの騒音がマイク1に到達する度合いがどの程度低減されるかを疑似的に測定した周波数特性図で、9は防音材がない場合を示し、10は本発明の防音材を設けた場合を示すものである。
実際のMRIには磁性体が含まれることからMRIを設置した場所に騒音計を持ち込むことができないので、図示していないが、音響箱を用いてスピーカーに信号発生器から信号を供給して、連続的に発振させる音源を用いて、10HZ位から10KHZ位までをスイープさせ、防音材3a、3bを設けて被検者の頸部が来る側をオープンにした場合と閉鎖した場合の騒音を検出したものである。
【0034】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本、発明はMRI装置等の高騒音下で被験者と検査人との間で交信が必要な場合に最適であり、MRI等を製造する産業等に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 マイク
1a 接触振動板
1b 光マイクセンサー
1c 光ファイバー
2 マット
2a マットの後部
2b マットの前部に形成された傾斜部
3a 防音材
3b 防音材
4 被検者
4a 被検者の頭部
4b 被検者の頸部
5 MRIの磁気コイル
6 光/電気信号変換器
7 音声アンプ
8 スピーカー
9 防音材がない場合の騒音の周波数特性
10 防音材によって低減される騒音の周波数特性
【要約】
【課題】MRIに用いる被検者の頭部を支えるマットに埋め込んだマイクから被検者の音声をピックアップするものにおいて、被検者の状態によってMRIの騒音がマイクに飛び込み、明瞭度が落ちるのを防止する必要がある。
【解決手段】マイクをマットに内蔵し被検者の音声をマットのマイクからピックアップするようにしたMRIの通話用10HZ位から10KHZ位までをアットにおいて、マイクを囲繞するように弾性体からなる防音材を配置し、その防音材が被検者の重量で変形圧縮することによってマイクの周辺を密封し、MRIの騒音から防音材によってマイクを遮蔽するようにしたものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4