【実施例】
【0011】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
実施例1のソレノイド装置1を、
図1〜
図6を用いて説明する。
なお、
図1は
図4のI−I断面図となっている。
本実施例のソレノイド装置1は、自動変速機の電磁油圧制御弁2に適用される。
自動変速機は、変速制御やロックアップ制御等を行うための油圧コントローラを搭載しており、油圧コントローラは油圧制御を行うための電磁油圧制御弁2を搭載している。
【0012】
〔油圧制御弁の基本構成〕
まず、電磁油圧制御弁2の基本構成を
図1〜3を用いて説明する。
電磁油圧制御弁2は、三方弁3と、この三方弁3を駆動するソレノイド装置1とを結合して構成される。
電磁油圧制御弁2は、
図3に示すように、オイルパン4内で用いられるものである。すなわち、オイルパン内のオイル貯留空間でオイルに浸かった状態で使用されるものである。
【0013】
三方弁3は、バルブハウジング7、ボール弁8、ブリード弁9、およびシャフト10等で構成される。バルブハウジング内に配されるシャフト10がソレノイド装置1によって軸方向に駆動されることで、シャフト10の移動に連動して移動するボール弁8及びブリード弁9が駆動して、流路の切替を行うものである。
【0014】
バルブハウジング7は、略筒形状を呈しており、内部には軸方向一端側より他端側へ向かって入力室12、出力室13、排出室14が形成されるとともに、シャフト10が軸方向に移動可能に配されている。
【0015】
入力室12は、オイルが圧送供給される入力流路16(
図3参照)に連通する入力ポート17と、出力室13に連通する第1開口18とを有する空間である。そして、第1開口18の周囲に形成される第1弁座19に離着座することで第1開口18を開閉するボール弁8を収容する。
【0016】
排出室14は、オイルパン4内のオイル貯留空間に連通してオイルを排出する排出ポート21と、出力室13に連通する第2開口22を有する空間である。そして、第2開口22の周囲に形成される第2弁座23に離着座することで第2開口22を開閉するブリード弁9を収容する。
【0017】
出力室13は、入力室12と排出室14との間に配されて、油圧制御対象の油路への出力を行う出力流路24(
図3参照)に連通する出力ポート25を有する。そして、ボール弁8の第1開口18の開閉によって、入力室12との間が連通及び遮断される。また、ブリード弁9の第2開口22の開閉によって、排出室14との間が連通及び遮断される。
【0018】
第1開口18及び第2開口22は、シャフト10の軸線上に設けられており、シャフト10は第1開口18及び第2開口22に挿通可能に配されている。
また、バルブハウジング7の排出室14の軸方向他端側の筒内部はシャフト10が摺動する摺動孔26に形成されている。そして、この摺動孔26が形成されたバルブハウジング7の部分は、後述するソレノイド装置1の固定磁気回路の一部をなす。
【0019】
ボール弁8は、円球形状を呈した金属ボールであり、入力室12内に配置されて、シャフト10の先端に押圧されることで離座方向(軸方向一端側)へ移動する。
なお、ボール弁8は、入力ポート17の内部に固定されるボールホルダ28の内部に保持されている。ボールホルダ28は、ボール弁8がシャフト10の先端に押圧されていない状態において、入力ポート17から供給される油圧により、ボール弁8を第1弁座19に確実に着座させる範囲にボール弁8を保持するものである。そして、入力ポート17と第1開口18との間が閉塞しないように開口部を備えている。
【0020】
ブリード弁9は、排出室14内のシャフト10にフランジ状に形成されたものであり、ソレノイド装置1の駆動力によって、第2弁座23に着座する。
【0021】
シャフト10は、略棒形状を呈する非磁性体金属製であって、摺動孔26内において軸方向へ摺動自在に支持される。
排出室14内のシャフト10において、ブリード弁9より軸方向他端側の部分は、排出室14を形成するバルブハウジング7の内周面との間に空間が形成されており、この空間にスプリング30が配されている。
【0022】
スプリング30は、一端が排出室14に形成された段部(本実施例では第2弁座23の外側)に、他端がシャフト10に形成された段部10aに支持され、シャフト10を軸方向他端側へ付勢する。
シャフト10は、後述するソレノイド装置1のプランジャ32と常時当接する部材であるため、スプリング30はプランジャ32を軸方向他端側へ付勢する部材ともいえる。
【0023】
ソレノイド装置1は、コイル33、プランジャ32、固定磁気回路、プレート34、コネクタ35等で構成される。
【0024】
コイル33は、通電されると磁力を発生して、プランジャ32と固定磁気回路を通る磁束ループを形成させるものであり、樹脂性のボビンの周囲に、絶縁被覆が施された導線(エナメル線等)を多数巻回したものである。
プランジャ32は、コイル33内で軸方向(断面図における図示左右方向)へ摺動自在に支持され、スプリング30によって軸方向他端側(図示右側)に付勢されている。そして、コイル33の発生磁力により軸方向一端側(図示左側)に駆動する。
【0025】
固定磁気回路は、プランジャ32の軸方向一端側に軸方向に対向して配されるステータ37と、ステータ37に接続されるとともにコイル33を囲うヨーク38とを有する。
ステータ37及びヨーク38は、磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)で形成されている。
なお、前述のバルブハウジング7の一部がステータ37として機能する。すなわち、バルブハウジング7の摺動孔26の形成された部分はコイル33内に挿入されて、プランジャ32に対向配置されることで、磁気回路の一部を形成する。
【0026】
ヨーク38は、コイル33の外周を覆う筒状の外周ヨーク38a、外周ヨーク38aの軸方向他端から径方向内側に延設されて環状を呈する端部ヨーク38b、端部ヨーク38bの径方向内側端から軸方向一端側に突出してコイル33の内部に配される内周ヨーク38cとからなる。
プランジャ32はこの内周ヨーク38cの内側を摺動する。
なお、外周ヨーク38aの一端部とステータ37との間には磁性プレート39が介在している。
【0027】
プレート34は、プランジャ32の後方への移動を規制する円板プレートであり、端部ヨーク38bの軸方向他端面上に固定される。すなわち、内周ヨーク38cの開口を塞ぎ、プランジャ32の軸方向他端側に対向するように固定されている。
【0028】
プランジャ32とプレート34との間には、プランジャ32の移動によって容積変動する容積変動室41が形成される(
図2参照)。
そして、プレート34の中心部には、軸方向に貫通して容積変動室41の内外を連通する呼吸孔42が形成されている。
【0029】
プランジャ32が軸方向に往復移動することにより、呼吸孔42を介して容積変動室41の流体の出入り(呼吸)がなされる。呼吸については後に詳述する。なお、電磁油圧制御弁2はオイルパン4内で用いられるものであり容積変動室41にはオイルが充填されているため、呼吸により出入りする流体はオイルである。
【0030】
〔電磁油圧制御弁2の作動〕
電磁油圧制御弁2は、
図1に示すようにコイル33に通電されていないソレノイドOFF状態では、スプリング30によって、プランジャ32が軸方向他端側に付勢されている。このとき、ボール弁8は第1弁座19に着座しており、ブリード弁9は第2弁座23から離座している。
このため、出力ポート25と排出ポート21とが連通し、入力ポート17と出力ポート25との間が遮断されている。
【0031】
そして、出力油圧を昇圧したい場合には、コイル33への通電を開始してソレノイドON状態とする。
これにより、
図2に示すように、プランジャ32とともにシャフト10が軸方向一端側へ移動し、ボール弁8は軸方向一端側へ押圧され第1弁座19から離座し、ブリード弁9は第2弁座23に着座する。
このため、入力ポート17と出力ポート25とが連通し、出力ポート25と排出ポート21との間が遮断される。
【0032】
〔プランジャ移動に伴う呼吸について〕
図1に示すソレノイドOFFの状態から、
図2に示すソレノイドON状態へ移行する際、プランジャ32とプレート34との間が離れていく過程で、呼吸孔42を介して容積変動室41へ所定体積のオイルが吸い込まれる(吸い込み行程と呼ぶ)。
【0033】
そして、
図2に示すソレノイドONの状態から、
図1に示すソレノイドOFF状態へ移行する際、プランジャ32とプレート34との間が近づいていく過程で、呼吸孔42を介して容積変動室41から所定体積のオイルが吐出される(吐出行程と呼ぶ)。
【0034】
なお、本実施例では、容積変動室41がプランジャ32に形成された孔32aを介してプランジャ32の軸方向一端の空間43にも連通している。このため、吸い込み行程では、孔32aを介する容積変動室41へのオイルの流入も生じる。また、吐出行程では、孔32aを介する容積変動室41へのオイルの流出も生じる。
【0035】
〔本実施例の特徴〕
ソレノイド装置1は、呼吸孔42の開口42aを容積変動室41の外側から覆う呼吸孔カバー50を備える。この呼吸孔カバー50は、呼吸孔42に連通する空間51と、この空間51と外部空間52(オイルパン4内のオイル貯留空間)とを連通する開口51aとを形成する。
【0036】
呼吸孔カバー50は、プレート34の軸方向他端に配されてプレート34との間に空間51を形成する。具体的には、呼吸孔カバー50は、金属板で形成されており、プレス加工により形成された隆起部50aを有し、この隆起部50aとプレート34とで空間51が形成される(
図5参照)。
プレート34と呼吸孔カバー50とは、軸方向に重なった状態で、端部ヨーク38bに形成されたかしめ部によりかしめ固定されている。
【0037】
そして、空間51の容積は、呼吸孔42を介して呼吸により移動するオイルの体積(前記所定体積)よりも大きい。つまり、吸い込み行程または吐出行程において呼吸孔42を通過するオイルの体積よりも大きい。
【0038】
そして、
図3及び
図4に示すように、空間51の外部空間52への開口51aは、重力方向下側に向かって開口している。
【0039】
また、空間51は、開口51aから呼吸孔42に至る経路に屈曲部54を有し、ラビリンス状に設けられている。
すなわち、空間51は、開口51aから呼吸孔42に直線的に向かわないようにラビリンス状に形成されている。
【0040】
具体的には、
図4に示す軸方向から見た平面図において、空間51は、以下に説明する第1流路51b、第2流路51c、第3流路51d、及び第4流路51eを有する(
図6参照)。
【0041】
第1流路51bは、開口51aから重力方向上へ向かう流路である。
第2流路51c及び第3流路51dは、第1流路51bから周方向両側に分岐する流路であって、呼吸孔42の位置を避けて呼吸孔42の位置の径方向外側に円弧状に形成され、第1流路51bから180度隔てた位置で合流する。なお、第2流路51c及び第3流路51dとは呼吸孔42と同心円状に形成され、第2流路51cと第3流路51dとで平面視において呼吸孔42の周囲を囲うリング状の流路を形成する。
第4流路51eは、第2流路51cと第3流路51dとの合流部から呼吸孔42に連通させるべく重力方向下側へ向かう流路である。
【0042】
これによれば、第1流路51bから分岐する際と、第4流路51eへ合流する際に屈曲部54が形成されるため、ラビリンス状となる。
【0043】
また、呼吸孔カバー50は、磁性材料にて形成されている。なお、プレート34は、非磁性材料である。
【0044】
〔本実施例の作用効果〕
本実施例によれば、ソレノイド装置1は、呼吸孔42の開口42aを容積変動室41の外側から覆うとともに、呼吸孔42に連通する空間51と、この空間51と外部空間52とを連通する開口とを形成する呼吸孔カバー50を備える。これにより、呼吸孔42を介する容積変動室41への異物吸い込みリスクを低減できる。
【0045】
従来は、オイルパン4内のオイル貯留空間(外部空間52)のオイルには金属磨耗粉等の異物が存在しているため、吸い込み行程の際に呼吸孔42から金属磨耗粉をソレノイド装置内に吸い込んでしまう虞があった。本実施例では、呼吸孔42の開口を呼吸孔カバー50で覆っているため、呼吸孔42を介する容積変動室41への異物吸い込みリスクを低減できる。
【0046】
また、空間51の体積が呼吸孔42を介して呼吸により移動するオイルの体積よりも大きいため、プランジャ移動に伴う呼吸は、空間51内のオイルが外部空間52との間で行き来することで完結する。
【0047】
すなわち、プランジャ32が軸方向一端側に移動することで容積変動室41が拡大する吸い込み行程では、呼吸孔42を介して容積変動室41へのオイルの吸い込みが生じるが、このとき吸い込まれるオイルは空間51内のオイルである。すなわち、空間51の体積が呼吸孔42を介して呼吸により移動するオイルの体積よりも大きいため、空間51内のオイルの吸い込みのみで足りる。そして、空間51内には外部空間52からのオイルが吸い込まれる。
【0048】
そして、プランジャ32が軸方向他端側に移動することで容積変動室41が縮小する吐出行程では、呼吸孔42を介して容積変動室41からのオイルの吐き出しが生じるが、このとき吐き出されるオイルは空間内にとどまる。そして、空間51内のオイルは外部空間52へと吐き出される。
【0049】
このように、呼吸に伴う外部空間52とのオイルのやり取りをするのは空間51となるため、吸い込み行程で空間内に異物を吸い込んでしまったとしても、吐出行程で異物を空間外に吐き出すことができる。このため、呼吸に伴う外部空間52とのオイルのやりとりを空間51を介さずに呼吸孔42で実施する場合と比較して、呼吸孔42を介する容積変動室41への異物吸い込みリスクを低減できる。
【0050】
また、本実施例では、空間51の外部空間52への開口51aは、重力方向下側に向かって開口している。
これによれば、空間51への異物吸い込みリスクを低減できる。異物の主たるものは金属磨耗粉であり、金属磨耗粉はオイルパン4内で重力方向下側へ向かうからである。
【0051】
また、空間51は、開口51aから呼吸孔42に至る経路に屈曲部54を有し、ラビリンス状に設けられている。
これによれば、
図6に示すように、仮に空間内に異物を吸い込んでしまった場合でも、ラビリンス状となっているため、異物が呼吸孔42に向かいにくい。例えば、本実施例では、異物は慣性により第1流路51bを直進するため、第2流路51c及び第3流路51dへ侵入しにくい。
したがって、呼吸孔42を介する容積変動室41への異物吸い込みリスクを低減できる。
【0052】
また、呼吸孔カバー50は、磁性材料にて形成されている。
これによれば、仮に空間内に異物を吸い込んでしまった場合でも、プランジャ32及び固定磁気回路で形成される磁気回路の影響を受けて、呼吸孔カバー50の内壁面が金属磨耗粉を吸着する(
図7参照)。このため、呼吸孔42を介して容積変動室41へ吸い込んでしまわないように防止できる。
すなわち、呼吸孔42を介する容積変動室41への異物吸い込みリスクを低減できる。
【0053】
〔変形例〕
実施例では、空間51がラビリンス状に形成されていたが、ラビリンス状に設けられていなくてもよい。また、呼吸孔カバー50が非磁性材料にて形成されていてもよい。
また、開口51aが重力方向下側を向いていなくてもよい。
【0054】
また、実施例では、容積変動室41がプランジャ32に形成された孔32aを介してプランジャ32の軸方向一端の空間43にも連通していたが、プランジャ32に孔32aが形成されておらず、空間43と連通していなくてもよい。
【0055】
実施例では、自動変速機の油圧制御に用いられる電磁油圧制御弁2に適用されるソレノイド装置1に本発明を適用した例を示したが、自動変速機以外において油圧やオイル流量を制御する電磁油圧制御弁に本発明を適用してもよい。
また、実施例のソレノイド装置1はオイル内で使用されるものであり、呼吸孔を出入りする流体はオイルであったが、オイルとは異なる液体や気体であってもよい。