(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁性熱伝導フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2記載の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物。
絶縁性熱伝導フィラーの含有量は、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物中、70〜90体積%である請求項1〜3のいずれかに記載の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、121℃におけるムーニー粘度が10以下である含フッ素エラストマー、および、絶縁性熱伝導フィラーを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に用いる含フッ素エラストマーとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および式(1):
CF
2=CF−Rf
a (1)
(式中、Rf
aは−CF
3または−ORf
b(Rf
bは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0020】
別の観点からは、含フッ素エラストマーとしては、非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムが挙げられる。
【0021】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、VdF系フッ素ゴム、TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、TFE/Pr/VdF系フッ素ゴム、エチレン(Et)/HFP系フッ素ゴム、Et/HFP/VdF系フッ素ゴム、Et/HFP/TFE系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらの中でも、VdF系フッ素ゴム、TFE/Pr系フッ素ゴム、又はTFE/Pr/VdF系フッ素ゴムが、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適である。
【0022】
上記VdF系フッ素ゴムは、VdF繰り返し単位を有するフッ素ゴムである。VdF系フッ素ゴムは、VdF繰り返し単位が、VdF繰り返し単位とその他の共単量体に由来する繰り返し単位との合計モル数の20モル%以上、90モル%以下が好ましく、40モル%以上、85モル%以下がより好ましい。更に好ましい下限は45モル%、特に好ましい下限は50モル%である。更に好ましい上限は80モル%である。
【0023】
そして、上記VdF系フッ素ゴムにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、たとえば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、一般式(2)
CH
2=CFRf (2)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体などのフッ素含有単量体;エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体、および反応性乳化剤などが挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、特にPMVEが好ましい。
【0025】
また、上記PAVEとしては、式:CF
2=CFOCF
2ORf
c
(式中、Rf
cは、炭素数1〜6の直鎖または分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、又は、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖または分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるパーフルオロビニルエーテルを用いることもできる。例えば、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、または、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3を用いることが好ましい。
【0026】
上記式(2)で表される含フッ素単量体としては、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rfの炭素数は1〜6であることが好ましい。
上記式(2)で表される含フッ素単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CFCF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
3などが挙げられ、なかでも、CH
2=CFCF
3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0027】
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/Pr共重合体、VdF/Et/HFP共重合体及びVdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。また、VdF以外の他の共単量体として、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の共単量体を有するものであることがより好ましい。
このなかでも、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。
【0028】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45〜85)/(55〜15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは(60〜80)/(40〜20)(モル%)である。
VdF/HFPの組成は、(50〜78)/(50〜22)(モル%)であることも好ましい。
【0029】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30〜80)/(4〜35)/(10〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0030】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65〜90)/(35〜10)(モル%)のものが好ましい。
また、VdF/PAVEの組成は、(50〜78)/(50〜22)(モル%)であることも好ましい形態の一つである。
【0031】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40〜80)/(3〜40)/(15〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0032】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65〜90)/(3〜25)/(3〜25)(モル%)のものが好ましい。
【0033】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40〜90)/(0〜25)/(0〜40)/(3〜35)(モル%)のものが好ましく、(40〜80)/(3〜25)/(3〜40)/(3〜25)(モル%)のものがより好ましい。
【0034】
VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)系共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位が85/15〜20/80(モル%)であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が80/20〜20/80であることがより好ましい。また、VdF/含フッ素単量体(2)単位の組成は、78/22〜50/50(モル%)であることも好ましい形態の一つである。
またVdF/含フッ素単量体(2)単位が85/15〜50/50(モル%)であり、VdFおよび含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であるものも好ましい。VdFおよび含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、Et、Pr、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、および反応性乳化剤などの上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
【0035】
TFE/Pr系フッ素ゴムは、TFE45〜70モル%、Pr55〜30モル%からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分に加えて、特定の第3成分(たとえばPAVE)を0〜40モル%含んでいてもよい。
【0036】
Et/HFP共重合体としては、Et/HFPの組成が、(35〜80)/(65〜20)(モル%)であることが好ましく、(40〜75)/(60〜25)(モル%)がより好ましい。
【0037】
Et/HFP/TFE共重合体は、Et/HFP/TFEの組成が、(35〜75)/(25〜50)/(0〜15)(モル%)であることが好ましく、(45〜75)/(25〜45)/(0〜10)(モル%)がより好ましい。
【0038】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVEからなるものなどが挙げられる。TFE/PAVEの組成は、(50〜90)/(50〜10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは、(55〜75)/(45〜25)(モル%)である。
【0039】
この場合のPAVEとしては、たとえばPMVE、PPVEなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0040】
含フッ素エラストマーの数平均分子量Mnは、1000〜100000であるものが好ましく、2000〜80000であるものが更に好ましく、特に3000〜70000であるものが好ましい。
【0041】
また、たとえば放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の粘度を低くしたい場合などでは、上記の含フッ素エラストマーに他のフッ素ゴムをブレンドしてもよい。他のフッ素ゴムとしては、低分子量液状フッ素ゴム(数平均分子量1000以上)、数平均分子量が10000程度の低分子量フッ素ゴム、更には数平均分子量が100000〜200000程度のフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0042】
含フッ素エラストマーは、フッ素含有率が50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。フッ素含有率の上限は、特に限定されるものではないが、71質量%以下であることが好ましい。
【0043】
含フッ素エラストマーは、121℃におけるムーニー粘度が10以下である。また、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。含フッ素エラストマーは、このように極めて低いムーニー粘度を有するので、絶縁性熱伝導フィラーを多量に添加した場合でも柔軟性に優れるとともに、発熱部材との密着性が向上し、放熱効果が大幅に増大する。ここで、ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定した値である。
【0044】
以上説明した非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフッ素ゴムを製造できる。
【0045】
前記非パーフルオロフッ素ゴムやパーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主単量体の構成であり、架橋性基を与える単量体を共重合したものを用いてもよい。架橋性基を与える単量体としては、製造法や架橋系に応じて適切な架橋性基を導入できるものであればよく、たとえばヨウ素原子、臭素原子、炭素−炭素二重結合、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エステル基などを含む公知の重合性化合物、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0046】
好ましい架橋性基を与える単量体としては、
一般式(3):
CY
12=CY
2R
f2X
1 (3)
(式中、Y
1、Y
2はフッ素原子、水素原子または−CH
3;R
f2は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X
1はヨウ素原子または臭素原子)
で示される化合物が挙げられる。具体的には、たとえば、一般式(4):
CY
12=CY
2R
f3CHR
1−X
1 (4)
(式中、Y
1、Y
2、X
1は前記同様であり、R
f3は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、すなわち水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素オキシアルキレン基、または水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素ポリオキシアルキレン基;R
1は水素原子またはメチル基)
で示されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマー、一般式(5)〜(22):
CY
42=CY
4(CF
2)
n−X
1 (5)
(式中、Y
4は、同一又は異なり、水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数)
CF
2=CFCF
2R
f4−X
1 (6)
(式中、
【化1】
であり、nは0〜5の整数)
CF
2=CFCF
2(OCF(CF
3)CF
2)
m
(OCH
2CF
2CF
2)
nOCH
2CF
2−X
1 (7)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF
2=CFCF
2(OCH
2CF
2CF
2)
m
(OCF(CF
3)CF
2)
nOCF(CF
3)−X
1 (8)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
mO(CF
2)
n−X
1 (9)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
m−X
1 (10)
(式中、mは1〜5の整数)
CF
2=CFOCF
2(CF(CF
3)OCF
2)
nCF(−X
1)CF
3 (11)
(式中、nは1〜4の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
nOCF(CF
3)−X
1 (12)
(式中、nは2〜5の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
n−(C
6H
4)−X
1 (13)
(式中、nは1〜6の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
nOCF
2CF(CF
3)−X
1 (14)
(式中、nは1〜2の整数)
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−X
1 (15)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
1 (16)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数)
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)OCF(CF
3)−X
1 (17)
CH
2=CFCF
2OCH
2CF
2−X
1 (18)
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
mCF
2CF(CF
3)−X
1 (19)
(式中、mは0以上の整数)
CF
2=CFOCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
n−X
1 (20)
(式中、nは1以上の整数)
CF
2=CFOCF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2−X
1 (21)
CH
2=CH−(CF
2)
nX
1 (22)
(式中、nは2〜8の整数)
(一般式(5)〜(22)中、X
1は前記と同様)
で表されるヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマーなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0047】
一般式(4)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしては、一般式(23):
【化2】
(式中、mは1〜5の整数であり、nは0〜3の整数)
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルが好ましく挙げられ、より具体的には、
【化3】
などが挙げられるが、これらの中でも、ICH
2CF
2CF
2OCF=CF
2が好ましい。
【0048】
一般式(5)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、ICF
2CF
2CF=CH
2、I(CF
2CF
2)
2CF=CH
2が好ましく挙げられる。
【0049】
一般式(9)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、I(CF
2CF
2)
2OCF=CF
2が好ましく挙げられる。
【0050】
一般式(22)で示されるヨウ素含有モノマーまたは臭素含有モノマーとしてより具体的には、CH
2=CHCF
2CF
2I、I(CF
2CF
2)
2CH=CH
2が好ましく挙げられる。
【0051】
また、式:R
2R
3C=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1〜5のアルキル基;Zは、直鎖もしくは分岐状の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィン化合物も架橋性基を与える単量体として好ましい。なお、本明細書において、「(パー)フルオロポリオキシアルキレン基」とは、「フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基」を意味する。
【0052】
Zは好ましくは炭素数4〜12の(パー)フルオロアルキレン基であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は好ましくは水素原子である。
【0053】
Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、式:
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数2〜10のオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2〜5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500〜10000、好ましくは1000〜4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、−CH
2OCH
2−及び−CH
2O(CH
2CH
2O)
sCH
2−(s=1〜3)の中から選ばれる。
【0054】
好ましいビスオレフィンは、
CH
2=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2、
CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2、
式:CH
2=CH−Z
1−CH=CH
2
(式中、Z
1は−CH
2OCH
2−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−CH
2OCH
2−(m/nは0.5))
などが挙げられる。
【0055】
なかでも、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2で示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,9−デカジエンが好ましい。
【0056】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は架橋剤を含め架橋させることができる。架橋剤は、架橋系、架橋する含フッ素エラストマーの種類(たとえば共重合組成、架橋性基の有無や種類など)、得られる架橋物の具体的用途や使用形態、そのほか混練条件などに応じて、適宜選択することができる。本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は架橋剤を含んでもよく、含まなくてもよい。
架橋剤を含む場合、その配合量としては、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜9質量部、特に好ましくは0.2〜8質量部である。架橋物の引張破断強度が特に優れる点からは、架橋剤の配合量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が更に好ましい。
【0057】
架橋系としては、たとえば過酸化物架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系、イミダゾール架橋系、トリアジン架橋系などが採用できる。
【0058】
過酸化物架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0059】
過酸化物架橋系の架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物を挙げることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0060】
また、過酸化物架橋系では、通常、架橋促進剤を含むことが好ましい。過酸化物系架橋剤、特に有機過酸化物系架橋剤の架橋促進剤としては、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0061】
過酸化物架橋系で用いる架橋促進剤としてはまた、低自己重合性架橋促進剤を用いることもできる。低自己重合性架橋促進剤は、架橋促進剤としてよく知られているトリアリルイソシアヌレート(TAIC)とは異なり、自己重合性が低い化合物をいう。
【0062】
低自己重合性架橋促進剤としては、たとえば、
【化4】
で示されるトリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)、
【化5】
で示されるp−キノンジオキシム(p−quinonedioxime)、
【化6】
で示されるp,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム(p,p’−dibenzoylquinonedioxime)、
【化7】
で示されるマレイミド、
【化8】
で示されるN−フェニレンマレイミド、
【化9】
で示されるN,N’−フェニレンビスマレイミドなどがあげられる。
【0063】
好ましい低自己重合性架橋促進剤は、トリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)である。
【0064】
過酸化物架橋系で用いる架橋促進剤としてはまた、ビスオレフィンを用いることもできる。
【0065】
架橋促進剤として使用できるビスオレフィンとしては、例えば、式:
R
2R
3C=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じかまたは異なり、いずれもH、または炭素数1〜5のアルキル基;Zは、線状(直鎖状)もしくは分岐状の、酸素原子を含んでいてもよい、少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で示されるビスオレフィンが挙げられる。
【0066】
Zは好ましくは炭素数4〜12のパーフルオロアルキレン基であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7は好ましくは水素原子である。
【0067】
Zが(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である場合、
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qは炭素数1〜10のアルキレンまたはオキシアルキレン基であり、pは0または1であり、m及びnはm/n比が0.2〜5となり且つ該(パー)フルオロポリオキシアルキレン基の分子量が500〜10000、好ましくは1000〜4000の範囲となるような整数である。)で表される(パー)フルオロポリオキシアルキレン基であることが好ましい。この式において、Qは好ましくは、−CH
2OCH
2−及び−CH
2O(CH
2CH
2O)
sCH
2−(s=1〜3)の中から選ばれる。
【0068】
好ましいビスオレフィンとしては、
CH
2=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2、
CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2、
式:CH
2=CH−Z
1−CH=CH
2
(式中、Z
1は−CH
2OCH
2−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m−(CF
2O)
n−CF
2−CH
2OCH
2−(m/nは0.5))
などがあげられる。
【0069】
なかでも、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2で示される3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロ−1,9−デカジエンが好ましい。
【0070】
また、架橋性の観点から、過酸化物架橋系に好適な含フッ素エラストマーとしては、架橋点としてヨウ素原子および/または臭素原子を含むフッ素ゴムが好ましい。ヨウ素原子および/または臭素原子の含有量としては、0.001〜10質量%、更には0.01〜5質量%、特に0.1〜3質量%が、物性のバランスが良好な点から好ましい。
【0071】
過酸化物架橋剤の配合量としては、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜9質量部、特に好ましくは0.2〜8質量部である。過酸化物架橋剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素エラストマーの架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0072】
また、架橋促進剤の配合量は、通常、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜9質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部より少ないと、アンダーキュアとなる傾向があり、10質量部を超えると、物性バランスが低下する傾向がある。
【0073】
ポリオール架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという特徴がある点で好適である。
【0074】
ポリオール架橋剤としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、たとえば、ポリヒドロキシ化合物、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0075】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析する場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0076】
これらの中でも、得られる架橋物などの圧縮永久歪みが小さく、成形性も優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFが更に好ましい。
【0077】
また、ポリオール架橋系では、通常、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0078】
ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などが挙げられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0079】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0080】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどを挙げることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
【0081】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0082】
ポリオール架橋剤の配合量としては、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜7質量部である。ポリオール架橋剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素エラストマーの架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0083】
また、架橋促進剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素エラストマーの架橋が充分に進行しない傾向があり、8質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0084】
ポリアミン架橋系により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または過酸化物架橋系架橋剤を用いて架橋する場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0085】
ポリアミン系架橋剤としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0086】
ポリアミン系架橋剤の配合量としては、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜7質量部である。ポリアミン系架橋剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素エラストマーの架橋が充分に進行しない傾向があり、10質量部を超えると、物性のバランスが低下する傾向がある。
【0087】
本発明においては、架橋系として過酸化物架橋系、ポリオール架橋系又はポリアミン架橋系が好ましく、それぞれの架橋系に適した架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては、有機過酸化物、ポリヒドロキシ化合物、又は、ポリアミン化合物であることが好ましい。
【0088】
本発明で使用する絶縁性熱伝導フィラーとしては、たとえば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;石英粉、炭化シリコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物等が挙げられる。なかでも、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、酸化アルミニウムであることがより好ましい。
【0089】
絶縁性熱伝導フィラーは、更にシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、メタクリル系シラン、フェニル系シラン、ビニル系シラン、アクリル系シラン、イソシアネート系シラン、イソシアヌレート系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン、パーフルオロ系シラン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、メタクリル系シラン、フェニル系シラン、ビニル系シラン、アクリル系シラン、イソシアネート系シラン、イソシアヌレート系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン及びパーフルオロ系シランからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0090】
絶縁性熱伝導フィラーは、粒子径が0.1〜200μmであることが好ましい。絶縁性熱伝導フィラーは、粒子径が1〜150μmであることがより好ましく、2〜100μmであることが更に好ましい。
【0091】
絶縁性熱伝導フィラーの含有量は特に限定されないが、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物中、70〜90体積%が好ましく、70〜85体積%がより好ましい。絶縁性熱伝導フィラーの含有量が70体積%未満であると、熱伝導性が低下する傾向があり、90体積%をこえると、ゴムの混練が困難となったり、成形品の硬度が上昇したり、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物のムーニー粘度が上昇し、成形しにくくなる傾向がある。
【0092】
また、本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、必要に応じて含フッ素エラストマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、硫酸バリウム等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、架橋促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。例えば、カーボンブラックとしては、平均粒径は100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましい。カーボンブラックなどの充填剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して0〜150質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、2〜50質量部であることが更に好ましい。また、ワックス等の加工助剤の含有量としては、パーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対して0〜10質量部であることが好ましい。
【0093】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物から得られた成形品の熱伝導率は特に限定されないが、0.5W/mK以上が好ましく、1W/mK以上がより好ましい。ここで、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により求められた値である。
【0094】
また、該成形品のアスカー硬度C(ピーク値)は80以下が好ましく、50以下がより好ましい。ここで、アスカー硬度Cは、JIS K7312に準拠した方法により求められた値である。
【0095】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の1%分解温度は特に限定されないが、300℃以上が好ましく、330℃以上がより好ましい。ここで、1%分解温度は、熱重量測定により求められた値である。
【0096】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の250℃24時間後の重量減少率は特に限定されないが、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。ここで、250℃24時間後の重量減少率は、含フッ素エラストマー組成物を250℃に維持された電気炉中に24時間入れて取り出し、前後の質量減少量を加熱前の質量で割った百分率である。
【0097】
また、本発明は前記放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形して得られるシートに関する。本発明のシートは、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形することにより製造することもできるし、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形し、得られたシートを架橋することにより製造することもできる。本発明のシートは、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。本発明のシートは柔軟性と熱伝導性、耐熱性に優れているため、パワー半導体などの発熱体とヒートシンクの間や、凍結防止のために加熱が必要な部分とヒーターの間や、排熱回収をするための熱輸送部材の間に挿入することによって、発熱体の放熱材料に好適に使用することができる。具体的には、発熱高温域が存在する車載インバータやDC−DCコンバータ、車載充電器(オンボード・チャージャー)、LEDヘッドライト、自動運転用カメラで得た情報を処理するGPU部分、熱電変換素子と配管の間に挿入するTIM材料等として使用することができる。
【0098】
成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。
【0099】
架橋は、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよいが、通常、150〜300℃の温度で、1分〜24時間焼成する。また、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、架橋することができる。
【0100】
架橋方法としては、特に限定されず、スチーム架橋、加圧成形法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法が採用でき、常温常圧での放射線架橋法であってもよい。最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施してもよい。
【実施例】
【0101】
つぎに本発明を、実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
実施例及び比較例で用いた表1に記載の各材料を以下に示す。
〔含フッ素エラストマー〕
・含フッ素エラストマー(1):VdF/HFP共重合体=78/22モル%、ML1+10(121℃)=3
・含フッ素エラストマー(2):VdF/HFP共重合体=78/22モル%、ML1+10(121℃)<0.1(測定限界以下)
・含フッ素エラストマー(3):VdF/HFP共重合体=78/22モル%、ML1+10(121℃)=25
【0103】
酸化アルミニウム(昭和電工社製、A50BC、粒子径1−100μm、メタクリルシラン処理)
【0104】
実施例1、2及び比較例1
表1に示す組成の含フッ素エラストマー組成物1〜3を調製した。含フッ素エラストマー組成物は、ラボプラストミルを用い、各含フッ素エラストマー(生ゴム)と酸化アルミニウムとを表1に示す量で配合し、通常の方法で混合した。得られた含フッ素エラストマー組成物1〜3を成形して、シートを得た。
【0105】
実施例および比較例で作製した組成物(シート)の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0106】
〔ムーニー粘度(ML1+10(121℃))〕
ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:121℃
【0107】
〔熱伝導率〕
レーザーフラッシュ法により評価する。
測定機器:アルバック理工社製 TC−7000
熱拡散率の決定方法:ハーフタイム法
測定温度:室温25℃
【0108】
〔アスカー硬度C〕
JIS K7312に準拠して測定する。
測定機器:高分子計器株式会社製のデュロメータ(アスカーゴム硬度計C型)
硬度:ピーク値と3秒後の値を測定
測定温度:室温25℃
表中のカッコ内の値は、3秒後の測定値を示す。
【0109】
〔1%分解温度〕
測定機器:日立ハイテクサイエンス社製STA7000
昇温測度:10℃/分
雰囲気:空気中
パン:アルミ製
【0110】
〔重量減少率〕
含フッ素エラストマー組成物を250℃に維持された電気炉中に24時間入れて取り出し、前後の質量減少量を加熱前の質量で割った百分率を重量減少率とした。
【0111】
【表1】
【解決手段】121℃におけるムーニー粘度が10以下である含フッ素エラストマー、および、絶縁性熱伝導フィラーを含むことを特徴とする放熱材料用含フッ素エラストマー組成物に関する。