(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493651
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】着物陳列用スタンド
(51)【国際特許分類】
A47F 7/24 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
A47F7/24 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-28051(P2014-28051)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-150301(P2015-150301A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】309041502
【氏名又は名称】芳川 定史
(72)【発明者】
【氏名】芳川 定史
(72)【発明者】
【氏名】芳川 裕基
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4605487(JP,B1)
【文献】
実開昭49−020494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着物を着姿に近い状態で陳列するためのスタンドであり、床に置くための台部(1)と、該台部から垂直上方に立設した支柱(2)と、該支柱の上端部に取り付けた上部水平棒(3)と、該上部水平棒から垂下された着物支え棒(4)と、前記上部水平棒のそれぞれ両端に、出入り自在に取り付けられた袖支え棒(5)と、前記上部水平棒から垂下された一対の紐(6)と、該一対の紐にフック(7)を介して両端部を支えられて、水平に、かつ段違いに取付られた少なくとも二本の両端支持棒(8)と、前記一対の紐をそれぞれ下端で支える紐掛け部(9)から成り、前記二本の両端支持棒で着物を折り返すことによって、おはしょり部を形成した際に、前記紐掛け部で前記紐の下端を支えることにより、紐のたるみが制限され、かつ前記紐(6)に、前記フック(7)を任意の高さ、又は一定間隔ごとの複数の高さで支えるための手段が設けられていることにより、前記二本の両端支持棒によって着物がS字状に重なる幅、すなわち、おはしょりの量が変化しにくい構造であることを特徴とする着物陳列用スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着物と帯の陳列・展示に使用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着物や帯を陳列する装置は、着物を広げた状態やたたんだ状態で陳列するものや、反物・帯をそのまま掛けるだけのものが一般的だった。
これに対して、本出願人は特許文献1で示したように、着物を着姿に近い状態で展示できるハンガーを発明した。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示したハンガーには、コンパクトに収納できて、部品点数が少なく、比較的安価に製作できる利点があったが、次の2つの欠点があった。
【0004】
第一の欠点は、ハンガータイプだったので、別に一定高さの懸架部分(壁などに固定したフックなど)又は懸架装置(衣桁など)が必要であり、任意の場所に移動することが容易でなかったことである。
第二の欠点は、特許文献1の
図6にて、おはしょり形成棒5b、5cを支えるテープ状の紐4が、下方に垂れ下がっているだけだったので、例えば、おはしょりの量(前後に重なっている量)をせっかく調節しても、着物の裾(下端部分)を下に引けば、おはしょり形成棒5cが上に上がってしまい、おはしょりの量が減ってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4605487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、着物を着姿に近い状態で展示する装置において、上記2つの欠点を解決するために成されたものである。
すなわち、自立したスタンド形にすることにより任意の場所に陳列可能で、一旦おはしょりの量を設定したら、その量が安定して保たれる着物陳列装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
床に置くための台部と、該台部から垂直上方に立設した支柱と、該支柱の上端部に取り付けた上部水平棒と、該上部水平棒から垂下された着物支え棒と、前記上部水平棒のそれぞれ両端に、出入り自在に取り付けられた袖支え棒と、前記上部水平棒から垂下された一対の紐と、該一対の紐にフックを介して両端部を支えられて、水平に、かつ段違いに取付られた少なくとも二本の両端支持棒と、前記一対の紐をそれぞれ下端で支える紐掛け部から成り、前記二本の両端支持棒で着物を折り返すことによって、おはしょり部を形成した際に、前記紐掛け部で前記紐の下端を支えることにより、紐のたるみが制限され、その結果、前記おはしょりの量が変化しにくいことを特徴とする着物陳列用スタンドである。
【0008】
さらに、前記紐に、前記フックを任意の高さ、又は一定間隔ごとの複数の高さで支えるための手段が設けられていることにより、前記両端支持棒の上下方向位置を調節でき、これにより、おはしょりの位置、及び/又は、おはしょりの量、及び/又は、両端支持棒に掛けた帯の位置を調節可能とした。
【発明の効果】
【0009】
着物を着姿に近い状態、すなわち、着物の身頃を人間の身幅に調節できる機能と、おはしょりの形成により着丈を調節できる機能を持ちながら、任意の場所に移動して自立して置くことができるので、店や展示場のレイアウトを自由に設定することができる。
【0010】
着物を着姿に近い状態で展示することにより、色や柄のイメージを正確に認識できる効果がある。
【0011】
一旦、おはしょりの量を設定すると、その量が安定しているので、着物を本スタンドに装着する際の作業が楽になり、且つ、移動や展示中の形崩れがしにくくなった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明による着物陳列スタンドの使用状態における正面図
【
図3】本発明による着物陳列スタンドの使用状態における側面図(支柱2の中ほど及び上部は省略してある)
【
図4】本発明による着物陳列スタンドの使用状態における平面図(
図2におけるA−A断面図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による着物陳列用スタンドの正面図である。
床に置かれた台部1に、支柱2が垂直上方に保持されており、支柱2の上端部に、上部水平棒3が、左右対称になるように固定されている。
前記上部水平棒3の中央に、吊り紐10によって着物支え棒4が垂下されている。
尚、着物支え棒4の垂下手段は、吊り紐10の代わりに、針金状のフックで、上部水平棒3に引っかける構造でも良い。
【0014】
上部水平棒3の形状は、円筒形又は四角パイプ状が好ましく、両端の穴から、U字形(又はJ字形)の袖支え棒5が、出入り自在に挿入されている。
【0015】
上部水平棒3から、ほぼ左右対称に、着物支え棒4の長さよりやや狭い間隔で、一対の紐6が垂下されており、それぞれの紐6の下端部が、支柱2に取り付けられた紐掛け部9に保持されている。
紐掛け部9の高さ位置は、後で説明するおはしょり形成棒8cより下で、かつ、着物の裾より高ければどこでも良い。
【0016】
紐6は、
図3の側面図に示したように、例えば幅広のリボン状のテープを2枚合わせ、一定間隔で縫いあわせたものであり、一定間隔で穴が形成されている。
両端支持棒8の両端に出入り自在に挿入したU字型のフック部7を、紐6の穴に挿入することにより、両端支持棒8の取付高さを調節することができる。
【0017】
両端支持棒は、通常3本使用する。最も上の両端支持棒8aは帯を引っかけるために使用し、下の2本の両端支持棒8b、8cは、おはしょりを形成するために使用する。
【0018】
図2は、本発明による着物陳列用スタンドに着物を装着した状態の正面図、
図3は、左側面図、
図4は平面図(
図2におけるA−A断面図)である。
襟部から着物支え棒4を入れて、着物の肩部を掛け、袖支え棒5を左右の外側から着物の袖にそれぞれ通し、着物支え棒4にかけた着物の前身頃の幅を着姿と同じ程度の幅に調整し、
図4に示したように余った幅は裏側に折り込んでおく。
【0019】
次に
図3に示したように、着物の腰部分を、両端支持棒8cに通してから上方向・裏側に折り込み、おはしょり部分の長さに適した位置で、両端支持棒8bに掛けてから下方向へ折り返す。
側面から見るとS字状に着物が折り返される形になり、おはしょり部分が作られる。
このS字状に着物が重なっている上下幅を、おはしょりの量とする。
本発明によって、紐6の下端部分が、紐掛け部9によって保持されているので、着物を両端支持棒8cに通してから、上方向に引いても、両端支持棒8cが上に動かないので、作業が楽になり、おはしょりの量が安定し、仕上がりもきれいになった。
【0020】
帯を陳列する場合、
図2〜
図4に示したように、両端支持棒8aにたたんだ帯を通し、着物の前身頃表側に置く。その際、着姿に近い位置に帯位置を決める。
当然、帯を陳列しない場合は、両端支持棒8aは装着しない。
【0021】
図4に示したように、両端支持棒8を、U字形のフック7を介して、紐6に装着することにより、一対の紐6の取付間隔を身幅より狭くすることができ、紐6を正面から見えないようにすることができる。
【0022】
図1、2、4では、支柱2を中央に1本設けるとして説明したが、細めの支柱2本を左右に間隔を置いて設置しても良い。
また、支柱2を伸縮可能にして、高さを調節できるようにしても良い。
移動を容易にするために、台部1の下面にキャスターを取り付けても良い。
【0023】
紐6にフック7を保持させる方法については、
図5に示したように、フックを保持するための穴付部品11を別に設けて、該穴付部品11を幅広の紐6の表面に、例えば面ファスナー12を介して装着しても良く、この場合は任意の高さに両端支持棒8を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 台部
2 支柱
3 上部水平棒
4 着物支え棒
5 袖支え棒
6 紐
7 フック
8a 両端支持棒(帯掛け用)
8b、8c 両端支持棒(おはしょり形成棒)
9 紐掛け部
10 吊り紐
11 穴付部品
12 面ファスナー