(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493744
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/24 20060101AFI20190325BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20190325BHJP
F27D 3/16 20060101ALI20190325BHJP
F27B 1/16 20060101ALI20190325BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
F23G5/24 BZAB
F23G5/44 F
F27D3/16 Z
F27B1/16
B09B3/00 302F
B09B3/00 303J
B09B3/00 303K
B09B3/00 302C
B09B3/00 303M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-61577(P2015-61577)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180555(P2016-180555A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年9月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】下村 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−308231(JP,A)
【文献】
特表2010−537153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/24
F23G 5/44
F27B 1/00 − 3/28
F27D 3/16
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に廃棄物の投入口、下部に溶融物の出滓口が設けられているとともに、該出滓口の上方位置に酸素含有気体を炉内へ吹き込む主羽口が設けられている廃棄物ガス化溶融装置において、
主羽口は空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込む空気吹込管と、該空気吹込管外で空気吹込管と並設され酸素を炉内へ吹き込む酸素吹込管とが設けられており、
さらに、主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向の複数位置に設けられ、周方向で一つおきの主羽口からなる第一主羽口群と、他の主羽口からなる第二主羽口群とに別れていて、空気もしくは酸素富化空気を全ての主羽口で常時吹き込み、第一主羽口群における酸素の吹込みと第二主羽口群における酸素の吹込みとを交互に行うように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
燃料としてコークスの供給を受け廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に廃棄物の投入口、下部に溶融物の出滓口が設けられているとともに、該出滓口の上方位置に酸素含有気体を炉内へ吹き込む主羽口が設けられている廃棄物ガス化溶融装置において、
主羽口は空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込む空気吹込管と、該空気吹込管外で空気吹込管と並設され酸素を炉内へ吹き込む酸素吹込管とが設けられており、
さらに、主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向の複数位置に設けられ、空気もしくは酸素富化空気を全ての主羽口で常時吹き込み、炉内の周方向でコークス燃焼が不安定になっている箇所に対応する主羽口で酸素の吹込み、又は酸素吹込み量の増加操作を行うように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項3】
廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に設けられた投入口から廃棄物を投入し、下部に設けられた出滓口から溶融物を出滓するとともに、該出滓口の上方位置に設けられた主羽口から酸素含有気体を炉内へ吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、
主羽口に設けられた空気吹込管から空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込むとともに、空気吹込管外で空気吹込管と並設された酸素吹込管から酸素を炉内へ吹き込み、
主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向の複数位置に設けられ、周方向で一つおきの主羽口からなる第一主羽口群と、他の主羽口からなる第二主羽口群とに別れていて、空気もしくは酸素富化空気を全ての主羽口で常時吹き込み、第一主羽口群における酸素の吹込みと第二主羽口群における酸素の吹込みとを交互に行うことを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項4】
燃料としてコークスの供給を受け廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に設けられた投入口から廃棄物を投入し、下部に設けられた出滓口から溶融物を出滓するとともに、該出滓口の上方位置に設けられた主羽口から酸素含有気体を炉内へ吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、
主羽口に設けられた空気吹込管から空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込むとともに、空気吹込管外で空気吹込管と並設された酸素吹込管から酸素を炉内へ吹き込み、
主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向の複数位置に設けられ、空気もしくは酸素富化空気を全ての主羽口で常時吹き込み、炉内の周方向でコークス燃焼が不安定になっている箇所に対応する主羽口で酸素の吹込み、又は酸素吹込み量の増加操作を行うことを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼して、残留する灰分を溶融しスラグにして排出する廃棄物ガス化溶融炉による廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解、ガス化することによりその熱量を回収することができるとともに、灰分を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
このシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉下部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス床上へ廃棄物を投入して、熱分解、ガス化するとともに残留する灰分を溶融してスラグにする処理を行う炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉下部にコークスを堆積させたコークス充填層(高温燃焼帯)が形成され、このコークス充填層の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれでは酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。炉下部におけるコークス充填層には主羽口が設けられていて、該主羽口に接続された送気管で酸素富化空気が炉内へ吹き込まれ、コークス充填層では投入されて堆積されたコークスが燃焼して、灰分を溶融する溶融熱源となっている。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解、部分酸化及びガス化させる。また、フリーボード部には三段羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持する。
【0007】
このようにシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解、ガス化され、ガスと灰分が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス充填層のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の灰分が溶融されスラグとメタルとして排出される。コークス充填層はコークス同士間に生ずる空隙で、主羽口からの酸素富化空気やコークス燃焼により発生した高温ガスを通ガスさせるとともに、溶融したスラグとメタルを通液させる高温火格子としても機能している。コークス充填層のコークス燃焼により発生した高温ガスが、コークス充填層の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解、ガス化され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出口より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されたガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−060830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス充填層が形成され、コークスが燃焼して灰分の溶融熱源となっている。コークス充填層では供給される廃棄物の質の変動によりコークスの燃焼が不均一、不安定な状況になることがあり、廃棄物ガス化溶融炉の安定的な操業に支障が生じることがある。すなわち、コークス充填層に酸素富化空気を吹き込む主羽口先でコークス燃焼が不安定になり、温度低下が生じたり、燃焼残渣の溶融が不十分なたま未溶融物が主羽口先に付着し閉塞ぎみになり酸素富化空気の送風圧が上昇するなど問題が生じる。
【0010】
従来はこのような問題発生時には送風する酸素富化空気の酸素濃度を高めたり、酸素富化空気供給量を増加させ、コークス燃焼を安定化して対応しているが、十分に改善できないことがある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、主羽口でのコークス燃焼を安定化させ、温度低下と未溶融物の付着を防止してコークス燃焼を安定させることができる廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法は、次のように構成される。
【0013】
<廃棄物ガス化溶融装置>
本発明の廃棄物ガス化溶融装置は、廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に廃棄物の投入口、下部に溶融物の出滓口が設けられているとともに、該出滓口の上方位置に酸素含有気体を炉内へ吹き込む主羽口が設けられている廃棄物ガス化溶融装置において、主羽口は空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込む空気吹込管と、酸素を炉内へ吹き込む酸素吹込管とが設けられており、酸素吹込管が空気吹込管外で該空気吹込管と並設されていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向で分布する複数位置に設けられており、複数の主羽口は、複数の主羽口群に別れていて、各主羽口群が選択的に異なる時期に酸素吹込管から酸素を吹き込むように設定されているようにすることができる。
【0015】
<廃棄物ガス化溶融方法>
本発明の廃棄物ガス化溶融方法は、廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉の上部に設けられた投入口から廃棄物を投入し、下部に設けられた出滓口から溶融物を出滓するとともに、該出滓口の上方位置に設けられた主羽口から酸素含有気体を炉内へ吹き込む廃棄物ガス化溶融方法において、主羽口に設けられた空気吹込管から空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込むとともに、空気吹込管外で該空気吹込管と並設された酸素吹込管から酸素を炉内へ吹き込むことを特徴としている。
【0016】
本発明において、主羽口は廃棄物ガス化溶融炉の周方向で分布する複数位置に設けられており、複数の主羽口は、複数の主羽口群に別れていて、各主羽口群が選択的に異なる時期に酸素吹込管から酸素を吹き込むようにすることができる。
【0017】
このような本発明の装置そして方法にあっては、主羽口先端から空気もしくは酸素富化空気が空気吹出管から炉内へ吹き込まれるとともに、酸素が酸素吹込管から吹き込まれ、空気もしくは酸素富化空気に加え酸素によって主羽口先端近傍でのコークスの燃焼を促進させる。その結果、主羽口先端近傍でのコークス燃焼が不安定になることを防止して、主羽口先での温度低下と未溶融物の付着が防止される。
【0018】
本発明において、上述の主羽口を周方向の複数位置に設け、複数の主羽口群として、各主羽口群を選択的に異なる時期に酸素吹込管から酸素を吹き込むようにすると、少ない酸素使用量でも周方向で均一なコークス燃焼が確保され、また、周方向で不均一な燃焼がある場合には、燃焼不良箇所に対応して位置する主羽口の酸素吹込管を選定して酸素を吹き込むことで周方向でコークス燃焼が均一となる。
【0019】
かくして、コークス燃焼が安定してかつ均一となり、周方向で均一に発生する高温の燃焼ガスは、コークス充填層を通過上昇して、廃棄物充填層を強熱し、均一かつ確実に熱分解が行われる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明は、主羽口に設けられた空気吹込管から空気もしくは酸素富化空気を炉内へ吹き込むとともに、空気吹込管外に並設された酸素吹込管から酸素を炉内へ吹き込むことを特徴としたので、空気吹込管から吹き込まれる空気もしくは酸素富化空気に加え酸素吹込管から吹き込まれる酸素によって、主羽口先端近傍でのコークスの燃焼を促進させる結果、主羽口先端近傍でのコークス燃焼が不安定になることを防止して、コークス燃焼を安定化させて、主羽口先での温度低下と未溶融物の付着が防止されるという効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての廃棄物ガス化溶融装置の概要構成を示す図である。
【
図2】
図1装置における主羽口についての拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置は、燃料としてコークスの供給を受け、廃棄物を熱分解、ガス化し、残留する灰分を溶融するシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1の炉下部に設けられた主羽口から空気もしくは酸素富化空気と酸素を吹き込む点に特徴を有しているが、その特徴についての説明に先立ち、
図1にもとづき、このシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1の概要構成を説明する。
【0023】
<シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉>
図1に示される本発明の一実施形態で採用されているシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1には、該廃棄物ガス化溶融炉1の炉上部に、処理対象物としての廃棄物、燃料としてのコークス、スラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、廃棄物ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0024】
廃棄物ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、コークス、生成するスラグの成分調整材として使用する石灰石をそれぞれ供給する供給装置(図示せず)が配設されており、この供給装置から供給された廃棄物、コークス、石灰石は搬送コンベア(図示せず
)により搬送され炉上部の上記投入口2から炉内に投入されるようになっている。
【0025】
ガス排出口3には二次燃焼室10が接続して設けられており、廃棄物を熱分解、ガス化して生成した可燃性ガスを燃焼する。該二次燃焼室10は、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、この二次燃焼室10には、該二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が隣接して設けられている。
【0026】
上記シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1は、該廃棄物ガス化溶融炉1の内部空間が縦方向で4つの領域に区分されていて、下方から、コークス充填層A、移動層B、ガス化層C、フリーボード部Dが形成される。
【0027】
かかる廃棄物ガス化溶融炉1では、コークス充填層A、ガス化層Cのそれぞれで、羽口が設けられ酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。
【0028】
炉下部におけるコークス充填層Aには主羽口5が設けられ、酸素富化空気と酸素が吹き込まれる。ガス化層Cには副羽口6が設けられ、空気が吹き込まれる。
【0029】
<主羽口>
本実施形態では主羽口5から空気と酸素を吹き込む場合について説明するが、酸素富化空気と酸素を吹き込む場合も同様の形態である。主羽口5は、
図2に見られるように、廃棄物ガス化溶融炉1の炉壁の内面側に取り付けられている羽口本体5Cにより先端部が保持されている空気吹込管5Aと、該空気吹込管5A外に並設された酸素吹込管5Bとを有している。羽口本体5Cは外面がテーパ面をなしていて炉壁の対応孔部に強固に取り付けられている。該羽口本体5Cは内部に空気又は水等の冷媒を流通させて冷却されることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、上記酸素吹込管5Bは空気吹込管5A外で該空気吹込管5Aと平行な位置で上記羽口本体5Cにより保持されており、1本の酸素吹込管5Bが図示されているが、必ずしも1本でなくともよく、空気吹込管5A内をとりまくように複数本設けてもよい。かくして、空気吹込管5Aからは空気もしくは酸素富化空気が炉内に吹き込まれ、酸素吹込管5Bからは酸素が炉内に吹き込まれる。空気吹込管5Aそして酸素吹込管5Bは、炉外に設けられたそれぞれの弁により、流量の調整、供給時期の可変設定がなされるようになっている。
【0031】
このような空気吹込管5Aそして酸素吹込管5Bを有する主羽口5は、廃棄物ガス化溶融炉1の周方向で複数位置に設けられている。複数の主羽口5は複数の主羽口5群を形成していて、各主羽口5群における空気吹込管5Aが共通の空気供給管(図示せず)に接続されており、各主羽口5群における酸素吹込管5Bが共通の酸素供給管(図示せず)に接続されている。空気供給管そして酸素供給管にはそれぞれ流量調整、供給時期の可変設定のための弁が取り付けられている。例えば、主羽口5を廃棄物ガス化溶融炉1に対して、周方向で8箇所に設け、一つおきの4つの主羽口を第一主羽口群とし、他の4つを第二主羽口群として、それぞれの主羽口群における4つの空気吹込管が共通の空気供給管に接続され、4つの酸素吹込管が共通の酸素供給管に接続されているようにすることができる。
【0032】
かくして、空気もしくは酸素富化空気については第一主羽口群そして第二主羽口群で常時吹き込み、第一主羽口群における酸素の吹込みと第二主羽口群における酸素の吹込みとを交互に行うようにすることができる。また、第一主羽口群における酸素吹き込み量の増加と空気もしくは酸素富化空気吹き込み量の減少操作と第二主羽口群における酸素吹き込み量の増加と空気もしくは酸素富化空気吹き込み量の減少操作を交互に行うようにすることもできる。また、酸素の吹込みを主羽口の選択により炉内の周方向でコークス燃焼が不安定になっている箇所のみに対して適宜行うように、あるいはコークス燃焼が不安定になっている箇所への酸素吹き込み量を多くするようにしてもよい。
【0033】
このように構成される本実施形態装置では、廃棄物の廃棄物ガス化溶融処理は次の要領で行われる。
【0034】
<廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融方法>
供給装置からの廃棄物、コークス、石灰石が廃棄物ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、特に、主羽口5からは、既述したように空気もしくは酸素富化空気と酸素が炉内へ吹き込まれ、副羽口6から空気が炉内へ吹き込まれる。
【0035】
上記投入口2から投入された廃棄物は、炉内に堆積して廃棄物のガス化層Cを形成し、炉下部の移動層Bから上昇してくる高温の燃焼ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって加熱され、乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスを含む燃焼ガスは上昇し、可燃性ガスの一部がフリーボード部Dにて燃焼され、炉内部を所定温度に維持し、熱分解により発生した有害物とタール分を分解させる処理が施される。フリーボード部Dを通過したガスは炉上部に設けられたガス排出口3より、炉外の二次燃焼室10へ排出される。ガスは可燃性ガスを多量に含んでいて二次燃焼室10で空気送風口11から空気を吹き込まれ燃焼され、ボイラ12で燃焼ガスから熱回収され蒸気を発生させ、その蒸気が発電等に用いられる。ボイラ12から排出された排ガスは、サイクロン(図示せず)で比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置(図示せず)で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機(図示せず)で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突(図示せず)から大気に放散される。
【0036】
ガス化層Cで廃棄物は熱分解されてガスが生成され、さらに、熱分解により生じた固定炭素や灰分は、コークス及び石灰石とともに下降し移動層Bを形成する。移動層Bでは、コークス充填層Aから上昇してくる高温のガスにより下降するこれらの固体の昇温が行われると同時に、高温のCO
2ガスにより廃棄物の熱分解により生じた固定炭素がガス化される。コークス充填層Aでは主羽口5から吹き込まれる空気もしくは酸素富化空気と酸素によりコークス、燃料ガスとガス化されずに残った廃棄物の固定炭素が燃焼され、この燃焼熱により廃棄物の灰分が溶融され溶融スラグと溶融メタルが生成される。石灰石は灰分が溶融されたスラグの性状を好ましいものとする調整材として働く。さらに、発生した高温の燃焼ガスが上昇し廃棄物の熱分解のために加熱する熱源となる。
【0037】
主羽口5から下方の炉下部では、高温になりながらも燃え尽きていないコークスがコークス塊同士の間隙を保持して充填された状態でコークス充填層Aを形成しており、溶融スラグと溶融メタルはコークス塊同士の間隙を滴下し炉底に達する。溶融スラグと溶融メタルは炉底に達するまでに均質化され性状が安定化され、炉底に設けられた出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。主羽口5から送風される空気もしくは酸素富化空気と酸素、コークスと固定炭素の燃焼により発生した高温の燃焼ガスとは、コークス充填層Aから移動層Bを通過しガス化層Cへ上昇して廃棄物を加熱し、ガス化層Cの廃棄物が副羽口6から供給される空気により部分酸化、熱分解、ガス化される。コークス充填層Aでは、コークス、燃料ガスが燃焼して灰分溶融と廃棄物熱分解の熱源となり、コークスが塊同士の間隙を保持して酸素富化空気と高温の燃焼ガスとを通気させ、溶融スラグと溶融メタルとを通液させる高温火格子の機能を有している。
【0038】
<主羽口からの空気もしくは酸素富化空気と酸素の吹込み>
上述したように、主羽口5では、空気吹込管5Aから空気もしくは酸素富化空気が吹き込まれ、酸素吹込管5Bから酸素が吹き込まれる。このように、空気もしくは酸化富化空気に加え酸素をも吹き込み、コークスの燃焼を促進し、コークス燃焼が不安定になることを防止し、主羽口先温度を上げて主羽口先における未溶融物の付着そして温度低下を防止する。コークスの燃焼により生じた高温の燃焼ガスは、コークス充填層Aを上昇通過後、移動層B、ガス化層Cへ達し、廃棄物を均一かつ確実に熱分解する。また、複数の主羽口は、主羽口ごとに吹込み対応が可能なため、主羽口先状況の良い主羽口の状況を悪化させることはない。
【0039】
本発明において、酸素吹込管5Bから炉内へ吹き込む酸素の流速は、超音速であることが好ましい。このため、25℃程度の常温であれば酸素の流速を350m/sec以上とし、酸素温度が1℃上昇するにつれ流速を0.6m/sec増加させ、酸素温度に対応して酸素流速を超音速とするように、主羽口の口径、酸素流量等を設定する。このように炉内に吹き込む酸素流速を超音速とすることにより、炉下部での酸素送風を均一化することができる。
【0040】
廃棄物ガス化溶融炉1の周方向の複数位置に設けられている主羽口5は、それぞれ個別に空気もしくは酸素富化空気そして酸素の吹込み流量の調整、吹込み時期の選定を可能として、周方向での燃焼不安定箇所の発生に対応できる。また、既述のように、複数の主羽口が複数の主羽口群に別れていて、各主羽口群が選択的に異なる時期に酸素吹込管から酸素を吹き込むように設定され、複数の主羽口群として各主羽口群ごとに吹込み時期をずらし、あるいは交互に吹き込むように操業を行ってもよい。こうすることで、過不足のない流量での酸素を吹き込むことで、コークス燃焼が不安定になることを防止し、主羽口先温度を上げて主羽口での未溶融物の付着や温度低下が防止される。
【0041】
複数の主羽口群のうちの各主羽口群ごとに吹込み時期をずらす操業の例として、空気もしくは酸素富化空気については第一主羽口群そして第二主羽口群で常時吹き込み、第一主羽口群における酸素の吹込みと第二主羽口群における酸素の吹込みとを交互に行うようにすることができる。また、第一主羽口群における酸素吹き込み量の増加と空気もしくは酸素富化空気吹き込み量の減少操作と第二主羽口群における酸素吹き込み量の増加と空気もしくは酸素富化空気吹き込み量の減少操作を交互に行うようにすることもできる。酸素吹き込み量の増加と、空気もしくは酸素富化空気吹き込み量の減少を行う操作では、空気もしくは酸素富化空気の吹き込みにより供給される酸素量と酸素吹き込みにより供給される酸素量の総和を所定範囲内とする操業を行うことができる。また、酸素の吹込みを主羽口又は主羽口群の選択により炉内の周方向でコークス燃焼が不安定になっている箇所のみに対して適宜行うように、あるいはコークス燃焼が不安定になっている箇所への酸素吹き込み量を多くするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 廃棄物ガス化溶融炉
2 投入口
4 出滓口
5 主羽口
5A 空気吹込管
5B 酸素吹込管