(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の画像追尾装置では、類似度の最も高い被写体が追尾対象として設定されている。そのため、上記のサッカー選手の例のように、追尾対象の向き等によってその類似度が低下してしまう場面では、追尾対象の誤設定が避けられない。また、撮影画像内においてテンプレート画像との差分が本来の追尾対象よりも小さい部分が生じる場面でも、追尾対象の誤設定が避けられない。すなわち、特許文献1に記載の画像追尾装置では、本来の追尾対象と類似する被写体が多い場合、これらの被写体の類似度が変動することにより、追尾対象の誤設定が発生しやすいという問題が指摘される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、本来の追尾対象と類似する被写体が多い場合であっても、追尾対象の誤検出が発生し難い画像追尾装置及び画像追尾方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像追尾装置は、撮影画像の中から複数の追尾対象候補を選出する選出手段と、選出された複数の追尾対象候補の中から撮影状態に基づいて追尾対象を設定する設定手段とを備える。
設定手段は、複数の撮影画像を比較し、撮影画像全体の差分値が第一の閾値以上であり且つ該撮影画像内の所定領域における差分値が第二の閾値未満である場合に、該所定領域内に写る追尾対象候補を前記追尾対象として設定する。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、撮影状態に基づいて追尾対象が設定されるため、上記のサッカー選手の例のように、追尾対象の向き等によってその類似度が低下する場面であっても、撮影画像内においてテンプレート画像との差分が本来の追尾対象よりも小さい部分が生じる場面であっても、追尾対象の誤設定が避けられる。すなわち、本発明の一実施形態によれば、本来の追尾対象と類似する被写体が多い場合であっても、追尾対象の誤検出が避けられる。
【0009】
また、本発明の一実施形態において、設定手段は、
(1)画像追尾装置を備える撮影装置が静止状態であるか否か、
(2)撮影装置に備えられる撮影レンズの焦点距離が短焦点端側又は長焦点端側であるか、
の少なくとも1つに基づいて追尾対象を設定する構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る画像追尾装置は、撮影画像内の被写体の動きを推定する動き推定手段を備える構成としてもよい。この場合、設定手段は、
(A)撮影装置が静止状態である場合、
(B)撮影レンズの焦点距離が短焦点端側である場合、
(C)前回の撮影画像と今回の撮影画像との差分値が
第三の閾値未満である場合、
の少なくとも1つが満たされる場合、複数の追尾対象候補の中から動き推定手段による被写体の動きの推定結果に基づいて追尾対象を設定する構成としてもよい。
【0011】
また、本発明の一実施形態において、設定手段は、前回の撮影画像と今回の撮影画像とを比較し、撮影画像全体の差分値が第二の閾値以上であり且つ該撮影画像内の所定領域における差分値が第三の閾値未満である場合に、該所定領域内に写る追尾対象候補を追尾対象として設定する構成としてもよい。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る画像追尾装置は、追尾対象を表す基準画像を記憶する記憶手段と、記憶された基準画像と撮影画像内の各被写体の画像との類似度を演算する類似度演算手段とを備える構成としてもよい。この場合、設定手段は、撮影画像全体の差分値が
第一の閾値以上であり且つ該撮影画像内の所定領域における差分値が
第二の閾値以上である場合に、類似度演算手段による演算結果に基づいて類似度が最も高い被写体を追尾対象として設定する構成としてもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る画像追尾方法は、撮影画像の中から複数の追尾対象候補を選出するステップと、選出された複数の追尾対象候補の中から所定の撮影状態に基づいて追尾対象を設定するステップとを含
み、設定するステップにて、複数の撮影画像を比較し、撮影画像全体の差分値が第一の閾値以上であり且つ該撮影画像内の所定領域における差分値が第二の閾値未満である場合に、該所定領域内に写る追尾対象候補を前記追尾対象として設定する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本来の追尾対象と類似する被写体が多い場合であっても、追尾対象の誤検出が発生し難い画像追尾装置及び画像追尾方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る撮影装置について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態として、デジタル一眼レフカメラについて説明する。なお、撮影装置は、デジタル一眼レフカメラに限らず、例えば、ミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラ、カムコーダ、タブレット端末、PHS(Personal Handy phone System)、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム機など、撮影機能を有する別の形態の装置に置き換えてもよい。
【0017】
[撮影装置1の構成]
図1は、本実施形態の撮影装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、撮影装置1は、システムコントローラ100、操作部102、駆動回路104、撮影レンズ106、絞り108、シャッタ110、固体撮像素子112、信号処理回路114、画像処理エンジン116、バッファメモリ118、カード用インタフェース120、LCD(Liquid Crystal Display)制御回路122、LCD124、ROM(Read Only Memory)126、ジャイロセンサ128、加速度センサ130、地磁気センサ132及びGPS(Global Positioning System)センサ134を備えている。なお、撮影レンズ106は、複数枚のレンズからなるズームレンズであるが、
図1においては便宜上一枚のレンズとして示す。
【0018】
操作部102には、電源スイッチやレリーズスイッチ、撮影モードスイッチなど、ユーザが撮影装置1を操作するために必要な各種スイッチが含まれる。ユーザにより電源スイッチが操作されると、図示省略されたバッテリから撮影装置1の各種回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。
【0019】
システムコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)を含む。システムコントローラ100は電源供給後、ROM126にアクセスして制御プログラムを読み出してワークエリア(不図示)にロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、撮影装置1全体の制御を行う。
【0020】
レリーズスイッチが操作されると、システムコントローラ100は、例えば、固体撮像素子112により撮像された画像に基づいて計算された測光値や、撮影装置1に内蔵された露出計(不図示)で測定された測光値に基づき適正露出が得られるように、駆動回路104を介して絞り108及びシャッタ110を駆動制御する。より詳細には、絞り108及びシャッタ110の駆動制御は、プログラムAE(Automatic Exposure)、シャッタ優先AE、絞り優先AEなど、撮影モードスイッチにより指定されるAE機能に基づいて行われる。また、システムコントローラ100はAE制御と併せてAF(Autofocus)制御を行う。AF制御には、アクティブ方式、位相差検出方式、コントラスト検出方式等が適用される。また、AFモードには、中央一点の測距エリアを用いた中央一点測距モード、複数の測距エリアを用いた多点測距モード等がある。システムコントローラ100は、AF結果に基づいて駆動回路104を介して撮影レンズ106を駆動制御し、撮影レンズ106の焦点を調整する。なお、この種のAE及びAFの構成及び制御については周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
被写体からの光束は、撮影レンズ106、絞り108、シャッタ110を通過して固体撮像素子112の受光面にて受光される。固体撮像素子112は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。固体撮像素子112は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、固体撮像素子112は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子112はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0022】
信号処理回路114は、固体撮像素子112より入力される画像信号に対してクランプ、デモザイク等の所定の信号処理を施して、画像処理エンジン116に出力する。画像処理エンジン116は、信号処理回路114より入力される画像信号に対してマトリクス演算、Y/C分離、ホワイトバランス等の所定の信号処理を施して輝度信号Y、色差信号Cb、Crを生成し、JPEG(Joint Photographic Experts Group)等の所定のフォーマットで圧縮する。バッファメモリ118は、画像処理エンジン116による処理の実行時、処理データの一時的な保存場所として用いられる。また、撮影画像の保存形式は、JPEG形式に限らず、最小限の画像処理(例えば黒レベルの補正等)しか施されないRAW形式であってもよい。
【0023】
カード用インタフェース120のカードスロットには、メモリカード200が着脱可能に差し込まれている。
【0024】
画像処理エンジン116は、カード用インタフェース120を介してメモリカード200と通信可能である。画像処理エンジン116は、生成された圧縮画像信号(撮影画像データ)をメモリカード200(又は撮影装置1に備えられる不図示の内蔵メモリ)に保存する。
【0025】
また、画像処理エンジン116は、生成された輝度信号Y、色差信号Cb、Crをフレームメモリ(不図示)にフレーム単位でバッファリングする。画像処理エンジン116は、バッファリングされた信号を所定のタイミングで各フレームメモリから掃き出して所定のフォーマットのビデオ信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122は、画像処理エンジン116より入力される画像信号を基に液晶を変調制御する。これにより、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。ユーザは、AE制御及びAF制御に基づいて適正な露出及びピントで撮影されたリアルタイムのスルー画(ライブビュー)を、LCD124の表示画面を通じて視認することができる。
【0026】
画像処理エンジン116は、ユーザにより撮影画像の再生操作が行われると、操作により指定された撮影画像データをメモリカード200又は内蔵メモリより読み出して所定のフォーマットの画像信号に変換し、LCD制御回路122に出力する。LCD制御回路122が画像処理エンジン116より入力される画像信号を基に液晶を変調制御することで、被写体の撮影画像がLCD124の表示画面に表示される。
【0027】
[画像追尾処理]
図2は、本発明の一実施形態においてシステムコントローラ100により実行される画像追尾処理のフローチャートを示す。
図2の画像追尾処理は、例えば追尾対象の画像(以下、説明の便宜上「追尾対象テンプレート画像」と記す。)が設定された時点で初回の実行が開始される。
図2の画像追尾処理の2回目以降の実行は、撮影画像が更新される毎(新たなフレーム画像が撮影される毎)に開始される。
【0028】
例示的には、ユーザ操作により撮影画像内で指定された指定枠内に収まる被写体の画像や、撮影装置1側で自動的に設定された被写体の画像、バッファメモリ118やROM126等の記憶領域に予め記憶された複数の規定画像の中からユーザ操作により指定された画像が追尾対象テンプレート画像として設定される。設定された追尾対象テンプレート画像は、
図2の画像追尾処理の実行期間中、バッファメモリ118等の記憶領域に一時的に記憶される。
図2の画像追尾処理が実行されると、追尾対象に設定された被写体にピントが合うようにAF制御が行われる。
【0029】
[
図2のS11(追尾対象テンプレート画像の種別検出)]
本実施形態では、多数の種別判定用画像(人物や動物、植物、乗り物、建物等の画像)がROM126等の記憶領域に予め記憶されている。また、ユーザ操作に応じて撮影画像内より抽出された被写体の画像が種別判定用画像としてバッファメモリ118等の記憶領域に追加的に記憶される場合もある。
【0030】
本処理ステップS11では、追尾対象テンプレート画像とバッファメモリ118やROM126等の記憶領域に記憶された種別判定用画像とのパターンマッチング処理が行われ、追尾対象テンプレート画像との差分値が最も少ない種別判定用画像の種別(人物や動物、植物、乗り物、建物等)が追尾対象テンプレート画像の種別として検出される。なお、画像の種別を検出する技術は周知技術であり、例えば、特開2010−81246号公報や特開2011−211695号公報にて参照することができる。また、追尾対象テンプレート画像の種別は、追尾対象テンプレート画像が変更されない限り変わることが無い。そのため、本処理ステップS11の実行は、
図2の画像追尾処理の初回実行時(追尾対象テンプレート画像の設定又は設定変更直後の実行時)に限られており、該画像追尾処理の2回目以降の実行時には省略される。
【0031】
[
図2のS12(追尾対象候補の選出)]
本処理ステップS12では、撮影画像の中から複数の追尾対象候補が選出される。例示的には、撮影画像の中からパターンマッチング処理により追尾対象テンプレート画像と類似度の高い画像領域が複数検索され、検索された各画像領域に写る被写体が追尾対象候補として選出される。本実施形態では、追尾対象テンプレート画像との差分値が少ない(所定の閾値未満の)画像領域が類似度の高い画像領域として検索される。以下、説明の便宜上、本処理ステップS12で用いられる閾値を「候補選出用閾値」と記す。
【0032】
候補選出用閾値は、追尾対象テンプレート画像との形状の類似度に関する閾値及び追尾対象テンプレート画像との色彩の類似度に関する閾値(色彩閾値)を含む。以下、形状の類似度に関する閾値を「形状閾値」と記し、色彩の類似度に関する閾値を「色彩閾値」と記す。形状閾値及び色彩閾値は、処理ステップS11(追尾対象テンプレート画像の種別検出)にて検出された追尾対象テンプレート画像の種別に応じて設定される。下記に、形状閾値及び色彩閾値の設定例を挙げる。
【0033】
・設定例1(追尾対象テンプレート画像の種別が人物)
人物は、身体の向きが変わった時等に撮影装置1側から見たときの形が変わりやすい。一方、肌の色等は照明によって変わるものの、形と比べると、変わりやすくはない。そこで、本設定例1では、形状閾値が緩めの値に設定され、色彩閾値が厳しめの値に設定される。
【0034】
・設定例2(追尾対象テンプレート画像の種別が動物)
動物は、人物と比べて多種多様である。そこで、本設定例2では、形状閾値が通常の値(緩めの値と厳しめの値の中間値)に設定され、色彩閾値も通常の値に設定される。
【0035】
・設定例3(追尾対象テンプレート画像の種別が車)
車等の人工物は、他の種別と比べると、撮影状況に応じた形状及び色彩の変化が少ない部類に入る。そこで、本設定例3では、形状閾値が通常の値に設定され、色彩閾値が厳しめの値に設定される。
【0036】
・設定例4(追尾対象テンプレート画像の種別が花)
本設定例4は、花がマクロ撮影されている場合の設定例である。マクロ撮影時に微妙に揺れる被写体については判定を厳しくしたいため、本設定例4では、形状閾値が厳しめの値に設定され、色彩閾値も厳しめの値に設定される。
【0037】
[
図2のS13(撮影状態の情報の取得)]
本処理ステップS13では、現在の撮影状態の情報が取得される。本実施形態では、現在の撮影状態の情報として、例えば、
(1)撮影装置1の状態(静止状態又は非静止状態)
(2)撮影レンズ106の焦点距離(短焦点端側の焦点距離又は長焦点端側の焦点距離)
が取得される。
【0038】
・撮影状態の情報(1)の取得例
本実施形態では、
図2の画像追尾処理とは別個に、撮影装置1の筺体が静止状態であるか否かを判定する判定処理が定期的に実行されている。本判定処理では、例示的には、ジャイロセンサ128より入力される振れ検出信号のうち一定周波数以上の信号成分の振幅が一定期間継続してある閾値以内に収まる場合に静止状態であると判定され、該閾値以内に収まらない場合に非静止状態であると判定される。本処理ステップS13では、本判定処理の判定結果に応じた情報(静止状態であるか非静止状態であるか)が取得される。撮影装置1の筺体の静止状態としては、典型的には、撮影装置1が三脚に固定された状態が挙げられる。
【0039】
撮影装置1の静止状態は、ジャイロセンサ128に代えて、加速度センサ130、地磁気センサ132、GPSセンサ134など、他のセンサより出力される情報に基づいて判定されてもよい。また、判定精度を向上させるため、例えばセンサ・フュージョン技術を適用し、これらのセンサより出力される情報が複合的に用いられるようにしてもよい。
【0040】
・撮影状態の情報(2)の取得例
撮影レンズ106と通信することにより、撮影レンズ106の焦点距離(画角)の情報が取得される。本処理ステップS13では、短焦点端(広角端)と長焦点端(望遠端)との中間の焦点距離を中焦点距離と定義した場合に、中焦点距離よりも短い焦点距離が「短焦点端側」の焦点距離の情報として取得され、中焦点距離以上の焦点距離が「長焦点端側」の焦点距離の情報として取得される。
【0041】
[
図2のS14(撮影装置1の状態判定)]
本処理ステップS14では、処理ステップS13(撮影状態の情報の取得)にて取得された情報に基づいて撮影装置1が静止状態であるか否かが判定される。
【0042】
[
図2のS15(撮影レンズ106の焦点距離判定)]
本処理ステップS15は、処理ステップS14(撮影装置1の状態判定)にて撮影装置1が非静止状態であると判定された場合(S14:NO)に実行される。本処理ステップS15では、処理ステップS13(撮影状態の情報の取得)にて取得された情報に基づいて撮影レンズ106の焦点距離が短焦点端側又は長焦点端側であるかが判定される。
【0043】
[
図2のS16(撮影画像の変化判定)]
本処理ステップS16は、処理ステップS15(撮影レンズ106の焦点距離判定)にて撮影レンズ106の焦点距離が長焦点端側(望遠端側)であると判定された場合(S15:長焦点端側)に実行される。本処理ステップS16では、前フレーム(現フレームの1つ前のフレーム)の撮影画像と現フレームの撮影画像との差分値が所定値未満(例えば対応画素(同一アドレスの画素)間で所定のレベル差以上となるものの数が所定数未満)であるか否か、言い換えると、前フレームと現フレームとで撮影画像の変化が全体的に少ないか否かが判定される。
【0044】
[
図2のS17(追尾対象の設定)]
本処理ステップS17は、
(A)処理ステップS14(撮影装置1の状態判定)にて撮影装置1が静止状態であると判定された場合(S14:YES)、
(B)処理ステップS15(撮影レンズ106の焦点距離判定)にて撮影レンズ106の焦点距離が短焦点端側(広角端側)であると判定された場合(S15:短焦点端側)、
(C)処理ステップS16(撮影画像の変化判定)にて前フレームの撮影画像と現フレームの撮影画像との差分値が所定値未満であると判定された場合(S16:YES)、
の何れかの場合に実行される。
【0045】
撮影装置1が静止状態である場合(上記(A))は、撮影範囲が固定されている。そのため、基本的に、背景の変化が少なく、前フレームと現フレームとで撮影画像の変化が全体的に少ない。また、撮影レンズ106の焦点距離が短焦点端側(広角端側)にある場合(以下、説明の便宜上、「広角撮影時」と記す。上記(B))は、撮影装置1が殆ど動かされない又はゆっくり動かされる場合が多い。この場合、極僅かな時間(本実施形態では1フレーム期間)で考えると、撮影範囲が実質的に固定されていると言っても差し支えない。そのため、この場合も、基本的に、背景の変化が少なく、前フレームと現フレームとで撮影画像の変化が全体的に少ない。また、前フレームと現フレームとで撮影画像の差分値が所定値未満の場合(上記(C))も同様に、極僅かな時間で考えると、撮影範囲が実質的に固定されており、撮影範囲の変化が少なく、背景の変化が少ないといえる。
【0046】
すなわち、本処理ステップS17は、撮影範囲が実質的に固定されている場合に実行される。このように、撮影範囲が実質的に固定されている場合は、撮影装置1の動きを考慮する必要がないため、バッファメモリ118等の記憶領域に記憶された履歴(過去の撮影画像)から追尾対象の動きを推定しやすい。そこで、本処理ステップS17では、前フレームで追尾していた追尾対象の動き(動きベクトル)が推定される。追尾対象の動きベクトルは、例えば、オプティカルフロー(勾配法、ブロックマッチング法等)や撮影画像の周波数解析など、周知の推定技術を用いて推定される。
【0047】
本処理ステップS17では、推定された動きベクトルに基づいて現フレームでの追尾対象の位置が推定され、推定された位置に最も近い追尾対象候補が処理ステップS12(追尾対象候補の選出)にて選出された複数の追尾対象候補の中から選択され、選択された追尾対象候補が追尾対象として設定される。なお、
図2の画像追尾処理の初回実行時は、履歴が存在しない。そのため、例えば、処理ステップS12(追尾対象候補の選出)にて選出された複数の追尾対象候補の中から追尾対象テンプレート画像との類似度が最も高い追尾対象候補が追尾対象として設定されたり、撮影範囲の中央領域に写る追尾対象候補が追尾対象として設定されたりする。本処理ステップS17において追尾対象が設定されると、
図2の画像追尾処理が終了する。
【0048】
[
図2のS18(所定領域の変化判定)]
本処理ステップS18は、処理ステップS16(撮影画像の変化判定)にて前フレームの撮影画像と現フレームの撮影画像との差分値が所定値以上であると判定された場合(S16:NO)に、言い換えると、前フレームと現フレームとで撮影画像の変化が全体的に多い場合に実行される。本処理ステップS18では、撮影範囲内の所定領域(本実施形態では中央領域)の画像について、前フレームと現フレームとの差分値が所定値(上記とは別の値)未満であるか否かが判定される。
【0049】
[
図2のS19(追尾対象の設定)]
本処理ステップS19は、処理ステップS18(所定領域の変化判定)にて撮影範囲内の中央領域の画像について、前フレームと現フレームとの差分値が所定値未満であると判定された場合(S18:YES)に実行される。撮影レンズ106の焦点距離が長焦点端側(望遠端側)にあるとき(以下、説明の便宜上、「望遠撮影時」と記す。)は、特定の被写体を追いかけてパンやチルト等することが多い。パン撮影やチルト撮影が上手く行われていると、典型的には、追尾対象が撮影範囲の中央領域に位置し続ける。そこで、本処理ステップS19では、撮影範囲の中央領域に位置する追尾対象候補が追尾対象として設定される。本処理ステップS19において追尾対象が設定されると、
図2の画像追尾処理が終了する。
【0050】
なお、撮影範囲の中央領域から追尾対象を意図的に外してパン撮影やチルト撮影が行われる場合もある。そこで、本処理ステップS19にて適用される所定領域は、中央領域に限らず、ユーザにより指定された領域であってもよい。また、パン撮影時やチルト撮影時、追尾対象以外の画像(背景等)は撮影範囲に対して動いている。そのため、撮影画像全体の中で動きが最も少ない被写体が追尾対象として設定されてもよい。
【0051】
[
図2のS20(追尾対象の設定)]
本処理ステップS20は、処理ステップS18(所定領域の変化判定)にて撮影範囲内の中央領域の画像について、前フレームと現フレームとの差分値が所定値以上であると判定された場合(S18:NO)に実行される。例えば、望遠時に特定の被写体を追いかけてパン撮影やチルト撮影を行っているときに手振れが大きく発生すると、追尾対象の位置が大きく変わることがある。この場合、追尾対象を含む撮影画像の全体が大きく変化するため、追尾対象が撮影画像内の何処に位置するかを推定することが難しい。そこで、本処理ステップS20では、追尾対象テンプレート画像と撮影画像内の各被写体画像との類似度が演算され、演算された類似度が最も高い被写体が追尾対象として設定される。本処理ステップS20において追尾対象が設定されると、
図2の画像追尾処理が終了する。
【0053】
・撮影例1(広角撮影例)
図3に、広角撮影時のLCD124の表示画面例を示す。
図3中、撮影画像内の各被写体に符号O
A〜O
Cを付す。また、枠で囲われた被写体が追尾対象候補であり、より詳しくは、太枠で囲われた被写体が追尾対象である。
図3(a)は、前フレームの撮影画像を示し、
図3(b)は、現フレームの撮影画像を示す。
【0054】
本撮影例1では、広角撮影が行われており、撮影範囲が実質的に固定されている。そのため、追尾対象がフレーム間で突然離れた位置に現れることが無い。従って、処理ステップS17(追尾対象の設定)において、履歴に基づいて追尾対象候補O
A〜O
Cの動きベクトルが推定され、その推定結果に基づいて追尾対象候補O
A〜O
Cの中から被写体O
Aが追尾対象として設定される(
図3(b)参照)。
【0055】
・撮影例2(望遠撮影例)
図4に、望遠撮影時のLCD124の表示画面例を示す。
図4中、撮影画像内の各被写体に符号O
D〜O
Gを付す。また、枠で囲われた被写体が追尾対象候補であり、より詳しくは、太枠で囲われた被写体が追尾対象である。
図4(a)は、前フレームの撮影画像を示し、
図4(b)〜
図4(d)はそれぞれ、撮影例2〜4における現フレームの撮影画像を示す。
【0056】
本撮影例2では、望遠撮影が行われているが、撮影装置1が静止状態にあり、撮影範囲が固定されている。そのため、追尾対象がフレーム間で突然離れた位置に現れることが無い。従って、処理ステップS17(追尾対象の設定)において、履歴に基づいて追尾対象候補O
D〜O
Fの動きベクトルが推定され、その推定結果に基づいて追尾対象候補O
D〜O
Fの中から被写体O
Dが追尾対象として設定される(
図4(b)参照)。
【0057】
・撮影例3(望遠撮影例)
本撮影例3では、望遠時において追尾対象がパン撮影されている。そのため、処理ステップS19(追尾対象の設定)において、追尾対象候補O
D〜O
Fの中から、撮影範囲内の所定領域(ここでは中央領域)に写る被写体O
Dが追尾対象として設定される(
図4(c)参照)。
【0058】
・撮影例4(望遠撮影例)
本撮影例4では、望遠時において追尾対象がパン撮影されているが、手振れ等の発生によってその位置が大きく変わっている。そのため、処理ステップS20(追尾対象の設定)において、追尾対象テンプレート画像に類似度が最も高い被写体O
Dが追尾対象として設定される(
図4(d)参照)。
【0059】
このように、本発明の一実施形態によれば、追尾対象テンプレート画像と各被写体の画像との類似度に拘わらず、そのときの撮影状態に適した方法で追尾対象が設定される。そのため、本来の追尾対象と類似する被写体が多い場合であっても、追尾対象の誤検出が避けられる。
【0060】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本発明の実施形態に含まれる。