(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493750
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】計器装置
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20190325BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20190325BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
G01D11/24 W
G01D11/28 B
B60K35/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-87188(P2015-87188)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-205979(P2016-205979A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内池 俊一郎
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−216700(JP,A)
【文献】
特開2012−155176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24
B60K 35/00
G01D 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部の周囲に貫通孔と、を有する表示板と、
前記開口部を通して視認可能に配置された表示素子と、
前記表示素子の後方に配置され前記表示素子と電気的に接続された回路基板と、
前記表示素子及び前記回路基板を保持する保持体と、
前記貫通孔に対応して設けられ、前記回路基板に設けられたスイッチを操作するためのスイッチノブと、
前記表示板の後面の前記貫通孔と前記開口部との間に、前記開口部に沿って設けられた導電性印刷層と、
前記導電性印刷層と前記回路基板に設けられた基準電圧端子とが電気的に接続される接続部材を備えたことを特徴とする計器装置。
【請求項2】
前記回路基板に前記表示板と対向して実装される光源を備え、
前記表示板には、前記光源によって透過照明される透光部と、前記光源からの照明を遮る遮光部とが形成され、
前記導電性印刷層は、前記遮光部の領域に備えられることを特徴とする請求項1に記載の計器装置。
【請求項3】
前記接続部材は、前記導電性印刷層に接触する第1の接触部と、前記基準電圧端子に接触する第2の接触部と、前記第1,第2の接触部を繋ぐ連結部とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気による誤作動防止構造を備えた計器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電気による誤作動防止構造を備えた計器装置が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。斯かる計器装置は、表示板の後面に備えたアース体と回路基板前面に設けたアース端子を電気的に接続することにより、表示板と回路基板の電位差を小さくし、静電気による誤表示を生じにくくするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127800号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の計器装置においては、表示素子近傍にアース体を配置するスペースが小さい場合、アース体を特殊な形状に加工する必要があるなど改善の余地があった。
【0005】
本発明は、デザイン上の制約等によって表示素子の近傍にアース体を配置できない場合においても、簡易な構造にて静電気による誤作動を防止できる計器装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開口部21
と、開口部21の周囲に貫通孔と、を有する表示板20と、開口部21を通して視認可能に配置された表示素子11と、表示素子11の後方に配置され表示素子11と電気的に接続された回路基板30と、表示素子11及び回路基板30を保持する保持体42と、
貫通孔に対応して設けられ、回路基板30に設けられたスイッチを操作するためのスイッチノブSと、表示板20の後面
の貫通孔と開口部21の間に、開口部21に沿って設けられた導電性印刷層
350と、導電性印刷層
350と回路基板30に設けられた基準電圧端子31とが電気的に接続される接続部材60を備えたものである。
【0007】
また、本発明は、回路基板30に表示板20と対向して実装される光源32を備え、表示板20には、光源32によって透過照明される透光部22と、光源32からの照明を遮る遮光部23とが形成され、導電性印刷層
350は、遮光部23の領域に備えられたものである。
【0008】
また、本発明は、接続部材60は、導電性印刷層
350に接触する第1の接触部61と、基準電圧端子31に接触する第2の接触部62と、第1,第2の接触部61,62を繋ぐ連結部63とからなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の計器装置は、デザイン上の制約等によって表示素子の近傍にアース体を配置できない場合においても、簡易な構造にて静電気による誤作動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示す計器装置の主要前面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
計器装置1は、表示モジュール10と、表示板20と、回路基板30と、ケース40(透明な上ケース41,中ケース(保持体)42,下ケース43)と、スイッチノブSとから主に構成され、自動車,オートバイ等の計器装置として用いられる。
【0013】
表示モジュール10は、透明電極が形成された一対のガラス基板に液晶を封入した液晶セルの前後両面に偏光板を貼付した液晶パネル(表示素子)11と、液晶パネル11の後面(回路基板30側の面)に配設され液晶パネル11を透過照明するためのバックライトユニットと、液晶パネル11及びバックライトユニットを格納するセルケースとから主に構成されるものである。バックライトユニットは、発光ダイオードからなる図示しない発光素子と、発光素子が発した照明光によって液晶パネル11全体を均一に照明するための図示しない拡散板や反射板を備えている。表示モジュール10と回路基板30とは、図示しないFPC(Flexible Printed Circuit)等の可撓性の配線部材によって電気的に接続される。回路基板30には図示しない外部コネクタが実装されており、この外部コネクタによって計器装置1が車両と電気的に接続される。回路基板30には、発光素子(光源)32が設けられている。発光素子32は、発光ダイオードからなるものであり、表示板20や指針Pを光輝させる照明光を発する。
【0014】
表示板20は、ポリカーボネート(PC)等の樹脂からなる透光性基板の前後両面に印刷層が形成されており、表示モジュール10に対応する箇所に開口部21と、スイッチノブSに対応する箇所に貫通孔とを備えている。表示板20の前面には図示しない目盛や数字からなる指標部を備えている。表示板20は、透光部22と遮光部23を備えている。透光部22は、透光性インクによって印刷されていても良く、回路基板30に設けられた発光素子32によって透過照明される。遮光部23は、黒色インクの3層構造である。遮光部23の領域に対応する表示板20の後面(回路基板30側の面)には、開口部21を囲むように導電性印刷層50が設けられている。導電性印刷層50は、例えばアルミフレーク等の導電性物質を含有した導電性インクにより形成され、アース体(金属製の接続部材)60と接する箇所まで、導通経路51として延伸される。
本実施形態では、導電性印刷層50は、開口部21を切れ目なく囲んでいたが、導通経路51と切断しなければよく、例えば、
図3(a),(b)に示すように、導電性印刷層150,250が、開口部210に沿って形成されるとともに、一部に切れ目があっても良く、また、
図3(c)に示すように、スイッチ
ノブSの近傍など静電気の印加されやすい箇所(スイッチ
ノブSと開口部210との間)に導電性印刷層350を設けることもでき、静電気を効率よく導通経路151,251,351に導電できる。
【0015】
回路基板30は、例えばガラスエポキシ系基材に配線部である配線パターンを施した硬質回路基板からなり、表示モジュールインタフェースや指針駆動部、指針駆動回路など各種回路部品が配線部に導通接続されている。回路基板30の前面に、グランドパターンからなる接地部が設けられ、接地部にアース端子(基準電圧端子)31が備えられている。回路基板30は、アース端子31とアース体60とを介して表示板20に設けられた導電性印刷層50と電気的に接続されている。また、表示板20や指針を光輝させる照明光を発する発光素子32と、スイッチノブSにより操作されるスイッチを備えている。
【0016】
アース体60は、金属性材料からなる導通部材であり、第1の接触部61と第2の接触部62と第1,第2の接触部61,62を繋ぐ連結部63とから構成され、表示板20とアース端子31の間に配設される。第1の接触部61は、表示板20に設けられた導通経路51に接触する。導通経路51を設けたことにより、アース体60は、表示モジュール10から離れた位置に設けることができるため、設計自由度が高まり、簡単な接地構造で良くなる。また、表示モジュール10から離れた位置にて接地接続できるため、表示誤動作への影響を低減できる。第2の接触部62は、回路基板30上に設けられたアース端子31に接触する。連結部63は、第1の接触部61の端部から屈曲して回路基板30側に延びると共にアース端子31の手前で屈曲し第2の接触部62の端部となる。
【0017】
アース端子31は、例えば全体がZ型形状の金属製オンボードコンタクトからなり、全体がZ型形状であることから、垂直に伸縮する弾性を有し、半田付けによって回路基板30上に固定されている。弾性を有するアース端子31を用いることで、組付けの際、第2の接触部13とアース端子31との接触位置に多少のズレが生じても、確実な接触を図ることができる。
【0018】
ケース40は、例えばABS等の合成樹脂からなるものであり、上ケース41,中ケース42,下ケース43とから構成されている。上ケース41には、透光性基板からなる保護パネルがインサート成型される。上ケース41は、スイッチノブSに対応する箇所に貫通孔を備えている。
【0019】
中ケース42は、例えば白色の合成樹脂からなり、前面には表示モジュール10を収納支持するホルダーが一体に形成され、後面には回路基板30が固定される。また、中ケース42の側壁には、アース体60が固定されている。
【0020】
下ケース43は、前面を開口し、上ケース41の後面に固定される。上下ケース41,43の内部に生じる空洞部分に、表示モジュール10と回路基板30が固定された中ケース42が格納され、上下ケース41,43は螺子締めされる。
【0021】
次に、計器装置の電気的構成を説明する。計器装置1は、回路基板30上の車両インタフェース回路を介して、電源や車両情報に関する信号等を車載LANから入力し、またスイッチノブSによって操作される回路基板30上のスイッチインタフェース回路を介してスイッチ情報等を入力して、これらの信号等およびスイッチ情報等に基づいて、制御素子により処理を行う。前記制御素子は、表示モジュールインタフェース回路によって表示モジュール10の画面及び照明を駆動させる。また、前記制御素子は、照明駆動回路によって発光素子32を駆動させる。
【0022】
このような構成によって、開口部21後面に沿って配置された導電性印刷層50と回路基板30を、導通経路51,アース体60,アース端子31によって電気的に接続することができる。
【0023】
したがって、例えば、自動車の運転席に座席した状態やオートバイに乗車した状態でスイッチノブSを操作する際など、車両利用者に帯電した電力が指先から流れ、スイッチノブSを介して表示板20に静電気として印加したとしても、表示板20と回路基板30のアース端子31との電位差を小さくすることができ、回路基板30に実装された表示モジュール10等の電子部品への影響を防止し、表示モジュール10の誤表示を防ぐことができる。このため、静電気による誤作動防止構造を有する計器装置になる。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、表示モジュール10はバックライトを備えた液晶表示素子であったが、有機EL等の自発光型の表示素子も適用できる。表示モジュール10の偏光板前面に、傷防止処理,紫外線劣化防止処理等が施されていても良い。導電性印刷層50は表示板20の後面に設けられていたが、遮光部23全体に設けられていても良く、電磁ノイズを遮蔽する効果も期待できる。また、遮光部23の印刷面を表示板20の後面(回路基板30側の面)に設け、黒色インクの代わりに導電性インクを用いても良い。
【符号の説明】
【0025】
10 表示モジュール
11 表示パネル(表示素子)
20 表示板
21 開口部
22 透光部
23 遮光部
30 回路基板
31 アース端子(基準電圧端子)
32 発光素子(光源)
40 ケース
41 上ケース
42 中ケース(保持体)
43 下ケース
50 導電性印刷層
51 導通経路
60 アース体(金属製の接続部材)
61 第1の接触部
62 第2の接触部
63 連結部
150,250,350 導電性印刷層
151,251,351 導通経路
210 開口部
P 指針
S スイッチノブ