特許第6493751号(P6493751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493751
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20190325BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-97650(P2015-97650)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-214012(P2016-214012A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−110871(JP,A)
【文献】 特開2015−061343(JP,A)
【文献】 実開平02−026377(JP,U)
【文献】 実開昭58−022885(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配線パターンが形成されたパターン面を有する配線基板と、
互いに間隔を空けて形成された第1電極および第2電極を有する一方表面と、その反対の他方表面とを有し、前記一方表面を前記配線基板の前記パターン面に対向させた状態で前記配線基板上に接合されたスイッチング素子と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電気的に接続されるスナバ回路素子とを含み、
前記スナバ回路素子が、前記配線基板と前記スイッチング素子との間に介在するように配置されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子の前記一方表面は、前記第1電極および前記第2電極間の電流を制御する信号が入力される制御電極を有している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記配線パターンとの間に介在するように配置され、前記第1電極と前記配線パターンとを電気的に接続する第1導電部材と、
前記第2電極と前記配線パターンとの間に介在するように配置され、前記第2電極と前記配線パターンとを電気的に接続する第2導電部材とをさらに含む、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は、板状またはブロック状に形成されている、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1導電部材は、前記スナバ回路素子から間隔を空けて前記スナバ回路素子の一端部側に配置され、前記第2導電部材は、前記スナバ回路素子から間隔を空けて前記スナバ回路素子の他端部側に配置されており、
前記スナバ回路素子の一端部と前記第1導電部材との間に入り込み、前記第1電極、前記スナバ回路素子の一端部および前記第1導電部材を電気的に接続する第1導電性接合材と、
前記スナバ回路素子の他端部と前記第2導電部材との間に入り込み、前記第2電極、前記スナバ回路素子の他端部および前記第2導電部材を電気的に接続する第2導電性接合材とをさらに含む、請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1導電部材および前記第2導電部材は、平面視において互いに対向する対向面を有しており、前記第1導電部材および前記第2導電部材のうちの少なくとも一方の対向面に、他方の対向面から離間する方向に窪んだ凹部が形成されており、
前記凹部内に、前記スナバ回路素子の一部が配置されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
複数の前記スナバ回路素子を含み、
前記配線基板の前記パターン面に対して垂直な方向に関して、複数の前記スナバ回路素子の厚さは、同一であり、かつ、前記第1導電部材および前記第2導電部材の各厚さよりも大きい、請求項3〜6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記配線パターンは、前記スイッチング素子の前記第1電極に電気的に接続されるように前記配線基板の前記パターン面上に形成された第1配線と、前記スイッチング素子の前記第2電極に電気的に接続されるように、前記第1配線から間隔を空けて前記配線基板の前記パターン面上に形成された第2配線とを含み、
前記第1配線および前記第2配線は、平面視において互いに対向する対向面を有しており、前記第1配線および前記第2配線のうちの少なくとも一方の対向面に、他方の対向面から離間する方向に窪んだ凹部が形成されており、
前記凹部内に、前記スナバ回路素子の一部が配置されている、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
複数の前記スナバ回路素子を含み、
前記配線基板の前記パターン面に対して垂直な方向に関して、複数の前記スナバ回路素子の厚さは、同一であり、かつ、前記第1配線および前記第2配線の各厚さよりも大きい、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記スイッチング素子および前記スナバ回路素子を一括封止するように前記配線基板上に形成された封止樹脂をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記スイッチング素子の前記他方表面に形成された金属膜をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記金属膜に接続される放熱機をさらに含む、請求項11に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子およびスナバ回路素子を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つのスイッチング素子からなる直列回路と、当該2つのスイッチング素子の直列回路に並列接続され、スナバコンデンサ(スナバ回路素子)およびスナバ抵抗体(スナバ回路素子)の直列回路からなるスナバ回路とを含むパワーモジュールを開示している。2つのスイッチング素子は、多層基板に埋め込まれている。一方のスイッチング素子は、多層基板内に形成された複数のビア導体および複数の配線層を介して多層基板上に配置された一の導体に電気的に接続されている。他方のスイッチング素子は、多層基板内に形成された複数のビア導体および複数の配線層を介して多層基板上に配置された他の導体に電気的に接続されている。一の導体および他の導体は、多層基板内に配置されたスナバ抵抗体(スナバ回路素子)を介して多層基板上に配置されたスナバコンデンサ(スナバ回路素子)に接続されている。
【0003】
特許文献2は、互いに対向して配置された金属基板および誘電体基板と、金属基板にブリッジ接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と、MOSFETの上方で当該MOSFETに対向するように誘電体基板に接続されたスナバコンデンサ(スナバ回路素子)とを含むインバータ装置を開示している。このインバータ装置において、スナバコンデンサ(スナバ回路素子)は、金属基板から誘電体基板に向けて延びる板状の引き回し配線によってMOSFETに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−129309号公報
【特許文献2】特開2011−67045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング素子およびスナバ回路素子を備えた電力変換装置では、スイッチング素子およびスナバ回路素子間の配線経路に存在する寄生インダクタンスに起因して発生するサージ電圧の問題がある。たとえば、特許文献1および特許文献2に開示された構成では、スイッチング素子とスナバ回路素子との間の配線経路が長いので、寄生インダクタンスが大きくなり、サージ電圧が高くなるという問題がある。
【0006】
したがって、スイッチング素子およびスナバ回路素子を備えた電力変換装置では、サージ電圧を低減するために、スイッチング素子およびスナバ回路素子間に存在する寄生インダクタンスを低減することが望まれる。
そこで、本発明は、スイッチング素子とスナバ回路素子との間の配線経路を短縮し、サージ電圧を低減できる電力変換装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、所定の配線パターン(22,28,29,30)が形成されたパターン面(23)を有する配線基板(21)と、互いに間隔を空けて形成された第1電極(12)および第2電極(13)を有する一方表面(31)と、その反対の他方表面(32)とを有し、前記一方表面を前記配線基板の前記パターン面に対向させた状態で前記配線基板上に接合されたスイッチング素子(10U,10V,10W,11U,11V,11W)と、前記第1電極と前記第2電極との間に電気的に接続されるスナバ回路素子(17)とを含み、前記スナバ回路素子が、前記配線基板と前記スイッチング素子との間に介在するように配置されている、電力変換装置(1,51)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成によれば、配線基板とスイッチング素子との間に介在するようにスナバ回路素子が配置されている。これにより、スイッチング素子とスナバ回路素子との間の距離が短くなるので、スイッチング素子とスナバ回路素子との間の配線経路を短縮できる。その結果、スイッチング素子とスナバ回路素子との間に存在する寄生インダクタンスを低減できるので、サージ電圧を低減できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記スイッチング素子の前記一方表面は、前記第1電極および前記第2電極間の電流を制御する信号が入力される制御電極(14)を有している、請求項1に記載の電力変換装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第1電極と前記配線パターンとの間に介在するように配置され、前記第1電極と前記配線パターンとを電気的に接続する第1導電部材(41)と、前記第2電極と前記配線パターンとの間に介在するように配置され、前記第2電極と前記配線パターンとを電気的に接続する第2導電部材(42)とをさらに含む、請求項1または2に記載の電力変換装置である。
【0010】
スイッチング素子および配線基板間にスナバ回路素子を介在させると、スイッチング素子は、スナバ回路素子の厚さに応じて、配線基板のパターン面から離間して配置される。そこで、この構成では、スイッチング素子および配線基板間に、スイッチング素子の第1電極および第2電極と配線パターンとを電気的に接続する第1導電部材および第2導電部材を介在させている。これにより、スイッチング素子が配線基板から離間して配置されていても、スイッチング素子と配線パターンとを良好に接続できる。
【0011】
また、この構成では、配線基板とスイッチング素子との間に第1導電部材および第2導電部材が介在されているので、スイッチング素子で発生した熱を第1導電部材および第2導電部材を介して配線基板側に良好に伝達できる。これにより、放熱性を向上でき、スイッチング素子の温度上昇を抑制できる。
請求項4に記載の発明は、前記第1導電部材および前記第2導電部材は、板状またはブロック状に形成されている、請求項3に記載の電力変換装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記第1導電部材は、前記スナバ回路素子から間隔を空けて前記スナバ回路素子の一端部(17a)側に配置され、前記第2導電部材は、前記スナバ回路素子から間隔を空けて前記スナバ回路素子の他端部(17b)側に配置されており、前記スナバ回路素子の一端部と前記第1導電部材との間に入り込み、前記第1電極、前記スナバ回路素子の一端部および前記第1導電部材を電気的に接続する第1導電性接合材(45)と、前記スナバ回路素子の他端部と前記第2導電部材との間に入り込み、前記第2電極、前記スナバ回路素子の他端部および前記第2導電部材を電気的に接続する第2導電性接合材(46)とをさらに含む、請求項3または4に記載の電力変換装置である。
【0013】
この構成では、第1導電性接合材および第2導電性接合材は、スイッチング素子が配線基板に対して押圧された状態で加熱されて、溶融させられる。溶融した第1導電性接合材の一部は、スイッチング素子の押圧によってスナバ回路素子の一端部と第1導電部材との間に入り込んだ後、凝固する。同様に、溶融した第2導電性接合材の一部は、スイッチング素子の押圧によってスナバ回路素子の他端部と第2導電部材との間に入り込んだ後、凝固する。
【0014】
これにより、第1導電部材上および第2導電部材上で第1導電性接合材および第2導電性接合材が互いに異なる厚さで凝固するのを抑制できるので、スイッチング素子が傾いた状態で配線基板上に接合されるのを抑制できる。つまり、スイッチング素子の一方表面が配線基板のパターン面に対して平行になるように、スイッチング素子を配線基板上に接合できる。また、第1導電性接合材および第2導電性接合材によって、スナバ回路素子、第1導電部材および第2導電部材に対するスイッチング素子の密着性を高めることができるので、配線基板に対するスイッチング素子の接続強度を向上できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記第1導電部材および前記第2導電部材は、平面視において互いに対向する対向面(41a,42a)を有しており、前記第1導電部材および前記第2導電部材のうちの少なくとも一方の対向面に、他方の対向面から離間する方向に窪んだ凹部(41b,42b)が形成されており、前記凹部内に、前記スナバ回路素子の一部が配置されている、請求項5に記載の電力変換装置である。
【0016】
この構成によれば、第1導電部材および第2導電部材のうちの少なくとも一方に形成された凹部内にスナバ回路素子の一部が配置されているので、第1導電部材および/または第2導電部材とスナバ回路素子との対向面積を増加させることができる。これにより、第1導電部材および/または第2導電部材に形成された凹部とスナバ回路素子との間に入り込む第1導電性接合材および/または第2導電性接合材を増加させることができるので、スイッチング素子の接続強度を一層向上できる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、複数の前記スナバ回路素子を含み、前記配線基板の前記パターン面に対して垂直な方向に関して、複数の前記スナバ回路素子の厚さは、同一であり、かつ、前記第1導電部材および前記第2導電部材の各厚さよりも大きい、請求項3〜6のいずれか一項に記載の電力変換装置である。
この構成によれば、スイッチング素子は、同一厚さの複数のスナバ回路素子上に配置される。これにより、スイッチング素子が傾いた状態で配線基板上に接合されるのを抑制できる。つまり、スイッチング素子の一方表面が配線基板のパターン面に対して平行になるように、スイッチング素子を配線基板上に接合できる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記配線パターンは、前記スイッチング素子の前記第1電極に電気的に接続されるように前記配線基板の前記パターン面上に形成された第1配線(28)と、前記スイッチング素子の前記第2電極に電気的に接続されるように、前記第1配線から間隔を空けて前記配線基板の前記パターン面上に形成された第2配線(29)とを含み、前記第1配線および前記第2配線は、平面視において互いに対向する対向面(28a,29a)を有しており、前記第1配線および前記第2配線のうちの少なくとも一方の対向面に、他方の対向面から離間する方向に窪んだ凹部(28b,29b)が形成されており、前記凹部内に、前記スナバ回路素子の一部が配置されている、請求項1または2に記載の電力変換装置である。
【0019】
請求項8に記載の電力変換装置において、前記スナバ回路素子の一端部(17a)と前記第1配線との間に入り込み、前記スナバ回路素子の一端部、前記第1電極および前記第1配線を電気的に接続する第1導電性接合材(45)と、前記スナバ回路素子の他端部(17b)と前記第2配線との間に入り込み、前記スナバ回路素子の他端部、前記第2電極および前記第2配線を電気的に接続する第2導電性接合材(46)とをさらに含むことが好ましい。
【0020】
請求項9に記載の発明は、複数の前記スナバ回路素子を含み、前記配線基板の前記パターン面に対して垂直な方向に関して、複数の前記スナバ回路素子の厚さは、同一であり、かつ、前記第1配線および前記第2配線の各厚さよりも大きい、請求項8に記載の電力変換装置である。
請求項10に記載の発明は、前記スイッチング素子および前記スナバ回路素子を一括封止するように前記配線基板上に形成された封止樹脂(47)をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置である。この構成によれば、スイッチング素子およびスナバ回路素子が配線基板から剥離したり、配線基板に対して位置ずれしたりするのを封止樹脂によって抑制できる。つまり、スイッチング素子およびスナバ回路素子の配線基板に対する接続強度を封止樹脂によって向上できる。
【0021】
請求項11に記載の発明は、前記スイッチング素子の前記他方表面に形成された金属膜(34)をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電力変換装置である。この構成によれば、スイッチング素子で発生した熱を金属膜を介して外部に放散させることができる。これにより、放熱性を向上できるので、スイッチング素子の温度上昇を抑制できる。
【0022】
請求項12に記載の発明は、前記金属膜に接続される放熱機(36)をさらに含む、請求項11に記載の電力変換装置である。この構成によれば、金属膜に接続される放熱機によって放熱性をより一層向上できるので、スイッチング素子の温度上昇を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置の電気回路を示す回路図である。
図2図2は、前記電力変換装置を示す斜視図である。
図3図3は、U相アームの第1スイッチング素子が配置された、U相アーム形成領域内の素子配置領域を示す分解斜視図である。
図4図4は、前記第1スイッチング素子の要部を示す底面図である。
図5図5は、図3に示すV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、前記素子配置領域に配置された導電パターンを示す平面図である。
図7図7は、変形例に係る電力変換装置の素子配置領域の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置1の電気回路を示す回路図である。
以下では、電力変換装置1が三相モータ2に電力を供給する三相インバータ回路である例について説明する。電力変換装置1は、直流電源3と、電源スイッチ4と、電源スイッチ4を介して直流電源3に接続され、直流電源3の直流電圧を平滑する平滑コンデンサ5と、平滑コンデンサ5に並列接続されたインバータ部6とを含む。
【0025】
インバータ部6は、平滑コンデンサ5により平滑された直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ部6は、三相モータ2のU相、V相およびW相の各相に対応したU相アーム7、V相アーム8およびW相アーム9を含む。
U相アーム7は、平滑コンデンサ5に並列接続され、ハイサイド側の第1スイッチング素子10Uおよびローサイド側の第2スイッチング素子11Uの直列回路を含む。V相アーム8は、U相アーム7に並列接続され、ハイサイド側の第1スイッチング素子10Vおよびローサイド側の第2スイッチング素子11Vの直列回路を含む。W相アーム9は、V相アーム8に並列接続され、ハイサイド側の第1スイッチング素子10Wおよびローサイド側の第2スイッチング素子11Wの直列回路を含む。
【0026】
図1では、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11WとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が採用された例を示している。つまり、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wは、ドレイン電極12(第1電極)、ソース電極13(第2電極)およびゲート電極14(制御電極)をそれぞれ含む。各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wの直列回路は、第1スイッチング素子10U,10V,10Wのソース電極13と、第2スイッチング素子11U,11V,11Wのドレイン電極12とが接続されることにより形成されている。各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wの各ゲート電極14には、ドレイン電極12およびソース電極13間の電流を制御する信号が入力される。
【0027】
各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wのドレイン電極12およびソース電極13の各間には、ダイオード15が逆並列接続されている。各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wのドレイン電極12およびソース電極13の各間には、さらに、スナバ回路16を構成するスナバ回路素子17が並列接続されている。つまり、スナバ回路16は、ダイオード15に並列接続されている。本実施形態では、スナバ回路素子17がコンデンサからなる例を示している。なお、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wに対して、実際には、複数(本実施形態では、4つ)のスナバ回路素子17からなる並列回路が並列接続されているが、図1では、説明の便宜上、それらのうちの1つのスナバ回路素子17のみを示している。
【0028】
各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wのターンオフ時には、電力変換装置1内の寄生インダクタンスによってサージ電圧が発生するとともに、リンギング(ノイズ)が発生する。このサージ電圧およびリンギングは、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wに並列接続されたスナバ回路素子17により抑制される。
【0029】
U相アーム7の第1スイッチング素子10Uと第2スイッチング素子11Uとの接続部は、U相配線18を介して、三相モータ2のU相に接続されている。V相アーム8の第1スイッチング素子10Vと第2スイッチング素子11Vとの接続部は、V相配線19を介して、三相モータ2のV相に接続されている。W相アーム9の第1スイッチング素子10Wと第2スイッチング素子11Wとの接続部は、W相配線20を介して、三相モータ2のW相に接続されている。
【0030】
図2は、電力変換装置1を示す斜視図である。
図2を参照して、電力変換装置1は、配線基板21を含む。配線基板21は、たとえば多層配線基板である。多層配線基板は、複数の絶縁層と、複数の配線層と、絶縁層を挟んで上下に配置された配線層を電気的に接続するビアとを有していてもよい。多層配線基板の最上層には、所定の配線パターン22(図3参照)が形成されている。以下では、配線パターン22が形成された面をパターン面23という。
【0031】
配線基板21は、パターン面23の法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、一方向に長い矩形状に形成されている。配線基板21のパターン面23には、三相モータ2のU相、V相およびW相に対応したU相アーム形成領域24、V相アーム形成領域25およびW相アーム形成領域26が設定されている。U相アーム形成領域24、V相アーム形成領域25およびW相アーム形成領域26は、平面視矩形状であり、配線基板21の長手方向に沿ってこの順で並んで配置されている。
【0032】
U相アーム形成領域24に、U相アーム7の第1スイッチング素子10Uおよび第2スイッチング素子11Uが配置されている。V相アーム形成領域25に、V相アーム8の第1スイッチング素子10Vおよび第2スイッチング素子11Vが配置されている。W相アーム形成領域26に、W相アーム9の第1スイッチング素子10Wおよび第2スイッチング素子11Wが配置されている。
【0033】
つまり、各アーム形成領域24,25,26は、第1スイッチング素子10U,10V,10Wが配置された素子配置領域と、第2スイッチング素子11U,11V,11Wが配置された素子配置領域とを有している。各素子配置領域における各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wの接合形態はほぼ同様である。以下では、第1スイッチング素子10Uの接合形態を例にとって説明する。
【0034】
図3は、U相アーム7の第1スイッチング素子10Uが配置された、U相アーム形成領域24内の素子配置領域27を示す分解斜視図である。図4は、第1スイッチング素子10Uの要部を示す底面図である。図5は、図3に示すV-V線に沿う断面図である。なお、図4では、明瞭化のため、スナバ回路素子17の配置も示している。
図3を参照して、配線パターン22には、互いに間隔を空けて形成されたドレイン配線28(第1配線)、ソース配線29(第2配線)およびゲート配線30が含まれる。本実施形態では、ドレイン配線28、ソース配線29およびゲート配線30は、配線基板21のパターン面23から露出するように配線基板21内に形成(埋設)されている。ドレイン配線28、ソース配線29およびゲート配線30の各表面は、パターン面23に対して面一であってもよい。
【0035】
図3図5を参照して、第1スイッチング素子10Uは、略直方体形状であり、互いに間隔を空けて形成されたドレイン電極12、ソース電極13およびゲート電極14(図示せず)を有する一方表面31と、その反対の他方表面32と、一方表面31および他方表面32を接続する4つの側面33とを有している。第1スイッチング素子10Uの一方表面31において、ドレイン電極12、ソース電極13およびゲート電極14(図示せず)は、互いに間隔を空けて形成されている。
【0036】
図4を参照して、ドレイン電極12は、所定の方向にストライプ状に延びる複数の帯状部分12aを含む。同様に、ソース電極13は、所定の方向にストライプ状に延びる複数の帯状部分13aを含む。ドレイン電極12の帯状部分12aおよびソース電極13の帯状部分13aは、互いに平行になるように交互に配置されている。ドレイン電極12およびソース電極13は、第1スイッチング素子10Uの一方表面31において、互いに噛み合う櫛歯状に設けられていてもよい。図示はしないが、ゲート電極14は、第1スイッチング素子10Uの一方表面31において、一つの角部または4つの側面33のいずれかに沿う一つの辺部に形成されている。
【0037】
第1スイッチング素子10Uは、一方表面31を配線基板21のパターン面23に対向させた状態で配線基板21上に接合されている。第1スイッチング素子10Uが配線基板21に接合された状態で、ドレイン電極12はドレイン配線28に電気的に接続され、ソース電極13はソース配線29に電気的に接続され、ゲート電極14はゲート配線30に電気的に接続されている。一方、第1スイッチング素子10Uの他方表面32には、電極は形成されていない。つまり、第1スイッチング素子10Uは、ドレイン電極12およびソース電極13との間で一方表面31(および他方表面32)と平行な横方向に電流経路が形成される横型のスイッチング素子である。
【0038】
図3および図5を参照して、第1スイッチング素子10Uの他方表面32には、その全域を被覆するように金属膜34が形成されている。金属膜34は、たとえば、銅メッキであってもよい。この金属膜34上には、半田35を介して放熱機36が接続されている。放熱機36は、たとえばアルミニウム、鉄、銅等の熱伝導率の比較的高い金属材料からなる金属板である。
【0039】
図3図5を参照して、配線基板21上には、配線基板21と第1スイッチング素子10Uとの間に介在するように、複数(本実施形態では、4つ)のスナバ回路素子17が配置されている。4つのスナバ回路素子17は、平面視において素子配置領域27と相似形でかつ互いに合同な4つの領域に素子配置領域27を4分割したとすると、各分割領域にスナバ回路素子17が1つずつ含まれるように配置されている。各スナバ回路素子17は、たとえば略直方体形状のセラミック製の微小なチップ部品である。図5を参照して、各スナバ回路素子17は、たとえば絶縁性接着剤38によって配線基板21上に固定されている。配線基板21のパターン面23に対して垂直な方向に関して、複数のスナバ回路素子17の厚さは、同一である。
【0040】
各スナバ回路素子17は、第1スイッチング素子10Uの互いに隣り合うドレイン電極12およびソース電極13に跨るように配線基板21上に配置されている。各スナバ回路素子17は、第1スイッチング素子10Uのドレイン電極12に電気的に接続された一端部17aと、第1スイッチング素子10Uのソース電極13に電気的に接続された他端部17bとを有している。より具体的には、各スナバ回路素子17は、一端部17a側に設けられた第1端子電極37aを介してドレイン電極12に電気的に接続され、他端部17b側に設けられた第2端子電極37bを介してソース電極13に電気的に接続されている。これにより、4つのスナバ回路素子17からなる並列回路がドレイン電極12とソース電極13との間に接続されている。各スナバ回路素子17の一端部17a(第1端子電極37a)は、ドレイン電極12に接していてもよい。また、各スナバ回路素子17の他端部17b(第2端子電極37b)は、ソース電極13に接していてもよい。
【0041】
図3および図5を参照して、各スナバ回路素子17の周囲には、導電パターン40が配置されている。各導電パターン40は、板状またはブロック状(本実施形態では板状)の第1導電部材41および第2導電部材42を含む。
各導電パターン40の第1導電部材41は、スナバ回路素子17から間隔を空けてスナバ回路素子17の一端部17a側に配置されている。第1導電部材41は、平面視において、ドレイン配線28(ドレイン電極12)に沿って延びる矩形状に形成されている。第1導電部材41は、第1スイッチング素子10Uのドレイン電極12とドレイン配線28との間に介在するように配線基板21上に配置されている。より具体的には、第1導電部材41は、たとえば金属ペーストや半田等の導電性接着剤43等によって、ドレイン配線28上に接合されている。各第1導電部材41は、ドレイン電極12およびドレイン配線28に電気的に接続されている。
【0042】
一方、各導電パターン40の第2導電部材42は、スナバ回路素子17から間隔を空けてスナバ回路素子17の他端部17b側に配置されている。第2導電部材42は、平面視において、ソース配線29(ソース電極13)に沿って延びる矩形状に形成されている。第2導電部材42は、第1スイッチング素子10Uのソース電極13とソース配線29との間に介在するように配線基板21上に配置されている。より具体的には、第2導電部材42は、たとえば金属ペーストや半田等の導電性接着剤43等によって、ソース配線29上に接合されている。各第2導電部材42は、ソース電極13およびソース配線29に電気的に接続されている。
【0043】
配線基板21のパターン面23に対して垂直な方向に関して、第1導電部材41および第2導電部材42の厚さは、いずれも同一であり、かつ、スナバ回路素子17の厚さよりも小さい。つまり、複数のスナバ回路素子17の厚さは、第1導電部材41および第2導電部材42の各厚さよりも大きい。
以下、図6を参照して、導電パターン40の具体的な構成について説明する。図6は、素子配置領域27に配置された導電パターン40を示す平面図である。
【0044】
第1導電部材41および第2導電部材42は、スナバ回路素子17を挟んで互いに対向するように配置されている。第1導電部材41は、第2導電部材42に対向する対向面41aを有しており、第2導電部材42は、第1導電部材41に対向する対向面42aを有している。第1導電部材41の対向面41aには、第2導電部材42の対向面42aから離間する方向に窪んだ第1凹部41bが形成されている。第1凹部41bは、第1導電部材41の長手方向中間部に形成されている。同様に、第2導電部材42の対向面42aには、第1導電部材41の対向面41aから離間する方向に窪んだ第2凹部42bが形成されている。第2凹部42bは、第2導電部材42の長手方向中間部に形成されている。
【0045】
第1凹部41bおよび第2凹部42bは、互いに向かい合う位置に形成されており、第1凹部41b、第2凹部42bおよびそれらの間の領域により平面視略長方形状のスナバ回路素子収容領域44が形成されている(図6の一点鎖線参照)。このスナバ回路素子収容領域44内に、スナバ回路素子17が配置されている。スナバ回路素子17の一端部17aは、第1導電部材41から間隔を空けて第1凹部41b内に配置されている。つまり、第1凹部41bは、スナバ回路素子17の一端部17a側において、スナバ回路素子17の3つの側面に対向している。一方、スナバ回路素子17の他端部17bは、第2導電部材42から間隔を空けて第2凹部42b内に配置されている。つまり、第2凹部42bは、スナバ回路素子17の他端部17b側において、スナバ回路素子17の3つの側面に対向している。
【0046】
図5を再度参照して、ドレイン電極12、スナバ回路素子17の一端部17aおよび第1導電部材41は、第1導電性接合材45によって電気的に接続されている。一方、ソース電極13、スナバ回路素子17の他端部17bおよび第2導電部材42は、第2導電性接合材46によって電気的に接続されている。第1導電性接合材45および第2導電性接合材46は、たとえば、導電性フィラーを含有する樹脂(たとえばエポキシ樹脂)や半田等であってもよい。
【0047】
第1導電性接合材45は、スナバ回路素子17の一端部17aと第1導電部材41との間に入り込むように設けられている。さらに、第1導電性接合材45は、ドレイン電極12と第1導電部材41との間に介在するように設けられている。図示はしないが、第1導電性接合材45は、スナバ回路素子17の一端部17a(第1端子電極37a)とドレイン電極12との間に介在していてもよい。
【0048】
一方、第2導電性接合材46は、スナバ回路素子17の他端部17bと第2導電部材42との間に入り込むように設けられている。さらに、第2導電性接合材46は、ソース電極13と第2導電部材42との間に介在するように設けられている。図示はしないが、第2導電性接合材46は、スナバ回路素子17の他端部17b(第2端子電極37b)とソース電極13との間に介在していてもよい。
【0049】
そして、配線基板21上には、第1スイッチング素子10U、スナバ回路素子17および導電パターン40(第1導電部材41および第2導電部材42)を一括封止するように封止樹脂47が形成されている。封止樹脂47は、たとえばエポキシ樹脂である。封止樹脂47は、第1スイッチング素子10Uと配線基板21との間に充填され、かつ、第1スイッチング素子10Uの側面33全体を被覆するように形成されている。第1スイッチング素子10Uが封止樹脂47により封止された状態で、放熱機36は封止樹脂47から露出している。つまり、封止樹脂47は、配線基板21と放熱機36との間に充填されている。
【0050】
以上、本実施形態では、配線基板21と第1スイッチング素子10Uとの間に介在するようにスナバ回路素子17が配置されている。スナバ回路素子17は、配線基板21と第1スイッチング素子10Uとの間において、第1スイッチング素子10Uのドレイン電極12に電気的に接続された一端部17aと、第1スイッチング素子10Uのソース電極13に電気的に接続された他端部17bとを有している。
【0051】
この構成によれば、第1スイッチング素子10Uとスナバ回路素子17との間の距離が短くなるので、第1スイッチング素子10Uとスナバ回路素子17との間の配線経路を短縮できる。これにより、第1スイッチング素子10Uとスナバ回路素子17との間に存在する寄生インダクタンスを低減できるので、サージ電圧を低減できる。
また、本実施形態では、配線基板21および第1スイッチング素子10U間に、第1スイッチング素子10Uのドレイン電極12およびソース電極13と、配線パターン22とを電気的に接続する第1導電部材41および第2導電部材42が介在している。これにより、第1スイッチング素子10Uが配線基板21から離間して配置されていても、第1スイッチング素子10Uと配線パターン22とを良好に接続できる。
【0052】
また、本実施形態では、配線基板21と第1スイッチング素子10Uとの間に第1導電部材41および第2導電部材42が介在されているので、第1スイッチング素子10Uで発生した熱を第1導電部材41および第2導電部材42を介して配線基板21に良好に伝達できる。これにより、放熱性を向上でき、第1スイッチング素子10Uの温度上昇を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、スナバ回路素子17の一端部17aと第1導電部材41との間に入り込む第1導電性接合材45と、スナバ回路素子17の他端部17bと第2導電部材42との間に入り込む第2導電性接合材46とを含む。第1導電性接合材45および第2導電性接合材46は、第1スイッチング素子10Uが配線基板21に対して押圧された状態で加熱されて、溶融させられる。溶融した第1導電性接合材45の一部は、第1スイッチング素子10Uの押圧によってスナバ回路素子17の一端部17aと第1導電部材41との間に入り込んだ後、凝固する。同様に、溶融した第2導電性接合材46の一部は、第1スイッチング素子10Uの押圧によってスナバ回路素子17の他端部17bと第2導電部材42との間に入り込んだ後、凝固する。
【0054】
これにより、第1導電部材41上および第2導電部材42上で第1導電性接合材45および第2導電性接合材46が互いに異なる厚さで凝固するのを抑制できる。しかも、本実施形態によれば、第1スイッチング素子10Uは、同一厚さの複数のスナバ回路素子17上に配置される。これにより、第1スイッチング素子10Uが傾いた状態で配線基板21上に接合されるのを抑制できる。つまり、第1スイッチング素子10Uの一方表面31(および他方表面32)が配線基板21のパターン面23に対して平行になるように第1スイッチング素子10Uを配線基板21上に接合できる。
【0055】
また、第1導電性接合材45および第2導電性接合材46によって、スナバ回路素子17、第1導電部材41および第2導電部材42に対する第1スイッチング素子10Uの密着性を高めることができるので、配線基板21に対する第1スイッチング素子10Uの接続強度を向上できる。とりわけ、本実施形態によれば、第1導電部材41および第2導電部材42に形成された第1凹部41b内および第2凹部42b内に、スナバ回路素子17の一端部17aおよび他端部17bが配置されている。これにより、第1導電部材41および第2導電部材42とスナバ回路素子17との対向面積が増加するので、第1凹部41bおよび第2凹部42bとスナバ回路素子17との間に入り込む第1導電性接合材45および第2導電性接合材46を増加させることができる。その結果、第1スイッチング素子10Uの接続強度を一層向上できる。
【0056】
また、本実施形態では、配線基板21のパターン面23上に、第1スイッチング素子10U、スナバ回路素子17および導電パターン40を一括封止する封止樹脂47が形成されている。この構成によれば、封止樹脂47によって、第1スイッチング素子10U、スナバ回路素子17および導電パターン40が配線基板21から剥離したり、配線基板21に対して位置ずれしたりするのを効果的に抑制できる。つまり、封止樹脂47によって、第1スイッチング素子10U、スナバ回路素子17および導電パターン40の配線基板21に対する接続強度をより一層向上できる。
【0057】
また、本実施形態では、第1スイッチング素子10Uの他方表面32に金属膜34が形成され、当該金属膜34上に放熱機36が接続されている。これにより、第1スイッチング素子10Uで発生した熱を、金属膜34および放熱機36によって外部に放散させることができる。その結果、放熱性を向上できるので、第1スイッチング素子10Uの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0058】
ここで、第1スイッチング素子10Uが配線基板21のパターン面23に対して傾いた状態で接合された場合について考える。この場合、放熱機36を接続する際の押圧によって、第1スイッチング素子10Uの一部が配線基板21から剥離する虞がある。これに対して、本実施形態によれば、前述のように、第1スイッチング素子10Uの一方表面31(および他方表面32)が、配線基板21のパターン面23に対して平行になるように、第1スイッチング素子10Uを配線基板21上に接続できる。したがって、第1スイッチング素子10Uが配線基板21から剥離するのを抑制しつつ、第1スイッチング素子10U上に放熱機36を接続できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wの一例としてMOSFETが採用された例について説明した。しかし、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wは、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタまたはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0060】
各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wがバイポーラトランジスタからなる場合、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wは、コレクタ電極(第1電極)、エミッタ電極(第2電極)およびベース電極(制御電極)を含む。この場合、図1を参照して、U相アーム7、V相アーム8およびW相アーム9の各直列回路は、第1スイッチング素子10U,10V,10Wのエミッタ電極と、第2スイッチング素子11U,11V,11Wのコレクタ電極とが接続されることにより形成される。
【0061】
一方、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11WがIGBTからなる場合、各スイッチング素子10U,10V,10W,11U,11V,11Wは、コレクタ電極(第1電極)、エミッタ電極(第2電極)およびゲート電極(制御電極)を含む。この場合、図1を参照して、U相アーム7、V相アーム8およびW相アーム9の各直列回路は、第1スイッチング素子10U,10V,10Wのエミッタ電極と、第2スイッチング素子11U,11V,11Wのコレクタ電極とが接続されることにより形成される。
【0062】
また、前述の実施形態では、スナバ回路16がコンデンサからなる複数のスナバ回路素子17を含む例について説明した。しかし、スナバ回路16は、抵抗からなる1つまたは複数のスナバ回路素子17を含んでいてもよい。また、スナバ回路16は、コンデンサからなるスナバ回路素子17と、抵抗からなるスナバ回路素子17とによって構成された1つまたは複数の直列回路および/または並列回路を含んでいてもよい。
【0063】
また、前述の実施形態では、第1導電部材41および第2導電部材42を含む一つの導電パターン40が、一つのスナバ回路素子17の周囲に配置された例について説明した。しかし、一つの導電パターン40が、複数のスナバ回路素子17の周囲に跨って配置されるようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、ドレイン配線28、ソース配線29およびゲート配線30が、配線基板21のパターン面23から露出するように配線基板21内に形成された例について説明した。この構成において、導電パターン40を設けずに、スナバ回路素子17がドレイン配線28およびソース配線29に直接電気的に接続されるように、当該スナバ回路素子17を配線基板21上に配置してもよい。つまり、スナバ回路素子17は、ドレイン配線28に直接電気的に接続された一端部17aと、ソース配線29に直接電気的に接続された他端部17bとを有していてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態において、ドレイン配線28、ソース配線29およびゲート配線30は、所定の厚さ(たとえば、スナバ回路素子17の厚さよりも0.1mm〜0.2mm程度小さい厚さ)で、配線基板21のパターン面23上に形成されていてもよい。この場合、図7に示す構成を採用してもよい。図7は、変形例に係る電力変換装置51の素子配置領域27の要部を示す平面図である。
【0065】
図7を参照して、電力変換装置51は、前述の電力変換装置1の構成と異なり、導電パターン40(第1導電部材41および第2導電部材42)を含まない。電力変換装置51において、ドレイン配線28およびソース配線29は、スナバ回路素子17を挟んで互いに対向するように形成されたストライプ状の部分を含む。ドレイン配線28は、ソース配線29に対向する対向面28aを有しており、ソース配線29は、ドレイン配線28に対向する対向面29aを有している。
【0066】
ドレイン配線28の対向面28aには、ソース配線29の対向面29aから離間する方向に窪んだ第1凹部28bが形成されている。同様に、ソース配線29の対向面29aには、ドレイン配線28の対向面28aから離間する方向に窪んだ第2凹部29bが形成されている。第1凹部28bおよび第2凹部29bは、互いに向かい合う位置に形成されており、第1凹部28b、第2凹部29bおよびそれらの間の領域により平面視略長方形状のスナバ回路素子収容領域52が形成されている(図7の一点鎖線参照)。
【0067】
このスナバ回路素子収容領域52内に、スナバ回路素子17が配置されている。スナバ回路素子17の一端部17aは、ドレイン配線28から間隔を空けて第1凹部28b内に配置されている。つまり、第1凹部28bは、スナバ回路素子17の一端部17a側において、スナバ回路素子17の3つの側面に対向している。一方、スナバ回路素子17の他端部17bは、ソース配線29から間隔を空けて第2凹部29b内に配置されている。つまり、第2凹部29bは、スナバ回路素子17の他端部17b側において、スナバ回路素子17の3つの側面に対向している。
【0068】
電力変換装置51では、スナバ回路素子17の一端部17a、ドレイン電極12およびドレイン配線28は、第1導電性接合材45(図5参照)によって電気的に接続される。一方、スナバ回路素子17の他端部17b、ソース電極13およびソース配線29は、第2導電性接合材46(図5参照)によって電気的に接続される。
第1導電性接合材45は、スナバ回路素子17の一端部17aとドレイン配線28との間に入り込むように設けられる。さらに、第1導電性接合材45は、ドレイン電極12とドレイン配線28との間に介在するように設けられる。第1導電性接合材45は、スナバ回路素子17の一端部17a(第1端子電極37a)とドレイン電極12との間に介在していてもよい。
【0069】
一方、第2導電性接合材46は、スナバ回路素子17の他端部17bと第2導電部材42との間に入り込むように設けられる。さらに、第2導電性接合材46は、ソース電極13と第2導電部材42との間に介在するように設けられる。第2導電性接合材46は、スナバ回路素子17の他端部17b(第2端子電極37b)とソース電極13との間に介在していてもよい。
【0070】
以上、この例では、配線基板21のパターン面23上に設けられたドレイン配線28およびソース配線29を利用して形成されたスナバ回路素子収容領域52(第1凹部28bおよび第2凹部29b)にスナバ回路素子17が配置されている。この構成によれば、比較的簡素な構成を実現しつつ、前述の実施形態において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0071】
また、前述の実施形態において、ドレイン電極12(帯状部分12a。図4参照)およびソース電極(帯状部分13a、図4参照)のうちの少なくとも一方の対向面に、他方の対向面から離間する方向に窪んだ凹部が形成されており、当該凹部内に、スナバ回路素子17の一部が配置されるようにしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…電力変換装置、10U,10V,10W…第1スイッチング素子、11U,11V,11W…第2スイッチング素子、12…ドレイン電極(第1電極)、13…ソース電極(第2電極)、14…ゲート電極(制御電極)、17…スナバ回路素子、17a…スナバ回路素子の一端部、17b…スナバ回路素子の他端部、21…配線基板、22…配線パターン、23…配線基板のパターン面、28…ドレイン配線(第1配線)、28a…ドレイン配線の対向面、28b…ドレイン配線の第1凹部(凹部)、29…ソース配線(第2配線)、28a…ソース配線の対向面、28b…ソース配線の第2凹部(凹部)、31…第1スイッチング素子の一方表面、32…第1スイッチング素子の他方表面、34…金属膜、36…放熱機、41…第1導電部材、41a…第1導電部材の対向面、41b…第1導電部材の第1凹部(凹部)、42…第2導電部材、42a…第2導電部材の対向面、42b…第2導電部材の第2凹部(凹部)、45…第1導電性接合材、46…第2導電性接合材、47…封止樹脂、51…電力変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7