(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面における前記他の凸部が配置されている領域内に配置されている、請求項1又は2に記載の超音波接合装置。
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面における前記他の凸部が配置されている領域の周囲に配置されている、請求項1又は2に記載の超音波接合装置。
複数の凸部が形成され且つ重ね合わされた電極体及び集電体を押圧する押圧面を有すると共に、超音波振動するホーンと、複数の凸部が形成され且つ前記電極体及び前記集電体を前記押圧面との間に挟み込んで支持する支持面を有するアンビルと、を備え、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面が、前記複数の凸部に含まれ且つ前記押圧面の押圧方向において先端が他の凸部の先端より後方に位置する少なくとも一つの後方凸部を有し、前記後方凸部が、前記押圧面及び前記支持面によって前記電極体及び前記集電体を挟み込んで接合するときに、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が摩耗していない状態では前記接合対象物に当接せず、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が所定量摩耗した状態では前記電極体又は前記集電体に当接する超音波接合装置によって、重ね合わされた前記電極体と前記集電体とを接合することを、備える、蓄電素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、アンビル及びホーンの交換時期を判別可能な超音波接合装置、及び前記超音波接合装置を用いた蓄電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波接合装置は、
複数の凸部が形成され且つ重ね合わされた接合対象物を押圧する押圧面を有すると共に、超音波振動するホーンと、
複数の凸部が形成され且つ前記接合対象物を前記押圧面との間に挟み込んで支持する支持面を有するアンビルと、を備え、
前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面は、前記複数の凸部に含まれ且つ前記押圧面の押圧方向において先端が他の凸部の先端より後方に位置する少なくとも一つの後方凸部を有し、
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面によって前記接合対象物を挟み込んで接合するときに、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が摩耗していない状態では前記接合対象物に当接せず、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が所定量以上摩耗した状態では前記接合対象物に当接する。
【0009】
かかる構成によれば、他の凸部が使用によって所定量以上摩耗したときに、接合対象物に形成される圧痕(複数の凸部によって形成された圧痕)において、先端が他の凸部の先端より後方に位置する後方凸部と対応する形状(圧痕)が現れることで、アンビル及びホーンの少なくとも一方が交換時期か否かを的確に判別することができる。
【0010】
この場合、前記超音波接合装置において、
前記後方凸部は、前記接合対象物に当接したときに前記接合対象物の接合に寄与する形状を有することが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、他の凸部が所定量以上摩耗しても、後方凸部が接合対象物に当接して接合対象物の接合に寄与するため、前記他の凸部の摩耗による接合強度の低下を防ぐことができる。
【0012】
前記超音波接合装置では、
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面における前記他の凸部が配置されている領域内に配置されてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、接合対象物に形成される圧痕における他の凸部と対応する領域内に後方凸部の圧痕が現れることで、アンビル及びホーンの少なくとも一方が交換時期か否かを的確に判別することができる。
【0014】
前記超音波接合装置では、
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面における前記他の凸部が配置されている領域の周囲に配置されてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、接合対象物に形成される圧痕における他の凸部と対応する領域の周囲に後方凸部の形状が現れることで、アンビル及びホーンの少なくとも一方が交換時期か否かを的確に判別することができる。しかも、上記の構成によれば、押圧面と支持面とで接合対象物を挟み込んで超音波振動させたときに、該接合対象物に他の凸部が食い込むときの該他の凸部間の肉(接合対象物を構成する素材の一部)の移動が後方凸部によって阻害されないため、他の凸部が接合対象物に十分に食い込む。このため、超音波振動が接合対象物に十分に伝達される。
【0016】
前記超音波接合装置では、
前記ホーンは、前記押圧面の押圧方向と略直交する方向に超音波振動し、
前記他の凸部は、前記超音波振動の振動方向に長い領域に配置されてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、接合対象物における接合領域が振動方向に長くなるため、ホーンの超音波振動が重ね合わされた接合対象物に効率よく伝達され、これにより、接合対象物同士が効率よく接合される。
【0018】
この場合、
前記押圧面及び前記支持面は、前記超音波振動の振動方向に間隔を空けて並び且つ前記他の凸部がそれぞれ形成された複数の領域を有し、
前記後方凸部は、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面における隣り合う前記領域間に配置されてもよい。
【0019】
かかる構成によれば、押圧面と支持面とで接合対象物を挟み込んで超音波振動させたときに該接合対象物に他の凸部が食い込むときの該他の凸部間の肉(接合対象物を構成する素材の一部)の移動が後方凸部によって阻害されないことで、該他の凸部が接合対象物に十分に食い込む。これにより、ホーンの超音波振動が接合対象物により効率よく伝達され、その結果、接合対象物同士がより効率よく接合される。
【0020】
本発明に係る超音波接合装置は、
複数の凸部が形成され且つ重ね合わされた接合対象物を押圧する押圧面を有すると共に、超音波振動するホーンと、
複数の凸部が形成され且つ前記接合対象物を前記押圧面との間に挟み込んで支持する支持面を有するアンビルと、を備え、
前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面は、前記複数の凸部に含まれ且つ前記押圧面の押圧方向において先端が他の凸部の先端より後方に位置する複数の後方凸部が設けられると共に、前記他の凸部が配置される第一領域と、前記第一領域に隣り合う第二領域であって前記複数の後方凸部が配置される第二領域と、を有し、
前記第二領域における複数の後方凸部は、前記第一領域から離れるほど先端が後方側に位置するように構成される。
【0021】
かかる構成によれば、使用によって第一領域の他の凸部が磨り減るのに伴って、第一領域に近い位置の後方凸部から該第一領域と離れた位置の後方凸部に向かって順に第二領域の後方凸部が接合対象物に当接する。これにより、接合対象物に形成された圧痕の大きさ(圧痕が形成される範囲の拡がり)から、アンビル及びホーンの交換時期を判別することができる。
【0022】
本発明に係る超音波接合装置を用いた蓄電素子の製造方法は、
複数の凸部が形成され且つ重ね合わされた電極体及び集電体を押圧する押圧面を有すると共に、超音波振動するホーンと、複数の凸部が形成され且つ前記電極体及び前記集電体を前記押圧面との間に挟み込んで支持する支持面を有するアンビルと、を備え、前記押圧面及び前記支持面の少なくとも一方の面が、前記複数の凸部に含まれ且つ前記押圧面の押圧方向において先端が他の凸部の先端より後方に位置する少なくとも一つの後方凸部を有し、前記後方凸部が、前記押圧面及び前記支持面によって前記電極体及び前記集電体を挟み込んで接合するときに、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が摩耗していない状態では前記電極体及び前記集電体に当接せず、該後方凸部の設けられた前記ホーン又は前記アンビルにおいて前記他の凸部が所定量摩耗した状態では前記電極体又は前記集電体に当接する超音波接合装置によって、重ね合わされた前記電極と前記集電体とを接合することを、備える。
【0023】
かかる構成によれば、超音波接合装置において、他の凸部が使用によって所定量以上摩耗したときに、電極体又は集電体に形成される圧痕(複数の凸部によって形成された圧痕)において、先端が他の凸部の先端より後方に位置する後方凸部と対応する形状(圧痕)が現れることで、アンビル及びホーンの少なくとも一方が交換時期か否かを的確に判別することができる。このため、超音波接合装置において、アンビル及ホーンの摩耗による交換を適切なタイミングで行うことができ、これにより、他の凸部の摩耗に起因する電極体と集電体との接合不良が抑えられるため、品質の高い蓄電素子が得られる。
【発明の効果】
【0024】
以上より、本発明によれば、アンビル及びホーンの交換時期を判別可能な超音波接合装置、及び超音波接合装置を用いた蓄電素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図7を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0027】
本実施形態に係る超音波接合装置は、
図1〜
図3に示すように、重ね合わされた金属製の接合対象物8(
図7参照)を押圧する押圧面20を有するホーン2と、接合対象物8を押圧面20との間に挟み込んで支持する支持面40を有するアンビル4と、を備える。また、超音波接合装置1は、ホーン2及びアンビル4を保持すると共にホーン2を超音波振動させる装置本体6を、備える。
【0028】
尚、本実施形態の超音波接合装置1によって接合される接合対象物8は、例えば、
図4及び
図5に示すような蓄電素子80の電極体81及び集電体82である。これら電極体81及び集電体82は、絶縁性を有する袋状の絶縁部材83に収容された状態で、ケース84内に収容され、蓄電素子80を構成する。即ち、絶縁部材83は、ケース84内において電極体81及び集電体82とケース84との間に配置され、ケース84と電極体81等との絶縁を図る。電極体81は、
図6にも示すように、正極811と負極812とがセパレータ813によって互いに絶縁された状態で、正極811、負極812及びセパレータ813が積層された積層体を備える。正極811は、帯状の金属箔と、金属箔の上に形成された正極活物質層と、を有する。正極811は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位:金属箔のみの部位)8111を有する。正極811において正極活物質層が形成される部位を被覆部8112と称する。負極812は、帯状の金属箔と、金属箔の上に形成された負極活物質層と、を有する。負極812は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極811の非被覆部8111と反対側)の端縁部に、負極活物質層の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位:金属箔のみの部位)8121を有する。負極812において正極活物質層が形成される部位を被覆部8122と称する。セパレータ813は、帯状である。セパレータ813は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。このセパレータ813は、被覆部8112、8122同士が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極811と負極812との間に配置される。積層された状態の正極811、負極812、及びセパレータ813が巻回されることによって、電極体81が形成される。正極811の非被覆部(金属箔のみの部位)8111又は負極812の非被覆部(金属箔のみの部位)8121のみが積層された部位によって、電極体81における非被覆積層部815が構成される。
【0029】
ホーン2は、柱状の部材であり、先端に押圧面20を有する。本実施形態のホーン2は、下方に延び、下端に押圧面20を有する。このホーン2は、装置本体6に着脱可能に取り付けられる。
【0030】
押圧面20は、複数の凸部22を有する。本実施形態の押圧面20では、各凸部22が四角錐形状を有し、複数の凸部22が整列している。押圧面20は、複数の凸部22によって、支持面40との間に接合対象物8を挟み込んで接合したときにホーン2の交換時期か否かを判断可能な圧痕を該接合対象物8に形成する。
【0031】
具体的に、押圧面20は、複数の凸部22に含まれる第一凸部(他の凸部)221と、複数の凸部22に含まれ且つ接合対象物8の挟持方向(押圧面20の押圧方向:本実施形態の例では上下方向)において先端が第一凸部221の先端より後方に位置する少なくとも一つの第二凸部(後方凸部)222と、を有する。また、押圧面20は、凸部22が配置される配置領域24であって、ホーン2の振動方向(
図1における左右方向)に長い配置領域24を有する。本実施形態の配置領域24は、複数の第一凸部221が配置された第一領域241と、第一領域241と隣接し且つ複数の第二凸部222が配置された第二領域242と、を含む。具体的に、配置領域24において、長手方向の中央部に第一領域241が配置され、前記長手方向における第一領域241の両側に第二領域242が配置されている。
【0032】
第一領域241では、各第一凸部221の先端が共通の平面(本実施形態の例では水平面)223上に位置するように、複数の第一凸部221が構成されている(
図3参照)。
【0033】
第二領域242では、第一領域241から離れるほど先端が後方側(凸部22の突出方向における基部側)に位置するように、複数の第二凸部222が構成されている。本実施形態の第二領域242では、長手方向において平面223に対して傾斜する傾斜面224であって、第一領域241から離れるほど後方側(
図3における上方側)に傾斜した傾斜面224上に各第二凸部222の先端が位置するように、複数の第二凸部222が構成されている。尚、
図3は、平面223に対する傾斜面224の傾きを視認し易いように、傾斜面224の平面223に対する傾斜角を誇張して表している。
【0034】
以上のように、ホーン2の複数の凸部22は、平坦部(第一領域241)と、傾斜部(第二領域242)とを有する。
【0035】
アンビル4は、ブロック状の部材であり、先端に支持面40を有する。本実施形態のアンビル4は、上方に延び、上端に支持面40を有する。このアンビル4は、装置本体6に着脱可能に取り付けられる。
【0036】
支持面40は、複数の凸部42を有する。本実施形態の支持面40では、各凸部42が四角錐形状を有し、複数の凸部42が整列している。支持面40は、複数の凸部42によって、押圧面20との間に接合対象物8を挟み込んで接合したときにアンビル4の交換時期か否かを判断可能な圧痕を該接合対象物8に形成する。
【0037】
具体的に、支持面40は、複数の凸部42に含まれる第三凸部(他の凸部)421と、複数の凸部42に含まれ且つ接合対象物8の挟持方向(本実施形態の例では上下方向)において先端が第三凸部421の先端より後方に位置する少なくとも一つの第四凸部(後方凸部)422と、を有する。この第四凸部422は、接合対象物8に当接したときに接合対象物8の接合に寄与する形状(本実施形態の例では、四角錐形状等の先細りの形状)を有する。また、第四凸部422の高さは、第三凸部421が所定量以上摩耗したときに接合対象物8と当接するように設定されている。この所定量は、接合対象物8の接合条件(溶接条件)等から決定される。
【0038】
支持面40は、第三凸部421が配置された第三領域44を有する。この第三領域44は、ホーン2の超音波振動の振動方向(
図1における左右方向)に長い。本実施形態の第三領域44は、前記振動方向において、ホーン2の押圧面20における配置領域24よりも長い。また、第三領域44は、振動方向と直交する方向において、ホーン2の押圧面20における配置領域24より大きい。
【0039】
第三領域44では、各第三凸部421の先端が共通の平面(本実施形態の例では水平面)423上に位置するように、複数の第三凸部421が構成されている(
図3参照)。支持面40において、第四凸部422は、第三領域44の周囲に配置されている。本実施形態の第四凸部422は、ホーン2の振動方向において第三領域44を挟むように二つ配置されている。尚、第四凸部422は、第三領域44を挟む各位置において、前記振動方向(
図3のZ軸方向)及び支持面40上において前記振動方向と直交する方向(
図3のX軸方向)に複数並ぶように配置されてもよい。また、第四凸部422は、二つに限定されず、第三領域44の周囲に一つだけ配置されてもよい。
【0040】
装置本体6は、超音波振動子60を有し、該超音波振動子60によって生成された超音波振動をホーン2に伝達する。即ち、装置本体6は、ホーン2を超音波振動させる。装置本体6は、押圧面20と支持面40とが対向した状態でホーン2及びアンビル4を保持する。本実施形態の装置本体6は、ホーン2の押圧面20が下方を向き、アンビル4の支持面40が上方を向いて押圧面20と対向するように、ホーン2及びアンビル4を保持する。この装置本体6は、ホーン2を水平方方向に超音波振動させる。
【0041】
以上の超音波接合装置1は、以下のように接合対象物8を接合させる。
【0042】
先ず、アンビル4の支持面40上に、接合対象物8(電極体81及び集電体82)が配置される。本実施形態の超音波接合装置1では、
図7に示すように、アンビル4の支持面40上に、電極体81と集電体82とが重ね合わされた状態で配置される。詳しくは、電極体81の非被覆積層部815(電極体81における非被覆部(金属箔)8111、8121が積層された部位)と、集電体82とが重ね合わされた状態で配置される。このとき、非被覆積層部815の上には金属製の保護板が配置されてもよい。このとき、電極体81は、保護板を含む。
【0043】
次に、ホーン2が降下し、重ね合わされた接合対象物8がアンビル4の支持面40とホーン2の押圧面20とによって挟み込まれる。ホーン2が接合対象物8に当接すると、超音波振動が開始されると共に、ホーン2が接合対象物8を押圧した状態で前記当接した位置から所定の変位量に達するまで降下し続ける。そして、降下後、ホーン2は、所定時間、超音波振動する。これにより、各接合対象物8に超音波振動が伝達される。このとき、重ね合わされた接合対象物8は、加圧された状態で互いに擦れ合い、これにより、超音波接合される。詳しくは、以下の通りである。
【0044】
ホーン2から伝達された超音波振動によって、接合対象物8同士の境界面において摩擦が発生し、接合対象物8の表面(金属表面)の酸化被膜、吸着ガス等の不純物が除去され、前記境界面(接合面)に清浄な活性化した金属分子が現れる。更にホーン2から超音波振動が接合対象物8に伝達されることで、摩擦熱による加熱から前記境界面における原子運動が盛んになる。この状態で境界面同士の原子間距離が所定値以下になると、金属原子相互間に引力が発生して結び付き(固相溶接状態となり)、接合対象物8が接合される。
【0045】
ホーン2が、接合対象物8に当接した後、所定の変位量だけさらに降下すると、ホーン2の複数の凸部22及びアンビル4の複数の凸部42が接合対象物8にそれぞれ食い込む。本実施形態の超音波接合装置1では、ホーン2及びアンビル4の新品時(各凸部22、42が摩耗していない状態)において、ホーン2が前記所定の変位量降下したときに、ホーン2の第一凸部221とアンビル4の第三凸部421とは、接合対象物8にそれぞれ食い込むが、ホーン2の第二凸部(後方凸部)222とアンビル4の第四凸部(後方凸部)422とは、接合対象物8に当接しない。
【0046】
そして、超音波接合装置1においてホーン2とアンビル4との使用を続けると、ホーン2の第一凸部221とアンビル4の第三凸部421とがそれぞれ摩耗して低くなる。第一凸部221と第三凸部421とがあまり摩耗していない状態では、ホーン2が前記所定の変位量降下しても、ホーン2の第二凸部222とアンビル4の第四凸部422とは、接合対象物8には当接しない。
【0047】
しかし、第二凸部222と第四凸部422の高さ(先端位置)は、第一凸部221と第三凸部421との摩耗が進行し、それ以上摩耗が進行すると接合対象物8における超音波接合の品質が低下する状態になると、第二凸部222及び第四凸部422の少なくとも一方が接合対象物8に当接するような高さに設定されている。本実施形態の超音波接合装置1では、第一凸部221の摩耗が進行して前記品質が低下する状態になると第二凸部222が接合対象物8に当接し、第三凸部421の摩耗が進行して前記品質が低下する状態になると第四凸部422が接合対象物8に当接するように、第二凸部222と第四凸部422との高さがそれぞれ設定されている。具体的に、第二凸部222及び第四凸部422の高さ(先端位置)は、ホーン2の前記所定の変位量、第一凸部221及び第三凸部421の初期(摩耗していな状態での)高さ、第一凸部221及び第三凸部421の摩耗したときの高さと接合対象物8における接合強度との関係を示すデータ等に基づいて設定される。
【0048】
本実施形態の超音波接合装置1は、蓄電素子80の電極体81と集電体82とを接合する。この接合された電極体81及び集電体82がケース内に収容されることで、蓄電素子80が製造される。
【0049】
以上の超音波接合装置1によれば、使用によってホーン2の第一領域241の第一凸部221が磨り減るのに伴って、第二領域242において第一領域241に近い位置の第二凸部222から該第一領域241と離れた位置の第二凸部222に向かって順に第二凸部222が接合対象物8に当接する。これにより、第一領域241の第一凸部221が磨り減ったことで低下した超音波振動の伝達性能の少なくとも一部が、第二領域242の第二凸部222が接合対象物8に当接することで補われ、その結果、ホーン2を使用し続けたときの超音波振動の接合対象物8への伝達性能の低下が抑制される。
【0050】
本実施形態のホーン2及びアンビル4によれば、第一凸部221又は第三凸部421が使用によって所定量以上(所定の高さ以下まで)磨り減った(摩耗した)ときに、接合対象物8に形成される圧痕(複数の凸部22、42によって形成された圧痕)において、先端が第一凸部221又は第三凸部421の先端より後方に位置する第二凸部222又は第四凸部422と対応する形状(圧痕)が現れる若しくは変化する。これにより、該ホーン2又は該アンビル4が交換時期か否かを的確に判別することができる。
【0051】
具体的に、ホーン2では、接合対象物8に形成された圧痕の大きさ(圧痕が形成される範囲の拡がり)から、該ホーン2の交換時期を判別することができる。即ち、第一領域241の第一凸部221が磨り減るのに伴い、圧痕が形成される範囲が大きくなる(本実施形態の例では、第一凸部221が磨り減るのに伴い圧痕が振動方向に拡がる)。この圧痕の振動方向の長さ寸法が、予め設定された閾値(ホーン2における超音波振動の伝達性能に基づいて設定される閾値)を超えると、ホーン2の交換時期である(振動の伝達性能が許容値よりも低下している)と判断され、ホーン2が交換される。一方、前記圧痕の振動方向の長さ寸法が、前記閾値以下であると、ホーン2における超音波振動の伝達性能が十分であると判断され、該ホーン2は、交換されずに次回の超音波接合にも用いられる。
【0052】
また、アンビル4では、接合対象物8に形成された圧痕における第三領域44(第三凸部421)と対応する領域の周囲の形状から、該アンビル4が交換時期か否かを的確に判別することができる。即ち、接合対象物8に形成された圧痕における第三領域44と対応する領域の周囲に、第四凸部422の圧痕が現れていると、アンビル4の交換時期であると判断され、アンビル4が交換される。一方、接合対象物8に形成された圧痕に第四凸部422の圧痕が現れていなければ、アンビル4が交換されずに次回の超音波接合にも用いられる。
【0053】
本実施形態のホーン2及びアンビル4では、第一凸部221が設けられた第一領域241、及び第三凸部421が設けられた第三領域44の外側に、第二凸部222及び第四凸部422が配置されている。このため、押圧面20と支持面40とで接合対象物8を挟み込んで超音波振動させたときに、該接合対象物8に第一凸部221(又は第三凸部421)が食い込むときの該第一凸部221間(又は該第三凸部421間)の肉(接合対象物8を構成する金属の一部)の移動が第二凸部222(又は第四凸部422)によって阻害されない。これにより、第一凸部221(又は第三凸部421)が接合対象物8に十分に食い込み、その結果、超音波振動が接合対象物8に十分に伝達される。
【0054】
本実施形態の配置領域24及び第三領域44は、ホーン2の超音波振動の振動方向に長い。これにより、ホーン2の超音波振動が重ね合わされた接合対象物8に効率よく伝達され、その結果、接合対象物8同士が効率よく接合される。
【0055】
尚、本発明の超音波接合装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0056】
上記実施形態の超音波接合装置1では、ホーン2の押圧面20とアンビル4の支持面40とに設けられた複数の凸部22、42の構成が異なっているが、同じであってもよい。即ち、アンビル4の支持面40が第一領域241と第二領域242とを含む配置領域24を有する構成でもよく、又は、ホーン2の押圧面20が第三領域44と該第三領域44の周囲に配置される第四凸部422とを有する構成でもよい。また、ホーン2の押圧面20とアンビル4の支持面40とに設けられた複数の凸部22、42の構成が逆であってもよい。即ち、アンビル4の支持面40が第一領域241と第二領域242とを含む配置領域24を有し、且つ、ホーン2の押圧面20が第三領域44と該第三領域44の周囲に配置される第四凸部422とを有する構成でもよい。
【0057】
また、ホーン2の押圧面20とアンビル4の支持面40とは、平面であってもよい。この場合、例えば、
図8に示すように、ホーン2の第一凸部221が設けられた領域を振動方向に挟むように該領域の両側に複数の第二凸部(後方凸部)222がそれぞれ設けられ、アンビル4の第三凸部421が設けられた領域を前記振動方向に挟むように該領域の両側に複数の第四凸部(後方凸部)422がそれぞれ設けられてもよい。複数の第二凸部222は、前記振動方向に並び、それぞれの先端が共通の平面上に位置するように構成される。また、複数の第四凸部422も、前記振動方向に並び、それぞれの先端が共通の平面上に位置するように構成される。第二凸部222及び第四凸部422の高さ(先端位置)は、ホーン2の変位量、第一凸部221及び第三凸部421の初期(摩耗していな状態での)高さ、第一凸部221及び第三凸部421の摩耗したときの高さと接合対象物8における接合強度との関係を示すデータ等に基づいて設定される。
【0058】
押圧面20及び支持面40の凸部22、42の具体的な形状は、限定されない。例えば、上記実施形態の凸部22、42は、四角錐形状であるが、四角錐形状以外の多角錐形状、円錐形状、角錐台形状であってもよい。また、凸部22、42は、ホーン2の振動方向と交差する方向に延びる突条等によって構成されてもよい。即ち、凸部22、42は、接合対象物8に当接したときに接合対象物8の接合(超音波振動)に寄与する形状(先細りの形状等)であればよい。
【0059】
上記実施形態のアンビル4における第四凸部422は、ホーン2の振動方向における第三領域44の両側に配置されているが、この構成に限定されない。即ち、第四凸部422は、第三凸部421が整列する第三領域44の周囲に配置されていれば何れの位置でもよい。
【0060】
上記実施形態のホーン2では、第二領域242が振動方向において第一領域241に隣り合うように設けられているが、この構成に限定されない。第二領域242は、
図9に示すように、振動方向と直交する方向において第一領域241に隣り合うように設けられてもよい。かかる構成によれば、第一領域241の各第一凸部221が所定量以上摩耗したときに、第二領域242の各第二凸部222が振動方向における広い範囲で接合対象物8と当接する。このため、第一領域241の各第一凸部221が摩耗して該第一凸部221による接合対象物8への超音波振動の伝達性能が低下しても、第二領域242の各第二凸部222によって振動方向における広い範囲で超音波振動が接合対象物8へ伝達されるため、ホーン2全体での超音波振動の接合対象物8への伝達性能の低下が効果的に抑えられる。
【0061】
また、上記実施形態のホーン2では、第二領域242は、第一領域241を挟むように該第一領域241の両側に設けられているが、一方側のみに設けられてもよい。
【0062】
押圧面20及び支持面40には、配置領域24又は第三領域44が一つ設けられているが、複数設けられてもよい。例えば、
図10に示すように、押圧面20(又は支持面40)は、ホーン2の振動方向に間隔を空けて並び且つ第一凸部221(又は第三凸部421)がそれぞれ形成された複数の領域50を有してもよい。この場合、第二凸部222(又は第四凸部422)は、隣り合う領域50間に配置されるのが好ましい。かかる構成によれば、接合対象物8における接合領域が振動方向に長くなり、且つ、押圧面20と支持面40とで接合対象物8を挟み込んで超音波振動させたときに該接合対象物8に第一凸部221(又は第三凸部421)が食い込むときの該第一凸部221間(又は該第三凸部421間)の肉の移動が第二凸部222(又は第四凸部422)によって阻害されない。これにより、該第一凸部221(又は該第三凸部421)が接合対象物8に十分に食い込み、ホーン2の超音波振動が接合対象物8により効率よく伝達される。その結果、接合対象物8同士がより効率よく接合される。尚、複数の領域50のそれぞれにおいて、振動方向と直交する方向の寸法より振動方向の寸法が短くてもよい。この場合、複数の領域50の全体が振動方向に長い形状であればよい。
【0063】
上記実施形態の超音波接合装置1では、超音波振動するホーン2がアンビル4の上方に配置されているが、この構成に限定されない。例えば、アンビル4がホーン2の上方に配置されてもよい。また、ホーン2とアンビル4とが接合対象物8を挟み込む方向は、上下方向(垂直方向)に限定されず、上下方向以外の方向(例えば、水平方向)であってもよい。
【0064】
上記実施形態の超音波接合装置1では、押圧面20と支持面40との両方に、該押圧面20及び該支持面40によって接合対象物8を挟み込んで接合したときに、ホーン2又はアンビル4が交換時期か否かを判別可能な圧痕を該接合対象物8に形成する複数の凸部22、42が配置されているが、この構成に限定されない。前記交換時期か否かを判別可能な圧痕を接合対象物8に形成可能な複数の凸部22、42は、押圧面20又は支持面40のいずれか一方の面にのみ設けられてもよい。かかる構成によっても、接合対象物8に形成された圧痕からホーン2又はアンビル4のいずれか一方(前記複数の凸部22、42が設けられたもの)についての交換時期を判断することができる。
【0065】
上記実施形態の超音波接合装置1では、先端が第一凸部221(又は第三凸部421)の先端より後方に位置する第二凸部222(又は第四凸部422)が、第一領域241(又は第三領域44)の外に配置されているが、この構成に限定されない。第二凸部222(又は第四凸部422)は、
図11に示すように、第一領域241(又は第三領域44)内に配置されてもよい。かかる構成によっても、接合対象物8に形成される圧痕における第一領域241(又は第三領域44)と対応する領域内の形状から、ホーン2(又はアンビル4)が交換時期か否かを的確に判別することができる。