(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム基材を構成するゴム組成物及び前記ゴム糊に含まれる前記ゴム組成物が、いずれもジエン系ゴム組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理剤。
前記ゴム基材を構成するゴム組成物及び前記ゴム糊に含まれる前記ゴム組成物の少なくとも一方が、アクリロニトリルブタジエンゴム組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について説明する。
[表面処理剤]
本実施形態に係る表面処理剤は、ゴム基材の表面を処理するために用いられるものであって、下記一般式(I)で示されるフッ素含有化合物と、ケイ化カルシウム(CaSi
2)と、ゴム組成物及びゴム糊用溶剤を含むゴム糊と、アルカリと、それらを溶解する表面処理剤用溶剤とを含有する。
【0019】
【化4】
(上記式(I)中、R
1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R
2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
3及びR
4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表し、xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。)
【0020】
上記式(I)において、R
1で表されるフルオロアルキル基を含有する基としては、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
6F
13、−C
7F
15等の−C
qF
2q+1(q=1〜10)で表されるフルオロアルキル基;オキシフルオロアルキレン基等を挙げることができ、これらのうち、下記式(III)で示されるオキシフルオロアルキレン基であるのが好ましい。
【0021】
【化5】
(上記式(III)中、pは0〜2の整数である。)
【0022】
上記式(I)において、R
2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2のアルキル基が挙げられ、R
2で表されるアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等の炭素数2〜4のアルコキシアルキル基が挙げられる。これらのうち、R
2で表される基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0023】
上記式(I)において、R
3及びR
4で表される有機基としては、例えば、下記式(i)〜(v)で示される基を挙げることができる。
【0025】
上記式(I)において、トリアルコキシシリル基又はトリアルコキシアルコキシシリル基(−Si(OR
2)
3)が結合する中間鎖(−CH
2−CH−)の数xは、1〜100であり、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜5である。また、中間鎖(−CH
2−CR
3R
4−)の数yは、0〜100であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜10である。
【0026】
上記フッ素含有化合物として好適な化合物としては、下記式(IV)〜(VIII)で示される化合物を例示することができる。特に、下記式(IV)又は式(V)で示される化合物(上記式(I)においてy=0である化合物)は、1分子中に占めるフッ素原子の割合が大きく、ゴム製品の表面近傍に高い効率でフッ素原子を存在させ得るため好ましい。
【0027】
【化7】
(式(IV)中、x’は2又は3である。)
【0029】
【化9】
(式(V)及び式(VI)中、R
1’は、−CF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OC
3F
7で表される基である。式(V)中、xaは1〜100の整数である。式(VI)中、xbは1〜100の整数であり、ybは1〜500の整数である。)
【0030】
【化10】
(式(VII)中、xcは1〜10の整数であり、ycは0〜100の整数である。)
【0031】
【化11】
(式(VIII)中、xdは1〜10の整数であり、ydは0〜100の整数である。)
【0032】
上記式(I)で示されるフッ素含有化合物は、下記式(Ia)で示されるフッ素含有過酸化物の存在下に、下記式(Ib)で示される単量体と、下記式(Ic)で示される単量体とを重合させることにより得られる。なお、この反応生成物(フッ素含有化合物)中には、フルオロアルキル基を含有する基(R
1)が片末端のみに導入されているオリゴマーが任意の割合で含まれていてもよい。
【0033】
【化12】
(式(Ia)〜(Ic)中、R
1はフルオロアルキル基を含有する基を表し、R
2はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
3及びR
4は各々独立して水素原子又は1価の有機基を表す。)
【0034】
本実施形態に係る表面処理剤におけるフッ素含有化合物の含有割合としては、1.0〜10.0質量%であるのが好ましく、1.5〜5.0質量%であるのがより好ましく、1.8〜3.0質量%であるのが特に好ましい。フッ素含有化合物の含有割合が過小であると、ゴム製品の表面に所望とする超撥水性及び撥油性を付与することが困難となるおそれがある。一方、フッ素化合物の含有割合が10.0質量%を超えても、含有量に見合った効果を得られないおそれがある。
【0035】
本実施形態に係る表面処理剤は、ケイ化カルシウムを含有する。ケイ化カルシウムを含有することで、当該表面処理剤を用いて表面処理が施されたゴム製品に所望とする超撥水性及び撥油性を付与することができる。
【0036】
本実施形態に係る表面処理剤におけるケイ化カルシウムの含有量は、フッ素含有化合物の含有量の0.01〜0.5倍(質量基準)であるのが好ましく、0.03〜0.3倍(質量基準)であるのがより好ましく、0.05〜0.1倍であるのが特に好ましい。ケイ化カルシウムの含有量が、フッ素含有化合物の含有量の0.01倍(質量基準)未満であると、ゴム製品の表面に所望とする撥油性を付与することが困難となるおそれがあり、0.5倍(質量基準)を超えると、ゴム製品の表面に対する表面処理剤の密着性が低下し、当該表面処理剤により形成される表面処理層がゴム製品の表面から脱落するおそれがある。
【0037】
本実施形態に係る表面処理剤は、ゴム組成物及びゴム糊用溶剤を含むゴム糊を含有する。ゴム糊を含有することで、当該表面処理剤を用いて表面処理が施されたゴム製品に所望とする超撥水性及び撥油性を付与することができる。
【0038】
ゴム糊に含まれるゴム組成物としては、特に限定されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)組成物、スチレンブタジエンゴム(SBR)組成物、イソプレンゴム(IR)組成物、ブタジエンゴム(BR)組成物、クロロプレンゴム(CR)組成物、天然ゴム(NR)組成物、ブチルゴム(IIR)組成物等のジエン系ゴム組成物を用いるのが好ましく、特にアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)組成物を用いるのが好ましい。
【0039】
ゴム糊に含まれるゴム糊用溶剤としては、ゴム組成物を溶解可能な溶剤から適宜選択され得るが、上記ゴム組成物を容易に溶解させ得る非極性有機溶剤が好適に用いられる。当該ゴム糊用溶剤は、ゴム糊に含まれるゴム組成物の種類に応じ、溶解パラメータ(SP値)を一つの指標として適宜選択され得る。ゴム糊用溶剤として極性有機溶媒(例えばメタノール等)を用いると、ゴム組成物を溶解させることができず、ゴム糊を作製することができない。非極性有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルプロピルケトン、酢酸ブチル、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン等が挙げられ、これらのうち、トルエンが特に好適である。
【0040】
ゴム糊の濃度(固形分濃度)は、特に限定されないが、例えば、5〜20質量%であるのが好ましく、6〜18質量%であるのがより好ましく、8〜15質量%であるのが特に好ましい。
【0041】
なお、本実施形態におけるゴム糊は、上記ゴム組成物をゴム糊用溶剤に添加し、所定時間(5〜10時間程度)攪拌してゴム組成物をゴム糊用溶剤に溶解させることにより容易に製造され得る。
【0042】
本実施形態に係る表面処理剤におけるゴム糊の含有量としては、フッ素含有化合物の含有量の2.0〜15.0倍(質量基準)であるのが好ましく、5.0〜10.0倍(質量基準)であるのがより好ましく、6.0〜8.0倍(質量基準)であるのが特に好ましい。ゴム糊の含有量が、フッ素含有化合物の含有量の2.0倍(質量基準)未満や15.0倍(質量基準)を超えると、ゴム製品の表面に所望とする撥油性を付与することが困難となるおそれがある。
【0043】
本実施形態に係る表面処理剤は、表面処理剤をアルカリ性(pHが8以上、特に8〜10)にするためにアルカリ(例えば、アンモニア(NH
3)水等)を含有する。表面処理剤がアルカリ性を示すことで、フッ素含有化合物の加水分解縮合反応を効率的に進行させ、架橋構造の形成を促進させることができる。
【0044】
本実施形態に係る表面処理剤におけるアルカリの含有量としては、フッ素含有化合物の含有量の0.01〜5倍(質量基準)であるのが好ましく、0.1〜1倍(質量基準)であるのがより好ましく、0.2〜0.3倍(質量基準)であるのが特に好ましい。
【0045】
本実施形態に係る表面処理剤用溶剤としては、本実施形態に係る表面処理剤を構成する各成分(フッ素含有化合物、ケイ化カルシウム、ゴム糊、アルカリ等)をいずれも溶解可能な溶剤から適宜選択され得るが、上述したゴム糊用溶剤として用いられ得る非極性有機溶剤が好適に用いられる。表面処理剤用溶剤は、ゴム糊用溶剤と同一の溶剤であってもよいし、異なる溶剤であってもよい。
【0046】
本実施形態に係る表面処理剤は、下記式(II)で示されるシランカップリング剤を含有するのが好ましい。当該シランカップリング剤を含有することで、表面処理剤に含まれるフッ素化合物の架橋構造物とゴム基材の表面との密着性を向上させることができる。
【0047】
【化13】
(上記式(II)中、R
5はアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R
6はアルキル基を表し、R
7はゴム製品のゴム基材を構成するゴム組成物のポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表し、mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数である。)
【0048】
上記式(II)において、「−Si(OR
5)
mR
63-m」で表される基は、少なくとも1個、好ましくは3個の加水分解性基(−OR
5)を有する。これにより、上記式(II)で示されるシランカップリング剤は、複数の加水分解性基(−OR
2)を有する、上記式(I)で示されるフッ素含有化合物と反応することができる。
【0049】
上記式(II)において、「−Si(OR
5)
mR
63-m」で表される基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基であるのが好ましい。
【0050】
ゴム製品のゴム基材を構成するゴム組成物のポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基(−R
7)としては、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ウレイド基等が挙げられる。後述するように、本実施形態に係る表面処理剤を用いて表面処理されるゴム製品のゴム基材を構成するゴム組成物としては、上記ゴム糊に好適に含まれるジエン系ゴム組成物が好ましいため、上記有機官能基(−R
7)としては、不飽和結合を有するゴム組成物のポリマー主鎖に対して反応性を有するメルカプト基が好適である。
【0051】
本実施形態に係る表面処理剤を用い、ゴム基材の表面において、フッ素含有化合物と、シランカップリング剤とを反応(加水分解縮合反応)させることにより、フッ素含有化合物がケイ化カルシウムと反応するとともに、シランカップリング剤の加水分解性基(−OR
5)と反応し、表面処理層が形成される。それとともに、シランカップリング剤の有機官能基(−R
7)が、ゴム基材の表面近傍におけるゴム組成物のポリマー主鎖と反応する。これにより、上記表面処理層は、シランカップリング剤を介してゴムのポリマー主鎖と化学的に結合するため、上記表面処理層をゴム基材の表面に強固に密着させることができ、使用環境において、当該表面処理層がゴム基材の表面から脱離することがなく、所望とする超撥水性及び撥油性が安定的に発現されることになる。
【0052】
本実施形態に係る表面処理剤において、シランカップリング剤の含有量としては、フッ素含有化合物の含有量の0.01〜10倍(質量基準)であるのが好ましく、0.1〜5倍(質量基準)であるのがより好ましく、0.5〜2倍(質量基準)であるのが特に好ましい。シランカップリング剤の含有量が過少であると、ゴム基材の表面に形成される表面処理層が、当該ゴム基材の表面に対して十分な密着性を有するものとならないおそれがあり、10倍(質量基準)を超えると、ゴム製品に対して超撥水性及び撥油性を付与することができないおそれがある。
【0053】
本実施形態に係る表面処理剤は、例えばSi(OR
8)
4(R
8は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるテトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等)を含有しないのが好ましい。本実施形態に係る表面処理剤がテトラアルコキシシランを含有すると、後述する実施例からも明らかなように、撥油性が低下するおそれがある。
【0054】
[表面処理剤の調製方法]
本実施形態に係る表面処理剤は、上記式(I)で示されるフッ素化合物と、ケイ化カルシウムと、ゴム糊と、アルカリと、所望によりシランカップリング剤とを表面処理剤用溶剤に添加し、所定時間(10〜30分程度)攪拌してそれらの成分を表面処理剤用溶剤に溶解させることにより容易に製造され得る。
【0055】
[ゴム製品]
本実施形態におけるゴム製品は、ゴム基材(加硫ゴム基材又は未加硫ゴム基材)と、本実施形態に係る表面処理剤を用いたゴム基材の表面に対する表面処理により形成されてなる表面処理層とを有する。表面処理層は、ゴム製品の用途等に応じて、ゴム基材の全面に形成されていてもよいし、一部(一部の表面、表面のうちの一部分等)に形成されていてもよい。
【0056】
ゴム基材を構成するゴム組成物としては、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る表面処理剤に含有されるゴム糊を構成するゴム組成物と同様、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)組成物、スチレンブタジエンゴム(SBR)組成物、イソプレンゴム(IR)組成物、ブタジエンゴム(BR)組成物、クロロプレンゴム(CR)組成物、天然ゴム(NR)組成物、ブチルゴム(IIR)組成物等のジエン系ゴム組成物を用いるのが好ましく、特にアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)組成物を用いるのが好ましい。ゴム基材を構成するゴム組成物は、本実施形態に係る表面処理剤に含有されるゴム糊を構成するゴム組成物と同一のゴム組成物であってもよいし、異なるゴム組成物であってもよい。
【0057】
表面処理層は、ゴム基材の表面に本実施形態に係る表面処理剤を塗布することで当該表面処理剤の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより形成され得る。
【0058】
ゴム基材の表面に表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等を用いて塗布する方法や、表面処理剤にゴム基材を浸漬させる方法等が挙げられる。
【0059】
ゴム基材の表面に形成された塗膜を加熱する方法としては、オーブンによる加熱、熱プレスによる加熱等が挙げられるが、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば、130〜150℃で6〜12時間程度、好ましくは130〜145℃で6〜8時間程度である。
【0060】
当該塗膜の加熱により、上記式(I)で示されるフッ素含有化合物とケイ化カルシウムとの反応が促進される。それとともに、表面処理剤中のゴム糊を構成するゴム組成物の架橋反応が促進され、またゴム基材の表面に形成された塗膜から溶剤(表面処理剤用溶剤及びゴム糊用溶剤)が除去される。本実施形態に係る表面処理剤がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の加水分解性基とフッ素含有化合物とが反応するとともに、シランカップリング剤の反応性有機官能基とゴム基材のゴム組成物のポリマー主鎖とが反応する。これにより、表面処理層がゴム基材を構成するゴム組成物のポリマー主鎖に化学的に結合し、ゴム基材に対する密着性に優れた表面処理層が形成される。
【0061】
本実施形態におけるゴム製品によれば、ゴム基材の表面に、本実施形態に係る表面処理剤を用いた表面処理により表面処理層が形成されていることで、当該ゴム製品(ゴム基材)の表面に超撥水性(水に対する接触角が140°以上、好適には180°)及び撥油性(ドデカンに対する接触角が25°以上、好適には80°以上)を付与することができる。
【0062】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0064】
[ゴム基材の作製]
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBRポリマー)82g、老化防止剤(BHT)0.5g、ステアリン酸1g、酸化亜鉛5g、補強剤(含水非晶質二酸化ケイ素)40g、顔料1.8g、酸化チタン3g、硫黄2g、可塑剤(ジブトキシエトキシエチルホルマール)15g、加硫促進剤(ZnBDC)3g、及び加硫促進剤(CBS)2gを8インチロールによって混練してアクリロニトリルブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム)を調製した。次に、この未加硫ゴムを、熱プレスを用いて加硫処理(150℃,10分間)を行い、アクリロニトリルブタジエンゴム(加硫ゴム)からなるゴム基材(厚さ:2mm)を作製した。
【0065】
〔実施例1〕
(1)表面処理剤の調製
表1に示す処方に従って、上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物、ケイ化カルシウム(CaSi
2)、ゴム糊(上記アクリロニトリルブタジエンゴム組成物(未加硫ゴム)5gをゴム糊用溶剤としてのトルエン(関東化学社製)45gに溶解させて調製)、アルカリとしてのアンモニア水、及び上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)を、表面処理剤用溶剤としてのトルエンに添加し、室温下にて30分間攪拌することにより、表面処理剤を調製した。
【0066】
(2)ゴム基材の表面処理
上記のようにして得られた表面処理剤を、上記ゴム基材の一方面に刷毛で塗布し、表面処理剤の塗膜を形成した。次に、当該ゴム板に、140℃のオーブン内で8時間加熱処理を施し、ゴム基材の一方面に表面処理層が形成されたゴム製品を作製した。
【0067】
〔実施例2〕
シランカップリング剤を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0068】
〔実施例3〕
テトラエトキシシランをさらに含有させた以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0069】
〔実施例4〕
表面処理剤用溶剤としてのトルエンをキシレンに変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0070】
〔実施例5〕
シランカップリング剤をビニル系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=CH
2CH,m=3,n=0;Z6300,東レダウコーニング社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0071】
【表1】
【0072】
〔比較例1〕
表2に示す処方に従い、フッ素含有化合物を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0073】
〔比較例2〕
ケイ化カルシウムを含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0074】
〔比較例3〕
ゴム糊を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0075】
〔比較例4〕
アルカリとしてのアンモニア水を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0076】
〔比較例5〕
アルカリとしてのアンモニア水を1N塩酸に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0077】
〔比較例6〕
ケイ化カルシウムを炭酸カルシウム(CaCO
3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0078】
〔比較例7〕
ケイ化カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、当該表面処理剤を用いてゴム基材の一方面に表面処理層を形成し、ゴム製品を作製した。
【0079】
〔比較例8〕
(1)表面処理剤の調製
表2に示す処方に従って、上記式(IV)で示されるフッ素含有化合物、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラエトキシチタン(Ti(OEt)
4)、上記式(II)で示されるメルカプト系シランカップリング剤(R
5=CH
3,R
7=SH,m=3,n=3;Z6062,東レダウコーニング社製)、及び0.1N塩酸を、表面処理剤用溶剤としてのアセトンに添加し、室温下にて1時間攪拌することにより、表面処理剤を調製した。
【0080】
(2)ゴム基材の表面処理
上記のようにして得られた表面処理剤を、上記ゴム基材の一方面に刷毛で塗布し、表面処理剤の塗膜を形成した。次に、当該ゴム板を室温下にて10分間放置して塗膜を乾燥させた後、100℃のオーブン内で60分間加熱処理を施し、ゴム基材の一方面に表面処理層が形成されたゴム製品を作製した。
【0081】
【表2】
【0082】
〔試験例1〕撥水性試験
接触角測定器(協和界面科学社製,DM−501)の試料ステージ上に、表面処理層が上方に位置するように実施例1〜5及び比較例1〜10のゴム製品を載置し、所定量(約2μL)の水滴をシリンジ先端に形成させた後、試料ステージを上方に移動してシリンジ先端に形成された水滴にゴム製品の表面処理層を接触させた。その後、試料ステージを下方に移動させて、ゴム製品の表面処理層上の水滴の接触角を測定した。参考として、表面処理剤による表面処理を施していないゴム基材(参考例1)の一方面上の水滴についても同様の操作により接触角を測定した。
【0083】
また、実施例1〜5及び比較例1〜10のゴム製品の表面処理層、並びに参考例1のゴム基材の一方面を、エタノールを含む不織布で拭き取った後、同様にして水滴の接触角を測定した。結果を表3に示す。
【0084】
なお、表3において接触角180°とは、シリンジ先端に形成された水滴にゴム製品の表面処理層を接触させた後、試料ステージを下方に移動させても、シリンジ先端から水滴が離れなかったことを意味する。
【0085】
〔試験例2〕撥油性試験
所定量(約2μL)のドデカンの液滴をシリンジ先端に形成させた以外は、試験例1と同様の操作により実施例1〜5及び比較例1〜10のゴム製品の表面処理層上、並びに参考例1のゴム基材の一方面上のドデカン液滴の接触角を測定した。また、実施例1〜5及び比較例1〜10のゴム製品の表面処理層、並びに参考例1のゴム基材の一方面を、エタノールを含む不織布で拭き取った後、同様にしてドデカン液滴の接触角を測定した。結果を表3にあわせて示す
【0086】
〔試験例3〕表面粗さ測定試験
実施例1〜5及び比較例1〜10の表面処理層、並びに参考例1のゴム基材の一方面の算術平均表面粗さRaを、表面粗さ測定装置(KEYENCE社製,形状解析レーザー顕微鏡VK−X150)を用いて測定した。結果を表3にあわせて示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表3に示すように、実施例1〜5の表面処理剤により形成された表面処理層を有するゴム製品においては、シリンジ先端に形成された水滴にゴム製品の表面処理層を接触させた後、試料ステージを下方に移動させても、シリンジ先端から水滴が離れることがなく、水の接触角が180°であると評価された。また、ドデカン接触角も概ね25°以上であった。この結果から、本発明の表面処理剤を用いてゴム基材の表面を処理することで、ゴム製品に超撥水性及び撥油性を付与可能であることが確認された。そして、実施例1及び実施例3の結果から、本発明の表面処理剤にTEOSが含まれていないことで、極めて高い撥油性を付与可能であることが確認された。
【0089】
一方、比較例1のように、本発明の表面処理剤における必須成分の一つであるフッ素含有化合物を含まない表面処理剤においては、ゴム製品に撥水性及び撥油性のいずれをも付与することができなかった。
【0090】
また、比較例2〜7のように、本発明の表面処理剤における必須成分(ケイ化カルシウム、ゴム糊、及びアルカリ)のいずれかを含まない表面処理剤においては、ゴム製品に多少の撥水性を付与することができるものの、超撥水性を付与するには至らなかった。
【0091】
さらに、本発明の表面処理剤におけるフッ素含有化合物と同一の化合物を含む従来の表面処理剤(特開2006−152011号公報,比較例8)と比べ、実施例1〜5の表面処理剤は、撥水性に優れた表面処理層を形成可能であることが確認された。
【0092】
なお、実施例1〜5及び比較例1〜8の表面処理層上、並びに参考例1のゴム基材の表面(一方面)の算術平均粗さRaに目立った差異が見受けられないことから、実施例1〜5の表面処理層の超撥水性及び撥油性は、表面処理層の表面粗さに関係なく奏されるものと推定され得る。