(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493794
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置及び2つの受信系統を備えた無線通信装置における受信状況表示方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/23 20150101AFI20190325BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20190325BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
H04B17/23
H04B17/318
H04B1/16 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-72771(P2015-72771)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192734(P2016-192734A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(72)【発明者】
【氏名】永島 茂樹
【審査官】
岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−252789(JP,A)
【文献】
特開平06−310993(JP,A)
【文献】
特開2008−131324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/00−1/58
H04B 17/00−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置であって、
二次元表示装置の表示画面上の一部に第1受信系統で受信する運用周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、前記表示画面上の他の部分に第2受信系統で受信する前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、
一定の又は任意の時間の間隔で、前記第2受信系統で受信する無線信号の周波数帯を他の周波数帯に変更し、変更した周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度を前記表示画面上の前記他の部分にスペクトラムスコープ表示することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1受信系統として使用される第1受信部と、
前記第2受信系統として使用される第2受信部と、
前記第1受信部及び前記第2受信部で受信する周波数を変更する受信周波数変更部と、
前記第1受信部及び前記第2受信部でそれぞれ受信される無線信号の強度を測定する信号強度測定部と、
前記無線信号の強度の値を用いて、前記二次元表示装置に表示されるスペクトラムスコープ画像の作成する表示画像作成部と、
少なくとも前記受信周波数変更部及び前記表示画像作成部を制御するための制御部と、
経過時間をカウントする計時部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1受信系統で受信する前記運用周波数帯における所定周波数範囲内及び前記第2受信系統で受信する前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における所定の周波数範囲内で、さらに所定の周波数ピッチずつ受信周波数の変更を指示し、
前記計時部が前記一定の又は任意の時間をカウントしたときに、前記制御部は、前記受信周波数変更部に対して、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を指示する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第2受信部で受信する周波数帯として、あらかじめ設定されている又はユーザーによって任意に設定された複数の周波数帯をサイクリックに又はランダムに選択することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
ユーザーによって操作される操作部をさらに備え、ユーザーによって前記操作部に所定の操作が行われたときに、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を停止することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記無線信号の強度と所定の閾値とを比較し、前記所定の閾値を超えている無線信号の強度値が存在するときに、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を停止することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
2つの受信系統を備えた無線通信装置における受信状況表示方法であって、
二次元表示装置の表示画面上の一部に第1受信系統で受信する運用周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、前記表示画面上の他の部分に第2受信系統で受信する前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、
一定の又は任意の時間の間隔で、前記第2受信系統で受信する無線信号の周波数帯を他の周波数帯に変更し、変更した周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度を前記表示画面上の前記他の部分にスペクトラムスコープ表示することを特徴とする無線通信装置における受信状況表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信状況表示機能を備え、それぞれ異なる複数の周波数帯の無線信号を同時に受信可能な無線通信装置に関し、特に、ある周波数帯で他局と交信を行いつつ他の周波数帯での受信状況を把握する2波同時受信モードにおける受信周波数帯の変更及びそれに伴う二次元画像表示装置の受信状況表示に関する。
【背景技術】
【0002】
アマチュア無線においては、例えば1つの送信部と2つの受信部を備えた無線通信装置を用いて、送信部と一方の受信部をメインバンドとして使用し、メインバンドで他局との交信を行いながら、他方の受信部をサブバンドとして使用し、メインバンドの周波数帯とは異なる周波数帯で無線信号をスキャンして、他の交信相手を探索するなどの目的で受信状況を把握するといった2波同時受信が行われている。以下の説明において、サブバンドで受信する周波数帯を「スキャン周波数帯」とする。
【0003】
特許文献1に記載された従来の無線通信装置では、2つ以上の受信部を有し、液晶表示装置の表示画面上に各受信部の受信内容を表示すると共に、音声帯域表示、使用中の周波数の信号強度、他の周波数が空きチャンネルかビジーであるかの選択が可能である。しかしながら、受信周波数帯の選択や、液晶表示装置の表示画面の切り替えに関しては、操作パネル上に設けられた選択スイッチにより行われ、自動的に切り替えられるようには構成されていない。また、2波同時受信の場合、メインバンドで他局と交信を行いつつ、サブバンドでのスキャン周波数帯を手動操作で変更することは、ユーザーにとって煩わしく、選択スイッチの操作間違いも起こりやすいという問題点を有している。また、特許文献1の装置のように3つ以上の受信部を有している場合は、1つの受信部をメインバンドとし、他の2つ以上の受信部でそれぞれ異なる周波数帯の無線信号をスキャンしてスペクトラムスコープ表示することも可能であるが、多数の受信部を設ける必要があるために無線通信装置の製造コストが増大するという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−252789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置において、製造コストを増大させることなく、例えば一方の受信系統(メインバンド)で他局と交信を行いつつ、他方の受信系統(サブバンド)でメインバンドの運用周波数帯とは受信周波数帯の異なる周波数帯の受信状況の把握を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置は、
二次元表示装置の表示画面上の一部に第1受信系統で受信する
運用周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、前記表示画面上の他の部分に第2受信系統で受信する
前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における
所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、
一定の又は任意の時間の間隔で、前記第2受信系統で受信する無線信号の周波数帯を
他の周波数帯に変更
し、変更した周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度を前記表示画面上の前記他の部分にスペクトラムスコープ表示することを特徴とする。
【0007】
上記無線通信装置は、
前記第1受信系統として使用される第1受信部と、
前記第2受信系統として使用される第2受信部と、
前記第1受信部及び前記第2受信部で受信する周波数を変更する受信周波数変更部と、
前記第1受信部及び前記第2受信部でそれぞれ受信される無線信号の強度を測定する信号強度測定部と、
前記無線信号の強度の値を用いて、前記二次元表示装置に表示されるスペクトラムスコープ画像の作成する表示画像作成部と、
少なくとも前記受信周波数変更部及び前記表示画像作成部を制御するための制御部と、
経過時間をカウントする計時部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1受信系統で受信する前記運用周波数帯における所定周波数範囲内及び前記第2受信系統で受信する前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における所定の周波数範囲内で、さらに所定の周波数ピッチずつ受信周波数の変更を指示し、
前記計時部が前記一定の又は任意の時間をカウントしたときに、前記制御部は、前記受信周波数変更部に対して、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を指示するように構成してもよい。
【0008】
前記第2受信部で受信する周波数帯として、あらかじめ設定されている又はユーザーによって任意に設定された複数の周波数帯をサイクリックに又はランダムに選択するように構成してもよい。
【0009】
上記無線通信装置は、ユーザーによって操作される操作部をさらに備え、ユーザーによって前記操作部に所定の操作が行われたときに、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を停止するように構成してもよい。
【0010】
または、前記制御部は、前記無線信号の強度と所定の閾値とを比較し、前記所定の閾値を超えている無線信号の強度値が存在するときに、前記第2受信部で受信する周波数帯の変更を停止するように構成してもよい。
【0011】
また、本発明に係る無線通信装置における受信状況表示方法は、
二次元表示装置の表示画面上の一部に第1受信系統で受信する
運用周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、前記表示画面上の他の部分に第2受信系統で受信する
前記運用周波数帯とは異なる周波数帯における
所定の周波数範囲の無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示し、
一定の又は任意の時間の間隔で、前記第2受信系統で受信する無線信号の周波数帯を
他の周波数帯に変更
し、変更した周波数帯における所定の周波数範囲の無線信号の強度を前記表示画面上の前記他の部分にスペクトラムスコープ表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、2つの受信系統及び受信状況表示機能を備え、2波同時受信可能な無線通信装置において、例えば、第1受信系統(メインバンド)では、他局との間で交信している運用周波数を中心とした第1周波数範囲の無線信号の強度が二次元表示装置の一部(例えば、左半分)にスペクトラムスコープ表示され、第2受信系統(サブバンド)では、第1受信系統の受信周波数帯とは異なる周波数帯における第2周波数範囲の無線信号の強度がスペクトラムスコープ表示され、さらに、第2受信系統の受信周波数帯が一定の又は任意の時間の間隔で自動的に変更される。そのため、ユーザーは、スイッチ操作などに煩わされることなく、第2受信系統の受信周波数帯での受信状況を把握することができ、第2受信系統を用いて交信相手の探索などを容易に行うことができる。また、無線通信装置の製造コストは、従来の2波同時受信可能な無線通信装置とほとんど同じである。あるいは、従来の2波同時受信可能な無線通信装置のファームウエアを変更することによって実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置の構成を示すブロック図。
【
図2】上記無線通信装置の2波同時受信モードにおける操作パネルの外観及び二次元表示装置の受信状況表示画面を示す図。
【
図3】上記無線通信装置の通常運用モードにおける二次元表示装置の受信状況表示画面を示す参考図。
【
図4】上記無線通信装置の2波同時受信モードにおける動作を示すフローチャート。
【
図5】上記無線通信装置の2波同時受信モードにおける変形例の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る2つの受信系統及び受信状況表示機能を備えた無線通信装置及び2つの受信系統を備えた無線通信装置における受信状況表示方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る無線通信装置1のブロック構成を示し、
図2及び
図3は、無線通信装置1の操作パネルの外観を示す。この無線通信装置1は、メインバンド(第1受信系統)で無線信号の送受信を行いながら1つのサブバンド(第2受信系統)でメインバンドの運用周波数帯とは異なる受信周波数帯の無線信号を同時にスキャンする2波同時受信が可能である。
図1に示すように、無線通信装置1は、1つの送信部10と、異なる2つの周波数で同時に受信するために2つの受信部11A及び11Bと、各受信部11A及び11Bに接続されたスペクトラムスコープ表示用の受信部(以下、「スコープ用受信部」と略称する)11と、VFO(Variable Frequency Oscillator)12A〜12Cを備えている。無線通信装置1では、送信部10と、2つの受信部11A及び11Bとを適宜組み替えて一方をメインバンド、他方をサブバンドとして運用することが可能である。
【0015】
各VFO12A〜12Cには、それぞれ受信周波数変更部6A〜6Cが接続され、受信周波数変更部6A〜6Cは、それぞれ制御部3に接続されており、受信周波数変更部6A〜6Cは、制御部3からの指示に基づいて、VFO12A〜12Cを制御し、スコープ用受信部11及び各受信部11A及び11Bでの受信周波数又は受信周波数帯(スキャン周波数帯)を変更する。また、スコープ用受信部11は、信号強度測定部7に接続され、受信部11A又は11Bで受信する電波による無線信号の強度が測定される。信号強度測定部7は、制御部3に接続されており、信号強度測定部7で測定された無線信号の強度は、スペクトラムスコープ表示に使用される。受信部11A及び11Bは、それぞれ、例えばスーパーへテロダイン受信装置であり、アンテナを介して受信した無線信号(受信信号)に所定の第1周波数の第1局発信号(周波数可変)を混合して第1中間周波数の信号を発生させ、さらに第1IF信号に所定の第2周波数の第2局発信号(周波数固定)を混合して第2中間周波数の第2IF信号を発生させ、第2IF信号を復調して可聴音信号(AF信号)を出力する。スコープ用受信部11には、受信部11A又は11Bのいずれか一方から所定の周波数帯の上記第1IF信号が入力される。受信部11A又は11Bの何れからの第1IF信号をスコープ用受信部11に入力するかは、スコープ用受信部11のスイッチング回路(図示せず)により択一的に選択される。スコープ用受信部11においても、同様に、入力された第1IF信号に所定周波数の局発信号(周波数可変及び周波数固定)が混合され、所望する周波数の信号が出力される。信号強度測定部7は、スコープ用受信部11から出力される所望する周波数の信号の強度を測定する。スコープ用受信部11における局発信号の周波数を一定間隔で一定周波数ピッチずつ変化させることによって、受信部11A又は11Bで受信する無線信号の受信周波数帯をスキャンすることができる。
【0016】
アマチュア無線の分野で使用される無線通信装置は、運用周波数を複数の周波数帯で自由に設定することができる。そのため、各周波数帯における受信状況を表すために、その周波数帯における各周波数の無線信号の強度を示す、いわゆるスペクトラムスコープ表示や、無線信号の強度を時系列に沿って表す、いわゆるウォーターフォール表示を行うことができる。スペクトラムスコープ表示などの受信状況表示画像は一定の面積を必要とするため、無線通信装置1は、液晶表示装置などの二次元表示装置2を備えている。二次元表示装置2には、表示画像作成部8が接続されており、表示画像作成部8は、制御部3からの指示に基づいて、二次元表示装置2の表示画面上に表示される画像データを作成する。制御部3には、さらに計時部(タイマー)9が接続されている。計時部9の機能は後述する。
【0017】
無線通信装置1は、1つの送信部10と2つの受信部11A及び11Bを備えているので、送信部10と1つ受信部11A又は11Bだけを用いて送信と受信を同じ運用周波数で行う通常運用モードと、送信部10と一方の受信部11A又は11Bを用いて、ユーザーが選択した運用周波数帯(メインバンド)で他局と交信を行いつつ、同時に他方の受信部11B又は11Aを用いて、メインバンドとは異なる周波数帯(サブバンド)で無線信号の受信を行う2波同時受信モードが可能である。本発明は、この2波同時受信モードに関するものであるため、通常運用モードについての詳細な説明は省略する。
【0018】
図2及び
図3に示すように、操作部5は、無線通信装置1の操作パネル上で、二次元表示装置2の周囲、例えば左辺及び下辺に沿って配置された、複数の物理的な操作ボタン28や、運用周波数又はスキャン周波数帯を選択したり、受信状況表示画像をシフトさせたりするためのシフトボタン29A及び29Bなどで構成されている。二次元表示装置2の表示画面の上部21には、例えば送信周波数と受信周波数の信号強度の値などを表示するための2つのインジケーター25A及び25Bが表示され、その下には、周波数の数値26A及び26Bが表示されている。二次元表示装置2の表示画面の下部22には、スペクトラムスコープやウォーターフォールなどが表示される。
図3に示すように、通常運用モードでは、メインバンドでの運用周波数は1つ、すなわち送信周波数と受信周波数は同じであるため、2つのインジケーター25A及び25Bと周波数の数値26A及び26Bは、同じものが表示されている。また、二次元表示装置2の表示画面の下部22に、その全体を利用して、メインバンドでの運用周波数帯のスペクトラムスコープ画像が表示されている。
【0019】
一方、
図2に示すように、2波同時受信モードでは、サブバンドにおいてメインバンドの運用周波数帯とは異なる周波数帯の無線信号の強度をスキャンすることが可能であるため、二次元表示装置2の表示画面の下部22が左右方向に2分割され、例えば左側の領域には、例えばメインバンドとして使用される(第1)受信部11Aの運用周波数帯を中心とした第1周波数範囲の無線信号の強度のスペクトラムスコープ画像23(いわゆるセンターモード表示)が表示され、右側の領域には、サブバンドとして使用される(第2)受信部11Bのスキャン周波数帯の第2周波数範囲(例えば全域)の無線信号の強度のスペクトラムスコープ画像24(いわゆる固定モード表示)が表示される。また、2つのインジケーター25A及び25B及び周波数の数値26A及び26Bとして、左側にメインバンドの運用周波数表示され、右側にサブバンドでのスキャン周波数帯が表示される。なお、メインバンドのスペクトラムスコープ画像23は、その表示面積が半減されるため、横軸(周波数)のスケールを圧縮してもよいし、あるいは、横軸のスケールをそのままにして、第1周波数範囲を半減してもよい。この実施形態では、2つの受信部11A及び11Bが設けられているので、2波同時受信モードでは、いずれか一方をメインバンドとして使用し、他方をサブバンドとして使用する。また、メインバンドとサブバンドを入れ替えることも可能である。
【0020】
2波同時受信モードは、上記のように、メインバンドで他局と交信を行い、サブバンドでメインバンドの運用周波数帯とは異なる周波数帯の受信状況を把握する運用モードであるが、本実施形態では、一定の又は任意の時間の間隔で、自動的にサブバンドでのスキャン周波数帯を変更し、その一定の又は任意の時間の間隔内で、そのスキャン周波数帯の第2周波数範囲(一般的には全域)をスキャンして、無線信号の強度をスペクトラムスコープ表示する。また、メインバンドでの運用周波数を中心とした第1周波数範囲の無線信号の強度もスペクトラムスコープ表示されるが、こちらは、メインバンドの運用周波数が変更されない限り、一定間隔で第1周波数範囲がスキャンされ、スペクトラムスコープ表示が更新される。
【0021】
2波同時受信モードでは、サブバンドでのスキャン周波数帯として複数の周波数帯が選択又は設定可能であり、アマチュア無線用に割り当てられた周波数帯のいずれでも選択可能である。複数のスキャン周波数帯は、無線通信装置1の出荷時に記憶部4に初期設定されており、その後、ユーザーが操作部5を操作して任意の周波数帯に変更することができる。また、サブバンドでのスキャン周波数帯を変更する時間の間隔も無線通信装置1の出荷時に記憶部4に初期設定されており、その後、ユーザーが操作部5を操作して任意の時間の間隔に変更することができる。また、スキャン周波数帯を変更する時間の間隔は、スキャン周波数帯の広狭にかかわらず一定の間隔であってもよいし、スキャン周波数帯の広狭に応じて任意の間隔としてもよい。
【0022】
次に、2波同時受信モードにおける各部の動作について、
図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。メインバンドでの運用周波数帯として、例えば、14MHz帯が選択され、14.1MHzの周波数で他局と交信を行っているものとする。また、サブバンドでの受信周波数帯として、例えば1.9MHz帯、3.5MHz帯、・・・50MHz帯が選択されているものとする。
【0023】
2波同時受信モード中に、ユーザーが操作部5の操作ボタン28を操作して、表示画面の自動切り替えの動作を指示すると、制御部3は、記憶部4に記憶されているサブバンドでの複数のスキャン周波数帯の値、例えば1.9MHz帯、3.5MHz帯、50MHz帯及びそれらの帯域の上限値と下限値、上記一定の又は任意の時間などを読み出す(#1)。そして、制御部3は、サブバンドとして使用される受信部11Bに接続されている受信周波数変更部6Bに対して、例えばスキャン周波数帯を1.9MHzに設定し(#2)、計時部9に対して、一定の又は任意の時間(経過時間)のカウントの開始を指示する(#3)。次に、制御部3は、受信周波数変更部6Cに対して、スキャン用受信部11でスキャンする無線信号の周波数(以下、「スキャン周波数」とする)の初期値を1.9MHz帯の下限値(例えば1907.5kHz)又は上限値(例えば1912.5kHz)に設定するように指示する(#4)。受信部11Bのスキャン周波数帯が設定され、所定時間が経過すると、制御部3は、スキャン用受信部11及び信号強度測定部7を介して、受信部11Bで受信している無線信号の強度を測定する(#5)。また、制御部3は、表示画像作成部8に対して、測定した無線信号の強度の値を用いて、二次元表示装置2の表示画面に表示されるスペクトラムスコープ画像データを作成させ、さらに、二次元表示装置2に対してそのスペクトラムスコープ画像データを出力させる(#6)。それによって、二次元表示装置2の表示画面の下部22にスペクトラムスコープ画像24を表示させる(#7)。そして、制御部3は、受信周波数変更部6Cに対して、スキャン用受信部11のスキャン周波数を現在の周波数から所定の周波数ピッチだけ増加又は減少させるように、スキャン周波数の変更を指示する(#8)。さらに、制御部3は、ユーザーによって操作部5の所定の操作ボタン28が操作されたか否か、すなわち、終了割り込みがあったか否かを判断する(#9)。例えば、二次元表示装置2のスペクトラムスコープ表示をモニタして、サブバンドでの受信周波数帯に、ノイズではない高い強度の無線信号が見つかったとして、ユーザーがサブバンドの受信周波数をその無線信号の周波数に合わせようとした場合などに(ステップ#9でYES)、このフローを終了して、サブバンドのスキャン周波数帯の変更を停止し、スキャン周波数帯を固定する。
【0024】
一方、ステップ#9で終了割り込みがない場合、制御部3は、計時部9が上記一定の又は任意の時間をカウントし終わったか否かを判断し(#10)、カウントが終了していないときは(#10でNO)、さらに、ステップ#8で指示したスキャン周波数がスキャン周波数帯の上限値以上又は下限値以下になったか否かを判断する(#12)。スキャン周波数がスキャン周波数帯の上限値以上又は下限値以下になっていないときは、ステップ#5に戻って、ステップ#8で変更した新たなスキャン周波数の無線信号の強度測定などを実行する(#5〜#8)。スキャン周波数がスキャン周波数帯の上限値以上又は下限値以下になると(#12でYES)、サブバンドでのスキャン周波数帯の1回のスキャンが完了したので、制御部3は、再度、受信周波数変更部6Cに対して、スキャン用受信部11でスキャンするスキャン周波数を1.9MHz帯の下限値(例えば1907.5kHz)又は上限値(例えば1912.5kHz)に設定するように指示し(#4)、計時部9が上記一定の又は任意の時間をカウントし終わるまで、上記ステップ(#4〜#12)を繰り返し実行してスペクトラムスコープ画像を更新しつつ、終了割り込みがなされるのを待つ(#10)。また、上記一定の又は任意の時間をカウントし終わるまでの間に終了割り込みがなかった場合、すなわち、ステップ#10でカウントが終了した場合(#10でYES)、制御部3は、サブバンドでのスキャン周波数帯を他の周波数帯、例えば3.5MHz帯に変更して(#11)、計時部9のカウントをリセットしてから一定の又は任意の時間のカウントを開始し(#3)、ステップ#10のカウントが終了するまで、新たなスキャン周波数帯(3.5MHz帯)のスペクトラムスコープ表示を行う。
【0025】
次に、2波同時受信モードにおける各部の動作の変形例について、
図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
図4に示すフローとの違いは、ステップ#9のユーザーによる終了割り込みがあったか否かを判断する代わりに、無線信号の強度値と所定の閾値とを比較し、無線信号の強度が所定の閾値を超えているか否かを判断している(#15)。上記のように、サブバンドでのスキャン周波数帯に、ノイズではない高い強度を示す無線信号が存在する場合に、無線通信装置1側で自動的にサブバンドでのスキャン周波数帯の変更を停止することによって、ユーザーに対して、その周波数帯に交信をしている又は交信を求めている局が存在することを知らせることができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る無線通信装置1によれば、メインバンドで他局と受信を行い、サブバンドで交信相手を探索する2波同時受信モードが選択された場合に、一定の又は任意の時間の間隔で、サブバンドとして使用される受信部でのスキャン周波数帯が自動的に変更され、さらに、二次元表示装置2の表示画面上の下部22の一部にメインバンドでの運用周波数を中心とした第1周波数範囲の無線信号の強度がスペクトラムスコープ表示され、表示画面上の他の部分にサブバンドでのスキャン周波数帯における第2周波数範囲の無線信号の強度がスペクトラムスコープ表示されるので、ユーザーは、メインバンドで他局との交信を行いつつ、特別な操作を行うことなく、サブバンドでメインバンドの運用周波数帯とは異なる複数のスキャン周波数帯での運用状況を把握することができ、サブバンドでの交信相手の探索を容易に行うことができる。
【0027】
なお、この無線通信装置1の2波同時受信モードにおいて、サブバンドにおいて選択できるスキャン周波数帯の数、スキャン周波数帯の値、スキャン周波数帯を変更する一定の又は任意の時間の間隔などは、ユーザーが任意に設定することができることはいうまでもない。また、スキャン周波数帯を変更する一定の又は任意の時間の間隔は、選択されたスキャン周波数帯をスキャンして、その周波数帯の各周波数における無線信号の強度を測定するために要する時間よりも長いことはいうまでもない。さらに、サブバンドでのスキャン周波数帯として、あらかじめ設定されている又はユーザーによって任意に設定された複数の周波数帯をサイクリックに又はランダムに選択するように構成してもよい。さらに、スキャン周波数帯をスキャンする速度も、スキャン周波数帯を変更する一定の又は任意の時間の間隔に応じて、又は任意に変更できるように構成してもよい。さらに、メインバンドの運用周波数帯を中心としてスペクトラムスコープ表示される第1周波数範囲は、ユーザーが任意に設定することも可能であり、同様に、サブバンドのスキャン周波数帯がスペクトラムスコープ表示される第2周波数範囲も、ユーザーが任意に設定できるように構成してもよい。
【0028】
また、本実施形態のように、2つの受信部11A及び11Bを備え、それら2つの一方(例えば、受信部11A)をメインバンドとして使用し、他方(例えば、受信部11B)をサブバンドとして使用している状態において、ユーザーがサブバンド側の受信部11Bの受信周波数を調整したときに、自動的にメインバンドとサブバンドを入れ替え、それまでサブバンドとして使用されていた受信部11Bを新たなメインバンドとして使用し、メインバンドとして使用されていた受信部11Aを新たなサブバンドとして使用するように構成してもよい。また、例えばサブバンドとして使用されている受信部(例えば、受信部11B)に関する所定の操作ボタンを一定時間押し続けるなどの操作を行うことにより、送信部10の送信周波数をサブバンドでの受信周波数と同じ周波数に変更するように構成してもよい。さらに、操作部5としては、無線通信装置1の操作パネル上に配置された物理的な操作ボタン28に限定されず、二次元表示装置2及び操作部5を兼ねたタッチパネル液晶表示装置を用いてもよい。その場合、例えば
図2に示す二次元表示装置2の画面上で、サブバンドのスキャン周波数帯のスペクトラムスコープ画像24を指で一定時間以上押し続けるように構成してもよい。あるいは、操作部5として、USBコネクタなどを介して接続されたマウスなどを用い、二次元表示装置2の表示画面上でカーソルを移動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 無線通信装置
2 二次元表示装置
3 制御部
4 記憶部
5 操作部
6A,6B,6C 受信周波数変更部
7 信号強度測定部
8 表示画像作成部
9 計時部
10 送信部
11 スコープ用受信部
11A,11B 受信部
12A,12B,12C VFO
23 メインバンドの運用周波数を中心としたスペクトラムスコープ画像
24 サブバンドのスキャン周波数帯のスペクトラムスコープ画像