特許第6493798号(P6493798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6493798-気密パッケージの製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493798
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】気密パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20190325BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01L23/02 Z
   H01L23/02 D
   H01L23/08 B
   H01L23/08 C
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-108176(P2015-108176)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-225383(P2016-225383A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白神 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 浩士
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−145849(JP,A)
【文献】 特開2015−023263(JP,A)
【文献】 特開2011−182155(JP,A)
【文献】 特開2010−012595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第一のガラス基板を用意すると共に、第一のガラス基板上に第一の封着材料層を焼成により形成する工程と、(2)上部に開口部を有するセラミック枠体を用意すると共に、セラミック枠体の底部と第一の封着材料層が接触するように、セラミック枠体と第一のガラス基板を配置した後、第一の封着材料層を介してセラミック枠体と第一のガラス基板を焼成により封着する工程と、(3)セラミック枠体の上縁部に第二の封着材料層を焼成により形成する工程と、(4)セラミック枠体内に収容部材を収容する工程と、(5)第二のガラス基板を用意すると共に、第二のガラス基板と第二の封着材料層が接触するように、第二のガラス基板を配置した後、レーザー光を第二のガラス基板側から第二の封着材料層に向けて照射し、第二の封着材料層を介して第二のガラス基板とセラミック枠体を封着して、気密パッケージを得る工程と、を備えることを特徴とする気密パッケージの製造方法。
【請求項2】
第一の封着材料を含むペーストを第一のガラス基板上に塗布、焼成して、第一の封着材料の焼結体からなる第一の封着材料層を形成することを特徴とする請求項1に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項3】
第一の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95体積%、耐火性フィラー粉末 5〜45体積%を含有する封着材料を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項4】
セラミック枠体として、グリーンシートの焼結体を用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項5】
第一の封着材料層を焼成して、セラミック枠体と第一のガラス基板を封着することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項6】
第二の封着材料を含むペーストをセラミック枠体の上縁部に塗布、焼成して、第二の封着材料の焼結体からなる第二の封着材料層を形成することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項7】
第二の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95体積%、耐火性フィラー粉末 5〜45体積%、耐熱顔料 1〜15体積%を含有する封着材料を用いることを特徴とする請求項6に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項8】
第二の封着材料層の平均厚みを10μm未満とすることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項9】
収容部材として、圧電振動子素子又は蛍光体粒子を分散させた樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項10】
セラミック枠体が、アルミナ、ジルコニア、ムライト、グリーンシートの焼結体の何れかであることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項11】
セラミック枠体が、結晶性ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末のグリーンシート積層体の焼結体であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いた封着処理(以下、レーザー封着)により、気密パッケージを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気密パッケージの特性維持及び長寿命化を図ることが鋭意検討されている。例えば、圧電振動子素子は、周囲環境の酸素や水分に暴露されることで、容易に劣化する敏感な素子である。そこで、圧電振動子パッケージ内に圧電振動子素子を気密状態で組み込み、圧電振動子パッケージの特性維持及び長寿命化を図ることが検討されている。
【0003】
圧電振動子パッケージの気密構造として、圧電振動子素子が配置された素子基体の上に、間隔を置いてガラス基板を対向配置させた状態で、圧電振動子素子の周囲を囲むようにガラス基板と素子基体との間の隙間を封着材料層で封着する気密構造が検討されている。なお、素子基体として、セラミック、例えばアルミナが一般的に使用される。
【0004】
しかし、圧電振動子素子は、耐熱性が低いことが知られている。よって、封着材料層の軟化流動温度域で焼成して、素子基体とガラス基板を封着すると、圧電振動子素子の特性が熱劣化する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−186697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、気密パッケージの封着方法として、レーザー封着が検討されている。レーザー封着では、封着すべき部分のみを局所加熱し得るため、耐熱性が低い素子等の熱劣化を防止した上で、素子基体とガラス基板を封着することができる。
【0007】
その一方で、レーザー封着では、素子基体とガラス基板の封着強度を高めることが困難である。そして、素子基体がセラミックの場合、素子基体とガラス基板の封着強度を高めることが更に困難である。
【0008】
詳述すると、レーザー封着は、封着材料層を局所加熱して封着材料層を軟化流動させる方法であるため、封着に要する時間が短く、それに付随して、封着材料層が反応する時間も短くなる。結果として、封着材料層の界面で、反応層が十分に生成せず、素子基体とガラス基板の封着強度が低下してしまう。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、収容部材の熱劣化を防止しつつ、気密パッケージ全体の封着強度を高め得る方法を創案することにより、気密パッケージの長期信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、一対のガラス基板を用意し、一方のガラス基板と枠体を封着し、更に枠体の上縁部に予め封着材料層を形成した後に、枠体内に収容部材を収容し、更に他方のガラス基板と枠体をレーザー封着することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の気密パッケージの製造方法は、(1)第一のガラス基板を用意すると共に、第一のガラス基板上に第一の封着材料層を形成する工程と、(2)上部に開口部を有する枠体を用意すると共に、枠体の底部と第一の封着材料層が接触するように、枠体と第一のガラス基板を配置した後、第一の封着材料層を介して枠体と第一のガラス基板を封着する工程と、(3)枠体の上縁部に第二の封着材料層を形成する工程と、(4)枠体内に収容部材を収容する工程と、(5)第二のガラス基板を用意すると共に、第二のガラス基板と第二の封着材料層が接触するように、第二のガラス基板を配置した後、レーザー光を第二のガラス基板側から第二の封着材料層に向けて照射し、第二の封着材料層を介して第二のガラス基板と枠体を封着して、気密パッケージを得る工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
封着材料は、通常、低融点ガラスを含む。この低融点ガラスが、レーザー封着時に被封着物の表層を侵食して、反応層が生成することになる。被封着物がガラスである場合は、レーザー封着により反応層がある程度生成して、固着強度を確保することができる。しかし、被封着物がセラミックである場合、低融点ガラスが、レーザー封着時にセラミックの表層を侵食し難く、反応層が十分に生成しない。つまり被封着物がガラスの場合は、レーザー封着により反応層を生成し得るが、セラミックの場合は、レーザー封着により反応層を生成させることが困難である。そこで、本発明の気密パッケージの製造方法は、まず焼成等によって枠体上に第二の封着材料層を形成した後に、第二の封着材料層と第二のガラス基板をレーザー封着する。これにより、枠体と第二の封着材料層との間で反応層が十分に生成して、第二の封着材料層が枠体上に強固に固着する。またレーザー封着を行う場合に、被封着物がガラスになるため、第二のガラス基板と第二の封着材料層との間で反応層が生成して、第二の封着材料層がガラス基板にも強固に固着する。
【0012】
第二に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第一の封着材料を含むペーストを第一のガラス基板上に塗布、焼成して、第一の封着材料の焼結体からなる第一の封着材料層を形成することが好ましい。このようにすれば、第一のガラス基板と第一の封着材料層の固着強度を高めることができ、また第一の封着材料層の厚みを低減することができる。
【0013】
第三に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第一の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95質量%、耐火性フィラー粉末 5〜45質量%を含有する封着材料を用いることが好ましい。ビスマス系ガラスは、他の系のガラスと比較して、被封着物、特にセラミックとの反応性が良好である。これにより、第一のガラス基板と第一の封着材料層の固着強度を高めることができる。更に、耐火性フィラー粉末を導入すると、第一のガラス基板と第一の封着材料層の熱膨張係数を整合させることができる。なお、「ビスマス系ガラス」とは、Biを主成分とするガラスを指し、具体的にはガラス組成中にBiを40質量%以上含むガラスを指す。
【0014】
第四に、本発明の気密パッケージの製造方法は、枠体として、グリーンシートの焼結体を用いることが好ましい。このようにすれば、枠体の寸法精度と耐熱性を高めることができる。
【0015】
第五に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第一の封着材料層を焼成して、枠体と第一のガラス基板を封着することが好ましい。このようにすれば、枠体と第一のガラス基板の封着強度を高めることができる。
【0016】
第六に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第二の封着材料を含むペーストを枠体の上縁部に塗布、焼成して、第二の封着材料の焼結体からなる第二の封着材料層を形成することが好ましい。このようにすれば、第二の封着材料層と枠体の固着強度を高めることができ、また第二の封着材料層の厚みを低減することができる。
【0017】
第七に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第二の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95質量%、耐火性フィラー粉末 5〜45質量%、耐熱顔料 1〜15質量%を含有する封着材料を用いることが好ましい。ビスマス系ガラスは、低融点であるが、熱的安定性(耐失透性)が高い。これにより、レーザー封着時に良好に軟化流動し、レーザー封着の精度を高めることができる。また、耐火性フィラー粉末を導入すると、第二の封着材料層と枠体の熱膨張係数を整合させることができる。更に、耐熱顔料を導入すると、レーザー光の光吸収特性を高めることができる。
【0018】
第八に、本発明の気密パッケージの製造方法は、第二の封着材料層の平均厚みを10μm未満とすることが好ましい。このようにすれば、レーザー封着により第二の封着材料層全体を局所加熱し易くなるため、枠体と第二の封着材料層の固着強度を高めることができる。
【0019】
第九に、本発明の気密パッケージの製造方法は、収容部材として、圧電振動子素子又は蛍光体粒子(好ましくは量子ドット)を分散させた樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
第十に、本発明の気密パッケージは、上記の気密パッケージの製造方法により作製されてなることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の気密パッケージの製造方法の一実施形態を説明するための概念斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の気密パッケージの製造方法は、第一のガラス基板を用意すると共に、第一のガラス基板上に第一の封着材料層を形成する工程を有する。第一のガラス基板として、種々のガラス基板が使用可能であり、例えば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が使用可能である。第一のガラス基板の板厚は0.01〜0.7mm、特に0.05〜0.5mmが好ましい。これにより、気密パッケージの薄型化を図ることができる。なお、ガラス基板は、肉厚を低減し易く、光透過性を有し、表面平滑性が高いという特徴を有する。
【0023】
第一の封着材料層を形成する方法として、第一の封着材料を含むペーストを第一のガラス基板上に塗布、焼成する方法が好ましい。このようにすれば、第一のガラス基板と第一の封着材料層の固着強度を高めることができ、また第一の封着材料層の厚みを低減することができる。ここで、生産性の観点から、ペーストの塗布はスクリーン印刷を行うことが好ましく、焼成は電気炉で行うことが好ましい。焼成温度は、第一のガラス基板の耐熱温度以下、例えば650℃以下が好ましく、第一の封着材料層の反応深さを大きくする観点から、例えば480℃以上が好ましい。
【0024】
第一の封着材料を含むペーストは、第一のガラス基板の外周縁に沿って塗布することが好ましい。このようにすれば、枠体内に収容し得る収容体積を大きくすることができる。
【0025】
第一の封着材料として、種々の材料が使用可能であり、例えば、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末の複合粉末が使用可能である。ガラス粉末として、種々の材料が使用可能であり、例えば、ビスマス系ガラス、リン酸錫系ガラス、バナジウム系ガラス等が使用可能であり、熱的安定性と反応層の深さの観点から、ビスマス系ガラスが好適である。なお、「リン酸錫系ガラス」とは、SnOとPを主成分とするガラスを指し、具体的にはガラス組成中にSnOとPを合量で40質量%以上含むガラスを指す。「バナジウム系ガラス」とは、Vを主成分とするガラスを指し、具体的にはガラス組成中にVを合量で25質量%以上含むガラスを指す。
【0026】
特に、第一の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95体積%、耐火性フィラー粉末 5〜45体積%を含有する封着材料を用いることが好ましく、ビスマス系ガラス粉末 70〜90体積%、耐火性フィラー粉末 10〜30体積%を含有する封着材料を用いることが更に好ましい。耐火性フィラー粉末を導入すると、第一の封着材料の熱膨張係数が低下するため、第一の封着材料層、枠体及び第一のガラス基板の熱膨張係数が整合し易くなる。
【0027】
第一の封着材料に含まれるビスマス系ガラス粉末は、ガラス組成として、質量%表示で、Bi 55〜74%、B 5〜25%、ZnO 5〜20%、SiO 0〜10%、Al 0〜5%を含有することが好ましく、Bi 55〜69%、B 10〜22%、ZnO 5〜20%、SiO 1超〜10%、Al 1〜3.7%、CuO 0〜5%を含有することが特に好ましい。このようにすれば、ビスマス系ガラスの熱的安定性が向上し、更にビスマス系ガラスの熱膨張係数が低下するため、第一の封着材料層、枠体及び第一のガラス基板の熱膨張係数が整合し易くなる。
【0028】
耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム系セラミック、ウイレマイトから選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましい。これらの耐火性フィラー粉末は、熱膨張係数が低いことに加えて、機械的強度が高く、しかもビスマス系ガラスとの適合性が良好である。上記の耐火性フィラー粉末の内、コーディエライトが最も好ましい。コーディエライトは、粒径が小さくても、レーザー封着時にビスマス系ガラスを失透させ難い性質を有している。なお、上記の耐火性フィラー粉末以外にも、β−ユークリプタイト、石英ガラス等を添加してもよい。
【0029】
耐火性フィラー粉末の平均粒径D50は、好ましくは2μm未満、特に1.5μm未満である。耐火性フィラー粉末の平均粒径D50が2μm未満であると、封着材料層の表面平滑性が向上すると共に、封着材料層の平均厚みを10μm未満に規制し易くなる。
【0030】
耐火性フィラー粉末の最大粒径D99は、好ましくは5μm未満、4μm以下、特に3μm以下である。耐火性フィラー粉末の最大粒径D99を5μm未満であると、封着材料層の表面平滑性が向上すると共に、封着材料層の平均厚みを10μm未満に規制し易くなる。ここで、「平均粒径D50」と「最大粒径D99」は、レーザー回折法により体積基準で測定した値を指す。
【0031】
ペーストは、通常、三本ローラー等により、封着材料とビークルを混練することにより作製される。ビークルは、通常、樹脂と溶剤を含む。ビークルに用いる樹脂として、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。ビークルに用いる溶剤として、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。
【0032】
本発明の気密パッケージの製造方法は、上部に開口部を有する枠体を用意すると共に、枠体の底部と第一の封着材料層が接触するように、枠体と第一のガラス基板を配置した後、第一の封着材料層を介して枠体と第一のガラス基板を封着する工程を有する。
【0033】
枠体の材質は、特に限定されないが、材料コストと焼結強度の観点から、アルミナ、ジルコニア、ムライト等が好ましく、またグリーンシートの焼結体も好ましく、特に結晶性ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末のグリーンシート積層体の焼結体が好ましい。グリーンシートの焼結体を用いると、寸法精度が高い枠体を作製し易いという利点を有する。
【0034】
枠体と第一のガラス基板の封着は、電気炉等の焼成で行うことが好ましい。これにより、枠体と第一のガラス基板の封着強度を高めることができる。焼成温度は、枠体と第一のガラス基板の耐熱温度以下、例えば650℃以下が好ましく、第一の封着材料層の反応深さを大きくする観点から、例えば480℃以上が好ましい。
【0035】
本発明の気密パッケージの製造方法は、枠体の上縁部に第二の封着材料層を形成する工程を有する。この場合、枠部の上縁部を研磨処理することが好ましく、枠体の上縁部の表面粗さRaは、好ましくは0.5μm未満、0.2μm以下、特に0.01〜0.15μmであり、枠体の上縁部の表面粗さRMSは、好ましくは1.0μm未満、0.5μm以下、特に0.05〜0.3μmである。このようにすれば、第二の封着材料層の表面平滑性が向上して、レーザー封着の精度を高めることができる。結果として、気密パッケージ全体の封着強度を高めることが可能になる。なお、「表面粗さRa」及び「表面粗さRMS」は、例えば、触針式又は非接触式のレーザー膜厚計や表面粗さ計により測定することができる。
【0036】
第二の封着材料層を形成する方法として、第二の封着材料を含むペーストを枠体上に塗布、焼成する方法が好ましい。このようにすれば、枠体と第二の封着材料層の固着強度を高めることができ、また第二の封着材料層の厚みを低減することができる。ここで、生産性の観点から、ペーストの塗布はスクリーン印刷を行うことが好ましく、焼成は電気炉で行うことが好ましい。焼成温度は、第二のガラス基板の耐熱温度以下、例えば550℃以下が好ましく、第二の封着材料層の反応深さを大きくする観点から、例えば460℃以上が好ましい。
【0037】
第二の封着材料として、種々の材料が使用可能であり、例えば、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含み、更に耐熱顔料を含む複合粉末が使用可能である。ガラス粉末として、種々の材料が使用可能であり、例えば、ビスマス系ガラス、リン酸錫系ガラス、バナジウム系ガラス等が使用可能であり、熱的安定性と反応層の深さの観点から、ビスマス系ガラスが好適である。
【0038】
特に、第二の封着材料として、ビスマス系ガラス粉末 55〜95体積%、耐火性フィラー粉末 5〜45体積%、耐熱顔料 1〜15質量%を含有する封着材料を用いることが好ましく、ビスマス系ガラス粉末 65〜80体積%、耐火性フィラー粉末 20〜35体積%、耐熱顔料 3〜10質量%を含有する封着材料を用いることが更に好ましい。耐火性フィラー粉末を導入すると、第一の封着材料の熱膨張係数が低下するため、第一の封着材料層、枠体及び第一のガラス基板の熱膨張係数が整合し易くなる。更に、耐熱顔料を導入すると、レーザー光の光吸収特性を高めることができる。
【0039】
第二の封着材料に含まれるビスマス系ガラス粉末は、ガラス組成として、質量%表示で、Bi 70〜85%、B 5〜15%、ZnO 0〜15%、BaO 0〜10%、Al 0〜3%、CuO 3〜15%、Fe 0〜5%を含有することが好ましく、Bi 74〜85%、B 5〜15%、ZnO 0〜10%、BaO 1〜10%、Al 0〜3%、CuO 5〜15%、Fe 0.1〜5%を含有することが特に好ましい。このようにすれば、ビスマス系ガラスの熱的安定性が向上し、更にレーザー光の光吸収特性が向上する。
【0040】
耐火性フィラー粉末として、上記の耐火性フィラー粉末が好適である。
【0041】
耐熱顔料として、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらのスピネル型複合酸化物等が好適であり、特に、ビスマス系ガラスとの適合性の観点から、Mn系酸化物が好ましい。
【0042】
枠体の上縁部上に形成された第二の封着材料層を形成した後の第二の封着材料層の表面粗さRaを0.5μm未満、0.2μm以下、特に0.01〜0.15μmに規制することが好ましく、表面粗さRMSを1.0μm未満、0.5μm以下、特に0.05〜0.3μmに規制することが好ましい。このようにすれば、第二のガラス基板と第二の封着材料層の密着性が向上し、レーザー封着の精度が向上する。なお、第二の封着材料層の表面粗さRaは、枠体の上縁部や第二の封着材料層の表面を研磨することにより低減可能である。
【0043】
第二の封着材料層の平均厚みは、10μm未満、7μm未満、特に6μm未満に規制することが好ましい。第二の封着材料層の平均厚みが小さい程、第二の封着材料層、枠体及び第二のガラス基板の熱膨張係数が十分に整合していなくても、レーザー封着後に封着部分に残留する応力が低減される。またレーザー封着の精度を高めることもできる。
【0044】
第二の封着材料層の幅は、0.05〜1mm、特に0.1〜0.5mmに規制することが好ましい。第二の封着材料層の幅が小さ過ぎると、レーザー封着の精度が低下し易くなる。一方、第二の封着材料層の幅が大き過ぎると、枠体内に収容し得る収容部材の寸法が小さくなり、結果として気密パッケージの性能が低下し易くなる。
【0045】
第一の封着材料(第一の封着材料層)と第二の封着材料(第二の封着材料層)は、同種の材料を用いてもよいが、異種の材料を用いることが好ましい。特に、第一の封着材料の熱膨張係数は、第二の封着材料の熱膨張係数よりも低いことが好ましく、5×10−7/℃以上低いことがより好ましく、10×10−7/℃以上低いことが更に好ましく、15×10−7/℃以上低いことが特に好ましい。第一の封着材料の熱膨張係数が第二の封着材料の熱膨張係数よりも高いと、気密パッケージ全体に不当な応力が残留し易くなる。
【0046】
第二の封着材料の軟化点は、第一の封着材料の軟化点よりも低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことが更に好ましく、80℃以上低いことが特に好ましい。第二の封着材料の軟化点が第一の封着材料の軟化点よりも高いと、レーザー封着の際に反応層が生成し難くなる。
【0047】
第二の封着材料層の平均厚みは、第一の封着材料層の平均厚みよりも小さいことが好ましく、1μm以上小さいことがより好ましく、2μm以上小さいことが更に好ましく、3μm以上小さいことが特に好ましい。第二の封着材料層の平均厚みが第一の封着材料層の平均厚みよりも大きいと、焼成等により第一の封着材料層を形成し難くなると共に、レーザー封着の精度を高め難くなる。
【0048】
本発明の気密パッケージの製造方法は、枠体内に収容部材を収容する工程を有する。収容部材として、耐熱性が低い部材が好ましく、特に圧電振動子素子又は量子ドット等の蛍光体粒子を分散させた樹脂が好ましい。量子ドットを分散させた樹脂を用いる場合、樹脂は、枠体内に収容した後に硬化させてもよいし、既に硬化させたものを収容してもよい。
【0049】
本発明の気密パッケージの製造方法は、第二のガラス基板を用意すると共に、第二のガラス基板と第二の封着材料層が接触するように、第二のガラス基板を配置した後、レーザー光を第二のガラス基板側から第二の封着材料層に向けて照射し、第二の封着材料層を介して第二のガラス基板と枠体を封着して、気密パッケージを得る工程を有する。
【0050】
第二のガラス基板として、種々のガラス基板が使用可能であり、例えば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が使用可能である。第二のガラス基板の板厚は0.01〜0.7mm、特に0.05〜0.5mmが好ましい。これにより、気密パッケージの薄型化を図ることができる。
【0051】
レーザーとして、種々のレーザーを使用することができる。特に、半導体レーザー、YAGレーザー、COレーザー、エキシマレーザー、赤外レーザー等は、取扱いが容易な点で好ましい。
【0052】
レーザー光の出力は、好ましくは5〜20W、特に8〜15Wである。レーザー光の出力が低過ぎると、枠体と第二のガラス基板の封着強度が低下し易くなる。一方、レーザー光の出力が高過ぎると、レーザー封着後に第二のガラス基板が割れ易くなる。
【0053】
レーザー光の走査速度は、好ましくは5〜20mm/s、特に8〜15mm/sである。レーザー光の走査速度が遅過ぎると、気密パッケージの生産性が低下し易くなる。一方、レーザー光の走査速度が速過ぎると、枠体と第二のガラス基板の封着強度が低下し易くなる。
【0054】
レーザー封着を行う雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気でもよく、窒素雰囲気等の不活性雰囲気でもよい。
【0055】
以下、図面を参照しながら、本発明の気密パッケージの一実施形態を説明する。
【0056】
図1は、本発明の気密パッケージ1の製造方法の一実施形態を説明するための概念斜視図である。最初に、図1(a)に示すように、第一のガラス基板10を用意した後、第一のガラス基板10の外周縁に沿って額縁状に第一の封着材料層11を形成する。ここで、第一の封着材料層11の形成は、電気炉等の焼成で行うことが好ましい。次に、図1(b)に示すように、上部に開口部を有する枠体12を用意し、この枠体12の底部12aと第一の封着材料層11が接触するように、枠体12と第一のガラス基板10を配置した後、第一の封着材料層11を介して枠体12と第一のガラス基板10を封着する。ここで、枠体12は、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末のグリーンシート積層体の焼結体であることが好ましい。また、枠体12と第一のガラス基板10の封着は、電気炉等の焼成で行うことが好ましい。更に、図1(c)に示すように、枠体12の上縁部12bに第二の封着材料層13を形成する。ここで、枠体12の上縁部12bの表面粗さRaを研磨処理等により0.15μm以下まで平滑化することが好ましい。また、第二の封着材料層13の形成は、電気炉等の焼成で行うことが好ましく、また第二の封着材料層13の表面粗さRaを0.15μm以下に規制することが好ましい。そして、図1(d)に示すように、枠体12内に収容部材14を収容する。ここで、収容部材14は、耐熱性が低い部材が好ましく、特に圧電振動子素子又は量子ドットを分散させた樹脂が好ましい。最後に、図1(e)に示すように、第二のガラス基板15を用意し、第二のガラス基板15と第二の封着材料層13が接触するように、第二のガラス基板15を配置した後、レーザー光16を第二のガラス基板15側から第二の封着材料層13に向けて照射し、第二の封着材料層13を介して第二のガラス基板15と枠体12を封着する。このようにして、気密パッケージ1を得ることができる。
【実施例1】
【0057】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0058】
最初に、第一の封着材料を作製した。表1は、第一の封着材料の材料構成を示している。ビスマス系ガラスは、ガラス組成として、質量%で、Bi 56.4%、B 17.9%、ZnO 15.7%、SiO 6.4%、Al 6.4%を含有し、且つ表1に記載の粒度を有している。耐火性フィラー粉末は、コーディエライト粉末であり、且つ表1に記載の粒度を有している。
【0059】
【表1】
【0060】
上記のビスマス系ガラスと耐火性フィラー粉末とを表1に示す割合で混合して、第一の封着材料を作製した。第一の封着材料につき、ガラス転移点、軟化点、熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
ガラス転移点は、押棒式TMA装置で測定した値である。
【0062】
軟化点は、マクロ型DTA装置で測定した第四変曲点の温度である。測定は、大気雰囲気下において、昇温速度10℃/分で行い、室温から600℃まで測定を行った。
【0063】
熱膨張係数は、押棒式TMA装置で測定した値である。測定温度範囲は30〜300℃である。
【0064】
次に、第二の封着材料を作製した。表2は、第二の封着材料の材料構成を示している。ビスマス系ガラスは、ガラス組成として、質量%で、Bi 77.7%、B 8.3%、ZnO 1.8%、BaO 2.7%、CuO 8.5%、Fe2O3 0.5%、Al 0.5%を含有し、且つ表2に記載の粒度を有している。耐火性フィラー粉末は、コーディエライト粉末であり、且つ表2に記載の粒度を有している。耐熱顔料は、MnO 54質量、Fe 44質量%、Al 2質量%の割合で含む複合酸化物であり、且つ表2に記載の粒度を有している。
【0065】
【表2】
【0066】
上記のビスマス系ガラス、耐火性フィラー粉末及び耐熱顔料を表2に示す割合で混合して、第二の封着材料を作製した。第二の封着材料につき、上記の方法により、ガラス転移点、軟化点、熱膨張係数を測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
次に、第一のガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10G)を用意した。第一のガラス基板の寸法は、6.0mm×1.7mm×0.1mm厚である。更に、表1に記載の第一の封着材料とビークルを約100Pa・s(25℃、Shear rate:4)の粘度になるように混練した後、更に三本ロールミルで粉末が均一に分散するまで混錬し、ペースト化した。ビークルにはグリコールエーテル系溶剤にエチルセルロース樹脂を溶解させたものを使用した。得られた第一の封着材料を含むペーストを第一のガラス基板の外周縁に沿って、約0.2mm幅になるように、スクリーン印刷機で額縁状に印刷した。そして、大気雰囲気下にて、120℃で10分間乾燥した後、大気雰囲気下にて、620℃で10分間焼成して、ペースト中の樹脂成分の焼却(脱バインダー処理)及び第一の封着材料の焼結を行い、第一のガラス基板上に第一の封着材料層を形成した。なお、第一の封着材料層の平均厚みを非接触式レーザー膜厚計で測定したところ、約10μmであった。
【0068】
続いて、グリーンシート積層体の焼結体からなる上部に開口部を有する枠体(材質:日本電気硝子株式会社製MLS−26A)を用意した。枠体の寸法は、外寸法6.0mm×1.7mm、内寸法5.4mm×1.1mm、厚み0.6mmである。そして、枠体の底部と第一の封着材料層が接触するように、枠体と第一のガラス基板を配置した後、620℃で10分間焼成して、枠体と第一のガラス基板を封着した。更に、表2に記載の第二の封着材料とビークルを約100Pa・s(25℃、Shear rate:4)の粘度になるように混練した後、更に三本ロールミルで粉末が均一に分散するまで混錬し、ペースト化した。ビークルにはグリコールエーテル系溶剤にエチルセルロース樹脂を溶解させたものを使用した。得られた第二の封着材料を含むペーストを、スクリーン印刷機で約0.2mm幅になるように枠体の上縁部に印刷した。そして、大気雰囲気下にて、120℃で10分間乾燥した後、大気雰囲気下にて、510℃で10分間焼成して、ペースト中の樹脂成分の焼却(脱バインダー処理)及び第二の封着材料の焼結を行い、枠体の上縁部に第二の封着材料層を形成した。なお、第二の封着材料層の平均厚みを非接触式レーザー膜厚計で測定したところ、約6μmであった。
【0069】
更に、枠体内に量子ドットを分散させた樹脂をポッティングし、硬化させた。
【0070】
また、第二のガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10G)を用意した。第二のガラス基板の寸法は、6.0mm×1.7mm×0.1mm厚である。
【0071】
その後、第二のガラス基板と第二の封着材料層が接触するように、第二のガラス基板を配置した後、波長808nmのレーザー光を第二のガラス基板側から第二の封着材料層に向けて照射することにより、第二の封着材料層を介して第二のガラス基板と枠体を封着し、気密パッケージを得た。なお、レーザー光の照射速度を10mm/s、出力を10Wとした。
【0072】
得られた気密パッケージに対して、第二の封着材料層の付近を顕微鏡で観察したところ、剥離や割れは認められなかった(接着性の評価)。更に、得られた気密パッケージに対して、高温高湿高圧試験:HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress test)を行った後、枠体と第二のガラス基板について観察したところ、剥離は認められなかった。この結果は、枠体と第二のガラス基板の封着強度が高いことを示している。なお、HASTの条件は、121℃、湿度100%、2atm、24時間である。
【実施例2】
【0073】
第二のガラス基板と枠体の材質、レーザー封着の条件以外の条件を[実施例1]と同様にして、表3に記載の気密パッケージを作製した(試料No.1〜6)。更に、試料No.1〜6について、上記の接着性とHASTの評価を行った。その結果、試料No.1〜6は、接着性とHASTの評価が良好であった。なお、表3中の無アルカリガラスは日本電気硝子株式会社製OA−10G、アルカリホウケイ酸ガラスは日本電気硝子株式会社製BLC、LTCCはグリーンシート積層体の焼結体(材質:日本電気硝子株式会社製MLS−26A)を指している。
【0074】
【表3】
【0075】
[比較例]
また、第二の封着材料層を枠体の上縁部ではなく、電気炉の焼成により第二のガラス基板上に形成したこと以外の条件を[実施例1]と同様にして、気密パッケージを作製した(試料No.7)。更に、試料No.7について、上記接着性の評価を行った。その結果、試料No.7は、接着性の評価で剥離が認められた。
【符号の説明】
【0076】
1 気密パッケージ
10 第一のガラス基板
11 第一の封着材料層
12 枠体
12a 枠体の底部
12b 枠体の上縁部
13 第二の封着材料層
14 収容部材
15 第二のガラス基板
16 レーザー光
図1