【文献】
勝呂 隆男,在庫適正化テクニック 3,工場管理 第51巻 第9号 FACTORY MANAGEMENT,日刊工業新聞社,2005年 7月 1日,第51巻,p.63-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0017】
[在庫管理装置のハードウェア構成]
図1は第1の実施形態における在庫管理装置100のハードウェア構成例を示す模式図である。在庫管理装置100は、例えば、在庫を管理するPC(Personal Computer)やサーバである。在庫管理装置100は、タブレット端末やスマートフォン等の携帯情報端末でもよい。在庫管理装置100は、物品の在庫を管理する。在庫管理の方式は、発注点方式でもよいし、定期発注方式でもよいし、その他の発注方式でもよい。
【0018】
在庫管理装置100は、プロセッサ110、メモリ120、通信デバイス130、入力デバイス140、出力デバイス150を備える。
【0019】
プロセッサ110は、メモリ120と協働して、各種処理や制御を行う。プロセッサ1110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はMPU(Micro Processing Unit)を含んでよい。プロセッサ110は、メモリ120に保持されたプログラムを実行することで、
図2に示す各部の機能を実現する。プログラムは、物品の在庫を管理するためのプログラムや、適正在庫(安全在庫)の数量を推定するためのプログラムを含む。
【0020】
メモリ120は、一次記憶装置を含む。メモリ120は、一次記憶装置とともに、二次記憶装置や三次記憶装置を含んでもよい。一時記憶装置は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を含む。二次記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disk Memory)、SSD(Solid State Drive)を含む。三次記憶装置は、例えば、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリ、DVD等の各種記録メディア、SDメモリーカードを含む。メモリ120は、プロセッサ110に内蔵されてもよい。
【0021】
メモリ120は、例えば、各種データ、情報、プログラムを記憶する。メモリ120には、ワークエリアや制御プログラムが格納されてよい。プログラムは、ERPパッケージ中に内在又は外部プログラムとしてアドオンされ、コンピュータにて読み取り可能な記憶媒体上に格納され、駆動装置を介してメモリ120に読み込まれ実行されてよい。プログラムは、ERPパッケージとは独立して使用することも可能である。
【0022】
メモリ120は、入庫実績DB121(DataBase)及び出庫実績DB122を格納してよい。
【0023】
入庫実績DB121は、物品の入庫に関する入庫実績情報(例えば、過去の入庫時刻、各入庫時刻における入庫量の情報)を保持してよい。入庫実績情報は、例えば、入力デバイス140を介してユーザにより入庫の度に入力されて蓄積されてよい。入庫実績情報は、在庫管理装置100が他システムと連動して、通信デバイス130を介して、公知の方法により他システムから取得されて蓄積されてよい。入庫実績情報は、トランザクションデータとして瞬間の時刻におけるデータで得られてもよいし、日単位、週単位、月単位で集計されて、入庫実績DB121に蓄積されてもよい。
【0024】
出庫実績DB122は、物品の出庫に関する出庫実績情報(例えば、過去の出庫時刻、各出庫時刻における出庫量の情報)を保持してよい。出庫実績情報は、例えば、入力デバイス140を介してユーザにより出庫の度に入力されて蓄積されてよい。出庫実績情報は、在庫管理装置100が他システムと連動して、通信デバイス130を介して、公知の方法により他システムから取得されて蓄積されてよい。出庫量は、トランザクションデータとして瞬間の時刻におけるデータで得られてもよいし、日単位、週単位、月単位で集計されて、出庫実績DB122に蓄積されてもよい。
【0025】
メモリ120は、未来の入庫に係る入庫時刻及びその入庫時刻での入庫量IVの情報を含む入庫計画情報を保持してよい。入庫計画情報は、入庫実績情報を基に生成されてもよいし、入庫実績情報とは関係なく生成されてもよい。入庫計画情報は、予めプロセッサ110により生成され、メモリ120に保持されてよい。入庫計画情報は、通信デバイス130を介して外部装置から受信され、メモリ120に保持されてよい。入庫計画情報は、入力デバイス140を介してユーザにより入力され、メモリ120に保持されてよい。
【0026】
メモリ120は、未来の出庫に係る出庫時刻及びその出庫時刻での出庫量OVの情報を含む出庫計画情報を保持してよい。出庫計画情報は、出庫実績情報を基に生成されてもよいし、出庫実績情報とは関係なく生成されてもよい。出庫計画情報は、予めプロセッサ110により生成され、メモリ120に保持されてよい。出庫計画情報は、通信デバイス130を介して外部装置から受信され、メモリ120に保持されてよい。出庫計画情報は、入力デバイス140を介してユーザにより入力され、メモリ120に保持されてよい。
【0027】
通信デバイス130は、有線又は無線を介して各種データを通信する。有線通信は、有線LAN(Local Area Network)、電力線通信、USB通信、同軸ケーブル、を含んでよい。無線通信は、例えば、携帯電話網を介した通信、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)、無線LAN、Bluetooth(登録商標)を含んでよい。
【0028】
入力デバイス140は、各種データを入力する。入力デバイス140は、例えば、各種キー、各種ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス、又はマイクロホンを含む。入力デバイス140は、例えば必要に応じてユーザからの入力を受け付ける。
【0029】
出力デバイス150は、各種データを出力する。出力デバイス150は、各種データを表示するディスプレイ、各種データを音声出力するスピーカ、又は各種データに基づいて振動するバイブレータ、を含んでよい。出力デバイス150は、各種データを印刷するプリンタを含んでよい。出力デバイス150は、物品の入庫に関する情報、物品の出庫に関する情報、物品の適正在庫に関する情報、等を出力(例えば表示)してよい。
【0030】
[在庫管理装置の機能構成]
図2はプロセッサ110が実施する機能構成例を示すブロック図である。プロセッサ110は、入庫情報取得部111、出庫情報取得部112、期間取得部113、及び適正在庫処理部114を備える。期間取得部113は、第1取得部の一例である。入庫情報取得部111は、第2取得部の一例である。出庫情報取得部112は、第3取得部の一例である。適正在庫処理部114は、第4取得部、第5取得部、及び推定部の一例である。
【0031】
入庫情報取得部111は、入庫情報を取得する。入庫情報は、入庫時刻を示す情報と、その入庫時刻における入庫量IV(入庫数量)を含んでよい。入庫情報取得部111は、入庫実績DB121を参照し、入庫実績情報を基に、入庫時刻と入庫量IVとを決定してよい。入庫情報取得部111は、メモリ120に保持された入庫計画情報を、入庫情報として取得してよい。
【0032】
出庫情報取得部112は、出庫情報を取得する。出庫情報は、出庫時刻を示す情報と、その出庫時刻における出庫量OV(出庫数量)を含んでよい。出庫情報取得部112は、出庫実績DB122を参照し、出庫実績情報を基に、出庫量OVを決定してよい。出庫情報取得部112は、メモリ120に保持された出庫計画情報を、出庫情報として取得してよい。
【0033】
期間取得部113は、物品が入庫又は出庫される入出庫期間Tにおいて入庫及び出庫が区分された複数の期間Ti(i=1,2,・・・)の情報を取得する。入出庫期間Tには、適正在庫量を推定するための複数の期間Tiが含まれる。期間Tiには、物品の入庫時刻が属する入庫期間が含まれてよい。入庫期間には、1つ以上の入庫時刻が含まれてよい。入庫期間には、出庫時刻は含まれない。期間Tiには、物品の出庫時刻が属する出庫期間が含まれてよい。出庫期間には、1つ以上の出庫時刻が含まれてよい。出庫期間には、入庫時刻は含まれない。つまり、1つの期間Tiには、入庫と出庫とが混在しない。各期間Tiの長さは、同じ長さでも異なる長さでもよい。複数の期間Tiの区分方法の詳細については後述する。期間Tiは、第1の期間の一例である。
【0034】
期間取得部113は、入出庫期間Tを区分して、複数の期間Tiを生成し、メモリ120に保持させてよい。また、複数の期間Tiの情報は、通信デバイス130を介して外部の装置から取得され、メモリ120に保持されてよい。期間取得部113は、メモリ120に保持された複数の期間Tiの情報を読み込んで、取得してよい。
【0035】
適正在庫処理部114は、期間Ti毎に、入庫情報取得部111により取得された入庫量IVの総数IAiから、出庫情報取得部112により取得された出庫量OVの総数OAiを差し引いた入出庫差Siを算出する。つまり、Si=IAi−OAiである。期間Ti毎の入出庫差Siは、期間Ti毎の物品の余剰数及び不足数を示す。入出庫差Siは、第1の入出庫差の一例である。
【0036】
適正在庫処理部114は、入出庫期間Tの開始時刻t0から期間Ti(i=1,2,・・・)の終了時刻Tieまでの期間を累積期間ATiとして、累積期間ATiにおける各期間Tiの入出庫差Siを累積(合計)し、累積入出庫差ASiを算出する。例えば、累積期間AT1は、開始時刻t0から終了時刻T1eまでの期間となり、累積期間AT2は、開始時刻t0から終了時刻T2eまでの期間となり、累積期間AT3は、開始時刻t0から終了時刻T3eまでの期間となる。適正在庫処理部114は、複数の累積期間ATiのそれぞれにおいて、複数の累積入出庫差ASiを算出する。累積期間ATi毎の累積入出庫差ASiは、入出庫期間Tの開始から累積期間ATiにおける最後の期間Tiまでの間に累積された物品の余剰数及び不足数を示す。後述する
図3では、累積期間ATiの一例として、累積期間AT1,AT2,AT3を示している。累積期間ATiは、第2の期間の一例である。累積入出庫差ASiは、第2の入出庫差の一例である。
【0037】
適正在庫処理部114は、算出された複数の累積期間Atiのそれぞれにおける複数の累積入出庫差ASiのうち、値が負数である負累積入出庫差MASiを抽出する。負累積入出庫差MASiが得られる数、つまり負累積入出庫差MASiとなる累積期間ATiの数は、1個以上でもよいし、0個でもよい。負累積入出庫差MASiが得られる数が0個であるとは、累積期間ATiの終了時刻Tieにおいて、物品の不足(欠品)が生じなかったことを意味する。
【0038】
適正在庫処理部114は、負累積入出庫差MASiに基づいて、物品の適正在庫量PS(適正在庫基準値)を推定する。具体的には、適正在庫処理部114は、複数の負累積入出庫差MASiからその平均値AVE(MAS)を算出してよい。適正在庫処理部114は、複数の負累積入出庫差MASiからその標準偏差SD(MAS)を算出してよい。適正在庫処理部114は、複数の負累積入出庫差MASiからその分散値V(MAS)を算出してよい。
【0039】
適正在庫処理部114は、負累積入出庫差MASiの平均値AVE(MAS)と、安全係数kと、負累積入出庫差MASiの標準偏差SD(MAS)又は分散値V(MAS)と、に基づいて、適正在庫量PSを算出してよい。
【0040】
具体的には、適正在庫処理部114は、負累積入出庫差MASiの確率分布を基に、欠品許容率(例えば5%)を実現する確率変数の値を決定してよい。負累積入出庫差MASiは、各期間Tiの入庫量IV及び出庫量OVに基づいて導出されるが、この入庫量IV及び出庫量OVは、未来の予定値として取得される。したがって、負累積入出庫差MASiが、任意の確率分布に従うように、ばらついて得られる可能性がある。負累積入出庫差MASiの確率分布は、例えば正規分布でもよいし、その他の分布でもよい。確率分布の情報は、メモリ120に予め保持されてよいし、入力デバイス140を介してユーザにより指定されてもよいし、外部装置から通信デバイス130を介して取得されてもよい。欠品許容率の情報は、例えばメモリ120に予め保持されてもよいし、入力デバイス140を介してユーザにより指定されてもよい。
【0041】
適正在庫処理部114は、許容欠品率に応じて、安全係数kを算出する。安全係数kは、確率変数(ここでは、入庫量、出庫量、入出庫差など)の正規分布表を参照して、目標とするサービス率(=100(%)−許容欠品率(%))を基に設定される。例えば、サービス率95%には、安全係数はk=1.65となる。確率変数の正規分布表は、例えば、メモリ120に保持されていてよい。
【0042】
適正在庫処理部114は、負累積入出庫差MASiの平均値AVE(MAS)と、安全係数kと、負累積入出庫差MASiの標準偏差SD(MAS)又は分散値V(MAS)と、を用いて、欠品許容率(例えば5%)を実現する確率変数のパーセント点(例えば95%点)は、以下の(式1)により適正在庫量PSを算出してよい。
【数1】
【0043】
[期間の区分方法]
次に、入出庫期間における適正在庫を算出するための期間の区分例について説明する。
図3は、適正在庫算出用の期間の第1例を示す模式図である。
【0044】
期間取得部113は、物品の入庫時刻と出庫時刻との間に期間Tiの境界を挿入して、複数の期間Tiを生成してよい。入庫時刻は、物品が1つ以上入庫される時刻を示す。出庫時刻は、物品が1つ以上入庫される時刻を示す。
【0045】
図3では、時刻t0が、入出庫期間Tの開始時刻である。時刻t1において、入庫量I
1の物品が入庫される。時刻t2において、入庫量I
2の物品が入庫される。時刻t3において、出庫量O
3の物品が出庫される。時刻t4において、入庫量I
4の物品が入庫される。時刻t5において、出庫量O
5の物品が出庫される。時刻t6において、出庫量O
6の物品が出庫される。時刻t7において、入庫量I
7の物品が入庫される。時刻t8において、入庫量I
8の物品が入庫される。時刻t9において、出庫量O
9の物品が出庫される。
【0046】
時刻t1と時刻t2では、共に入庫される。よって、時刻t1と時刻t2との間に期間Tiの境界は存在しない。つまり、時刻t1と時刻t2とは、1つの期間Tiに含まれる。時刻t7と時刻t8についても同様に、時刻t7と時刻t8との間に期間Tiの境界は存在しない。また、時刻t5と時刻t6では、共に出庫される。よって、時刻t5と時刻t6との間に期間Tiの境界は存在しない。つまり、時刻t5と時刻t6とは、1つの期間Tiに含まれる。
【0047】
時刻t2では入庫され、時刻t3では出庫される。よって、時刻t2とt3とにおいて入庫イベントと出庫イベントという異なるイベントが発生するので、時刻t2とt3との間には期間Tiの境界が挿入される。
図3では、時刻t1,t2は期間T1に含まれ、時刻t3は期間T2に含まれる。
【0048】
このように、期間取得部113は、
図3に示すように区分された期間Tiを生成することで、異なる入出庫のイベントが発生する毎に期間Tiを区分するので、入庫時刻が含まれる期間Tiと出庫時刻が含まれる期間Tiとが異なるように形成できる。したがって、在庫管理装置100は、同じ期間Tiに入庫と出庫とが混在しないので、各期間Tiの入出庫差を算出する際に、一部の入庫と出庫とが相殺されて物品の不足量にカウントされずに実際の不足量との間にずれが生じることを抑制できる。
【0049】
また、単純に入庫と出庫とで期間Tiが区分されるので、入出庫期間Tにおける期間Tiの数が最小となる。よって、期間Tiの数に応じた累積期間ATiの数や累積入出庫差ASiの数が少なるので、適正在庫を推定するための演算量が少なくて済む。よって、在庫管理装置100は、適正在庫量の予測精度を確保しながら、処理負荷を低減でき、適正在庫量の推定時間を短縮できる。
【0050】
図4は、適正在庫算出用の期間の第2例を示す模式図である。
【0051】
期間取得部113は、前述のように、物品の入庫時刻と出庫時刻との間に期間Tiの境界を挿入して、複数の期間Tiを生成してよい。更に、期間取得部113は、連続する複数の入庫時刻の間に、又は連続する複数の出庫時刻の間においても、期間Tiの境界を挿入して、複数の期間Tiを生成してよい。
【0052】
つまり、イベント(入庫イベント又は出庫イベント)毎に、異なる期間Tiに区分される。尚、同一時刻での複数の入庫又は同一時刻での複数の出庫は、同一のイベントとされる。同一時刻での入庫イベントと出庫イベントとは、異なるイベントとされる。期間取得部113は、同一時刻での入庫イベントと出庫イベントとが発生した場合、入庫イベントが時間的に先に発生したとして、両イベントを異なるイベントとして扱ってよい。
【0053】
図4では、時刻t0が、入出庫期間Tの開始時刻である。時刻t1において、入庫量I
1の物品が入庫される。時刻t2において、入庫量I
2の物品が入庫される。時刻t3において、出庫量O
3の物品が出庫される。時刻t4において、入庫量I
4の物品が入庫される。時刻t5において、出庫量O
5の物品が出庫される。時刻t6において、出庫量O
6の物品が出庫される。時刻t7において、入庫量I
7の物品が入庫される。時刻t8において、入庫量I
8の物品が入庫される。時刻t9において、出庫量O
9の物品が出庫される。
【0054】
時刻t1〜時刻t9において、それぞれ入庫イベント又は出庫イベントが発生している。よって、期間取得部113は、時刻t1とt2との間、時刻t2とt3との間、・・・のように境界を挿入し、複数の期間Tiを生成してよい。
【0055】
このように、期間取得部113は、
図4に示すように区分された期間Tiを生成することで、イベント(入庫イベント又は出庫イベント)が発生する毎に期間Tiを区分するので、入庫時刻が含まれる期間Tiと出庫時刻が含まれる期間Tiとが異なるように形成できる。したがって、在庫管理装置100は、同じ期間Tiに入庫と出庫とが混在しないので、各期間Tiの入出庫差を算出する際に、一部の入庫と出庫とが相殺されて物品の不足量にカウントされずに実際の不足量との間にずれが生じることを抑制できる。
【0056】
図5は、適正在庫算出用の期間の第3例を示す模式図である。
【0057】
期間取得部113は、連続する複数の入庫時刻の間隔、連続する複数の出庫時刻の間隔、及び連続する入庫時刻及び出庫時刻の間隔よりも、複数の期間Tiのそれぞれの長さを短く設定して、複数の期間Tiを生成してよい。
【0058】
例えば、期間取得部113は、イベント(入庫イベント又は出庫イベント)の発生の最小間隔が1時間毎である場合、期間Tiの時間長さを1時間未満に設定してよい。期間取得部113は、イベントの発生の最小間隔が1分毎である場合、期間Tiの時間長さlを1分未満に設定してよい。また、期間取得部113は、複数の期間Tiの時間長さlを微小長さΔlに設定してよく、つまり期間Tiを微小期間に設定してよい。
【0059】
図5では、時刻t0が、入出庫期間Tの開始時刻である。時刻t1において、入庫量I
1の物品が入庫される。時刻t2において、入庫量I
2の物品が入庫される。時刻t3において、出庫量O
3の物品が出庫される。時刻t4において、入庫量I
4の物品が入庫される。時刻t5において、出庫量O
5の物品が出庫される。時刻t6において、出庫量O
6の物品が出庫される。時刻t7において、入庫量I
7の物品が入庫される。時刻t8において、入庫量I
8の物品が入庫される。時刻t9において、出庫量O
9の物品が出庫される。
【0060】
図5では、期間取得部113は、時刻t0とt1との間、時刻t1とt2との間、時刻t0とt3との間、のように隣り合うイベントの間隔よりも、期間Tiの時間長さlを短く生成する。
【0061】
このように、期間取得部113は、
図5に示すように区分された期間Tiを生成することで、隣り合うイベント(入庫イベント又は出庫イベント)を、異なる期間Tiに含まれるように形成できる。したがって、在庫管理装置100は、同じ期間Tiに入庫と出庫とが混在しないので、各期間Tiの入出庫差を算出する際に、一部の入庫と出庫とが相殺されて物品の不足量にカウントされずに実際の不足量との間にずれが生じることを抑制できる。
【0062】
[在庫管理装置の動作例]
次に、在庫管理装置100の動作例について説明する。
図6は、在庫管理装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、入庫情報取得部111は、物品の入庫情報を取得する(S11)。出庫情報取得部112は、物品の出庫情報を取得する(S12)。期間取得部113は、入出庫期間Tに含まれる複数の期間Tiの情報を取得する(S13)。
【0064】
適正在庫処理部114は、期間Ti毎に、入庫量IVの総数IAiから出庫量OVの総数OAiを差し引いた入出庫差Siを算出する(S14)。適正在庫処理部114は、累積期間ATiにおける各期間Tiの入出庫差Siを累積し、累積入出庫差ASiを算出する。適正在庫処理部114は、累積期間ATi毎に、複数の累積入出庫差ASiを算出する(S15)。
【0065】
適正在庫処理部114は、複数の累積入出庫差ASiのうち、負累積入出庫差MASiを抽出する(S16)。適正在庫処理部114は、負累積入出庫差MASiに基づいて、物品の適正在庫量PSを推定する(S17)。
【0066】
このように、在庫管理装置100は、入庫時刻と出庫時刻とが混在しない期間Tiを取得することで、同一の期間Ti内において入庫及び出庫の一部が相殺され、この入庫及び出庫の一部が適正在庫量PSの推定に加味されなくなることを抑制できる。つまり、在庫管理装置100は、相殺されることによる見かけ上の入出庫の均一化を抑制できる。よって、在庫管理装置100は、適正在庫量PSの予測精度を向上できる。
【0067】
また、物品のリードタイムが変動する場合、各物品でリードタイムの長さが異なることで、入庫のタイミングと出庫のタイミングが混在する(入れ替わる)ことがあり得る。このリードタイムは、物品の発注から入庫までの期間(調達リードタイム)、調達リードタイムに部品の組立や加工の期間を加えた期間、その他の運搬や検査を含めた期間、等があり得る。つまり、リードタイムとしては、物品の性質によって種々の形態を採知し得る。
【0068】
在庫管理装置100は、期間Ti内に入庫と出庫とが混在しないので、リードタイムを考慮しなくても、上記のように入庫と出庫の一部が相殺されることを抑制できる。よって、在庫管理装置100は、適正在庫を推定するための1つのパラメータとしてリードタイムを特段に考慮しなくても、累積期間ATiでの累積入出庫差ASiを精度良く導出でき、適正在庫量PSの予測精度を向上できる。また、在庫管理装置100は、リードタイムを考慮しなくて済むので、手間のかかるリードタイムに係る集計作業を省略できる。
【0069】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、在庫管理装置は、例えば入庫量や出庫量や入出庫差の確率分布を規定するシナリオを考慮して、適正在庫を推定することを例示する。
【0070】
第2の実施形態における在庫管理装置100のハードウェア構成は、第1の実施形態における在庫管理装置100のハードウェア構成と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
図7は本実施形態のプロセッサ110が実施する機能構成例を示すブロック図である。プロセッサ110は、入庫情報取得部111、出庫情報取得部112、期間取得部113、適正在庫処理部114、及びシナリオ情報取得部115を備える。つまり、
図2に示した機能構成と比較すると、プロセッサ110は、シナリオ情報取得部115を更に備える。シナリオ情報取得部115は、第6取得部の一例である。
【0072】
シナリオ情報取得部115は、シナリオの出現確率(実現確率)の情報を取得する。シナリオの出現確率は、入庫量及び前記出庫量の少なくとも一方の調整に用いられてよい。シナリオの出現確率の情報は、メモリ120に予め保持されてもよいし、入力デバイス140を介してユーザに指示されてもよい。
【0073】
シナリオは、楽観シナリオ、最尤シナリオ、悲観シナリオ、及び実績シナリオを含んでよい。楽観シナリオは、楽観的なシナリオであり、例えば、物品の売れ行きが好調となり、ヒット商品となることが想定されたシナリオである。最尤シナリオは、最も起こりそうなシナリオである。最尤シナリオは、外部環境(例えば経済環境)を示すパラメータを基に想定されてよい。悲観シナリオは、悲観的なシナリオであり、自然災害等の発生により物品の売れ行きが低調となることが想定されたシナリオである。実績シナリオは、過去に実際に発生したシナリオである。実績シナリオの場合、入庫実績情報に含まれる入庫時刻を加味した入庫時刻と、入庫実績情報に含まれる入庫量の情報と、を用いればよい。また、出庫実績情報に含まれる出庫時刻を加味した出庫時刻と、出庫実績情報に含まれる出庫量の情報と、を用いればよい。尚、過去の入庫実績情報に含まれる過去の入庫の際と現在又は未来の外部環境とが異なる場合、入庫実績情報の入庫量と最尤シナリオの入庫量とが異なってよい。同様に、過去の出庫実績情報に含まれる過去の出庫の際と現在又は未来の外部環境とが異なる場合、出庫実績情報の出庫量と最尤シナリオの出庫量とが異なってよい。
【0074】
シナリオの出現確率に応じて、入庫量IVが調整されてよい。シナリオの出現確率に応じて、出庫量OVが調整されてよい。シナリオの出現確率に応じて、負累積入出庫差に関する値(例えば、負累積入出庫差MASi、負累積入出庫差MASiの平均値AVE(MAS)、負累積入出庫差MASiの標準偏差SD(MAS)、負累積入出庫差MASiの分散値V(MAS)、が調整されてよい。
【0075】
入庫情報取得部111は、各シナリオの出現確率に基づいて、第1の実施形態の入庫情報取得部111で得られた入庫量IVを調整して、入庫量IVを取得してよい。例えば、各シナリオの出現確率により得られる値を入庫量IVに乗算することで、新たな入庫量IVを取得してよい。例えば、各シナリオの出現確率がそれぞれ100%である場合、楽観シナリオ、最尤シナリオ、悲観シナリオの順に、調整後の入庫量が多くなる。入庫情報取得部111は、複数のシナリオの少なくとも1つを基に、入庫量IVを調整することで、入庫量IVを取得してよい。
【0076】
出庫情報取得部112は、各シナリオの出現確率に基づいて、第1の実施形態の出庫情報取得部112で得られた出庫量OVを調整して、出庫量OVを取得してよい。例えば、各シナリオの出現確率により得られる値を出庫量OVに乗算することで、新たな出庫量OVを取得してよい。例えば、各シナリオの出現確率がそれぞれ100%である場合、楽観シナリオ、最尤シナリオ、悲観シナリオの順に、調整後の出庫量が多くなる。入庫情報取得部111は、複数のシナリオの少なくとも1つを基に、出庫量OVを調整することで、出庫量OVを取得してよい。
【0077】
尚、入庫量IVの調整と出庫量OVの調整とにおいて、想定されるシナリオや各シナリオの出現確率が同じでもよいし、異なってもよい。
【0078】
適正在庫処理部114は、シナリオ情報取得部115により取得されたシナリオjの出現確率P(j)に基づいて、負累積入出庫差MASiの分散値V(MAS)を算出してよい。例えば、適正在庫処理部114は、各シナリオjの出現確率P(j)と各シナリオjの場合の負累積入出庫差MASiの分散値Vj(MAS)とを基に、(式2)を用いて負累積入出庫差MASiの分散値V(MAS)を算出してよい。なお、「j」はシナリオの種別を示し、「n」はシナリオの総数を示す。
【数2】
【0079】
各シナリオjの場合の負累積入出庫差MASiの分散値Vj(MAS)は、例えば、シナリオj毎に調整された入庫量IV及び出庫量OVに基づいて算出可能である。つまり、シナリオj毎に調整された入庫量IV及び出庫量OVに基づいて、順に、入出庫差Si、累積入出庫差ASi、負累積入出庫差MASi、負累積入出庫差MASiの分散値Vj(MAS)が取得されてよい。
【0080】
シナリオjの出現確率P(j)を基に負累積入出庫差MASiの分散値V(MAS)を算出することで、各シナリオの割合を考慮した分散値V(MAS)の値を得ることができる。適正在庫処理部114は、得られた各シナリオの割合を考慮した分散値V(MAS)を(式1)に適用することで、適正在庫量PSを算出してよい。
【0081】
なお、在庫管理装置100が実績シナリオを想定しない場合、メモリ120は、入庫実績DB121及び出庫実績DB122を備えなくてもよい。
【0082】
図8は、本実施形態の在庫管理装置100の負累積入出庫差MASiの確率分布の一例を示すグラフである。
図8では、横軸は負累積入出庫差MASiの確率変数を示す縦軸は各確率変数に対する確率を示す。
【0083】
負累積入出庫差MASiは、各期間Tiの入庫量IV及び出庫量OVに基づいて導出されるが、この入庫量IV及び出庫量OVは、未来の予定値として取得される。したがって、
図8に示すような確率分布のように、負累積入出庫差MASiがばらついて得られる可能性がある。
【0084】
図8では、シナリオとして、楽観シナリオ、最尤シナリオ、及び悲観シナリオが含まれてよい。シナリオ全体に対する楽観シナリオ、最尤シナリオ、悲観シナリオの割合に応じて、確率分布のグラフの形状が変化する。ここでは、3つのシナリオが考慮されているため、確率分布の3箇所(3つの確率変数の位置)において確率のピーク値が得られる。尚、シナリオには、実績シナリオが含まれてもよいし、一部のシナリオが含まれなくてもよい。
図8に示す確率変数Pαは、欠品許容率(例えば5%)を実現する確率変数を示している。
【0085】
よって、例えば、楽観シナリオが80%含まれる場合には、物品の売れ行きが比較的好調である場合の適正在庫量PSの情報が得られる。例えば、悲観シナリオが20%含まれる場合には、物品の売れ行きが比較的不調である場合の適正在庫量PSの情報が得られる。
【0086】
このように、本実施形態の在庫管理装置100は、各シナリオの出現確率を基に適正在庫量PSを推定することで、過去の実績に限られずに、様々な状況を想定して入庫量IV及び出庫量OVを計画でき、適正在庫量PSを必要十分な数量で確保できる。よって、在庫管理装置100Bは、様々な外部要因を想定して、適正在庫量PSを予測でき、実績のみを用いる場合よりも実態に即した在庫管理を実現できる。
【0087】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
上記実施形態では、
図2,
図7において機能構成を示したが、各機能構成は、ハードウェアによる専用部品で実現されてもよい。