特許第6493847号(P6493847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6493847プロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6493847
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】プロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/14 20060101AFI20190325BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B23K11/14 315
   B23K11/30 311
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-141871(P2018-141871)
(22)【出願日】2018年7月9日
【審査請求日】2018年7月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−2579(JP,U)
【文献】 特開2017−6983(JP,A)
【文献】 特開平1−249274(JP,A)
【文献】 特開平9−47884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/14
B23K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の電極本体の端面から突出しているとともに、受入孔が設けられた進退作動式のガイドピンが、電極本体に載置された鋼板部品の下孔を貫通している形式の電気抵抗溶接電極を準備し、
雄ねじが形成された軸部と、軸部と一体になっているフランジと、フランジの下面に設けた溶着用突起と、軸部の直径よりも大きな直径とされ、フランジの下面に連続している円筒型の求心ガイド部を有するプロジェクションボルトを準備し、
前記軸部を前記受入孔に挿入して軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態とし、この状態におけるフランジ下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも、軸部の長手方向で見た求心ガイド部の長さが短くなるとともに、求心ガイド部の前記長さが鋼板部品の板厚とほぼ同じか、または前記板厚よりも僅かに長く設定され、
前記軸部を前記受入孔に挿入して軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態において、前記電気抵抗溶接電極と対をなす可動電極の進出でフランジが押し下げられたとき、ガイドピンが前記下孔から抜け出るのに引き続いて、求心ガイド部を直接下孔に挿入し、溶着用突起が鋼板部品に加圧されて、溶接電流を通電することを特徴とするプロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼板部品の下孔に対する溶接位置を正確に求めるためのプロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2017−006983号公報には、図4に示す構造が記載されている。すなわち、受入孔56を有する中空のガイドピン50にプロジェクションボルト51を挿入して、鋼板部品52に溶接することが記載され、合わせて軸部53よりも大径の挿入ガイド部54を中空ガイドピン50に挿入して、ガイドピン50とボルト51の同軸性を向上させることが記載され、鋼板部品52の下孔55をガイドピン50が貫通していることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−006983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、電極の中空ガイドピン50に設けた受入孔56にプロジェクションボルト51を挿入して、当ボルト51を鋼板部品52に電気抵抗溶接で溶接するものにおいては、鋼板部品52の下孔55に対するプロジェクションボルト51の同軸性を、上記挿入ガイド部54の外周面と受入孔56の内面との間の隙間と、ガイドピン50の外周面と下孔55の内周部との間の隙間をできるだけ小さくすることによって向上するようになっている。
【0005】
しかし、中空ガイドピン50が挿入ガイド部54の外周面と下孔55の内周面との間に介在していると、上記のような隙間が2つ必要となり、溶着前に何等かの外力がボルト51に作用すると、ボルト51の中心軸線が下孔55の中心からずれやすくなり、鋼板部品52の下孔55に対するボルト51の溶接位置を正確に求めることが困難となる。つまり、挿入ガイド部54の外径寸法と下孔55の内径寸法の差が、中空ガイドピン50の介在によって著しく大きくなるので、下孔55に対してボルト51が偏心しやすくなる。
【0006】
さらに、引用文献1記載の発明は、中空ガイドピン50に対するボルト1の同軸性向上が主眼とされているので、挿入ガイド部54の受入孔56に挿入される長さが長尺化され、その結果、雄ねじが形成された軸部53の長さが不十分になったり、挿入ガイド部54が長くなって、ボルト材料が不経済になったりする。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、鋼板部品の下孔に直接挿入される求心ガイド部を、電極構造に関連づけた態様でプロジェクションボルトに形成し、プロジェクションボルトの中心軸線が下孔の中心からずれる量を最小化、もしくはなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
断面円形の電極本体の端面から突出しているとともに、受入孔が設けられた進退作動式のガイドピンが、電極本体に載置された鋼板部品の下孔を貫通している形式の電気抵抗溶接電極を準備し、
雄ねじが形成された軸部と、軸部と一体になっているフランジと、フランジの下面に設けた溶着用突起と、軸部の直径よりも大きな直径とされ、フランジの下面に連続している円筒型の求心ガイド部を有するプロジェクションボルトを準備し、
前記軸部を前記受入孔に挿入して軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態とし、この状態におけるフランジ下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも、軸部の長手方向で見た求心ガイド部の長さが短くなるとともに、求心ガイド部の前記長さが鋼板部品の板厚とほぼ同じか、または前記板厚よりも僅かに長く設定され、
前記軸部を前記受入孔に挿入して軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態において、前記電気抵抗溶接電極と対をなす可動電極の進出でフランジが押し下げられたとき、ガイドピンが前記下孔から抜け出るのに引き続いて、求心ガイド部を直接下孔に挿入し、溶着用突起が鋼板部品に加圧されて、溶接電流を通電することを特徴とするプロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法である。
【発明の効果】
【0009】
下孔に挿入される求心ガイド部が、軸部の直径よりも大きな直径とされ、フランジの下面に連続しているとともに軸部と同軸の状態で形成され、軸部の長手方向で見た求心ガイド部の長さは、軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態、すなわち底突きの状態において、フランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短く設定されている。この状態でフランジが相手方電極によって押し下げられると、ガイドピンが下孔から抜き出されるのに引き続いて、求心ガイド部が下孔に挿入される。
【0010】
上記のように、求心ガイド部の長さがフランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短く設定されているので、求心ガイド部の外径を下孔の内径に対して、最も適した値にすることが可能となり、求心ガイド部を直接下孔に挿入することができて、鋼板部品の下孔に対するプロジェクションボルトの溶接位置を正確に求めることができる。求心ガイド部の長さが、フランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短く設定されているという構成は、ガイドピンの端部位置、すなわち電極構造に関連づけた態様となる。
【0011】
そして、電極に組み付けられているガイドピンに軸部が挿入してあるので、軸部と下孔との同軸性を向上させることができ、これによって求心ガイド部が下孔に挿入される際のガイド機能が果たされ、求心ガイド部の下孔挿入が確実かつ円滑に達成され、信頼性の高い動作がえられる。なお、以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
【0012】
求心ガイド部の長さがフランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短く設定されているので、求心ガイド部の長さを鋼板部品の厚さに対して最適化することができ、ボルトと鋼板部品の一体化にとって好適である。
【0013】
求心ガイド部が下孔に挿入される際の、求心ガイド部の外径と下孔の内径の寸法関係を種々設定することにより、鋼板部品の下孔に対するボルトの溶接位置を、軸部と受入孔との間の隙間の大きさに影響されることなく、正確に求めることができる。
【0014】
すなわち、求心ガイド部の外径を下孔の内径よりも僅かに小さく設定することにより、下孔に対するボルトの偏心量を上記寸法差に応じて最小化することができる。上記寸法差を著しく小さくすることによって、下孔に対するボルトの偏心量を、実質的に問題のないレベルに維持することができる。
【0015】
あるいは、求心ガイド部の外径と下孔の内径を同じに設定することにより、求心ガイド部が下孔に隙間なく摺動的に挿入され、下孔に対するボルトの偏心量をなくすことができる。求心ガイド部を下孔にぴったりと合致させるものであるから、偏心量ゼロが実現する。
【0016】
さらに、求心ガイド部の外径を下孔の内径よりも僅かに大きく設定することにより、求心ガイド部が下孔に圧入されることとなり、下孔に対するボルトの偏心量をなくすことができる。同時に、圧入によるボルトと鋼板部品の一体性が溶接一体化に加算されるので、鋼板部品へのボルト一体化が、一層強固なものとなる。
【0017】
プロジェクションボルトは、雄ねじが形成された軸部と、軸部と一体になっているフランジと、フランジの下面に設けた溶着用突起と、前記軸部の直径よりも大きな直径で軸部と同軸の状態でフランジの下面に連続させて形成した求心ガイド部によって構成され、
断面円形の電極本体の端面から突出した進退作動式のガイドピンが、電極本体に載置された鋼板部品の下孔を貫通し、前記ガイドピンに設けた受入孔に前記軸部を挿入して前記プロジェクションボルトを鋼板部品に溶接するものであって、
前記受入孔の深さ寸法が、前記軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態において、軸部の長手方向で見た前記求心ガイド部の長さが、前記フランジの下面と前記ガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短くなるように設定された電気抵抗溶接電極が準備される。
【0018】
プロジェクションボルトは、雄ねじが形成された軸部と、軸部と一体になっているフランジと、フランジの下面に設けた溶着用突起と、軸部の直径よりも大きな直径で軸部と同軸の状態でフランジの下面に連続させて形成した求心ガイド部によって構成されている。これとともに、受入孔の深さ寸法が、軸部の先端部が受入孔の底部に受け止められた状態、すなわち底突きの状態において、軸部の長手方向で見た求心ガイド部の長さが、フランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短くなるように設定されている。
【0019】
したがって、上記のように、受入孔の深さ寸法の設定によって、求心ガイド部の長さがフランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短く設定されているので、求心ガイド部の外径を下孔の内径に対して、最も適した値にすることが可能となり、求心ガイド部を直接下孔に挿入することができて、鋼板部品の下孔に対するプロジェクションボルトの溶接位置を正確に求めることができる。
【0020】
求心ガイド部の長さが、受入孔の深さ寸法に関連づけて、フランジの下面とガイドピンの開口端部の間隔長さよりも短くなるように定めてあるという構成は、電極構造に関連づけた態様となる。
【0021】
本願発明は、上述のようなプロジェクションボルトや電気抵抗溶接電極であるが、以下に記載する実施例から明らかなように、電極の動作過程等を特定した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電極の断面図である。
図2】ボルトの挿入状態を示す断面図である。
図3】求心ガイド部の拡大図である。
図4】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明のプロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0024】
図1および図2は、本発明の実施例を示す。
【0025】
最初に、プロジェクションボルトについて説明する。
【0026】
プロジェクションボルト1は、図2に最も見やすく示されているように、雄ねじが形成された軸部2と、軸部2と一体になっているフランジ3と、フランジ3の平坦な下面4に設けた溶着用突起5と、軸部2の直径よりも大きな直径で軸部2と同軸の状態でフランジ3の下面4に連続させて形成した求心ガイド部6によって構成されている。図示したフランジ3は円形であるが、それ以外に小判型や四角型にすることも可能である。溶着用突起5は、120度間隔で同一円周上に3個設けてある。求心ガイド部6は短い円筒型であり、後述のように鋼板部品7の下孔8に挿入される。下孔8も円形の孔である。
【0027】
ボルト1は、鉄製である。その寸法は、軸部2の長さが25mm、ボルト1の長手方向で見た求心ガイド部6の長さは2.3mm、フランジ3の直径は16mmである。
【0028】
つぎに、電極本体について説明する。
【0029】
クロム銅のような銅合金製導電性金属材料で作られた電極本体9は、円筒状の形状であり、断面円形とされ、静止部材10に差し込まれる固定部12と、鋼板部品7が載置されるキャップ部13がねじ部14において結合されて、断面円形の電極本体9が形成されている。電極本体9には断面円形のガイド孔15が形成され、このガイド孔15は、固定部12に形成された大径孔16と、この大径孔16よりも小径でキャップ部13に形成された中径孔17と、この中径孔17よりも小径の小径孔18によって形成されており、大径孔16、中径孔17、小径孔18は、電極本体9の中心軸線O−O上に整列した同軸状態で配置されている。
【0030】
鋼板部品7が載置される電極本体9の端面から突出し、鋼板部品7の下孔8を貫通する断面円形のガイドピン19が、ステンレス鋼のような金属材料またはセラミック材料などの耐熱硬質材料で構成されている。ガイドピン19は後述の摺動構造によって、進退作動式とされている。そして、ガイドピン19は、真っ直ぐな管状の形状とされ、軸部2が挿入される受入孔20が設けてある。受入孔20の内径は、軸部2の外径よりも僅かに大きく設定してある。軸部2を受入孔20に差し込んだときに、軸部2の保持安定性をよくするために、受入孔20の最奥部に永久磁石21が押し込まれ、それを保護するカバー板22が設けてある。したがって、受入孔20の深さ寸法は、カバー板22の表面からガイドピン19の開口端部までの距離L1となる。
【0031】
ガイドピン19は、ガイド孔15に対して摺動状態で進退する断面円形の摺動部24に一体化されている。摺動部24は、耐熱性に優れた絶縁性合成樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(商品名=テフロン・登録商標)によって構成されている。別の材料として、ポリアミド樹脂の中から、耐熱性、耐摩耗性にすぐれた樹脂を採用することも可能である。
【0032】
つぎに、ガイドピンと摺動部の一体化部品を説明する。
【0033】
摺動部24の中心部にガイドピン19を差し込んで、ガイドピン19と摺動部24の一体化が図られている。ガイドピン19を摺動部24に一体化する構造としては、摺動部24のインジェクション成型時に、ガイドピン19を一緒にモールドインする方法や、ガイドピン19に結合ボルト構造部を設ける方法など、種々なものが採用できる。
【0034】
ここでは、後者の結合ボルト構造部のタイプである。
【0035】
すなわち、ガイドピン19の下端部にこれと一体的にボルト25が形成され、摺動部24の底部材26にボルト25を貫通し、ワッシャ27を組み付けてロックナット28で締め付けてある。摺動部24は、電極本体9と対をなす可動電極29が動作して溶接電流が通電されたときに、電流がボルト1の溶着用突起5から鋼板部品7にのみ流れるように、絶縁機能を果たしている。
【0036】
圧縮コイルスプリング30は、摺動部24の下面とガイド孔15の内底面の間に嵌め込まれており、その張力が摺動部24に作用している。なお、符号31は、ガイド孔15の内底面に嵌め込んだ絶縁シートを示している。圧縮コイルスプリング30の張力が、後述の静止内端面に対する可動端面の加圧密着を成立させている。圧縮コイルスプリング30は、加圧手段であり、これに換えて圧縮空気の圧力を利用することも可能である。
【0037】
つぎに、摺動部各部とガイド孔各部の嵌め合い対応関係を説明する。
【0038】
摺動部24には、大径部33と中径部34が形成され、中径部34よりも小径のガイドピン19が一体化されている。大径部33が、大径孔16の内面との間に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で大径孔16に嵌め込んであり、中径部34が、中径孔17の内面との間に空隙を持たせて嵌め込んである。小径孔18を貫通して電極本体9の端面から突き出ているガイドピン19によって、ガイドピン19が押し下げられたとき冷却空気が通過する通気隙間35が、小径孔18とガイドピン19の間に形成してある。
【0039】
つぎに、冷却空気の断続構造を説明する。
【0040】
冷却空気をガイド孔15に導く通気口36が形成してある。大径部33と大径孔16の摺動箇所の空気通路を確保するために、大径部33の外周面に中心軸線O−O方向の凹溝を形成することもできるが、ここでは図1(C)に示すように、大径部33の外周面に中心軸線O−O方向の平面部37を形成して、平面部37と大径孔16の円弧型内面で構成された空気通路38が形成されている。このような平面部37を90度間隔で形成して、4箇所に空気通路38を設けている。
【0041】
ガイド孔15の中径孔17と大径孔16の境界部に環状の静止内端面39が形成されている。また、摺動部24の中径部34と大径部33の境界部に環状の可動端面40が形成されている。静止内端面39と可動端面40は電極本体9の中心軸線O−Oが垂直に交わる仮想平面上に配置してあり、圧縮コイルスプリング30の張力によって可動端面40が静止内端面39に対して環状状態で密着し、この密着によって冷却空気の封止がなされている。
【0042】
つぎに、求心ガイド部について説明する。
【0043】
求心ガイド部6の配置状態を理解しやすくするために、図1図3においては、求心ガイド部6と軸部2の直径差を、大きく誇張して図示してある。
【0044】
求心ガイド部6は、上述のように、軸部2の直径よりも大きな直径で軸部2と同軸の状態でフランジ3の下面4に連続させて形成してある。つまり、軸部2の上端部に配置してある。図1(A)に示すように、軸部2の下端部がカバー板22に突き当たっている状態において、求心ガイド部6は、ガイドピン19の受入孔20に入り込むことなく、ガイドピン19の開口端部23よりも上側に配置してある。このような寸法的配置は、軸部2の長手方向で見た求心ガイド部6の長さL2(短い円筒部の長さ)が、フランジ3の平坦な下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定してあることによって実現している。つまり、求心ガイド部6の外径を加減するときに、ガイドピン19の存在が影響しないことを意味している。
【0045】
つぎに、求心ガイド部の挿入動作を説明する。
【0046】
図1(A)は、受入孔20にボルト1が挿入されて、軸部2の端部がカバー板22に突き当たっている状態を示している。この状態では、求心ガイド部6の長さL2が、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されている。また、ガイドピン19が下孔8から突き出て、鋼板部品7の位置決めを行っている。
【0047】
ここで可動電極29が進出してフランジ3を加圧すると、その加圧力はカバー板22、永久磁石21、ガイドピン19を経て摺動部24に伝えられ、圧縮コイルスプリング30を押し縮めながらガイドピン19が下孔8から抜き出される。これに引き続いて求心ガイド部6が下孔8内に挿入される。上記加圧変位によって、可動端面40が静止内端面39から離れるので、通気口36から入った冷却空気が、空気通路38、中径部17、通路空間35を通過し、フランジ3の下面4と鋼板部品7の表面の間を通って冷却作用を行う。
【0048】
求心ガイド部6が下孔8に挿入されて溶着用突起5が鋼板部品7に加圧されると、今度は、溶接電流が通電されて図1(B)に示すように、溶接が完了する。黒く塗り潰した箇所が溶着部41である。
【0049】
つぎに、求心ガイド部と下孔の径方向の大小関係を説明する。
【0050】
求心ガイド部6が下孔8に挿入される際の、求心ガイド部6の外径と下孔8の内径の寸法関係を種々設定することにより、鋼板部品7の下孔8に対するボルト1の溶接位置を、軸部2と受入孔20との間の隙間の大きさに影響されることなく、正確に求めることができる。
【0051】
1つ目の寸法関係として、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに小さく設定することにより、下孔8に対するボルト1の偏心量が上記寸法差に応じて最小化される。これには、図2図3(B)が該当している。
【0052】
2つ目の寸法関係として、求心ガイド部6の外径と下孔8の内径を同じに設定することにより、求心ガイド部6が下孔8に隙間なく摺動する状態で挿入される。これには、図3の(A)図や(C)図が該当している。
【0053】
3つ目の寸法関係として、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに大きく設定することにより、求心ガイド部6が下孔8に塑性変形をともなって圧入される。これには、図3の(A)図や(C)図が該当している。
【0054】
図3は、下孔8に求心ガイド部6が挿入されている各種の状態を示しており、前述のように、理解しやすくするために、図1図3においては、求心ガイド部6と軸部2の直径差を意図的に大きく図示してある。図3(A)や(C)は、求心ガイド部6の外径と下孔8の内径を同じに設定するか、または、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに大きく設定した場合であり、求心ガイド部6と下孔8の間の隙間は、図面に現れない。
【0055】
図3(B)は、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに小さく設定した場合であり、求心ガイド部6と下孔8の間に僅かな隙間45が形成されている。
【0056】
図3(A)では、求心ガイド部6の直径が軸部2の直径よりも大幅に大きいので、求心ガイド部6の外径は、ガイドピン19の外径よりも大きくなっている。図3(C)では、求心ガイド部6の直径が軸部2の直径よりも同図(A)の場合ほど大きくないので、求心ガイド部6の外径は、ガイドピン19の外径よりも僅かに大きくなっている。図3(B)では、求心ガイド部6の直径が軸部2の直径よりも僅かに大きいので、求心ガイド部6の外径は、ガイドピン19の外径よりも僅かに小さくなっている。
【0057】
図2においては、求心ガイド部6の直径が軸部2の直径よりも僅かに大きいので、求心ガイド部6の外径は、ガイドピン19の外径よりも僅かに小さくなっており、しかも求心ガイド部6の外径は、下孔8の内径よりも小さくなっている。したがって、溶接完了時には、隙間45が形成され、図3(B)に示した状態になる。実際には、図3(A)や(C)に示した圧入式や隙間なくぴったりと挿入される場合が、鋼板部品7の下孔8に対するボルト1の溶接位置を最も正確に求めることができる。しかし、軸部2と受入孔20の間の隙間が大きくなったり、摺動部24が異常に摩耗したりして、下孔8に対する求心ガイド部6の偏心量が過大になると、求心ガイド部6が下孔8に入りにくくなる場合があり、精度管理の面で負担が大きくなる。このような事情により、図2図3(B)に示すように、求心ガイド部6の直径を、下孔8の内径よりも僅かに小さく設定した実施態様が良好である。
【0058】
求心ガイド部6を滑らかに下孔8に挿入するために、図3(A)や(C)に示す場合は、求心ガイド部6の軸部2側に丸みのある環状の円弧部43が形成してある。このような丸みは、ボルト1が塑性加工で製作されるときに金型に求められる丸み形状によって形成することができる。また、図3(B)や図1の場合は、円弧部43に換えてテーパ部44とされている。テーパ部44も、上記と同様な塑性加工を精密に行って、すなわち一般的な精密加工を行って求めることができる。
【0059】
つぎに、求心ガイド部の長さと鋼板部品の板厚の関係を説明する。
【0060】
求心ガイド部6の長さL2は、鋼板部品7の板厚、すなわち下孔8の長さとほぼ同じか、または板厚よりも僅かに大きく設定してある。求心ガイド部6の下孔8への挿入安定性を考慮して、板厚に対する求心ガイド部6の長さL2の比は、1.0〜2.0とするのが望ましい。上記比が1.0未満であると、下孔8への求心ガイド部6の挿入長さが短すぎて、ボルト1と鋼板部品7の一体性が低下する。一方、上記比が2.0を超えると、下孔8への求心ガイド部6の挿入長さが長すぎて、雄ねじが形成された軸部長さが不十分となったり、材料面で不経済になったり、軽量化の面で不利になったりする。なお、求心ガイド部6の外径が下孔8の内径よりも僅かに小さく設定されている場合であっても、上記空隙45は実質的にゼロに近い値なので、求心ガイド部6が下孔8に嵌合されるという観点から、上記の比についての配慮が必要となる。
【0061】
つぎに、受入孔の深さ寸法について説明する。
【0062】
ガイドピン19の受入孔20の深さ寸法L1に由来させて、求心ガイド部6の長さL2を特定することができる。一定の長さの軸部2に対して、深さ寸法L1を大きく設定すれば、それに比例して求心ガイド部6の長さL2が短くなる。逆に、L1を小さく設定すれば、それに比例して求心ガイド部6の長さL2を長くすることができる。
【0063】
上記実施例では、永久磁石21が採用されている。これは、軸部2を確実に受入孔20の底部に底突きさせるためや、電極本体9が水平方向や斜め方向に配置されている場合を想定している。ボルト1の自重を活用することで十分な場合には、永久磁石21を省くことが可能である。
【0064】
上記実施例におけるボルト供給は、一般的に実用化されている手法で行うことができる。供給ロッドにボルトを保持し、供給ロッドを斜め方向から進出させて受入孔に挿入したり、供給ロッドに保持したボルトに、水平方向と鉛直方向の進退動作からなるスクエアーモーションを行わせて受入孔に挿入したりする。
【0065】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0066】
下孔8に挿入される求心ガイド部6が、軸部2の直径よりも大きな直径とされ、フランジ3の下面4に連続しているとともに軸部2と同軸の状態で形成され、軸部2の長手方向で見た求心ガイド部6の長さL2は、軸部2の先端部が受入孔20の底部に受け止められた状態、すなわち底突きの状態において、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されている。この状態でフランジ3が相手方電極である可動電極29によって押し下げられると、ガイドピン19が下孔8から抜き出されるのに引き続いて、求心ガイド部6が下孔8に挿入される。
【0067】
上記のように、求心ガイド部6の長さL2がフランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されているので、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径に対して、最も適した値にすることが可能となり、求心ガイド部6を直接下孔8に挿入することができて、鋼板部品7の下孔8に対するプロジェクションボルト1の溶接位置を正確に求めることができる。求心ガイド部6の長さL2が、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されているという構成は、ガイドピン19の端部位置、すなわち電極構造に関連づけた態様となる。
【0068】
そして、電極に組み付けられているガイドピン19に軸部2が挿入してあるので、軸部2と下孔8との同軸性を向上させることができ、これによって求心ガイド部6が下孔8に挿入される際のガイド機能が果たされ、求心ガイド部6の下孔挿入が確実かつ円滑に達成され、信頼性の高い動作がえられる。
【0069】
求心ガイド部6の長さL2がフランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されているので、求心ガイド部6の長さL2を鋼板部品7の厚さに対して最適化することができ、ボルト1と鋼板部品7の一体化にとって好適である。
【0070】
求心ガイド部6が下孔8に挿入される際の、求心ガイド部6の外径と下孔8の内径の寸法関係を種々設定することにより、鋼板部品7の下孔8に対するボルト1の溶接位置を、軸部2と受入孔20との間の隙間の大きさに影響されることなく、正確に求めることができる。
【0071】
すなわち、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに小さく設定することにより、下孔8に対するボルト1の偏心量を上記寸法差に応じて最小化することができる。上記寸法差を著しく小さくすることによって、下孔8に対するボルト1の偏心量を、実質的に問題のないレベルに維持することができる。
【0072】
あるいは、求心ガイド部6の外径と下孔8の内径を同じに設定することにより、求心ガイド部6が下孔8に隙間なく摺動的に挿入され、下孔8に対するボルト1の偏心量をなくすことができる。求心ガイド部6を下孔8にぴったりと合致させるものであるから、偏心量ゼロが実現する。
【0073】
さらに、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径よりも僅かに大きく設定することにより、求心ガイド部6が下孔8に塑性変形をともなって圧入されることとなり、下孔8に対するボルト1の偏心量をなくすことができる。同時に、圧入によるボルト1と鋼板部品7の一体性が溶接一体化に加算されるので、鋼板部品7へのボルト一体化が、一層強固なものとなる。
【0074】
ボルト1は、雄ねじが形成された軸部2と、軸部2と一体になっているフランジ3と、フランジ3の下面4に設けた溶着用突起5と、軸部2の直径よりも大きな直径で軸部2と同軸の状態でフランジ3の下面4に連続させて形成した求心ガイド部6によって構成され、断面円形の電極本体9の端面から突出した進退作動式のガイドピン19が、電極本体9に載置された鋼板部品7の下孔8を貫通し、ガイドピン19に設けた受入孔20に軸部2を挿入してボルト1を鋼板部品7に溶接するものであって、受入孔20の深さ寸法L1が、軸部2の先端部が受入孔20の底部に受け止められた状態において、軸部2の長手方向で見た求心ガイド部6の長さL2が、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短くなるように設定された電気抵抗溶接電極である。
【0075】
プロジェクションボルト1は、雄ねじが形成された軸部2と、軸部2と一体になっているフランジ3と、フランジ3の下面4に設けた溶着用突起5と、軸部2の直径よりも大きな直径で軸部2と同軸の状態でフランジ3の下面4に連続させて形成した求心ガイド部6によって構成されている。これとともに、受入孔20の深さ寸法L1が、軸部2の先端部が受入孔20の底部に受け止められた状態、すなわち底突きの状態において、軸部2の長手方向で見た求心ガイド部6の長さL2が、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短くなるように設定されている。
【0076】
したがって、上記のように、受入孔20の深さ寸法L1の設定によって、求心ガイド部6の長さL2がフランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されているので、求心ガイド部6の外径を下孔8の内径に対して、最も適した値にすることが可能となり、求心ガイド部6を直接下孔8に挿入することができて、鋼板部品7の下孔8に対するボルト1の溶接位置を正確に求めることができる。
【0077】
求心ガイド部6の長さL2が、受入孔20の深さ寸法L1に関連づけて、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短くなるように定めてあるという構成は、電極構造に関連づけた態様となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上述のように、本発明のプロジェクションボルトの電気抵抗溶接方法によれば、鋼板部品の下孔に直接挿入される求心ガイド部を、電極構造に関連づけた態様でプロジェクションボルトに形成し、プロジェクションボルトの中心軸線が下孔の中心からずれる量を最小化、もしくはなくすことができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 プロジェクションボルト
2 軸部
3 フランジ
4 下面
5 溶着用突起
6 求心ガイド部
7 鋼板部品
8 下孔
9 電極本体
19 ガイドピン
20 受入孔
23 開口端部
L1 受入孔の深さ寸法
L2 求心ガイド部の長さ寸法
L3 下面と開口端部の間隔長さ寸法
O−O 中心軸線
【要約】
【課題】鋼板部品の下孔に直接挿入される求心ガイド部を、プロジェクションボルトに形成し、該ボルトの中心軸線が下孔の中心からずれる量を最小化、もしくはなくすこと。
【解決手段】軸部2と、フランジ3と、溶着用突起5を有し、電極本体9の進退作動式のガイドピン19が、鋼板部品7の下孔8を貫通し、ガイドピン19の受入孔20に軸部2が挿入されるものであって、下孔8に挿入される求心ガイド部6が、軸部2の直径よりも大きな直径とされ、フランジ3の下面4に連続しているとともに軸部2と同軸の状態で形成され、求心ガイド部6の長さL2は、軸部2の先端部が受入孔20の底部に受け止められた状態において、フランジ3の下面4とガイドピン19の開口端部23の間隔長さL3よりも短く設定されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4